特許第6048115号(P6048115)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6048115-流動層ガス化装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048115
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】流動層ガス化装置
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/54 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
   C10J3/54 J
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-276325(P2012-276325)
(22)【出願日】2012年12月19日
(65)【公開番号】特開2014-118524(P2014-118524A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須田 俊之
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−138107(JP,A)
【文献】 特開2009−286932(JP,A)
【文献】 特開2006−213817(JP,A)
【文献】 特表2010−525120(JP,A)
【文献】 特開2013−136655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス化炉本体内下部に形成される流動層に燃料を投入してガス化ガスを発生させ、該ガス化ガスを前記流動層上方に形成されるフリーボード部を経て前記ガス化炉本体上部から抜き出す流動層ガス化装置において、
前記フリーボード部に配設されるタール分解改質触媒層と、
該タール分解改質触媒層に付着する粒子状付着物及び析出カーボンを除去する除去手段を備え、
前記除去手段は、前記タール分解改質触媒層の粒子状付着物に対し噴射流体として蒸気をノズルから吹き付け、且つ前記タール分解改質触媒層の析出カーボンに対し噴射流体として空気又は酸素をノズルから吹き付けるスートブロワである
ことを特徴とする流動層ガス化装置。
【請求項2】
前記タール分解改質触媒層を、上下複数段に間隔をあけて配設される分割触媒層によって構成し、且つ最下段の分割触媒層の厚さを上段の分割触媒層の厚さに比べて薄くし、
前記スートブロワを上下の分割触媒層間に配設した請求項記載の流動層ガス化装置。
【請求項3】
前記ガス化炉本体に、前記タール分解改質触媒層のガス化ガス流通方向上下流側における差圧を検出する差圧検出器を設け、
該差圧検出器で検出される差圧が設定値以上となった場合に前記スートブロワのノズルからタール分解改質触媒層に対し噴射流体を吹き付けるよう構成した請求項1又は2記載の流動層ガス化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動層ガス化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料として、石炭、バイオマス、廃プラスチック、或いは各種の含水廃棄物等の固体燃料を用い、ガス化ガスを生成する燃料ガス化設備の開発が進められている。
【0003】
一般に、前記燃料ガス化設備のガス化炉において、およそ800〜900℃の温度の流動層で前記固体燃料のガス化を行った場合、生成されるガス化ガス中にはタールが含まれており、該タールを含むガス化ガスは温度を下げていくとタールが凝縮してミスト化する。このため、ガス化ガスを化学合成原料等に利用する際には、下流側の精製プロセスや化学合成プロセスにおいて、タールによる配管閉塞や機器類のトラブル、タール付着による合成触媒の被毒等といった問題が引き起こされる。
【0004】
前記ガス化ガス中に含まれるタール分を除去する技術としては、従来、触媒を用いたタール改質があり、これと関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【0005】
前記特許文献1に開示された流動層ガス化装置は、ガス化炉本体内下部に形成される流動層に燃料を投入してガス化ガスを発生させ、該ガス化ガスを前記流動層上方に形成されるフリーボード部を経て前記ガス化炉本体上部から抜き出すものである。前記フリーボード部には、サイクロン型粒子分離部が設けられると共に、該サイクロン型粒子分離部より上方に位置するようタール分解改質触媒層が設けられている。
【0006】
前記特許文献1に開示された流動層ガス化装置においては、ガス化炉本体内下部に形成される流動層に燃料を投入することによって発生したガス化ガスは、フリーボード部に設けられたサイクロン型粒子分離部を通過する際に旋回流となって粒子が分離される。そして、前記ガス化ガスは、タール分解改質触媒層でタール分が改質されて一酸化炭素(CO)と水素(H2)に転換され、タール分が除去されたガス化ガスがガス化炉本体上部から抜き出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−292720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1に開示された流動層ガス化装置のように、フリーボード部にサイクロン型粒子分離部を設けると共に、該サイクロン型粒子分離部より上方に位置するようタール分解改質触媒層を設けるのでは、サイクロン型粒子分離部でガス化ガスの熱が奪われることが避けられない。このため、タール分解改質触媒層でのガス化ガスの温度がフリーボード部での温度より低下し、該タール分解改質触媒層においてタール分を効率良く改質することが困難になる虞があった。
【0009】
又、前記サイクロン型粒子分離部をガス化炉本体内部に設けることは、構造が複雑になって製造に手間が掛かり、コストアップにつながる虞をも有していた。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、ガス化ガスの温度低下を抑制してタール分を効率良く改質することができると共に、簡単な構造で製造を容易化しコスト削減を図り得る流動層ガス化装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ガス化炉本体内下部に形成される流動層に燃料を投入してガス化ガスを発生させ、該ガス化ガスを前記流動層上方に形成されるフリーボード部を経て前記ガス化炉本体上部から抜き出す流動層ガス化装置において、
前記フリーボード部に配設されるタール分解改質触媒層と、
該タール分解改質触媒層に付着する粒子状付着物及び析出カーボンを除去する除去手段を備え、
前記除去手段は、前記タール分解改質触媒層の粒子状付着物に対し噴射流体として蒸気をノズルから吹き付け、且つ前記タール分解改質触媒層の析出カーボンに対し噴射流体として空気又は酸素をノズルから吹き付けるスートブロワである
ことを特徴とする流動層ガス化装置にかかるものである。
【0013】
又、前記流動層ガス化装置においては、前記タール分解改質触媒層を、上下複数段に間隔をあけて配設される分割触媒層によって構成し、且つ最下段の分割触媒層の厚さを上段の分割触媒層の厚さに比べて薄くし、
前記スートブロワを上下の分割触媒層間に配設することが好ましい。
【0014】
更に又、前記流動層ガス化装置においては、前記ガス化炉本体に、前記タール分解改質触媒層のガス化ガス流通方向上下流側における差圧を検出する差圧検出器を設け、
該差圧検出器で検出される差圧が設定値以上となった場合に前記スートブロワのノズルからタール分解改質触媒層に対し噴射流体を吹き付けるよう構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の流動層ガス化装置によれば、ガス化ガスの温度低下を抑制してタール分を効率良く改質することができると共に、簡単な構造で製造を容易化しコスト削減を図り得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の流動層ガス化装置の実施例を示す側断面図である。
図2】本発明の流動層ガス化装置の実施例を示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1及び図2は本発明の流動層ガス化装置の実施例であって、1はガス化炉本体、2はガス化炉本体1の底部に形成され且つ蒸気等の流動ガスが導入される流動ガス導入部、3は流動ガス導入部2に導入された流動ガスを上方へ吹き出す分散板、4は分散板3の上面側に形成され且つ燃料が投入される流動層、5は流動層4上方に形成されるフリーボード部である。該フリーボード部5には、タール分解改質触媒層6を設けると共に、該タール分解改質触媒層6に付着する粒子状付着物(例えば、灰粒子等)及び析出カーボンを除去する除去手段7を設けてある。
【0019】
本実施例の場合、前記除去手段7は、前記タール分解改質触媒層6の粒子状付着物に対し噴射流体として蒸気をノズル7bから吹き付け、且つ前記タール分解改質触媒層6の析出カーボンに対し噴射流体として空気又は酸素をノズル7bから吹き付けるスートブロワ7aとしてある。
【0020】
前記タール分解改質触媒層6は、上下複数段(図1の例では二段)に間隔をあけて配設される金属担持ハニカム触媒(例えば、ニッケル等の金属を担持させたハニカム触媒)等の分割触媒層6a,6bによって構成し、且つ下段の分割触媒層6bの厚さDbを上段の分割触媒層6aの厚さDaに比べて薄くし、前記スートブロワ7aを上下の分割触媒層6a,6b間に配設してある。
【0021】
前記ガス化炉本体1には、前記タール分解改質触媒層6のガス化ガス流通方向上下流側における差圧を検出する差圧検出器8を設けてある。該差圧検出器8で検出される差圧が設定値以上となった場合に制御器9からスートブロワ7aの噴射流体供給弁10へ制御信号を出力して該噴射流体供給弁10を開くことにより、前記スートブロワ7aのノズル7bからタール分解改質触媒層6に対し噴射流体を吹き付けるよう構成してある。
【0022】
尚、前記スートブロワ7aは、図示していない駆動機構により、その軸線方向へ伸縮自在且つ軸線を中心として回転自在に配置してある。そして、前記スートブロワ7aは、タール分解改質触媒層6に対し噴射流体を吹き付ける必要のないときは、収縮してガス化炉本体1外部へ退避し、タール分解改質触媒層6に対し噴射流体を吹き付けるときは、伸長してガス化炉本体1内部へ進入し、ノズル7bを下向きにして下段の分割触媒層6bへ噴射流体を吹き付けるようにしてある。一方、前記スートブロワ7aは、ノズル7bを上向きにして上段の分割触媒層6aへ噴射流体を吹き付けるようにしてある。
【0023】
又、前記スートブロワ7aは、図2に示す如く、ガス化炉本体1に対して複数本挿入配置し、タール分解改質触媒層6の全面にムラなく噴射流体を吹き付けるようにしてある。
【0024】
更に又、前記噴射流体としての蒸気と空気又は酸素との切り換えは、前記噴射流体供給弁10より上流側に分岐接続される蒸気供給配管と空気又は酸素供給配管途中にそれぞれ設けられた切換弁(図示せず)の操作により行われるようにしてある。
【0025】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【0026】
運転時には、水蒸気等の流動ガスがガス化炉本体1の底部に形成された流動ガス導入部2へ導入され、該流動ガス導入部2に導入された流動ガスが分散板3から上方へ吹き出されて流動層4が形成され、該流動層4に石炭やバイオマス等の燃料を投入することによりガス化ガスが発生する。
【0027】
前記ガス化ガスは、フリーボード部5を上昇していく際、該フリーボード部5に配設されたタール分解改質触媒層6でタール分が改質されて一酸化炭素(CO)、水素(H2)その他炭化水素ガス等に転換され、タール分が除去されたガス化ガスがガス化炉本体1上部から抜き出される。
【0028】
前記タール分解改質触媒層6には、粒子状付着物及びタール改質の反応が不十分であれば析出カーボンが付着するが、前記タール分解改質触媒層6のガス化ガス流通方向上下流側における差圧が差圧検出器8で検出される。そして、該差圧検出器8で検出される差圧が設定値以上となった場合には、スートブロワ7aが伸長してガス化炉本体1内部へ進入し、制御器9からスートブロワ7aの噴射流体供給弁10へ制御信号が出力されて該噴射流体供給弁10が開かれることにより、スートブロワ7aのノズル7bからタール分解改質触媒層6に対し噴射流体が吹き付けられる。
【0029】
尚、前記差圧検出器8でタール分解改質触媒層6のガス化ガス流通方向上下流側における差圧を検出する代わりに、以下のようにしても良い。即ち、例えば、試験運転時に、前記タール分解改質触媒層6に対し粒子状付着物及び析出カーボンがどの程度付着して目詰まりが生じるかを予め把握しておき、得られたデータに基づく一定期間毎にスートブロワ7aのノズル7bからタール分解改質触媒層6に対し噴射流体を吹き付けるようにしても良い。
【0030】
ここで、前記粒子状付着物は主に、タール分解改質触媒層6の下面側における表面にしか付着しない。このため、タール分解改質触媒層6を、上下複数段(図1の例では二段)に間隔をあけて配設される金属担持ハニカム触媒等の分割触媒層6a,6bによって構成し、且つ下段の分割触媒層6bの厚さDbを上段の分割触媒層6aの厚さDaに比べて薄くする構成としておくことが有効となる。この理由は、前述のように構成しておくと、下段の分割触媒層6bが粒子状付着物を捕集するフィルタ的な役割を果たすと共に、前記スートブロワ7aのノズル7bを下向きにして下段の分割触媒層6bへ噴射流体として蒸気を吹き付ければ、前記下段の分割触媒層6bに捕集された粒子状付着物を逆洗する形で容易に下に落とすことが可能となるからである。又、前記スートブロワ7aのノズル7bを下向きにして下段の分割触媒層6bへ噴射流体として空気又は酸素をノズルから吹き付ければ、前記下段の分割触媒層6bに付着した析出カーボンを燃焼させ、該下段の分割触媒層6bを再生させることが可能となる。
【0031】
一方、前記スートブロワ7aのノズル7bを上向きにして上段の分割触媒層6aへ噴射流体として空気又は酸素をノズルから吹き付ければ、前記上段の分割触媒層6aに付着した析出カーボンを燃焼させ、該上段の分割触媒層6aを再生させることが可能となる。
【0032】
尚、前記タール分解改質触媒層6の上下の分割触媒層6a,6bの再生完了後、前記スートブロワ7aは収縮してガス化炉本体1の外部へ退避し、ガス化炉本体1での運転が継続される。
【0033】
この結果、本実施例においては、特許文献1に開示された流動層ガス化装置とは異なり、フリーボード部5にタール分解改質触媒層6を設けるだけで、サイクロン型粒子分離部を設けなくて済む。このため、サイクロン型粒子分離部でガス化ガスの熱が奪われることが避けられ、タール分解改質触媒層6でのガス化ガスの温度がフリーボード部5での温度と変わらなくなり、該タール分解改質触媒層6においてタール分を効率良く改質することが可能となる。
【0034】
又、前記サイクロン型粒子分離部をガス化炉本体1内部に設けなくて済むことから、ガス化炉本体1の構造が簡単で製造に手間が掛からず、コストアップも避けられる。
【0035】
こうして、ガス化ガスの温度低下を抑制してタール分を効率良く改質することができると共に、簡単な構造で製造を容易化しコスト削減を図り得る。
【0036】
尚、本発明の流動層ガス化装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
1 ガス化炉本体
4 流動層
5 フリーボード部
6 タール分解改質触媒層
6a 分割触媒層
6b 分割触媒層
7 除去手段
7a スートブロワ
7b ノズル
8 差圧検出器
9 制御器
Da 厚さ
Db 厚さ
図1
図2