特許第6048120号(P6048120)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048120
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】移動体の回転数計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/88 20060101AFI20161212BHJP
   G01S 13/58 20060101ALI20161212BHJP
   G01P 3/44 20060101ALI20161212BHJP
   A63B 69/36 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   G01S13/88
   G01S13/58
   G01P3/44 Z
   A63B69/36 541S
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-278284(P2012-278284)
(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公開番号】特開2014-62882(P2014-62882A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2014年12月23日
(31)【優先権主張番号】特願2012-193050(P2012-193050)
(32)【優先日】2012年9月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】三枝 宏
(72)【発明者】
【氏名】北崎 剛史
【審査官】 中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−068139(JP,A)
【文献】 特開2011−143096(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/071928(WO,A1)
【文献】 特開2011−089907(JP,A)
【文献】 特開2012−068163(JP,A)
【文献】 特開2013−130569(JP,A)
【文献】 特開2003−294777(JP,A)
【文献】 特開2003−043141(JP,A)
【文献】 特表2008−538085(JP,A)
【文献】 国際公開第11/074247(WO,A1)
【文献】 国際公開第12/169179(WO,A1)
【文献】 国際公開第13/076980(WO,A1)
【文献】 米国特許第06244971(US,B1)
【文献】 特開2011−152291(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0027275(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72− 1/82
3/80− 3/86
5/18− 7/64
13/00−17/95
A63B 37/00−47/04
69/00−69/40
G01P 1/00− 3/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指向性を有し、供給される送信信号に基づいて球体の移動体に向けて送信波を送信するとともに、前記移動体で反射された反射波を受信して受信信号を生成するアンテナと、
前記アンテナに前記送信信号を供給するとともに、前記受信信号に基づいてドップラー周波数を有するドップラー信号を生成するドップラーセンサと、
前記球体の径情報が入力される入力部と、
前記ドップラー信号および前記径情報に基づいて、前記移動体の移動速度および回転数を算出する計測処理部と、
前記算出された移動速度および回転数を含む表示内容を表示する表示部と、
少なくとも前記表示部を保持する筐体と、を備え、
前記アンテナは、所定の計測時間中継続して前記送信波の送信および前記反射波の受信をおこない、
前記ドップラーセンサは、前記所定の計測時間中継続して前記送信信号の供給および前記ドップラー信号の生成をおこない、
前記計測処理部は、所定の計測時間中の各時刻における前記ドップラー信号を、縦軸に信号強度、横軸に周波数をとった信号強度分布データに変換し、前記所定の計測時間中の前記信号強度分布データのうち、前記信号強度がピークとなる周波数であるピーク周波数が最も高周波側にある時刻における前記信号強度分布データを用いて前記移動速度を算出するとともに、前記信号強度分布データの分布幅が最大値を取る時刻における前記信号強度分布データを用いて前記回転数を算出し、
前記分布幅は、前記ドップラー信号の高周波側において前記信号強度が前記ピーク値から所定レベル低い値となる点と、前記ドップラー信号の低周波側において前記信号強度が前記ピーク値から所定レベル低い値となる点と、の間の幅、または前記ドップラー信号の高周波側において前記信号強度が前記ピーク値から所定のレベル低い値となる点と、前記ピーク値を取る点と、の間の幅、のいずれかである、
とを特徴とする移動体の回転数計測装置。
【請求項2】
前記計測処理部は、前記球体表面のうち、前記送信波の送信方向となす角度が略90°である第1部分と、前記送信波の送信方向となす角度が略0°かつ前記球体の回転方向が前記球体の移動方向と反対向きとなる第2部分と、前記送信波の送信方向となす角度が略0°かつ前記球体の回転方向が前記球体の移動方向と同じ向きとなる第3部分と、からの反射波を用いてそれぞれ速度を算出し、前記第1部分からの反射波を用いて算出した第1の速度は前記球体の移動速度を示し、前記第2部分からの反射波を用いて算出した第2の速度は前記第1の移動速度から前記球体の角速度と前記球体の半径との積を差し引いた値を示し、前記第3部分からの反射波を用いて算出した第3の速度は前記第1の移動速度に前記球体の角速度と前記球体の半径との積を加えた値を示すものとし、前記第1の速度、前記第2の速度および前記第3の速度から前記球体の角速度を算出することによって前記球体の回転数を算出することを特徴とする請求項1記載の移動体の回転数計測装置。
【請求項3】
前記計測処理部は、前記ドップラー信号の前記信号強度分布データのうち、信号強度が相対的に高い成分を前記第1部分からの反射波成分、信号強度が相対的に低い成分のうち前記第1部分からの反射波成分よりも周波数が低い成分を前記第2部分からの反射波成分、信号強度が相対的に低い成分のうち前記第1部分からの反射波成分よりも周波数が高い成分を前記第3部分からの反射波成分として前記球体の回転数を算出することを特徴とする請求項に記載の移動体の回転数計測装置。
【請求項4】
前記球体は球技用ボールであり、
前記入力部には、前記球技用ボールの種類が入力され、
前記計測処理部には、前記入力部に入力される種類の前記球技用ボールの径が記録されている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の移動体の回転数計測装置。
【請求項5】
前記入力部には、前記球体の径の値が入力される、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の移動体の回転数計測装置。
【請求項6】
前記計測処理部は、あらかじめ前記球体の前記径情報ごとに前記ドップラー周波数から前記移動速度および前記回転数を算出する相関式を有し、前記入力部に入力された前記径情報に基づいて前記相関式を選択して前記移動速度および前記回転数を算出する、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の移動体の回転数計測装置。
【請求項7】
前記送信波の周波数帯域が24GHzあるいは10GHzであり、前記送信波の出力が10mW以下である、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の移動体の回転数計測装置。
【請求項8】
前記アンテナと前記ドップラーセンサとが一体的に設けられた一体型モジュールを構成している、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の移動体の回転数計測装置。
【請求項9】
電力を蓄電するバッテリーを備え、
前記バッテリーに蓄電された前記電力を用いて駆動する、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の移動体の回転数計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球体の移動体の回転数を計測装置する回転数計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
野球の投球など、球体である移動体の回転数を測定する方法としては、主に以下の3つの方法が知られている。(1)移動する球体の画像を撮影し、画像解析技術を用いて回転数を算出する方法(たとえば、下記特許文献1参照)、(2)球体内に加速度センサを取り付け、得られた加速度データの周期性から回転速度を計測する方法(たとえば、下記特許文献2参照)、(3)アンテナから電波を送信波として発信し、送信波と、移動体からの反射波との周波数変化から移動体の移動速度を算出するドップラー法(たとえば、下記特許文献3〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−234485号公報
【特許文献2】特開2010−256068号公報
【特許文献3】特開2003−294777号公報
【特許文献4】特開2003−043141号公報
【特許文献5】US6244971公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術のうち、(1)の画像解析技術を用いる方法では、画像撮影のためのカメラ等を用いるため、大掛かりなシステムが必要となり、導入には多大なコストがかかるという問題点がある。また、(1)の方法では、自動で回転数を計測することが困難であり、たとえば使用者が自身の投球の回転数を計測することが困難であるという問題点がある。
【0005】
また、(2)の球体内に加速度センサを取り付ける方法では、球体の性質や性能を通常の球体と同様にすることが困難となり、適用分野が限られてしまうという問題点がある。また、(3)のドップラー法では、一般に電波の送信系の機器と受信系の機器とが分かれており、安定した計測をおこなうのが困難であるという問題点がある。また、(3)の方法では、計測装置の小型化を図ることが困難であるという問題点がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用者等が容易に球体である移動体の回転数を計測することができる移動体の回転数計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の移動体の回転数計測装置は、指向性を有し、供給される送信信号に基づいて球体の移動体に向けて送信波を送信するとともに、前記移動体で反射された反射波を受信して受信信号を生成するアンテナと、前記アンテナに前記送信信号を供給するとともに、前記受信信号に基づいてドップラー周波数を有するドップラー信号を生成するドップラーセンサと、前記球体の径情報が入力される入力部と、前記ドップラー信号および前記径情報に基づいて、前記移動体の移動速度および回転数を算出する計測処理部と、前記算出された移動速度および回転数を含む表示内容を表示する表示部と、少なくとも前記表示部を保持する筐体と、を備え、前記アンテナは、所定の計測時間中継続して前記送信波の送信および前記反射波の受信をおこない、前記ドップラーセンサは、前記所定の計測時間中継続して前記送信信号の供給および前記ドップラー信号の生成をおこない、前記計測処理部は、所定の計測時間中の各時刻における前記ドップラー信号を、縦軸に信号強度、横軸に周波数をとった信号強度分布データに変換し、前記所定の計測時間中の前記信号強度分布データのうち、前記信号強度がピークとなる周波数であるピーク周波数が最も高周波側にある時刻における前記信号強度分布データを用いて前記移動速度を算出するとともに、前記信号強度分布データの分布幅が最大値を取る時刻における前記信号強度分布データを用いて前記回転数を算出し、前記分布幅は、前記ドップラー信号の高周波側において前記信号強度が前記ピーク値から所定レベル低い値となる点と、前記ドップラー信号の低周波側において前記信号強度が前記ピーク値から所定レベル低い値となる点と、の間の幅、または前記ドップラー信号の高周波側において前記信号強度が前記ピーク値から所定のレベル低い値となる点と、前記ピーク値を取る点と、の間の幅、のいずれかである、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ドップラー信号を用いることにより、比較的低い周波数領域で移動体の回転数および移動速度を計測することができるので、簡易な構成で移動体の回転数および移動速度を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態にかかる回転数計測装置10の外観を示す斜視図である。
図2】回転数計測装置10の正面図である。
図3図2のA矢視図である。
図4図2のB矢視図である。
図5図4においてアンテナを90度回転させた状態を示す図である。
図6】計測モードの選択画面の一例を示す説明図である。
図7】回転数計測装置10の構成を示すブロック図である。
図8】移動体(野球ボール6)の回転数を検出する原理の説明図である。
図9】ドップラー信号Sdをウェーブレット解析した結果を示す図である。
図10】アンテナ14から送信される送信波の波面と移動体の移動方向との位置関係を示す説明図である。
図11】回転数計測装置10の機能ブロック図である。
図12】野球ボール6を投球した際のドップラー信号Sdの一例を示す線図である。
図13】信号強度分布データPの一例を示す線図である。
図14】時刻t1〜t4における移動体の位置を模式的に示す説明図である。
図15】野球ボール6を移動体として計測する場合の回転数計測装置10の設置状態を説明する平面図である。
図16】回転数計測装置10の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、実施の形態にかかる回転数計測装置10の外観を示す斜視図であり、図2は、回転数計測装置10の正面図である。
図1に示すように、移動体の回転数計測装置10(以下単に回転数計測装置10という)は、筐体12と、アンテナ14と、アンテナ支持部16と、表示部18と、入力部20とを含んで構成されている。
筐体12は、上下方向の厚さと、厚さよりも大きな寸法の左右方向の幅と、幅よりも大きな寸法の前後方向の長さを有し、矩形板状を呈している。
筐体12の上面1202は、長手方向を筐体12の前後方向に平行させたほぼ長方形を呈している。
上面1202の前後はそれぞれ筐体12の前面1204と後面1206とに接続されている。
また、上面1202に対向する下面1203には回転数計測装置10を三脚などの固定具に取り付けるための不図示の雌ねじ(カメラネジ)が設けられている。
【0011】
アンテナ14は、アンテナ支持部16を介して筐体12の上面1202に連結されている。
アンテナ14は、指向性を有し、後述するドップラーセンサ22(図6参照)から供給される送信信号に基づいて移動体に向けて送信波を送信するとともに、移動体で反射された反射波を受信して受信信号を生成しドップラーセンサ22に供給するものである。
本明細書においては、アンテナ14の利得が最大となる方向に沿って延在する仮想線をアンテナの指向方向を示す仮想軸Lとする。
本実施の形態では、アンテナ14は、矩形板状のパッチアンテナで構成され、厚さ方向の一方の面が送信波を送信しかつ反射波を受信する表面であり、表面の反対側が裏面となっている。
また、アンテナ14としてパッチアンテナを用いたので、回転数計測装置10の小型化を図る上で有利となる。しかしながら、アンテナ14としてホーンアンテナなど従来公知の様々なアンテナが使用可能である。
なお、アンテナ14の指向角が狭すぎると、移動体の測定範囲が限定される不利があり、アンテナ14の指向角が広すぎると、測定対象となる移動体以外の物体からの不要な反射波を受信することになり測定精度を確保する上で不利となる。
そのため、アンテナ14の指向角は、5度〜90度とすることが移動体の測定範囲を確保しつつ測定対象外の物体からの不要な反射波の受信を抑制する上で有利である。
【0012】
アンテナ支持部16は、筐体12に設けられ仮想軸Lの傾きが変化可能となるようにアンテナ14を支持するものである。
本実施の形態では、アンテナ支持部16は、フレーム16Aと、ケース16Bとを備えている。
フレーム16Aは、筐体12の前面1204に設けられ筐体12の幅方向に延在する基部1602と、基部1602の両端から前方に起立する2つの柱部1604とで構成されている。
ケース16Bは、アンテナ14を平面視したときの輪郭よりも一回り小さい矩形板状を呈し、ケース16Bの4辺をアンテナ14の4辺に平行させた状態でアンテナ14の背面に取着されている。
より詳細には、ケース16Bは、アンテナ14に対向する矩形板状の底壁と、該底壁から起立する4つの側壁とを有し、これら4つの側壁の上部がアンテナ14の背面に接続されている。また、これら底壁と4つの底壁とアンテナ14とで囲まれた収容空間には、後述するドップラーセンサ22が収容されている。
また、アンテナ14とドップラーセンサ22とが一体的に設けられた一体型モジュールを用いてもよい。この場合、ドップラーセンサ22はアンテナ14の背面に一体的に設けられている。
このような一体型モジュールを用いた場合は、アンテナ14とドップラーセンサ22との間での信号経路の距離を短縮することで信号に加わるノイズを低減する上で有利となり、また、回転数計測装置10の小型化を図る上で有利となる。
なお、ドップラーセンサ22は、筐体12に収容されていてもよい。
ケース16Bは、4つの側壁のうち対向する2つの側壁が2つの柱部1604の間に配置され、筐体12の左右方向に軸心を向けた支軸16Cを介して2つの柱部1604に回転可能に支持されている。
したがって、アンテナ支持部16は、仮想軸Lの傾きが変化可能となるようにアンテナ14を支持している。
本明細書においては、図4に示すように、仮想軸Lが後述する表示部18の表示面1802と平行する仮想平面Pとなす角度をアンテナ角θとする。本実施の形態では、アンテナ支持部16は、アンテナ角θが±90度の範囲で変化するようにアンテナ14を支持している。言い換えると、アンテナ角θは180度の範囲で変化する。なお、アンテナ角θの調整範囲は180度に限定されるものではなく、調整範囲をどのように設定するかは任意である。
ここで、図4に示すように仮想軸Lが筐体12の上方を向いた状態でアンテナ角θ=+90度であり、図5に示すように仮想軸Lが筐体12の前方を向いた状態でアンテナ角θ=0度であり、図3に示すように仮想軸Lが筐体12の後方を向いた状態でアンテナ角θ=−90度であり、したがって、アンテナ角θの調整範囲は±90度となる。
なお、本実施の形態では、アンテナ支持部16がアンテナ14を単一の支軸16C回りに回転可能に支持する場合について説明したが、アンテナ支持部16は仮想軸Lの傾きが変化可能となるようにアンテナ14を支持できればよく、アンテナ支持部16として従来公知の様々な機構が使用可能である。
たとえば、支軸16Cと直交する平面上を延在する別の支軸をさらに設けることにより、アンテナ支持部16がアンテナ14を2つの支軸回りに回転可能に支持する構成としてもよい。この場合は、アンテナ14の仮想軸Lの傾きの調整の自由度を確保する上でより有利となる。
【0013】
また、本実施の形態では、アンテナ支持部16は、予め定められた複数のアンテナ角θ、たとえば、+90度、0度、−90度の3つの角度でアンテナ14を保持するクリック機構を備えている。これにより、予め定められた複数のアンテナ角θへの設定操作の容易化が図られている。
さらに、本実施の形態では、図4図5に示すように、アンテナ支持部16に、アンテナが予め定められた複数のアンテナ角θのいずれに位置しているかを示す角度表示部16Dが設けられている。これにより、アンテナ角θの確認の容易化が図られている。
角度表示部16Dは、一方の柱部1604に設けられた窓部と、ケース16Bの箇所に設けられた指標とで構成されている。
指標は、アンテナ角θの+90度、0度、−90度に対応したケース16Bの箇所にA、B、Cといった記号あるいは数字あるいは目盛線などで形成されている。
アンテナ14のアンテナ角θが+90度、0度、−90度のそれぞれに切り換えられると、ケース16Bの箇所に形成されたA、B、Cの指標が前記の窓部を介して選択的に露出されることでアンテナ14が複数のアンテナ角θのいずれに位置しているかが示されることになる。
なお、このような角度表示部16Dとして従来公知の様々な表示機構が使用可能である。
【0014】
表示部18は、矩形状の平坦な表示面1802を上方に向けて筐体12の上面1202に設けられ、上面1202の大半は表示面1802で占有されている。
本実施の形態では、表示面1802は筐体12の前後方向に沿った長さが筐体12の左右方向に沿った幅よりも短い長方形を呈している。
表示部18は、計測結果である移動体の移動速度および回転数を含む様々な表示内容を数字、記号、アイコンなどの形態で表示面1802に表示させる。
このような表示部18として液晶パネルなどのフラットパネルディスプレイを用いることができる。
【0015】
入力部20は、上面1202の後面1206寄りの箇所に設けられている。
本実施の形態では、入力部20は、モード選択ボタン、電源ボタンを含む複数の操作ボタンを含んで構成されている。なお、上述した表示部18をタッチパネル式ディスプレイにして、入力部20を表示部18で兼ねるようにしてもよい。
電源ボタンは、電源のオン、オフをおこなうためのものである。
【0016】
モード選択ボタンは、回転数計測装置10の計測モードを選択するためのボタンである。本実施の形態では、回転数計測装置10の計測モードとして、ゴルフモード、バットモード、ボールモードのいずれかを選択可能とする。ゴルフモードは、ゴルフクラブによるゴルフボールの打球速度を計測するモードである。バットモードは、野球バットによる野球ボール6の打球速度を計測するモードである。ボールモードは、投手による野球ボール6の投球速度を計測するモードである。
【0017】
図6は、計測モードの選択画面の一例を示す説明図である。図6には、回転数計測装置10の表示面1802上に、計測モードとして、ゴルフモード選択部1810、バットモード選択部1812、ボールモード選択部1814が表示されている。図6では、ボールモード選択部1814が選択されており、他の選択部とは異なる色で表示される。ユーザは、いずれかの選択部を選択して決定操作をおこなうことによって、計測モードを設定することができる。
なお、このような計測モード選択画面として従来公知の様々な表示形態が使用可能である。また、計測モードの選択にあたっては、必ずしも表示を伴わなくてもよく、従来公知の様々な選択形態が使用可能である。
【0018】
このようなモード選択をおこなうことによって、後述する球体の回転数を算出する際に必要となる球体の径情報が入力される。すなわち、移動体である球体は球技用ボールであり、入力部20には、球技用ボールの種類が入力される。後述する演算部30では球技用ボールの種類別の径(直径または半径)を記録したデータベースを備えているため、球技用ボールの種類が特定されれば、球体の径を特定することができる。
また、このようにモード選択をおこなうのではなく、入力部20に対して、移動体である球体の径の値を直接入力するようにしてもよい。
以下の説明では、計測モードをボールモードに選択し、移動体として使用者が投げた野球ボール6の移動速度および回転数を計測する場合について説明する。
【0019】
なお、回転数計測装置10を使用する際の筐体12の姿勢は特に限定されるものではないが、通常は、(1)筐体12の上面1202(表示面1802)を上方に向けた姿勢、(2)筐体12の前面1204を上方に向け上面1202(表示面1802)を側方に向けた姿勢のいずれかとし、アンテナ14の仮想軸Lが移動体の移動方向に合致するようにアンテナ角θを調整する。
【0020】
また、回転数計測装置10は、図示しない電力蓄電用のバッテリーを備え、バッテリーに蓄電された電力を用いて駆動するようにしてもよい。これにより、回転数計測装置10を使用者の近傍に設置可能となり、かつ投球等の邪魔になりにくくすることができる。
【0021】
つぎに図7を参照して回転数計測装置10の制御系の構成について説明する。図7は、回転数計測装置10の構成を示すブロック図である。
なお、図7において符号6は球体の移動体としての野球ボールを示し、符号Mは野球ボール6を投球する使用者を示す。
回転数計測装置10は、前記のアンテナ14、表示部18、入力部20に加えて、ドップラーセンサ22、計測処理部24などを含んで構成されている。
【0022】
ドップラーセンサ22は、アンテナ14と不図示のケーブルによって接続され、該ケーブルを介してアンテナ14に送信信号を供給するとともに、アンテナ14から供給される受信信号を受け付けてドップラー信号Sdを検出するものである。
ドップラー信号とは、送信信号の周波数F1と受信信号の周波数F2との差分の周波数F1−F2で定義されるドップラー周波数Fdを有する信号である。
ドップラーセンサ22は、市販されている種々のものが使用可能である。
なお、前記の送信信号としては、たとえば、24GHzあるいは10GHzのマイクロ波が使用可能であり、ドップラー信号Sdを得られるものであれば送信信号の周波数は限定されない。これにより、回転数計測装置10の汎用性を高めることができる。
また、送信波の出力はたとえば10mW以下とする。これは、回転数計測装置10をバッテリー駆動とした場合、使用可能時間を長くするため、消費電力はなるべく低く抑えることが望ましいためである。回転数計測装置10において、アンテナ14からの送信波の送信に消費される電力は極めて大きい。このように、送信波の出力をたとえば10mW以下とすることによって、消費電力を低減し、バッテリーで駆動する回転数計測装置10の使用可能時間を長くすることができる。
【0023】
ここで、ドップラーセンサ22を用いた移動体の移動速度検出の原理について説明する。
従来から知られているように、ドップラー周波数Fdは式(1)で表される。
Fd=F1−F2=2・V・F1/c (1)
ただし、V:移動体の移動速度、c:光速(3・10m/s)
したがって、(1)式をVについて解くと、(2)式となる。
V=c・Fd/(2・F1) (2)
すなわち、移動体の移動速度Vは、ドップラー周波数Fdに比例することになる。
したがって、ドップラー信号Sdからドップラー周波数Fdを検出し該ドップラー周波数Fdから移動速度Vを求めることができる。
【0024】
つぎに、移動体の回転数の計測について具体的に説明する。
図8は、移動体(野球ボール6)の回転数を検出する原理の説明図である。
移動体の表面のうち、送信波W1の送信方向となす角度が90度に近い(略90°)表面の部分である第1部分Aでは送信波W1が効率よく反射され、したがって、第1部分Aでは反射波W2の強度が高い。
一方、移動体の表面のうち、送信波W1の送信方向となす角度が0度(略0°)に近い表面の部分である第2部分B、第3部分Cでは送信波W1が効率よく反射されず、したがって、第2、第3部分B、Cでは反射波W2の強度が低い。
第2部分Bは、移動体の回転によって移動する方向と移動体の移動方向とが反対向きとなる部分である。
第3部分Cは、移動体の回転によって移動する方向と移動体の移動方向とが同じ向きとなる部分である。
【0025】
第1部分Aで反射される反射波W2に基づいて検出される速度を第1速度VA、第2部分Bで反射される反射波W2に基づいて検出される速度を第2速度VB、第3部分Cで反射される反射波W2に基づいて検出される速度を第3速度VCとする。
すると、以下の式が成立する。
VA=V (4)
VB=VA−ωr (5)
VC=VA+ωr (6)
(ただし、Vは移動体の移動速度、ωは角速度(rad/s)、rは移動体の半径)
したがって、第1、第2、第3速度V1、V2、V3を計測できれば、式(4)に基づいて第1速度VAから移動体の移動速度Vが求められることができる。また、(5)式または(6)式に基づいて、第2、第3速度V2、V3から角速度ωが求められるので、角速度ωから回転数を算出することができる。なお、上記式(5),(6)に示すように、回転数の算出には移動体の半径の値を用いるため、入力部20から、球体の径情報を入力する。
すなわち、後述する速度・回転数算出部30Bは、移動体である球体の表面のうち、送信波W1の送信方向となす角度が略90°である第1部分Aと、送信波W1の送信方向となす角度が略0°かつ球体の回転方向が球体の移動方向と反対向きとなる第2部分Bと、送信波W1の送信方向となす角度が略0°かつ球体の回転方向が球体の移動方向と同じ向きとなる第3部分Cと、からの反射波を用いてそれぞれ速度を算出し、第1部分Aからの反射波W2を用いて算出した第1の速度VAは球体の移動速度Vを示し、第2部分Bからの反射波W2を用いて算出した第2の速度VBは第1の移動速度VAから球体の角速度ωと球体の半径rとの積を差し引いた値を示し、第3部分Cからの反射波W2を用いて算出した第3の速度VCは第1の移動速度VAに球体の角速度ωと球体の半径rとの積を加えた値を示すものとし、第1の速度VA、第2の速度VBおよび第3の速度VCから球体の角速度ωを算出することによって球体の回転数を算出する。
【0026】
つぎに、第1、第2、第3速度V1、V2、V3の計測について説明する。
図9は、専用の装置によって打ち出された移動体を回転数計測装置10で計測した場合におけるドップラー信号Sdをウェーブレット解析した結果を示す図である。
横軸は時間t(ms)、縦軸はドップラー周波数Fd(kHz)および移動体の移動速度V(m/s)を示す。また、横軸における時刻t0は、移動体が打ち出された時刻を示す。
このような線図は、たとえば、ドップラー信号Sdをサンプリングしてデジタルオシロスコープに取り込んでデジタルデータに変換し、該デジタルデータをパーソナルコンピュータなどを用いてウェーブレット解析、あるいは、FFT解析することで得られる。
【0027】
図9に示す周波数分布において、ハッチングで示した部分はドップラー信号Sdの強度が大きく、実線で示した部分はドップラー信号Sdの強度がハッチングで示した部分よりも小さいことを示している。
したがって、符号DAで示す周波数分布は、信号強度が強く、第1速度VAに対応する部分である。
符号DBで示す周波数分布は、周波数分布DAよりも信号強度が低く、第2速度VBに対応する部分である。
符号DCで示す周波数分布は、周波数分布DAよりも信号強度が低く、第3速度VCに対応する部分である。
したがって、ドップラー信号Sdの強度を周波数について解析することにより、周波数分布DA、DB、DCを特定し、それぞれの周波数分布DA、DB、DCから前記の式(4)、(5)、(6)の原理を用いることによって、第1、第2、第3速度VA、VB、VCを時系列データとして得ることができるのである。
すなわち、後述する速度・回転数算出部30Bは、ドップラー信号Sdの信号強度分布データのうち、信号強度が相対的に高い成分を第1部分Aからの反射波成分、信号強度が相対的に低い成分のうち第1部分Aからの反射波成分よりも周波数が低い成分を第2部分Bからの反射波成分、信号強度が相対的に低い成分のうち第1部分Aからの反射波成分よりも周波数が高い成分を第3部分Cからの反射波成分として球体の回転数を算出する。
このような処理は、従来公知の様々な信号処理回路を用いることによって、あるいは、信号処理プログラムに基づいて動作するマイクロプロセッサを用いることによって実現可能である。
【0028】
ここで、図9における移動体の移動速度変化(打ち出し直後における速度の立ち上がり)について説明する。図9において、移動体の打ち出し直後(時刻t0近傍)では、移動体の移動速度が時刻とともに増加し、最終的に一定の移動速度になっている。これは、アンテナ14から送信される送信波と移動体の位置との間の角度に起因する誤差によるものである。
より詳細には、上記式(2)によって算出される移動体の移動速度は、アンテナ14の指向性を示す仮想軸Lと一致する方向の移動速度成分である。したがって、移動体の移動軌跡がアンテナ14の指向性を示す仮想軸Lに対して外れるほど式(2)によって得られる移動体の移動速度の誤差が増大する傾向となる。
【0029】
図10は、アンテナ14から送信される送信波の波面と移動体の移動方向との位置関係を示す説明図である。
図10(a)に示すように、アンテナ14の指向性を示す仮想軸Lに対して角度θをもって移動する移動体の移動速度は、実際の移動速度よりもcosθ遅く計測される。
ここで、図10(a)に示すように、移動体がアンテナ14から十分遠方に位置する場合には、送信波は一般的には平面波(より詳細には、仮想軸Lに対して垂直な波面Wを有する平面波)となる。すなわち、アンテナ14から送信された送信波の波面Wの法線方向は、仮想軸Lと常時一致する。このため、一定方向に移動する移動体の移動方向と波面Wの法線方向との角度θは常時一定である(図10(a)においては、θ1=θ2となる)。これにより、移動体の移動速度の誤差(遅れ)は、常時一定である。
【0030】
一方、図10(b)に示すように、移動体がアンテナ14の近傍に位置する場合には、送信波は球面波(より詳細には、アンテナ14の位置を中心とする球面波)となる。すなわち、アンテナ14から送信された送信波の波面Wの法線方向は、位置によって変化する。このため、一定方向に移動する移動体の移動方向と波面Wの法線方向との角度θは位置によって異なる(図10(b)においては、θ3≠θ4となる)これにより、移動体の移動速度は、移動体の位置によって異なる誤差(遅れ)を持って計測される。
【0031】
図10(a)のように、移動体とアンテナ14とが十分遠方にあり、角度誤差が十分に無視できる場合や、移動体とアンテナ14と位置関係が固定している場合には、計測時間内の移動速度の平均値をとることなどで容易に計測することが可能である。一方、図10(a)のように、移動体がアンテナ14の近傍を通過するような構成の場合、角度誤差による周波数の時間変化が無視できない。
【0032】
このような角度誤差に基づく速度の計測誤差を回避するためには、たとえば移動体の移動開始時刻(図9におけるt0)から十分な時間が経過してから(図10(b)のような位置関係になってから)計測をおこなう方法がある。しかし、一方で、図9に示すように、第2速度VBに対応する周波数分布DBおよび第3速度VCに対応する周波数分布DCは、時間の経過、すなわち、移動体とアンテナ14との距離が離れるとともに減少してしまうため、回転数の計測をおこなうことができないという問題がある。
また、使用者が自らの投球の速度および回転数を計測する場合などは、使用者自身が回転数計測装置10の操作をおこなう必要があり、移動体の移動開始地点(使用者の位置)とアンテナ14の設置位置(回転数計測装置10の設置位置)とを大きくすることができない。
【0033】
このような問題を解決する手段として、回転数計測装置10では、移動体が移動を開始してから所定時間継続してドップラー信号の計測をおこなう。すなわち、アンテナ14は、所定の計測時間中継続して送信波の送信および反射波の受信をおこない、ドップラーセンサ22は、所定の計測時間中継続して送信信号の供給およびドップラー信号の生成をおこなう。
そして、得られた所定時間分のドップラー信号のうち、周波数のピーク値を用いて移動体の移動速度を、振幅の最大値を用いて移動体の回転数を算出する。すなわち、後述する演算部30(図7参照)は、所定の計測時間中に継続して得られるドップラー信号のうち、ピーク値の最大値を用いて移動速度を算出するとともに、幅の最大値を用いて前記回転数を算出する。
これにより、移動体がアンテナ14の近傍を通過し、通常の計測方法では角度誤差が生じる可能性があるような場合でも、移動体の移動速度および回転数を安定して計測することができる。
【0034】
図7に戻って説明を続ける。
計測処理部24は、ドップラーセンサ22から供給されるドップラー信号Sdを入力して演算処理をおこなうことにより、移動体(本実施の形態では野球ボール6)の移動速度および回転数を算出するものである。
本実施の形態では、計測処理部24は、マイクロコンピュータ26によって構成されている。
マイクロコンピュータ26は、CPU26Aと、不図示のインターフェース回路およびバスラインを介して接続されたROM26B、RAM26C、インターフェース26D、表示用ドライバ26Eなどを含んで構成されている。
ROM26BはCPU26Aが実行する移動体の移動速度および回転数を算出するための制御プログラムなどを格納し、RAM26Cはワーキングエリアを提供するものである。
インターフェース26Dは、ドップラー信号Sdを入力してCPU26Aに供給し、また、入力部20からの操作信号を受け付けてCPU26Aに供給するものである。
表示用ドライバ26EはCPU26Aの制御に基づいて表示部18を駆動するものである。
【0035】
図11は、マイクロコンピュータ26の構成を機能ブロックで示した回転数計測装置10のブロック図である。
マイクロコンピュータ26は、機能的には、蓄積部28と、演算部30と、制御部32とを含んで構成されている。
また、蓄積部28と、演算部30と、制御部32とは、CPU26Aが前記制御プログラムを実行することで実現されるものであるが、これらの部分は、回路等のハードウェアで構成されたものであってもよい。
【0036】
蓄積部28は、ドップラー信号Sdを予め定められたサンプリング周期で時間経過に従って順番に蓄積するものである。
蓄積部28は、ドップラー信号Sdを予め定められたサンプリング周期で時間経過に従って順番に蓄積するものである。本実施の形態では、CPU21Aがドップラー信号Sdを前記サンプリング周期でサンプリングしてRAM21Cにドップラー信号Sdのサンプリングデータとして格納する。
蓄積部28は、たとえば、回転数計測装置10の電源が投入されると同時にサンプリング動作を開始する。
図12は、野球ボール6を投球した際のドップラー信号Sdの一例を示す線図であり、横軸に時間t(sec)、縦軸に振幅(任意単位)をとっている。
図12において、初めの大きな振幅を呈する波形部分が使用者の動きによって生じるドップラー信号の部分を示し、その後に続く波形部分が投球された野球ボール6によって生じるドップラー信号の部分を示している。
【0037】
図11の説明に戻り、演算部30は、ドップラー信号および移動体の径情報に基づいて、移動体の移動速度および回転数を算出する。演算部30は、信号強度分布データ生成部30A、速度・回転数算出部30Bによって構成される。
【0038】
信号強度分布データ生成部30Aは、蓄積部28に蓄積されたドップラー信号Sdのサンプリングデータを周波数解析(連続FFT解析、あるいは、ウェーブレット解析)することによって信号強度分布データを生成するものである。
言い換えると、信号強度分布データ生成部30Aは、ドップラーセンサ22から得られたドップラー信号Sdを周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データを生成する。
本実施の形態では、信号強度分布データ生成部30Aは、蓄積部28に蓄積された時系列データであるドップラー信号Sdのサンプリングデータを予め定められた区間に特定して信号強度分布データの生成を実施する。すなわち、信号強度分布データ生成部30Aは、所定の計測時間中の各時刻(サンプリング間隔周期)におけるドップラー信号を信号強度分布データに変換する。ドップラー信号Sdのサンプリングデータの区間は予め定められた計測時間に基づいて特定される。
言い換えると、信号強度分布データ生成部30Aは、垂れ流し方式で蓄積されているドップラー信号Sdのサンプリングデータのうち、野球ボール2が投球された後の一定の区間におけるサンプリングデータを特定して信号強度分布データの生成を実施する。
【0039】
図13は、信号強度分布データ生成部30Aによって生成された信号強度分布データPの一例を示す線図であり、(a)は時刻t1、(b)は時刻t2、(c)は時刻t3、(d)は時刻t4(t1<t2<t3<t4)における信号強度分布データである。図13では、横軸に周波数f(Hz)、縦軸に信号強度(任意単位)をとっている。
【0040】
また、図14は、時刻t1〜t4における移動体の位置を模式的に示す説明図である。図14において、地点S0は移動体の移動開始点であり、波面Wは回転数計測装置10のアンテナ14から送信される送信波の波面を示している。移動開始点Sから移動を開始した移動体(野球ボール6)は、時刻t1に回転数計測装置10の近傍の地点S1を、時刻t2に地点S2を、時刻t3に地点S3をそれぞれ通過し、時刻t4には波面Wがほぼ平面波となる地点S4まで移動している。
【0041】
図13(a)は、図14に示すように、回転数計測装置10の近傍を通過している時刻t1における信号強度分布データPである。このため、図13に示す4つのグラフのうち、信号強度STの値が最も大きく、信号強度分布の幅SWも最も広くなっている。
また、図13(b)〜(d)に示すように、時刻の経過(すなわち、移動体と回転数計測装置10との距離の増加)に伴って、信号強度STの値は小さく、信号強度分布の幅SWも狭くなっている。
【0042】
一方で、信号強度分布のピーク値に対応する周波数(ピーク周波数)PKは、時刻の経過(すなわち、移動体と回転数計測装置10との距離の増加)に伴って大きくなっている。
これは、図10に示したように、移動体が回転数計測装置10の近傍にあるとき(たとえば時刻t1、図14(a))は、角度誤差に基づく速度の計測誤差が生じて移動速度が実際に遅く計測されているからである。一方で、移動体の位置が角度誤差を無視できるほど遠方まで達した時刻(たとえば時刻t4、図14(d))では、移動体と回転数計測装置10との距離が増加したため、信号強度は低くなったものの、角度誤差が解消されたため、周波数の値は真の移動速度を示す値に近づいている。
【0043】
図11の説明に戻り、速度・回転数算出部30Bは、信号強度分布データPに基づいて、移動体の移動速度および回転数を算出する。より詳細には、速度・回転数算出部30Bは、ドップラー周波数のピーク値PKを用いて移動速度を算出するとともに、ピーク値を中心とした所定の周波数帯の幅SWを用いて(より詳細には、幅SWが最大値を取る時刻におけるドップラー信号Sdの信号強度分布データを用いて)移動体の回転数を算出する。ピーク値を中心とした所定の周波数帯とは、ドップラー周波数の高周波側および低周波側において、ピーク値から所定レベル低い信号強度をとる点間の幅、すなわち、ドップラー信号の高周波側において信号強度がピーク値から所定レベル低い値となる点と、ドップラー信号の低周波側において信号強度がピーク値から所定レベル低い値となる点と、の間の幅を指す。
また、速度・回転数算出部30Bは、ドップラー周波数のピーク値を用いて移動速度を算出するとともに、ドップラー信号の高周波側において信号強度がピーク値から所定レベル低い値となる点と、ピーク値を取る点と、の間の幅を用いて回転数を算出するようにしてもよい。これは、低周波側では高周波側と比較して、移動体以外の障害物(たとえば、野球ボール6の投球をおこなう投手の身体など)に起因するノイズ成分が含まれている可能性が高いためである。
【0044】
本実施の形態では、速度・回転数算出部30Bは、所定の計測時間中に継続して得られるドップラー信号のうち(たとえば、図13(a)〜(d))、ピーク値PKの最大値を用いて移動速度を算出するとともに、周波数帯の幅SWの最大値を用いて回転数を算出する。図13を例とすれば、図13(d)におけるピーク値(ピーク周波数)PKを用いて移動速度を、図13(a)における周波数幅SWを用いて回転数を、それぞれ算出する。具体的な算出式は、上記式(1)〜(6)の通りである。
【0045】
なお、速度・回転数算出部30Bにおいて、予め球体の径情報ごと(たとえば球技用ボールの種類ごと)にキャリブレーションをおこない、ピーク周波数PKと移動速度に関する相関式および周波数幅SWと回転数に関する相関式を生成しておき、入力部20に入力された径情報に基づいて相関式を選択して移動速度および回転数を算出するようにしてもよい。これは、実際の計測時には計測誤差の原因となる各種のノイズが生じるためであり、相関式を用いることによって、計測データから真の値により近い移動速度および回転数を算出することができる。
【0046】
制御部32は、入力部20の操作を受け付けて、ゴルフモード、バットモード、ボールモードのいずれかの計測モードを設定するものである。
また、制御部32は、算出された移動体の移動速度および回転数を表示部18に表示させる。
【0047】
つぎに、回転数計測装置10の動作について説明する。以下では、移動体が野球ボール6であり、回転数計測装置10によって使用者Mの手Hで投球された野球ボール6の移動速度および回転数を計測する場合について説明する。
図15は、野球ボール6を移動体として計測する場合の回転数計測装置10の設置状態を説明する平面図である。また、図16、は野球ボール6を移動体として計測する場合の回転数計測装置10の動作を示すフローチャートである。
【0048】
図16に示すように、まず、回転数計測装置10は、表示面1802にモード選択画面を表示し(ステップS10)、計測モードが選択されるまで待機する(ステップS12:Noのループ)。使用者Mは、モード選択ボタンを操作して、回転数計測装置10の計測モードを選択する。本実施の形態では、使用者Mは、ゴルフモード、バットモード、ボールモードのうち、ボールモードを選択する。なお、モード選択画面に代えて、移動体である球体の径(直径や半径など)を入力させる画面を表示してもよい。
計測モードが選択されると(ステップS12:Yes)、回転数計測装置10は、選択されたモードで移動体となる球技用ボールの径情報を特定する(ステップS14)。
【0049】
つぎに、使用者Mは、図17に示すように、野球ボール6の投球方向(ホームベースとピッチャーとを結ぶ直線に沿った方向)において、使用者Mの立ち位置からたとえば1.5m〜2.0m程度前方の箇所に回転数計測装置10を設置する。
すなわち、回転数計測装置10の上面1202(表示面1802)を投球方向と反対方向に向けるとともに、前面1204を上方に向け、後面1206を地面に向ける。そして、アンテナ14のアンテナ角θを調整し仮想軸Lを投球方向と合致させる。
この場合、アンテナ角θはたとえば−90度となる。
回転数計測装置10は、地面の上に載置してもよいし、あるいは、三脚などの固定具を介して設置してもよい。
これにより、アンテナ14から送出された送信波W1が野球ボール6に当たり、反射波W2がアンテナ14に受信可能な状態となる。
また、使用者Mが表示面1802を容易に視認できる状態となる。
なお、移動体としてゴルフボールなど他の球技用ボールの移動速度および回転数を計測する場合にも、移動体の移動開始位置からからたとえば1.5m〜2.0m程度前方の箇所に回転数計測装置10を設置する。
【0050】
つぎに、使用者Mが手Hによって野球ボール6を投球すると、回転数計測装置10による計測動作が実行される。
具体的には、送信波W1が野球ボール6に反射され、反射波W2がドップラーセンサ22で受信され、ドップラーセンサ22でドップラー信号Sdが生成される(ステップS16)。
ドップラー信号Sdは、蓄積部28によりサンプリング周期でサンプリングされて時系列データとして蓄積部28に蓄積される(ステップS18)。
【0051】
所定の計測時間が経過するまでは(ステップS20:Noのループ)、ステップS16に戻り、ドップラー信号Sdの生成および蓄積が継続される。所定の計測時間が経過すると(ステップS20:Yes)、信号強度分布データ生成部30Aは、計測時間内の各サンプリング時刻における信号強度分布データPを生成する(ステップS22)。
【0052】
つぎに、速度・回転数算出部30Bは、ステップS22で生成された信号強度分布データPのうち、ピーク周波数PKの値が最大の時刻を特定する(ステップS24)。そして、速度・回転数算出部30Bは、特定した時刻におけるピーク周波数PKを用いて野球ボール6の移動速度を算出する(ステップS26)。
【0053】
また、速度・回転数算出部30Bは、ステップS18で生成された信号強度分布データPのうち、周波数帯の幅SWが最大の時刻を特定する(ステップS28)。そして、速度・回転数算出部30Bは、特定した時刻における周波数帯の幅SWを用いて野球ボール6の回転数を算出する(ステップS30)。このとき、回転数の算出には、ステップS14で特定された径情報が用いられる。
【0054】
そして、制御部32は、ステップS26で算出された移動速度およびステップS30で算出された回転数を含む情報を計測データとして表示面1802に表示させて(ステップS32)、計測動作を終了する。
なお、計測データどのような表示形態で表示させるかは任意である。具体的には、たとえば表示形態を選択する表示モードを設定するための操作を入力部20に対しておこなうことで、制御部32がその操作を受け付け、移動速度および回転数の双方あるいは一方を表示させるようにすれば良い。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態の回転数計測装置10によれば、ドップラー信号Sdを用いることにより、比較的低い周波数領域で移動体の回転数および移動速度を計測することができるので、簡易な構成で移動体の回転数および移動速度を計測することができる。
また、回転数計測装置10は、所定の計測時間中に継続して得られるドップラー信号Sdのうち、ピーク周波数の最大値を用いて移動速度を算出するとともに、周波数幅SWの最大値を用いて回転数を算出する。これにより、回転数計測装置10の近傍を移動体が移動する場合であっても、角度誤差の影響を受けづらくして、測定精度を向上させることができる。
また、回転数計測装置10は、入力部20を介して移動体である球体の径情報を入力させるので、移動体の回転数の算出に不可欠な径情報を容易に取得することができる。たとえば入力部20から球技用ボールの種類を入力するようにすれば、使用者が球体の径情報を直接知らなくても回転数の計測をおこなうことができる。また、たとえば入力部20から球体の径の値を入力するようにすれば、計測に特殊なサイズの球体を用いるような場合にも対応することができる。
また、回転数計測装置10において、予め球体の径情報ごとに相関式を生成しておき、直径情報に基づいて相関式を選択して移動速度および回転数を算出するようにすれば、計測時に生じる各種のノイズの影響を低減することができ、移動速度および回転数の算出精度を向上させることができる。
また、回転数計測装置10において、記送信波の周波数帯域を24GHzあるいは10GHzとすれば、回転数計測装置10の汎用性を高めることができる。
また、回転数計測装置10において、送信波の出力を10mW以下とすれば、回転数計測装置10における消費電力を低減させることができ、回転数計測装置10がバッテリーで駆動される場合にも実用性を向上させることができる。
また、回転数計測装置10において、アンテナ14と前記ドップラーセンサ22とが一体的に設けられた一体型モジュールを構成するようにすれば、回転数計測装置10をさらに小型化することができ、可搬性を向上させることができる。また、回転数計測装置10の設置面積が減少させることができるため、使用者等の近くに設置しても邪魔になりにくくすることができる。
また、回転数計測装置10において、バッテリーに蓄電された電力を用いて駆動するようにすれば、計測場所を選ばずに計測をおこなうことができ、回転数計測装置10の利便性を向上させることができる。
【0056】
また、本実施の形態では、アンテナ支持部16によるアンテナ14の支持が、仮想軸Lが表示部18の平坦な表示面1802と平行する仮想平面Pとなすアンテナ角θが±90度の範囲で変化するようになされる。
したがって、表示面1802の向きとアンテナ14の仮想軸Lの向きを同一の向きから反対の向きの間まで調整することができるため、表示部18の視認性および移動体の移動速度の測定精度の双方を確保する上でより有利となる。
【0057】
また、本実施の形態では、ボールモードの場合に、野球用のボールを例にとって説明したが、計測の対象となる移動体は、ゴルフボールやサッカーボール、バレーボール、テニスボール、ハンドボール、あるいは、投てき競技における砲丸など任意である。
【符号の説明】
【0058】
6……野球ボール、10……回転数計測装置、12……筐体、14……アンテナ、16……アンテナ支持部、18……表示部、20……入力部、22……ドップラーセンサ、24……計測処理部、26……マイクロコンピュータ、28……蓄積部、30……演算部、30A……信号強度分布データ生成部、30B……速度・回転数算出部、32……制御部、Fd……ドップラー周波数、L……仮想軸、M……使用者、PK……ピーク周波数(ピーク値)、SW……周波数幅、Sd……ドップラー信号、V……移動速度、W1……送信波、W2……反射波。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16