特許第6048135号(P6048135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6048135-シュウ酸ジアルキルの製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048135
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】シュウ酸ジアルキルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/36 20060101AFI20161212BHJP
   C07C 67/54 20060101ALI20161212BHJP
   C07C 69/36 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   C07C67/36
   C07C67/54
   C07C69/36
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-287703(P2012-287703)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-129283(P2014-129283A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135873
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 圭子
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀二
(72)【発明者】
【氏名】井伊 宏文
【審査官】 中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−042656(JP,A)
【文献】 特開平04−270249(JP,A)
【文献】 特開平09−020727(JP,A)
【文献】 特開2004−107336(JP,A)
【文献】 特開平08−301818(JP,A)
【文献】 特開平06−025104(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1149047(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化炭素と亜硝酸アルキルを触媒の存在下で反応させて反応生成物を得る第1工程;
反応生成物をアルコールと接触させ、シュウ酸ジアルキルを含む凝縮液と、一酸化窒素を含有する非凝縮ガスとを得る第2工程;
凝縮液を蒸留して炭酸ジアルキル含有アルコールを留出させ、シュウ酸ジアルキルを得る第3工程;
第3工程で留出させた炭酸ジアルキル含有アルコールに0.1〜2.0倍重量のシュウ酸ジアルキルを添加して、アルコールを留出させ、シュウ酸ジアルキル及び炭酸ジアルキルの混合物を得る第4工程;及び
第4工程で得られた混合物を1塔の蒸留塔を用いて蒸留し、シュウ酸ジアルキルを得る第5工程
を含む、シュウ酸ジアルキルの製造方法。
【請求項2】
第2工程で得られた非凝縮ガスを、分子状酸素含有ガス及びアルコールと接触させ、得られた亜硝酸アルキル含有ガスを第1工程に循環する第6工程
をさらに含む連続製造方法である、請求項1記載のシュウ酸ジアルキルの製造方法。
【請求項3】
第3工程で留出させたアルコールを、第1工程及び/又は第6工程に再利用する請求項1又は2に記載のシュウ酸ジアルキルの製造方法。
【請求項4】
一酸化炭素と亜硝酸アルキルを触媒の存在下で反応させて反応生成物を得る第1’工程;
反応生成物をアルコールと接触させ、シュウ酸ジアルキルを含む凝縮液と、一酸化窒素を含有する非凝縮ガスとを得る第2’工程;
第2’工程で得られた凝縮液を蒸留塔の中段に導き、シュウ酸ジアルキルを蒸留塔の上部に導入し、蒸留塔内部を流下させながら、凝縮液を蒸留してアルコールを留出させ、シュウ酸ジアルキル及び炭酸ジアルキルの混合物を得る第3’工程;及び
第3’工程で得られた混合物を1塔の蒸留塔を用いて蒸留し、シュウ酸ジアルキルを得る第4’工程
を含む、シュウ酸ジアルキルの製造方法。
【請求項5】
第2’工程で得られた非凝縮ガスを、分子状酸素含有ガス及びアルコールと接触させ、得られた亜硝酸アルキル含有ガスを第1’工程に循環する第5’工程
をさらに含む連続製造方法である、請求項4記載のシュウ酸ジアルキルの製造方法。
【請求項6】
第3’工程で留出させたアルコールを、第1’工程及び/又は第5’工程に再利用する請求項4又は5に記載のシュウ酸ジアルキルの製造方法。
【請求項7】
亜硝酸アルキルが亜硝酸メチルであり、シュウ酸ジアルキルがシュウ酸ジメチルであり、炭酸ジアルキルが炭酸ジメチルであり、アルコールがメタノールである、請求項1〜6のいずれか1項記載のシュウ酸ジアルキルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シュウ酸ジアルキルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一酸化炭素と亜硝酸アルキルを触媒の存在下で反応させ、炭酸ジアルキル及び/又はシュウ酸ジアルキルを製造する方法は知られている。これらの方法の目的物は、化学品の合成原料として有用であり、工業的に適用し、工業的規模で目的物の製造を行うため、プロセスの改良が常に求められている。中でも、シュウ酸ジアルキルの製造方法において、目的物を効率よく分離して得られる方法に対するニーズは高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-238522号公報
【特許文献2】特開2006-169211号公報
【特許文献3】特開2006-089417号公報
【特許文献4】特開2004-323470号公報
【特許文献5】特開2004-323371号公報
【特許文献6】特開2004-107336号公報
【特許文献7】特開2004-091484号公報
【特許文献8】特開平11-279125号公報
【特許文献9】特開平11-279116号公報
【特許文献10】特開平11-140028号公報
【特許文献11】特開平10-330324号公報
【特許文献12】特開平10-330323号公報
【特許文献13】特開平10-287626号公報
【特許文献14】特開平10-156180号公報
【特許文献15】特開平10-045676号公報
【特許文献16】特開平09-020727号公報
【特許文献17】特開平09-012512号公報
【特許文献18】特開平08-301818号公報
【特許文献19】特開平08-253443号公報
【特許文献20】特開平08-253442号公報
【特許文献21】特開平08-020561号公報
【特許文献22】特開平07-238062号公報
【特許文献23】特開平07-206779号公報
【特許文献24】特開平07-206778号公報
【特許文献25】特開平07-196581号公報
【特許文献26】特開平07-145108号公報
【特許文献27】特開平07-126220号公報
【特許文献28】特開平07-118210号公報
【特許文献29】特開平07-041457号公報
【特許文献30】特開平06-329596号公報
【特許文献31】特開平06-306018号公報
【特許文献32】特開平06-239807号公報
【特許文献33】特開平06-192181号公報
【特許文献34】特開平06-116209号公報
【特許文献35】特開平06-092910号公報
【特許文献36】特開平06-072966号公報
【特許文献37】特開平06-025104号公報
【特許文献38】特開平05-339213号公報
【特許文献39】特開平05-043517号公報
【特許文献40】特開平05-025096号公報
【特許文献41】特開平04-297445号公報
【特許文献42】特開平04-297444号公報
【特許文献43】特開平04-297443号公報
【特許文献44】特開平04-290849号公報
【特許文献45】特開平04-290848号公報
【特許文献46】特開平04-270249号公報
【特許文献47】特開平04-139153号公報
【特許文献48】特開平04-139152号公報
【特許文献49】特開平04-089458号公報
【特許文献50】特開平03-141243号公報
【特許文献51】特開平01-216958号公報
【特許文献52】特開昭60-056937号公報
【特許文献53】特開昭59-080630号公報
【特許文献54】特開昭58-126836号公報
【特許文献55】特開昭58-021646号公報
【特許文献56】特開昭57-123142号公報
【特許文献57】特開昭57-123141号公報
【特許文献58】特開昭57-122043号公報
【特許文献59】特開昭57-122042号公報
【特許文献60】特開昭57-042656号公報
【特許文献61】特開昭57-042655号公報
【特許文献62】特開昭57-042654号公報
【特許文献63】特開昭56-164145号公報
【特許文献64】特開昭56-081536号公報
【特許文献65】特開昭55-164655号公報
【特許文献66】特開昭54-106429号公報
【特許文献67】特開昭54-103817号公報
【特許文献68】特開昭54-100312号公報
【特許文献69】特開昭54-084517号公報
【特許文献70】特開昭54-084516号公報
【特許文献71】特開昭54-084515号公報
【特許文献72】特開昭54-084514号公報
【特許文献73】特開昭54-084513号公報
【特許文献74】特開昭54-041813号公報
【特許文献75】特開昭53-015313号公報
【特許文献76】特開昭52-031015号公報
【特許文献77】特開昭52-017415号公報
【特許文献78】特開昭51-105008号公報
【特許文献79】特開昭51-095013号公報
【特許文献80】特開昭51-029428号公報
【特許文献81】特開昭51-006916号公報
【特許文献82】特開昭50-131917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、シュウ酸ジアルキルの製造方法において、目的物を効率よく分離して得る方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明1は、一酸化炭素と亜硝酸アルキルを触媒の存在下で反応させて反応生成物を得る第1工程;
反応生成物をアルコールと接触させ、シュウ酸ジアルキルを含む凝縮液と、一酸化窒素を含有する非凝縮ガスとを得る第2工程;
凝縮液を蒸留して炭酸ジアルキル含有アルコールを留出させ、シュウ酸ジアルキルを得る第3工程;
第3工程で留出させた炭酸ジアルキル含有アルコールにシュウ酸ジアルキルを添加し、アルコールを留出させ、シュウ酸ジアルキル及び炭酸ジアルキルの混合物を得る第4工程;
第4工程で得られた混合物を蒸留し、シュウ酸ジアルキルを得る第5工程
を含む、シュウ酸ジアルキルの製造方法に関する(第一の態様ともいう)。
本発明2は、第2工程で得られた非凝縮ガスを、分子状酸素含有ガス及びアルコールと接触させ、得られた亜硝酸アルキル含有ガスを第1工程に循環する第6工程をさらに含む連続製造方法である、本発明1のシュウ酸ジアルキルの製造方法に関する。
本発明3は、第3工程で留出させたアルコールを、第1工程及び/又は第6工程に再利用する本発明1又は2のシュウ酸ジアルキルの製造方法に関する。
本発明4は、一酸化炭素と亜硝酸アルキルを触媒の存在下で反応させて反応生成物を得る第1’工程;
反応生成物をアルコールと接触させ、シュウ酸ジアルキルを含む凝縮液と、一酸化窒素を含有する非凝縮ガスとを得る第2’工程;
凝縮液を蒸留してアルコールを留出させ、シュウ酸ジアルキル及び炭酸ジアルキルの混合物を得る第3’工程;
第3’工程で得られた混合物を蒸留し、シュウ酸ジアルキルを得る第4’工程
を含む、シュウ酸ジアルキルの製造方法に関する(第二の態様ともいう)。
本発明5は、第2’工程で得られた非凝縮ガスを、分子状酸素含有ガス及びアルコールと接触させ、得られた亜硝酸アルキル含有ガスを第1’工程に循環する第5’工程をさらに含む連続製造方法である、本発明4のシュウ酸ジアルキルの製造方法に関する。
本発明6は、第3’工程で留出させたアルコールを、第1’工程及び/又は第5’工程に再利用する本発明4又は5のシュウ酸ジアルキルの製造方法に関する。
本発明7は、亜硝酸アルキルが亜硝酸メチルであり、シュウ酸ジアルキルがシュウ酸ジメチルであり、炭酸ジアルキルが炭酸ジメチルであり、アルコールがメタノールである、本発明1〜6のいずれかのシュウ酸ジアルキルの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、シュウ酸ジアルキルの製造方法において、目的物を効率よく分離して得ることができる。本発明のシュウ酸ジアルキルは連続製造方法であることもでき、有用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第一の態様の一例を示すフローシートである。
図2】本発明の第二の態様の一例を示すフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明におけるシュウ酸ジアルキルとしては、シュウ酸の炭素原子数1〜4のジアルキルエステルが挙げられ、例えば、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸メチルエチルである。中でも、シュウ酸ジメチルの製造方法の有用性が高い。
【0009】
原料である亜硝酸エステルは、シュウ酸ジアルキルに対応する亜硝酸エステルであって、亜硝酸の炭素原子数1〜4のアルキルエステルが挙げられ、亜硝酸メチル、亜硝酸エチルであり、好ましくは亜硝酸メチルである。炭酸ジアルキルは副生物の位置づけであり、シュウ酸ジアルキルに対応する炭酸ジアルキルであって、炭酸の炭素原子数1〜4のジアルキルエステルが挙げられ、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸メチルエチルである。
【0010】
以下、本発明の第一の態様の各工程を説明する。
(第1工程)
第1工程は、一酸化炭素と亜硝酸アルキルを触媒の存在下で反応させて反応生成物を得る工程である。具体的には触媒を充填した反応器に、一酸化炭素及び亜硝酸アルキルを含有する原料ガスを導入し、気相で接触反応させることができる。反応器としては、単管式又は多管式触媒充填塔が有効である。
【0011】
触媒としては、白金族金属固体触媒が好ましく、パラジウム系、白金系、ロジウム系、ルテニウム系、イリジウム系等の触媒が挙げられ、中でもパラジウム系が好ましい。これら金属の硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ハロゲン化物及び酢酸塩、シュウ酸塩、安息香酸塩等の塩類も使用することができる。白金族金属固体触媒は、例えば、活性炭、アルミナ、シリカ、珪藻土、軽石、ゼオライト、モレキュラーシーブ等の不活性担体に担持させた形態であることができる。この場合、白金族金属の担持量は、白金族金属換算で担体に対して、0.01〜10重量%、好ましくは0.2〜2重量%である。
【0012】
一酸化炭素及び亜硝酸アルキルを含有する原料ガスは、窒素ガス、炭酸ガス等の反応に不活性なガスで希釈して使用することができる。
【0013】
原料ガス中の亜硝酸アルキルの濃度は、広範囲に変えることができるが、満足すべき反応速度を得る点から、その濃度が1容量%以上となるように存在させることが好ましい。亜硝酸アルキルの濃度が高いほど、反応が速やかに進行するが、使用濃度は、反応帯内にシュウ酸ジアルキルの液相が生成しないように選択することが好ましく、例えば、3〜30容量%の範囲とすることができる。亜硝酸アルキルが亜硝酸メチルの場合、亜硝酸メチルが爆発性化合物であることを考慮して、好ましくは3〜25容量%とすることができる。
【0014】
原料ガス中の一酸化炭素の濃度は、広範囲に変えることができ、10〜90容量%の範囲で選ぶことができる。
【0015】
反応温度は、低温でも充分速やかに反応が進行し、また反応温度が低いほど副反応が少ない点から、所望の空時収量が維持される限り、比較的低温で行なうのが有利である。具体的には、50〜200℃とすることができ、好ましくは80〜150℃である。
【0016】
反応圧力は、常圧〜10kg/cm(ゲージ圧)とすることができ、好ましくは常圧〜5kg/cm(ゲージ圧)の圧力であるが、場合によっては常圧よりやや低い圧力であってもよい。
【0017】
反応時間は、10秒以下とすることができ、好ましくは0.2〜5秒である。
【0018】
(第2工程)
第2工程は、第1工程で得られた反応生成物をアルコールと接触させ、シュウ酸ジアルキルを含む凝縮液と、一酸化窒素を含有する非凝縮ガスとを得る工程である。具体的には反応生成物を凝縮器に導き、反応生成物をアルコールに接触させながら、シュウ酸ジアルキルが凝縮する温度以下に冷却し、凝縮液と非凝縮ガスとに分離することができる。
【0019】
凝縮液であるアルコール溶液には、一般に、目的物のシュウ酸ジアルキルの他に、炭酸ジアルキル、ギ酸アルキル等が含まれている。一方、非凝縮ガスには、第1工程の反応で生成した一酸化窒素の他に、未反応の一酸化炭素、亜硝酸アルキル等が含まれている。
【0020】
第2工程では、目的物のシュウ酸ジアルキルの一部が非凝縮ガスに同伴されるといった問題、また、目的物がシュウ酸ジメチルのように、融点が比較的高い場合には、目的物が凝縮器の壁等に固化付着し、ひいてはその閉塞をもたらしうるといった問題を回避するために、反応生成物をアルコールに接触させる。接触させる方法は、特に限定されず、向流接触法、バブリング接触法等が挙げられる。
【0021】
アルコールは、目的物のシュウ酸ジアルキルが溶解しやすいものであれば限定されず、好ましくはシュウ酸ジアルキルのアルキル部分と同じアルキル基を有するアルコールである。すなわち、目的物がシュウ酸ジメチルである場合、好ましくはメタノールである。
【0022】
アルコールの供給量は、特に限定されず、目的物がシュウ酸ジメチルの場合には、被処理物100容量部に対し、メタノールは0.01〜0.1容量部であることが好ましい。例えば、処理物100容量部に対し、メタノールを0.01〜0.1容量部流しながら、0〜60℃の温度で冷却凝縮させることができる。
【0023】
(第3工程)
第3工程は、第2工程で得られた凝縮液を蒸留して炭酸ジアルキル含有アルコールを留出させ、シュウ酸ジアルキルを得る工程である。具体的には第2工程で得られた凝縮液を蒸留塔(1)に導き、蒸留により、シュウ酸ジアルキルを蒸留残液として得ることができる。
【0024】
蒸留は、常圧で64〜200℃、好ましくは常圧で90〜190℃の条件で行なうことができる。留出分は、アルコールの他、第1工程で副生した炭酸ジアルキルを含む、炭酸ジアルキル含有アルコールである。
【0025】
目的物がシュウ酸ジメチルであり、第2工程でアルコールとしてメタノールを使用した場合、常圧で64〜200℃、好ましくは常圧で65〜180℃の条件を採用することによって、メタノールと第1工程で副生した炭酸ジメチルとを共沸蒸留により留出させて、効率的にシュウ酸ジメチルを得ることができる。
【0026】
(第4工程)
第3工程で留出させた炭酸ジアルキル含有アルコールには、シュウ酸ジアルキルの製造に再利用できるアルコールと、燃料添加剤等として有用な炭酸ジアルキルが含まれている。本発明の第一の態様は、まず主生成物であるシュウ酸ジアルキルと炭酸ジアルキル含有アルコールと分離した後に、炭酸ジアルキル含有アルコールにシュウ酸ジアルキルを敢えて加えて、アルコールと炭酸ジアルキルとを抽出蒸留により分離することをも対象とする。そのための工程が第4工程であり、それに続く第5工程である。具体的に、第4工程では、第3工程で留出させた炭酸ジアルキル含有アルコールを蒸留塔(2)に導き、シュウ酸ジアルキルを添加し、抽出蒸留によりアルコールを分離して、シュウ酸ジアルキル及び炭酸ジアルキルの混合物を蒸留残液として得ることができる。シュウ酸ジアルキルの添加は、炭酸ジアルキル含有アルコール中に含まれるシュウ酸ジアルキルが、蒸留によるアルコールの分離の際に同伴しないようにするために行われる。好ましくは、シュウ酸ジアルキルを添加しながら、アルコールの蒸留を行なう。
これにより、シュウ酸ジアルキルの製造において、アルコールを再利用しても、系内に炭酸ジアルキルが蓄積していくことを抑制することができると共に、燃料添加剤等として有用な炭酸ジアルキルを得ることができる。
また、第4工程で得られたアルコールは、第1工程及び/又は第6工程で用いるアルコールとして再利用することができる。その際、第4工程で得られたアルコールを再度蒸留した後に、第1工程及び/又は第6工程に再利用してもよい。
【0027】
シュウ酸ジアルキルの添加量は、炭酸ジアルキルとアルコールとの分離を容易に行うことができる点から、炭酸ジアルキル含有アルコールの重量に対して、0.1〜2倍重量、好ましくは0.5〜1.5倍重量である。
【0028】
蒸留は、常圧の条件で行なうことができ、また、加圧又は減圧の条件で行なうこともできる。加圧又は減圧条件下で行う場合は、圧力変化に応じて温度を変化させることができる。
【0029】
目的物がシュウ酸ジメチルの場合、アルコールとしてメタノールを使用して、常圧で64〜120℃、好ましくは常圧で65〜100℃、特に好ましくは常圧で65〜75℃の条件を採用することによって、炭酸ジメチル含有メタノールから、メタノールを留出させて、効率的にシュウ酸ジメチル及び炭酸ジメチルの混合物を得ることができる。
【0030】
(第5工程)
第5工程は、第4工程で得られた混合物を蒸留し、シュウ酸ジアルキルを得る工程である。具体的に、第5工程では、第4工程の蒸留残液であるシュウ酸ジアルキル及び炭酸ジアルキルの混合物を蒸留塔(3)に導き、蒸留により炭酸ジアルキルを分離して、シュウ酸ジアルキルを蒸留残液として得ることができる。
第5工程で得られる炭酸ジアルキルを再度蒸留することもできる。
【0031】
蒸留は、常圧で90〜200℃、好ましくは常圧で90〜190℃の条件で行なうことができる。
【0032】
目的物がシュウ酸ジメチルの場合、常圧で90〜200℃、好ましくは常圧で90〜180℃の条件を採用することによって、炭酸ジメチル分離して、シュウ酸ジメチルを得ることができる。
蒸留は、常圧の条件で行なうことができ、また、加圧又は減圧の条件で行なうこともできる。加圧又は減圧条件下で行う場合は、圧力変化に応じて温度を変化させることができる。
【0033】
(第6工程)
本発明の第一の態様は、第2工程で得られた非凝縮ガスを、分子状酸素含有ガス及びアルコールと接触させ、得られた亜硝酸アルキル含有ガスを第1工程に循環させる工程を加えて、連続製造方法とすることができる。具体的には、第2工程で得られた非凝縮ガスを再生塔に導き、分子状酸素含有ガス及びアルコールと接触させて、ガス中の一酸化窒素を亜硝酸アルキルに再生することができる。
【0034】
再生塔としては、充填塔、気泡塔、スプレー塔、段塔等の通常の気液接触装置が挙げられる。
【0035】
非凝縮ガス及び分子状酸素ガスは、個別に又は混合状態で再生塔に導入することができる。再生塔では、一酸化窒素の一部を分子状酸素含有ガスにより二酸化窒素に酸化するとともに、これらをアルコールに吸収反応させて亜硝酸アルキルに再生することができる。
【0036】
分子状酸素含有ガスとしては、純酸素又は不活性ガスで希釈された酸素を使用することができ、再生ガス中の一酸化窒素の濃度が2〜7容量%になるようにフィードすることが好ましい。この範囲であれば、一酸化窒素が高濃度になることによって反応を阻害することが抑制され、触媒の活性も維持できる。
【0037】
再生塔に導入されるガス中の一酸化窒素1モルに対して、分子状酸素含有ガスは、酸素基準で0.08〜0.2モル供給することができ、これらのガスを使用に供されるアルコールの沸点以下の温度でアルコールと接触させるのが好ましく、その接触時間は0.5〜20秒とすることができる。アルコールの使用量は、生成する二酸化窒素、及びこれとほぼ等モルの一酸化窒素とを、完全に吸収反応させる必要量以上とすることができ、再生塔に導入されるガス中の一酸化窒素1容量部に対し、アルコールが2〜5容量部であることが好ましい。
【0038】
目的物がシュウ酸ジメチルの場合、非凝縮ガスと分子状酸素含有ガスとを60℃以下の温度でメタノールと接触させることが好ましく、その接触時間は0.5〜2秒が好ましい。メタノールは、再生塔に導入されるガス中の一酸化窒素1容量部に対し、2〜5容量部とすることができる。
【0039】
第6工程を加え、連続製造方法とする場合、亜硝酸アルキルが、吸収塔の吸収液や再生塔の缶液に少量溶解して系外に同伴したり、循環ガスの一部をパージしたりすることにより、酸化窒素分が損失するので、その補給は第1工程の反応器に亜硝酸アルキルを供給するか、あるいは第3工程の再生塔に一酸化窒素、二酸化窒素、三酸化二窒素、四酸化二窒素等の窒素酸化物又は硝酸を導入することによっても行える。
【0040】
第2工程における非凝縮ガス中の一酸化窒素の含有量が多く、第6工程で一酸化窒素を亜硝酸アルキルに再生する際、必要量以上の亜硝酸アルキルが得られる場合には、非凝縮ガスを全量再生塔に導くことなく、その一部を第1工程における反応器に直接循環供給してもよい。再生塔から導出される液は、再生反応で副生した水を含むアルコール溶液であるので、これは蒸留等の操作によって、アルコール中の水分が好適には2容量%以下、好ましくは0.2容量%以下に精製した後、第2工程や第3工程で再使用するのが工業的に有利である。
【0041】
次に、本発明の第一の態様のプロセスの一例を、図1のフローシートに従って具体的に説明する。図中、1は反応器、2は凝縮器、3は再生塔、4は蒸留塔(1)、5は蒸留塔(2)、6は蒸留塔(3)であり、11〜23、31〜35は導管である。
【0042】
白金族金属系固体触媒を反応管に充填した多管式反応器1の上部に、一酸化炭素、亜硝酸アルキル、一酸化窒素を含有するガスを、導管20に設置するガス循環機(図示せず)で加圧して導管21を通して導入する。反応器1において気相で接触反応を行い、触媒層を通過した反応生成ガスは下部から取り出され、導管11を通して凝縮器2に導入される。
【0043】
凝縮器2では、導管13から導入されるアルコールと接触させながら、反応生成ガスを凝縮させる。シュウ酸ジアルキルを含有する凝縮液は、下部から導管14を通して蒸留塔(1)4に導かれる。
【0044】
一方、未反応の一酸化炭素と亜硝酸アルキル、及び副生した一酸化窒素等を含む非凝縮ガスは、上部から導管12を通して再生塔3の下部に導入される。
【0045】
再生塔3において非凝縮ガスは、下部に導管16を通して導入される分子状酸素含有ガスを混合し、上部に導管18を通して導入されるアルコールと向流接触により反応させて、亜硝酸アルキルを再生させる。この再生塔3では、一酸化窒素の二酸化窒素への酸化反応に引き続きメタノールへの吸収反応が起こり、亜硝酸アルキルを生成することができる。なお亜硝酸アルキルを生成するに十分な窒素源が不足する場合には導管15を通して窒素酸化物を混入してもよい。
【0046】
再生塔3で生成した亜硝酸アルキル含有ガスは、導管19、21を通して、導管20より新しく供給される一酸化炭素とともに、反応器1に循環供給される。一方、再生塔3で副生した水は、アルコール水溶液の形で底部から導管17を通して取り出される。このアルコール水溶液は、蒸留等の操作によって液中の水分を除去した後、導管18、13を通して凝縮器2又は再生塔3に供給されるアルコールとして循環再利用することができる。
【0047】
蒸留塔(1)4では、炭酸ジアルキル等を含有するアルコールを留出させ、目的物のシュウ酸ジアルキル液を導管22を通して取得する。
【0048】
蒸留塔(1)4で留出させた炭酸ジアルキル含有アルコールは、導管23を通して、蒸留塔(2)5に導入される。蒸留塔(2)5には、導管31を通してシュウ酸ジアルキルが供給され、アルコールを導管32を通して留出させ、シュウ酸ジアルキル及び炭酸ジアルキルの混合物を取得する。
【0049】
蒸留塔(2)5の蒸留残液であるシュウ酸ジアルキル及び炭酸ジアルキルの混合物は、導管33を通して、蒸留塔(3)6に導入される。蒸留塔(3)6で炭酸ジメチルを留出させ、目的物のシュウ酸ジアルキルを導管35を通して取得する。
【0050】
以下、本発明の第二の態様の各工程を説明する。
(第1’及び2’工程)
第1’及び2’工程は、第一の態様の第1及び2工程と同様であり、第一の態様に関する第1及び2工程についての記載及び好ましい形態が適用される。
【0051】
(第3’工程)
第3’工程は、第2’工程で得られた凝縮液を蒸留してアルコールを留出させ、シュウ酸ジアルキル及び炭酸ジアルキルの混合物を得る工程である。具体的には第2’工程で得られた凝縮液を蒸留塔(1’)に導入し、蒸留により、アルコールを留出させ、シュウ酸ジアルキル及び炭酸ジアルキルの混合物を蒸留残液として得ることができる。
この際、シュウ酸ジアルキルを蒸留塔(1’)の上部に導入し、蒸留塔内部を流下させることが好ましい。
【0052】
蒸留は、常圧で64〜200℃、好ましくは常圧で65〜190℃の条件で行なうことができる。留出分は、実質的にアルコールである。
蒸留は、常圧の条件で行なうことができ、また、加圧又は減圧の条件で行なうこともできる。加圧又は減圧条件下で行う場合は、圧力変化に応じて温度を変化させることができる。
第3’工程で得られたアルコールは、第1’工程及び/又は第5’工程で用いられるアルコールとして再利用することができる。その際、第3’工程で得られたアルコールを再度蒸留して第1’工程及び/又は第5’工程に再利用することもできる。
【0053】
目的物がシュウ酸ジメチルであり、第2工程でアルコールとしてメタノールを使用した場合、常圧で64〜200℃、好ましくは常圧で65〜190℃の条件を採用することによって、効率的にメタノールを留出させることができ、蒸留残液として、シュウ酸ジメチル及び炭酸ジメチルの混合物を得ることができる。
【0054】
(第4’工程)
第4’工程は、第3’工程で得られた混合物を蒸留し、シュウ酸ジアルキルを得る工程である。具体的には第3’工程で得られた混合物を蒸留塔(2’)に導入し、蒸留により、炭酸ジアルキルを留出させ、シュウ酸ジアルキルを蒸留残液として得ることができる。
【0055】
蒸留は、常圧で90〜200℃、好ましくは常圧で90〜180℃の条件で行なうことができる。
蒸留は、常圧の条件で行なうことができ、また、加圧又は減圧の条件で行なうこともできる。加圧又は減圧条件下で行う場合は、圧力変化に応じて温度を変化させることができる。
【0056】
目的物がシュウ酸ジメチルである場合、常圧で90〜200℃、好ましくは常圧で90〜190℃の条件を採用することによって、効率的に炭酸ジメチルを留出させることができ、蒸留残液として、シュウ酸ジメチルを得ることができる。
【0057】
(第5’工程)
発明の第二の態様において、第2’工程で得られた非凝縮ガスを、分子状酸素含有ガス及びアルコールと接触させ、得られた亜硝酸アルキル含有ガスを第1’工程に循環させる工程を加えて、連続製造方法とすることができる。具体的には、第2’工程で得られた非凝縮ガスを再生塔に導き、分子状酸素含有ガス及びアルコールと接触させて、ガス中の一酸化窒素を亜硝酸アルキルに再生することができる。第5’工程は、第一の態様の第6工程と同様であり、第一の態様に関する第6工程についての記載及び好ましい形態が適用される。
【0058】
次に、本発明の第二の態様のプロセスの一例を、図2のフローシートに従って具体的に説明する。図中、1は反応器、2は凝縮器、3は再生塔、7は蒸留塔(1’)、8は蒸留塔(2’)であり、11〜21、41〜45は導管である。
【0059】
白金族金属系固体触媒を反応管に充填した多管式反応器1の上部に、一酸化炭素、亜硝酸アルキル、一酸化窒素を含有するガスを、導管20に設置するガス循環機(図示せず)で加圧して導管21を通して導入する。反応器1において気相で接触反応を行い、触媒層を通過した反応生成ガスは下部から取り出され、導管11を通して凝縮器2に導入される。
【0060】
凝縮器2では、導管13から導入されるアルコールと接触させながら、反応生成ガスを凝縮させ、シュウ酸ジアルキルを含有する凝縮液は、下部から導管14を通して蒸留塔(1’)7に導かれる。
【0061】
一方、未反応の一酸化炭素と亜硝酸アルキル、及び副生した一酸化窒素等を含む非凝縮ガスは、上部から導管12を通して再生塔3の下部に導入される。
【0062】
再生塔3において非凝縮ガスは、下部に導管16を通して導入される分子状酸素含有ガスを混合し、上部に導管18を通して導入されるアルコールと向流接触により反応させて、亜硝酸アルキルを再生させる。この再生塔3では、一酸化窒素の二酸化窒素への酸化反応に引き続きメタノールへの吸収反応が起こり、亜硝酸アルキルを生成するができる。なお亜硝酸アルキルを生成するに十分な窒素源が不足する場合には導管15を通して窒素酸化物を混入してもよい。
【0063】
再生塔3で生成した亜硝酸アルキル含有ガスは、導管19、21を通して、導管20より新しく供給される一酸化炭素とともに、反応器1に循環供給される。一方、再生塔3で副生した水は、アルコール水溶液の形で底部から導管17を通して取り出される。このアルコール水溶液は、蒸留等の操作によって液中の水分を除去した後、前記導管18、13を通して凝縮器2又は再生塔3に供給されるアルコールとして循環再利用することができる。
【0064】
蒸留塔(1’)7では、アルコールを導管41を通して留出させ、シュウ酸ジアルキル及び炭酸ジアルキルの混合物を蒸留残液として取得する。留出させたアルコールは、導管18、13を通して凝縮器2又は再生塔3に供給されるアルコールとして循環再利用することができる
【0065】
蒸留塔(1’)7で得られたシュウ酸ジアルキル及び炭酸ジアルキルの混合物は、導管42を通して、蒸留塔(2’)8に導入される。蒸留塔(2’)8で炭酸アルキルを留出させ、目的物のシュウ酸ジアルキルを導管44を通して取得する。シュウ酸ジアルキルは、蒸留塔(1’)7の上部に導管45を通して導入し、蒸留塔内部を流下させる。
【実施例】
【0066】
次に実施例によって具体的に説明する。
【0067】
実施例1
内径27.1mm、高さ500mmのチューブ6本よりなるステンレス製多管反応器のチューブ内に、特願平2−257042号で示されるような活性炭(武田(株)白鷺4mmφ×6mm)にパラジウムを担持した触媒780g(パラジウムの担持量1.731重量%)を充填した。この触媒層に上部からダイヤフラム式ガス循環ポンプで、2.5kg/cm(ゲージ圧)に圧縮した原料ガス(組成:一酸化炭素15.0容量%、亜硝酸メチル15.0容量%、一酸化窒素3.5容量%、メタノール1.8容量%、炭酸ガス2.2容量%および窒素62.5容量%)を予め熱交換器で約90℃に予熱した後6.9Nm/hrの速度で供給し、反応器のシェル側に熱水を通すことにより触媒層の中央部温度を約120℃に保持した。
【0068】
触媒層を通過したガスを、内径100mm、高さ1300mmのラシヒリング充填式気液接触凝縮器の塔底に導き、該塔頂からメタノールを0.2l/hrの速度で導入し、塔頂温度5℃、塔底温度20℃で向流接触した。塔底から凝縮液(組成:シュウ酸ジメチル76.7重量%、炭酸ジメチル19.6重量%、メタノール3.7重量%、ギ酸メチル0.1重量%)3.8kg/hrを得た。一方塔頂から非凝縮ガス(組成:一酸化炭素12.8容量%、亜硝酸メチル10.3容量%、一酸化窒素8.7容量%、メタノール1.9容量%、炭酸ガス2.2容量%および窒素64.0容量%)6.8Nm/hrを得た。
【0069】
この非凝縮ガスに、酸素87.2Nl/hrおよび一酸化窒素14.0容量%を含む窒素ガス7.5Nl/hrを混入した後、内径158mm、高さ1400mmの気液接触式再生塔の塔底に導き、該塔頂からメタノール5.0l/hrの速度で導入し、塔頂温度30℃、塔底温度40℃で向流接触させ、ガス中の一酸化窒素を亜硝酸メチルに再生した。再生塔における再生ガス(組成:一酸化炭素12.8容量%、亜硝酸メチル15.4容量%、一酸化窒素3.7容量%、メタノール1.9容量、炭酸ガス2.3容量%及び窒素64.1容量%)6.6Nm/hrは、前記ガス循環ポンプに供給圧縮した。次いで吐出ガスに一酸化炭素0.2Nm/hrを補給混合してステンレス製多管反応器へ導いた。一方この再生塔から導出された2.2重量%含水メタノール4.0l/hrは、蒸留によって水を除去後、該塔におけるメタノール源として再使用した。
【0070】
前記凝縮器から導出された凝縮液3.5kg/hrを、内径50mm、高さ2500mmの蒸留塔の中段に導き、塔頂温度90℃、塔底温度170℃で蒸留した。塔底から、シュウ酸ジメチル100重量%を2.68kg/hで得た。一方、塔頂から、炭酸ジメチル83.8重量%、メタノール15.8重量%、ギ酸メチル0.4重量%からなる留出液0.82kg/hrを得た。
【0071】
この蒸留塔の塔頂から得られた留出液を、内径50mm、高さ2500mmの蒸留塔の中段に導き、蒸留塔上部(塔頂から300mm下)にシュウ酸ジメチル液を0.3kg/hrの速度で導入し、塔頂温度64℃、塔底温度146℃で蒸留した。塔底から、炭酸ジメチル69.7重量%、シュウ酸ジメチル30.3重量%の混合液0.99kg/hrを得た。一方、塔頂から、メタノール97.5重量%、ギ酸メチル2.5重量%からなるメタノール液0.13kg/hrを得た。このメタノール液は再度蒸留精製して、前記再生塔及び凝縮器に循環再使用した。
【0072】
一方、塔底から導出された炭酸ジメチルとシュウ酸ジメチルの混合液を、内径65mm、高さ1600mmの充填塔に導き、塔頂温度90℃、塔底温度163℃で蒸留した。塔頂からは純度99.4%の炭酸ジメチル0.68kg/hrを得た。また、塔底からはほぼ100%純度のシュウ酸ジメチル4.69kg/hrを抜き出した。この結果、98%の生成収率で高純度のシュウ酸ジメチルを連続的に得ることができた。
【0073】
実施例2
実施例1と同様のシュウ酸ジメチルの製造設備の凝縮器から、凝縮液(組成:シュウ酸ジメチル76.7重量%、炭酸ジメチル19.6重量%、メタノール3.7重量%、ギ酸メチル0.1重量%)3.8kg/hrを得た。
前記凝縮器から導出された凝縮液3.5kg/hrを、内径50mm、高さ2500mmの蒸留塔の中段に導き、塔の上部(塔頂から300mm下)にシュウ酸ジメチルを1.4kg/hrの速度で導入し、塔頂温度64℃、塔底温度146℃で蒸留した。塔底からシュウ酸ジメチル85.9重量%、炭酸ジメチル14.1重量%の混合液4.75kg/hrを得た。一方、塔頂からメタノール97.4重量%、ギ酸メチル2.6重量%からなる留出液0.15kg/hrを得た。
【0074】
この蒸留塔の塔底から得られた混合液を内径50mm、高さ2500mmの蒸留塔の中段に導き、塔頂温度90℃、塔底温度170℃で蒸留した。塔底からはほぼ100%純度のシュウ酸ジメチルを4.08kg/hrで得た。また塔頂からは純度99.6%の炭酸ジメチルを0.67kg/hrで得た。
【0075】
一方、塔頂から得た留出液(メタノール97.4重量%、ギ酸メチル2.6重量%)は、再度蒸留精製して、再生塔及び凝縮器に循環再使用した。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、シュウ酸ジアルキルの製造方法において、目的物を効率よく分離して得ることができる。本発明のシュウ酸ジアルキルは連続製造方法であることもでき、有用性が高い。
【符号の説明】
【0077】
1 反応器
2 凝縮器
3 再生塔
4 蒸留塔(1)
5 蒸留塔(2)
6 蒸留塔(3)
7 蒸留塔(1’)
8 蒸留塔(2’)
11〜23、31〜35、41〜45 導管
図1
図2