特許第6048141号(P6048141)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048141
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】放電ユニット
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/48 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
   C02F1/48 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-289134(P2012-289134)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-79739(P2014-79739A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年10月16日
(31)【優先権主張番号】特願2012-218349(P2012-218349)
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 政弥
(72)【発明者】
【氏名】香川 謙吉
(72)【発明者】
【氏名】大堂 維大
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 智己
(72)【発明者】
【氏名】山口 幸子
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−093972(JP,A)
【文献】 特開2011−092920(JP,A)
【文献】 特開2005−081342(JP,A)
【文献】 特表2001−507274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46−1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交番型の電源(33)と、
水中に設けられ、上記電源(33)からの電圧が印加される一対の電極(31,32)と、
上記一対の電極(31,32)の間を仕切るように設けられ、該一対の電極(31,32)の間の電流経路を構成して水中放電を生起させる微小な貫通孔(35)が形成された絶縁性の仕切板(15a)と、
上記電源(33)の電流波形がインパルス状になるように該電源(33)を制御する制御部(36)とを備え
上記電源(33)は、上記貫通孔(35)において生起する放電の形態がスパーク放電に維持されるように、上記電極(31,32)に印加する電圧の極性を所定時間毎に交互に入れ替える
ことを特徴とする放電ユニット。
【請求項2】
請求項1において、
上記制御部(36)は、定電圧制御を行うように構成されていることを特徴とする放電ユニット。
【請求項3】
請求項2において、
上記制御部(36)では、上記電流波形がインパルス状になるように、電圧波形のデューティー比を設定するように構成されていることを特徴とする放電ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ユニットに関し、特に、水中で放電を生起させて水を浄化する放電ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、水中で放電を生起して水を浄化する水処理用の放電ユニットが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、水中に設けられ、直流電源から所定の電圧が印加される電極対と、水中において電極対の間を仕切ると共に、電極対の電流経路を構成する貫通孔が形成された絶縁性の仕切板とを備え、例えば、水中に水酸ラジカルなどの殺菌因子を発生させるために、直流電源から電極対に直流電圧が印加されると、仕切板の貫通孔内の電流経路において電流密度が上昇し放電が生起される放電ユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−92920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した放電ユニットでは、電流経路である仕切板の貫通孔の孔径が次第に拡大してしまい、これによって、貫通孔の電気抵抗が低下し放電に必要な電流密度を確保できなくなり、放電を安定して生起させることができないおそれがある。つまり、常に一定の直流電圧が電極対に印加されると、貫通孔内では比較的高温のグロー放電が生起し、そのグロー放電により生成される高温によって貫通孔が熱的破壊され孔径が拡大してしまうという問題がある。また、上述した放電ユニットでは、このグロー放電による高温によって殺菌因子が生成し難いので、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、仕切板における貫通孔の孔径の拡大を抑制して、殺菌因子の発生量を可及的に多くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、交番型の電源(33)から電圧が印加される一対の電極(31,32)の間の仕切板(15a)に電流経路を構成する貫通孔(35)を形成し、電源(33)の電流波形がインパルス状になるように電源(33)を制御する制御部(36)を備えるようにしたものである。
【0008】
第1の発明は、交番型の電源(33)と、水中に設けられ、上記電源(33)からの電圧が印加される一対の電極(31,32)と、上記一対の電極(31,32)の間を仕切るように設けられ、該一対の電極(31,32)の間の電流経路を構成して水中放電を生起させる微小な貫通孔(35)が形成された絶縁性の仕切板(15a)と、上記電源(33)の電流波形がインパルス状になるように該電源(33)を制御する制御部(36)とを備え、上記電源(33)は、上記貫通孔(35)において生起する放電の形態がスパーク放電に維持されるように、上記電極(31,32)に印加する電圧の極性を所定時間毎に交互に入れ替えることを特徴とするものである。
【0009】
上記第1の発明では、交番型の電源(33)から一対の電極(31,32)に電圧が印加されることにより、一対の電極(31,32)の間の電流経路となる仕切板(15a)の貫通孔(35)において電流密度が上昇して放電が生起される。ここで、電源(33)が交番型であるので、一対の電極(31,32)において印加電圧の極性が所定時間毎に交互に入れ替わる。そのため、仕切板(15a)の貫通孔(35)においては、電流を増加させても、グロー放電を発生させずに、スパーク放電を維持することができる。つまり、放電形態は、直流の場合、電流の増加に伴ってスパーク放電からグロー放電に移行するところ、本発明では、放電形態がグロー放電に移行するまでに一対の電極(31,32)の印加電圧の極性が入れ替わるので、仕切板(15a)の貫通孔(35)内においてグロー放電を発生させずに、スパーク放電を発生させ続けることができる。これにより、グロー放電による仕切板(15a)の貫通孔(35)の熱的破壊を抑制できるので、仕切板(15a)における貫通孔(35)の孔径の拡大を抑制することができる。そして、制御部(36)によって、電源(33)の電流波形がインパルス状になるように電源(33)が制御されるので、水中に水酸ラジカル及びそれに起因する過酸化水素などの殺菌因子を多く発生させることができる。したがって、仕切板(15a)における貫通孔(35)の孔径の拡大を抑制して、殺菌因子の発生量を可及的に多くすることができる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記制御部(36)は、定電圧制御を行うように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
上記第2の発明では、制御部(36)が定電圧制御を行うように構成されているので、放電可能な水の導電率の範囲を定電流制御の場合よりも広げることができる。
【0012】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記制御部(36)では、上記電流波形がインパルス状になるように、電圧波形のデューティー比を設定するように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
上記第3の発明では、制御部(36)において、電流波形がインパルス状になるように、電圧波形のデューティー比を設定するので、例えば、電圧波形のデューティー比を10%程度に小さく設定することにより、サージ電流のピーク値を大きくすることができる。ここで、電圧波形のデューティー比を大きく設定すると、サージ電流1回当たりの電流量が多くなり、電源(33)の電流容量を超えてしまうおそれがある。
【発明の効果】
【0014】
交番型の電源(33)から電圧が印加される一対の電極(31,32)の間の仕切板(15a)に電流経路を構成する貫通孔(35)が形成され、電源(33)の電流波形がインパルス状になるように電源(33)を制御する制御部(36)を備えているので、仕切板(15a)における貫通孔(35)の孔径の拡大を抑制して、殺菌因子の発生量を可及的に多くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る水処理装置の配管系統図である。
図2】本発明の実施形態に係る水処理装置を構成する水処理部を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る水処理装置を模式的に示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る水処理部を構成する放電ユニットを概略的に示す断面図である。
図5図4中の領域Xを拡大して示す断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る放電ユニットを構成する電源で印加する模式化した電圧波形、並びに実際の電圧波形及び電流波形をデューティー比毎に示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る放電ユニットで発生する過酸化水素とデューティー比との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
図1図7は、本発明に係る放電ユニットの1つの実施形態を示している。
【0018】
水処理装置(1a)は、図1に示すように、水(湯水を含む、以下同様とする)を貯留する貯水タンク(2)と、貯水タンク(2)内の水を循環させて撹拌させる水循環回路(1)とを備えている。
【0019】
貯水タンク(2)には、図1に示すように、水循環回路(1)の両端、第1流路管(6)の一端、及び第2流路管(7)の一端が接続されている。
【0020】
水循環回路(1)は、図1に示すように、内部に水が流れる水通路として設けられた水配管(3)と、水配管(3)の途中に設けられた2つの開閉バルブ(4a,4b)と、水配管(3)の途中に設けられ、貯水タンク(2)及び開閉バルブ(4a)の間に配置されたポンプ(5a)と、水配管(3)の途中に設けられ、2つの開閉バルブ(4a,4b)の間に順に配置された水処理部(10)及びポンプ(5b)とを備えている。
【0021】
水配管(3)は、図1に示すように、その一端が貯水タンク(2)の図中左側の側面に接続されていると共に、その他端が貯水タンク(2)の図中右側の側面に接続されている。
【0022】
開閉バルブ(4a,4b)は、水配管(3)の流路を開閉可能な弁のように構成されている。ここで、開閉バルブ(4a)は、水処理部(10)の水の流入側に設けられ、開閉バルブ(4b)は、ポンプ(5b)の水の流出側に設けられている。また、開閉バルブ(4a,4b)は、弁を開けると水配管(3)の内部を水が流通し、弁を閉じると水配管(3)の内部の水の流通が停止するように構成されている。
【0023】
水処理部(10)は、図2及び図3に示すように、水配管(3)の流入部(3a)側に設けられた噴霧装置(40)と、水配管(3)の流出部(3b)側に設けられた下流槽(50)と、噴霧装置(40)及び下流槽(50)の間に設けられ、水配管(3)から供給される水を収容して処理する処理槽(11)と、処理槽(11)に設けられた第1放電ユニット(30a)及び第2放電ユニット(30b)とを備えている。ここで、水処理部(10)は、図2及び図3に示すように、水配管(3)の流入部(3a)から流入させた水を浄化して水配管(3)の流出部(3b)から流出させるように構成されている。より具体的には、水処理部(10)は、図2及び図3に示すように、水配管(3)から流入させた水を噴霧装置(40)から処理槽(11)に供給し、その供給された水を処理槽(11)において放電ユニット(30a,30b)で発生させた殺菌因子により浄化し、その浄化された水を下流槽(50)に供給し、下流槽(50)から再び水配管(3)に流出させるように構成されている。
【0024】
噴霧装置(40)は、図2に示すように、水配管(3)に接続され、水配管(3)の流入部(3a)から流入させた水を噴霧して処理槽(11)に供給するように構成されている。また、噴霧装置(40)は、図2に示すように、細長い管状に設けられたノズルヘッダー(41)と、後述するレーン(21a,21b,22a,22b)毎に設けられ、ノズルヘッダー(41)にそれぞれ接続された複数の噴霧ノズル(42)とを備えている。
【0025】
ノズルヘッダー(41)は、図2に示すように、その側面に水配管(3)が接続され、水配管(3)から流入する水を各噴霧ノズル(42)に分けるように設けられている。
【0026】
噴霧装置(40)では、図2に示すように、水配管(3)を流れる水が流入部(3a)からノズルヘッダー(41)に流入し、噴霧ノズル(42)から粒状(液滴)となって対応するレーン(21a,21b,22a,22b)に向かって噴霧される。このとき、噴霧装置(40)では、噴霧ノズル(42)から噴霧された水が粒状(液滴)となることにより、各粒間(各液滴間)に空気が介在して電気抵抗が高くなるので、水配管(3)の流入部(3a)から流入する水と、処理槽(11)を流れる水とが電気的に絶縁されることになる。なお、噴霧装置(40)では、噴霧ノズル(42)で水を噴霧させることにより、水配管(3)の流入部(3a)の水と、処理槽(11)の水との間の電気抵抗が数百MΩ以上となる。
【0027】
処理槽(11)は、図2に示すように、平面視で略長方形状に形成された箱状の水槽である。具体的には、処理槽(11)は、図2に示すように、略長方形の平板状に形成された底部(12)と、略長方形の平板状に形成され、且つ底部(12)の各長辺からそれぞれ図中上方に延びる長壁部(13,13)と、略長方形状の平板状に形成され、且つ底部(12)の各短辺からそれぞれ図中上方に延びる短壁部(14a,14b)と、水の流れ方向に沿って内部を4つのレーン(21a,21b,22a,22b)に仕切るように設けられ、略長方形状の平板状に形成された3つの仕切板(15a,15,15a)と、4つのレーン(21a,21b,22a,22b)に亘って流入部(3a)側に設けられ、略長方形の平板状に形成された流路調整板(18)とを備えている。ここで、処理槽(11)では、図2に示すように、流出部(3b)側の短壁部(14b)が流入部(3a)側の短壁部(14a)よりも低く形成されていることにより、短壁部(14b)の図中上端が流出口部(17)になっている。また、処理槽(11)では、図2に示すように、第1レーン(21a)及び第2レーン(21b)により第1流路(21)が構成され、第3レーン(22a)及び第4レーン(22b)により、第2流路(22)が構成されている。なお、本実施形態では、4つのレーン(21a,21b,22a,22b)を有する処理槽(11)を例示したが、処理槽(11)に形成されるレーンの数は、浄化する水の量に応じて任意に変更することができる。
【0028】
仕切板(15,15a)は、電気絶縁性を有する材料により形成されている。ここで、第1レーン(21a)及び第2レーン(21b)の間の仕切板(15a)、並びに第3レーン(22a)及び第4レーン(22b)の間の仕切板(15a)には、図4に示すように、厚さ方向に貫通する孔部(16)が形成されている。そして、仕切板(15a)の孔部(16)には、図2及び図4に示すように、孔部(16)を塞ぐように放電部材(34)が設けられている。ここで、放電部材(34)は、例えば、セラミックスなどの電気絶縁材料により形成された板状の絶縁部材である。
【0029】
流路調整板(18)は、図2に示すように、その下部が底部(12)の表面から離れるように設けられ、噴霧装置(40)を介して供給される水配管(3)の水の流れを調整するように構成されている。
【0030】
第1放電ユニット(30a)は、第1流路(21)に設けられ、第1流路(21)の水を浄化するように構成されている。
【0031】
第2放電ユニット(30b)は、第2流路(22)に設けられ、第2流路(22)の水を浄化するように構成されている。
【0032】
第1放電ユニット(30a)及び第2放電ユニット(30b)、すなわち、放電ユニット(30a,30b)は、図2図4及び図5に示すように、交番波形を発生させる高電圧発生部(33)と、高電圧発生部(33)を制御するための制御部(36)と、処理槽(11)内の水中に互いに対向するように設けられ、高電圧発生部(33)からの電圧が印加される第1電極(31)及び第2電極(32)と、第1電極(31)及び第2電極(32)の間に設けられ、第1電極(31)及び第2電極(32)の間の電流経路を構成して水中放電を生起させる微小な貫通孔(35)が形成された上記放電部材(34)を有する仕切板(15a)とを備えている。
【0033】
第1電極(31)は、図4に示すように、第1レーン(21a)及び第3レーン(22a)に設けられ、例えば、高電圧発生部(33)のホット側に接続されている。
【0034】
第2電極(32)は、図4に示すように、第2レーン(21b)及び第4レーン(22b)に設けられ、例えば、高電圧発生部(33)のニュートラル側に接続されている。
【0035】
第1電極(31)及び第2電極(32)は、例えば、耐腐食性の高い金属材料により、平板状に形成されている。
【0036】
ここで、図6は、放電ユニット(30a,30b)を構成する高電圧発生部(33)で印加する模式化した電圧波形、並びに実際の電圧波形及び電流波形をデューティー比毎に示す図である。なお、図6において、(a)の縦列は、デューティー比が10%である場合を示し、(b)の縦列は、デューティー比が50%である場合を示し、(c)の縦列は、デューティー比が100%である場合を示している。また、図7は、放電ユニット(30a,30b)で発生する過酸化水素とデューティー比との関係を示すグラフである。
【0037】
制御部(36)は、図6(a)に示すように、高電圧発生部(33)の電流波形がインパルス状になるように高電圧発生部(33)を定電圧制御するように構成されている。ここで、制御部(36)では、図6(a)に示すように、電流波形がインパルス状になるように、方形波の電圧波形のデューティー比(電圧印加時間の比率)を10%に設定されている。また、制御部(36)は、図6(a)に示すように、方形波の電圧波形において、正極側と負極側との割合が等しくなるように設定されている。なお、定電圧制御を行う制御部(36)では、方形波の電圧波形のデューティー比が50%及び100%である場合、図6(b)及び図6(c)に示すように、電流波形がインパルス状にならなくなると共に、サージ電流の回数が少なくなってしまう。
【0038】
放電ユニット(30a,30b)で発生する過酸化水素は、図7に示すように、電圧波形のデューティー比を10%である場合に最大になる。
【0039】
放電部材(34)に形成された貫通孔(35)は、例えば、電気抵抗が数MΩとなるように設計されている。ここで、貫通孔(35)は、第1電極(31)及び第2電極(32)の間の電流経路の電流密度を上昇させる電流密度集中部となる。そのため、第1電極(31)及び第2電極(32)の間に電圧が印加されると、図5に示すように、放電部材(34)の貫通孔(35)内では、電流経路の電流密度が上昇することにより、水がジュール熱によって気化して気泡(C)が形成される。そして、気泡(C)内では、気泡(C)と水との界面が電極となって放電が発生することになる。なお、この放電では、第1電極(31)及び第2電極(32)が放電を直接行う電極とならないため、放電によって第1電極(31)及び第2電極(32)が劣化することを抑制することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、高電圧発生部(33)から印加される電圧波形として、方形波の電圧波形を例示したが、高電圧発生部(33)から印加される電圧波形は、交番型であれば、正弦波などの電圧波形であってもよい。
【0041】
また、本実施形態では、定電圧制御を行う制御部(36)を例示したが、制御部(36)は、電流波形がインパルス状になれば定電流制御を行ってもよい。ここで、定電圧制御によれば、放電可能な水の導電率の範囲を、例えば、50μS/cm〜750μS/cm程度に広げることができる。なお、定電流制御の場合には、放電可能な水の導電率の範囲が、例えば、50μS/cm〜150μS/cm程度である。
【0042】
下流槽(50)は、処理槽(11)から流れ落ちて雫状になった水を流入させる水槽である。また、下流槽(50)は、図2に示すように、略長方形状の箱体に形成され、外壁部(51a,51a,51b,51c)及び短壁部(14b)によって囲まれて形成されている。ここで、短壁部(14b)は、外壁部(51a,51a,51c)よりも低く形成されている。また、外壁部(51c)の図中下側には、図2に示すように、水配管(3)の流出部(3b)が接続されている。また、処理槽(11)と下流槽(50)との間は、短壁部(14b)によって仕切られている。
【0043】
下流槽(50)では、図2に示すように、短壁部(14b)の図中上端が流出口部(17)になっているので、処理槽(11)に貯留された水は、処理槽(11)が一杯になる前に流出口部(17)から下流槽(50)の底に向かって堰を切って滝のように流れ落ちる。このとき、流出口部(17)から下流槽(50)の底部又は下流槽(50)に貯留された水の表面までの間は、所定の高さを有しているので、処理槽(11)の水は、流出口部(17)から下流槽(50)に流れ落ちる際に雫状になる。そして、下流槽(50)に流れ落ちる水が雫状(粒状又は液滴)になることにより、各粒間(液滴間)に空気が介在して電気抵抗が高くなるので、処理槽(11)に貯留された水と下流槽(50)を流れる水とが電気的に絶縁される。なお、下流槽(50)では、処理槽(11)の水と、水配管(3)の流出部(3b)の水との間の電気抵抗は、数百MΩ以上になる。
【0044】
次に、上記構成の水処理装置(1a)の運転動作について説明する。
【0045】
水処理装置(1a)では、水処理部(10)において、水配管(3)を流れる水に電気的な処理がなされる。
【0046】
水処理部(10)の運転開始前には、水循環回路(1)の開閉バルブ(4a,4b)が開かれ、貯水タンク(2)の水が水配管(3)内を流れる。そして、水配管(3)を流れる水は、ポンプ(5a)を介して流入部(3a)からノズルヘッダー(41)内に流入し、噴霧ノズル(42)から各レーン(21a,21b,22a,22b)に供給され、処理槽(11)内に水が貯留される。このとき、供給された水は、粒状(液滴)となっているため、各液滴間に空気が介在して電気抵抗が高くなる。これにより、水配管(3)の流入部(3a)の水と、処理槽(11)を流れる水とが電気的に絶縁される。
【0047】
水処理部(10)の運転開始時には、処理槽(11)内が浸水した状態となっている。そして、高電圧発生部(33)から第1電極(31)及び第2電極(32)に対して方形波の電圧が印加されると、放電部材(34)の貫通孔(35)の電流経路の電流密度が上昇する。ここで、貫通孔(35)内の電流経路の電流密度が上昇すると、貫通孔(35)内にジュール熱が発生し、そのジュール熱により、放電部材(34)では、貫通孔(35)の内部及び出入口の近傍において、水の気化が促進されて気体相としての気泡(C)が形成される。この気泡(C)は、図5に示すように、貫通孔(35)の全域を覆う状態となる。この状態では、気泡(C)が第1電極(31)及び第2電極(32)の間で水を介した導電を阻止する抵抗として機能する。これにより、第1電極(31)及び第2電極(32)と水との間に電位差がほぼなくなり、気泡(C)と水との界面が電極となる。そのため、気泡(C)内では、絶縁破壊が起こり、放電が発生する。そして、気泡(C)内で放電が行われると、処理槽(11)の水中では、水酸ラジカルや水酸ラジカル同士の反応による過酸化水素などの殺菌因子が発生する。
【0048】
その後、処理槽(11)の各レーン(21a,21b,22a,22b)を流れる水は、流出口部(17)から下流槽(50)に向かって流れ落ちる。このとき、流出口部(17)から下流槽(50)に流れ落ちる水は、雫となるので、各粒間(液滴間)に空気が介在して電気抵抗が高くなる。これにより、処理槽(11)で処理された水と水配管(3)の流出部(3b)の水とが電気的に絶縁される。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の放電ユニット(30a,30b)及びそれを備えた水処理装置(1a)によれば、交番型の電源(33)から一対の電極(31,32)に電圧が印加されることにより、一対の電極(31,32)の間の電流経路となる仕切板(15a)の貫通孔(35)において電流密度が上昇して放電が生起される。ここで、電源(33)が交番型であるので、一対の電極(31,32)において印加電圧の極性が所定時間毎に交互に入れ替わる。そのため、仕切板(15a)の貫通孔(35)においては、電流を増加させても、グロー放電が発生せずに、スパーク放電を維持することができる。つまり、放電形態は、直流の場合、電流の増加に伴ってスパーク放電からグロー放電に移行するところ、本実施形態では、放電形態がグロー放電に移行するまでに一対の電極(31,32)の印加電圧の極性が入れ替わるので、仕切板(15a)の貫通孔(35)内において、グロー放電を発生させずに、スパーク放電を発生させ続けることができる。これにより、グロー放電による仕切板(15a)の貫通孔(35)の熱的破壊を抑制できるので、仕切板(15a)における貫通孔(35)の孔径の拡大を抑制することができる。そして、制御部(36)によって、電源(33)の電流波形がインパルス状になるように電源(33)が制御されるので、水中に水酸ラジカル及びそれに起因する過酸化水素などの殺菌因子を多く発生させることができる。したがって、仕切板(15a)における貫通孔(35)の孔径の拡大を抑制して、殺菌因子の発生量を可及的に多くすることができる。
【0050】
また、本実施形態の放電ユニット(30a,30b)及びそれを備えた水処理装置(1a)によれば、制御部(36)が定電圧制御を行うように構成されているので、放電可能な水の導電率の範囲を定電流制御の場合よりも広げることができる。
【0051】
また、本実施形態の放電ユニット(30a,30b)及びそれを備えた水処理装置(1a)によれば、制御部(36)において、電流波形がインパルス状になるように、電圧波形のデューティー比を設定するので、電圧波形のデューティー比を10%程度に小さく設定することにより、サージ電流のピーク値を大きくすることができる。
【0052】
また、本実施形態の放電ユニット(30a,30b)を備えた水処理装置(1a)によれば、水処理部(10)の放電によって、水中に殺菌因子を生成するので、この殺菌因子によって水を確実に浄化することができる。
【0053】
また、本実施形態の放電ユニット(30a,30b)を備えた水処理装置(1a)によれば、水通路(3)から水処理部(10)に流れる水を噴霧するので、水処理部(10)とその水処理部(10)に供給される水との間のインピーダンスを大きくすることができ、水処理部(10)とその水処理部(10)に供給される水との間を確実に絶縁することができる。
【0054】
また、本実施形態の放電ユニット(30a,30b)を備えた水処理装置(1a)によれば、水処理部(10)から水通路(3)に流れる水を雫状にして落下させ、いわゆる滝状にするので、水処理部(10)とその水処理部(10)から排出される水との間のインピーダンスを大きくすることができ、水処理部(10)とその水処理部(10)から排出される水との間を確実に絶縁することができる。
【0055】
また、本実施形態の放電ユニット(30a,30b)及びそれを備えた水処理装置(1a)によれば、水処理部(10)の流入側に噴霧装置(40)が設けられ、水処理部(10)の流出側に下流槽(50)が設けられているので、水処理部(10)から水処理部(10)の上流側及び下流側の水に電気が流れることを確実に抑制することができる。これにより、水処理部(10)の水中でより確実に放電を生起させることができるので、投入した電力をより効率よく使用することができる。
【0056】
また、本実施形態の放電ユニット(30a,30b)を備えた水処理装置(1a)によれば、複数のレーン(21a,21b,22a,22b)が設けられているので、レーン(21a,21b,22a,22b)の数に応じて水処理装置(1a)で処理する水量を調節することができる。
【0057】
また、本実施形態の放電ユニット(30a,30b)を備えた水処理装置(1a)によれば、高電圧発生部(33)で発生させる電圧波形において正極側と負極側の割合を等しくしているので、第1電極(31)及び第2電極(32)において酸化反応と還元反応とを同じ程度に行わせることができる。よって、第1電極(31)及び第2電極(32)の酸化反応による溶出を抑制することができ、また、高電圧発生部(33)で発生させる交番型の電圧波形により、第1電極(31)及び第2電極(32)から金属などが析出することを抑制することができるので、安定して放電を行うことができる。
【0058】
また、本実施形態の放電ユニット(30a,30b)を備えた水処理装置(1a)によれば、高電圧発生部(33)で発生させる電圧波形を方形波としているので、例えば、正弦波などと比べて、水の導電率に依存せずに放電を生起させることができ、安定して放電を行うことができる。
【0059】
なお、上記実施形態では、水処理部(10)が水中で放電を生起するようにしたが、本発明では、水処理部(10)が水中で電気分解を生起するようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明は、水中に設けられる電極対を有する放電ユニットについて有用である。
【符号の説明】
【0062】
15a 仕切板
31 第1電極(一対の電極)
32 第2電極(一対の電極)
33 高電圧発生部(電源)
35 貫通孔
36 制御部
30a,30b 放電ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7