(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スラップ音発音指示手段は、最終的に発音すべきスラップ音から、前記第1の通常音発音指示手段により発音の指示される楽音を差し引いた差分音の発音を指示する請求項3に記載の電子弦楽器。
複数のフレットが設けられた指板部上に張設された複数の弦と、前記複数のフレット夫々と複数の弦夫々との間の状態を検出する状態検出手段と、前記複数の弦のいずれかが弾弦されたことを検出するとともに、検出された弾弦の強度を検出する弾弦検出手段と、を有する電子弦楽器に用いられる楽音生成方法であって、
前記弾弦検出手段により検出された弾弦強度のレベルが所定の第1のレベルを超えたか否か判別し、
所定の第1のレベルを超えたと判別された場合に、前記状態検出手段により、前記弾弦検出手段にて弾弦の検出された弦と接触状態にあるフレットの数が複数という条件を満たしているか否か判別し、
前記条件を満たしていると判別された場合に、予め定められたスラップ音の発音を、接続された音源に対して指示する、楽音生成方法。
複数のフレットが設けられた指板部上に張設された複数の弦と、前記複数のフレット夫々と複数の弦夫々との間の状態を検出する状態検出手段と、前記複数の弦のいずれかが弾弦されたことを検出するとともに、検出された弾弦の強度を検出する弾弦検出手段と、を有する電子弦楽器に用いられるコンピュータに、
前記弾弦検出手段により検出された弾弦強度のレベルが所定の第1のレベルを超えたか否か判別するレベル判別ステップと、
このレベル判別ステップにより、所定の第1のレベルを超えたと判別された場合に、前記状態検出手段により、前記弾弦検出手段にて弾弦の検出された弦と接触状態にあるフレットの数が複数という条件を満たしているか否か判別する条件判別ステップと、
前記条件判別ステップにより条件を満たしていると判別された場合に、予め定められたスラップ音の発音を、接続された音源に対して指示するスラップ音発音指示と、
を実行させるプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0010】
[電子弦楽器1の概要]
初めに、
図1を参照して、本発明の一実施形態としての電子弦楽器1の概要について説明する。
【0011】
図1は、電子弦楽器1の外観を示す正面図である。
図1に示す如く、電子弦楽器1は、本体10と、ネック20と、ヘッド30とに大別される。
【0012】
ヘッド30には、スチール製の弦22の一端が巻かれる糸巻き31が取り付けられており、ネック20は、指板21に複数のフレット23が埋め込まれている。なお、本実施形態において、弦22は6本、フレット23は22個、設けられている。6本の弦22は、各々弦番号と対応付けられている。一番細い弦22が、弦番号「1番」であり、弦22の太さが太くなる順番で弦番号が大きくなる。22個のフレット23は、各々フレット番号と対応付けられている。最もヘッド30寄りのフレット23は、フレット番号「1番」であり、ヘッド30側から遠ざかるに連れて、配置されたフレット23のフレット番号が大きくなる。
【0013】
本体10には、弦22の他端が取り付けられるブリッジ16と、弦22の振動を検出するノーマルピックアップ11と、各々の弦22の振動を独立して検出するヘキサピックアップ12と、放音されるサウンドにトレモロ効果を付加するためのトレモロアーム17と、本体10の内部に内蔵されている電子部13と、各々の弦22と電子部13とを接続するケーブル14と、音色の種類等を表示するための表示部15と、が設けられている。
【0014】
図2は、電子部13のハードウェア構成を示すブロック図である。電子部13は、CPU(Central Processing Unit)41と、ROM(Read Only Memory)42と、RAM(Random Access Memory)43と、押弦センサ44と、音源45と、ノーマルピックアップ11と、A/D(アナログデジタルコンバータ)54と、スイッチ48と、表示部15と、I/F(インターフェース)49と、がバス50を介して接続されている。なお、A/D(アナログデジタルコンバータ)54には、ヘキサピックアップ12が接続されている。
さらに、電子部13は、DSP(Digital Signal Processor)46と、D/A(デジタルアナログコンバータ)47と、を備える。
【0015】
CPU41は、ROM42に記録されているプログラム、又は、記憶部(図示せず)からRAM43にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
【0016】
RAM43には、CPU41が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0017】
押弦センサ44は、押弦が何番の弦の何番のフレットに対して行われたかを検出する。この押弦センサ44には、弦22(
図1参照)とフレット23(
図1参照)との電気的接触を検出して押弦位置を検出するタイプと、後述する静電センサの出力に基づいて押弦位置を検出するタイプとがある。
【0018】
音源45は、例えばMIDI(Musical Instrument Digital Interface)データで発音が指示された楽音の波形データを生成し、その波形データをD/A変換して得られるオーディオ信号を、DSP46及びD/A47を介して外部音源53に出力して、発音及び消音の指示を出す。なお、外部音源53は、D/A47から出力されたオーディオ信号を増幅して出力するアンプ回路(図示せず)と、アンプ回路から入力されたオーディオ信号により楽音を放音するスピーカ(図示せず)と、を備える。
【0019】
ノーマルピックアップ11は、検出された弦22(
図1参照)の振動を電気信号に変換してCPU41に出力する。
ヘキサピックアップ12は、検出された各々の弦22(
図1参照)の独立した振動を電気信号に変換してCPU41に出力する。
【0020】
スイッチ48は、本体10(
図1参照)に設けられた各種スイッチ(図示せず)からの入力信号をCPU41に出力する。
表示部15は、発音対象となる音色の種類等を表示する。
【0021】
図3は、押弦センサ44の信号制御部を示す模式図である。
【0022】
弦22とフレット23との電気的接触位置を押弦位置として検知するタイプの押弦センサ44においては、Y信号制御部52は、CPU41から受信した信号を、各々の弦22に供給する。X信号制御部51は、各々の弦22に供給された信号を各々のフレット23で時分割に受信することに応じて、各々の弦22と電気的に接触しているフレット23のフレット番号を、接触している弦の番号とともにCPU41(
図2参照)に押弦位置情報として出力する。
【0023】
静電センサの出力に基づいて押弦位置を検出するタイプの押弦センサ44においては、Y信号制御部52は、弦22のいずれかを順次指定し、指定された弦に対応する静電センサを指定する。X信号制御部51は、フレット23のいずれかを指定し、指定されたフレットに対応する静電センサを指定する。こうして弦22及びフレット23の両方同時に指定された静電センサのみを動作させ、この動作された静電センサの出力値の変化をCPU41(
図2参照)に押弦位置情報として出力する。
【0024】
図4は、弦22とフレット23との電気的接触を検出するタイプの押弦センサ44が適用されたネック20の斜視図である。
【0025】
図4において、フレット23と指板21の下部に配置されたネックPCB(Poly Chlorinated Biphenyl)24との接続はスプリング25が使用されている。フレット23とネックPCB24とを電気的に接続することにより、弦22がフレット23に接触した導通が検出され、押弦時に、どの弦番号の弦と、どのフレット番号のフレットとが電気的に接触されたかを示す信号がCPU41に送信される。
【0026】
図5は、静電センサの出力に基づいて弦22とフレット23との接触を検出することなく、押弦を検知するタイプの押弦センサ44が適用されたネック20の斜視図である。
【0027】
図5において、指板21の下部には、静電センサとしての静電パッド26が、各々の弦22、及び各々のフレット23ごとに対応付けられて配置されている。即ち、本実施形態のように、6弦×22フレットである場合、144箇所の静電パッドが配置される。これらの静電パッド26は、弦22が指板21に近づいたときの静電容量を検出してCPU41に送信する。CPU41は、この送信された静電容量の値に基づいて押弦位置に対応する弦22及びフレット23を検出する。
【0028】
[メインフロー]
図6は、本実施形態に係る電子弦楽器1において実行されるメインフローを示すフローチャートである。
【0029】
まず、ステップS1では、CPU41は、電源の投入によりイニシャライズを実行する。ステップS2では、CPU41は、スイッチ処理(
図7で後述する)を実行する。ステップS3では、CPU41は、演奏検知発音消音処理(
図9で後述する)を実行する。ステップS4では、CPU41は、その他の処理を実行する。その他の処理では、CPU41は、例えば、表示部15に出力コードのコード名を表示するなどの処理を実行する。ステップS4の処理が終了すると、CPU41は、処理をステップS2に移行させて、ステップS2〜S4の処理を繰り返す。
【0030】
[スイッチ処理]
図7は、本実施形態に係る電子弦楽器1において実行されるスイッチ処理を示すフローチャートである。
【0031】
まず、ステップS11では、CPU41は、音色スイッチ処理(
図8で後述する)を実行する。ステップS12では、CPU41は、モードスイッチ処理を実行する。モードスイッチ処理では、CPU41は、スイッチ48からの信号に応じて、後述する発音検知処理のうち
図10の発音検知処理を行うモード、
図11の発音検知処理を行うモード、及び
図12の発音検知処理を行うモードのうち、いずれかのモードを設定する。ステップS12の処理が終了すると、CPU41は、スイッチ処理を終了する。
【0032】
[音色スイッチ処理]
図8は、本実施形態に係る電子弦楽器1において実行される音色スイッチ処理を示すフローチャートである。
【0033】
まず、ステップS21では、CPU41は、音色スイッチ(図示せず)がオンされたか否かを判断する。音色スイッチがオンされたと判断された場合、CPU41は、処理をステップS22に移し、オンされたと判断されなかった場合、CPU41は、音色スイッチを終了する。ステップS22では、CPU41は、音色スイッチにより指定された音色に対応する音色番号を、変数TONEに格納する。ステップS23では、CPU41は、変数TONEに基づくイベントを音源45に供給する。これにより、音源45に、発音されるべき音色が指定される。ステップS23の処理が終了すると、CPU41は、音色スイッチ処理を終了する。
【0034】
[演奏検知発音消音処理]
図9は、本実施形態に係る電子弦楽器1において実行される演奏検知発音消音処理を示すフローチャートである。
【0035】
まず、ステップS31では、CPU41は、発音検知処理(
図10、
図11及び
図12で後述する)を実行する。ステップS32では、CPU41は、消音検知処理(
図13で後述する)を実行する。ステップS33では、CPU41は、ピッチ抽出処理(
図14で後述する)を実行する。ステップS33の処理が終了すると、CPU41は、演奏検知発音消音処理を終了する。
【0036】
[発音検知処理]
図10は、本実施形態に係る電子弦楽器1において実行される発音検知処理(
図9のステップS31の処理)を示すフローチャートである。この発音検知処理においては、弦とフレットとの電気的接触を検出するタイプの押弦センサ44が使用される。
【0037】
まず、ステップS41では、CPU41は、変数Nに1を設定する。ステップS42では、CPU41は、弦番号Nの弦22にパルスを流す。ステップS43では、CPU41は、弦番号Nのフレット情報を取り込む。具体的には、CPU41は、弦番号Nの弦22と電気的に接触しているフレット23のフレット番号の情報を取得する。ステップS64では、CPU41は、弦番号Nの弦22に対応したA/D54から振幅値を取得する。
ステップS45では、CPU41は、弦番号Nの弦22の振幅値の大、中、小に応じて処理の移行先を異ならせる。ここで、振幅値が大とは、振幅値が第1の閾値以上であることを示す。また、振幅値が中とは、振幅値が第1の閾値未満かつ第2の閾値以上であることを示す。また、振幅値が小とは、振幅値が第2の閾値未満であることを示す。振幅値が大である場合、CPU41は、スラップ奏法が行われた可能性があると判断し、ステップS46に処理を移行させる。振幅値が中である場合、CPU41は、スラップ奏法は行われず、通常の奏法が行われたと判断し、処理をステップS48に移行させる。振幅値が小の場合、CPU41は、弾弦されていないと判断し、処理をステップS50に移行させる。
ここで、スラップ奏法とは、通常の弦を弾く奏法の強さをはるかに越えた大きな弦振幅を付加させ、その振幅によって弦がフレットまたは指板に衝撃的にかつ広域にわたって接触することで特異な音色を発生させる奏法である。スラップ奏法時に弦とフレットの接触を微視的に観察すると、弦はフレットの広域にわたり同時に接触するという現象が発生している。即ち、押弦後、その押弦されている位置以外にも多数の部分が同時にフレットに接触することになる。
ステップS46で、CPU41は、弦番号Nの弦22と電気的に接触しているフレット23の数が10個以上である場合、スラップ奏法が行われた可能性があると判断し、ステップS47に処理を移行させる。一方、当該接触しているフレット23の数が9個以下である場合、CPU41は、スラップ奏法が行われず、通常の奏法が行われたと判断し、処理をステップS48に移行させる。ステップS47では、弦番号Nの弦22と接触している10個以上のフレット23のうち、フレット番号が18以上のフレット23がある場合、CPU41は、スラップ奏法が行われたと判断して、処理をステップS51に移行させる。一方、ステップS47おいて、当該10個以上のフレット23のうち、フレット番号が18以上のフレット23がない場合、CPU41は、スラップ奏法が行われず、通常の奏法が行われたと判断して、処理をステップS48に移行させる。一般に、スラップ奏法が行われる場合、ブリッジ寄りの弦(例えば、フレット番号18以上の弦)が多数接触することになるため、ステップS47の処理が実行される。
ステップS51では、CPU41は、スラップ音色、スラップ音高、及び、音量、の情報を音源45に送信し、ステップS52に処理を移行させる。
ステップS48では、CPU41は、弦番号Nの弦22と接触しているフレット23のうち、最もブリッジ16寄りのフレット23(即ち、フレット番号が最大のフレット23)に対応する音高を弾弦された音高とする。ステップS49では、音色、弾弦音高、及び、音量、の情報を音源45に送信する。
ステップS50では、弦番号Nの弦22と接触しているフレット23のうち、最もブリッジ16寄りのフレット23(即ち、フレット番号が最大のフレット23)に対応する音高をスラップ音高とする。ステップS52では、CPU41は、Nを1インクリメントする。ステップS53では、CPU41は、Nが7より小さいか否かを判断し、この判断がYESの場合、全弦についてフレット23との接触が検出されていないと判断され、処理をステップS42に移行させる。他方、ステップS53での判断がNOの場合、CPU41は、発音検知処理を終了する。
【0038】
[発音検知処理(第1変形例)]
図11は、本実施形態に係る電子弦楽器1において実行される発音検知処理(
図9のステップS31の処理)の第1変形例を示すフローチャートである。この発音検知処理においては、弦とフレットとの電気的接触を検出するタイプの押弦センサ44が使用される。
【0039】
図11において、ステップS70以外の処理の内容は、
図10の発音検知処理と同様であるため、説明を省略する。即ち、
図11のステップS61〜S69の処理の内容は、夫々、
図10のステップS41〜S49の処理の内容と同様である。
ステップS70では、CPU41は、スラップ音色、スラップ音高、及び音量、の情報と、音色、弾弦音高、及び音量、の情報との両方を音源45に送信する。このステップS70の処理により、通常奏法の弾弦による楽音とスラップ奏法の弾弦による楽音との両方の楽音を同時に発音させることができる。よって、実際のスラップ奏法により近い楽音を発生させることができる。
【0040】
[発音検知処理(第2変形例)]
図12は、本実施形態に係る電子弦楽器1において実行される発音検知処理(
図9のステップS31の処理)の第2変形例を示すフローチャートである。この発音検知処理においては、静電センサの出力に基づいて押弦位置を検出するタイプの押弦センサ44が使用される。
【0041】
まず、ステップS81では、CPU41は、変数Nに1を設定する。ステップS82では、CPU41は、弦番号Nの弦22に対応するフレット23ごとの静電センサの出力値を取得する。ステップS83では、CPU41は、弦番号Nの弦22の押弦位置を決定する。具体的には、CPU41は、弦番号Nの弦22の各々のフレット23に対応する静電センサの出力値が所定の閾値(Th1)以上である場合、所定の閾値(Th1)以上であるフレット23が弦番号Nの弦22の押弦位置であると決定する。ステップS84において、CPU41は、弦番号Nの弦22に対応したA/D54から振幅値を取得する。
ステップS85では、CPU41は、弦番号Nの弦22の振幅値の大、中、小に応じて処理の移行先を異ならせる。ここで、振幅値が大とは、振幅値が第1の閾値以上であることを示す。また、振幅値が中とは、振幅値が第1の閾値未満かつ第2の閾値以上であることを示す。また、振幅値が小とは、振幅値が第2の閾値未満であることを示す。振幅値が大である場合、CPU41は、スラップ奏法が行われた可能性があると判断し、ステップS88に処理を移行させる。振幅値が中である場合、CPU41は、スラップ奏法は行われず、通常の奏法が行われたと判断し、処理をステップS86に移行させる。振幅値が小の場合、CPU41は、弾弦されていないと判断し、処理をステップS90に移行させる。
ステップS88で、CPU41は、ステップS83で決定された押弦位置のうち、最もブリッジ16寄りのフレット23を決定する。さらに、CPU41は、決定されたフレット23よりもフレット番号が高いフレット23に対応する静電センサの出力値が所定の閾値(Th2)以上であるものが、所定数以上あるか否かを判断する。ここで、閾値(Th2)は、閾値(Th1)よりも低い値とする。即ち、閾値(Th2)は、押弦と判断されるレベルの静電センサ値よりも低い値である。なぜならば、ステップS88では、スラップ奏法の有無が判断されるため、弦22が指板21まで接触せずフレット23に接触する程度の静電センサ値であれば十分だからである。ステップS88の判断がYESの場合、CPU41は、スラップ奏法が行われたと判断し、ステップS89に処理を移す。ステップS89では、CPU41は、決定された音高に対応するスラップ音色を音源45に送信する。その後、CPU41は、ステップS90に処理を移す。」
ステップS86では、CPU41は、ステップS83で決定された押弦位置のうち、最もブリッジ16寄りのフレット23に対応する音高を弾弦された音高と決定する。ステップS87では、CPU41は、ノーマル音色、弾弦音高、及び音量、の情報を音源45に送信する。
ステップS90では、CPU41は、Nを1インクリメントする。ステップS91では、CPU41は、Nが7より小さいか否かを判断し、この判断がYESの場合、全弦についてフレット23との接触が検出されていないと判断され、処理をステップS82に移行させる。他方、ステップS91での判断がNOの場合、CPU41は、発音検知処理を終了する。
[消音検知処理]
図13は、本実施形態に係る電子弦楽器1において実行される消音検知処理(
図9のステップS32の処理)を示すフローチャートである。
【0042】
ます、ステップS101において、CPU41は、発音中であるか否かを判断する。この判断がYESの場合、CPU41は、処理をステップS102に移行させ、この判断がNOの場合、CPU41は、消音検知処理を終了する。ステップS102では、CPU41は、ヘキサピックアップ12からの出力に基づいた各々の弦の振動レベルが、所定の閾値(Th3)より小さいか否かを判断する。この判断がYESの場合、CPU41は、処理をステップS103に移行させ、NOの場合、CPU41は、消音検知処理を終了する。ステップS103では、CPU41は、消音フラグをオンにする。ステップS103の処理が終了すると、CPU41は、消音検知処理を終了する。
【0043】
[ピッチ抽出処理]
図14は、本実施形態に係る電子弦楽器1において実行されるピッチ抽出処理(
図9のステップS33の処理)を示すフローチャートである。
【0044】
ステップS111において、CPU41は、公知技術によりピッチを抽出して、音高を決定する。ここで、当該公知技術は、例えば、特開平1−177082号公報に記載の技術等がある。ステップS111の処理が終了すると、CPU41は、ピッチ抽出処理を終了する。
【0045】
以上、本実施形態の電子弦楽器1の構成及び処理について説明した。
本実施形態においては、CPU41は、検出された弾弦強度のレベルが所定の第1のレベルを超えたか否か判別し、所定の第1のレベルを超えたと判別された場合に、弾弦の検出された弦22と接触するフレット23の数が複数(例えば、10以上)という条件を満たしているか否か判別し、条件を満たしていると判別された場合に、予め定められたスラップ音の発音を、接続された音源45に対して指示する。
したがって、生の弦楽器で多用される、弦を指板に叩きつけて打撃音を得るスラップ奏法を実現できる。
【0046】
また、本実施形態においては、複数の弦22は、複数のフレット23が設けられた指板21上からブリッジ16に向けて張設されるとともに、ヘキサピックアップ12は、ブリッジ16に隣接して設けられ、CPU41は、弾弦の検出された弦22と接触状態にあるフレット23がブリッジ16より所定範囲内(例えば、フレット番号18以上)に位置するという条件を満たしているか否か判別する。
したがって、生の弦楽器で多用される、弦を指板に叩きつけて打撃音を得るスラップ奏法を、弦がフレットと接触する位置も考慮して、より精度良く実現できる。
【0047】
また、本実施形態においては、CPU41は、検出された弾弦強度のレベルが第1のレベルより低い第2のレベルを超えた場合に、弾弦の検出された弦22と、当該検出された弦22と接触しているフレット23の中で最もブリッジ16に近いフレット23とに基づいた音高の楽音の発音を、接続された音源45に対して指示する。
したがって、スラップ奏法ほど弾弦強度が大きくない場合、通常の奏法とみなして音高を決定して発音できる。
【0048】
また、本実施形態においては、CPU41は、第1のレベルを超えたと判別されたが、弾弦の検出された弦22と接触するフレット23の数が所定数以上(例えば、10以上)でかつ当該接触するフレットがブリッジ16より所定範囲内(例えば、フレット番号18以上)に位置するという条件を満たしていないと判別された場合に、検出された弦22と、当該検出された弦22と接触しているフレット23の中で最もブリッジ16に近いフレット23とに基づいた音高の楽音の発音を、接続された音源45に対して指示する。
したがって、スラップ奏法と弾弦強度が同等である場合であっても当該条件を満たさない場合には、通常の奏法とみなして音高を決定して発音できる。
【0049】
また、本実施形態においては、CPU41は、最終的に発音すべきスラップ音から、発音の指示される楽音を差し引いた差分音の発音を指示する。
したがって、通常の発音を除いたスラップ音のみを発音指示できる。
【0050】
また、本実施形態においては、CPU41は、検出された弾弦強度のレベルが第2のレベルを超えていない場合、弾弦の検出された弦22と、当該検出された弦22と接触しているフレット23の中で最もブリッジ16に近いフレットとに基づいて決定された音高を、差分音の音高とする。
したがって、弾弦強度が発音のレベルまで達していない場合に、前もって、差分音であるスラップ音のみの音高を決定できる。
【0051】
また、本実施形態においては、CPU41は、弦22の夫々とフレット23の夫々とが接触している状態か否かを検出する。
したがって、スラップ奏法の有無を的確に判別できる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、実施形態は例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換など種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書などに記載された発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0053】
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
複数のフレットが設けられた指板部上に張設された複数の弦と、
前記複数のフレット夫々と複数の弦夫々との間の状態を検出する状態検出手段と、
前記複数の弦のいずれかが弾弦されたことを検出するとともに、検出された弾弦の強度を検出する弾弦検出手段と、
前記弾弦検出手段により検出された弾弦強度のレベルが所定の第1のレベルを超えたか否か判別するレベル判別手段と、
このレベル判別手段により、所定の第1のレベルを超えたと判別された場合に、前記状態検出手段により、前記弾弦検出手段にて弾弦の検出された弦と接触状態にあるフレットの数が複数という条件を満たしているか否か判別する条件判別手段と、
前記条件判別手段により条件を満たしていると判別された場合に、予め定められたスラップ音の発音を、接続された音源に対して指示するスラップ音発音指示手段と、
を有する電子弦楽器。
[付記2]
前記複数の弦は、複数のフレットが設けられた指板部上からブリッジ部に向けて張設されるとともに、前記弾弦検出手段は、前記ブリッジ部に隣接して設けられ、
前記条件判別手段は、前記接触状態にあるフレットが前記ブリッジ部より所定範囲内に位置するという条件を満たしているか否か判別する、付記1に記載の電子弦楽器。
[付記3]
前記電子弦楽器はさらに、
前記レベル判別手段により前記検出された弾弦強度のレベルが前記第1のレベルより低い第2のレベルを超えた場合に、前記状態検出手段により、前記弾弦検出手段にて弾弦の検出された弦と、当該検出された弦と接触しているフレットの中で最もブリッジ部に近いフレットとに基づいた音高の楽音の発音を、接続された音源に対して指示する第1の通常音発音指示手段と、を有する付記1又は2に記載の電子弦楽器。
[付記4]
前記電子弦楽器はさらに、
前記第1のレベルを超えたと判別されたが、前記条件を満たしていないと判別された場合に、前記状態検出手段により、前記弾弦検出手段にて弾弦の検出された弦と、当該検出された弦と接触しているフレットの中で最もブリッジ部に近いフレットとに基づいた音高の楽音の発音を、接続された音源に対して指示する第2の通常音発音指示手段と、を有する付記1乃至3いずれかに記載の電子弦楽器。
[付記5]
前記スラップ音発音指示手段は、最終的に発音すべきスラップ音から、前記第1の通常音発音指示手段により発音の指示される楽音を差し引いた差分音の発音を指示する付記3記載の電子弦楽器。
[付記6]
前記電子弦楽器はさらに、
前記レベル判別手段により前記検出された弾弦強度のレベルが前記第2のレベルを超えていない場合、前記弾弦検出手段にて弾弦の検出された弦と、当該検出された弦と接触しているフレットの中で最もブリッジ部に近いフレットとに基づいて決定された音高を、前記差分音の音高とする差分音高指定手段を有する付記5に記載の電子弦楽器。
[付記7]
前記状態検出手段は、前記弦の夫々と前記フレットの夫々とが接触している状態か否かを検出する付記1に記載の電子弦楽器。
[付記8]
複数のフレットが設けられた指板部上に張設された複数の弦と、前記複数のフレット夫々と複数の弦夫々との間の状態を検出する状態検出手段と、前記複数の弦のいずれかが弾弦されたことを検出するとともに、検出された弾弦の強度を検出する弾弦検出手段と、を有する電子弦楽器に用いられる楽音生成方法であって、
前記弾弦検出手段により検出された弾弦強度のレベルが所定の第1のレベルを超えたか否か判別し、
所定の第1のレベルを超えたと判別された場合に、前記状態検出手段により、前記弾弦検出手段にて弾弦の検出された弦と接触状態にあるフレットの数が複数という条件を満たしているか否か判別し、
前記条件を満たしていると判別された場合に、予め定められたスラップ音の発音を、接続された音源に対して指示する、楽音生成方法。
[付記9]
複数のフレットが設けられた指板部上に張設された複数の弦と、前記複数のフレット夫々と複数の弦夫々との間の状態を検出する状態検出手段と、前記複数の弦のいずれかが弾弦されたことを検出するとともに、検出された弾弦の強度を検出する弾弦検出手段と、を有する電子弦楽器に用いられるコンピュータに、
前記弾弦検出手段により検出された弾弦強度のレベルが所定の第1のレベルを超えたか否か判別するレベル判別ステップと、
このレベル判別ステップにより、所定の第1のレベルを超えたと判別された場合に、前記状態検出手段により、前記弾弦検出手段にて弾弦の検出された弦と接触状態にあるフレットの数が複数という条件を満たしているか否か判別する条件判別ステップと、
前記条件判別ステップにより条件を満たしていると判別された場合に、予め定められたスラップ音の発音を、接続された音源に対して指示するスラップ音発音指示と、
を実行させるプログラム。