特許第6048158号(P6048158)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048158
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/10 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
   F24H1/10 302D
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-7242(P2013-7242)
(22)【出願日】2013年1月18日
(65)【公開番号】特開2014-137205(P2014-137205A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】草地 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】前嶋 佑輝
(72)【発明者】
【氏名】鍋島 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】中山 賢一
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 実開平5−59156(JP,U)
【文献】 特開平9−97119(JP,A)
【文献】 特開平9−96415(JP,A)
【文献】 特開平2−223765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源機構によって発生された熱量によって通過する水を加熱するように構成された熱交換器と、
前記熱交換器の下流側に配置された温度検出器と、
前記熱交換器の通過流量を検出するための流量検出器と、
前記温度検出器によって検出された出湯温度および当該出湯温度の設定温度に基づいて、所定の制御周期毎に前記熱源機構による発生熱量を制御するための制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記熱交換器の出力温度に対する前記温度検出器による出湯温度の検出遅れを補償するための補償温度を前記制御周期毎に推定するための推定手段と、
前記温度検出器によって検出された出湯温度と前記設定温度との偏差を前記補償温度によって補正した温度偏差に基づいて、前記熱源機構への要求発生熱量を設定するためのフィードバック制御手段とを含み、
前記推定手段は、
前記流量検出器によって検出された前記通過流量に応じて、前記要求発生熱量の変化に対する前記補償温度の変化の一次遅れの時定数を設定するための設定手段と、
今回の制御周期における、前記補償温度および前記要求発生熱量と設定された前記時定数とに基づいて、次回の制御周期における前記補償温度を算出するための算出手段を有する、給湯装置。
【請求項2】
前記算出手段は、
前記今回の制御周期で用いた前記補償温度を前記時定数に従って減衰させる演算と、前記今回の制御周期の要求発生熱量によって生じる前記熱交換器の出力温度の変化量を前記時定数に従って求める演算とによって、前記次回の制御周期における前記補償温度を算出する手段を有する、請求項1記載の給湯装置。
【請求項3】
前記設定手段は、
予め設定された、前記通過流量に対する前記時定数の特性を記憶するための記憶手段と、
前記今回の制御周期における前記通過流量に基づいて、前記記憶手段に記憶された特性に従って前記時定数を設定するための手段とを含む、請求項1または2記載の給湯装置。
【請求項4】
前記記憶手段は、前記給湯装置の機種毎に切り換えられる、請求項3記載の給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、給湯装置に関し、より特定的には、給湯装置の湯温制御に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置において、設定湯温に対する出湯温度の偏差を補償するように、フィードバック制御によって給湯器のバーナへの燃料供給量を調整することが特公平7−13543号公報(特許文献1)および特許第3763909号公報(特許文献2)等に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載されたフィードバック制御では、フィードバック制御に用いる制御定数を燃料の種類に応じて設定することが記載されている。また、特許文献2では、フィードバック制御とフィードフォワード制御との組合せによって、出湯温度を制御することが記載されている。
【0004】
また、特開平4−303201号公報(特許文献3)には、無駄時間を含む制御対象を制御するためのスミスコントローラを用いた制御装置を、給湯器システムに適用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7−13543号公報
【特許文献2】特許第3763909号公報
【特許文献3】特開平4−303201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
給湯装置では、出湯温度を検出するための温度センサの配置場所が制約されることによって、無駄時間を含む制御対象となってしまうことがある。このとき、特許文献3に記載されるように、スミス法を適用して制御系を設計することにより、当該無駄時間の影響を排除して出湯温度を制御することができる。
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載された給湯器システムの制御装置では、伝達関数ベースでの制御系の構成が開示されるに止まり、実際の制御演算処理がどのように実行されるかについては、十分記載されていない。
【0008】
一方で、実際にマイクロコンピュータ等を用いて制御系を実現する場合には、演算負荷や記憶容量が過大とならないように考慮して、スミス法を適用するための制御演算処理を実行させる必要がある。
【0009】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、演算負荷および必要な記憶容量を過大にすることなく、スミス法を適用した給湯装置の湯温制御のための演算処理を実行することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の給湯装置は、熱源機構によって発生された熱量によって通過する水を加熱するように構成された熱交換器と、熱交換器の下流側に配置された温度検出器と、熱交換器の通過流量を検出するための流量検出器と、制御手段とを含む。制御手段は、温度検出器に
よって検出された出湯温度および当該出湯温度の設定温度に基づいて、所定の制御周期毎に熱源機構による発生熱量を制御する。制御手段は、推定手段およびフィードバック制御手段を含む。推定手段は、熱交換器の出力温度に対する温度検出器による出湯温度の検出遅れを補償するための補償温度を制御周期毎に推定する。フィードバック制御手段は、温度検出器によって検出された出湯温度と設定温度との偏差を補償温度によって補正した温度偏差に基づいて、熱源機構への要求発生熱量を設定する。推定手段は、設定手段および算出手段を有する。設定手段は、流量検出器によって検出された通過流量に応じて、要求発生熱量の変化に対する補償温度の変化の一次遅れの時定数を設定する。算出手段は、今回の制御周期における、補償温度および要求発生熱量と設定された時定数とに基づいて、次回の制御周期における補償温度を算出する。
【0011】
上記の給湯装置においては、制御開始から現時点までの制御手段による操作入力(要求発生熱量)の履歴を記憶することなく、制御周期間での補償温度の変化量を求めるための簡易な演算によって、熱交換器の出力温度に対する温度検出器による出湯温度の検出遅れを補償するための補償温度を算出することができる。この結果、演算負荷および必要な記憶容量を過大にすることなく、スミス法を適用した給湯装置の湯温制御を実行することができる。特に、熱交換器の流量に応じて、補償温度の算出における一次遅れの時定数を設定することによって、上記簡易な演算によっても補償温度の精度を高めることができる。
【0012】
好ましくは、上記の給湯装置において、算出手段は、今回の制御周期で用いた補償温度を時定数に従って減衰させる第1の演算と、今回の制御周期の要求発生熱量によって生じる熱交換器の出力温度の変化量を時定数に従って求める第2の演算とによって、次回の制御周期における補償温度を算出する。
【0013】
このようにすると、スミス法を適用するための補償温度の演算を、前回の制御周期からの変化量に着目した簡易な演算によって実現することができる。
【0014】
また好ましくは、上記の給湯装置において、設定手段は、予め設定された、通過流量に対する時定数の特性を記憶するための記憶手段と、今回の制御周期における通過流量に基づいて、記憶手段に記憶された特性に従って時定数を設定するための手段とを含む。さらに好ましくは、記憶手段は、給湯装置の機種毎に切り換えられる。
【0015】
このようにすると、実機実験またはシミュレーション結果に基づき、通過流量に基づいて補償温度算出のための一次遅れ時定数を逐次設定するためのテーブルないし関数式を予め作成することができる。特に、給湯装置の機種毎に上記テーブルまたは関数式を機種毎に切換えることにより、本発明による湯温制御を異なる機種間で汎用的に適用することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、演算負荷および必要な記憶容量を過大にすることなく、スミス法を適用した給湯装置の湯温制御のための演算処理を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る給湯装置の概略構成図である。
図2図1に示した給湯装置のステップ応答特性を説明する概略波形図である。
図3】給湯装置の出湯温度を制御するためのフィードバック制御系の比較例を示すブロック線図である。
図4図3に示したフィードバック制御系による湯温制御の挙動を説明する概略波形図である。
図5図3に示した制御系にスミス法を適用したフィードバック制御系のブロック線図である。
図6図5に示したフィードバック制御系の等価的なブロック線図である。
図7】本発明の実施の形態に係る給湯装置での湯温制御のためのフィードバック制御系を示すブロック線図である。
図8】スミス補償器による演算式を導出する際の近似手法を説明するための概念図である。
図9】スミス補償器で用いる時定数と流量との関係を示す特性図である。
図10】本発明の実施の形態に係る給湯装置での湯温制御による制御処理手順を示すフローチャートである。
図11】本発明の実施の形態に係る給湯装置での湯温制御の挙動を説明する概略波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る給湯装置の概略構成図である。
【0019】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る給湯装置100は、給湯配管110と、バイパス配管120と、ガスバーナ130と、熱交換器140と、ガス比例弁150と、流量調整弁160と、制御装置200とを含む。
【0020】
給湯配管110は、入水口から給湯口までを連結するように構成される。流量調整弁160は、給湯配管110に介挿接続される。制御装置200により流量調整弁160の開度を調整することによって、出湯量を制御することができる。
【0021】
ガスバーナ130は、図示しないガス配管から供給されたガスと、図示しない燃焼ファンから供給された空気との混合気を燃焼することによって、熱量を発生する。ガスバーナ130に供給されるガス圧(すなわち、単位時間当たりのガス供給量)は、ガス比例弁150の開度に応じて制御される。なお、燃焼ファンからの供給空気量は、ガスバーナ130での燃焼における空燃比を一定に維持するように制御される。
【0022】
ガスバーナ130での燃焼により発生された熱量は、熱交換器140を経由して、給湯配管110を流れる水の温度上昇に用いられる。図1に例示した給湯装置100は、熱交換器140の出力と、熱交換器140を非通過とするためのバイパス配管120の出力とを混合して出湯するように構成されている。
【0023】
給湯配管110には、流量センサ210と、温度センサ220,230とが設けられる。流量センサ210によって、給湯配管110の流量Qが検出される。温度センサ220は、熱交換器140の上流側に設けられて、入水温度Tcを検出する。温度センサ230は、熱交換器140の下流側に設けられて、出湯温度Thを検出する。検出された流量Q、入水温度Tcおよび出湯温度Thは、制御装置200に入力される。すなわち、温度センサ230は「温度検出器」の一実施例に対応する。
【0024】
制御装置200は、たとえば、マイクロコンピュータ等によって構成されて、設定湯温Trに従って出湯温度Thを制御するための湯温制御を実行する。具体的には、制御装置200は、当該湯温制御のために必要とされるガスバーナ130での発生熱量である要求発生熱量を算出するとともに、当該要求発生熱量に従ってガス比例弁150の開度を制御するように構成される。このように、ガスバーナ130は、制御装置200によって発生熱量を制御可能な「熱源機構」の一実施例である。また、制御装置200は、「制御手段」の一実施例である。
【0025】
ガスバーナ130の発生熱量が変化すると、熱交換器140を経由して水温上昇に寄与する熱量が増加するので、出湯温度Thが変化する。理想的には、熱交換器140と近接した位置に温度センサ230♯を設けることにより、ガスバーナ130の熱量変化に伴う出湯温度Thの変化を速やかに検出することができる。
【0026】
しかしながら、図1の構成例では、熱交換器140からの出力と、バイパス配管120からの出力とが混合される混合点145の近傍では湯温が安定しない。このため、給湯装置100では、混合点145からある程度離して温度センサ230を配置することが必要となる。
【0027】
したがって、熱交換器140の下流側に配置された温度センサ230によって検出された出湯温度Thは、上記湯温制御によるガスバーナ130への要求発生熱量の変化に対応した温度変化に対して検出遅れを有するものとなっている。
【0028】
図2には、給湯装置100のステップ応答特性を説明する概略波形図が示される。図2には、一定流量下でガスバーナ130による発生熱量をステップ状に変化させた場合における、温度センサ230によって検出される出湯温度Thの推移が示される。
【0029】
図2を参照して、Th=T1である時刻t0において、ガスバーナ130へのガス供給圧をステップ状に増加させる。これにより、熱交換器140からの出力温度は上昇するが、温度センサ230の配置位置が熱交換器140から離れているため、出湯温度Thは、時刻t0から一定期間経過後の時刻taから上昇する。以下では、熱交換器140での温度変化が温度センサ230によって出湯温度Thの変化として検出されるまでの所要時間Lを、無駄時間Lと定義する。
【0030】
無駄時間Lが経過した時刻taからは、時刻t0以降における熱交換器140からの出力温度の上昇が、出湯温度Thによって検出される。なお、熱交換器140の発生熱量の変化に対する温度変化は、一次遅れ系で近似できる。以下では、図2中における、温度上昇開始(時刻ta)時点における温度上昇カーブの接線が最終到達温度T2と交わるまでの所要時間Tを、一次遅れ時間Tと定義する。
【0031】
すなわち、図1に示した給湯装置100は、要求発生熱量を入力とし、温度センサ230によって検出される出湯温度Thを出力とすれば、無駄時間要素(無駄時間L)と、一次要素(一次遅れ時間T)である温度プロセス要素とが直列接続された系として表現できる。
【0032】
図3には、給湯装置100の出湯温度Thを制御するための湯温制御系を示すブロック線図の比較例が示される。
【0033】
図3を参照して、制御対象300は、図1に示した給湯装置100から制御装置200を除いた構成部分に対応する。
【0034】
制御対象300の伝達関数は、上述のように、無駄時間要素(e-Ls)および温度プロセス要素(Gp(s))の積で示される。
【0035】
ここで、Gp(s)は、一次遅れ要素であるので、図2に示した一次遅れ時間Tを用いて、下記(1)式で示される。
【0036】
Gp(s)=k/(Ts+1)… (1)
制御対象300への操作入力U(s)は、給湯装置100に対する要求発生熱量を示す。また、制御対象300の出力Y(s)は、温度センサ230によって検出される出湯温度Thである。なお、一般的に、給湯装置では、要求発生熱量は、号数を単位として演算される。号数=1は、Q=1(L/min)の流量下で湯温を25℃上昇させるのに必要な熱量に相当する。したがって、以下では、操作入力U(s)である「要求発生熱量」を、入力号数とも称する。なお、係数kは、熱量(号数)および湯温の間の換算係数であり、上述した号数の定義から、k=25/Qで示される。
【0037】
制御対象300の目標値X(s)は、設定湯温Trに相当する。演算器310は、制御対象300の目標値X(s)および出力Y(s)の温度偏差E(s)を求める。E(s)=Tr−Thで示される。
【0038】
制御器320は、温度偏差E(s)に基づいて入力号数U(s)を演算する。制御器320は、代表的には、PIフィードバック制御を実行する。PI制御によれば、制御器320の伝達関数Gc(s)は、(2)式で示される。
【0039】
Gc(s)=Kp・E(s)+Ki・(E(s)/s) …(2)
式(2)の第1項は、比例制御(P制御)の演算項であり、第2項は積分制御(I制御)の演算項である。式(2)中のKpはP制御ゲインであり、KiはI制御ゲインである。
【0040】
図4は、図3に示したフィードバック制御系による湯温制御の挙動を説明する概略波形図である。図4には、出湯温度Th(t)が設定湯温Tr(図4中では一定値とする)に安定している状態で、時刻t1に温度上昇側の外乱が発生したケースが示される。
【0041】
図4を参照して、出湯温度Th♯(t)は、図1に点線で示した温度センサ230♯によって検出される仮想的な出湯温度である。すなわち、出湯温度Th♯(t)は、実際の出湯温度Th(t)から無駄時間Lによる検出遅れを取り除いたものに相当し、熱交換器140の出力温度に相当する。
【0042】
また、温度センサ230による実際の出湯温度Th(t)は、図3での出力Y(s)を時間領域に変換したy(t)に相当する。同様に、図4中のu(t)は、図3での入力号数U(s)を時間領域で示すものである。
【0043】
時刻t1での外乱入力に応じて、出湯温度Th♯(t)は上昇するが、実際の出湯温度Th(t)は、時刻t1から無駄時間Lが経過した時刻t2まで上昇しない。時刻t2から出湯温度Th(t)が上昇すると、図3に示したフィードバック制御系において出力Y(s)が上昇する。これに応じて、制御器320は、温度低下方向に操作入力を変化させる。この結果、時刻t2から入力号数u(t)が低下する。
【0044】
しかしながら、時刻t2以降での入力号数u(t)の低下による出湯温度の変化は、時刻t2から無駄時間Lが経過した時刻t3までは、出湯温度Thには現れない。このため、フィードバック制御によって、出湯温度Th♯(t)、すなわち、熱交換器140の出力温度が設定湯温Trに復帰した時刻tx以降においても、制御器320は、入力号数u(t)を継続的に低下させるように動作する。
【0045】
時刻t3以降では、フィードバック制御の効果による出湯温度Th(t)の低下が、温度センサ230によって検出される。そして、時刻t4において、出湯温度Th(t)が設定湯温Trに復帰する。この結果、時刻t4以降では、入力号数u(t)は温度上昇方向への変化に転じる。
【0046】
しかしながら、この一連の制御動作において、無駄時間Lの影響によって、時刻tx〜t4の間において入力号数u(t)が温度低下方向に変化を続けてしまうことから、出湯温度Th♯(t)に大幅なアンダーシュートが生じる。この結果、実際の出湯温度Th(t)にもアンダーシュートが発生して、設定湯温Trよりも湯温が低くなる状態が長期間続いてしまう。
【0047】
このように、無駄時間Lを含んで検出される出湯温度Th(t)に基づく単純なフィードバック制御(図3)では、給湯装置100の湯温制御を適切に行なうことが困難である。特に、制御器320でのフィードバックゲイン(Kpおよび/またはKi)を大きくするとオーバーシュートやアンダーシュートの発生が懸念される。このため、フィードバックゲインをそれほど高めることができなくなり、設定湯温Trに対する制御応答性が低下する虞がある。
【0048】
特許文献3にも記載されるように、無駄時間を含む制御対象に対処するために、従来より、スミス法の適用が提案されている。図5には、図3の制御系にスミス法を適用したフィードバック制御系のブロック線図が示される。
【0049】
図5図3と比較して、スミス法を適用したフィードバック制御系は、図3に示した制御系に加えて、スミス補償器350および演算器360をさらに含む。
【0050】
スミス補償器350の伝達関数P(s)は、下記(3)式で示される。
P(s)=Gp(s)・(e-Ls−1) …(3)
スミス補償器350は、入力号数U(s)および伝達関数P(s)の積を、演算器360へ出力する。演算器360は、演算器310によって求められた温度偏差E(s)と、スミス補償器350からのP(s)・U(s)とを加算することによって、スミス補償によって補正された温度偏差θ(s)を算出する。制御器320へは、単純な温度偏差E(s)ではなく、スミス補償によって補正された温度偏差θ(s)が入力される。
【0051】
ここで、θ(s)=E(s)+P(s)・U(s)であるから、図5の構成では、制御器320への入力は、θ(s)=X(s)−Y(s)+P(s)・U(s)=X(s)−(Y(s)−P(s)・U(s))となる。すなわち、実際に検出された出湯温度を−P(s)・U(s)だけ補正した温度がフィードバックされることになる。
【0052】
式(3)より、−P(s)・U(s)は、下記の式(4)で示される。
−P(s)・U(s)
=−Gp(s)・U(s)・(e-Ls−1)
=Gp(s)・U(s)−Gp(s)・U(s)・e-Ls …(4)
式(4)の第1項は、入力号数U(s)が、無駄時間Lを無視した温度プロセス要素Gp(s)へ入力されることによる出力Y(s)の予測値を示す。また、式(4)の第2項は、無駄時間L経過後における、入力号数U(s)が温度プロセス要素(Gp(s))へ入力されることによる出力Y(s)の変化量を示す。
【0053】
この結果、温度偏差θ(s)は、実際に検出された出力Y(s)に対して、無駄時間Lが経過するまでの出力変化の予測値を加えるとともに、無駄時間L経過後における出力変化を減算したものである。これにより、制御器320へ入力される温度偏差θ(s)は、無駄時間Lの影響を排除したものとなっていることが理解される。
【0054】
この結果、図5に示した制御系は、図6に示すフィードバック制御系に等価的に書換えられる。
【0055】
図6を参照して、制御対象300は、本来の温度プロセス要素302および無駄時間要素304との直列接続と等価である。さらに、図5に示したスミス補償器350によって、Gp(s)・U(s)を目標値X(s)と比較するフィードバック制御が実現される。すなわち、制御器320は、無駄時間Lの影響を排除した温度偏差に基づく制御演算(たとえば、式(2))によって、入力号数U(s)を設定することができる。
【0056】
図6から理解されるように、スミス法を用いることにより、無駄時間要素304の影響を排除したフィードバックループを構成することが可能となる。
【0057】
したがって、本実施の形態に係る給湯装置100では、図5に示したスミス法を適用したフィードバック制御系をベースとした湯温制御系を構築する。
【0058】
図7は、本発明の実施の形態に係る給湯装置での湯温制御系を示すブロック線図である。図7に示した制御系は、図5に示したブロック線図を時間領域で表したものである。
【0059】
図7を参照して、本実施の形態に係る給湯装置100の湯温制御系は、演算器310♯,360♯、スミス補償器350♯、および制御器320♯を含む。制御対象300♯は、図3等と同様に、図1に示した給湯装置100から制御装置200を除いた構成部分を時間領域で示したものに対応する。
【0060】
制御対象300♯は、入力号数u(t)の変化に応じて出湯温度Th(t)が変化する。出湯温度Th(t)は、温度センサ230による検出値であるので、入力号数u(t)の変化に対する出湯温度Th(t)の変化は、図2のステップ応答波形に示されるように、一次遅れ(一次遅れ時間T)および無駄時間Lを有するものとなる。
【0061】
演算器310♯は、設定湯温Tr(t)に対する出湯温度Th(t)の偏差を求める。演算器360♯は、演算器310♯の出力と、スミス補償器350♯から出力されるスミス補償温度Tsm(t)とを加算することによって、温度偏差Δθ(t)を算出する。制御器320は、演算器360♯からの温度偏差Δθ(t)に基づくフィードバック制御演算(代表的には、P制御またはPI制御)によって、給湯装置100(制御対象300♯)の入力号数u(t)を設定する。
【0062】
スミス補償器350♯の時間領域の関数p(t)は、式(3)に示した伝達関数P(s)を逆ラプラス変換することにより、下記の式(5)のように求めることができる。
【0063】
【数1】
【0064】
また、スミス補償器350から出力されるTsmは、伝達関数P(s)・U(s)を逆ラプラス変換することによって求めることができる。すなわち、式(6)の左辺は、Tsm(t)に相当する。
【0065】
【数2】
【0066】
式(6)中のΔtは、フィードバック制御の制御周期を示す。一例として、給湯装置100における無駄時間Lが数秒から20〜30秒程度であるのに対し、Δt=100(ms)程度に設定される。
【0067】
式(6)では、Δt毎に演算される入力号数u(t)が、制御周期毎に×exp(−Δt/T)ずつ減衰しながらTsm(t)に反映されることが理解される。また、現時点から無駄時間Lよりも前の入力号数u(t)の影響は、無駄時間Lが経過する前とは逆の極性でTsm(t)に反映される。無駄時間Lが経過すると、過去に予測した温度変化が、実際の出力(出湯温度Th(t))によって観測されるため、これを相殺するためである。
【0068】
式(6)から理解されるように、理論通りにスミス補償器350を構成するためには、制御開始から現時点までの操作入力、すなわち入力号数u(0)〜u(t−Δt)の各々の値を蓄積する必要がある。このように、スミス補償器350を構成するために、式(6)の演算をそのまま制御ソフトウェアで実現すると、制御装置200に要求される記憶容量および演算負荷が過大になる虞がある。
【0069】
このため、本実施の形態に係る給湯装置では、スミス補償器350を構成するための制御演算について、制御周期間におけるスミス補償温度Tsmの変化量を演算する形式とする。このため、まず上記式(6)について、Δt経過後における値を求めると、下記(7)式を得ることができる。
【0070】
【数3】
【0071】
式(7)を演算すると、式(8)のように展開することができる。なお、式(7),(8)の左辺は、Tsm(t+Δt)に相当する。
【0072】
【数4】
【0073】
さらに、式(8)を式(6)と比較すると、Tsm(t+Δt)を左辺とする下記の式(9)が成立する。
【0074】
【数5】
【0075】
式(9)の右辺第1項は、前回の制御周期におけるスミス補償温度を一次遅れ時間Tに従って減衰させたものであり、exp(−Δt/T)×Tsm(t)に相当する。また、右辺第2項は、入力号数u(t)が制御周期Δt後に生じさせる出湯温度(熱交換器140の出力温度)の変化量を一次遅れ時間Tに従って推定したものに相当する。さらに、右辺第3項は、現時点から無駄時間L以上前での入力号数u(t)に基づく項である。本実施の形態では、スミス補償器350を構成するための演算式について、当該第3項を無視する。これにより、下記の式(10)の近似式が得られる。
【0076】
【数6】
【0077】
図8には、式(10)を導出する際の近似手法を説明するための概念図が示される。
図8(a)には、現時刻t0までの入力号数u(t)が示されるとともに、これに対応するp(t)・u(t)が示される。図中では、p(t)・u(t)は、現時点までの経過時間τの関数であるP(τ)で表記されている。たとえば、u(t0)に対応するP(0)、u(t0−Δt)に対応するP(Δt)、および、u(t0−2Δt)に対応するP(2Δt)が図8(a)には示されている。
【0078】
式(6)に示されるように、τ<Lの領域では、P(τ)は、一次遅れ時間Tに従って制御周期Δt毎に減衰していく。また、τ≧Lの領域において、P(τ)の極性が、τ<Lの領域に対して反転する。τ≧Lの領域では、P(τ)は無駄時間Lに従って減衰する。
【0079】
式(6)に従えば、本来、スミス補償温度Tsm(t)は、図8(a)中において、現時点までのP(τ)の積算、すなわち、p(t)・u(t)の積算によって求められる。しかしながら、上述した式(10)の近似式では、τ<Lの領域からτ≧Lの領域に遷移する際の変化量を反映する項を無視しているので、等価的には、τ<Lの領域を積分することになる。
【0080】
このため、式(10)に従って演算したスミス補償温度の挙動は、式(6)に従って演算した本来のスミス補償温度の挙動とは異なってくる。具体的には、図8(a)の例では、τ≧Lの領域を除外するため、スミス補償温度の絶対値が本来よりも大きくなる。
【0081】
図8(b)には、式(6)に従って全領域を積算した本来のスミス補償温度Tsm(t)の推移が符号510で示される。これに対して、式(10)の近似式に従ってτ<Lの領域のみを積算したスミス補償温度Tsm(t)の推移が符号500で示される。
【0082】
符号500は、温度プロセス系の一次遅れ時間Tに従って減衰する一方で、符号510は、一次遅れ時間Tおよび無駄時間Lの両方の影響を受けて、一次遅れ時間Tよりも大きい時定数で減衰する。このため、式(10)中の時定数Tは、温度プロセス要素の一次遅れ時間Tをそのまま用いるのではなく、温度プロセス要素の一次遅れ時間Tおよび無駄時間Lを総合的に近似するように調整する必要がある。
【0083】
以上から、本実施の形態では、制御周期毎のスミス補償器350による演算式として下記(11)式の近似式を用いる。なお、式(11)は、第n番目(n:自然数)の制御周期における演算を示すものである。
【0084】
【数7】
【0085】
上述のように、式(11)では、一次遅れ時間Tとは異なる、スミス補償のための時定数T*が用いられる。すなわち、式(11)の右辺第1項は、前回の制御周期におけるスミス補償温度Tsm[n−1]を時定数T*に従って減衰させたものであり、右辺第2項は、入力号数u[n]が制御周期Δt後に生じさせる出湯温度(熱交換器140の出力温度)の変化量を時定数T*に従って推定したものである。このように、Tsm[n]は、Tsm[n−1]およびu[n]に基づいて、第n番目の制御周期から第(n+1)番目の制御周期の間に生じる温度変化を推定することによって求められる。時定数T*は、入力号数の変化に対する制御周期(Δt)間でのスミス補償温度Tsmの変化の一次遅れの時定数に相当する。
【0086】
たとえば、図9に示すように、時定数T*は、流量センサ210によって検出された流量Q、すなわち、熱交換器140の流量が大きくなるほど低下する一方で、流量Qが小さくなるほど上昇する特性を有する。このため、実機実験またはシミュレーション結果に基づき、給湯装置の機種毎に、図9に示す特性を予め求めることができる。そして、図9の特性に従って、流量Qから時定数T*を求めるための関数式あるいはテーブルを予め作成することができる。このようにすると、上記テーブルまたは関数式を機種毎に切換えることにより、本実施の形態による湯温制御を異なる機種間で汎用的に適用することができる。
【0087】
図7の例では、図9の特性を反映したテーブル355♯を予め作成するとともに、スミス補償器350♯が、現在の流量Q(t)を用いてテーブル355♯を参照することにより、逐次、時定数T*を設定することができる。すなわち、テーブル355♯は「記憶手段」の一実施例に対応する。
【0088】
図10は、本発明の実施の形態に係る給湯装置での湯温制御による制御処理手順を示すフローチャートである。図10には、図7に示したフィードバック制御系による第n番目の制御周期における処理が示される。当該処理は、制御装置200によって、所定の制御周期Δt毎に実行される。
【0089】
図10を参照して、制御装置200は、ステップS100により、今回の制御周期における必要データ、具体的には、設定湯温Tr[n]、出湯温度Th[n]および流量Q[n]をサンプリングする。
【0090】
そして、制御装置200は、ステップS110により、前回の制御周期で算出されたスミス補償温度Ts[n−1]を用いたスミス補償により、下記の式(12)に従って、温度偏差Δθ(n)を算出する。なお、n=1のときには、スミス補償温度の初期値Tsm(0)=0である。給湯装置100では、燃焼が停止されるたびに、スミス補償温度は初期値にクリアされる。
【0091】
Δθ[n]=Tr[n]−(Th[n]−Tsm[n−1])… (12)
すなわち、ステップS110の処理により、図7の演算器310♯,360♯の機能が実現される。また、式(12)より、式(11)によって求められたスミス補償温度Tsm[n]は、次回の第(n+1)番目の制御周期で用いられることが理解される。
【0092】
さらに、制御装置200は、ステップS120により、スミス補償によって補正された温度偏差Δθ[n]に基づき、下記の式(13)に従うフィードバック制御演算結果に従って入力号数u[n]を設定する。
【0093】
【数8】
【0094】
ステップS120の処理により、図7の制御器320♯の機能、すなわち、「フィードバック制御手段」に対応する機能が実現される。なお、式(13)では、PI制御によるフィードバック制御演算の例を示したが、P制御のみ、あるいはPID制御等、フィードバック制御の態様は、温度偏差Δθ[n]を用いるものであれば、限定されるものではない。
【0095】
制御装置200は、ステップS130により、図7に示したテーブル355♯の参照により、ステップS100で得られた流量Q(n)に応じて、スミス補償に用いる時定数T*を求める。そして、制御装置200は、ステップS140により、入力号数u[n]および前回の制御周期でのスミス補償温度Tsm[n−1]と、時定数T*とに基づいて、次回の制御周期での演算に用いられるTsm[n]を算出する。具体的には、ステップS130で求められた時定数T*が代入された式(11)に従って、ステップS120で算出された入力号数u[n]および前回の制御周期でのスミス補償温度Tsm[n−1]に基づいて、Tsm[n]が算出される。
【0096】
ステップS130およびS140の処理により、図7のスミス補償器350♯の機能、すなわち、「推定手段」に対応する機能が実現される。特に、ステップS130での処理によって「設定手段」に対応する機能が実現され、ステップS140での処理によって「算出手段」に対応する機能が実現される。
【0097】
図11は、本発明の実施の形態に係る給湯装置での湯温制御挙動を説明する概略波形図である。
【0098】
図11を参照して、図4の場合と同様に、出湯温度Th(t)が設定湯温Trに安定している状態で、時刻t1に温度上昇側の外乱が発生する。図11中において、設定湯温Trは一定である。
【0099】
外乱の発生により、熱交換器140の出力温度に相当する出湯温度Th♯(t)は時刻t1より上昇するが、温度センサ230によって検出される出湯温度Th(t)は、時刻t1から無駄時間Lが経過した時刻t2までは上昇しない。したがって、入力号数u(t)およびスミス補償温度Tsm(t)は、時刻t1〜t2の間変化しない。
【0100】
時刻t2からは、出湯温度Th(t)の上昇に応じて、図7に示したフィードバック制御系において、温度偏差Δθ(t)>0となる。この結果、出湯温度Th♯(t)を低下するために、入力号数u(t)が低下する。図4で説明したように、時刻t2から入力号数u(t)を低下しても、出湯温度Th(t)の低下が検出されるのは、無駄時間L経過後の時刻t3からである。
【0101】
しかしながら、図7に示したフィードバック制御系では、スミス補償温度Tsm(t)は、時刻t3以前においても、入力号数u(t)の低下を反映して低下する。この結果、温度偏差θ(t)は、出湯温度Th(t)の温度検出遅れを補償するように、単純な偏差Th(t)−Trよりも小さく算出される。これにより、Th♯(t)は、図4の場合のようなアンダーシュートを生じさせることなく、適切に設定湯温Trへ復帰する。
【0102】
時刻t3以降では、スミス補償温度Tsm(t)の絶対値は減少するので、温度偏差Δθ(t)も減少する。この結果、入力号数u(t)は、出湯温度Th(t)が設定湯温Trよりも高い状態であるにもかかわらず、温度上昇方向に変化することができる。この結果、出湯温度Th(t)についても、図4の場合のようなアンダーシュートの発生を防止することができる。
【0103】
このように、本実施の形態に係る給湯装置では、スミス補償器350♯を導入することによって、入力号数の変化による出湯温度の変化が温度センサ230によって検出される前に、当該温度変化を予測して温度偏差Δθを算出することができる。これにより、等価的には、図1中の温度センサ230♯の検出値、すなわち、熱交換器140の出力温度に基づいてフィードバック制御を実行することができる。
【0104】
この結果、制御器320♯でのフィードバック制御ゲイン(Kpおよび/またはKi)を大きくしても、オーバーシュートやアンダーシュートの発生を抑制することができる。これにより、フィードバックゲインを高めることが可能となるので、設定湯温Trに対する制御応答性を向上することができる。
【0105】
さらに、式(11)に示されるように、スミス補償器350♯による制御演算について、制御開始から現時点までの操作入力(入力号数)の各々の値を記憶することなく、前回の制御周期からの変化量に着目した簡易な演算によって、スミス補償温度を算出することができる。この結果、制御装置200の演算負荷および必要な記憶容量を過大にすることなく、スミス法を適用した給湯装置の湯温制御を実行することができる。
【0106】
なお、本実施の形態では、スミス法を適用したフィードバック制御による湯温制御を説明したが、フィードフォワード制御をさらに組み合わせた湯温制御とすることも可能である。この場合には、下記(14)式に従って、設定湯温Tr、入水温度Tcおよび流量Qに基づく、フィードフォワード制御による入力号数uff[n]を算出することが可能である。
【0107】
uff[n]=(Tr[n]−Tc[n])/25×Q[n] …(14)
そして、フィードフォワード制御によるuff[n]と、式(13)に従って算出されたフィードバック制御による入力号数u[t]との和を、給湯装置100への要求発生熱量を示す最終的な入力号数とすればよい。
【0108】
また、本実施の形態では、給湯配管110内の水を加熱するための熱量を発生する「熱源機構」としてガスバーナ130を例示したが、本発明の適用はこのような構成に限定されるものではない点を確認的に記載する。すなわち、制御装置200によって設定される要求発生熱量(入力号数)に応じて発生熱量を制御可能に構成されるものであれば、任意の「熱源機構」を採用することが可能である。たとえば、ガスバーナに代えて、石油を燃焼する石油バーナ、あるいはヒートポンプ機構等の任意の熱源を適用可能である。
【0109】
なお、本実施の形態では、無駄時間Lが生じる代表例としてバイパス配管120が設けられる構成を、出湯温度を検出するための温度センサの配置場所が制約される代表例として示したが、本発明の適用はこのような構成に限定されるものではない点を確認的に記載する。すなわち、バイパス配管が設けられない構成の給湯装置においても、温度検出に無駄時間が生じる系であれば、上述のスミス補償を適用したフィードバック制御を用いることによって、同様の効果を享受することが可能である。
【0110】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0111】
100 給湯装置、110 給湯配管、120 バイパス配管、130 ガスバーナ、140 熱交換器、145 混合点、150 ガス比例弁、160 流量調整弁、200 制御装置、210 流量センサ、220 温度センサ(熱交換器上流側)、230 温度センサ(熱交換器下流側)、300,300♯ 制御対象、302 温度プロセス要素、304 無駄時間要素、310,310♯,360,360♯ 演算器、320,320♯ 制御器、350,350♯ スミス補償器、355♯ テーブル、L 無駄時間(温度検出)、Q 流量、T 一次遅れ時間、T* 時定数(スミス補償器)、Tc 入水温度、Th 出湯温度、Tr 設定湯温、Tsm スミス補償温度、U(s),u(t),u[n] 入力号数(要求発生熱量)、X(s),x(t) 目標値(目標湯温)、Y(s),y(t) 出力(出湯温度)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11