特許第6048183号(P6048183)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6048183画像形成装置、およびプロセスカートリッジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048183
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】画像形成装置、およびプロセスカートリッジ
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/14 20060101AFI20161212BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20161212BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20161212BHJP
   G03G 5/147 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   G03G5/14 101F
   G03G5/14 101E
   G03G9/08
   G03G15/00 550
   G03G5/147 502
【請求項の数】4
【全頁数】57
(21)【出願番号】特願2013-19574(P2013-19574)
(22)【出願日】2013年2月4日
(65)【公開番号】特開2014-149502(P2014-149502A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 義之
(72)【発明者】
【氏名】是永 次郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 博史
【審査官】 清水 裕勝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−276470(JP,A)
【文献】 特開2006−184512(JP,A)
【文献】 特開2012−155282(JP,A)
【文献】 特開2006−091335(JP,A)
【文献】 特開2008−122763(JP,A)
【文献】 特開2006−084564(JP,A)
【文献】 特開2006−053268(JP,A)
【文献】 特開2005−107366(JP,A)
【文献】 特開2012−203400(JP,A)
【文献】 特開2012−203396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/00−5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基材と、金属酸化物および該金属酸化物に配位するアントラキノン誘導体を含有する下引層と、感光層と、反応性電荷輸送材料重合体を含有する表面保護層と、をこの順に具備する電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電された前記電子写真感光体の表面を露光して、静電潜像を形成する露光装置と、
体積平均粒径4.0μm以下のトナーを含む現像剤を収容し、且つ前記現像剤を表面に保持する現像剤保持体を有し、前記現像剤保持体の表面に保持した前記現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
前記転写装置によってトナー像を転写した後の前記電子写真感光体を、250μA以上350μA以下の定電流制御された電流にて帯電させ且つその後露光して除電する除電装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記アントラキノン誘導体が下記一般式(1)で示される構造を有する請求項1に記載の画像形成装置。
【化1】


(一般式(1)中、n1およびn2は、各々独立に0以上3以下の整数を表す。但し、n1およびn2の少なくとも一方は、1以上3以下の整数を表す(つまり、n1およびn2が同時に0を表さない)。m1およびm2は、各々独立に0または1の整数を表す。RおよびRは、各々独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、または炭素数1以上10以下のアルコキシ基を表す。)
【請求項3】
導電性基材と、金属酸化物および該金属酸化物に配位するアントラキノン誘導体を含有する下引層と、感光層と、反応性電荷輸送材料重合体を含有する表面保護層と、をこの順に具備する電子写真感光体と、
体積平均粒径4.0μm以下のトナーを含む現像剤を収容し、且つ前記現像剤を表面に保持する現像剤保持体を有し、前記電子写真感光体の表面に静電潜像が形成された後、前記現像剤保持体の表面に保持した前記現像剤により該静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体に転写した後の前記電子写真感光体を、250μA以上350μA以下の定電流制御された電流にて帯電させ且つその後露光して除電する除電装置と、を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項4】
前記アントラキノン誘導体が下記一般式(1)で示される構造を有する請求項3に記載のプロセスカートリッジ。
【化2】


(一般式(1)中、n1およびn2は、各々独立に0以上3以下の整数を表す。但し、n1およびn2の少なくとも一方は、1以上3以下の整数を表す(つまり、n1およびn2が同時に0を表さない)。m1およびm2は、各々独立に0または1の整数を表す。RおよびRは、各々独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、または炭素数1以上10以下のアルコキシ基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、およびプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、複写機およびレーザービームプリンター等の画像形成装置において利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、静電潜像保持体と、該静電潜像保持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、該静電潜像をトナーを用いて現像してトナー像を形成する現像手段と、該トナー像を記録媒体に転写する転写手段とを少なくとも有してなり、前記トナーは、平均粒子径Daが100nmから300nmの粒子を含む外添剤で表面が被覆され、かつ前記トナーと前記静電潜像保持体との非静電的付着力の平均値Fを、前記トナーの体積平均粒径Dtと、前記外添剤の平均粒子径Daとの積で割った値〔F/(Dt×Da)〕が、7.5×10N/m以下である画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−034268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、解像度および階調性に優れた画像を形成し得る画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
導電性基材と、金属酸化物および該金属酸化物に配位するアントラキノン誘導体を含有する下引層と、感光層と、反応性電荷輸送材料重合体を含有する表面保護層と、をこの順に具備する電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電された前記電子写真感光体の表面を露光して、静電潜像を形成する露光装置と、
体積平均粒径4.0μm以下のトナーを含む現像剤を収容し、且つ前記現像剤を表面に保持する現像剤保持体を有し、前記現像剤保持体の表面に保持した前記現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
前記転写装置によってトナー像を転写した後の前記電子写真感光体を、250μA以上350μA以下の定電流制御された電流にて帯電させ且つその後露光して除電する除電装置と、
を備える画像形成装置である。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記アントラキノン誘導体が下記一般式(1)で示される構造を有する請求項1に記載の画像形成装置である。
【0008】
【化1】

【0009】
(一般式(1)中、n1およびn2は、各々独立に0以上3以下の整数を表す。但し、n1およびn2の少なくとも一方は、1以上3以下の整数を表す(つまり、n1およびn2が同時に0を表さない)。m1およびm2は、各々独立に0または1の整数を表す。RおよびRは、各々独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、または炭素数1以上10以下のアルコキシ基を表す。)
【0010】
請求項3に係る発明は、
導電性基材と、金属酸化物および該金属酸化物に配位するアントラキノン誘導体を含有する下引層と、感光層と、反応性電荷輸送材料重合体を含有する表面保護層と、をこの順に具備する電子写真感光体と、
体積平均粒径4.0μm以下のトナーを含む現像剤を収容し、且つ前記現像剤を表面に保持する現像剤保持体を有し、前記電子写真感光体の表面に静電潜像が形成された後、前記現像剤保持体の表面に保持した前記現像剤により該静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体に転写した後の前記電子写真感光体を、250μA以上350μA以下の定電流制御された電流にて帯電させ且つその後露光して除電する除電装置と、を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0011】
請求項4に係る発明は、
前記アントラキノン誘導体が下記一般式(1)で示される構造を有する請求項3に記載のプロセスカートリッジである。
【0012】
【化2】

【0013】
(一般式(1)中、n1およびn2は、各々独立に0以上3以下の整数を表す。但し、n1およびn2の少なくとも一方は、1以上3以下の整数を表す(つまり、n1およびn2が同時に0を表さない)。m1およびm2は、各々独立に0または1の整数を表す。RおよびRは、各々独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、または炭素数1以上10以下のアルコキシ基を表す。)
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、金属酸化物および該金属酸化物に配位するアントラキノン誘導体を含有する下引層および反応性電荷輸送材料が重合された重合体を含有する表面保護層を具備する電子写真感光体と、体積平均粒径4.0μm以下のトナーを含む現像剤を収容する現像装置と、電子写真感光体を250μA以上350μA以下の定電流制御された電流にて帯電させ且つその後露光して除電する除電装置と、の何れか1つでも有しない場合に比べ、解像度および階調性に優れた画像を形成し得る画像形成装置が提供される。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、アントラキノン誘導体が前記一般式(1)で示される構造を有しない場合に比べ、階調性に優れた画像を形成し得る画像形成装置が提供される。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、金属酸化物および該金属酸化物に配位するアントラキノン誘導体を含有する下引層および反応性電荷輸送材料が重合された重合体を含有する表面保護層を具備する電子写真感光体と、体積平均粒径4.0μm以下のトナーを含む現像剤を収容する現像装置と、電子写真感光体を250μA以上350μA以下の定電流制御された電流にて帯電させ且つその後露光して除電する除電装置と、の何れか1つでも有しない場合に比べ、解像度および階調性に優れた画像を形成し得るプロセスカートリッジが提供される。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、アントラキノン誘導体が前記一般式(1)で示される構造を有しない場合に比べ、階調性に優れた画像を形成し得るプロセスカートリッジが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図2】本実施形態における電子写真感光体の層構成の一例を示す概略図である。
図3】本実施形態における電子写真感光体の層構成の他の例を示す概略図である。
図4】実施例にて出力した画像パターンを示す図である。
図5】実施例にて出力した画像パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
【0020】
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、電子写真感光体の表面を帯電する帯電装置と、帯電された前記電子写真感光体の表面を露光して、静電潜像を形成する露光装置と、前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、前記転写装置によってトナー像を転写した後の前記電子写真感光体を、帯電させ且つその後露光して除電する除電装置と、を備える。
尚、電子写真感光体は、導電性基材と下引層と感光層と表面保護層とをこの順に具備し、下引層には、金属酸化物および該金属酸化物に配位するアントラキノン誘導体を含有する。また、表面保護層には、反応性電荷輸送材料が重合された重合体を含有する。
更に、現像装置は、体積平均粒径4.0μm以下のトナーを含む現像剤を収容し、且つ前記現像剤を表面に保持する現像剤保持体を有し、前記現像剤保持体の表面に保持した前記現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する。
また、除電装置は、250μA以上350μA以下の定電流制御された電流にて電子写真感光体を帯電させ、且つその後該電子写真感光体に露光して除電する装置である。
【0021】
また、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、前記電子写真感光体と前記現像装置と前記除電装置とを備え、画像形成装置に着脱される。
【0022】
体積平均粒径4.0μm以下の小径のトナーを使用した場合、平均粒径が4.0μmより大きいトナーを使用した場合と比較して、より解像度に優れた画像が得られる。また、反応性電荷輸送材料が重合された重合体を含有する表面保護層により感光体の摩耗が抑制されて、長期に渡りカブリ、黒点と言った画質欠陥の発生が抑制される。
しかし、繰り返して同じ画像を形成し続けた場合、露光履歴の有無で画像濃度に差が発生し、焼付きゴーストが発生することがあった。
【0023】
これに対し本実施形態では、除電装置による帯電の際の印加電流値を250μA以上350μA以下とすることで、焼付きゴーストの発生を抑制し得る。尚、従来では通常除電装置による帯電の際の印加電流値は100μA程度であり、これに対して上記の範囲に上げることで電子写真感光体中の通過キャリア量が増し、露光履歴有無の蓄積キャリア量の差が小さくなるものと考えられ、これによって焼付きゴーストが抑制されるものと推察される。
【0024】
しかしながら、除電装置による帯電の際の印加電流値を増すことで、残留電位の発生がより顕著となりやすくなる。通過キャリア量が増すことは、電子写真感光体表面の残留電位の上昇と相互の関係にあり、露光後電位が上昇することにより現像電界が低下する。それにより、特に体積平均粒径4.0μm以下の小径のトナーを用いることで解像度に優れた画像が得られたとしても階調性が劣ることがあり、高画質の維持が容易でなかった。
【0025】
これに対し更に本実施形態では、電子写真感光体の下引層において、金属酸化物およびそれに配位するアントラキノン誘導体を有する化合物を用いることで、残留電位の発生が抑制され、長期に渡って解像度および階調性に優れた画像を形成し得る。
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態に係る画像形成装置について詳細に説明する。
図1は本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【0027】
本実施形態に係る画像形成装置101は、例えば、図1に示すように、回転自在に設けられた本実施形態のドラム状(円筒状)の電子写真感光体7を備えている。電子写真感光体7の周囲には、例えば、電子写真感光体7の外周面の移動方向に沿って、帯電装置8、露光装置10、現像装置11、転写装置12、クリーニング装置13および除電装置14がこの順で配置されている。除電装置14は、帯電部材14Aと除電露光部材14Bとを有している。なお、クリーニング装置13は配置しなくてもよい。
【0028】
−電子写真感光体−
図2および図3は、本実施形態に係る感光体の層構成の例を示す概略図である。図2に示す感光体は、導電性基材1と、導電性基材1の上に形成された下引層2と、下引層2の上に形成された感光層3と、感光層3の上に形成された表面保護層5と、から構成されている。また、図3に示すごとく、感光層3は電荷発生層31と電荷輸送層32との2層構造でもよい。
【0029】
尚、下引層2と感光層3との間、または下引層2と電荷発生層31との間に別途中間層を設けてもよい。更に、中間層は、導電性基材1と下引層2との間に設けてもよいし、無論、中間層を設けない態様であってもよい。
【0030】
次に、電子写真感光体の各要素について説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0031】
(導電性基材)
導電性基材としては、従来から使用されているものであれば、如何なるものを使用してもよい。例えば、薄膜(例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類、およびアルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)等の膜)を設けたプラスチックフィルム等、導電性付与剤を塗布または含浸させた紙、導電性付与剤を塗布または含浸させたプラスチックフィルム等が挙げられる。基材の形状は円筒状に限られず、シート状、プレート状としてもよい。
【0032】
導電性基材として金属パイプを用いる場合、表面は素管のままであってもよいし、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニングなどの処理が行われていてもよい。
【0033】
(下引層)
−構成−
下引層は、金属酸化物と、アントラキノン誘導体と、を含んで構成される。金属酸化物およびそれに配位するアントラキノン誘導体を含有することで残留電位の発生が抑制される。更に、結着樹脂等を含んでもよい。
【0034】
・金属酸化物
金属酸化物としては、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛等の粒子が挙げられる。
これらの中でも、金属酸化物としては、細線再現性、残留電位の上昇抑制の観点から、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛の粒子がよい。
【0035】
金属酸化物としては、望ましくは粒径が100nm以下、特に10nm以上100nm以下の導電粉が望ましく用いられる。ここでいう粒径とは、平均1次粒径を意味する。金属酸化物の平均1次粒径は、SEM(走査型電子顕微鏡)により観察し測定される値である。
金属酸化物の粒径が10nm以上であることにより、金属酸化物の表面積が大きくなり過ぎず、分散液におけるムラの発生が抑制される。一方、金属酸化物の粒径が100nm以下であることにより、2次粒子、またはそれ以上の高次粒子が1μm程度の粒径になることが効果的に抑制され、下引層内で金属酸化物の存在する部分と存在しない部分、いわゆる海島構造となることが抑制され、ハーフトーン濃度のムラなどの画質欠陥の発生が抑制される。
【0036】
金属酸化物としては10Ω・cm以上1010Ω・cm以下の粉体抵抗とすることが望ましい。これにより、下引層は、電子写真プロセス速度に対応した周波数で適切なインピーダンスを得ることが実現され易くなる。
【0037】
金属酸化物は、分散性等の諸特性の改善の目的で、少なくとも1種のカップリング剤で表面処理されていることがよい。
カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、およびアルミネート系カップリング剤から選ばれる少なくとも1種であることがよい。
具体的なカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミネート系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、ビス(ジオクチルピロホフェート)、イソプロピルトリ(N―アミノエチルーアミノエチル)チタネート等のチタネート系カップリング剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのカップリング剤は2種以上を混合して使用してもよい。
【0038】
カップリング剤の処理量は、金属酸化物に対して、0.1質量%以上3質量%以下であることがよく、望ましくは0.3質量%以上2.0質量%以下、より望ましくは0.5質量%以上1.5質量%以下である。
【0039】
なお、カップリング剤の処理量は、次のように測定する。
FT−IR法、29Si固体NMR法、熱分析、XPSなどの分析法があるが、FT−IR法が最も簡便である。FT−IR法では通常のKBr錠剤法でも、ATR法でもよい。少量の処理済金属酸化物をKBrと混合し、FT−IRを測定することで、カップリング剤の処理量を測定する。
【0040】
金属酸化物は、上記カップリング剤で表面処理後、抵抗値の環境依存性等の改善のために熱処理を行ってもよい。熱処理温度は、例えば、150℃以上300℃以下、処理時間は30分以上5時間以下がよい。
【0041】
金属酸化物の含有量は、電気特性維持の観点から、30質量%以上60質量%以下が望ましく、35質量%以上55質量%以下がより望ましい。
【0042】
・アントラキノン誘導体
アントラキノン誘導体は、下引層に含有される金属酸化物の表面と化学反応する材料、または金属酸化物の表面に吸着する材料であり、金属酸化物の表面に選択的に存在し得る。
アントラキノン誘導体としては、細線再現性、残留電位の上昇抑制の観点から、下記一般式(1)で示される化合物が望ましい。
【0043】
【化3】

【0044】
一般式(1)中、n1およびn2は、各々独立に0以上3以下の整数を表す。但し、n1およびn2の少なくとも一方は、1以上3以下の整数を表す(つまり、n1およびn2が同時に0を表さない)。m1およびm2は、各々独立に0または1の整数を表す。RおよびRは、各々独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、または炭素数1以上10以下のアルコキシ基を表す。
【0045】
一般式(1)で示されるアントラキノン誘導体の中でも、細線再現性、残留電位の上昇抑制の観点から、RおよびRの少なくとも一方が炭素数1以上10以下のアルコキシ基を示す化合物がよい。尚、m1およびm2の少なくとも一方が1であることがよい。
【0046】
ここで、一般式(1)中、RおよびRが表す炭素数1以上10以下のアルキル基としては、直鎖状、または分鎖状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。炭素数1以上10以下のアルキル基としては、望ましくは炭素数1以上8以下のアルキル基、より望ましくは炭素数1以上6以下のアルキル基である。
およびRが表す炭素数1以上10以下のアルコキシ基(アルコキシル基)としては、直鎖状、または分鎖状のいずれでもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、オクトキシ基等が挙げられる。炭素数1以上10以下のアルコキシ基としては、望ましくは炭素数1以上8以下のアルコキシル基、より望ましくは炭素数1以上6以下のアルコキシル基である。
【0047】
また、アントラキノン誘導体としては、下記一般式(2)で表される化合物であってもよい。
【0048】
【化4】

【0049】
一般式(2)中、n1、n2、n3、およびn4は、各々独立に0以上3以下の整数を表す。但し、n1およびn2の少なくとも一方は、1以上3以下の整数を表す(つまり、n1およびn2が同時に0を表さない)。また、n3およびn4の少なくとも一方は、1以上3以下の整数を表す(つまり、n3およびn4が同時に0を表さない)。m1およびm2は、各々0または1の整数を示す。RおよびRは、各々独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、または炭素数1以上10以下のアルコキシ基を表す。rは、1以上10以上の整数を表す。
【0050】
ここで、一般式(2)中、RおよびRが表す炭素数1以上10以下のアルキル基としては、直鎖状、または分鎖状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。炭素数1以上10以下のアルキル基としては、望ましくは炭素数1以上8以下のアルキル基、より望ましくは炭素数1以上6以下のアルキル基である。
およびRが表す炭素数1以上10以下のアルコキシ基(アルコキシル基)としては、直鎖状、または分鎖状のいずれでもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、オクトキシ基等が挙げられる。炭素数1以上10以下のアルコキシ基としては、望ましくは炭素数1以上8以下のアルコキシル基、より望ましくは炭素数1以上6以下のアルコキシル基である。
rは、更に2以上10以下であることが好ましい。
【0051】
ここで、アントラキノン誘導体の具体例を下記に示す。但し、これらに限定されるものではない。
尚、下記具体例化合物を以下においては「例示化合物」と称し、例えば下記(1−1)の化合物であれば「例示化合物(1−1)」と称す。
【0052】
【化5】

【0053】
【化6】
【0054】
アントラキノン誘導体の含有量は、化学反応または吸着する相手である金属酸化物の表面積および含有量と、各材料の電子輸送能力から決められるが、通常は下引層中において0.01質量%以上20質量%以下の範囲がよく、より望ましくは0.1質量%以上10質量%以下の範囲である。
アントラキノン誘導体の含有量が0.1質量%以上であることにより、アクセプター物質の効果が効率的に発現される。また、アントラキノン誘導体の含有量が20質量%以下であることにより、金属酸化物同士の凝集が抑制され、金属酸化物の下引層内での分布のムラが抑制され、良好な導電路が形成される。
【0055】
・結着樹脂
結着樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物等が挙げられる。
【0056】
・その他添加剤
その他添加剤としては、樹脂粒子が挙げられる。露光装置にレーザー等のコヒーレント光を用いた場合、モアレ像を防止することがよい。そのためには。下引層の表面粗さを、使用する露光用レーザー波長λの1/4n(nは上層の屈折率)以上1/2λ以下に調整することがよい。そこで、樹脂粒子を下引層中に添加すると、表面粗さの調整が実現される。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメチルメタアクリレート(PMMA)樹脂等が挙げられる。
また、その他添加剤としては、上記に限られず、周知の添加剤も挙げられる。
【0057】
−下引層の形成−
下引層の形成の際には、上記成分を溶媒に加えた下引層形成用塗布液が使用される。下引層形成用塗布液は、例えば、金属酸化物、アントラキノン誘導体や、その他、添加剤等を予備混合あるいは予備分散したものを、結着樹脂に分散させて得られる。
下引層形成用塗布液を得るために用いる溶剤としては前述した結着樹脂を溶解する公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系の溶剤が挙げられる。これらの溶剤は単独あるいは2種類以上混合して用いてもよい。
下引層形成用塗布液に金属酸化物を分散させる方法としては公知の分散方法が用いられる。例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどが挙げられる。
【0058】
下引層形成用塗布液の塗布方法としては浸漬塗布法、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法など公知の塗布方法が用いられる。
【0059】
下引層は、ビッカース強度が35以上50以下であることが望ましい。
【0060】
下引層の厚みは、画像の粒状性向上の観点から、15μm以上が望ましく、15μm以上30μm以下であることがより望ましく、20μm以上25μm以下が更に望ましい。
【0061】
(中間層)
中間層は、例えば、下引層と感光層との間に、電気特性向上、画質向上、画質維持性向上、感光層接着性向上などのために、設けてもよい。また、中間層は、導電性基材と下引層との間に設けてもよい。
【0062】
中間層に用いられる結着樹脂としては、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素原子などを含有する有機金属化合物などが挙げられる。これらの化合物は、単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いてもよい。中でも、ジルコニウムまたはシリコンを含有する有機金属化合物は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど点から好適である。
【0063】
中間層の形成の際には、上記成分を溶媒に加えた中間層形成用塗布液が使用される。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0064】
なお、中間層は上層の塗布性改善の他に、電気的なブロッキング層の役割も果たすが、膜厚が大きすぎる場合には電気的な障壁が強くなりすぎて減感や繰り返しによる電位の上昇を引き起こすことがある。したがって、中間層を形成する場合には、0.1μm以上3μm以下の膜厚範囲に設定することがよい。また、この場合の中間層を下引層として使用してもよい。
【0065】
(電荷発生層)
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂とを含んで構成される。また、電荷発生層は、電荷発生材料の蒸着膜で構成されていてもよい。
電荷発生材料としては、無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等のフタロシアニン顔料が挙げられ、特に、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜および28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.7゜、9.3゜、16.9゜、17.5゜、22.4゜および28.8゜に強い回折ピークを有する無金属フタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜および28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも9.6゜、24.1゜および27.2゜に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶が挙げられる。その他、電荷発生材料としては、キノン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスベンゾイミダゾール顔料、アントロン顔料、キナクリドン顔料等が挙げられる。また、これらの電荷発生材料は、単独または2種以上を混合して用いてもよい。
【0066】
電荷発生層を構成する結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は、単独または2種以上混合して用いてもよい。
【0067】
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、例えば10:1乃至1:10の範囲が望ましい。
【0068】
電荷発生層の形成の際には、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液が使用される。
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0069】
電荷発生層形成用塗布液を下引層上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
【0070】
電荷発生層の膜厚は、望ましくは0.01μm以上5μm以下、より望ましくは0.05μm以上2.0μm以下の範囲に設定される。
【0071】
(電荷輸送層)
電荷輸送層は、例えば、電荷輸送材料、結着樹脂等を含んで構成される。
電荷輸送材料としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体などの正孔輸送物質、クロラニル、ブロアントラキノン等のキノン系化合物、テトラアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質、および上記した化合物からなる基を主鎖または側鎖に有する重合体などが挙げられる。これらの電荷輸送材料は、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
電荷輸送層を構成する結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、塩素ゴム等の絶縁性樹脂、およびポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマー等があげられる。これらの結着樹脂は、単独または2種以上混合して用いてもよい。
なお、電荷輸送材料と上記結着樹脂との配合比は、例えば10:1乃至1:5が望ましい。
【0073】
電荷輸送層は、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液を用いて形成される。
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0074】
電荷輸送層の膜厚は、望ましくは5μm以上50μm以下、より望ましくは10μm以上40μm以下の範囲に設定される。
【0075】
・表面保護層
表面保護層5は、反応性電荷輸送材料が重合された重合体を含有する。
【0076】
〔反応性電荷輸送材料が重合された重合体〕
重合される電荷輸送材料は、少なくとも1つの反応性官能基を有する電荷輸送材料であり、例えば該反応性官能基としては−OH、−OR(Rは炭素数1以上18以下のアルキル基)、−NH、−SH、−COOH等が挙げられる。これらの反応性官能基を少なくとも2つ持つものが好適に挙げられ、さらには3つ以上持つものが好適に挙げられる。
【0077】
また、中でも、反応性基として水酸基(−OH)を有する反応性電荷輸送材料と、反応性基としてアルコキシ基(−OR(Rは炭素数1以上18以下のアルキル基))を有する反応性電荷輸送材料と、の少なくとも2種の反応性電荷輸送材料を併用することが望ましい。
【0078】
反応性官能基を有する電荷輸送材料としては、特に下記一般式(I)で示される化合物が望ましい。
F−((−R−X)n1(Rn3−Y)n2 (I)
一般式(I)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を示し、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基を示し、n1は0または1を示し、n2は1以上4以下の整数を示し、n3は0または1を示す。Xは酸素、NH、または硫黄原子を示し、Yは−OH、−OR(Rは炭素数1以上18以下のアルキル基)、−NH、−SH、または−COOHを示す。
【0079】
一般式(I)中、Fで示される正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基における正孔輸送能を有する化合物としては、アリールアミン誘導体が好適に挙げられる。アリールアミン誘導体としては、トリフェニルアミン誘導体、テトラフェニルベンジジン誘導体が好適に挙げられる。
【0080】
そして、一般式(I)で示される化合物は、更に下記一般式(II)で示される化合物であることが望ましい。
【0081】
【化7】

【0082】
一般式(II)中、Ar乃至Arは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基または置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは−(−R−X)n1(Rn3−Yを示し、cはそれぞれ独立に0または1を示し、kは0または1を示し、Dの総数は1以上4以下である。また、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基を示し、n1は0または1を示し、n3は0または1を示し、Xは酸素、NH、または硫黄原子を示し、Yは−OH、−OR(Rは炭素数1以上18以下のアルキル基)、−NH、−SH、または−COOHを示す。
【0083】
一般式(II)中、Dを示す「−(−R−X)n1(Rn3−Y」は、一般式(I)と同義であり、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基である。
尚、特にn1が0、n3が1であることが望ましく、その場合のRはメチレン基、エチレン基、プロピレン基が望ましく、メチレン基がより望ましい。また、Yとしては−OHがより望ましい。
【0084】
また、一般式(II)におけるDの総数は、一般式(I)におけるn2に相当し、望ましくは、2以上4以下であり、さらに望ましくは3以上4以下である。つまり、一般式(I)や一般式(II)において、望ましくは一分子中に2以上4以下、さらに望ましくは3以上4以下の、上記反応性官能基(−OH、−OR(Rは炭素数1以上18以下のアルキル基)、−NH、−SH、または−COOH)を有することが望ましい。
【0085】
一般式(II)中、Ar乃至Arとしては、下記式(1)乃至(7)のうちのいずれかであることが望ましい。なお、下記式(1)乃至(7)は、各Ar乃至Arに連結され得る「−(D)」と共に示す。
【0086】
【化8】

【0087】
[式(1)乃至(7)中、Rは水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルキル基もしくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基からなる群より選ばれる1種を表し、R10乃至R12はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Arは置換または未置換のアリーレン基を表し、Dおよびcは一般式(II)における「D」、「c」と同義であり、sはそれぞれ0または1を表し、tは1以上3以下の整数を表す。]
【0088】
ここで、式(7)中のArとしては、下記式(8)または(9)で表されるものが望ましい。
【0089】
【化9】

【0090】
[式(8)、(9)中、R13およびR14はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、tは1以上3以下の整数を表す。]
【0091】
また、式(7)中のZ’としては、下記式(10)乃至(17)のうちのいずれかで表されるものが望ましい。
【0092】
【化10】

【0093】
[式(10)乃至(17)中、R15およびR16はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基もしくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Wは2価の基を表し、qおよびrはそれぞれ1以上10以下の整数を表し、tはそれぞれ1以上3以下の整数を表す。]
【0094】
上記式(16)乃至(17)中のWとしては、下記(18)乃至(26)で表される2価の基のうちのいずれかであることが望ましい。但し、式(25)中、uは0以上3以下の整数を表す。
【0095】
【化11】

【0096】
また、一般式(II)中、Arは、kが0のときはAr乃至Arの説明で例示された上記(1)乃至(7)のアリール基であり、kが1のときはかかる上記(1)乃至(7)のアリール基から1つの水素原子を除いたアリーレン基であることが望ましい。
【0097】
一般式(I)で示される化合物の具体例としては、以下に示す化合物が挙げられる。なお、上記一般式(I)で示される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。
【0098】
【化12】

【0099】
【化13】

【0100】
【化14】

【0101】
【化15】

【0102】
【化16】

【0103】
【化17】

【0104】
【化18】

【0105】
【化19】

【0106】
表面保護層の形成に用いられる全成分(固形分として残る材料)中における上記の電荷輸送材料の含有量は、85質量%以上であることが好ましく、またその上限値としては98質量%以下であることが好ましい。より好ましくは90質量%以上95質量%以下である。
【0107】
〔グアナミン化合物、メラミン化合物〕
また、反応性電荷輸送材料が重合された重合体は、更にグアナミン構造またはメラミン構造を有する化合物と架橋された架橋重合体であってもよい。
【0108】
グアナミン構造を有する化合物(グアナミン化合物)は、グアナミン骨格を有する化合物であり、例えば、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、ホルモグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、シクロヘキシルグアナミンなどが挙げられる。
【0109】
グアナミン化合物としては、特に下記一般式(A)で示される化合物およびその多量体の少なくとも1種であることが望ましい。ここで、多量体は、一般式(A)で示される化合物を構造単位として重合されたオリゴマーであり、その重合度は例えば2以上200以下(望ましくは2以上100以下)である。なお、一般式(A)で示される化合物は、1種単独で用いてもよいが、2種以上を併用してもよい。
【0110】
【化20】

【0111】
一般式(A)中、Rは、炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基、炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基、または炭素数4以上10以下の置換若しくは未置換の脂環式炭化水素基を示す。R乃至Rは、それぞれ独立に水素、−CH−OH、または−CH−O−Rを示す。Rは、水素、または炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基を示す。
【0112】
一般式(A)において、Rを示すアルキル基は、炭素数が1以上10以下であるが、望ましくは炭素数が1以上8以下であり、より望ましくは炭素数が1以上5以下である。また、当該アルキル基は、直鎖状であってもよし、分鎖状であってもよい。
【0113】
一般式(A)中、Rを示すフェニル基は、炭素数6以上10以下であるが、より望ましくは6以上8以下である。当該フェニル基に置換される置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
【0114】
一般式(A)中、Rを示す脂環式炭化水素基は、炭素数4以上10以下であるが、より望ましくは5以上8以下である。当該脂環式炭化水素基に置換される置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
【0115】
一般式(A)中、R乃至Rを示す「−CH−O−R」において、Rを示すアルキル基は、炭素数が1以上10以下であるが、望ましくは炭素数が1以上8以下であり、より望ましくは炭素数が1以上6以下である。また、当該アルキル基は、直鎖状であってもよし、分鎖状であってもよい。望ましくは、メチル基、エチル基、ブチル基などが挙げられる。
【0116】
一般式(A)で示される化合物としては、特に望ましくは、Rが炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基を示し、R乃至Rがそれぞれ独立に−CH−O−Rで示される化合物である。また、Rは、メチル基またはn−ブチル基から選ばれることが望ましい。
【0117】
一般式(A)で示される化合物は、例えば、グアナミンとホルムアルデヒドとを用いて公知の方法(例えば、実験化学講座第4版、28巻、430ページ参照)で合成される。
【0118】
以下、一般式(A)で示される化合物の具体例を示すが、これらに限られるわけではない。また、以下の具体例は、単量体のものを示すが、これらを構造単位とする多量体(オリゴマー)であってもよい。
【0119】
【化21】

【0120】
【化22】

【0121】
【化23】

【0122】
【化24】

【0123】
一般式(A)で示される化合物の市販品としては、例えば、”スーパーベッカミン(R)L−148−55、スーパーベッカミン(R)13−535、スーパーベッカミン(R)L−145−60、スーパーベッカミン(R)TD−126”以上DIC社製、”ニカラックBL−60、ニカラックBX−4000”以上三和ケミカル(株)、などが挙げられる。
【0124】
また、一般式(A)で示される化合物(多量体を含む)は、合成後または市販品の購入後、残留触媒の影響を取り除くために、トルエン、キシレン、酢酸エチル、などの適当な溶剤に溶解し、蒸留水、イオン交換水などで洗浄してもよいし、イオン交換樹脂で処理して除去してもよい。
【0125】
次に、メラミン構造を有する化合物(メラミン化合物)は、特に下記一般式(B)で示される化合物およびその多量体の少なくとも1種であることが望ましい。ここで、多量体は、一般式(A)と同じく、一般式(B)で示される化合物を構造単位として重合されたオリゴマーであり、その重合度は例えば2以上200以下(望ましくは2以上100以下)である。なお、一般式(B)で示される化合物またはその多量体は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、前記一般式(A)で示される化合物またはその多量体と併用してもよい。
【0126】
【化25】

【0127】
一般式(B)中、R乃至R12はそれぞれ独立に、水素原子、−CH−OH、−CH−O−R13を示し、R13は炭素数1以上5以下の分岐してもよいアルキル基を示す。R13としてはメチル基、エチル基、ブチル基などが挙げられる。
【0128】
一般式(B)で示される化合物は、例えば、メラミンとホルムアルデヒドとを用いて公知の方法(例えば、実験化学講座第4版、28巻、430ページのメラミン樹脂に準じて合成される)で合成される。
【0129】
以下、一般式(B)で示される化合物の具体例を示すが、これらに限られるわけではない。また、以下の具体例は、単量体のものを示すが、これらを構造単位とする多量体(オリゴマー)であってもよい。
【0130】
【化26】

【0131】
一般式(B)で示される化合物の市販品としては、例えば、スーパーメラミNo.90(日油社製)、スーパーベッカミン(R)TD−139−60(DIC社製)、ユーバン2020(三井化学)、スミテックスレジンM−3(住友化学工業)、ニカラックMW−30(三和ケミカル(株))、などが挙げられる。
【0132】
また、一般式(B)で示される化合物(多量体を含む)は、合成後または市販品の購入後、残留触媒の影響を取り除くために、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどの適当な溶剤に溶解し、蒸留水、イオン交換水などで洗浄してもよいし、イオン交換樹脂で処理して除去してもよい。
【0133】
〔その他の成分〕
表面保護層5には、フッ素含有樹脂を含んでもよい。
フッ素含有樹脂としては、4フッ化エチレン樹脂(PTFE)、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂およびそれらの共重合体等が挙げられ、これらの中から1種あるいは2種以上を選択して用いる。尚、より望ましくは4フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂であり、特に望ましくは4フッ化エチレン樹脂である。
【0134】
用いるフッ素含有樹脂の平均一次粒径は0.05μm以上1μm以下が望ましく、更に望ましくは0.1μm以上0.5μm以下である。
尚、上記フッ素含有樹脂の平均一次粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置LA−700(堀場製作所製)を用いて、フッ素含有樹脂が分散された分散液と同じ溶剤に希釈した測定液を屈折率1.35で測定した値をいう。
【0135】
フッ素含有樹脂の含有量は、表面保護層の全固形分に対して、5質量%以上12質量%以下であることが好ましく、より好ましくは7質量%以上10質量%以下である。
【0136】
表面保護層5には、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などの熱硬化性樹脂を用いてもよい。また、スピロアセタール系グアナミン樹脂(例えば「CTU−グアナミン」(味の素ファインテクノ(株)))など、一分子中の官能基のより多い化合物を当該架橋物中の材料に共重合させてもよい。
【0137】
また、表面保護層5には界面活性剤を添加してもよい。用いる界面活性剤としては、フッ素原子、アルキレンオキサイド構造、シリコーン構造のうち少なくとも一種類以上の構造を含む界面活性剤が好適に挙げられる。
【0138】
表面保護層5には、酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系またはヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、などの公知の酸化防止剤を用いてもよい。酸化防止剤の添加量としては20質量%以下が望ましく、10質量%以下がより望ましい。
【0139】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマイド、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2−t−ブチル−6−(3−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
【0140】
表面保護層5には、前記電荷輸送材料や前記グアナミン化合物およびメラミン化合物の硬化を促進するための硬化触媒を含有させてもよい。硬化触媒として酸系の触媒が望ましく用いられる。酸系の触媒としては、酢酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、乳酸などの脂肪族カルボン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸などの芳香族カルボン酸、メタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、などの脂肪族、および芳香族スルホン酸類などが用いられるが、含硫黄系材料を用いることが望ましい。
【0141】
硬化触媒としての含硫黄系材料は、常温(例えば25℃)、または加熱後に酸性を示すものが望ましく、有機スルホン酸およびその誘導体の少なくとも1種が最も望ましい。表面保護層5中にこれら触媒の存在は、エネルギー分散型X線分析(EDS)、X線光電子分光法(XPS)等により容易に確認される。
【0142】
有機スルホン酸および/またはその誘導体としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)、ジノニルナフタレンジスルホン酸(DNNDSA)、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸等が挙げられる。これらの中でも、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸が望ましい。また、硬化性樹脂組成物中で、解離し得るものであれば、有機スルホン酸塩を用いてもよい。
【0143】
また、熱をかけた際に触媒能力が高くなる、所謂熱潜在性触媒を用いてもよい。
熱潜在性触媒として、たとえば有機スルホン化合物等をポリマーで粒子状に包んだマイクロカプセル、ゼオライトの如く空孔化合物に酸等を吸着させたもの、プロトン酸および/またはプロトン酸誘導体を塩基でブロックした熱潜在性プロトン酸触媒や、プロトン酸および/またはプロトン酸誘導体を一級もしくは二級のアルコールでエステル化したもの、プロトン酸および/またはプロトン酸誘導体をビニルエーテル類および/またはビニルチオエーテル類でブロックしたもの、三フッ化ホウ素のモノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素のピリジン錯体などが挙げられる。
【0144】
中でも、プロトン酸および/またはプロトン酸誘導体を塩基でブロックしたものが望ましい。
熱潜在性プロトン酸触媒のプロトン酸として、硫酸、塩酸、酢酸、ギ酸、硝酸、リン酸、スルホン酸、モノカルボン酸、ポリカルボン酸類、プロピオン酸、シュウ酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フタル酸、マレイン酸、ベンゼンスルホン酸、o、m、p−トルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、トリデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。また、プロトン酸誘導体として、スルホン酸、リン酸等のプロトン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属円などの中和物、プロトン酸骨格が高分子鎖中に導入された高分子化合物(ポリビニルスルホン酸等)等が挙げられる。プロトン酸をブロックする塩基として、アミン類が挙げられる。
【0145】
アミン類は、1級、2級または3級アミンに分類される。特に制限はなく、いずれも使用してもよい。
【0146】
1級アミンとして、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、セカンダリーブチルアミン、アリルアミン、メチルヘキシルアミン等が挙げられる。
【0147】
2級アミンとして、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジn−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジt−ブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、N−イソプロピルN−イソブチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジセカンダリーブチルアミン、ジアリルアミン、N−メチルヘキシルアミン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、モルホリン、N−メチルベンジルアミン等が挙げられる。
【0148】
3級アミンとして、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリn−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリt−ブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアリルアミン、N−メチルジアリルアミン、トリアリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−ジアミノエタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラアリル−1,4−ジアミノブタン、N−メチルピペリジン、ピリジン、4−エチルピリジン、N−プロピルジアリルアミン、3−ジメチルアミノプロパノ−ル、2−エチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2,4,6−コリジン、2−メチル−4−エチルピリジン、2−メチル−5−エチルピリジン、N,N,N’,N’ −テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N−エチル−3−ヒドロキシピペリジン、3−メチル−4−エチルピリジン、3−エチル−4−メチルピリジン、4−(5−ノニル)ピリジン、イミダゾ−ル、N−メチルピペラジン等が挙げられる。
【0149】
市販品としては、キングインダストリーズ社製の「NACURE2501」(トルエンスルホン酸解離、メタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.0以上pH7.2以下、解離温度80℃)、「NACURE2107」(p−トルエンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH8.0以上pH9.0以下、解離温度90℃)、「NACURE2500」(p−トルエンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH6.0以上pH7.0以下、解離温度65℃)、「NACURE2530」(p−トルエンスルホン酸解離、メタノール/イソプロパノール溶媒、pH5.7以上pH6.5以下、解離温度65℃)、「NACURE2547」(p−トルエンスルホン酸解離、水溶液、pH8.0以上pH9.0以下、解離温度107℃)、「NACURE2558」(p−トルエンスルホン酸解離、エチレングリコール溶媒、pH3.5以上pH4.5以下、解離温度80℃)、「NACUREXP−357」(p−トルエンスルホン酸解離、メタノール溶媒、pH2.0以上pH4.0以下、解離温度65℃)、「NACUREXP−386」(p−トルエンスルホン酸解離、水溶液、pH6.1以上pH6.4以下、解離温度80℃)、「NACUREXC−2211」(p−トルエンスルホン酸解離、pH7.2以上pH8.5以下、解離温度80℃)、「NACURE5225」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH6.0以上pH7.0以下、解離温度120℃)、「NACURE5414」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、キシレン溶媒、解離温度120℃)、「NACURE5528」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH7.0以上pH8.0以下、解離温度120℃)、「NACURE5925」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、pH7.0以上pH7.5以下、解離温度130℃)、「NACURE1323」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、キシレン溶媒、pH6.8以上pH7.5以下、解離温度150℃)、「NACURE1419」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、キシレン/メチルイソブチルケトン溶媒、解離温度150℃)、「NACURE1557」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、ブタノール/2−ブトキシエタノール溶媒、pH6.5以上pH7.5以下、解離温度150℃)、「NACUREX49−110」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.5以上pH7.5以下、解離温度90℃)、「NACURE3525」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH7.0以上pH8.5以下、解離温度120℃)、「NACUREXP−383」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、キシレン溶媒、解離温度120℃)、「NACURE3327」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.5以上pH7.5以下、解離温度150℃)、「NACURE4167」(リン酸解離、イソプロパノール/イソブタノール溶媒、pH6.8以上pH7.3以下、解離温度80℃)、「NACUREXP−297」(リン酸解離、水/イソプロパノール溶媒、pH6.5以上pH7.5以下、解離温度90℃、「NACURE4575」(リン酸解離、pH7.0以上pH8.0以下、解離温度110℃)等が挙げられる。
これらの熱潜在性触媒は単独または二種類以上組み合わせても使用される。
【0150】
ここで、触媒の配合量は、塗布液におけるフッ素含有樹脂を除いた全固形分に対し、0.1質量%以上10質量%以下の範囲であることが望ましく、特に0.1質量%以上5質量%以下が望ましい。
【0151】
〔表面保護層の形成方法〕
表面保護層5は、溶媒中に前述の各成分を含む表面保護層形成用の塗布液を準備し、該塗布液を塗布して塗布膜を形成する塗布工程と、前記塗布膜を加熱して少なくとも反応性電荷輸送材料を重合して重合体を形成させ且つ乾燥させて溶媒を除去する加熱工程と、を経て形成される。
【0152】
尚、表面保護層用塗布液に用いられる溶媒としては、例えばシクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン等の環状脂肪族ケトン化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロペンタノール等の環状或いは直鎖状アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等の直鎖状ケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状或いは直鎖状エーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒等が挙げられる。溶媒は1種を単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
【0153】
前記加熱工程においては、例えば温度100℃以上170℃以下で30分以上60分以下加熱することで前述の反応性官能基を有する電荷輸送材料が重合され、更に前述のグアナミン化合物やメラミン化合物を添加した場合であれば架橋重合が進行することで重合体が形成され、且つ溶媒が除去されて表面保護層5が得られる。
【0154】
(単層型の感光層)
単層型の感光層(電荷発生/電荷輸送層)は、例えば、結着樹脂、電荷発生材料、電荷輸送材料を含んで構成される。これら材料については、電荷発生層や電荷輸送層で説明したものが好適に挙げられる。
単層型の感光層において、電荷発生材料の含有量は10質量%以上85質量%以下が望ましく、より望ましくは20質量%以上50質量%以下である。また、電荷輸送材料の含有量は5質量%以上50質量%以下とすることが望ましい。
単層型の感光層の形成方法は、電荷発生層や電荷輸送層の形成方法が適用される。単層型感光層の厚さは5μm以上50μm以下が望ましく、10μm以上40μm以下とするのがさらに望ましい。
【0155】
(その他)
本実施形態に係る電子写真感光体において、感光層や表面保護層には、画像形成装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光・熱による感光体の劣化を防止する目的で、感光層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤などの添加剤を添加してもよい。
また、感光層や表面保護層には、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として少なくとも1種の電子受容性物質を添加してもよい。
また、感光層や表面保護層には、各層を形成する塗布液にレベリング剤としてシリコーンオイルを添加し、塗膜の膜厚ムラを抑制してもよい。
【0156】
−帯電装置−
帯電装置8は、電源9に接続され、電源9により電圧が印加され、電子写真感光体7の表面を帯電する。
帯電装置8としては、例えば、導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触方式の帯電器が挙げられる。また、帯電装置8としては、例えば、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も挙げられる。帯電装置8としては、接触方式の帯電器がよい。
【0157】
−露光装置−
露光装置10は、帯電した電子写真感光体7を露光して電子写真感光体7上に静電潜像を形成する。
露光装置10としては、例えば、電子写真感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体7の分光感度領域にあるものがよい。半導体レーザーの波長としては、例えば、780nm前後に発振波長を有する近赤外がよい。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザーや青色レーザーとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザーも利用してもよい。また、露光装置10としては、例えばカラー画像形成のためにはマルチビーム出力するタイプの面発光型のレーザー光源も有効である。
【0158】
−現像装置−
現像装置11は、トナーを含む現像剤を収容し、且つ現像剤を表面に保持する現像ロール11A(現像剤保持体の一例)を有し、現像ロール11Aの表面に保持した現像剤により、電子写真感光体7の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する。なお、現像装置11は、例えば、現像剤を収容する容器内に、現像領域で電子写真感光体7に対向して現像ロール11Aを配置している。
【0159】
以下、現像装置11に使用される現像剤について説明する。
現像剤は、トナー単独の一成分現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤であってもよい。
【0160】
・トナー
トナーは、体積平均粒径4.0μm以下(望ましくは2.5μm以上3.8μm以下、より望ましくは3.0μm以上3.5μm以下)の小径トナーが適用される。体積平均粒径が上記範囲であることにより、階調性が優れ且つ高い解像度の画像が形成される。
また、トナーの平均円形度は、0.900以上0.998以下であることがよく、望ましくは0.950以上0.980以下である。
なお、トナーの体積平均粒径および平均円形度は、トナー粒子の体積平均粒径および平均円形度に相当する。
【0161】
更に、トナーの平均形状係数SF1は100以上130以下がよく、望ましくは110以上130以下である。
【0162】
ここで、トナー(トナー粒子)の体積平均粒径D50vの測定法は、次の通りである。
まず、分散剤として界面活性剤(望ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)の5質量%水溶液2ml中に、測定試料を0.5mg以上50mg以下加え、これを電解液100ml以上150ml以下中に添加した。この測定試料を懸濁させた電解液を超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーII型(ベックマン−コールター社製)により、アパーチャー径が100μmのアパーチャーを用いて、粒径が2.0μm以上60μm以下の範囲の粒子の粒度分布を測定する。測定する粒子数は50,000とする。
得られた粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、小粒径側から体積累積分布を引いて、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとする。
【0163】
一方、トナー(トナー粒子)の平均円形度は、(円相当周囲長)/(周囲長)[(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)]により求められ、測定対象となるトナーを吸引採取し、扁平な流れを形成させ、瞬時にストロボ発光させることにより静止画像として粒子像を取り込み、その粒子像を画像解析するフロー式粒子像解析装置(例えばシスメックス社製のFPIA−2100)によって求める。なお、平均円形度を求める際のサンプリング数は3500個である。
【0164】
また、形状係数SF1は下記式により求められる。
式:SF1=100π×(ML)/(4×A)
上記式中、MLは粒子の最大長、Aは粒子の投影面積である。粒子の最大長と投影面積は、スライドガラス上にサンプリングした粒子を光学顕微鏡により観察し、ビデオカメラを通じて画像解析装置(LUZEX III、NIRECO社製)に取り込んで、画像解析を行うことにより求められる。この際のサンプリング数は100個以上で、その平均値を用いて、上記式に示す形状係数を求める。
【0165】
−トナーの構成−
トナーは、トナー粒子単独で構成されていてもよいし、トナー粒子と外添剤とを含んで構成されていてもよい。
【0166】
トナー粒子は、例えば、結着樹脂や、その他、着色剤、離型剤、その他内添剤等を含有して構成される。
【0167】
結着樹脂としては、特に制限はないが、スチレン類(例えばスチレン、クロロスチレン等)、モノオレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等)、ビニルエステル類(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等)、α−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等)、ビニルケトン類(例えばビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)等の単独重合体および共重合体、ジカルボン酸類とジオール類との共重合によるポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0168】
特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
また、代表的な結着樹脂としては、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等も挙げられる。
【0169】
着色剤としては、磁性粉(例えばマグネタイト、フェライト等)、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等が代表的なものとして挙げられる。
【0170】
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成或いは鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0171】
その他内添剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等が挙げられる。
【0172】
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられ、該無機粒子として、SiO、TiO、Al、CuO、ZnO、SnO、CeO、Fe、MgO、BaO、CaO、KO、NaO、ZrO、CaO・SiO、KO・(TiO、Al・2SiO、CaCO、MgCO、BaSO、MgSO等が挙げられる。
【0173】
外添剤の表面は、予め疎水化処理をしてもよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0174】
−トナーの製造方法−
トナーは、例えば、トナー粒子を得た後、外添剤と混合してもよい。
トナー粒子の製造方法としては、特に製造方法により限定されるものではないが、例えば、結着樹脂や、その他着色剤、離型剤その他内添剤等を加えて混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力または熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液や、その他着色剤、離型剤その他内添剤等の分散液と、を混合し、凝集、加熱融着する乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体や、その他着色剤、離型剤その他内添剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂や、その他着色剤、離型剤その他内添剤等の溶液と、を水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等が挙げられる。
また、トナー粒子は、上記方法で得られたトナー粒子をコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造のトナー粒子としてもよい。
なお、トナー粒子の製造方法としては、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が望ましく、乳化重合凝集法が特に望ましい。
【0175】
そして、トナーは、外添剤を含む場合、トナー粒子および外添剤をヘンシェルミキサーまたはVブレンダー等で混合することによって製造される。また、トナー粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添してもよい。
【0176】
・キャリア
キャリアとしては、例えば、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉またはそれ等の表面に樹脂コーティングを施したものが挙げられる。
なお、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、例えば、トナー:キャリア=1:100から30:100程度の範囲が挙げられる。
【0177】
−転写装置−
転写装置12は、電子写真感光体7上に現像されたトナー像を記録紙に転写する。
転写装置12としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0178】
−クリーング装置−
クリーニング装置13は、転写後の電子写真感光体7上に残存するトナーを除去する。
クリーニング装置13は、電子写真感光体7に対して線圧10g/cm以上150g/cm以下で接するクリーニングブレードを有することが望ましい。クリーニング装置13は、例えば、筐体と、クリーニングブレードと、クリーニングブレードの電子写真感光体7回転方向下流側に配置されるクリーニングブラシと、を含んで構成される。また、クリーニングブラシには、例えば、固形状の潤滑剤が接触して配置される。
【0179】
−除電装置−
除電装置14は、転写装置12によってトナー像を転写した後の電子写真感光体7を帯電させ且つその後露光して除電する装置である。例えば、図1に示すごとく、帯電部材14Aと除電露光部材14Bとを有しており、帯電の際には印加電流値250μA以上350μA以下の定電流制御された電流にて帯電させる。
印加電流値が上記下限値未満であると、焼付きゴーストの発生が抑制されない。一方、上記上限値を超えると、電子写真感光体の残留電位が上昇する。
【0180】
上記印加電流値は、更に270μA以上320μA以下の範囲が望ましい。
【0181】
上記印加電流値は、除電装置における帯電部材14A(例えばスコロトロンや帯電ローラ等)と感光体との間に電流計(岩通計測社製、VOAC7412)を設置し、除電の際に除電装置から感光体に流れる電流を測定する。
尚、本明細書に記載の数値は上記方法によって測定されたものである。
【0182】
帯電部材14Aは、不図示の電源に接続されており、電子写真感光体7の表面を帯電する。帯電部材14Aとしては、非接触方式の帯電部材も接触方式の帯電部材も用い得る。尚、図1には非接触方式のコロナ放電を利用した帯電器が示されており、例えばスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等が挙げられる。また、接触方式の帯電部材としては、例えば導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触方式の帯電器が挙げられる。
帯電部材14Aとしては、非接触方式の帯電器がよい。
【0183】
除電装置14は、電子写真感光体7の表面に対して帯電部材14Aによる帯電の後、除電露光装置(イレーズ装置)14Bによって露光して除電を行う。
除電露光装置14Bは、例えば、電子写真感光体7の軸方向幅方向全域にわたって除電光を照射して、電子写真感光体7の表面に生じた露光装置10による露光部と非露光部との電位差を除去する。
除電露光装置14Bの光源としては、特に制限はなく、例えば、タングステンランプ(例えば白色光)、発光ダイオード(LED:例えば赤色光)等が挙げられる。
【0184】
−定着装置−
画像形成装置101は、転写工程後の記録紙Pにトナー像を定着させる定着装置15を備えている。定着装置としては、特に制限はなく、それ自体公知の定着器、例えば熱ローラ定着器、オーブン定着器等が挙げられる。
【0185】
次に、本実施形態に係る画像形成装置101の動作について説明する。まず、電子写真感光体7が矢印Aで示される方向に沿って回転すると同時に、帯電装置8により負に帯電する。
【0186】
帯電装置8によって表面が負に帯電した電子写真感光体7は、露光装置10により露光され、表面に静電潜像が形成される。
【0187】
電子写真感光体7における静電潜像の形成された部分が現像装置11に近づくと、現像装置11により、静電潜像にトナーが付着し、トナー像が形成される。
【0188】
トナー像が形成された電子写真感光体7が矢印A方向にさらに回転すると、転写装置12によりトナー像は記録紙Pに転写される。これにより、記録紙Pにトナー像が形成される。
【0189】
画像が形成された記録紙Pは、定着装置15でトナー像が定着される。
【0190】
<プロセスカートリッジ>
本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、前記した本実施形態における電子写真感光体7と現像装置11と除電装置14とを備えたプロセスカートリッジを画像形成装置に着脱させる形態であってもよい。
本実施形態に係るプロセスカートリッジの構成は、少なくとも、前記本実施形態に係る電子写真感光体7、現像装置11および除電装置14を備えていればよく、これらのほかに、例えば、帯電装置8、露光装置10、転写装置12、およびクリーニング装置13から選択される少なくとも1つの構成部材を備えていてもよい。
【0191】
また、本実施形態に係る画像形成装置は、上記構成に限られず、例えば、電子写真感光体7の周囲であって、転写装置12よりも電子写真感光体7の回転方向下流側でクリーニング装置13よりも電子写真感光体7の回転方向上流側に、残留したトナーの極性を揃え、クリーニングブラシで除去しやすくするためのクリーニング用除電装置を設けた形態であってもよい。
【0192】
また、本実施形態に係る画像形成装置は、上記構成に限れず、周知の構成、例えば、電子写真感光体7に形成したトナー像を中間転写体に転写した後、記録紙Pに転写する中間転写方式の画像形成装置を採用してもよいし、タンデム方式の画像形成装置を採用してもよい。
【実施例】
【0193】
以下、実施例および比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。尚、以下において「部」および「%」は、特に断りのない限り、質量基準を表す。
【0194】
<<現像剤>>
[比較現像剤1]
(比較トナー粒子1の作製)
−結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成−
加熱乾燥した3口フラスコに、エチレングリコール124部、5−スルホイソフタル酸ナトリウムジメチル22.2部、セバシン酸ジメチル213部、と触媒としてジブチル錫オキサイド0.3部を入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で5時間攪拌を行った。その後、減圧下にて220℃まで徐々に昇温を行い4時間攪拌し、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂(1)220部を合成した。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)で、得られた結晶性ポリエステル樹脂(1)の重量平均分子量(MW)は19000であり、数平均分子量(Mn)は5800であった。
また、結晶性ポリエステル樹脂(1)の溶融温度(Tm)を、前述の測定方法により、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は70℃であった。
【0195】
−樹脂分散液の調製−
結晶性ポリエステル樹脂(1)150部を蒸留水850部中に入れ、80℃に加熱しながらホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラクス)にて混合攪拌して、樹脂粒子分散液を得た。
【0196】
−着色剤分散液の調製−
カーボンブラック250部、アニオン界面活性剤20部(第一工業製薬(株)社製:ネオゲンRK)、イオン交換水700部を混合し、溶解させた後、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラクス)を用いて分散し、着色剤を分散させてなる着色剤分散液を調製した。
【0197】
−離型剤分散液の調製−
パラフィンワックス(HNP0190、日本精蝋社製、溶融温度85℃)100部、カチオン性界面活性剤(サニゾールB50、花王社製)5部、イオン交換水240部を、丸型ステンレス鋼製フラスコ中でホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社製)を用いて10分間分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、平均粒径550nmの離型剤粒子が分散された離型剤分散液を調製した。
【0198】
−比較トナー粒子1の作製―
樹脂粒子分散液2400部、着色剤分散液100部、離型剤分散液63部、過酸化ラウロイル10部、硫酸アルミニウム5部(和光純薬社製)、イオン交換水100部、を丸型ステンレス製フラスコ中に収容させ、pH2.0に調整した後、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散させた後、加熱用オイルバス中で65℃まで攪拌しながら加熱した。65℃で2.5時間保持した後、光学顕微鏡にて観察すると、平均粒径が4.5μmである凝集粒子が形成されていることが確認された。
【0199】
この凝集粒子液のpHは2.4であった。そこで炭酸ナトリウム(和光純薬社製)を0.5%に希釈した水溶液を穏やかに添加し、pHを5.0に調整した後、攪拌を継続しながら75℃まで加熱し、3.5時間保持した。
その後、反応生成物をろ過し、イオン交換水で洗浄した後、真空乾燥機を用いて乾燥させることにより、K(ブラック)色の比較トナー粒子1を得た。得られた比較トナー粒子1の溶融温度は65℃であった。
得られたK色の比較トナー粒子1について、D50(体積平均粒径)を測定したところ、D50は4.2μm、平均形状係数SF1は129であった。
【0200】
(比較現像剤1の作製)
得られたK色の比較トナー粒子1に外添剤として、ヘキサメチルジシラザン処理したシリカ(平均粒径40nm)0.5%、メタチタン酸にイソブチルトリメトキシシラン50%処理後焼成して得られたチタン化合物(平均粒径30nm)0.7%を加え(何れもトナーに対する質量比)、75Lヘンシェルミキサーにて10分間混合し、その後、風力篩分機ハイボルター300(新東京機械社製)にて篩分し、外添トナーを作製した。
平均粒径50μmのフェライトコア100部に対して、0.15部にあたる弗化ビニリデン、および1.35部にあたるメチルメタアクリレートとトリフロロエチレンとの共重合体(重合比80:20)樹脂をニーダー装置を用いコーティングし、キャリアを作製した。得られたキャリアと外添トナーとを100部:8部の割合で2リッターのVブレンダーで混合し、比較現像剤1を作製した。
【0201】
[現像剤1]
比較現像剤1の比較トナー粒子1の作製において、65℃加熱攪拌の保持時間を2時間に、炭酸ナトリウム水溶液添加によるpH調整後の75℃加熱攪拌時間を5時間に変更した以外は同様にして、K色のトナー粒子1を作製し、現像剤1を得た。
【0202】
[現像剤2]
比較現像剤1の比較トナー粒子1の作製において、65℃加熱攪拌の保持時間を2時間に、炭酸ナトリウム水溶液添加によるpH調整後の75℃加熱攪拌時間を4時間に変更した以外は同様にして、K色のトナー粒子2を作製し、現像剤2を得た。
【0203】
[現像剤3]
比較現像剤1の比較トナー粒子1の作製において、65℃加熱攪拌の保持時間を2時間に、炭酸ナトリウム水溶液添加によるpH調整後の75℃加熱攪拌時間を3.5時間に変更した以外は同様にして、K色のトナー粒子3を作製し、現像剤3を得た。
【0204】
[現像剤4]
比較現像剤1の比較トナー粒子1の作製において、65℃加熱攪拌の保持時間を1.5時間に、炭酸ナトリウム水溶液添加によるpH調整後の75℃加熱攪拌時間を3.5時間に変更した以外は同様にして、K色のトナー粒子4を作製し、現像剤4を得た。
【0205】
[現像剤5]
比較現像剤1の比較トナー粒子1の作製において、65℃加熱攪拌の保持時間を1時間に、炭酸ナトリウム水溶液添加によるpH調整後の75℃加熱攪拌時間を3.5時間に変更した以外は同様にして、K色のトナー粒子5を作製し、現像剤5を得た。
作製した各現像剤(トナー)の特性を一覧にして表1に示す。
【0206】
【表1】
【0207】
<<感光体>>
[感光体1の作製]
−下引層の作製−
酸化亜鉛(平均粒子径:70nm、テイカ社製、比表面積値:15m/g)100部をテトラヒドロフラン500部と攪拌混合し、シランカップリング剤として、KBM603(信越化学社製)1.25部を添加し、2時間攪拌した。その後、テトラヒドロフランを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
【0208】
前記表面処理を施した酸化亜鉛粒子60部と、前述の例示化合物(1−2)に示す電子輸送剤0.6部と、硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3173、住友バイエルンウレタン社製)13.5部と、ブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15部とを、メチルエチルケトン85部に溶解した溶液38部と、メチルエチルケトン25部とを混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間の分散を行い分散液を得た。
【0209】
得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)4.0部とを添加し、下引層用塗布液を得た。この塗布液を、浸漬塗布法にて直径30mmのアルミニウム基材上に塗布し、180℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ25μmの下引層を得た。
【0210】
−電荷発生層の作製−
次に、電荷発生材料として、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜および28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶15部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10部およびn−ブチルアルコール300部からなる混合物を、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散して電荷発生層用の塗布液を得た。この電荷発生層用塗布液を前記下引層上に浸漬塗布し、120℃、5分間乾燥して、厚みが0.2μmの電荷発生層を得た。
【0211】
−電荷輸送層の作製−
続いて、電荷輸送物質としてN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン2部、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン2部、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:40,000)6部、酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.1部を混合してテトラヒドロフラン24部およびトルエン11部を混合溶解し、電荷輸送層用の塗布液を得た。この電荷輸送層用塗布液を前記電荷発生層上に浸漬塗布し、120℃、40分間乾燥して、厚みが22μmの電荷輸送層を得た。
【0212】
−表面保護層の作製−
続いて、4フッ化エチレン樹脂粒子としてルブロンL−2(ダイキン工業製)10部、および下記構造式2で表される繰り返し単位を含むフッ化アルキル基含有共重合体(重量平均分子量50,000、l:m=1:1、s=1、n=60)0.3部をシクロペンタノン40部に攪拌混合して、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を作製した。次に、前述の化学式I−8で表される化合物を80部、化学式I−21で表される化合物を20部、ベンゾグアナミン樹脂(ニカラックBL−60、三和ケミカル社製)を4部、シクロペンタノン220部に加えて、溶解混合した後に、前記4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を加えて、攪拌混合した後、微細な流路をもつ貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー(吉田機械興業製 YSNM−1500AR)を用いて、700kgf/cmまで昇圧しての分散処理を20回繰返した後、ジメチルポリシロキサン(グラノール450、共栄社化学)を1部、NACURE5225(キングインダストリー社製)を0.1部加え表面保護層用塗布液を調製した。この表面保護層用塗布液を浸漬塗布法で電荷輸送層の上に塗布し155℃で35分乾燥し、膜厚6μmの表面保護層を形成した感光体を、感光体1とした。
【0213】
構造式2
【化27】

【0214】
[感光体2〜8、比較感光体1〜4]
下引層に用いた金属酸化物、カップリング剤、電子輸送剤、および表面保護層に用いた電荷輸送材料を、表2に記載のものに変更した以外は、感光体1に記載の方法により、それぞれ感光体を作製した。
【0215】
【表2】
【0216】
尚、上記表2において電子輸送剤として示した例示化合物(2−1),(2−2),(2−3)は、下記に示す化合物である。
【0217】
【化28】
【0218】
<<除電装置>>
帯電部材と除電露光部材とを有する除電装置として、下記表3に示す除電装置1〜4および比較除電装置1〜2を準備した。
尚、帯電部材として「非接触」の帯電部材には、富士ゼロックス社製のColor1000Press搭載品を用い、また「接触」の帯電部材には、富士ゼロックス社製のApeosPortIV搭載品を用いた。帯電部材は定電流制御を行い、下記表の通りDC印加電流値を印加した。また、DC電流とともに定電圧制御した周波数800Hzの電圧Vpp=600kVを印加した(周波数、Vppに関しては固定)。
更に、除電露光部材には富士ゼロックス社製のColor1000Press搭載品を用い、条件を波長660nm、光量5mJ/mに設定した。
【0219】
【表3】
【0220】
<<実施例1〜15、比較例1〜17>>
感光体、現像剤および除電装置の組み合わせを下記表4および表5に記載のものとして、富士ゼロックス社製「ApeosPort−III C4400」に装着し、以下の評価を行った。結果を表4、表5に示す。
【0221】
[初期諧調性評価]
高温高湿環境下(30℃85%)において、図4に示す画像パターンをプリント(出力)し、狙い画像密度0%以上20%以下、および80%以上100%以下の領域の諧調性を評価した。このときのプロセススピードは320mm/sとした。
評価基準は以下の通りである。
A:狙い画像濃度とプリントされた実際の画像濃度の差が3%以下
B:狙い画像濃度とプリントされた実際の画像濃度の差が3%より大きく5%以下
C:狙い画像濃度とプリントされた実際の画像濃度の差が5%より大きい
なお、画像濃度は、X−Rite社製、X−Rite404を用いて測定を行った。
【0222】
[プリント後諧調性評価]
高温高湿環境下(30℃85%)において、画像密度5%の全面ハーフトーン画像A4用紙50000枚プリントした。
その後、図4に示す画像パターンをプリント(出力)し、狙い画像密度0%以上20%以下、および80%以上100%以下の領域の諧調性を評価した。このときのプロセススピードは320mm/sとした。
評価基準は以下の通りである。
A:狙い画像濃度とプリントされた実際の画像濃度の差が3%以下
B:狙い画像濃度とプリントされた実際の画像濃度の差が3%より大きく5%以下
C:狙い画像濃度とプリントされた実際の画像濃度の差が5%より大きい
なお、画像濃度は、X−Rite社製、X−Rite404を用いて測定を行った。
【0223】
[初期文字解像度評価]
文字解像度評価は7ポイントサイズの文字「響」をプリントし、解像度を目視にて観察し判断した。
評価基準は以下の通りである。
A:文字のつぶれなし。
B:若干の文字のつぶれあり。
C:解像度が明らかに不良。
【0224】
[プリント後文字解像度評価]
高温高湿環境下(30℃85%)において、画像密度5%の全面ハーフトーン画像A4用紙50000枚プリントした。
その後、文字解像度評価は7ポイントサイズの文字「響」をプリントし、解像度を目視にて観察し判断した。
評価基準は以下の通りである。
A:文字のつぶれなし。
B:若干の文字のつぶれあり。
C:解像度が明らかに不良。
【0225】
[焼付きゴースト評価]
高温高湿環境下(30℃85%)において、図5に示す画像密度100%の画像をA3用紙1000枚プリントした。その後、画像密度20%の全面ハーフトーン画像をA3用紙にプリントし評価した。
評価基準は以下の通りである。
A:ゴーストなし。
B:若干ゴーストあり。
C:明らかにゴーストあり。
【0226】
[残留電位の測定]
下記方法により画像形成試験を実施した前後での電位を下記方法により測定し、残留電位を測定した。
画像形成試験の方法は、富士ゼロックス社製のApeosPort−III C4400を用い、高温高湿環境下(30%85%RH)において、画像密度100%の画像をA3用紙(富士ゼロックス社製、C2紙)1000枚プリントを行なった。その画像形成試験の前後において、電子写真感光体の帯電器の直前に表面電位計プローブを設置し、表面電位を表面電位計(TREK社製、Model334)にて測定した。
【0227】
【表4】
【0228】
【表5】
【符号の説明】
【0229】
1 導電性基材、2 下引層、3 感光層、5 表面保護層、7 電子写真感光体、8 帯電装置、9 電源、10 露光装置、11 現像装置、12 転写装置、13 クリーニング装置、14 除電装置、14A 帯電部材、14B 除電露光部材、15 定着装置、31 電荷発生層、32 電荷輸送層、101 画像形成装置、P 記録紙(記録媒体の一例)
図1
図2
図3
図4
図5