【実施例1】
【0020】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係るパターン位相差フィルムを示す図である。この実施形態に係る画像表示装置は、垂直方向(
図1においては左右方向が対応する方向である)に連続する液晶表示パネルの画素が、順次交互に、右目用の画像を表示する右目用画素、左目用の画像を表示する左目用画素に振り分けられて、それぞれ右目用及び左目用の画像データで駆動される。これにより画像表示装置は、右目用の画像を表示する帯状の領域と、左目用の画像を表示する帯状の領域とに表示画面が交互に区分され、右目用の画像と左目用の画像とを同時に表示する。この画像表示装置は、この液晶表示パネルのパネル面に、この
図1に示すパターン位相差フィルム1が配置され、このパターン位相差フィルム1により右目用及び左目用の画素からの出射光にそれぞれ対応する位相差を与える。これによりこの画像表示装置は、パッシブ方式により所望の立体画像を表示する。
【0021】
パターン位相差フィルム1は、透明フィルム材による基材2に光配向膜3、位相差層4が順次作製される。パターン位相差フィルム1は、位相差層4が液晶材料により形成され、この液晶材料の配向を光配向膜3の配向規制力によりパターンニングする。なおこの液晶分子の配向を
図1では細長い楕円により示す。このパターンニングにより、パターン位相差フィルム1は、液晶表示パネルにおける画素の割り当てに対応して、一定の幅により、右目用の領域Aと、左目用の領域Bとが順次交互に帯状に形成され、右目用及び左目用の画素からの出射光にそれぞれ対応する位相差を与える。
【0022】
パターン位相差フィルム1は、光配向性樹脂の塗工により光配向性樹脂層が作製された後、いわゆる光配向の手法によりこの光配向性樹脂層に直線偏光による紫外線を照射して光配向膜3が形成される。ここでこの光配向性樹脂層に照射する紫外線は、その偏光の方向が右目用の領域Aと左目用の領域Bとで90度異なるように設定され、これにより位相差層4に設けられる液晶材料に関して、右目用の領域A及び左目用の領域Bとで対応する向きに液晶分子を配向させ、透過光に対応する位相差を与える。
【0023】
図2は、このパターン位相差フィルム1の製造工程を示すフローチャートである。パターン位相差フィルム1の製造工程は、ロールに巻き取った長尺フィルムにより基材2が提供され、この基材2をロールより送り出して光配向材料膜が順次作製される(ステップSP1−SP2)。ここで光配向材料膜は、各種の製造方法を適用することができるものの、この実施の形態では、光配向材料をベンゼン等の溶媒に分散させた成膜用液体をダイにより塗布した後、乾燥して作製される。なお光配向材料は、光配向の手法を適用可能な各種の材料を適用することができるものの、この実施形態では、一旦配向した後には、紫外線の照射によって配向が変化しない、例えば光2量化型の材料を使用する。なおこの光2量化型の材料については、「M.Schadt, K.Schmitt, V. Kozinkov and V. Chigrinov : Jpn. J.
Appl.Phys., 31, 2155 (1992)」、「M. Schadt, H. Seiberle
and A. Schuster : Nature, 381, 212 (1996)」等に開示されており、例えば「ROP-103」の商品名により既に市販されている。また基材2には、例えばトリアセチルセルロースが適用される。
【0024】
続いてこの製造工程は、露光工程により紫外線を照射して光配向膜が作製される(ステップSP3)。続いてこの製造工程は、位相差層作製工程において、ダイ等により液晶材料を塗布した後、紫外線の照射によりこの液晶材料を硬化させ、位相差層4が作製される(ステップSP4)。続いてこの製造工程は、必要に応じて反射防止膜の作製処理等を実行した後、切断工程において、所望の大きさに切り出してパターン位相差フィルム1が作製される(ステップSP5−SP6)。
【0025】
図3は、この露光工程の詳細を示す図である。この製造工程は、右目用の領域A又は光目用の領域Bに対応する部位を遮光したマスク16を介して、直線偏光による紫外線(偏光紫外線)を照射することにより、遮光されていない側の、左目用の領域B又は右目用の領域Aについて、光配向材料膜を所望の方向に配向させる(
図3(A))。これによりこの製造工程は、1回目の露光処理を実行する。続いてこの製造工程は、1回目の露光処理とは偏光方向が90度異なる直線偏光により紫外線を全面に照射し、1回目の露光処理で未露光の、右目用の領域A又は左目用の領域Bについて、光配向材料膜を所望の方向に配向させる(
図3(B))。これによりこの製造工程では、2回の露光処理により、右目用の領域Aと左目用の領域Bとを順次露光処理して光配向膜3を作製する。
【0026】
〔右目用領域A及び左目用領域Bの境界〕
ここでこのようなマスクを使用した露光処理により光配向膜に右目用領域A及び左目用領域Bに対応する帯状領域を作成することになるものの、この帯状領域の作成精度にあっては、光源から照射させる露光用の光を極力平行光線にしたり、マスクを露光対象に近接して保持する等の露光条件の工夫により向上させることができる。しかしながらこのような光源等の工夫により露光精度が向上すると、他の部位に比して明るさの異なる帯状領域OBが発生し、著しく画質が損なわれる恐れががある(
図7)。
【0027】
なおこのような他の部位に比して明るさの異なる帯状領域OBの発生は、ラビング処理痕の賦型処理により配向膜を作成してパターン位相差フィルムを作成した場合、顕著に確認される。
【0028】
そこでこの実施形態では、右目用領域A及び左目用領域Bの境界10を幅5μm以上、50μm以下により作成し、
図4に示すように、この境界10が蛇行するようにし、これにより他の部位に比して明るさの異なる帯状領域OBの発生を防止する。
【0029】
ここで境界10の幅は、クロスニコル配置による直線偏光板によりパターン位相差フィルムを挟持して消光位に保持した状態で、透過光量により計測した。この場合、右目用領域A及び左目用領域Bでは、殆ど透過光を検出できなのに対し、境界10では、透過光の光量が立ち上がることになる。これにより境界を横切る方向に透過光量のピーク値を計測し、このピーク値の例えば5%〜10%を判定基準値に設定して判定基準値以上に透過光量が立ち上がる部位の幅を計測することにより、境界幅を計測することができる。
【0030】
他の部位に比して明るさの異なる帯状領域OBは、右目用領域及び左目用領域の作製周期と、画像表示パネルにおける遮光部の作製周期との規則性に起因して発生すると考えられる。このようにこの境界幅を10μm以上とすると、光配向膜では境界が蛇行するように形成され、これにより右目用領域及び左目用領域の作製周期と、画像表示パネルにおける遮光部の作製周期との規則性に起因する帯状領域OBの発生を防止することができると考えられる。
【0031】
なおこの境界10は、余りに幅広の場合、右目用画像と左目用画像との間でいわゆるクロストークを発生させ、画質を著しく劣化させる。しかしながらこの領域幅が極端に小さいと、右目用領域A及び左目用領域B間の境界を充分に蛇行させることが困難になり、これにより及び帯状領域OBの発生を有効に回避することが困難になる。これにより境界10は、幅が、5μm以上、20μm以下により作製することが好ましい。なおこのようにして境界10を作成する場合、境界の幅方向の中心により計測される境界蛇行は、振幅が5μm以上、15μm以下であった。
【0032】
〔露光工程〕
このためこの実施形態では、
図3(A)において符号Dにより示すマスク16と露光対象である光配向性樹脂層との間隔を、一定の距離に設定し、境界10の幅を設定したた。
図5は、この間隔Dと境界幅との関係を示す計測結果である。この関係にあっては、光源の条件等により変化するものの、実験に供した設備の場合、間隔Dを100μmとすることにより境界幅を10μmとすることができ、さらに間隔Dを大きくすることにより境界幅を大きくできることが判った。
【0033】
〔他の実施形態〕
以上、本発明の実施に好適な具体的な構成を詳述したが、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述の実施形態の構成を種々に変更することができる。
【0034】
すなわち上述の実施形態では、マスクを使用した露光処理の後、全面を露光処理する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、これとは逆に全面を露光処理した後、マスクを使用して露光し直すことより光配向膜を作成する場合、それぞれマスクを使用した露光処理の繰り返しにより光配向膜を作成する場合にも広く適用することができる。
【0035】
また上述の実施形態では、光配向材料膜からマスクを一定の間隔だけ隔てて露光処理する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、マスクを密着させて露光する場合にも広く適用することができる。なおこの場合、例えば透明樹脂等による透明基材の表面にクロム等により遮光部を作製してマスクを作製し、この透明基材を光配向材料膜側に設定して光配向材料膜に密着露光するようにして、この透明基材の厚みの制御により、及び又はこの透明基材に光拡散性を付与してその強度を制御することにより、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0036】
また上述の実施形態では、液晶表示パネルの使用を前提としたパターン位相差フィルムを作製する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、有機ELパネル、プラズマディスプレイパネルの使用を前提に、偏光フィルタを一体に設ける場合にも広く適用することができる。