(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
砲の命中精度の向上のためには、高精度の砲制御と、風向、風速、距離等から正確な弾道計算が必要になる。さらに、長距離砲においては、砲弾の着弾をみて、はずれ具合から照準を修正する砲修正の技術が不可欠である。
弾着発光点検出においては、砲弾発射装置の近傍に設置された撮像機から得られる画像データを用い、種々な画像処理を用いた方式が提案されている。
方式の一例として、砲の位置から目標までの距離を計測するレーザ等の測距装置を用いて、砲弾の撃発時点から、砲弾が目標までの距離を飛翔するために要する時間を算出し、撮像機から得られる画像データから飛翔時間経過後の画像のみを抜き出し、弾着発光点を検出しようとするものがある(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のように、画像データと距離データを用いた方式は提案されているが、レーザ等の測距装置が必要となる点等から高価となるという課題があった。
このため今後は、画像データのみを用いた弾着発光点検出装置が必要となるが、画像データのみを用いた弾着発光点検出装置では、後述するように、高い輝度をもつ砲口火炎を目標として検出されてしまう誤検出や、砲口火炎を誤検出しないように二値化のためのしきい値を大きくする必要があり、そのため実際に弾着発光が発生しても、二値化を行うことが出来ず、その結果正確な弾着発光点を検出できないという課題があった。
【0005】
この発明は係る課題を解決するためになされたものであり、従来のように距離データを必要とせず、画像データのみにより着弾発光点の検出を精度よく計測可能な着弾発光点検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る弾着発光点検出装置は、撮像機が時間経過と共に撮像した複数のフレームからなる画像を用いて砲弾が着弾した位置情報を出力する弾着発光点検出装置であって、前記砲弾が着弾して発光を開始したか否かを判定する弾着発光開始判定回路を備え、前記弾着発光開始判定回路は、前記フレームの前後の画像における画像面内の輝度値の標準偏差
を比較し、後の画像における画像面内の輝度値の標準偏差を、前の画像における画像面内の輝度値の標準偏差で除した値が所定値以上となった場合に、前記砲弾が着弾して発光を開始したと判定し、前記値が前記所定値以上となったフレームの画像を用いて砲弾が着弾した位置情報を算出し出力する
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る弾着発光点検出装置によれば、画像データから弾着発光開始判定、砲口火炎消失判定を行うことで、弾着発光開始以降の画像データ、もしくは砲口火炎消失以降からの画像データのみに対して、二値化処理、重心計測を行うことにより、弾着発光点の検出を精度良く計測出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る弾着発光点検出装置における着弾位置検出処理の流れを説明する図である。
【
図2】本発明の実施の形態1において砲弾の発射から着弾までを撮像した画像の標準偏差の推移を説明する図である。
【
図3】本発明の実施の形態2に係る弾着発光点検出装置の着弾位置検出処理の流れを説明する図である。
【
図4】本発明の実施の形態2において砲弾の発射から着弾までを撮像した画像の平均値の推移を説明する図である。
【
図5】従来の弾着発光検出を行う際の機器の基本的な構成を説明する図である。
【
図6】従来の機器構成において砲弾発射前に撮像される画像の例である。
【
図7】従来の機器構成において砲弾発射時に発生する砲口火炎を撮像した画像の例である。
【
図8】従来の機器構成において砲口火炎が消失する際の画像の例である。
【
図9】従来の機器構成において弾着発光が発生する際の画像の例である。
【
図10】従来の機器構成において弾着発光を二値化した画像の例である。
【
図11】従来の弾着発光点検出装置における着弾位置検出処理の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、従来の弾着発光検出を行う際の機器構成と処理の流れについて説明する。
図5は従来の弾着発光検出を行う際の機器の基本的な構成を説明する図である。
図5で砲弾4は砲弾発射装置2から発射され、目標5に向かって飛翔している。弾着発光点検出装置3には撮像機1で撮像された画像データが送られる。弾着発光点検出装置3で検出された弾着発光点の位置情報は、砲弾発射装置2に送られ、次弾発射時の砲修正の計算に用いられる。
その際、砲弾4が発射され着弾するまでを、砲弾発射装置の近傍に設置された撮像機1にて撮像された画像の特徴について、以下図を用いて示す。
砲弾発射から砲弾着弾までを撮像機1で撮像した場合、撮像される画像としては一般的に次の流れとなる。
【0010】
図6は砲弾発射前に撮像された画像の例である。砲弾発射前の状態では、目標とその背景が撮像される。
図7は砲弾発射直後に撮像された画像の例である。砲弾4が発射された直後では、発生する砲口火炎9や、それに伴い発生する高温のガス11等が撮像される。砲口火炎9とは火薬の燃焼に伴い発生する火炎であり、高温でありかつ撮像機の付近で発生するため撮像される画像への影響は大きく、砲口火炎発生時に撮像機によって撮像される画像は
図7のように、画像の大部分が高輝度な状態となる。
【0011】
図8は砲弾発射後、所定の時間が経過した後に撮像された画像の例である。砲口火炎9と高温のガス11は時間の経過と共に熱が拡散し温度が低下したり、風に吹き飛ばされる等して消失していく。この時、砲弾発射直後の画面全体の輝度が上がった状態から、画像全体の輝度が下がりつつ、一部には高輝度部分が残るような画像が撮像される。
図9は更に時間が経過し、発射した砲弾4が着弾し、着弾した砲弾が発する弾着発光が撮像された画像の例を示す。
図10は、
図9の弾着発光の画像を二値化した画像の例である。
図11は従来の弾着発光点検出装置3における着弾位置検出処理の流れを説明する図である。従来の弾着発光点検出装置3では、
図5〜
図9で説明した画像のすべてに対し無条件に二値化処理を行い、二値画像から重心計測を行い、その座標を弾着発光点として検出していた。
そのため、高い輝度をもつ砲口火炎9を目標5として検出されてしまう誤検出や、砲口火炎9を誤検出しないように二値化のためのしきい値を大きくする必要があり、そのため実際に弾着発光が発生しても、二値化を全く行うことが出来ず、その結果正確な弾着発光点を検出できないという課題があった。
【0012】
実施の形態1
実施の形態1に係る弾着発光点検出装置について、以下、図を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態1に係る弾着発光点検出装置の構成、及び着弾位置検出処理の流れを説明する図である。
弾着発光点検出装置3は、弾着発光が開始したか否かの判定を行う弾着発光開始判定回路17と、画像データ6を二値化する二値化回路14と、二値化後の二値画像15を用いて二値化された領域の重心を計測する重心計測回路16を備える。
図1において、砲弾発射装置2の近傍に設置された撮像機1から得られた画像データ6は、弾着発光点検出装置3に送られる。弾着発光点検出装置3では画像データ6を二値化回路14で二値化処理を行い、二値画像15を重心計測回路16に送る。重心計測回路16では二値化された領域の重心を計測し、その座標を弾着発光点の位置情報7として、砲弾発射装置2に送る。
また、撮像部1からの画像データ6に対して、弾着発光開始判定回路17は弾着発光開始のフレームを判定し、二値化回路14に対して弾着発光開始情報18を送る。
二値化回路14は弾着発光開始情報18に基づき、二値化処理を開始する。
ここで弾着発光開始判定は、画像例
図9に示す弾着発光が開始したかどうかを判定するものである。弾着発光開始判定回路17は、次の式(1)を用い、得られた画像からフレーム毎に画像面内の輝度の標準偏差を取得し、式(1)に示す条件を、砲弾発射後、初めて満たしたフレームを弾着発光が開始したフレームであると判定する。
【0014】
図2は砲弾の発射から着弾までを撮像した画像における輝度の標準偏差の時間推移を説明する図である。砲弾発射前の画像の標準偏差19は、発射される前の目標地点を撮像しているため、目標地点の環境によって標準偏差の大きさは違うが、時間の経過に伴って変化することはない。
次に、砲口火炎発生中の画像の輝度の標準偏差20は、砲弾が発射される際の砲口火炎9が発生して標準偏差は大きく下がる。これは、砲口火炎の発生によって画面の全体が高い輝度となるため、画面の各場所で輝度差がなくなり、標準偏差が下がるためである。
【0015】
次に、砲口火炎消失過程の画像の輝度の標準偏差21は、砲口火炎の影響が小さくなっていくため、小さく変化しながら全体として、標準偏差は大きくなっていく。これは、砲口火炎の消失過程では、周囲の環境によって火炎の消失の仕方や高温のガスの分布が変わりその挙動によって標準偏差も小さく変化するが、全体としては砲口火炎の影響はなくなっていくため、砲弾発射前の標準偏差に近づいていく。
そして、弾着発光発生時の画像の輝度の標準偏差22は、砲弾が着弾した際に発生する弾着発光が発生し、その標準偏差は大きく上がる。これは、弾着発光は高い輝度で、しかも画像全体ではなく一部分にのみ現れるためである。
【0016】
ここで、着弾発光開始判定回路17は、式(1)に基づき、標準偏差の増加がある一定値以上に値に始めて達したフレームを弾着発光が開始したフレームとし検出する。
そして、着弾発光開始判定回路は、弾着発光が開始したものすることで、その後は従来から実施していた輝度の高い部分を有意とする二値化処理を行い、有意とされた画素の領域の重心点を砲弾の弾着発光点として、その位置情報を通知する。
【0017】
このように実施の形態1に係る弾着発光点検出装置では、式(1)で示される標準偏差を用いた判定式に基づき、弾着発光が開始したか否かの判定を行うようにした。弾着発光開始判定回路17は、
図2の砲口火炎消失過程の画像の輝度の標準偏差21で示すように、砲口火炎の消失過程において小刻みに変化しながら徐々に値が大きくなった後、画像フレーム前後における輝度値の標準偏差が予め定めた定数値を超えたタイミングを、弾着発光が開始したタイミングと判断する。
【0018】
本実施の形態に係る弾着発光点検出装置によれば、高い輝度をもつ砲口火炎を目標として検出されてしまう誤検出や、二値化のためのしきい値を大きくしたために弾着発光が発生しても二値化が出来ないことを防止して、着弾発光点の検出を精度よく計測することができる。
【0019】
実施の形態2.
実施の形態1に係る弾着発光点検出装置によれば、誤検出等を防止して精度よく着弾発光点の検出を行うことができるが、周囲の環境によっては、砲口火炎消失過程においては標準偏差の局所的に変動が大きくなる事があり、弾着発光開始判定に悪影響を及ぼす可能性がある。
そこで実施の形態2では、弾着発光開始判定を行うとともに、砲口火炎消失判定も行うようにする。
【0020】
図3は、実施の形態2に係る弾着発光点検出装置の構成、及び着弾位置検出処理の流れを説明する図である。
本実施の形態に係る弾着発光点検出装置3は、砲口火炎が消失したか否かを判定する砲口火炎消失判定回路23と、弾着発光が開始したか否かの判定を行う弾着発光開始判定回路17と、画像データ6を二値化する二値化回路14と、二値化後の二値画像15を用いて二値化された領域の重心を計測する重心計測回路16を備える。
砲口火炎消失判定回路23は、撮像部1からの画像データ6に対して、砲口火炎の消失フレームを判定し、二値化回路14に対して砲口火炎消失情報24を送る。
二値化回路14では弾着発光開始情報18及び砲口火炎消失情報24に基づき、砲口火炎が消失完了し、さらに弾着発光開始したことを条件に二値化処理を開始する。
【0021】
ここで砲口火炎消失判定回路23は、
図8の画像に示す砲口火炎が消失したか否かを判定するものである。判定には得られた画像からフレーム毎に輝度平均値を取得し、次の式(2)で示す条件を砲弾発射後、初めて満たしたフレームを砲口火炎が消失したフレームであると判断する。なお式(2)は、tフレーム目の画像の輝度の平均値を砲弾発射前の画像の輝度の平均値で除した値が、予め定めた定数値K以下であるか否かを判断するものである。
【0023】
図4は、砲弾が発射されてから、弾着発光が起こるまでの画像の輝度平均値の推移を示す。
砲弾発射前の画像の平均輝度25は、目標地点の環境によって異なるがほぼ一定値となる。砲口火炎発生中の画像の平均輝度26は、砲弾が発射され砲口火炎が発生すると、高い値に固定される。
次に、砲口火炎消失過程の画像の平均輝度27は小さく変化しながら、減少していき、砲弾発射前に近い値となって安定する。弾着発光発生時の画像の平均輝度28は砲弾が着弾し弾着発光が発生すると、値が大きく上がる。
【0024】
砲口火炎消失判定回路23は、式(2)に基づき、
図12で示す砲口火炎の影響が減少し、平均値が砲弾発射前の水準に近い値まで減少した点を検出する。
平均値は、標準偏差に比べて撮像された画像の一部に砲口火炎の影響等が現れても影響を受けにくく、画面全体の輝度の傾向を表すので、砲口火炎が消失していき撮像される画像に対する影響が小さくなった事を安定的にとらえることができる。
【0025】
このように本実施の形態に係る弾着発光点検出装置は、砲口火炎消失判定と弾着発光開始判定を備えるようにした。これにより、周囲の環境によっては砲口火炎消失過程において標準偏差の局所的に変動が大きくなることから、誤った弾着発光開始判定を行うことを防止し、更に、高い輝度をもつ砲口火炎を目標として検出されてしまう誤検出や、二値化のためのしきい値を大きくしたために弾着発光が発生しても二値化が出来ないということを防いで、着弾発光点の検出を精度よく計測することができる。