(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048208
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】複列円筒ころ軸受用着脱治具及び該軸受の組立方法並びに取り外し方法
(51)【国際特許分類】
F16C 43/06 20060101AFI20161212BHJP
F16C 33/80 20060101ALI20161212BHJP
F16J 15/447 20060101ALI20161212BHJP
F16C 19/28 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
F16C43/06
F16C33/80
F16J15/447
F16C19/28
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-34605(P2013-34605)
(22)【出願日】2013年2月25日
(65)【公開番号】特開2014-163445(P2014-163445A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(72)【発明者】
【氏名】山田 孝則
【審査官】
日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−351367(JP,A)
【文献】
特開2003−159908(JP,A)
【文献】
実開昭48−113163(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 35/00−39/06,43/00−43/08
F16C 19/28,33/80
F16J 15/447
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪とつば部を有する外輪との間に複列の円筒ころがそれぞれ保持器を介して円周方向に転動自在に配設された複列円筒ころ軸受の前記円筒ころ及び前記保持器を前記外輪に対して着脱するための複列円筒ころ軸受用着脱治具であって、
前記外輪のつば部の内径よりも複数の前記円筒ころによって構成される外接円径が小さくなるように、前記保持器内で前記複数の円筒ころを同時に径方向内側に移動させるころ移動手段と、
前記径方向内側に移動した前記円筒ころの端面を支持するころ支持手段と、
を備えたことを特徴とする複列円筒ころ軸受用着脱治具。
【請求項2】
前記外輪のつば部内を前記外輪の軸方向にそれぞれ挿通可能であるとともに、互いに該軸方向に相対移動可能な第1及び第2の支持部材をさらに備え、
前記ころ移動手段は、前記第1の支持部材に取り付けられ、前記第1の支持部材を前記第2の支持部材に近づくように移動させたときに、前記円筒ころと接触して前記円筒ころを径方向内側に移動させる複数の引き寄せ部材を有し、
前記ころ支持手段は、前記第2の支持部材にその一端が回動可能に取り付けられ、先端部に前記円筒ころの端面を保持する受け部を備えた複数の回動部材を有することを特徴とする請求項1に記載の複列円筒ころ軸受用着脱治具。
【請求項3】
前記引き寄せ部材は、前記円筒ころを前記径方向内側に移動させるために、その先端部がテーパ状に形成されたことを特徴とする請求項2に記載の複列円筒ころ軸受用着脱治具。
【請求項4】
前記回動部材は、付勢部材によって、前記受け部の外径側端部が、転動時における前記複数の円筒ころによって構成される内接円径よりも内側に位置するように付勢されており、
前記第1の支持部材が前記第2の支持部材に近づくように移動する際、前記第1の支持部材に設けられたガイド部材が前記回動部材と当接して、前記受け部が前記円筒ころの端面を支持する位置まで前記回動部材が回動するように構成されたことを特徴とする請求項2または3に記載の複列円筒ころ軸受用着脱治具。
【請求項5】
内輪とつば部を有する外輪との間に複列の円筒ころがそれぞれ保持器を介して円周方向に転動自在に配設された複列円筒ころ軸受の前記円筒ころ及び前記保持器を、請求項1〜4のいずれか1項に記載の着脱治具を用いて、前記外輪に対して組み付ける複列円筒ころ軸受の組立方法であって、
前記ころ移動手段で複数の前記円筒ころを同時に径方向内側に移動させ、前記外輪のつば部の内径よりも複数の前記円筒ころによって構成される外接円径が小さくなるようにした状態で、前記ころ支持手段で前記円筒ころの端面を支持することにより前記円筒ころ及び保持器を保持する工程と、
前記円筒ころ及び保持器を保持した前記着脱治具を前記外輪内の所定の位置まで挿入する工程と、
前記ころ移動手段及び前記ころ支持手段による前記円筒ころ及び保持器の保持を解放し、前記着脱治具を前記外輪内から抜き取り、前記円筒ころ及び保持器を前記外輪内に組み付ける工程と、
を含むことを特徴とする複列円筒ころ軸受の組立方法。
【請求項6】
前記複列円筒ころ軸受は、前記外輪の軸方向一端部に取り付けられ、ラビリンスシール部材を有する第1のシールケースと、前記外輪の軸方向他端部に取り付けられて、オイルシールを有する第2のシールケースと、をさらに備え、
前記挿入工程及び前記組付工程は、前記第2のシールケースが取り外され、前記第1のシールケースが取り付けられた状態で、前記軸方向一端部側の前記円筒ころ及び保持器に対して行われることを特徴とする請求項5に記載の複列円筒ころ軸受の組立方法。
【請求項7】
内輪とつば部を有する外輪との間に複列の円筒ころがそれぞれ保持器を介して円周方向に転動自在に配設された複列円筒ころ軸受の前記円筒ころ及び前記保持器を、請求項1〜4のいずれか1項に記載の着脱治具を用いて、前記外輪から取り外す複列円筒ころ軸受の取り外し方法であって、
前記内輪を取り外した後、前記円筒ころ及び保持器が配設された前記外輪内に前記着脱治具を所定位置まで挿入する工程と、
前記ころ移動手段で複数の前記円筒ころを同時に径方向内側に移動させ、前記外輪のつば部の内径よりも複数の前記円筒ころによって構成される外接円径が小さくなるようにした状態で、前記ころ支持手段で前記円筒ころの端面を支持することにより前記円筒ころ及び保持器を保持する工程と、
前記円筒ころ及び保持器を保持したまま前記着脱治具を前記外輪内から抜き出す工程と、
を含むことを特徴とする複列円筒ころ軸受の取り外し方法。
【請求項8】
前記複列円筒ころ軸受は、前記外輪の軸方向一端部に取り付けられ、ラビリンスシール部材を有する第1のシールケースと、前記外輪の軸方向他端部に取り付けられて、オイルシールを有する第2のシールケースと、をさらに備え、
前記挿入、保持及び抜出工程は、前記第2のシールケースが取り外され、前記第1のシールケースが取り付けられた状態で、前記軸方向一端部側の前記円筒ころ及び保持器に対して行われることを特徴とする請求項7に記載の複列円筒ころ軸受の取り外し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複列円筒ころ軸受用着脱治具及び該軸受の組立方法並びに取り外し方法に関し、より詳細には、円筒ころ及び保持器を外輪に組み付ける又は取り外す際に用いる複列円筒ころ軸受用着脱治具、及び該治具を用いて円筒ころ及び保持器を外輪に組み付ける組立方法、並びに、該治具を用いて円筒ころ及び保持器を外輪から取り外す取り外し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、両端に密封構造を備えた複列円筒ころ軸受として、例えば、
図12に示すような鉄道車両用密封円筒ころ軸受が知られている(特許文献1参照)。この鉄道車両用密封円筒ころ軸受は、内周面の軸方向中央につば部1aを有する外輪1と、つば部1aに対応する位置に案内輪14が外嵌された内輪2との間に複列の円筒ころ3が、それぞれ保持器4を介して周方向に転動自在に配設された複列円筒ころ軸受5である。
【0003】
この複列円筒ころ軸受5は、車軸6の先端に嵌合した油切り7と車軸6の肩部6aに嵌合した後蓋8との間に配置され、車軸6の先端に螺着した前蓋9を締め付けると、内輪2が油切り7及び後蓋8で軸方向の両端側から挟持されて車軸6に固定される。
【0004】
前蓋9の先端側には、凸部10を有する小蓋11が、凸部10を車軸6の先端に設けた凹部12と係合させた状態で車軸6に装着されている。この小蓋11と前蓋9とをボルト13を介して連結して一体化することにより、前蓋9の緩み止めがなされる。
【0005】
また、外輪1の軸方向一端部(左端部)には非接触式の密封装置30が圧入等により装着され、外輪1の軸方向他端部(右端部)には接触式の密封装置20が圧入等により装着されている。左端側の密封装置30は、油切り7との間でラビリンスシール構造を形成し、右端側の密封装置20は、シールケース21とオイルシール22とを有して、後蓋8に接触し、軸受5内への異物の侵入や軸受5内からの潤滑剤の漏出を防止する。
【0006】
このような鉄道車両用密封円筒ころ軸受の定期的なメンテナンス時には、車軸6から各部品毎に取り外して分解し点検する必要がある。しかし、外輪1の内周面の軸方向略中央にはつば部1aがあるので、分解の際、内輪2を取り外した後に、外輪1の軸方向の両端に装着された密封装置20、30を左右両方とも取り外さなければ両方の保持器4と円筒ころ3との組立体を外輪1から取り出すことができない。このため、定期的なメンテナンスの際には、両側の密封装置20、30を取り外してメンテナンスを行うことが一般的であった。このため、非接触であるラビリンスシールは、取り外し時の変形によって再使用ができなくなり、部品交換を余儀なくされることになる。
【0007】
そこで、特許文献1に記載の密封円筒ころ軸受では、
図13に示すように、保持器4のポケット部15の周方向に互いに対向する内側面4aが、保持器4の外径側では円筒ころ3の外径形状に略沿った円弧状を有する一方、保持器4の内径側に向かうにつれて次第に各内側面4a間の間隔が広くなるように形成され、内径側の先端部にころ外れ防止用の引っ掛かり部4bが設けられている。これにより、円筒ころ3は、ポケット部15内で径方向に移動可能な構造となっており、一方の密封装置20を取り外すだけで、両方の列の保持器4と円筒ころ3との組立体を外輪1から取り出せるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−351367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1では、保持器の形状変更によって、両方の密封装置を取り外さなくとも保持器4及び円筒ころ3を外輪1から取り外すことは記載されているが、取り外す際に、複数の円筒ころ3が保持器4から脱落する可能性があり、さらなる改善が望まれる。また、特許文献1では、保持器4及び円筒ころ3を組み付けることについては具体的に記載されていない。
【0010】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の円筒ころと保持器とを外輪に対して容易に組み付け、又は、取り外すことができ、複列円筒ころ軸受のメンテナンスの作業性を向上することができる複列円筒ころ軸受用着脱治具及び該軸受の組立方法並びに取り外し方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成される。
(1) 内輪とつば部を有する外輪との間に複列の円筒ころがそれぞれ保持器を介して円周方向に転動自在に配設された複列円筒ころ軸受の前記円筒ころ及び前記保持器を前記外輪に対して着脱するための複列円筒ころ軸受用着脱治具であって、
前記外輪のつば部の内径よりも複数の前記円筒ころによって構成される外接円径が小さくなるように、前記保持器内で前記複数の円筒ころを径方向内側に同時に移動させるころ移動手段と、
前記径方向内側に移動した前記円筒ころの端面を支持するころ支持手段と、
を備えたことを特徴とする複列円筒ころ軸受用着脱治具。
(2) 前記外輪のつば部内を前記外輪の軸方向にそれぞれ挿通可能であるとともに、互いに該軸方向に相対移動可能な第1及び第2の支持部材をさらに備え、
前記ころ移動手段は、前記第1の支持部材に取り付けられ、前記第1の支持部材を前記第2の支持部材に近づくように移動させたときに、前記円筒ころと接触して前記円筒ころを径方向内側に移動させる複数の引き寄せ部材を有し、
前記ころ支持手段は、前記第2の支持部材にその一端が回動可能に取り付けられ、先端部に前記円筒ころの端面を保持する受け部を備えた複数の回動部材を有することを特徴とする(1)に記載の複列円筒ころ軸受用着脱治具。
(3) 前記引き寄せ部材は、前記円筒ころを前記径方向内側に移動させるために、その先端部がテーパ状に形成されたことを特徴とする(2)に記載の複列円筒ころ軸受用着脱治具。
(4) 前記回動部材は、付勢部材によって、前記受け部の外径側端部が、転動時における前記複数の円筒ころによって構成される内接円径よりも内側に位置するように付勢されており、
前記第1の支持部材が前記第2の支持部材に近づくように移動する際、前記第1の支持部材に設けられたガイド部材が前記回動部材と当接して、前記受け部が前記円筒ころの端面を支持する位置まで前記回動部材が回動するように構成されたことを特徴とする(2)または(3)に記載の複列円筒ころ軸受用着脱治具。
(5) 内輪とつば部を有する外輪との間に複列の円筒ころがそれぞれ保持器を介して円周方向に転動自在に配設された複列円筒ころ軸受の前記円筒ころ及び前記保持器を、(1)〜(4)のいずれかに記載の着脱治具を用いて、前記外輪に対して組み付ける複列円筒ころ軸受の組立方法であって、
前記ころ移動手段で複数の前記円筒ころを径方向内側に同時に移動させ、前記外輪のつば部の内径よりも複数の前記円筒ころによって構成される外接円径が小さくなるようにした状態で、前記ころ支持手段で前記円筒ころの端面を支持することにより前記円筒ころ及び保持器を保持する工程と、
前記円筒ころ及び保持器を保持した前記着脱治具を前記外輪内の所定の位置まで挿入する工程と、
前記ころ移動手段及び前記ころ支持手段による前記円筒ころ及び保持器の保持を解放し、前記着脱治具を前記外輪内から抜き取り、前記円筒ころ及び保持器を前記外輪内に組み付ける工程と、
を含むことを特徴とする複列円筒ころ軸受の組立方法。
(6) 前記複列円筒ころ軸受は、前記外輪の軸方向一端部に取り付けられ、ラビリンスシール部材を有する第1のシールケースと、前記外輪の軸方向他端部に取り付けられて、オイルシールを有する第2のシールケースと、をさらに備え、
前記挿入工程及び前記組付工程は、前記第2のシールケースが取り外され、前記第1のシールケースが取り付けられた状態で、前記軸方向一端部側の前記円筒ころ及び保持器に対して行われることを特徴とする(5)に記載の複列円筒ころ軸受の組立方法。
(7) 内輪とつば部を有する外輪との間に複列の円筒ころがそれぞれ保持器を介して円周方向に転動自在に配設された複列円筒ころ軸受の前記円筒ころ及び前記保持器を、(1)〜(4)のいずれかに記載の着脱治具を用いて、前記外輪から取り外す複列円筒ころ軸受の取り外し方法であって、
前記内輪を取り外した後、前記円筒ころ及び保持器が配設された前記外輪内に前記着脱治具を所定位置まで挿入する工程と、
前記ころ移動手段で複数の前記円筒ころを径方向内側に同時に移動させ、前記外輪のつば部の内径よりも複数の前記円筒ころによって構成される外接円径が小さくなるようにした状態で、前記ころ支持手段で前記円筒ころの端面を支持することにより前記円筒ころ及び保持器を保持する工程と、
前記円筒ころ及び保持器を保持したまま前記着脱治具を前記外輪内から抜き出す工程と、
を含むことを特徴とする複列円筒ころ軸受の取り外し方法。
(8) 前記複列円筒ころ軸受は、前記外輪の軸方向一端部に取り付けられ、ラビリンスシール部材を有する第1のシールケースと、前記外輪の軸方向他端部に取り付けられて、オイルシールを有する第2のシールケースと、をさらに備え、
前記挿入、保持及び抜出工程は、前記第2のシールケースが取り外され、前記第1のシールケースが取り付けられた状態で、前記軸方向一端部側の前記円筒ころ及び保持器に対して行われることを特徴とする(7)に記載の複列円筒ころ軸受の取り外し方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の複列円筒ころ軸受用着脱治具によれば、外輪のつば部の内径よりも複数の円筒ころによって構成される外接円径が小さくなるように、保持器内で複数の円筒ころを径方向内側に同時に移動させるころ移動手段と、径方向内側に移動した円筒ころの端面を支持するころ支持手段と、を備える。これにより、複数の円筒ころと保持器とを一緒に外輪に容易に組み付けることができるとともに、複数の円筒ころと保持器とを一緒に外輪から容易に取り外すことができ、複列円筒ころ軸受のメンテナンスの作業性を向上することができる。
特に、ラビリンスシール部材を有する第1のシールケースと、オイルシールを有する第2のシールケースと、を備える複列円筒ころ軸受において、第1のシールケースが取り付けられた状態で、複数の円筒ころと保持器との組み付け、取り外しを行うことができるようになり、ラビリンスシール部材を有する第1のシールケースの再利用が可能となり、部品コストを削減することができる。
【0013】
また、上記着脱治具を用いた複列円筒ころ軸受の組立方法によれば、ころ移動手段で複数の円筒ころを径方向内側に同時に移動させ、外輪のつば部の内径よりも複数の円筒ころによって構成される外接円径が小さくなるようにした状態で、ころ支持手段で円筒ころの端面を支持することにより円筒ころ及び保持器を保持する工程と、円筒ころ及び保持器を保持した着脱治具を外輪内の所定の位置まで挿入する工程と、ころ移動手段及びころ支持手段による円筒ころ及び保持器の保持を解放し、着脱治具を外輪内から抜き取り、円筒ころ及び保持器を外輪内に組み付ける工程と、を含む。これにより、複数の円筒ころと保持器とを一緒に外輪に容易に組み付けることができ、複列円筒ころ軸受のメンテナンスの作業性を向上することができる。
特に、ラビリンスシール部材を有する第1のシールケースと、オイルシールを有する第2のシールケースと、を備える複列円筒ころ軸受において、第1のシールケースが取り付けられた状態で、複数の円筒ころと保持器との組み付けを行うことができるようになり、ラビリンスシール部材を有する第1のシールケースの再利用が可能となり、部品コストを削減することができる。
【0014】
また、上記着脱治具を用いた複列円筒ころ軸受の取り外し方法によれば、内輪を取り外した後、円筒ころ及び保持器が配設された外輪内に着脱治具を所定位置まで挿入する工程と、ころ移動手段で複数の円筒ころを径方向内側に同時に移動させ、外輪のつば部の内径よりも複数の円筒ころによって構成される外接円径が小さくなるようにした状態で、ころ支持手段で円筒ころの端面を支持することにより円筒ころ及び保持器を保持する工程と、円筒ころ及び保持器を保持したまま着脱治具を外輪内から抜き出す工程と、を含む。これにより、複数の円筒ころと保持器とを一緒に外輪から容易に取り外すことができ、複列円筒ころ軸受のメンテナンスの作業性を向上することができる。
特に、ラビリンスシール部材を有する第1のシールケースと、オイルシールを有する第2のシールケースと、を備える複列円筒ころ軸受において、第1のシールケースが取り付けられた状態で、複数の円筒ころと保持器との取り外しを行うことができるようになり、ラビリンスシール部材を有する第1のシールケースの再利用が可能となり、部品コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る複列円筒ころ軸受用着脱治具が適用される鉄道車両用密封円筒ころ軸受の一例を示す縦断面図である。
【
図3】本発明に係る複列円筒ころ軸受用着脱治具の概略断面図である。
【
図6】(a)は下段リングを保持器に接触させた状態を示す断面図であり、(b)は上段リングと下段リングとを接触させて、径方向内側に移動した円筒ころを保持器とともに保持した状態を示す断面図である。
【
図7】(a)及び(b)は、円筒ころ及び保持器を外輪から取り外す複列円筒ころ軸受の分解・取り外し方法を示す図である。
【
図8】(a)〜(c)は、同じく円筒ころ及び保持器を外輪から取り外す複列円筒ころ軸受の分解・取り外し方法を示す図である。
【
図9】(a)〜(c)は、円筒ころ及び保持器を外輪に組み付ける複列円筒ころ軸受の組立方法を示す図である。
【
図10】(a)〜(c)は、同じく円筒ころ及び保持器を外輪に組み付ける複列円筒ころ軸受の組立方法を示す図である。
【
図11】同じく円筒ころ及び保持器を外輪に組み付ける複列円筒ころ軸受の組立方法を示す図である。
【
図12】従来の複列円筒ころ軸受を示す断面図である。
【
図13】
図12のXIII−XIII線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る複列円筒ころ軸受用着脱治具及び該軸受の組立並びに取り外し方法について図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態では、既に
図12で説明した従来の鉄道車両用密封型複列円筒ころ軸受と実質的に重複する又は相当する部材などについては、同一または相当符号を付し、説明を省略あるいは簡略化する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の鉄道車両に適用される複列円筒ころ軸受5は、車軸6の端部に嵌合したフリンガ(油切り)7と車軸6の肩部6aに嵌合した後蓋8との間に配置される。
【0018】
複列円筒ころ軸受5は、内周面の軸方向略中央につば部1aが設けられ、つば部1aの軸方向両側に一対の外輪軌道面1bを有する外輪1と、外周面において一対の外輪軌道面1bと対向する位置に一対の内輪軌道面2aを有する内輪2と、一対の外輪軌道面1bと一対の内輪軌道面2aとの間に転動自在に配置される複列の円筒ころ3と、複列の円筒ころ3を所定の間隔にそれぞれ保持する保持器4と、を備える。また、内輪2の外周面のつば部1aに対応する位置には、案内輪14が外嵌されている。
【0019】
さらに、複列円筒ころ軸受5には、内外輪1、2間の隙間を覆うように密封装置20、30が設けられている。外輪1の軸方向一端部(図中、左端部)に設けられた密封装置30は、非接触式であり、外輪1の左端部内周面に取り付けられた第1のシールケース31と、第1のシールケース31に装着されるラビリンスシール部材32と、を備える。また、外輪1の軸方向他端部(図中、右端部)に設けられた密封装置20は、接触式であり、外輪1の右端部内周面に取り付けられた第2のシールケース21と、第2のシールケース21の装着されたオイルシール22と、を備える。なお、密封装置30は、
図12に示すような単一のシールケースによって構成されてもよい。
【0020】
保持器4は、
図2に示すように、複数の円筒ころ3を周方向に略等間隔に保持するポケット部15を有している。ポケット部15の周方向の互いに対向する内側面4aは、保持器4の外径側では円筒ころ3の外径形状に略沿った円弧状を有しているが、保持器4の内径側に向かうにつれて次第に各内側面4a間の間隔が広くなるように形成され、内径側の先端部にころ外れ防止用の引っ掛かり部4bが設けられている。これにより、円筒ころ3は、ポケット部15内で径方向に移動可能な構造となっており、すべての円筒ころ3を径方向内側に移動させた場合には、外輪1のつば部1aの内径よりも円筒ころ3の外径円径OD(
図6(b)参照)が小さくなることを許容する。
【0021】
次に、複列円筒ころ軸受用着脱治具50について
図3〜
図6を参照して説明する。複列円筒ころ軸受用着脱治具50は、外輪1のつば部1a内を外輪1の軸方向にそれぞれ挿通可能であるとともに、互いに軸方向に相対移動可能な上段リング(第1の支持部材)51と下段リング(第2の支持部材)52とを備える。下段リング52には、上段リング51を挿通するボルト53が締結されており、該ボルト53の周囲にはばね54が設けられている。これにより、上段リング51は、ばね54により下段リング52から離間して配置される一方、押圧力が作用することで、ばね54の付勢力に抗して下段リング52と接触する位置まで移動可能に構成されている。
【0022】
上段リング51の外周面には、すべての円筒ころ3を保持器4のポケット部15内で径方向内側に移動させるためのころ移動手段として板状の引き寄せ部材55が等間隔で複数取り付けられている。
図4に示すように、引き寄せ部材55の先端部には、一対のテーパ部55aが周方向両側に設けられている。これにより、上段リング51が下段リング52に近づくように移動させたとき、各引き寄せ部材55も、
図4において下方に移動する。そして、各引き寄せ部材55の一対のテーパ部55aが隣り合う円筒ころ3の側面と接触し、外輪1のつば部1aの内径よりも複数の円筒ころ3によって構成される外接円径OD(
図6(b)参照)が小さくなるように、複数の円筒ころ3を同時に径方向内側(
図6(a)の矢印A方向)に移動させる。下段リング52は、引き寄せ部材55と干渉しないように、上段リング51よりも小径に形成されている。
【0023】
なお、上段リング51の引き寄せ部材55間の外周面51aは、円筒ころ3及び保持器4を外輪1に取り付け(組み立て)、及び取り外しする際の抵抗を軽減するために凹面形状に形成されている。
【0024】
また、下段リング52には、一端が支点56aを中心として回動可能に取り付けられ、先端部に円筒ころ3の端面を保持する爪部(受け部)57を備えた回動部材としての回動バー56が等間隔で複数設けられている。回動バー56は、ばね(付勢部材)59により、爪部57の外径側端部が、転動時における複数の円筒ころ3によって構成される内接円径ID(
図6(a)参照)よりも径方向内側に位置するように付勢されている。なお、下段リング52の内部には、回動バー56が回動可能なように、図示しない空間が設けられている。
【0025】
また、上段リング51には、回動バー56の径方向内側側面と当接可能な位置に配置され、下段リング52に向けて軸方向に突出するガイドバー61がボルト62によって取り付けられている。これにより、上段リング51が下段リング52に近づくように移動するときには、ガイドバー61が回動バー56に当接し、回動バー56をばね59の付勢力に抗して支点56aを中心として回動させ、爪部57が円筒ころ3の端面を支持する位置まで爪部57の外径側端部を半径方向外側に移動させる。したがって、本実施形態では、爪部57を有する回動バー56、及びガイドバー61が、径方向内側に移動した円筒ころ3の端面を支持するころ支持手段を構成している。
【0026】
また、
図5に示すように、爪部57の外径側端部は、回動バー56が径方向外側に回動した時に、保持器4に干渉しないような大きさを有するとともに、保持器4に対して転動時の位置の円筒ころ3とは干渉せず、且つ、径方向内側に移動してきた円筒ころ3の端面を支持するような寸法の凹部57aが形成されている。
【0027】
さらに、下段リング52には、外周面にインロー部58が形成されている。インロー部58は、円筒ころ3及び保持器4を外輪1に組み立て、又は取り外しする際に保持器4を嵌合させ、保持器4のセンター位置を決めるために用いられる。
【0028】
このようにして、複列円筒ころ軸受用着脱治具50は、円筒ころ3及び保持器4を保持し、保持した円筒ころ3及び保持器4を外輪1に対して着脱する。以下、円筒ころ3及び保持器4の着脱方法について
図7〜
図11を用いて説明する。
【0029】
まず、複列円筒ころ軸受用着脱治具50を用いた複列円筒ころ軸受5の分解・取り外し方法について説明する。初めに、図示省略するが、内輪2が取り外された複列円筒ころ軸受5から、オイルシール22及び第2のシールケース21を含む密封装置20を不図示の治具を用いて取り外し、これと同時に、オイルシール側の円筒ころ3及び保持器4と、案内輪14が分解される。なお、複列円筒ころ軸受5から取り外したオイルシール22及び第2のシールケース21は再使用せずに新しいものと交換される。
【0030】
次に、
図7(a)に示すように、ラビリンスシール側の密封装置30が取り付けられた外輪1と、ラビリンスシール側の円筒ころ3及び保持器4と、を有する外輪組立体70に対して、密封装置30を囲うようにベースリング60を被せる。そして、
図7(b)に示すように、外輪組立体70の上下を反転させ、オイルシール側の外輪軌道面1bにガイドリング63を挿入する。
【0031】
さらに、
図8(a)に示すように、複列円筒ころ軸受用着脱治具50を、ガイドリング63の内周面に沿って外輪組立体70の内部に挿入する。このとき、ばね59の付勢力によって、爪部57の外径側端部は径方向内側に位置しており、円筒ころ3と干渉することがない。そして、複列円筒ころ軸受用着脱治具50の下段リング52の外周面に形成されたインロー部58が保持器4の上端部に嵌合して、着脱治具50の位置決めが行われる。
【0032】
次に、
図8(b)に示すように、複列円筒ころ軸受用着脱治具50の上段リング51を下段リング52に近づけるように操作する。上段リング51が下段リング52に向かって降下すると、上段リング51に設けられた引き寄せ部材55も同時に降下して円筒ころ3の側面に接触し、すべての円筒ころ3を径方向内側に同時に移動させる。また、このとき上段リング51とともに下降するガイドバー61によって回動バー56も支点56aの回りに回動し、回動バー56の先端に設けられた爪部57が径方向内側に移動した円筒ころ3の端面を支持する。なお、本実施形態では、上段リング51は、引き寄せ部材55の周方向中間部が保持器4の柱部の周方向中間部に位置するように位相合わせして、外輪組立体70内に挿入されている。
【0033】
次に、
図8(c)に示すように、複列円筒ころ軸受用着脱治具50を、上段リング51及び下段リング52を接触させて、円筒ころ3及び保持器4を保持した状態のまま、上方に移動させ、外輪組立体70の内部から取り外す。このとき、円筒ころ3は、引き寄せ部材55によって、複数の円筒ころ3によって構成される外接円径ODの方が外輪1のつば部1aの内径よりも小さくなるように保持されているため、外輪1のつば部1aに干渉せずに取り外すことができる。
【0034】
このようにして、ラビリンスシール側の密封装置30を取り外すことなく、オイルシール側の密封装置20を取り外すだけで、外輪1のつば部1aを越えてオイルシール側から、ラビリンス側の複数の円筒ころ3及び保持器4を有するころ保持器組立体80を分解することができる。
【0035】
次に、複列円筒ころ軸受用着脱治具50を用いた複列円筒ころ軸受の組立方法について説明する。まず、
図9(a)に示す、密封装置20のオイルシール22のリップ部や、
図10(a)や
図11に示す、複数の円筒ころ3及び保持器4とを有するころ保持器組立体80、81にグリースを塗布しておく。
【0036】
そして、
図9(b)に示すように、ラビリンスシール側の密封装置30が取り付けられたままの外輪1である外輪組立体71を、密封装置30を上側にして載置し、密封装置30を囲うようにベースリング60を被せる。また、
図9(c)に示すように、ベースリング60を被せた外輪組立体71を上下反転し、オイルシール側の外輪軌道面1bに、ガイドリング63を挿入する。
【0037】
次に、
図10(a)に示すように、複数の円筒ころ3を保持器4に対して径方向内側に配置したころ保持器組立体80を、上段リング51と下段リング52とが接触した状態の複列円筒ころ軸受用着脱治具50に配置する。
【0038】
次に、
図10(b)に示すように、ころ保持器組立体80を配置した複列円筒ころ軸受用着脱治具50を、ガイドリング63に沿って外輪1内の所定の位置まで挿入する。このとき、円筒ころ3は、引き寄せ部材55と、爪部57を有する回動バー56とによって、複数の円筒ころ3によって構成される外接円径ODの方が外輪1のつば部1aの内径よりも小さくなるように保持されているため、
図10(b)の上方から外輪1のつば部1aに干渉することなく、ころ保持器組立体80を取り付けた複列円筒ころ軸受用着脱治具50を挿入することができる。
【0039】
次に、
図10(c)に示すように、複列円筒ころ軸受用着脱治具50の上段リング51を下段リング52から離すように上方に移動させる。そして、引き寄せ部材55が上方に移動するとともに、爪部57を有する回動バー56が支点56aの回りに回動して円筒ころ3及び保持器4の保持を解放する。その後、円筒ころ3を外側に移動させるとともに、複列円筒ころ軸受用着脱治具50をころ保持器組立体80から分離して、ガイドリング63から上方に抜き取る。これにより、外輪1のラビリンスシール側にころ保持器組立体80が配置された外輪組立体70が構成される。
【0040】
その後、外輪組立体70からベースリング60及びガイドリング63を取り外し、
図11に示すように、外輪組立体70のラビリンスシール側の密封装置30を下側にして、軸受支え64の上に乗せる。また、
図11において、円筒ころ3の上部の外輪1のつば部1aに対応する場所に案内輪14を挿入する。さらに、ころ保持器組立体81を上方から外輪1内に挿入した後、オイルシール側の密封装置20を組み込みリング65を用いて外輪1に装着する。
さらに、内輪2を組み付けることで、複列円筒ころ軸受5の組み立てが完了する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の複列円筒ころ軸受用着脱治具50によれば、外輪1のつば部1aの内径よりも複数の円筒ころ3によって構成される外接円径ODが小さくなるように、保持器4内で複数の円筒ころ3を同時に径方向内側に移動させるころ移動手段と、径方向内側に移動した円筒ころ3の端面を支持するころ支持手段と、を備える。これにより、複数の円筒ころ3と保持器4とを一緒に外輪1に容易に組み付けることができるとともに、複数の円筒ころ3と保持器4とを一緒に外輪1から容易に取り外すことができ、複列円筒ころ軸受5のメンテナンスの作業性を向上することができる。
【0042】
特に、ラビリンスシール部材32を有する第1のシールケース31と、オイルシール22を有する第2のシールケース21と、を備える複列円筒ころ軸受5において、第1のシールケース31が取り付けられた状態で、複数の円筒ころ3と保持器4との組み付け、取り外しを行うことができるようになり、第1のシールケース31を含むラビリンスシール部材32の再利用が可能となり、部品コストを削減することができる。
【0043】
また、複列円筒ころ軸受用着脱治具50は、外輪1のつば部1a内を外輪1の軸方向にそれぞれ挿通可能であるとともに、互いに軸方向に相対移動可能な上段及び下段リング51、52をさらに備える。そして、ころ移動手段は、上段リング51に取り付けられ、上段リング51を下段リング52に近づくように移動させたときに、円筒ころ3と接触して円筒ころ3を径方向内側に移動させる複数の引き寄せ部材55を有し、ころ支持手段は、下段リング52にその一端が回動可能に取り付けられ、先端部に円筒ころ3の端面を保持する爪部57を備えた複数の回動バー56を有する。したがって、上段及び下段リング51、52を操作することにより、すべての円筒ころ3を保持器4に対して同時に移動させることができ、また、すべての円筒ころ3及び保持器4を着脱することができる。
【0044】
また、引き寄せ部材55は、円筒ころ3を径方向内側に移動させるために、その先端部がテーパ状に形成される。これにより、引き寄せ部材55が円筒ころ3の側面と接触して、円筒ころ3を内側に容易に移動させることができる。
【0045】
さらに、回動バー56は、ばね59によって、爪部57の外径側端部が、転動時における複数の円筒ころ3によって構成される内接円径IDよりも内側に位置するように付勢されており、上段リング51が下段リング52に近づくように移動する際、上段リング51に設けられたガイドバー61が回動バー56と当接して、爪部57が円筒ころ3の端面を支持する位置まで回動バー56が回動するように構成される。これにより、上段及び下段リング51、52の外輪1内への挿入、及び円筒ころ3の保持を確実に行うことができる。
【0046】
また、上記着脱治具50を用いた複列円筒ころ軸受5の組立方法によれば、ころ移動手段で複数の円筒ころ3を同時に径方向内側に移動させ、外輪1のつば部1aの内径よりも複数の円筒ころ3によって構成される外接円径ODが小さくなるようにした状態で、ころ支持手段で円筒ころ3の端面を支持することにより円筒ころ3及び保持器4を保持する工程と、円筒ころ3及び保持器4を保持した着脱治具50を外輪1内の所定の位置まで挿入する工程と、ころ移動手段及びころ支持手段による円筒ころ3及び保持器4の保持を解放し、着脱治具50を外輪1内から抜き取り、円筒ころ3及び保持器4を外輪1内に組み付ける工程と、を含む。これにより、複数の円筒ころ3と保持器4とを一緒に外輪1に容易に組み付けることができ、複列円筒ころ軸受5のメンテナンスの作業性を向上することができる。
【0047】
また、上記着脱治具50を用いた複列円筒ころ軸受5の取り外し方法によれば、内輪2を取り外した後、円筒ころ3及び保持器4が配設された外輪1内に着脱治具50を所定位置まで挿入する工程と、ころ移動手段で複数の円筒ころ3を同時に径方向内側に移動させ、外輪1のつば部1aの内径よりも複数の円筒ころ3によって構成される外接円径ODが小さくなるようにした状態で、ころ支持手段で円筒ころ3の端面を支持することにより円筒ころ3及び保持器4を保持する工程と、円筒ころ3及び保持器4を保持したまま着脱治具50を外輪1内から抜き出す工程と、を含む。これにより、複数の円筒ころ3と保持器4とを一緒に外輪1から容易に取り外すことができ、複列円筒ころ軸受5のメンテナンスの作業性を向上することができる。
【0048】
以上、本発明の複列円筒ころ軸受用着脱治具及び該軸受の組立方法並びに取り外し方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0049】
1 外輪
1a つば部
2 内輪
3 円筒ころ
4 保持器
5 複列円筒ころ軸受
20、30 密封装置
21 第2のシールケース
22 オイルシール(接触シール部材)
31 第1のシールケース
32 ラビリンスシール部材
50 複列円筒ころ軸受用着脱治具
51 上段リング(第1の支持部材)
52 下段リング(第2の支持部材)
54 ばね
55 引き寄せ部材(ころ移動手段)
56 回動バー(回動部材、ころ支持手段)
57 爪部
58 インロー部
61 ガイドバー(ガイド部材、ころ支持手段)