特許第6048213号(P6048213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6048213-液体現像剤 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048213
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】液体現像剤
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/12 20060101AFI20161212BHJP
   G03G 9/13 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   G03G9/12
   G03G9/12 321
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-36966(P2013-36966)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-164219(P2014-164219A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉江 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 國智
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−325433(JP,A)
【文献】 特開2003−321305(JP,A)
【文献】 特開2009−175670(JP,A)
【文献】 特開平07−181750(JP,A)
【文献】 特開2000−318391(JP,A)
【文献】 特開2014−164220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/12−9/135
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子と絶縁性液体とを含み、
前記絶縁性液体は、炭素数が11〜16の第1炭化水素を40〜90質量%、および炭素数が17〜20の第2炭化水素を10〜60質量%含み、炭素数が21以上の第3炭化水素を含まないまたは10質量%以下含み、
前記絶縁性液体に含まれる、前記第1炭化水素、前記第2炭化水素および前記第3炭化水素の総量は、95質量%以上である、液体現像剤。
【請求項2】
前記絶縁性液体は、前記第1炭化水素を70〜90質量%、および前記第2炭化水素を10〜30質量%含む、請求項1に記載の液体現像剤。
【請求項3】
前記絶縁性液体は、前記第3炭化水素を含まないまたは1質量%以下含む、請求項1または2に記載の液体現像剤。
【請求項4】
前記トナー粒子は、樹脂と着色剤とを含み、前記樹脂は酸価20mgKOH/g以上のポリエステル樹脂である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体現像剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に用いられる液体現像剤は、トナー粒子を絶縁性液体に分散させて構成されている。絶縁性液体は、トナー粒子を安定して分散させることができるように適宜選択されている。
【0003】
たとえば、特開2007−41162号公報(特許文献1)には、重量平均分子量が300以下で粘度が0.5〜30mPa・sである第1の液体と、重量平均分子量が300〜1000で粘度が30〜1000mPa・sである第2の液体とを含む絶縁性液体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−41162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像形成装置には、現像ローラ、感光体ローラ、転写ローラ等多数のローラが他のローラと対向するように設けられており、液体現像剤を長期間使用するとこのようなローラ表面上でトナー粒子の凝集が発生する場合があった。このようなトナー粒子の凝集は、そのまま転写されてメディア上の画像にも現れ、画像の品質低下の原因となった。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、画像形成装置のローラ表面上およびメディア上の画像に発生するトナー粒子の凝集の抑制が可能な液体現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、まずローラ表面上で発生するトナー粒子の凝集の原因を鋭意検討したところ、対向するローラ間を絶縁性液体が通過しにくいため、対向するローラ間にかかる圧力によってトナー粒子がダメージを受けやすく、ダメージを受けたトナー粒子が凝集しやすくなることが大きな原因であることを突き止めた。トナー粒子を硬くすることにより、トナー粒子はダメージを受けにくくなるが、溶融性が落ちるために定着性が損なわれる恐れがある。また、ローラ間の圧力を低減することでトナー粒子にかかる圧力を低減する方法もあるが、現像や転写不良が発生する恐れがある。また、液体現像剤の絶縁性液体の粘度を上げることにより、対向するローラ間に絶縁性液体が満たされやすくなるので、トナー粒子はダメージを受けにくくなるが、単に絶縁性液体の粘度を上げると揮発性が低くなるために定着後もメディア上に絶縁性液体が残存し易くなり、画像品質を低下させることになる。本発明者らは、以上を考慮して液体現像剤に用いられる絶縁性液体を鋭意研究し、本発明を完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明の液体現像剤は、トナー粒子と絶縁性液体とを含み、該絶縁性液体は、炭素数が11〜16の第1炭化水素を40〜90質量%、および炭素数が17〜20の第2炭化水素を10〜60質量%含み、炭素数が21以上の第3炭化水素を含まないまたは10質量%以下含み、該絶縁性液体に含まれる、第1炭化水素、第2炭化水素および第3炭化水素の総量は、95質量%以上であることを特徴とする。
【0009】
ここで、該絶縁性液体は、第1炭化水素を70〜90質量%、および第2炭化水素を10〜30質量%含むことが好ましい。
【0010】
また、該絶縁性液体は、第3炭化水素を含まないまたは1質量%以下含むことが好ましい。
【0011】
また、上記トナー粒子は、樹脂と着色剤とを含み、該樹脂は酸価20mgKOH/g以上のポリエステル樹脂であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液体現像剤は、画像品質を低下させることなく、画像形成装置のローラ表面上およびメディア上の画像に発生するトナー粒子の凝集が抑制されるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】画像形成装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
<液体現像剤>
本発明の液体現像剤は、トナー粒子と絶縁性液体とを含む。かかる液体現像剤は、これらの成分を含む限り、他の任意の成分を含むことができる。他の成分としては、たとえば荷電制御剤、増粘剤、トナー粒子を分散させるための分散剤(以下、便宜上「トナー分散剤」という)等を挙げることができる。液体現像剤の配合割合は、たとえばトナー粒子を10〜50重量%、絶縁性液体を50〜90重量%とすることができる。このような液体現像剤は、複写機、プリンタ、デジタル印刷機、簡易印刷機などの電子写真方式の画像形成装置用の現像剤として有用である。
【0015】
<絶縁性液体>
本発明の液体現像剤に含まれる絶縁性液体とは、常温で不揮発性であり、電気的に絶縁性を示すもの(たとえば抵抗値が1011〜1016Ω・cmの範囲のもの)が好ましい。この範囲の抵抗値を有すれば、通常静電潜像を乱すことがないためである。さらに、このような絶縁性液体としては、臭気および毒性がないものが好ましい。
【0016】
絶縁性液体は、主として炭素数の異なる炭化水素の混合物からなる。具体的には、炭素数が11〜16の第1炭化水素(C11〜C16)を40〜90質量%、および炭素数が17〜20の第2炭化水素(C17〜C20)を10〜60質量%含み、炭素数が21以上の第3炭化水素(C21以上)を含まないまたは10質量%以下含む。絶縁性液体に含まれる、第1炭化水素、第2炭化水素および第3炭化水素の総量は、95質量%以上である。
【0017】
第1炭化水素(C11〜C16)の含有量が90質量%を超えると、または第2炭化水素(C17〜C20)の含有量が10質量%未満であると、画像形成装置における対向するローラ間での絶縁性液体の潤滑効果が小さくなり、トナー粒子の凝集が発生しやすくなる。なお、第2炭化水素(C17〜C20)が10質量%含まれる場合には潤滑効果を確認することができたが、この理由は炭素数が17以上ある第2炭化水素は対向するローラ間を通過しやすいので、10質量%であっても潤滑効果が得られたものと考えられる。第1炭化水素(C11〜C16)の含有量が40質量%未満であると、または第2炭化水素(C17〜C20)の含有量が60質量%を超えると、定着後メディアへの残液が増加し、画像品質を低下させることになる。なお、炭素数が16の炭化水素(C16)と、炭素数が18の炭化水素(C18)の揮発速度を確認したところ、炭素数が18の炭化水素(C18)の揮発速度の方が大幅に小さかった。したがって、本発明では、第2炭化水素の炭素数を17以上として、第2炭化水素の含有量を上記のとおり規定し、メディアへの残液の増加を抑制している。
【0018】
絶縁性液体は、好ましくは、第1炭化水素(C11〜C16)を70〜90質量%、および第2炭化水素(C17〜C20)を10〜60質量%含む。このような比率になると、メディアへの残液が減少し、より好ましい。なお、第3炭化水素(C21以上)は含まないことが好ましく、含む場合は、上記のとおり10質量%以下の範囲で含み、好ましくは1質量%以下の範囲で含む。第3炭化水素(C21以上)は、第2炭化水素(C17〜C20)と比較して、さらに揮発速度が小さく、したがってメディアへの残液の増加を抑制するために、含有する場合であっても上記範囲で含有するものとする。
【0019】
絶縁性液体は、炭素数が10以下の炭化水素(C10以下)を含んでいてもよいが、かかる炭化水素は揮発性が高いため含まない方が好ましい。
【0020】
絶縁性液体に含まれる炭化水素は、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族化炭化水素、およびこれらの混合物のいずれであってもよく、また飽和炭化水素が主であることが好ましいが、不飽和炭化水素が混在していてもよい。
【0021】
第1炭化水素(C11〜C16)としては、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカンなどが例示される。第2炭化水素(C17〜C20)としては、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサンなどが例示される。第3炭化水素(C21以上)としては、ヘンイコサンが例示される。
【0022】
絶縁性液体は、具体的には、モレスコホワイト(松村石油研究所社製)、アイソパー(エクソン化学社製)、シェルゾール(シェル石油化学社製)、IPソルベント1620、IPソルベント2028、IPソルベント2835(いずれも、出光石油化学社製)等、市販のパラフィンオイルを混合して作製することにより、上記比率を得ることができる。
【0023】
第1炭化水素(C11〜C16)として、アイソパーL(エクソンモービル社製)、IPソルベント2028(出光興産社製)が例示される。第2炭化水素(C17〜C20)として、モレスコホワイトP−40(モレスコ社製)、IPソルベント2835(出光興産社製)が例示される。第3炭化水素(C21以上)として、モレスコホワイトP−70(モレスコ社製)、P−120(モレスコ社製)が例示される。これらを混合して絶縁性液体を作製することにより、上記比率の絶縁性液体が得ることができる。
【0024】
本発明の液体現像剤が適用される画像形成システムにおいて、トナー付着量は約1〜4g/mで、メディアに到達するキャリア液量は1〜3g/m程度である。そして、本発明の液体現像剤によると定着システム通過後、メディア内部の残キャリア液を2g/m未満とすることができる。定着システム通過後、メディア内部の残キャリア液が2g/m以上であると画像の品質低下が発生する。
【0025】
<トナー粒子>
本発明の液体現像剤に含まれるトナー粒子は、樹脂と、該樹脂中に分散された着色剤とを含む。かかるトナー粒子は、これらの成分を含む限り、他の任意の成分を含むことができる。他の成分としては、たとえばワックス、荷電制御剤等を挙げることができる。
【0026】
トナー粒子の体積平均粒径は、0.5μm以上5.0μm以下であることが好ましい。体積平均粒径が0.5μm未満になると、粒子が小径過ぎて、電界での移動性が悪化し、現像性が低下する。体積平均粒径が5.0μmより大きくなると、均一性が低下し画質が低下するため好ましくない。
【0027】
<樹脂>
トナー粒子に含まれる樹脂は、熱可塑性であればいかなる樹脂でもよい。たとえば、スチレン、アクリル、酢酸ビニル等のビニル系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ、エチレン、石油系樹脂、等である。
【0028】
その中でも、シャープメルト性を有するポリエステル樹脂が好ましく用いられる。ポリエステル樹脂は、熱特性等の特性を広範囲に変化させることができるとともに、透光性、延展性、粘弾性に優れるためである。このようにポリエステル樹脂は、透光性に優れることから、カラー画像を得る場合に美しい色彩を得ることができ、また延展性および粘弾性に優れることから紙等のメディア上に形成された画像(樹脂膜)が強靭で、しかもそのメディアと強力に接着することができる。さらに、樹脂中へ絶縁性液体が浸入しにくくなり、樹脂が膨潤しにくく、トナー粒子の凝集を抑制する観点から、酸価を有するポリエステル樹脂を用いることが好ましい。ポリエステル樹脂の酸価は好ましくは20mgKOH/g以上、より好ましくは30mgKOH/g以上である。酸価が高い方が、架橋構造を有するようになり、樹脂の剛直性が増し、対向するローラ間でのトナー粒子の凝集に対してより優位になるからである。
【0029】
ポリエステル樹脂は、酸成分(多塩基酸)とアルコール成分(多価アルコール)らなる。ここで、多価アルコールとしては、特に限定されず、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール等のプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等のヘキサンジオール等のアルキレングリコール(脂肪族グリコール)およびこれらのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノール等のビスフェノール類およびこれらのアルキレンオキサイド付加物のフェノール系グリコール類、単環あるいは多環ジオール等の脂環式および芳香族ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール等が挙げられる。これらを単独でまたは2種以上混合して用いることができる。特に、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド2〜3モル付加物が、生成物であるポリエステル樹脂の溶解性、安定性の点で液体現像剤のトナー粒子用樹脂として適し、かつ低コストであることからも好ましい。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0030】
また、多塩基酸(多カルボン酸)としては、たとえばマロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸およびその変性酸(たとえば、ヘキサヒドロ無水フタル酸)、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の飽和または不飽和(あるいは芳香族)の多価塩基酸およびこれらの酸無水物、低級アルキルエステル等を挙げることができ、これらを各単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸が、生成物であるポリエステル樹脂の溶解性、安定性の点で液体現像剤のトナー粒子用樹脂として適し、かつ低コストであることからも好ましい。特に3官能以上の官能基を有するトリメリット酸を用いれば、高い酸価のポリエステル樹脂を得るために優位である。
【0031】
ポリエステル樹脂は、数平均分子量が500以上10000以下が好ましく、より好ましくは1000以上5000以下である。上記分子量の場合、適度な溶融性と耐オフセット性が得られる。
【0032】
<着色剤>
本発明のトナー粒子に含まれる着色剤は、上記の樹脂中に分散されている。このような着色剤の粒径は、0.3μm以下であることが好ましい。着色剤の粒径が0.3μmを超えると着色剤の分散が悪くなり、光沢度が低下し所望の色目を実現できなくなる場合がある。
【0033】
また、トナー粒子中における着色剤の添加量は、トナー粒子固形分に対して、5〜50質量部程度とすることが好ましい。その添加量が5質量部未満では、十分な着色効果を得ることができない場合があり、50質量部を超えると、着色剤の均一分散が難しくなり、着色剤の凝集による光沢度の低下を引き起こす場合がある。
【0034】
このような着色剤としては、従来公知の顔料、染料等を特に限定することなく使用することができるが、コスト、耐光性、着色性等の観点から、たとえば以下の着色剤を使用することが好ましい。なお、色彩構成上、これらの着色剤は、通常ブラック着色剤、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、シアン着色剤に分類され、基本的にブラック以外の色彩(カラー画像)はイエロー着色剤、マゼンタ着色剤、シアン着色剤の減法混色により調色される。
【0035】
黒色の着色剤としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、バイオマス由来のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0036】
マゼンタもしくはレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48;1、C.I.ピグメントレッド53;1、C.I.ピグメントレッド57;1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0037】
また、オレンジもしくはイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。
【0038】
さらに、グリーンもしくはシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15;2、C.I.ピグメントブルー15;3、C.I.ピグメントブルー15;4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0039】
これらの着色剤は必要に応じて単独もしくは2つ以上を選択併用することも可能である。
【0040】
<トナー分散剤>
本発明の液体現像剤に含まれるトナー分散剤は、トナー粒子を絶縁性液体中に安定的に分散させる作用を有するものであり、このため、通常はトナー粒子の表面部に存在(吸着)している。このような分散剤は、絶縁性液体に対して可溶性であることが好ましい。
【0041】
このようなトナー分散剤としては、トナー粒子を安定に分散させるものである限り特に限定されるものではなく、たとえば界面活性剤、高分子分散剤等を用いることができる。そして、トナー粒子を構成する樹脂としてポリエステル樹脂を用いる場合には、このようなトナー分散剤として塩基性の高分子分散剤を用いることが好ましい。
【0042】
このような塩基性の高分子分散剤としては、分子内にアミン、アミド、イミン、ピロリドンを含む含窒素樹脂が挙げられる。具体的には、たとえば、ポリエステルアミン、変性ポリウレタン、ポリアルキレンポリアミン、変性ポリウレタン、ポリエステルポリアミンが挙げられる。塩基性の高分子分散剤の他の具体例としては、BYK Chemie社製の「Disperbyk−109」(アルキロールアミノアマイド)、「Disperbyk−130」(不飽和ポリカルボン酸ポリアミノアマイド)が挙げられる。また、アビシア社製の「S13940」(ポリエステルアミン系)や、「S17000」、「S18000」および「S19000」(脂肪酸アミン系)、「S11200」等も挙げられる。その塩基性基としてピロリドン基を有する高分子分散剤を用いることが特に好ましい。これは、恐らくトナー粒子を構成する上述のポリエステル樹脂の酸価が高い場合に塩基性の高分子分散剤を用いることにより、これら両者の相互作用によりトナー粒子の良好な分散性が長期間に亘り安定化されるためではないかと考えられる。
【0043】
このような塩基性の高分子分散剤としては、上記ピロリドン基をはじめ、たとえば芳香族アミノ基、脂肪族アミノ基、ヘテロ環窒素含有基、ヘテロ環酸素含有基、ヘテロ環硫黄含有基等を有する高分子分散剤を挙げることができる。また、ピロリドン基としては、たとえばN−ビニルピロリドン基を挙げることができ、N−ビニルピロリドン基を有する塩基性の高分子分散剤としては、たとえばN−ビニル−2−ピロリドンとメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、またはアルキレン化合物とのランダム共重合体またはグラフト共重合体等を挙げることができる。ここで、メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルがアルキルエステルである場合、そのアルキル基の炭素数は10〜20程度であることが好ましい。これらの市販品を例示すると、たとえば「Antaron V−216」、「Antaron V−220」(いずれも商品名、GAF/ISP Chemicals社製)等を挙げることができる。また、上記アルキレン化合物のアルキル基の炭素数は10〜30程度が好ましい。
【0044】
<樹脂製造方法>
トナー粒子を構成する樹脂に用いられるポリエステル樹脂は、従来公知の重縮合方法により製造することができる。すなわち、用いる原料モノマーの種類に応じて異なるものの、一般的には150〜300℃の温度範囲で行なうことができる。また、雰囲気ガスとして不活性ガスを用いたり、各種の溶媒を任意に選択したり、反応容器内圧力を常圧または減圧にする等、任意の条件を採用することができる。
【0045】
また、反応を促進させるために、エステル化触媒を用いてもよい。エステル化触媒としては、たとえばテトラブチルジルコネート、ジルコニウムナフテネート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、3/1しゅう酸第1スズ/酢酸ナトリウム等の金属有機化合物等を挙げることができるが、生成物であるポリエステルを着色しないものが好ましい。
【0046】
なお、反応生成物であるポリエステル樹脂の分子量は、反応時間を調整することにより調整することができる。ポリエステル樹脂を得る重縮合反応は、低分子量物質が時間の経過に伴って分子量を増大させていく逐次反応であるからである。このような反応時間と分子量との関係は、原料モノマーの種類、各種の重合条件、ロットスケール等により異なるため、これらの諸条件を考慮し、所望の分子量が得られる反応時間を調節することが好ましい。
【0047】
<液体現像剤の製造方法>
液体現像剤の調製は、造粒法、粉砕法等の従来公知の方法に基づいて行なうことができる。粉砕法では、予め樹脂と着色剤を溶融混練し、粉砕する。粉砕は乾式状態やオイル中での湿式状態で行う方法がある。造粒法では、懸濁重合法、乳化重合法、微粒子凝集法、樹脂溶液に貧溶媒を添化し析出する方法、スプレードライ法等がある。
【0048】
次に、粉砕法について、説明する。液体現像剤の調製は、従来公知の技法に基づいて行なうことができる。たとえば、加圧ニーダ、ロールミル、3本ロール等の混練機を用いて、樹脂と着色剤とを所定の配合比で溶融混練し、樹脂中に着色剤を均一に分散させることにより着色剤−樹脂分散体を得る。
【0049】
続いて、上記で得られた着色剤−樹脂分散体を冷却し、冷却後これを粗粉砕する。引き続き、粗粉砕された着色剤−樹脂分散体(これを「粗粉砕トナー」ということもある)をさらに所望の粒径となるまで粉砕することにより、トナー粒子を得る。上記で用いることができる粉砕方法としては、乾式粉砕法と湿式粉砕法を挙げることができるが、省エネルギで所望の粒径まで粉砕できる方法であれば特に限定されるものではない。
【0050】
たとえば、カッターミルにより粗粉砕トナーを得、引き続き乾式粉砕法としてジェットミルを用いて、粗粉砕トナーを所望の粒径となるまでさらに粉砕することによりトナー粒子を得る。そして、このトナー粒子を絶縁性液体および分散剤と混合することにより液体現像剤を調製することができる。
【0051】
一方、湿式粉砕法を採用する場合は、たとえば上記方法で得られた粗粉砕トナー、絶縁性液体、および分散剤を混合し、サンドミルを用いてこの混合物を粉砕することによりトナー粒子を所望の粒径とし、液体現像剤を調製することができる。
【0052】
<画像形成装置>
図1は、現像剤として本発明に係る液体現像剤を使用可能な画像形成装置の一例を示す概略図である。図1に示す画像形成装置20は、感光体から中間転写体に1次転写した後、メディアに2次転写する単色の画像形成装置であるが、感光体から直接用紙に転写する方式や、複数の現像剤を重ね合わせてカラー画像を形成する多色画像形成装置においても本発明に係る液体現像剤を使用することができる。
【0053】
図1に示す画像形成装置20において、現像槽22には、現像剤21が入れられている。現像剤21はf方向に回転するアニロックスローラ23でくみ上げられ、e方向に回転するならしローラ25に送られる。アニロックスローラ23表面の余分な液体現像剤は、ならしローラ25に達する前にアニロックス規制ブレード24でかきとられ、ならしローラ25では、現像剤が均等の層厚となるように調整される。現像剤は、ならしローラ25からb方向に回転する現像剤担持体26に転移する。
【0054】
感光体29は、a方向に回転し、帯電部30で帯電され、露光部31で潜像形成される。潜像形成された像に対応して、現像剤は、現像チャージャー28でトナーに荷電を与えられた後、感光体29に現像される。感光体29に転移しなかった現像剤担持体26上の液体現像剤は、下流にあるクリーニングブレード27でかきとられ、回収される。感光体29に現像された現像剤は、1次転写部37で中間転写体33に静電1次転写される。転写しきれず感光体29に残留する現像剤は、クリーニングブレード32でかきとられる。中間転写体33に担持された現像剤は、中間転写体33と2次転写ローラ35とが対向する2次転写部38にてメディア40に静電2次転写される。メディア40に転写された現像剤は一対の定着ローラ36a,36bの対向部において加熱されて定着することで、プリントアウトされた画像が完成する。転写しきれず中間転写体33に残留する現像剤は、クリーニングブレード34にてかきとられる。感光体29は再び帯電、露光、現像の工程を繰り返し、プリント動作を行なう。
【0055】
画像形成時に使用されるメディア40は、電子写真方式の画像形成方法によりトナー画像の形成が可能なものであれば特に限定されるものではない。具体的なメディア40としては、公知のものが挙げられ、たとえば、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙、あるいは、コート紙等の塗工された印刷用紙、市販の和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布等が挙げられる。
【0056】
図1に示す画像形成装置においては、アニロックスローラ23、ならしローラ25、現像担持体26、感光体29、中間転写体33、2次転写ローラ35、定着ローラ36a,36bはいずれもローラから構成されており、これらは他のローラと対向して配置されているので、二つのローラの対向部では上述のとおりトナー粒子の凝集が発生しやすい。本発明の液体現像剤を用いた場合は、メディア40上における絶縁性液体の残液量が多くなることなく、トナー粒子の凝集の発生を抑制することができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
<製造例1>ポリエステル樹脂Aの合成
還流冷却器、水・アルコール分離装置、窒素ガス導入管、温度計及び攪拌装置を備えた丸底フラスコに、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を1600質量部(多価アルコール)、テレフタル酸を890質量部(多価塩基酸)、攪拌しながら窒素ガスを導入し、200〜240℃の温度で脱水重縮合または脱アルコール重縮合を行った。生成したポリエステル樹脂の酸価または反応溶液の粘度が所定の値になったところで反応系の温度を100℃以下に下げ、重縮合を停止させた。このようにして熱可塑性ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂A)を得た。得られたポリエステル樹脂Aについて下記の方法により重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、ガラス転移温度Tg、酸価を測定したところ、Mw=6000、Mn=2200、Tg=55.3℃ 、酸価=14.0mgKOH/gであった。
【0059】
<製造例2>ポリエステル樹脂Bの合成
還流冷却器、水・アルコール分離装置、窒素ガス導入管、温度計及び攪拌装置を備えた丸底フラスコに、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を1600質量部(多価アルコール)、テレフタル酸を550質量部(多価塩基酸)、そしてトリメリット酸を340質量部入れ、攪拌しながら窒素ガスを導入し、200〜240℃の温度で脱水重縮合または脱アルコール重縮合を行った。生成したポリエステル樹脂の酸価または反応溶液の粘度が所定の値になったところで反応系の温度を100℃以下に下げ、重縮合を停止させた。このようにして熱可塑性ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂B)を得た。得られたポリエステル樹脂Bについて下記の方法により重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、ガラス転移温度Tg、酸価を測定したところ、得られたポリエステル樹脂Bは、Mw=5400、Mn=2000、Tg=58.3℃ 、酸価=44.0mgKOH/gであった。
【0060】
[分子量の測定]
ポリエステル樹脂A,Bの重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、それぞれゲルパーミエイションクロマトグラフィーの結果から算出した。ゲルパーミエイションクロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフポンプ TRI ROTAR−V型(日本分光社製)、紫外分光検出器 UVDEC427−100−V型(日本分光社製)、50cm長さのカラムShodex GPC A−803(昭和電工社製)を用いて行い、そのクロマトグラフィーの結果から、被検試料の分子量をポリスチレンを標準物質として算出することにより、ポリスチレン換算Mw及びMnとして求めた。なお、被検試料は樹脂0.05gを20mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させたものを用いた。
【0061】
[Tgの測定]
ポリエステル樹脂A,Bのガラス転移温度Tgは、示差走査熱量計DSC−6200(セイコーインスツルメンツ(株)製)を用い、試料量20mg、昇温速度10℃/minの条件で測定した。
【0062】
[酸価の測定]
ポリエステル樹脂A,Bの酸価は、JIS K5400に規定された条件で測定した。
【0063】
<実施例1>
ポリエステル樹脂Bを100質量部、銅フタロシアニンブルー15質量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、二軸押出混練機で溶融混合後、冷却し、その後粗粉砕し、ジェット粉砕機にて平均粒径6μmに微粉砕した。二軸ロール内加熱温度100℃の同方向回転二軸押出し機を用い溶融混練を行い、得られた混合物を冷却、粗粉砕して粗粉砕トナー粒子を得た。このトナー粒子34質量部、塩基性高分子分散剤(「Antaron V−220」(GAF/ISP Chemicals社製))0.25質量部、絶縁性液体(「アイソパーL」(エクソンモービル社製、25℃の粘度:1.1mPa・s、引火点:64℃)80質量%、「モレスコホワイトP−40」(モレスコ社製、25℃の粘度:5.4mPa・s、引火点:144℃)20質量%の混合液)100質量部、ジルコニアビーズ100質量部を混合し、サンドミルにて120時間撹拌し、実施例1の液体現像剤を得た。このようにして作製した液体現像剤に含まれるトナー粒子の体積平均粒径は2.11μmであった。体積平均粒径は、後述の方法で測定した。以下の実施例・比較例においても同様である。
【0064】
<実施例2>
使用した絶縁性液体が異なる点以外は、実施例1と同様にして実施例2の液体現像剤を得た。実施例2では、絶縁性液体(「IPソルベント2028」(出光興産社製、25℃の粘度:2.5mPa・s、引火点:86℃)90質量%、「モレスコホワイトP−40」10質量%の混合液)を用いた。得られた実施例2の液体現像剤に含まれるトナー粒子の体積平均粒径は2.15μmであった。
【0065】
<実施例3>
ポリエステル樹脂Bに代えてポリエステル樹脂Aを用いた点、および使用した絶縁性液体が異なる点以外は、実施例1と同様にして実施例3の液体現像剤を得た。実施例3では、絶縁性液体(「IPソルベント2028」90質量%、「モレスコホワイトP−40」10質量%の混合液)を用いた。得られた実施例3の液体現像剤に含まれるトナー粒子の体積平均粒径は1.84μmであった。
【0066】
<実施例4>
使用した絶縁性液体が異なる点以外は、実施例1と同様にして実施例4の液体現像剤を得た。実施例4では、絶縁性液体(「IPソルベント2028」45質量%、「モレスコホワイトP−40」55質量%の混合液)を用いた。得られた実施例4の液体現像剤に含まれるトナー粒子の体積平均粒径は2.00μmであった。
【0067】
<実施例5>
使用した絶縁性液体が異なる点以外は、実施例1と同様にして実施例5の液体現像剤を得た。実施例5では、絶縁性液体(「アイソパーL」59質量%、「モレスコホワイトP−40」32質量%、「モレスコホワイトP−80」8質量%の混合液)を用いた。得られた実施例5の液体現像剤に含まれるトナー粒子の体積平均粒径は2.21μmであった。
【0068】
<比較例1>
ポリエステル樹脂Bに代えてポリエステル樹脂Aを用いた点、および使用した絶縁性液体が異なる点以外は、実施例1と同様にして比較例1の液体現像剤を得た。比較例1では、絶縁性液体(「アイソパーL」95質量%、「モレスコホワイトP−40」5質量%の混合液)を用いた。得られた比較例1の液体現像剤に含まれるトナー粒子の体積平均粒径は1.98μmであった。
【0069】
<比較例2>
使用した絶縁性液体が異なる点以外は、実施例1と同様にして比較例2の液体現像剤を得た。比較例2では、絶縁性液体(「アイソパーL」35質量%、「モレスコホワイトP−40」62質量%、「モレスコホワイトP−70」(モレスコ社製、25℃の粘度:12.4mPa・s、引火点:180℃)3質量%の混合液)を用いた。得られた比較例2の液体現像剤に含まれるトナー粒子の体積平均粒径は2.21μmであった。
【0070】
<比較例3>
ポリエステル樹脂Bに代えてポリエステル樹脂Aを用いた点、および使用した絶縁性液体が異なる点以外は、実施例1と同様にして比較例3の液体現像剤を得た。比較例3では、絶縁性液体(「IPソルベント2028」78質量%、「モレスコホワイトP−40」10質量%、「モレスコホワイトP−70」12質量%の混合液)を用いた。得られた比較例3の液体現像剤に含まれるトナー粒子の体積平均粒径は1.84μmであった。
【0071】
<比較例4>
ポリエステル樹脂Bに代えてポリエステル樹脂Aを用いた点、および使用した絶縁性液体が異なる点以外は、実施例1と同様にして比較例4の液体現像剤を得た。比較例4では、絶縁性液体(「IPソルベント2028」20質量%、「モレスコホワイトP−120」(モレスコ社製、25℃の粘度:23.3mPa・s、引火点:200℃)80質量%の混合液)を用いた。得られた比較例4の液体現像剤に含まれるトナー粒子の体積平均粒径は1.95μmであった。
【0072】
<比較例5>
ポリエステル樹脂Bに代えてポリエステル樹脂Aを用いた点、および使用した絶縁性液体が異なる点以外は、実施例1と同様にして比較例5の液体現像剤を得た。比較例5では、絶縁性液体(「IPソルベント2028」97質量%、「モレスコホワイトP−120」3質量%の混合液)を用いた。得られた比較例5の液体現像剤に含まれるトナー粒子の体積平均粒径は1.95μmであった。
【0073】
[体積平均粒径の測定]
各液体現像剤に含まれるトナー粒子の体積平均粒径を粒子径分析装置(「FPIA−3000S」、Sysmex社製)を用いて測定した。フロー溶媒に「アイソパーL」を用いた。各サンプル50mgを、分散剤(「S13940」、日本ルーブリゾール社製)30mgを加えた20gの「アイソパーL」中に投入し、その懸濁液を超音波分散器(「ウルトラソニッククリーナ モデル VS−150」、ウエルボクリア社製)で約5分間分散処理を行なったサンプルを用いて、各サンプルの体積平均粒径(体積基準の粒度分布のメジアン径D50)を測定した。
【0074】
[分子量の測定]
各液体現像剤の絶縁性液体に含まれる第1炭化水素、第2炭化水素および第3炭化水素の割合については、以下の方法により炭素数分布評価を行ない確認した。まず、液体現像剤を遠心分離法により固液分離し、上澄み液の炭素数分布評価を以下に示す条件のGC−MS(ガスクロマトグラフ質量分析)法により行い、絶縁性液体に含まれる第1炭化水素、第2炭化水素および第3炭化水素の含有割合を算出した。含有割合の測定結果を表1に示す。
【0075】
(1)GC(ガスクロマトグラフ)の条件
装置:キャピラリガスクロマトグラフ「HP‐6890」(Hewlett Packard製)
注入部温度:300℃
注入法:スプリットレスモード
試料:原液(100%)
試料注入量:0.1μL
キャリアガス:ヘリウム(1ml/min)
インターフェース温度:300℃
(2)MS(質量分析)の条件
装置:飛行時間型質量分析装置(Micromass Ltd.製)
イオン化:電場イオン化法(引き出し電圧:12kV)
質量範囲:m/z10〜300
イオン検出:Multi Channel Plate
[凝集の評価]
図1の画像形成装置20にて各液体現像剤を用いてソリッドパターンをメディア40上に10000枚印字後、現像剤担持体26上のトナー粒子を採取し、粒子径分析装置(商品名「FPIA−3000S」、Sysmex社製)により粒子径分布を測定した。図1の画像形成装置20において、トナー粒子は現像チャージャー28でプラス極性に帯電させ、中間転写体33の電位は−400Vとし、2転写ローラ35の電位は−1200Vとし、メディア40の搬送速度は400mm/sとした。粒子分布の測定結果に基づいて下記のように凝集の評価を行なった。評価結果を表1に示す。
【0076】
A:粒子径10μm以上のトナー粒子の比率が1%未満
B:粒子径10μm以上のトナー粒子の比率が1%以上3%未満
C:粒子径10μm以上のトナー粒子の比率が3%以上
なお、上述のとおり、各液体現像剤のトナー粒子の体積平均粒子径は3μm以下であるので、粒子径が10μm以上の粒子の割合が多いほど凝集が発生しやすいと判断することができ、たとえば粒子径10μm以上のトナー粒子の比率が3%以上の場合(上記評価Cの場合)、画像品質に影響を及ぼす凝集が発生していると見なすことができる。
【0077】
[残液量の評価]
図1の画像形成装置20にて各液体現像剤を用いてソリッドパターン(紙上付着量は2g/m)をコート紙(「OKトップコートプラス128g紙」、王子製紙社製)上に定着させた。なお、図1の画像形成装置20において、トナー粒子は現像チャージャー28でプラス極性に帯電させ、中間転写体33の電位は−400Vとし、2転写ローラ35の電位は−1200Vとし、メディア40の搬送速度は400mm/sとした。また、定着ローラ36a,36bの温度を160℃、定着ローラ36a,36bによるニップ時間を40msecとした。そして、定着直後の画像サンプルの紙の重さW1、定着後の画像サンプルを120℃で2時間真空乾燥を行なった後の重さW2を測定し、「W1−W2」に基づいて下記のように残液量の評価を行なった。評価結果を表1に示す。
【0078】
A:「W1−W2」が1g/m未満
B:「W1−W2」が1g/m以上1.5g/m未満
C:「W1−W2」が1.5g/m以上2g/m未満
D:「W1−W2」が2g/m以上
なお、「W1−W2」が大きいほど残液量が多いと判断することができ、たとえば「W1−W2」が2g/m以上の場合(上記評価Cの場合)、画像品質に影響を及ぼす残液が発生しているとみなすことができる。
【0079】
【表1】
【0080】
表1より明らかなように、実施例の液体現像剤を用いると、比較例の液体現像剤を用いた場合に比し、トナー粒子の凝集が抑制され、かつ残液量も抑制されていることが確認できた。
【符号の説明】
【0081】
20 画像形成装置、21 現像剤、22 現像槽、23 アニロックスローラ、24アニロックス規制ブレード、25 ならしローラ、26 現像剤担持体、27,32,34 クリーニングブレード、28 現像チャージャー、29 感光体、30 帯電部、31 露光部、33 中間転写体、35 2次転写ローラ、36a,36b 定着ローラ、37 1次転写部、38 2次転写部、40 メディア。
図1