特許第6048218号(P6048218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048218
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】ESD保護デバイス
(51)【国際特許分類】
   H05F 3/02 20060101AFI20161212BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20161212BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   H05F3/02 L
   H01L27/04 H
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-39380(P2013-39380)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2014-167870(P2014-167870A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2015年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中磯 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 登
【審査官】 出野 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−218459(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/023394(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05F 3/02
H01L 21/822
H01L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に形成されたツェナーダイオードと、
前記半導体基板に形成され、順方向を揃えて直列接続され、かつ、前記ツェナーダイオードと順方向を揃えて並列接続された第1のダイオードおよび第2のダイオードと、
前記半導体基板に形成され、順方向を揃えて直列接続され、かつ、前記ツェナーダイオードと順方向を揃えて並列接続された第3のダイオードおよび第4のダイオードと、
前記第1のダイオードおよび前記第2のダイオードの接続点に接続された第1入出力端と、
前記第3のダイオードおよび前記第4のダイオードの接続点に接続された第2入出力端と、
を備えたESD保護デバイスにおいて、
前記第1のダイオード、前記第2のダイオード、前記第3のダイオードおよび前記第4のダイオードは、
前記第1のダイオードと前記第4のダイオードとの間、および、前記第2のダイオードと前記第3のダイオードとの間に、前記ツェナーダイオードが介在する位置関係となるように形成され、
前記第1入出力端は、
前記第1のダイオードおよび前記第2のダイオードより前記ツェナーダイオード寄りの位置に形成され、
前記第2入出力端は、
前記第3のダイオードおよび前記第4のダイオードより前記ツェナーダイオード寄りの位置に形成され
前記半導体基板に再配線層が形成されていて、
前記再配線層には、
前記第1のダイオードおよび前記第2のダイオードの形成領域と、前記ツェナーダイオードの形成領域との間の一部と重合する第1電極と、
前記第3のダイオードおよび前記第4のダイオードの形成領域と、前記ツェナーダイオードの形成領域との間の一部と重合する第2電極と、
を含んでいる、ESD保護デバイス。
【請求項2】
前記第1電極は前記第1入力端に導通し、
前記第2電極は前記第2入力端に導通している、
請求項に記載のESD保護デバイス。
【請求項3】
前記第1入出力端および前記第2入出力端は、前記ツェナーダイオードの形成位置を基準とする対称位置に形成されている、請求項1又は請求項2に記載のESD保護デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路を静電気放電から保護するESD保護デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器にはICが備えられている。このICをESD(静電気放電)によって生じるサージから保護するために、ICの入出力部には、例えば特許文献1に記載されているESD保護デバイスが接続されている。特許文献1に記載の保護デバイスは、二つのツェナーダイオードにより構成される双方向型ツェナーダイオードを用いている。双方向型ツェナーダイオードを用いることで、正負両極性のESDから電子回路を保護できる。また、特許文献1に記載のESD保護デバイスは実装方向を限定せずに実装できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2012/023394号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ツェナーダイオードはそのオン抵抗が高いため、特許文献1のように二つのツェナーダイオードを直列接続した場合、保持電圧(ESD通電時の両端電圧)が高くなるといった問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、保持電圧が低く、サージ吸収特性に優れた双方向型のESD保護デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、半導体基板に形成されたツェナーダイオードと、前記半導体基板に形成され、順方向を揃えて直列接続され、かつ、前記ツェナーダイオードと順方向を揃えて並列接続された第1のダイオードおよび第2のダイオードと、前記半導体基板に形成され、順方向を揃えて直列接続され、かつ、前記ツェナーダイオードと順方向を揃えて並列接続された第3のダイオードおよび第4のダイオードと、前記第1のダイオードおよび前記第2のダイオードの接続点に接続された第1入出力端と、前記第3のダイオードおよび前記第4のダイオードの接続点に接続された第2入出力端と、を備えたESD保護デバイスにおいて、前記第1のダイオード、前記第2のダイオード、前記第3のダイオードおよび前記第4のダイオードは、前記第1のダイオードと前記第4のダイオードとの間、および、前記第2のダイオードと前記第3のダイオードとの間に、前記ツェナーダイオードが介在する位置関係となるように形成され、前記第1入出力端は、前記第1のダイオードおよび前記第2のダイオードより前記ツェナーダイオード寄りの位置に形成され、前記第2入出力端は、前記第3のダイオードおよび前記第4のダイオードより前記ツェナーダイオード寄りの位置に形成されていることを特徴とする。
【0007】
この構成では、ESDによる電流が第1入出力端から入力された場合には、例えば、第1のダイオード、ツェナーダイオード、第4のダイオードを通り、第2の入出力端へと電流が流れる。一方、ESDによる電流が第2入出力端から入力された場合には、第3のダイオード、ツェナーダイオード、第2のダイオードを通り、第1の入出力端へと電流が流れる。このように、オン抵抗成分が大きいツェナーダイオードを一つ用いるだけであり、第1から第4ダイオードの順方向降下電圧およびオン抵抗値も低いので、保持電圧が低く、サージ吸収特性に優れた双方向型のESD保護デバイスを実現できる。
【0008】
また、例えば、第1入出力端から電流が流れると、第1入出力端、第1のダイオードおよびツェナーダイオードで形成されるループと、第2入出力端、第4のダイオードおよびツェナーダイオードで形成されるループとで閉磁路が形成される。このため、電流が流れることにより発生する磁界がESD保護デバイス外部に漏れることを抑制できる。
【0009】
前記半導体基板に再配線層が形成されていて、前記再配線層には、前記第1のダイオードおよび前記第2のダイオードの形成領域と、前記ツェナーダイオードの形成領域との間の一部と重合する第1電極と、前記第3のダイオードおよび前記第4のダイオードの形成領域と、前記ツェナーダイオードの形成領域との間の一部と重合する第2電極とを含んでいる構成が好ましい。
【0010】
この構成では、電流が流れることにより発生する磁界を第1電極および第2電極でシールドできるため、磁界がESD保護デバイス外部に漏れることをさらに抑制できる。また、第1電極および第2電極の近接によって渦電流が生じ、第1入出力端および第2入出力端間の線路のインダクタンス(ESL)が抑制される。これにより、サージ電流の反射が抑制され、低い保持電圧が維持できる。
【0011】
前記第1電極は前記第1入力端に導通し、前記第2電極は前記第2入力端に導通している構成が好ましい。
【0012】
この構成では、第1電極および第2電極を端子電極とすることができるため、別途シールド用の電極を設ける必要がなく、ESD保護デバイスを小型化できる。
【0013】
前記第1入出力端および前記第2入出力端は、前記ツェナーダイオードの形成位置を基準とする対称位置に形成されている構成が好ましい。
【0014】
この構成では、電流が流れることにより発生する磁界の大きさを、第1のダイオード(または第2のダイオード)側と、第4のダイオード(または第3のダイオード)側とで略同じにすることができる。このため、二つの磁界が相殺されて、ESD保護デバイス外へ漏れる磁界を抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、保持電圧が低く、サージ吸収特性に優れた双方向型のESD保護デバイスを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係るESD保護デバイスの正面断面図
図2】実施形態に係るESD保護デバイスの各層の平面図
図3】Si基板に形成されたESD保護回路を示す図
図4】Si基板のESD保護回路と端子電極との位置関係を説明するための図
図5】(A)および(B)は、実施形態に係るESD保護デバイスの接続例を示す図
図6】実施形態に係るESD保護デバイスの動作原理を説明するための図
図7】実施形態に係るESD保護デバイスの動作原理を説明するための図
図8】ESD保護デバイスの製造工程を示す図
図9】ダイオードの数を変更したESD保護デバイスの変形例を示す図
図10】ダイオードの数を変更したESD保護デバイスの変形例を示す図
図11】パッドの位置を変更したESD保護デバイスの変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本実施形態に係るESD保護デバイス1の正面断面図である。図2は本実施形態に係るESD保護デバイス1の各層の平面図である。ESD保護デバイス1は、CSP(Chip Size Package)タイプのデバイスであり、ダイオードおよびツェナーダイオードを含むESD保護回路10Aが構成されたSi基板10に、複数の樹脂層等を含む再配線層20が形成されている。Si基板10は、本発明に係る半導体基板に相当するが、本発明に係る半導体基板はSi基板には限定されず、GaAs基板などであってもよい。
【0018】
図3はSi基板10に形成されたESD保護回路を示す図である。Si基板10について、図1図3を参照して説明する。
【0019】
Si基板10の表面には素子形成領域11,12,13が設けられている。具体的には、p+型基板にpエピタキシャル層が形成され、このpエピタキシャル層内にnウェルpウェルが順に形成され、これらのウェルとp拡散層またはn拡散層によって、Si基板10にダイオードD1,D2,D3,D4およびツェナーダイオードDzが形成されている。
【0020】
このように形成されたダイオードD1,D2は順方向が揃って直列接続され、ダイオードD3,D4は順方向が揃って直列接続されている。また、直列接続したダイオードD1,D2およびダイオードD3,D4それぞれは、順方向が揃ってツェナーダイオードDzに対し並列接続されている。さらに、ダイオードD1,D4の形成位置の間およびダイオードD2,D3の形成位置の間に、ツェナーダイオードDzが介在している。
【0021】
Si基板10にはAlパッド(以下、パッドという。)P1,P2形成されている。パッドP1はダイオードD1,D2の接続点から引き出した位置に形成され、パッドP2はダイオードD3,D4の接続点から引き出した位置に形成されている。また、パッドP1は、ダイオードD1,D2よりツェナーダイオードDz寄りの位置に形成され、パッドP2は、ダイオードD3,D4よりツェナーダイオードDz寄りの位置に形成されている。さらに、パッドP1,P2は、ツェナーダイオードDzの形成位置を基準に点対称となる位置に形成されている。
【0022】
図1に戻り、パッドP1,P2の一部を覆うように、Si基板10の表面にはSiN保護膜15が形成されている。SiN保護膜15は、Si基板10の表面にスパッタリングされ、エッチングにより開口が形成されている。
【0023】
再配線層20は、Si基板10に形成された樹脂層41を含んでいる。この樹脂層41は、例えば低誘電率のエポキシ樹脂の層である。この樹脂層41には、SiN保護膜15に形成された開口の位置に、開口(コンタクトホール)21,22(図2参照)が形成されている。パッドP1,P2は、開口21,22により露出した状態となり、開口21,22に形成される電極と導通する。
【0024】
再配線層20は、樹脂層41に形成された端子電極31,32を含んでいる。端子電極31,32は、開口21,22を介してパッドP1,P2に導通している。端子電極31,32は、Cu/Niからなる層と、Au/Niからなる層とで構成されており、ESD保護デバイス1の入出力用の端子電極である。
【0025】
再配線層20は、樹脂層41にさらに形成された樹脂層42を含んでいる。樹脂層42は、例えば10μmの厚みを有した低誘電率のエポキシ樹脂の層である。樹脂層42のうち端子電極31,32の一部と対向する部分には、矩形状の開口42A,42Bが形成されている。この開口42A,42Bには、必要に応じてはんだバンプが形成される。
【0026】
次に、上述のように形成されたESD保護デバイス1において、Si基板10のESD保護回路10Aと端子電極31,32との位置関係を説明する。図4は、Si基板10のESD保護回路10Aと端子電極31,32との位置関係を説明するための図である。端子電極31,32は、開口21,22を介してSi基板10に形成されたパッドP1,P2と導通している。また、端子電極31は、ESD保護デバイス1の厚み方向において、ダイオードD1,D2およびパッドP1の形成領域を覆い、端子電極32は、ダイオードD3,D4およびパッドP2の形成領域を覆っている。
【0027】
以下に、本実施形態に係るESD保護デバイス1の接続例および動作原理を説明する。
【0028】
図5(A)および図5(B)は、本実施形態に係るESD保護デバイス1の接続例を示す図である。ESD保護デバイス1は電子機器に搭載される。電子機器の例として、ノートPC、タブレット型端末装置、携帯電話機、デジタルカメラ、DVC(Digital Video Cassette)、携帯型音楽プレーヤなどが挙げられる。
【0029】
図5(A)では、I/Oポート100と保護すべきIC101とを接続する信号ラインと、GNDとの間にESD保護デバイス1を接続した例を示す。I/Oポート100は、例えばアンテナが接続されるポートである。本実施形態に係るESD保護デバイス1は双方向型であって、第1入出力端および第2入出力端の何れが入力側であってもよい。例えば第1入出力端を入力側とした場合、信号ラインに第1入出力端が接続され、第2入出力端がGNDに接続される。
【0030】
図5(B)では、コネクタ102とIC101とを接続する信号ラインと、GNDラインとの間にESD保護デバイス1を接続した例を示す。この例の信号ラインは、例えば、高速伝送線路(差動伝送線路)であって、複数の信号ラインそれぞれと、GNDラインとの間にESD保護デバイス1が接続されている。
【0031】
図6および図7は、本実施形態に係るESD保護デバイス1の動作原理を説明するための図である。
【0032】
図6は、第1入出力端(端子電極31)に繋がるパッドP1から、第2入出力端(端子電極32)に繋がるパッドP2へ電流が流れる場合を説明するための図である。ツェナーダイオードDzのツェナー電圧を超えるサージ電圧が印加されると、図中破線で示すように、第1入力端から入ってきたサージ電流は、パッドP1からダイオードD1、ツェナーダイオードDzおよびダイオードD4の経路を流れ、パッドP2からグランドへ放電される。この経路で電流が流れた場合、パッドP1、ダイオードD1およびツェナーダイオードDzで囲まれた領域A1では紙面奥方向に向かって磁界が発生し、パッドP2、ダイオードD4およびツェナーダイオードDzで囲まれた領域A2では、紙面手前方向に向かって磁界が発生する。すなわち、ESD保護デバイス1では、図中の曲線矢印に示す磁束ループが生じるような閉磁路が形成される。これにより、ESDにより発生する磁界をESD保護デバイス1の外部に放射されることを抑制でき、他の素子への磁界の漏れによる影響を抑制できる。
【0033】
また、図4に示すように、ESD保護デバイス1の厚み方向において、領域A1,A2の一部は、端子電極31,32で覆われているため、領域A1,A2に磁界が発生すると、電極31,32には渦電流が誘導される。この渦電流により、領域A1,A2に発生する磁界の一部が打消され、この結果、ESD保護デバイス1におけるインダクタンス成分(ESL)が小さくなる。このため、サージ電流の反射が抑制されて、低い保持電圧が維持できる。
【0034】
図7は、第2入出力端(端子電極32)に繋がるパッドP2から、第1入出力端(端子電極31)に繋がるパッドP1へ電流が流れる場合を説明するための図である。この場合、図中破線で示すように、第2入力端から入ってきたサージ電流は、パッドP2からダイオードD3、ツェナーダイオードDzおよびダイオードD2の経路を流れ、パッドP1からグランドへ放電される。この経路で電流が流れた場合、パッドP2、ダイオードD3およびツェナーダイオードDzで囲まれた領域A3では紙面手前方向に向かって磁界が発生し、パッドP1、ダイオードD2およびツェナーダイオードDzで囲まれた領域A4では、紙面奥方向に向かって磁界が発生する。すなわち、ESD保護デバイス1では、図中の曲線矢印に示す磁束ループが生じるような閉磁路が形成される。これにより、ESDにより発生する磁界をESD保護デバイス1の外部に放射されることを抑制でき、他の素子への磁界の漏れによる影響を抑制できる。
【0035】
また、図6の場合と同様に、ESD保護デバイス1の厚み方向において、領域A3,A4の一部は、端子電極31,32で覆われているため、領域A3,A4に磁界が発生すると、電極31,32には渦電流が誘導される。この渦電流により、領域A3,A4に発生する磁界の一部が打消され、この結果、ESD保護デバイス1におけるインダクタンス成分(ESL)が小さくなる。このため、サージ電流の反射が抑制されて、低い保持電圧が維持できる。
【0036】
このように、本実施形態に係るESD保護デバイス1は、一つのツェナーダイオードDzと四つのダイオードD1〜D4とにより双方向型のESD保護デバイス1を実現している。ESD保護デバイス1は、ダイオードD1〜D4の順方向降下電圧およびオン抵抗値はツェナーダイオードDzに比べて低いので、ツェナーダイオードDzを二つ用いる場合と比べて、保持電圧が低く、サージ吸収特性に優れた双方向型のESD保護デバイス1を実現できる。
【0037】
また、ツェナーダイオードDzおよびダイオードD1〜D4を、図3に示すような位置関係に形成することで、ESDにより発生する磁界をESD保護デバイス1の外部に放射されることを抑制でき、他の素子への磁界の漏れによる影響を抑制できる。
【0038】
なお、パッドP1,P2に繋がらない(独立した)電極が上記領域A1,A2を覆うようにしても、上記渦電流による効果は生じる。ただし、端子電極31,32とパッドP1,P2とを接続させることで、ESD保護デバイス1にシールド用の電極を別途設ける必要がなくなる。このため、ESD保護デバイス1を小型化できる。
【0039】
以下に、ESD保護デバイス1の製造工程について説明する。
【0040】
図8はESD保護デバイス1の製造工程を示す図である。ESD保護デバイス1は次の工程で製造される。
【0041】
(A)まず、ESD保護回路10Aが形成されたSi基板10に、ESD保護回路10Aと導通するパッドP1,P2がフォトリソグラフィにより形成される。また、基板表面にSiN保護膜15がスパッタリングされ、エッチングにより開口15A,15Bが形成される。
【0042】
なお、パッドP1,P2は、それらの面積を小さくすることで、対向する基板(ESD保護回路10A)との間に形成される寄生容量を小さくできる。この寄生容量を小さくすることで、インピーダンスのずれを抑制でき、その結果、信号ラインにおける損失を低減できる。
【0043】
(B)次に、Si基板10にエポキシ系ソルダージレストをスピンコーティングされて、樹脂層41が形成され、開口41A,41Bが形成される。
【0044】
(C)樹脂層41の表面にCu/Ti電極23が約1.0μm/0.1μmの厚みでスパッタリングにより成膜され、その後、Au/Ni電極24が約0.1μm/5.0μmの厚みでスパッタリングにより成膜される。なお、このAu/Ni電極24は、マスキングにより一部にのみ形成される。
【0045】
(D)続いて、Cu/Ti電極23がウエットエッチングされて端子電極31,32が形成される。
【0046】
(E)その後、樹脂層41の表面にエポキシ系ソルダージレストがスピンコーティングにより樹脂層42が形成され、開口42A,42Bが形成される。
【0047】
なお、上述の実施形態では、本発明に係る第1のダイオード、第2のダイオード、第3のダイオード、第4のダイオードは、ダイオードD1,D2,D3,D4として表しているが、ダイオードの素子数はこれに限定されない。図9および図10は、ダイオードの数の異なるESD保護デバイス1の変形例を示す図である。図9は、直列接続した二つのダイオードを、本発明に係る第1のダイオード、第2のダイオード、第3のダイオード、第4のダイオードとした例を示す。図10は、並列列接続した三つのダイオードを、本発明に係る第1のダイオード、第2のダイオード、第3のダイオード、第4のダイオードとした例を示す。
【0048】
図11は、パッドP1,P2の位置を変更したESD保護デバイスの変形例を示す図である。図11に示す例でも、ツェナーダイオードDzを基準に点対称となる位置にパッドP1,P2が形成されている。この例では、領域A1,A4を構成する電流経路のループ(部分ループ)が縮小化されているが、領域A1,A4、および領域A2,A3それぞれの大きさは同じである。このため、電流が流れることにより発生する磁界の大きさが領域A1,A4で同じとなり、領域A1,A4で発生する磁界が相殺される。また、領域A2,A3で発生する磁界の大きさも同じとなり、領域A2,A3で発生する磁界も相殺される。この結果、ESD保護デバイス外へ漏れる磁界を抑制できる。
【符号の説明】
【0049】
1−ESD保護デバイス
10−Si基板(半導体基板)
10A−ESD保護回路
11,12,13−素子形成領域
15−SiN保護膜
15A,15B−開口
20−再配線層
21,22−開口
23−Cu/Ti電極
24−Au/Ni電極
31,32−端子電極
41,42−樹脂層
41A,41B−開口
42A,42B−開口
D1−ダイオード(第1のダイオード)
D2−ダイオード(第2のダイオード)
D3−ダイオード(第3のダイオード)
D4−ダイオード(第4のダイオード)
Dz−ツェナーダイオード
P1−パッド(第1入出力端)
P2−パッド(第2入出力端)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11