特許第6048223号(P6048223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6048223車外画像保存システム、車外画像保存装置、及び車車間通信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048223
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】車外画像保存システム、車外画像保存装置、及び車車間通信装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20161212BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20161212BHJP
   G07C 5/00 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   G08G1/00 D
   G08G1/09 H
   G07C5/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-41864(P2013-41864)
(22)【出願日】2013年3月4日
(65)【公開番号】特開2014-170387(P2014-170387A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2015年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】山城 貴久
(72)【発明者】
【氏名】隈部 正剛
【審査官】 東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−231942(JP,A)
【文献】 特開2010−072845(JP,A)
【文献】 特開2010−020485(JP,A)
【文献】 特開2008−158987(JP,A)
【文献】 特開2004−075023(JP,A)
【文献】 特開2009−237945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 − 1/16
G07C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1車両で用いられ、
前記第1車両で用いられる撮像装置(25)によって撮像される前記第1車両前方の車外画像を取得する車外画像取得部(284)と、
前記車外画像取得部で取得した前記車外画像を保存する保存処理部(291)とを備える車外画像保存装置(1b)を含む車外画像保存システム(100)であって、
前記第1車両とは異なる車両である第2車両で用いられ、
前記第2車両の急制動を推定できる前記第2車両の車両情報を取得する急制動推定用情報取得部(286)と、
車車間通信によって情報の送受信を行う第2通信部(332)とを備える車車間通信装置(1a、3)をさらに含み、
前記車車間通信装置は、
前記第2通信部によって、前記第2車両の車両位置を決定できる情報である位置決定用情報を送信し、
前記車外画像保存装置は、
車車間通信によって情報の送受信を行う第1通信部(333)と、
前記第1通信部によって前記第2車両から受信した前記位置決定用情報と、前記第1車両の車両位置及び方位とをもとに、前記撮像装置の撮像方向が前記第2車両周辺を撮像できる方向である第2車両周辺撮像方向を向いているか否かを判定する方向判定部とを備え、
前記車車間通信装置及び前記車外画像保存装置のいずれかは、
前記急制動推定用情報取得部で取得した前記車両情報から、前記第2車両の急制動を推定する急制動推定部(287、292、335)を備え、
前記車外画像保存装置の前記保存処理部は、前記方向判定部で前記第2車両周辺撮像方向を向いていると判定した場合には、前記急制動推定部で前記第2車両の急制動を推定したことをもとに、前記車外画像取得部で取得した前記第1車両前方の車外画像を保存する一方、前記方向判定部で前記第2車両周辺撮像方向を向いていないと判定した場合には、前記車外画像取得部で取得した前記第1車両前方の車外画像を保存しないことを特徴とすることを特徴とする車外画像保存システム。
【請求項2】
請求項において、
前記車外画像保存装置は、
前記第2通信部によって前記第2車両から受信した前記位置決定用情報と、前記第1車両の車両位置とをもとに、前記第1車両と前記第2車両との距離を算出する距離算出部(289)を備え、
前記保存処理部は、前記方向判定部で前記第2車両周辺撮像方向を向いていると判定した場合であっても、前記距離算出部で算出した距離が所定距離以上であった場合には、前記車外画像取得部で取得した前記第1車両前方の車外画像を保存しないことを特徴とする車外画像保存システム。
【請求項3】
請求項又はにおいて、
前記車外画像保存装置は、
前記第1車両を基準とした前記撮像装置の撮像方向を予め保存している撮像方向保存部
(28)を備え、
前記方向判定部は、前記第1通信部によって前記第2車両から受信した前記位置決定用情報と、前記第1車両の車両位置及び方位と、前記撮像方向保存部に保存してある前記撮像方向とをもとに、前記撮像装置の撮像方向が前記第2車両周辺撮像方向を向いているか否かを判定することを特徴とする車外画像保存システム。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項において、
前記車車間通信装置(3)は、
前記第2通信部によって、前記急制動推定用情報取得部で取得した前記車両情報を送信し、
前記車外画像保存装置は、
前記急制動推定部(287)を備え、当該急制動推定部は、前記第1通信部によって前記第2車両から受信した前記車両情報から、前記第2車両の急制動を推定し、
前記車外画像保存装置の前記保存処理部は、前記急制動推定部で前記第2車両の急制動を推定したことをもとに、前記車外画像取得部で取得した前記第1車両前方の車外画像を保存することを特徴とする車外画像保存システム。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項において、
前記車車間通信装置(1a、3)は、
前記急制動推定部(292、335)を備え、当該急制動推定部は、前記急制動推定用情報取得部で取得した前記車両情報から、前記第2車両の急制動を推定し、
前記急制動推定部で前記第2車両の急制動を推定した場合に、前記第2通信部によって、前記撮像装置で撮像した前記第1車両前方の車外画像の保存を要求する保存要求を送信し、
前記車外画像保存装置の前記保存処理部は、前記第1通信部によって前記第2車両から前記保存要求を受信したことをもとに、前記車外画像取得部で取得した前記第1車両前方の車外画像を保存することを特徴とする車外画像保存システム。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項において、
前記車車間通信装置(1a、3)は、
前記急制動推定部(292、335)を備え、当該急制動推定部は、前記急制動推定用情報取得部で取得した前記車両情報から、前記第2車両の急制動を推定し、
前記急制動推定部で前記第2車両の急制動を推定した場合に、前記第2通信部によって、前記急制動推定部での推定結果を送信し、
前記車外画像保存装置の前記保存処理部は、前記第1通信部によって前記第2車両から前記推定結果を受信したことをもとに、前記車外画像取得部で取得した前記第1車両前方の車外画像を保存することを特徴とする車外画像保存システム。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載の車外画像保存システム(100)で用いられることを特徴とする車外画像保存装置。
【請求項8】
請求項又はに記載の車外画像保存システム(100)で用いられることを特徴とする車車間通信装置。
【請求項9】
請求項に記載の車外画像保存システム(100)に含まれる前記車外画像保存装置(1b)は、前記車外画像取得部(284)と、前記保存処理部(291)と、前記急制動推定部(287)とを備える撮像機能付き携帯端末(2)と、前記第1通信部(333)を備える通信機(3)とからなるものであり、当該車外画像保存装置(1b)で用いられることを特徴とする携帯端末。
【請求項10】
請求項又はに記載の車外画像保存システム(100)に含まれる前記車外画像保存装置(1b)は、前記車外画像取得部(284)と、前記保存処理部(291)とを備える撮像機能付き携帯端末(2)と、前記第1通信部(333)を備える通信機(3)とからなるものであり、当該車外画像保存装置(1b)で用いられることを特徴とする携帯端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急制動が発生した車両前方の車外画像を当該車両以外の車両で撮像して保存する車外画像保存システム、並びにその車外画像保存システムに含まれる車外画像保存装置及び車車間通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、自車に急減速が発生したときに、自車前方を自車の車室内のカメラで撮像した車外画像を記録装置に保存する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−158987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、自車の車室内のカメラで撮像した自車前方の車外画像を記録装置に保存するので、自車に急減速が発生した際の自車視点からの車外画像しか保存できないという問題点を有していた。
【0005】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、急制動をした車両前方の車外画像を当該車両以外の車両の視点から撮像して保存することを可能にする車外画像保存システム、車外画像保存装置、及び車車間通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車外画像保存システムは、第1車両で用いられ、第1車両で用いられる撮像装置(25)によって撮像される第1車両前方の車外画像を取得する車外画像取得部(284)と、車外画像取得部で取得した車外画像を保存する保存処理部(291)とを備える車外画像保存装置(1b)を含む車外画像保存システム(100)であって、第1車両とは異なる車両である第2車両で用いられ、第2車両の急制動を推定できる第2車両の車両情報を取得する急制動推定用情報取得部(286)と、車車間通信によって情報の送受信を行う第2通信部(332)とを備える車車間通信装置(1a、3)をさらに含み、車車間通信装置は、第2通信部によって、第2車両の車両位置を決定できる情報である位置決定用情報を送信し、車外画像保存装置は、車車間通信によって情報の送受信を行う第1通信部(333)と、第1通信部によって第2車両から受信した位置決定用情報と、第1車両の車両位置及び方位とをもとに、撮像装置の撮像方向が第2車両周辺を撮像できる方向である第2車両周辺撮像方向を向いているか否かを判定する方向判定部とを備え、車車間通信装置及び車外画像保存装置のいずれかは、急制動推定用情報取得部で取得した車両情報から、第2車両の急制動を推定する急制動推定部(287、292、335)を備え、車外画像保存装置の保存処理部は、方向判定部で第2車両周辺撮像方向を向いていると判定した場合には、急制動推定部で第2車両の急制動を推定したことをもとに、車外画像取得部で取得した第1車両前方の車外画像を保存する一方、方向判定部で第2車両周辺撮像方向を向いていないと判定した場合には、車外画像取得部で取得した第1車両前方の車外画像を保存しないことを特徴としている。
【0007】
これによれば、第2車両の急制動推定用情報取得部で取得した第2車両の車両情報から、急制動推定手段で第2車両の急制動を推定したことをもとに、第1車両で用いられる撮像装置によって撮像された第1車両前方の車外画像を第1車両の保存処理部が保存することになる。よって、第2車両が急制動をした場合に、この第2車両とは別の第1車両の前方の車外画像を、第1車両側で保存することが可能になる。第1車両の前方の車外画像に、第2車両の前方の領域が含まれていた場合には、急制動をした第2車両前方の車外画像を、第1車両の視点から撮像できたことになる。従って、急制動をした車両前方の車外画像を当該車両以外の車両の視点から撮像して保存することが可能になる。
【0008】
また、本発明の車外画像保存装置は、前記の外画像保存システムで用いられるものであるので、これらによれば、急制動をした車両の車外画像を当該車両以外の車両の視点から撮像して保存することが可能になる。
【0009】
また、本発明の車車間通信装置は、車車間通信装置の急制動推定手段で第2車両の急制動を推定した場合に、車外画像保存装置での第1車両前方の車外画像を保存するトリガとなる情報を送信するので、急制動をした車両の車外画像を当該車両以外の車両の視点から撮像して保存することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ドライブレコーダシステム100の概略的な構成を示す図である。
図2】ドライブレコーダユニット1の概略的な構成の一例を示す図である。
図3】実施形態1における通信機側制御部33の概略的な構成の一例を示す機能ブロック図である。
図4】実施形態1における携帯側制御部28の概略的な構成の一例を示す機能ブロック図である。
図5】通信機3の通信機側制御部33での車両情報送信関連処理のフローの一例を示すフローチャートである。
図6】ドライブレコーダユニット1bの撮像機能付き携帯端末2の携帯側制御部28での車外画像保存関連処理のフローの一例を示すフローチャートである。
図7】実施形態2における携帯側制御部28の概略的な構成の一例を示す機能ブロック図である。
図8】変形例3における通信機側制御部33の概略的な構成の一例を示す機能ブロック図である。
図9】実施形態3における携帯側制御部28の概略的な構成の一例を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0012】
(実施形態1)
図1は、本発明が適用されたドライブレコーダシステム100の概略的な構成の一例を示す図である。図1に示すドライブレコーダシステムシステム100は、複数の車両(車両A、B1〜B4)の各々で1つずつ用いられるドライブレコーダユニット1を含んでいる。以下では、急制動をする車両を車両A、車両Aの周辺車両を車両B1〜B4として説明を行う。車両Aが請求項の第車両、車両B1〜B4が請求項の第車両に相当する。
【0013】
また、便宜上、必要に応じて、車両Aで用いられるドライブレコーダユニット1をドライブレコーダユニット1a、車両B1〜B4で用いられるドライブレコーダユニット1をドライブレコーダユニット1bと呼ぶ。なお、ドライブレコーダシステム100が請求項の車外画像保存システムに相当し、ドライブレコーダユニット1bが請求項の車外画像保存装置に相当する。
【0014】
ここで、図2を用いて、ドライブレコーダユニット1の概略的な構成について説明を行う。図2は、ドライブレコーダユニット1の概略的な構成の一例を示す図である。図2に示すようにドライブレコーダユニット1は、撮像機能付き携帯端末2及び通信機3からなっている。通信機3が請求項の車車間通信装置に相当する。
【0015】
撮像機能付き携帯端末2は、自車外の所定範囲の画像(以下、車外画像)を撮像する。撮像機能付き携帯端末2としては、カメラ付きのスマートフォン等の多機能携帯電話機を利用する構成とすればよい。一例として、撮像機能付き携帯端末2は、フロントガラスを通した自車前方の画像を撮像できる方向を向くように、車室内に一時的に固定される。
【0016】
撮像機能付き携帯端末2は、携帯側Bluetooth(登録商標、以下BT)通信部21、位置検出器22、撮像部25、保存用メモリ26、サーバ通信部27、及び携帯側制御部28を備えている。
【0017】
携帯側BT通信部21は、送受信アンテナを備え、自車の通信機3との間でBluetoothの規格に従った通信(以下、BT通信)を行うことで、情報のやり取りを行う。なお、本実施形態では、撮像機能付き携帯端末2と通信機3との間での通信を、BT通信で行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えばZigBee(登録商標)等の近距離無線通信規格やIEEE802.11等の無線LAN規格などに従った無線通信によって行う構成としてもよいし、USB通信等の有線通信によって行う構成としてもよい。
【0018】
位置検出器22は、自端末に作用する加速度を検出する加速度センサ23、人工衛星からの電波に基づいて自端末の現在位置(以下、端末位置)を検出するGPS(global positioning system)のためのGPS受信機24といった各センサから得られる情報をもとに、端末位置の検出を逐次行う。
【0019】
これらのセンサは、各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されているが、各センサの精度によっては上述した内の一部で構成してもよいし、上述した以外のセンサを用いる構成としてもよい。また、端末位置は、例えば緯度・経度で表すものとする。
【0020】
撮像部25は、撮像機能付き携帯端末2の前面や裏面に撮影レンズを有するカラーカメラである。撮像部25が請求項の撮像装置に相当する。撮像部25は、撮像レンズが向いた方向の所定範囲の画像を逐次撮像する。撮像機能付き携帯端末2が、前述したように、フロントガラスを通した自車前方の画像を撮像できる方向を向いている場合には、撮像部25は自車前方の車外画像を逐次撮像することになる。撮像部25としては、CMOSカメラを用いる構成としてもよいし、CCDカメラを用いる構成としてもよい。撮影レンズは、例えば広角レンズを用いる構成とすればよい。
【0021】
保存用メモリ26は、撮像部25が撮像した車外画像を保存するための、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリである。保存用メモリ26は、SDカード等の撮像機能付き携帯端末2から取り外し可能な記憶媒体であってもよい。保存用メモリ26は、後述する画像一時記憶部285よりも車外画像の記録を維持する時間が長いメモリである。例えば、保存用メモリ26は、撮像機能付き携帯端末2の図示しない操作入力部を介したユーザ操作によって消去の指示が行われない限り、保存した車外画像を消去しない構成であってもよい。他にも、保存用メモリ26は、保存した車外画像を後述するサーバに送信しない限り、保存した車外画像を消去しない構成であってもよい。
【0022】
サーバ通信部27は、ネットワークを介して、撮像部25が撮像した車外画像を収集する図示しないサーバと通信を行う。サーバ通信部27は、保存用メモリ26に保存されている車外画像を、携帯側制御部28の指示に従って上記サーバに送信する。
【0023】
携帯側制御部28は、通常のコンピュータとして構成されており、内部には周知のCPU、ROMやRAMやEEPROMなどのメモリ、I/O、及びこれらの構成を接続するバスライン(いずれも図示せず)などが備えられている。携帯側制御部28は、携帯側BT通信部21、位置検出器22、撮像部25から入力された各種情報に基づき、ROMに予め記憶されているプログラムをCPUが実行することによって各種の処理を実行する。
【0024】
図4に示すように、携帯側制御部28は、機能ブロックとして、端末センサ情報取得部281、センサ情報蓄積部282、端末センサ情報送信部283、車外画像取得部284、画像一時記憶部285、転送情報受信部286、他車急制動推定部287、方向判定部288、距離算出部289、距離判定部290、及び保存処理部291を備えている。センサ情報蓄積部282及び画像一時記憶部285は、例えばRAMやEEPROM等の電気的に書き換え可能なメモリに構築されるものとする。なお、ここでは、便宜上、一般的な多機能携帯電話機が有している機能に関する構成のうち、本発明の説明に不要なものについては説明を省略している。
【0025】
端末センサ情報取得部281は、位置検出器22で逐次検出する端末位置、加速度センサ23で逐次検出する自端末に作用する加速度といった端末センサ情報を、センサ情報蓄積部282に蓄積する。センサ情報蓄積部282に端末センサ情報を蓄積する場合には、各端末センサ情報を検出したときの時刻の情報(つまり、タイムスタンプ)を紐付けして蓄積する。また、センサ情報蓄積部282は、割り当てられたメモリ容量を超える場合に、より古い情報から順に消去していく構成とすればよい。他にも、記憶してから一定時間経過した端末センサ情報を消去する構成としてもよい。
【0026】
端末センサ情報送信部283は、自車の通信機3から携帯側BT通信部21を介して、端末センサ情報の取得要求を受けた場合に、センサ情報蓄積部282に蓄積されている複数回分の端末センサ情報をタイムスタンプとともに読み出す。そして、読み出した端末センサ情報及びタイムスタンプを、携帯側BT通信部21を介して通信機3に送信する。一例として、前述の端末位置、自端末に作用する加速度、及びそれらのタイムスタンプを送信する。なお、端末位置は複数回分読み出す一方、自端末に作用する加速度は最新のもののみを読み出す構成としてもよい。
【0027】
車外画像取得部284は、撮像部25で逐次撮像する車外画像を取得し、画像一時記憶部285に記憶する。画像一時記憶部285に車外画像を記憶する場合には、当該車外画像を撮像したときのタイムスタンプを紐付けして一時的に記憶する。また、画像一時記憶部285は、割り当てられたメモリ容量を超える場合に、より古い車外画像から順に消去していく構成とすればよい。他にも、記憶してから一定時間経過した車外画像を消去する構成としてもよい。
【0028】
なお、本実施形態では、画像一時記憶部285が携帯側制御部28のメモリに構築される構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、画像一時記憶部285は、携帯側制御部28のメモリ以外の、撮像機能付き携帯端末2のメモリに構築される構成としてもよい。
【0029】
転送情報受信部286は、自車の通信機3が他車の通信機3から受信した後述の車両情報を、携帯側BT通信部21を介して受信する。この転送情報受信部286が請求項の急制動推定用情報取得部に相当する。なお、他車急制動推定部287、方向判定部288、距離算出部289、距離判定部290、及び保存処理部291については後に詳述する。
【0030】
図2に戻って、通信機3は、周辺車両の通信機3との間で車車間通信によって情報の送受信を行う。通信機3は、車両に搭載される構成に限らず、ユーザに携行可能なものが車両に持ち込まれる構成であってもよい。通信機3は、通信機側BT通信部31、車車間通信部32、及び通信機側制御部33を備えている。
【0031】
通信機側BT通信部31は、送受信アンテナを備え、自車の撮像機能付き携帯端末2との間でBT通信を行うことで、情報のやり取りを行う。
【0032】
車車間通信部32は、送受信アンテナを備え、周辺車両の通信機3との間で、電話網を介さずに無線通信によって情報の送受信を行う車車間通信を行う。例えば、700MHz帯の電波を用いた無線通信の場合には、自車両位置を中心とした例えば半径約1kmの範囲に存在する周辺車両の通信機3との間で車車間通信を行い、5.9GHz帯の電波を用いた無線通信の場合には、自車両位置を中心とした例えば半径約500mの範囲に存在する周辺車両の通信機3との間で車車間通信を行う。車車間通信部32は、通信機側制御部33の指示に従った送信周期で情報を送信する。
【0033】
通信機側制御部33は、通常のコンピュータとして構成されており、内部には周知のCPU、ROMやRAMやEEPROMなどのメモリ、I/O、及びこれらの構成を接続するバスライン(いずれも図示せず)などが備えられている。通信機側制御部33は、通信機側BT通信部31、車車間通信部32から入力された各種情報に基づき、ROMに予め記憶されているプログラムをCPUが実行することによって各種の処理を実行する。
【0034】
図3に示すように、通信機側制御部33は、機能ブロックとして、端末センサ情報受信部331、車両情報送信部332、車両情報受信部333、及び車両情報転送部334を備えている。
【0035】
端末センサ情報受信部331は、撮像機能付き携帯端末2から送信された端末センサ情報を、通信機側BT通信部31を介して受信する。車両情報送信部332は、端末センサ情報受信部331で受信した端末センサ情報から自車の車両情報を生成し、生成した車両情報を、車車間通信部32を介して送信する。車両情報送信部332が請求項の第2通信部に相当する。
【0036】
車両情報受信部333は、他車の通信機3から送信された上述の車両情報を、車車間通信部32を介して受信する。車両情報受信部333が請求項の第1通信部に相当する。車両情報転送部334では、車両情報受信部333で受信した車両情報を、通信機側BT通信部31を介して自車の撮像機能付き携帯端末2に送信する。
【0037】
ここで、図5のフローチャートを用いて、通信機3の通信機側制御部33での車両情報の送信に関連する処理(以下、車両情報送信関連処理)についての説明を行う。図5のフローチャートは、通信機3の電源がオンになったときに開始する構成とすればよい。
【0038】
まず、ステップS1では、端末センサ情報受信部331が端末センサ情報受信処理を行って、ステップS2に移る。端末センサ情報受信処理では、携帯側BT通信部21を介して、端末センサ情報の取得要求を撮像機能付き携帯端末2に送信し、この取得要求に応じて撮像機能付き携帯端末2から返信されてくる端末センサ情報を、携帯側BT通信部21を介して受信する。
【0039】
なお、通信機3から端末センサ情報の取得要求を撮像機能付き携帯端末2に送信し、この取得要求に応じて返信されてくる端末センサ情報を端末センサ情報受信部331が受信する構成に必ずしも限らない。例えば、撮像機能付き携帯端末2から、センサ情報蓄積部282に蓄積されている最新の端末センサ情報を一定時間ごとに送信し、送信されてくる端末センサ情報を端末センサ情報受信部331が逐次受信する構成としてもよい。
【0040】
ステップS2では、車両情報送信部332が送信車両情報生成処理を行って、ステップS3に移る。送信車両情報生成処理では、端末センサ情報受信部331が受信した端末センサ情報から、車車間通信で送信する車両情報を生成する。
【0041】
例えば、送信車両情報生成処理では、端末位置を自車の車両位置として車両情報を生成する。また、撮像部25での撮像方向が自車前方を向いている本実施形態の例では、自端末の加速度のうち、撮像部25での撮像方向と同じ軸の加速度を、自車の前後軸の加速度として車両情報を生成する。車両情報には、少なくとも自車の前後軸の加速度を含む構成とすればよい。また、送信車両情報生成処理では、時系列に並んだ複数の端末位置から最小二乗法で求めた近似線が伸びる方位を自車の方位(つまり、進行方向)として車両情報を生成する。
【0042】
ここでは、車両情報のうちの自車の方位を端末位置から求める構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、撮像機能付き携帯端末2が地磁気センサを備えており、この地磁気センサの検出結果を利用可能な場合には、この地磁気センサの検出結果を利用して自車の方位を求める構成とすればよい。
【0043】
なお、自車の前後軸の加速度については、端末位置から以下のようにして算出する構成としてもよい。まず、時系列に並んだ複数の端末位置から、自端末を用いる自車の単位時間あたりの移動距離を算出することで、自車の車速を算出する。そして、逐次算出する車速の時間微分値を算出し、算出した時間微分値を自車の前後軸の加速度として扱う。
【0044】
また、本実施形態では、撮像機能付き携帯端末2から得られる端末センサ情報から車両情報を生成する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、通信機3に、GPS受信機24のような衛星測位システムの受信機を少なくとも含む場合には、この受信機を用いて検出できる自車の通信機3の位置から車両情報を生成する構成としてもよい。この場合、自車の前後軸の加速度及び方位は、端末位置から算出する前述の方法と同様の方法を用いることで、自車の通信機3の位置から算出する構成とすればよい。
【0045】
ステップS3では、車両情報送信部332が車両情報送信処理を行って、ステップS4に移る。車両情報送信処理では、送信車両情報生成処理で生成した車両情報を、車車間通信部32を介して送信する。送信車両情報生成処理で生成した車両情報が請求項の位置方位決定用情報に相当する。車両情報の送信は、例えば100msecごとなどの通信機3での車車間通信の送信周期に従って行うものとする。
【0046】
車両情報送信処理で送信する車両情報には、自車の車両位置、自車の前後軸の加速度、自車の方位、これらのタイムスタンプ、送信元の車両を特定するための識別情報が含まれる。識別情報としては、自車を特定するための車両IDや自車の通信機3を特定するための機器IDを用いることができる。
【0047】
ステップS4では、車両情報送信関連処理の終了タイミングであった場合(ステップS4でYES)には、フローを終了する。一方、車両情報送信関連処理の終了タイミングでなかった場合(ステップS4でNO)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。車両情報送信関連処理の終了タイミングの一例としては、通信機3の電源がオフになったときなどがある。
【0048】
次に、図6のフローチャートを用いて、ドライブレコーダユニット1bの撮像機能付き携帯端末2の携帯側制御部28での他車の急制動を推定した場合の車外画像の保存に関連する処理(以下、車外画像保存関連処理)についての説明を行う。図6のフローチャートは、自車の通信機3が他車の通信機3から受信した車両情報を、携帯側BT通信部21を介して受信したときに開始される構成とすればよい。
【0049】
まず、ステップS21では、他車急制動推定部287が他車急制動推定処理を行って、ステップS22に移る。他車急制動推定部287が請求項の急制動推定部に相当する。他車急制動推定処理では、他車の通信機3から受信した車両情報のうちの、当該他車の前後軸の加速度をもとに、当該他車が急制動をしたか否かを推定する。一例としては、他車の前後軸の加速度が負の所定値以下であった場合に、他車が急制動をしたと推定する。一方、負の所定値未満であった場合に、他車が急制動をしていないと推定する。ここで言うところの所定値は、急制動と言える程度の減速度に相当する任意の値である。
【0050】
本実施形態では、他車急制動推定部287が、他車の通信機3から受信した当該他車の前後軸の加速度をもとに、当該他車が急制動をしたか否かを推定する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、他車急制動推定部287は、他車の通信機3から受信した当該他車の車両位置をもとに、当該他車が急制動をしたか否かを推定する構成としてもよい。この場合、時系列に並んだ他車の複数の車両位置から、他車の単位時間あたりの移動距離を算出することで、他車の車速を算出する。そして、逐次算出する車速の時間微分値を算出し、算出した時間微分値を他車の前後軸の加速度として扱う構成とすればよい。他にも、他車の車両情報として他車の車速を得ることができる構成の場合には、この車速の時間微分値を他車の前後軸の加速度として扱う構成とすればよい。
【0051】
ステップS22では、他車急制動推定処理で他車が急制動をしたと推定した場合(ステップS22でYES)には、ステップS23に移る。一方、他車急制動推定処理で他車が急制動をしていないと推定した場合(ステップS22でNO)には、後述する保存処理は行わず、フローを終了する。
【0052】
ステップS23では、方向判定部288が方向判定処理を行って、ステップS24に移る。方向判定処理では、他車の通信機3から受信した当該他車の車両位置及び方位と、自車の車両位置及び方位とから、自端末の撮像部25の撮像方向が当該他車前方を撮像できる方向(以下、他車前方撮像方向)を向いているか否かを判定する。他車前方撮像方向が請求項の第2車両前方撮像方向に相当する。
【0053】
方向判定処理で用いる自車の車両位置としては、自端末のセンサ情報蓄積部282に蓄積している端末位置のうち、他車の通信機3から受信した他車の車両位置のタイムスタンプに最も時刻が近いタイムスタンプが付与された端末位置を読み出して用いる構成とすればよい。
【0054】
また、方向判定処理で用いる自車の方位は以下のようにして得る構成とすればよい。まず、自端末のセンサ情報蓄積部282に蓄積している端末位置のうち、他車の通信機3から受信した他車の車両位置のタイムスタンプにより時刻が近いタイムスタンプが付与された時系列に並ぶ複数点の端末位置を読み出す。そして、読み出した複数点の端末位置から最小二乗法で求めた近似線が伸びる方位を自車の方位として得る。
【0055】
一例として、自端末の撮像部25の撮像方向が他車前方撮像方向を向いているか否かの判定は以下のようにして行う構成とすればよい。まず、緯度・経度をそれぞれy座標・x座標とする二次元座標系において、自車の車両位置を起点として自車の方位に伸ばす直線を自車視点の撮像方向とし、他車の車両位置を起点として他車の方位に伸ばす直線を他車視点の撮像方向とする。そして、これらの撮像方向に交点が生じるか否かを演算によって求める。そして、交点が生じる場合には、他車前方撮像方向を向いていると判定し、交点が生じない場合には、他車前方撮像方向を向いていないと判定する。
【0056】
これによれば、自端末の撮像部25の撮像方向が他車の前方領域に向いていない場合に、方向判定処理で他車前方撮像方向を向いていると判定しないので、後述する保存処理において他車の前方領域が映りこんでいない車外画像を保存する無駄を省くことが可能になる。
【0057】
なお、撮像部25の画角を携帯側制御部28が取得可能な場合には、この画角の半値分だけ自車の方位の時計回り・反時計回りに角度を足した各方位について、自車の車両位置を起点として伸ばす2本の直線と、他車の車両位置を起点として他車の方位に伸ばす直線とに交点が生じるか否かを演算によって求める構成としてもよい。この場合、自車の車両位置を起点として伸ばす2本の直線の少なくともいずれかに交点が生じる場合には、他車前方撮像方向を向いていると判定し、当該2本の直線のいずれにも交点が生じない場合には、他車前方撮像方向を向いていないと判定すればよい。
【0058】
また、方向判定処理では、上記交点と他車の車両位置との直線距離が所定の閾値以下の場合に限り、自端末の撮像部25の撮像方向が他車前方撮像方向を向いていると判定する構成とすることが好ましい。ここで言うところの所定の閾値とは、ドライバが障害物に反応して急制動を行うと推定される程度の車両と障害物との距離であって、任意に設定可能な値である。一例として、所定の閾値は数十メートル等とすればよい。
【0059】
これによれば、他車の急制動に関係のない可能性が高いほど遠方の他車前方領域については、この領域に自端末の撮像部25の撮像方向が向いている場合にも、方向判定処理で他車前方撮像方向を向いていると判定しないようにすることができる。よって、後述する保存処理で、他車の急制動に関係のない可能性が高い領域の車外画像を保存する無駄を省くことが可能になる。
【0060】
ステップS24では、方向判定処理で他車前方撮像方向を向いていると判定した場合(ステップS24でYES)には、ステップS25に移る。一方、方向判定処理で他車前方撮像方向を向いていないと判定した場合(ステップS24でNO)には、後述する保存処理は行わず、フローを終了する。
【0061】
ステップS25では、距離算出部289が距離算出処理を行って、ステップS26に移る。距離算出処理では、他車の通信機3から受信した当該他車の車両位置と、自車の車両位置とから、他車と自車との直線距離を算出する。距離算出処理で用いる自車の車両位置としては、自端末のセンサ情報蓄積部282に蓄積している端末位置のうち、他車の通信機3から受信した他車の車両位置のタイムスタンプに最も時刻が近いタイムスタンプが付与された端末位置を読み出して用いる構成とすればよい。
【0062】
ステップS26では、距離判定部290が距離判定処理を行って、ステップS27に移る。距離判定処理では、距離算出処理で算出した自他車両の直線距離が所定距離未満か否かを判定する。ここで言うところの所定距離は、自端末の車外画像に他車や他車前方の物体が映りこむ場合に、その他車や他車前方の物体が肉眼や画像認識技術で解析可能な大きさで映りこむ程度の任意の距離である。例えば、ここで言うところの所定距離は数十メートル等とすればよい。
【0063】
そして、ステップS27では、距離判定処理で自他車両の直線距離が所定距離内と判定した場合(ステップS27でYES)には、ステップS28に移る。一方、距離判定処理で自他車両の直線距離が所定距離よりも大きいと判定した場合(ステップS27でNO)には、後述する保存処理は行わず、フローを終了する。
【0064】
ステップS28では、保存処理部291が保存処理を行って、フローを終了する。保存処理では、他車の急制動時を挟んで前後所定時間内の車外画像及びそのタイムスタンプを画像一時記憶部285から読み出し、保存用メモリ26に保存する。他車の急制動時は、他車急制動推定処理で急制動をしたと推定するのに用いられた他車の車両情報のタイムスタンプが示す時刻とすればよい。
【0065】
また、保存処理では、画像一時記憶部285から読み出した車外画像及びそのタイムスタンプ以外にも、自車の車両位置、及び他車の通信機3から受信した当該他車の車両位置を紐付けして保存用メモリ26に保存する構成とすることが好ましい。
【0066】
自車の車両位置としては、例えば自端末のセンサ情報蓄積部282に蓄積している端末位置のうち、他車急制動推定処理で急制動をしたと推定するのに用いられた他車の車両情報のタイムスタンプに最も時刻が近いタイムスタンプが付与された各端末位置を読み出して用いる構成とすればよい。
【0067】
他にも、自端末のセンサ情報蓄積部282に蓄積している端末位置のうち、画像一時記憶部285から読み出した各車外画像のタイムスタンプの各々に最も時刻が近いタイムスタンプが付与された各端末位置を読み出して用いる構成としてもよい。他車の車両位置としては、他車急制動推定処理で急制動をしたと推定するのに用いられた他車の車両情報に含まれる車両位置を用いる構成とすればよい。
【0068】
以上の構成によれば、車外画像を撮像した自車の車両位置と、その車外画像に前方領域が映りこんでいる可能性の高い他車の車両位置とを、その車外画像とともに記録するので、後に車外画像の検証を行う場合に、どの位置の車両の前方領域についての車外画像かを特定し易くなり、検証が容易になる。
【0069】
保存用メモリ26に保存した車外画像については、前述したように、サーバ通信部27を介してサーバに送信する。サーバに送信された車外画像は、例えば事故の検証等に利用することができる。
【0070】
ここで、実施形態1の構成による作用効果について、具体的に図1を用いて説明を行う。前述したように、図1のAが急制動をする車両、B1〜B4が車両Aの周辺車両である。図1のAr1〜Ar4は、それぞれ車両B1〜B4の撮像部25での撮像範囲を示している。
【0071】
なお、車両B1〜B4は車両Aと車車間通信可能な範囲に位置するものとする。また、車両B3は車両Aとの直線距離が所定距離未満、車両B1、B2、B4は車両Aとの直線距離が前述の所定距離未満でないものとする。さらに、車両B1、B3、B4は撮像部25の撮像方向が車両Aの前方領域に向いており、車両B2は撮像部25の撮像方向が車両Aの前方領域に向いていないものとする。そして、以上の条件により、車両B3は車両Aの近傍の前方領域が撮像範囲に含まれる一方、車両B1、B2、B4は車両Aの近傍の前方領域が撮像範囲に含まれないものとして以下の説明を行う。
【0072】
歩行者や車両の飛び出し等によって車両Aが急制動をした場合、車両Aの通信機3から送信される車両情報をもとに、車両B1〜B4のドライブレコーダユニット1bでは、車両Aが急制動をしたと推定する。
【0073】
ここで、車両Aの近傍の前方領域が撮像範囲に含まれる車両B3のドライブレコーダユニット1bでは、撮像部25で逐次撮像していた車外画像の保存メモリ26への保存が行われる。よって、急制動をした車両Aの前方の車外画像を、車両B3の視点から撮像し、保存することができる。
【0074】
一方、車両Aの近傍の前方領域が撮像範囲に含まれない車両B1、B2、B4のドライブレコーダユニット1bでは、車両Aの急制動を推定した場合であっても、撮像部25で逐次撮像していた車外画像の保存メモリ26への保存が行われない。よって、車両Aの近傍の前方領域が映りこんでいない車外画像を保存する無駄を省くことができる。
【0075】
また、自車のドライブレコーダによって自車視点の車外画像を記録する従来の技術には、自車が障害物に衝突した場合に、衝突の衝撃により自車のドライブレコーダが破損した場合に、当該車外画像の記録が残らないという問題点があった。これに対して、実施形態1の構成によれば、車両Aの周辺車両の車両B3の撮像部25で撮像した車両Aの前方領域の車外画像を、車両B3側の保存メモリ26に保存するので、車両Aが障害物に衝突した場合であっても、車両Aの前方領域の車外画像の記録が失われるおそれがない。
【0076】
なお、実施形態1では、ステップS25〜ステップS27の処理を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らず、ステップS25〜ステップS27の処理を行わない構成(以下、変形例1)としてもよい。
【0077】
また、実施形態1では、撮像部25での撮像方向が自車前方を向いているものとして、方向判定処理を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、撮像部25での撮像方向が自車前方からずれている場合でも、実際の撮像方向に応じて方向判定処理を行う構成(以下、変形例2)としてもよい。
【0078】
変形例2は、以下のようにして実現すればよい。まず、自車を基準とした撮像部25の撮像方向を携帯側制御部28のメモリに予め保存させておく。よって、携帯側制御部28が請求項の撮像方向保存部に相当する。自車を基準とした撮像部25の撮像方向(以下、自車基準撮像方向)は、自車の前後軸に沿った自車前方を基準とした撮像部25の撮像方向とすればよい。自車基準撮像方向は、例えば撮像機能付き携帯端末2の図示しない操作入力部を介したユーザ操作によって入力されて、携帯側制御部28のメモリに予め保存される構成とすればよい。
【0079】
また、撮像機能付き携帯端末2に地磁気センサが備えられており、自端末の特定の軸を基準とした方位が検出できる場合には、以下のようにして、自車基準撮像方向を携帯側制御部28が算出し、携帯側制御部28のメモリに予め保存する構成としてもよい。具体的には、前述したようにして求められる自車の進行方向と上記地磁気センサで検出する自端末の方位とのずれを算出する。さらに、算出した上記ずれ、及び携帯側制御部28のメモリに予め保存しておいた自端末の上記特定の軸と撮像部25の撮像方向との対応関係から、自車基準撮像方向を携帯側制御部28で求め、メモリに保存する。
【0080】
そして、変形例2では、方向判定処理において、前述の自車の方位から自車基準撮像方向だけ角度がずれた方位を前述した自車視点の撮像方向として、他車前方撮像方向を向いているか否かの判定を行う。
【0081】
変形例2の構成によれば、撮像部25での撮像方向が自車前方からずれている場合でも、実際の撮像方向に応じて方向判定処理を行うことができる。
【0082】
(実施形態2)
本発明は前述の実施形態1に限定されるものではなく、次の実施形態2も本発明の技術的範囲に含まれる。以下では、この実施形態2について説明を行う。なお、説明の便宜上、前述の実施形態の説明に用いた図に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0083】
実施形態2のドライブレコーダシステム100は、車両Aの周辺車両のドライブレコーダユニット1b側で車両Aの急制動を推定して車外画像の保存を行うのでなく、車両Aのドライブレコーダユニット1a側の携帯側制御部28で車両Aの急制動を推定し、車外画像を保存させる要求を周辺車両に送信する点を除けば、実施形態1のドライブレコーダシステム100と同様である。つまり、携帯側制御部28及び通信機側制御部33での処理が一部異なる点を除けば、実施形態1のドライブレコーダシステム100と同様である。
【0084】
ここで、図7を用いて、実施形態2の携帯側制御部28の概略的な構成について説明を行う。図7に示すように、実施形態2の携帯側制御部28は、機能ブロックとして、端末センサ情報取得部281、センサ情報蓄積部282、端末センサ情報送信部283、車外画像取得部284、画像一時記憶部285、転送情報受信部286、方向判定部288、距離算出部289、距離判定部290、保存処理部291、自車急制動推定部292、及びコマンド送信部293を備えている。
【0085】
自車急制動推定部292は、自端末の加速度センサ23で検出した加速度のうちの、撮像部25での撮像方向と同じ軸の加速度を自車の前後軸の加速度として、自車が急制動をしたか否かを推定する。自車急制動推定部292が請求項の急制動推定部に相当する。一例としては、加速度が負の所定値以下であった場合に、自車が急制動をしたと推定する。一方、負の所定値未満であった場合に、自車が急制動をしていないと推定する。ここで言うところの所定値は、急制動と言える程度の減速度に相当する任意の値である。
【0086】
本実施形態では、自車急制動推定部292が、自端末の加速度センサ23で検出した加速度をもとに、自車が急制動をしたか否かを推定する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、自車急制動推定部292は、自端末の端末位置をもとに、自車が急制動をしたか否かを推定する構成としてもよい。この場合、時系列に並んだ複数の端末位置から、自車の単位時間あたりの移動距離を算出することで、自車の車速を算出する。そして、逐次算出する車速の時間微分値を算出し、算出した時間微分値を自車の前後軸の加速度として扱う構成とすればよい。
【0087】
コマンド送信部293は、自車急制動推定部292で自車が急制動をしたと推定した場合に、撮像部25で撮像した車外画像の保存を要求するコマンド(以下、保存要求コマンド)を、携帯側BT通信部21を介して通信機3に送信する。
【0088】
通信機3の通信機側制御部33では、自車の撮像機能付き携帯端末2から保存要求コマンドが送信されてきた場合に、車両情報送信部332がこの保存要求コマンドを、車車間通信部32を介して周辺車両に送信する。車両情報送信部332は、保存要求コマンドを送信する場合には、前述の送信車両情報生成処理で生成した車両情報も送信するものとする。
【0089】
続いて、他車の通信機3から送信された保存要求コマンド及び車両情報を受信した通信機3は、受信した保存要求コマンド及び車両情報を、自車の撮像機能付き携帯端末2に送信する。そして、保存要求コマンド及び車両情報を受信した撮像機能付き携帯端末2では、保存要求コマンドを受信したことをトリガにして、携帯側制御部28でステップS23〜ステップS28までの車外画像保存関連処理を行う。
【0090】
なお、実施形態2では、自車が急制動をしたか否かの推定を携帯側制御部28で行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、自車が急制動をしたか否かの推定を通信機側制御部33で行う構成(以下、変形例3)としてもよい。
【0091】
実施形態2のドライブレコーダシステム100は、自車が急制動をしたか否かの推定を携帯側制御部28側で行うのではなく、通信機側制御部33で行う点を除けば、実施形態2のドライブレコーダシステム100と同様である。
【0092】
ここで、図8を用いて、変形例3の通信機側制御部33の概略的な構成について説明を行う。図7に示すように、変形例3の通信機側制御部33は、機能ブロックとして、端末センサ情報受信部331、車両情報送信部332、車両情報受信部333、車両情報転送部334、及び自車急制動推定部335を備えている。
【0093】
なお、変形例3の携帯側制御部28は、機能ブロックとして自車急制動推定部292及びコマンド送信部293を備えない点を除けば、実施形態2の携帯側制御部28と同様である。
【0094】
自車急制動推定部335は、通信機側BT通信部31を介して受信した自端末の端末センサ情報を用いる点を除けば、自車急制動推定部292と同様にして、自車が急制動をしたか否かを推定する。よって、自車急制動推定部335も請求項の急制動推定部に相当する。また、ドライブレコーダユニット1aが請求項の車車間通信装置に相当する。
【0095】
車両情報送信部332は、自車急制動推定部292で自車が急制動をしたと推定した場合に、撮像部25で撮像した車外画像の保存を要求するコマンド(つまり、保存要求コマンド)を、車車間通信部32を介して周辺車両に送信する。車両情報送信部332は、保存要求コマンドを送信する場合には、前述の送信車両情報生成処理で生成した車両情報も送信するものとする。
【0096】
実施形態2及び変形例3の構成によっても、急制動をした車両の車外画像を当該車両以外の車両の視点から撮像して保存することが可能になる。なお、実施形態2や変形例3と変形例1や変形例2とを組み合わせた構成としてもよい。
【0097】
なお、車外画像保存関連処理において、保存要求コマンドを受信したことをトリガに、方向判定処理や距離判定処理を行わずに保存処理を行う構成とする場合には、必ずしも車両情報送信部332が保存要求コマンドとともに車両情報を送信する構成としなくてもよい。
【0098】
(実施形態3)
本発明は前述の実施形態1、2に限定されるものではなく、次の実施形態3も本発明の技術的範囲に含まれる。以下では、この実施形態3について説明を行う。なお、説明の便宜上、前述の実施形態の説明に用いた図に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0099】
実施形態3のドライブレコーダシステム100は、車外画像を保存させる要求を周辺車両に送信するのではなく、車両Aの周辺車両のドライブレコーダユニット1b側で車両Aの急制動を推定した推定結果を周辺車両に送信する点を除けば、実施形態2のドライブレコーダシステム100と同様である。つまり、携帯側制御部28及び通信機側制御部33での処理が一部異なる点を除けば、実施形態2のドライブレコーダシステム100と同様である。
【0100】
ここで、図9を用いて、実施形態3の携帯側制御部28の概略的な構成について説明を行う。図9に示すように、実施形態3の携帯側制御部28は、機能ブロックとして、端末センサ情報取得部281、センサ情報蓄積部282、端末センサ情報送信部283、車外画像取得部284、画像一時記憶部285、転送情報受信部286、方向判定部288、距離算出部289、距離判定部290、保存処理部291、自車急制動推定部292、及び推定結果送信部294を備えている。
【0101】
推定結果送信部294は、自車急制動推定部292で自車が急制動をしたと推定した場合に、この推定結果(以下、急制動推定結果)を、携帯側BT通信部21を介して通信機3に送信する。
【0102】
通信機3の通信機側制御部33では、自車の撮像機能付き携帯端末2から急制動推定結果が送信されてきた場合に、車両情報送信部332がこの急制動推定結果を、車車間通信部32を介して周辺車両に送信する。車両情報送信部332は、急制動推定結果を送信する場合には、前述の送信車両情報生成処理で生成した車両情報も送信するものとする。
【0103】
続いて、他車の通信機3から送信された急制動推定結果及び車両情報を受信した通信機3は、受信した急制動推定結果及び車両情報を、自車の撮像機能付き携帯端末2に送信する。そして、急制動推定結果及び車両情報を受信した撮像機能付き携帯端末2では、急制動推定結果を受信したことをトリガにして、携帯側制御部28でステップS23〜ステップS28の処理を行う。
【0104】
実施形態3の構成によっても、急制動をした車両の車外画像を当該車両以外の車両の視点から撮像して保存することが可能になる。なお、実施形態3と変形例1〜3とを組み合わせた構成としてもよい。
【0105】
なお、車外画像保存関連処理において、急制動推定結果を受信したことをトリガに、方向判定処理や距離判定処理を行わずに保存処理を行う構成とする場合には、必ずしも車両情報送信部332が急制動推定結果とともに車両情報を送信する構成としなくてもよい。
【0106】
前述の実施形態1〜3では、方向判定部288が方向判定処理において、他車の通信機3から受信した当該他車の車両位置及び方位と、自車の車両位置及び方位とから他車前方撮像方向を向いているか否かを判定する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、方向判定部288が方向判定処理において、他車の通信機3から受信した当該他車の車両位置と、自車の車両位置及び方位とから、自端末の撮像部25の撮像方向が当該他車周辺を撮像できる方向(以下、他車周辺撮像方向)を向いているか否かを判定する構成としてもよい。
【0107】
一例として、自端末の撮像部25の撮像方向が他車周辺撮像方向を向いているか否かの判定は以下のようにして行う構成とすればよい。まず、緯度・経度をそれぞれy座標・x座標とする二次元座標系において、自車の車両位置を起点として自車の方位に伸ばす直線(以下、自車撮像方向直線)と、他車の車両位置との最短距離を演算によって求める。上記最短距離は、他車の車両位置の座標から自車撮像方向直線に下ろした垂線が当該自車撮像方向直線と交わる座標と、他車の車両位置の座標との直線距離を算出することで求める。そして、この最短距離が所定の閾値以下の場合に、自端末の撮像部25の撮像方向が他車周辺撮像方向を向いていると判定し、閾値よりも長い場合に他車周辺撮像方向を向いていないと判定する。ここで言うところの所定の閾値とは、任意に設定可能な値であって、例えば数十メートル等とすればよい。
【0108】
これによれば、自端末の撮像部25の撮像方向が他車を起点とした周囲数十メートル以内といった所定範囲に向いていない場合に、方向判定処理で他車周辺撮像方向を向いていると判定しないので、後述する保存処理において、他車の周辺領域が映りこんでいない車外画像を保存する無駄を省くことが可能になる。
【0109】
なお、方向判定処理において、自端末の撮像部25の撮像方向が他車周辺撮像方向を向いているか否かを判定する構成とした場合には、車外画像保存関連処理の各処理における他車前方撮像方向は、他車周辺撮像方向と読み替えるものとする。
【0110】
前述の実施形態1〜3では、車外画像を撮像する撮像手段として撮像機能付き携帯端末2の撮像部25を利用する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、車外画像を撮像する撮像手段として、車両に搭載される車載のカメラを利用する構成としてもよい。この場合、車外画像保存関連処理に相当する処理を、撮像機能付き携帯端末2以外の車載器や通信機3が実行する構成としてもよい。
【0111】
また、前述の実施形態1〜3では、車両の位置や加速度や方位を撮像機能付き携帯端末2の端末センサ情報から求める構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、車両の位置や加速度や方位を車載LAN等を介して車両に搭載されたセンサやECUやナビゲーション装置から取得する構成としてもよい。
【0112】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0113】
1a ドライブレコーダユニット(車車間通信装置)、1b ドライブレコーダユニット(車外画像保存装置)、2 撮像機能付き携帯端末、3 通信機(車車間通信装置)、25 撮像部(撮像装置)、100 ドライブレコーダシステム(車外画像保存システム)、284 車外画像取得部、286 転送情報受信部(急制動推定情報取得部)、287 他車急制動推定部(急制動推定部)、291 保存処理部、292 自車急制動推定部(急制動推定部)、332 車両情報送信部332(第2通信部)、333 車両情報受信部(第1通信部)
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