特許第6048224号(P6048224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048224
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】通信装置、通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20161212BHJP
   G06F 3/12 20060101ALI20161212BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20161212BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   H04N1/00 107Z
   G06F3/12 336
   G03G21/00 390
   B41J29/38 Z
【請求項の数】16
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-42694(P2013-42694)
(22)【出願日】2013年3月5日
(65)【公開番号】特開2014-171156(P2014-171156A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2015年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】辻本 嘉之
【審査官】 橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−061669(JP,A)
【文献】 特開2012−138970(JP,A)
【文献】 特開2004−159028(JP,A)
【文献】 特開2014−155029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
B41J29/38
G03G21/00
G06F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末と近距離無線通信方式で通信する通信部と、
操作キーと、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記通信部への前記携帯端末の接近を検出する接近検出処理と、
前記接近検出処理にて、前記携帯端末の接近を検出すると、前記操作キーを無効化する無効化処理と、を実行し、
前記接近検出処理にて、前記携帯端末の接近検出と共に、前記携帯端末から前記通信部までの距離を検出し、
前記無効化処理において、検出した距離に応じて、前記操作キーを無効化する無効化範囲を変更する通信装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記無効化処理において、検出した距離が短い程、前記無効化範囲を広くする請求項に記載の通信装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記通信部と前記携帯端末との間の距離を、前記通信部にて検出される電波の強度に基づいて検出する請求項又は請求項に記載の通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記接近検出処理において、前記携帯端末が発信する電波を、前記通信部を介して検出することにより、前記携帯端末の接近を検出する請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記携帯端末が発信する電波は、前記通信装置から送信された電波に応答して前記携帯端末から前記通信装置に返される応答信号である請求項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記携帯端末を識別する識別情報に応じて、前記無効化範囲を変更する請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記制御部は、
ネットワークを介して接続されたサーバにアクセスして、前記識別情報に対応する前記無効化範囲を取得する請求項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記操作キーは、第1操作キーと、前記第1操作キーよりも高い圧力で押圧された時に操作を受け付ける第2操作キーとを有し、
前記制御部は、前記無効化処理において、前記第1操作キーのみ無効化する請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記通信部に対する前記携帯端末の離反を検出する離反検出処理と、
前記離反検出処理で前記携帯端末の離反を検出すると、前記操作キーの無効化を解除する解除処理とを実行する請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記無効化処理において、前記近距離無線通信方式での通信時に使用されると想定される前記操作キーを、無効化する前記操作キーから除外する請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記無効化処理において、前記近距離無線通信方式での通信時に使用されると想定される前記操作キーの無効化を解除する請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項12】
印刷データに基づく画像を印刷する印刷部を備え、
前記制御部は、
認証印刷に使用される認証情報を無効化されていない前記操作キーを介して受け付ける受付処理と、
前記受付処理にて受け付けた認証情報が前記携帯端末から受信した印刷データに付加された認証情報と一致している場合に、前記印刷データを前記印刷部により印刷する印刷処理とを実行する請求項1又は請求項1に記載の通信装置。
【請求項13】
前記操作キーは、前記通信装置の筐体の前側に設置されている請求項1ないし請求項1のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項14】
前記近距離無線通信方式で通信する携帯端末と、
請求項1ないし請求項1のいずれか一項に記載の通信装置と、を備えた通信システム。
【請求項15】
携帯端末と近距離無線通信方式で通信する通信部と、
操作キーと、
ループアンテナと、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記通信部への前記携帯端末の接近を検出する接近検出処理と、
前記接近検出処理にて、前記携帯端末の接近を検出すると、前記操作キーを無効化する無効化処理と、を実行し、
前記接近検出処理において、ループアンテナから送信する電波の強度を検出して前記携帯端末の接近を検出する通信装置。
【請求項16】
携帯端末と近距離無線通信方式で通信する通信部と、
操作キーと、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記通信部への前記携帯端末の接近を検出する接近検出処理と、
前記接近検出処理にて、前記携帯端末の接近を検出すると、前記操作キーを無効化する無効化処理と、
前記通信部に対する前記携帯端末の離反を検出する離反検出処理と、
前記離反検出処理で前記携帯端末の離反を検出すると、前記操作キーの無効化を解除する解除処理とを実行する通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置の誤作動を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチファンクションプリンタ(MFP)の操作パネルユニットにある近距離無線インターフェースの近傍に携帯端末を置き、MFPと携帯端末との間で近距離無線インターフェースを介して通信を開始させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−103572公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、携帯端末をMFPのような通信装置にかざす際に、通信装置の操作部にユーザの手が触れてしまうことによって、MFPが誤作動する恐れがあった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、携帯端末との間で、近距離無線通信方式で通信する際の誤作動を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示される通信装置は、携帯端末と近距離無線通信方式で通信する通信部と、操作キーと、制御部とを備え、前記制御部は、前記通信部への前記携帯端末の接近を検出する接近検出処理と、前記接近検出処理にて、前記携帯端末の接近を検出すると、前記操作キーを無効化する無効化処理とを実行する。この構成では、携帯端末の接近を検出すると、操作キーを無効化する。そのため、携帯端末を通信部にかざす際に、ユーザが誤って操作キーに触れてしまっても、通信装置が誤作動する可能性が低くなる。
【0007】
上記通信装置の実施態様として以下の構成が好ましい。
【0008】
前記制御部は、前記接近検出処理にて、前記携帯端末の接近検出と共に、前記携帯端末から前記通信部までの距離を検出し、前記無効化処理において、検出した距離に応じて、前記操作キーを無効化する無効化範囲を変更する。通信部と携帯端末との距離によってユーザが操作キーに触れる範囲や場所が異なる。この構成では、通信部と携帯端末との距離に応じて操作キーを無効化する範囲を変更するので、通信装置が誤作動する可能性が低くなる。
【0009】
前記制御部は、前記無効化処理において、検出した距離が短い程、前記無効化範囲を広くする。通信部と携帯端末との距離が短いほど、ユーザが操作キーに触れる範囲は広くなる。この構成では、検出した距離が短い程、無効化範囲を広くするので、通信装置が誤作動する可能性が低くなる。
【0010】
前記制御部は、前記通信部と前記携帯端末との間の距離を、前記通信部にて検出される電波の強度に基づいて検出する。距離を検出する検出部を専用に設ける必要がない。
【0011】
前記制御部は、前記接近検出処理において、前記携帯端末が発信する電波を、前記通信部を介して検出することにより、前記携帯端末の接近を検出する。携帯端末の発信する電波を利用して携帯端末の接近を検出出来る。
【0012】
前記携帯端末が発信する電波は、前記通信装置から送信された電波(要求信号)に応答して前記携帯端末から前記通信装置に返される応答信号である。携帯端末の発信する応答信号を利用して携帯端末の接近を検出出来る。
【0013】
前記制御部は、前記携帯端末を識別する識別情報に応じて、前記無効化範囲を変更する。識別情報に応じて無効化する操作キーを変更するので、通信装置が誤作動する可能性が低くなる。
【0014】
前記制御部は、ネットワークを介して接続されたサーバにアクセスして、前記識別情報に対応する前記無効化範囲を取得する。予めユーザが識別情報に対応する無効化範囲を通信装置に登録する手間を省ける。
【0015】
前記操作キーは、第1操作キーと、前記第1操作キーよりも高い圧力で押圧された時に操作を受け付ける第2操作キーとを有し、前記制御部は、前記無効化処理において、前記第1操作キーのみ無効化する。第1操作キーと第2操作キーの双方を無効化する場合に比べて、無効化する操作キーの数を減らすことが可能となる。
【0016】
前記制御部は、前記通信部に対する前記携帯端末の離反を検出する離反検出処理と、前記離反検出処理で前記携帯端末の離反を検出すると、前記操作キーの無効化を解除する解除処理とを実行する。携帯端末が離反すると、操作キーの無効化を解除するため、それ以降は、無効化していた操作キーを使用出来る。
【0017】
前記制御部は、前記無効化処理において、前記近距離無線通信方式での通信時に使用されると想定される前記操作キーを、無効化する前記操作キーから除外する。近距離無線通信方式での通信時に操作を行うことが出来るため、利便性が高い。尚、近距離無線方式での通信時には、例えば、近距離無線通信方式での通信を利用したタスク(携帯端末と通信器装置との間で行うタスク)の実行時等が含まれる。
【0018】
前記制御部は、前記無効化処理において、前記近距離無線通信方式での通信時に使用されると想定される前記操作キーの無効化を解除する。近距離無線通信方式での通信時に操作を行うことが出来るため、利便性が高い。尚、近距離無線方式での通信時には、例えば、近距離無線通信方式での通信を利用したタスク(携帯端末と通信器装置との間で行うタスク)の実行時等が含まれる。
【0019】
印刷データに基づく画像を印刷する印刷部を備え、前記制御部は、認証印刷に使用される認証情報を無効化されていない前記操作キーを介して受け付ける受付処理と、前記受付処理にて受け付けた認証情報が前記携帯端末から受信した印刷データに付加された認証情報と一致している場合に、前記印刷データを前記印刷部により印刷する印刷処理とを実行する。
【0020】
前記操作キーは、前記筐体の前側に設置されている。操作キーが筐体の前側に設置されている場合、ユーザが誤って操作キーに触れる可能性が高い。そうした通信装置に本明細書に開示する技術を適用すると、誤動作の発生頻度を低下させることが可能となり、効果的である。なお、「前側とは、通信装置の前後方向長さの中心よりも前端に近い範囲を指す」。
【0021】
尚、本明細書によって開示される通信装置は、携帯端末と通信装置とを含む通信装置システムに適用することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本明細書によって開示される通信装置及び通信システムでは、携帯端末との間で、近距離無線通信方式で通信する際の誤作動を抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態1に適用された複合機の斜視図
図2】携帯端末及び複合機の電気的構成を示すブロック図
図3】複合機の上面壁の平面図(操作キーの無効化範囲を示す)
図4】複合機の上面壁の垂直断面図(操作キーの無効化範囲を示す)
図5】無効化処理の流れを示すフローチャート図
図6】タスクを実行する際の携帯端末Uと複合機10と相互関係を示すシーケンス図
図7】複合機のNFC基板から送信される電波の強度を示す図
図8】実施形態3に適用された複合機の斜視図
図9】複合機の上面壁の平面図(操作キーの無効化範囲を示す)
図10】印刷装置の斜視図(他の実施形態を示す)
【発明を実施するための形態】
【0024】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図7によって説明する。
1.複合機10と携帯端末Uの構成
図1は本実施形態に適用された複合機10の斜視図である。図2は複合機10と携帯端末Uの電気的構成を示すブロック図である。複合機10は(本発明の「通信装置」の一例)であり、通信機能、スキャン機能、印刷機能を備えている。
【0025】
複合機10は、概ね箱型のケース本体(本発明の「筐体」の一例)20の上部側にフラットベット式のスキャン装置40を配してなる。ケース本体20の内部には、印刷装置30が収容されている。また、ケース本体20の下部には、供給トレイ23が前方より脱抜可能に嵌め合わされている。供給トレイ23より給紙された用紙は用紙搬送経路(図略)を介して印刷装置30に送られる。そして、印刷装置30により印刷が行われ、印刷後の用紙は、ケース本体20の中央に設けられた胴内排紙部25上に排紙される構成となっている。
【0026】
スキャン装置40は、CCDやCIS等の読取デバイス(図略)、原稿台ガラス(図略)、原稿カバー45等を備え、原稿カバー45を開閉して原稿台ガラスに原稿を載置した後、読取デバイスを複合機10の左右方向に移動させることで、原稿シートの画像を読み取ることが出来る。尚、原稿カバー45にはADF47が設けられていて原稿載置部48に載置した原稿を1枚ずつ送って読み取ることができる構成となっている。
【0027】
また、複合機10を構成するケース本体20のうち、前側の上面壁22にはNFC(Near Field Communicationの略)基板70と、表示操作パネル50が、左右に並んで配されている。表示操作パネル50は、上面壁22の概ね中央に配置されている。表示操作パネル50は、抵抗膜方式や静電容量方式のタッチパネルと、液晶表示式の表示パネルを厚さ方向に重ねた構成であり、タッチパネル上に表示された操作キーKを押圧操作することで、各種の入力操作を行うことが出来る構成となっている。
【0028】
NFC基板70は、上面壁22の左側に取り付けられている。NFC基板70は携帯端末Uと近距離無線通信方式(以下、「NFC方式」と称す)で通信を行うものであり、ループアンテナ73と、通信回路75、検出部77とを備えた構成となっている。なお、NFC方式の通信は、ISO/IEC21481又はISO/IEC18092の国際標準規格に基づいて実行される。
【0029】
ループアンテナ73は、NFC方式で、相手機器と通信するため電波を送信・受信する機能を果たす。通信回路75は送信・受信される電波を信号処理する機能を果たす。また、検出部77は、ループアンテナ73に流れる電流を検出することにより、ループアンテナ73にて受信される電波(受信波)や、ループアンテナ73から送信される電波(送信波)の強度を検出する機能を果たす。尚、NFC基板70は、本発明の「通信部」の一例であり、NFCインターフェースとして機能する。
【0030】
次に図2を参照して、携帯端末U及び複合機10の電気的構成を説明する。
携帯端末Uは携帯電話(例えばスマートフォン)である。携帯端末Uは、端末制御部90、NFC基板100、表示操作パネル120を備える。
【0031】
端末制御部90は、中央処理装置(以下、CPU)91およびメモリ93を有する。メモリ93は、例えばROMやRAM等を有し、ROMにはOS、複合機10に対して印刷処理を実行させる印刷アプリケーションプログラム、複合機10にスキャナ処理を実行させるための読取アプリケーションプログラムなど、各種のプログラムが記憶されている。
【0032】
CPU91は、ROMから読み出したプログラムに従って、携帯端末Uの各部を制御する。なお、アプリケーションプログラムは、例えば、複合機10のベンダによって提供されるサーバから携帯端末Uにインストールされてもよいし、複合機10と共に出荷されるメディアから携帯端末Uにインストールされてもよい。また、携帯端末Uに予めインストールされていてもよい。
【0033】
NFC基板100は、複合機10側のNFC基板70と同様、ループアンテナ(図略)と通信回路(図略)と検出回路(図略)を備えており、携帯端末Uの裏面側(表示操作パネル120が設けられた表面の反対側の面)に取り付けられている。NFC基板100は、端末制御部90がNFC方式に従って通信を実行するためのNFCインターフェースとして機能する。
【0034】
表示操作パネル120は、筐体にあたるケース本体20の前側、具体的には、ケース本体20の上面壁22上に設置されている。表示操作パネル120は、抵抗膜方式や静電容量方式のタッチパネルと、液晶表示式の表示パネルを厚さ方向に重ねた構成であり、タッチパネル上に表示された操作キーKを押圧操作することで各種の入力操作を行うことが出来る。また、各種の設定画面や装置の動作状態等を表示することが可能である。
【0035】
複合機10は制御部80、NFC基板70、入出部60、表示操作パネル50、印刷装置30、およびスキャン装置40を備え、携帯端末Uと共に通信システムSを構成する。印刷装置30は、本発明の「印刷部」の一例であり、記録紙に印刷データに基づく画像を印刷するものである。印刷装置30は電子写真方式、インクジェット方式の双方が使用可能である。スキャン装置40は、原稿シートの画像を読み取るものである。
【0036】
制御部80は、CPU81とメモリ83とを備える。メモリ83はROM、RAM、ハードディスク等によって構成される。メモリ83は、CPU81によって実行されるプログラム等を格納する。CPU81は、メモリ83に格納されているプログラムに従って様々な処理を実行する。CPU81がプログラムに従って処理を実行することによって、印刷装置30による印刷処理、スキャン装置40による画像読取処理、NFC基板を介した携帯端末Uとの通信処理や、後述する操作キーK1の無効化シーケンスが実行される。また、複合機10は、入出部60を介してネットワークNTに接続されている。ネットワークNTにはサーバ150が接続されており、複合機10はネットワークNTを介してサーバ150にアクセス可能となっている。
【0037】
2.操作キーK1の無効化処理
複合機10とNFC方式で通信するには、通信する2つのNFC基板70、100間の距離Lが通信距離以下になるように、携帯端末Uを複合機10のNFC基板70に接近させる必要がある。複合機10は、図1に示すように、NFC基板70と表示操作パネル50が複合機10の上面壁22に左右に並んで配置されている。そのため、携帯端末Uを複合機10のNFC基板70に接近させた時に、ユーザの手が表示操作パネル50に触れて操作キーK1を意図せず押圧操作することにより、複合機10を誤動作させる恐れがある。
【0038】
誤動作の一例をあげると、図3に示すように、本複合機10では、表示操作パネル50上に、操作キーK1として、印刷倍率を選択する倍率選択キーA1、A2、A3と、メンテナンスを実行するメンテナンスキーB1、B2、B3と、用紙を選択する用紙選択キーC1、C2、C3と、テンキーN1〜N9と、実行キーE1と、キャンセルキーE2を表示させている。もし仮に、ユーザが誤って、表示操作パネル50上に表示されたメンテナンスキーB1〜B3の部分に触れると、必要がないにもかからず、複合機10がメンテナンス(例えば、テスト印刷等)を実行する等の誤動作を起こす。
【0039】
そこで、本複合機10は、携帯端末Uの接近を検出して、操作キーK1を無効化する無効化処理を行う。具体的には、通常、操作キーK1が操作されると、その操作キーK1に対応した操作信号Srが制御部80に入力される。入力される操作信号Srには操作キーK1の位置情報が含まれているので、制御部80は、入力された操作信号Srに含まれる位置情報から、操作された操作キーK1を認識し、操作キーK1のメニューに応じた処理を実行する。本複合機10では、操作信号Srの入力があった場合、制御部80は、操作キーK1の位置情報を無効化範囲(操作キーK1を無効化する範囲)と比較して、その操作キーK1が無効化範囲に含まれている場合は、その操作信号Srを無効化(信号の入力がなかったものとして処理)する。そのため、無効化範囲に含まれる操作キーK1にユーザが誤って触れても、その操作は無効化されるので、複合機10が誤作動することを抑制できる。
【0040】
また、本複合機10は、図3図4に示すように、携帯端末UのNFC基板100から複合機側のNFC基板70までの距離Lを検出し、検出した距離Lが短い程、操作キーK1を無効化する無効化範囲を拡大する。具体的には、検出した距離Lを閾値と比較して、検出した距離Lが閾値より小さい場合には、大きい場合に比べて、無効化範囲を広くする。
【0041】
このようにすることで、無効化する操作キーK1の数を最小にしつつ、複合機10の誤動作を防止できる確率が高くなる。その理由は、携帯端末Uの接近を検出した時点で、全ての操作キーK1を無効化すると、必要な操作が出来なくなるので、無効化する操作キーK1は最小限にすることが好ましい。一方、携帯端末Uまでの距離Lが短い程、ユーザの手が触れる範囲は広くなることが想定される。従って、検出した距離Lが短い程、無効化範囲を広くすることで、手が触れる範囲の拡大に追従して、その範囲に含まれる操作キーK1を概ね無効化できる。そのため、無効化する操作キーKの数を最小にしつつ、複合機10の誤動作を防止できる確率が高くなる。
【0042】
3.操作キーK1の無効化シーケンス
以下、複合機10の制御部80により実行される操作キーK1の無効化シーケンスを図5図6を参照して説明する。尚、図5は、無効化シーケンスの処理の流れを示すフローチャートである。また、図6は、タスクを実行する際の携帯端末Uと複合機10と相互関係を示すシーケンス図である。
【0043】
無効化シーケンスは複合機10の電源投入後に実行され、まず、制御部80により、操作キー無効化機能が不活性状態に制御される(S10)。無効化機能が不活性状態である場合、表示操作パネル50上に表示された各操作キーK1は有効化された状態(通常の状態)になるので、表示操作パネル50上に表示された操作キーK1が押圧されると、複合機10は操作キーK1から操作信号Srを受け付けて、操作キーK1に対する入力操作に応じた処理を実行する状態となる。
【0044】
その後、制御部80は、携帯端末Uの接近を検出する接近検出処理を実行し、携帯端末Uが接近しているか否かを判定する処理を実行する(S20)。尚、接近とは、携帯端末U側のNFC基板100から複合機10側のNFC基板70までの距離Lが、通信距離(一例として50mm)以下になる状態を意味する。
【0045】
接近検出処理について具体的に説明すると、NFC方式で通信を行う場合、通信相手を確認するため、一般的にはどちらか一方側の機器がポーリング用の電波を送信する。そして、通信する2つの機器間の距離が通信距離以下になると、相手側の機器がポーリング用の電波を受信して、送信元の機器に対して負荷変調により応答信号St(反磁界を利用した電波)を返す。
【0046】
そのため、例えば、複合機10側のNFC基板70からポーリング用の電波を送信する場合、携帯端末Uが未接近である状態では、携帯端末Uがポーリング用の電波を受信できず、携帯端末U側から複合機10に対して負荷変調による応答信号Stが返されることはない。
【0047】
制御部80は、接近検出処理として、NFC基板70からポーリング用の電波を送信する送信期間中に、NFC基板70を介して携帯端末Uから負荷変調による応答信号Stが受信されるかを検出する処理を行い、ポーリング用の電波を送信しているにも拘わらず、負荷変調による応答信号Stが返されない場合は、携帯端末Uが未接近と判断する(S20:NO)。尚、上記により、本発明の「前記接近検出処理において、前記携帯端末が発信する電波(この例では、応答信号St)を、前記通信部(この例では、NFC基板70)を介して検出することにより、前記携帯端末の接近を検出する」が実現されている。
【0048】
そして、NFC方式で通信するため、ユーザが携帯端末Uを複合機10のNFC基板70にかざして、携帯端末U側のNFC基板100から複合機10側のNFC基板70までの距離Lが通信距離よりも短くなると、複合機10側のNFC基板70から送信されるポーリング用の電波が携帯端末U側にて受信される。
【0049】
これにより、ポーリング用の電波を受信した携帯端末Uから負荷変調による応答信号Stが複合機10側に返され、複合機10の制御部80はNFC基板70の通信回路75を通じて応答信号Stを受信する。そして、応答信号Stの受信により、複合機10の制御部80は携帯端末Uの接近を検出する(S20:YES)。
【0050】
携帯端末Uの接近を検出すると、その後、処理はS30に移行する。S30では、複合機10の制御部80により、携帯端末U側のNFC基板100から複合機10のNFC基板70までの距離Lを算出する処理と、算出した距離Lが閾値(通信距離よりも小さい値であり、一例として30mm)以下かどうかを判定する処理が実行される。
【0051】
具体的には、複合機10のループアンテナ73から送信する電波の強度は、携帯端末側のループアンテナに発生する反磁界の影響により、携帯端末Uが未接近な場合に比べて、携帯端末Uが接近した場合は弱まる(図7参照)。そして、反磁界は、距離Lが短い程、大きくなり、複合機10側から送信される電波の強度を低下させる。そのため、複合機10のループアンテナ73から送信する電波(送信波)の強度を、NFC基板70の検出部77を用いて、携帯端末Uが未接近の場合と、接近した場合についてそれぞれ検出し、電波の強度低下量Hを求めれば、求めた電波の強度低下量Hから距離Lを特定することが出来る。例えば、電波の強度低下量Hと距離Lの相関性を示すデータを、メモリ83に記憶しておけば、そのデータを利用して、距離Lを特定できる。上記により、本発明の「通信部と携帯端末との間の距離(この例では、距離L)を、前記通信部(この例では、NFC基板70)にて検出される電波の強度(この例では、ループアンテナ73から送信される電波の強度)に基づいて検出する」が実現されている。
【0052】
そして、S30では特定した距離Lを閾値と比較する処理が、制御部80により実行される。比較の結果、距離Lが閾値より大きい場合(この例では、距離Lが30mm〜50mmの場合)は、S30にてNO判定され、処理はS40に移行する。S40では、図3図4に示す無効化範囲Aに含まれる操作キーK1が、無効化される。無効化範囲Aには、印刷倍率を選択する倍率選択キーA1、A2、A3が含まれているので、これら倍率選択キーA1〜A3が無効化される。
【0053】
一方、比較の結果、距離Lが閾値以下の場合(この例では、距離Lが30mm以下の場合)は、S30にてYES判定され、処理はS50に移行する。S50では、図3図4に示す範囲Bに含まれる操作キーK1が無効化される。無効化範囲Bは無効化範囲Aよりも広く、印刷倍率を選択する倍率選択キーA1、A2、A3と、メンテナンスを実行するメンテナンスキーB1、B2、B3が含まれているので、これら倍率選択キーA1〜A3と、メンテナンスキーB1〜B3が無効化されることになる。
【0054】
尚、この実施形態では、操作キーK1を無効化する無効化範囲は、NFC基板70の中心Oを基準にして設定してある。これは、携帯端末Uを複合機10のNFC基板70にかざした時に、ユーザの手が触れる範囲は、NFC基板70の中心Oとした範囲になるからである。また、無効化範囲Aや無効化範囲Bのデータは予めメモリ83に記憶しておき、S40やS50の処理を実行する際にメモリ83から読み出すとよい。
【0055】
そして、S40、S50にて各無効化範囲A、Bについて操作キーK1を無効化する処理を行うと、次はS60に移行する。S60に移行すると、NFC方式での通信を利用して、複合機10側により、携帯端末Uの識別情報(例えば、機種番号)を問い合わせる処理が実行される。
【0056】
携帯端末Uは、複合機10から識別情報の問い合わせを受けると、NFC方式の通信により、複合機10に対して識別情報を送信する処理を行う。複合機10に対して送信された識別情報は、NFC基板70を通じて複合機10の制御部80にて受信される(S70)。
【0057】
そして、制御部80は携帯端末Uからの識別情報を受信すると、ネットワークNTを通じてサーバ150にアクセスして、携帯端末Uの識別情報をサーバ150のデータベースDBに参照する。データベースDBには、各携帯端末Uの機種ごとに無効化範囲Cがそれぞれ登録されており、携帯端末Uの機種に応じた無効化範囲Cを取得することが出来る(S80)。
【0058】
NFC方式で通信しようとして、携帯端末Uを複合機10のNFC基板70にかざした時に、ユーザが誤って手を触れる可能性のある範囲は、携帯端末UからNFC基板70までの距離Lの他に、各携帯端末Uの形状や、各携帯端末UにおけるNFC基板100の搭載位置により異なる。無効化範囲Cは、そうした各携帯端末Uの形状やNFC基板の搭載位置の情報に基づいて、予め設定されたものである。
【0059】
そして、制御部80は、通信相手である携帯端末Uの機種に対応した無効化範囲Cを取得すると、取得した無効化範囲Cを複合機10に搭載されたNFC基板70の位置に合わせて割り当てる処理を行う。その後、制御部80は、S40やS50で設定した無効化範囲A、Bを無効化範囲Cに変更(再設定)し、無効化範囲Cに含まれる操作キーK1を無効化する(S90)。
【0060】
図3図4には、無効化範囲「C」として「C1」と「C2」の2例が示されている。サーバ150から取得した無効化範囲が「C1」であれば、印刷倍率を選択する倍率選択キーA1、A2、A3と、メンテナンスを実行するメンテナンスキーB1、B2、B3と、用紙を選択する用紙選択キーC1、C2、C3が含まれているので、これら各操作キーA1〜A3、B1〜B3、C1〜C3がいずれも無効化されることになる。また、サーバ150から取得した無効化範囲が「C2」であれば、更に、テンキーN1〜N9、実行キーE1、キャンセルキーE2が含まれているので、これらのキーが無効化されることになる。その後、複合機10の制御部80は、携帯端末Uからのタスクの送信を待つ状態となる。
【0061】
携帯端末Uのユーザは、表示操作パネル120をタッチ操作することにより、複合機10に実行させるタスクを選択することが出来る。この例では、携帯端末U側で印刷アプリケーションプログラムが立ち上げられ、ユーザにより、セキュアプリントタスクが選択された場合を例にとって説明を行う。
【0062】
セキュアプリントタスクの選択後、ユーザが、携帯端末Uの表示操作パネル120を操作してデータ送信を指示すると、携帯端末U側から複合機10に対してNFC方式の通信にて印刷データを含むセキュアプリントタスクが送信される。送信されたセキュアプリントタスクは、NFC基板70を通じて、複合機10の制御部80にて受信される(S100)。
【0063】
携帯端末Uからタスクを受信すると、複合機10の制御部80は、タスクの実行に必要な操作キーK1について、使用可能であるか判定する処理を実行する。この例では、セキュアプリンタタスクの実行にはセキュアコード(認証情報)を入力することが必要であり、コード入力にテンキーN1〜N9を使用する。そのため、制御部80にてテンキーN1〜N9が使用可能であるか判断される。また、タスクの実行には、タスクをキャンセルする行為も含まれることから、テンキーN1〜N9に加えてキャンセルキーE2についても使用可能であるか判断される。
【0064】
S80にてサーバから取得した無効化範囲Cが「C1」の場合には、無効化範囲にテンキーN1〜N9やキャンセルキーE2は含まれていない。そのため、この場合には、S110の判定処理にてYES判定され、処理はS130に移行する。
【0065】
一方、S80にてサーバから取得した無効化範囲Cが「C2」の場合には、無効化範囲にテンキーN1〜N9やキャンセルキーE2が含まれている。そのため、この場合には、S110の判定処理にてNO判定される。S110でNO判定されると、S120に移行して、制御部80により、タスクの実行に必要な操作キーの無効化を解除する処理が実行される。したがって、ここでは、テンキーN1〜N9とキャンセルキーE2の無効化が解除され、これらの操作キーは使用可能となる。
尚、制御部80により実行されるS80の処理により、本発明の「前記制御部は、前記無効化処理において、前記近距離無線通信方式での通信時(ここでは、NFC通信を利用したタスク(携帯端末Uと複合機10との間で実行されるタスク)の実行時)に使用されると想定される前記操作キー(ここではテンキーN1〜N9とキャンセルキーE2)の無効化を解除する」が実現されている。
【0066】
その後、処理はS130に移行する。S130では、携帯端末Uから送信されたタスクが実行される(S130)。この例では、携帯端末Uから送信されたタスクは、セキュアプリントタスクであるため、複合機10のテンキーN1〜N9を通じてユーザがセキュアコードを入力すると、制御部80はテンキーN1〜N9により入力されたセキュアコードを受け付ける受付処理を行う。そして、受け付けたセキュアコードと、携帯端末Uから送信された印刷データに付加されたセキュアコードを照合し、両コードが一致していれば、印刷装置30を用いて印刷データを印刷する。
【0067】
そして、タスク(この例では、セキュアプリント)の実行終了後、複合機10の制御部80は、携帯端末Uの離反を検出する離反検出処理を実行する(S140)。携帯端末Uの離反は、携帯端末Uとの通信状況に基づいて判断される。すなわち、携帯端末Uとの通信が途切れたり、携帯端末Uからの電波が一定期間検出できなかった場合や、複合機10から送信する電波から反磁界が消滅した場合は、携帯端末Uが離反したと判断される。尚、「離反」は「携帯端末UのNFC基板100から複合機10のNFC基板70までの距離Lが通信距離以上になる状態」を意味する。
【0068】
携帯端末Uの離反が検出されない場合(S140:NO)はS90に移行するため、無効化範囲Cに含まれる各操作キーK1を無効化する状態が続くことになる。そして、ユーザが携帯端末Uを複合機10から離すと、上記条件のいずれかに該当することになることから、制御部80にて、携帯端末Uの離反が検出されることになる(S140:YES)。携帯端末Uの離反を検出すると、制御部80は、操作キーK1の無効化を解除する解除処理を行う(S150)。これは、携帯端末Uが離反した場合、ユーザの手が複合機10から離れる状態になることから、ユーザの手が操作キーK1に触れる可能性が低くなるからである。これにて、無効化範囲C1や無効化範囲C2に含まれる全ての操作キーK1は使用可能な状態に戻る。そして、処理の流れとしては、S10に戻ることになり、複合機10は、電源投入後の初期の状態に復帰することになる。
【0069】
4.効果説明
本複合機10は、携帯端末Uの接近を検出すると、操作キーK1を無効化する。そのため、NFC方式で通信しようとして、携帯端末Uを複合機10のNFC基板70にかざした時に、ユーザが誤って操作キーK1に触れても、複合機10が誤作動する可能性が低くなる。
【0070】
また、ユーザが操作キーK1に触れる範囲や場所は、携帯端末UからNFC基板70までの距離Lにより異なる。この複合機10では、携帯端末UからNFC基板70までの距離Lを閾値と比較して操作キーK1を無効化する無効化範囲を変更(S40、S50)するので、複合機10が誤作動する可能性が低くなる。
【0071】
また、ユーザが操作キーK1に触れる範囲や場所は、携帯端末UからNFC基板70までの距離Lの他に、各携帯端末Uの形状や、各携帯端末UにおけるNFC基板100の搭載位置により異なる。本複合機10は、携帯端末Uから受信した識別情報をサーバ150に参照して、携帯端末Uの固有の特徴(形状や、基板の搭載位置)に応じて無効化範囲Cを再設定するので、ユーザが手で触れる可能性が高い範囲と無効化範囲Cを概ね一致できる。
【0072】
そのため、複合機10の誤動作を防止できる確率が高くなる。また、携帯端末Uの識別情報に対応する無効化範囲Cは、全てサーバ150に記憶させてあるので、予めユーザが識別情報に対応する無効化範囲Cを複合機10に登録する手間を省けるし、複合機10側で無効化範囲Cのデータを記憶しておく必要がないというメリットがある。
【0073】
また、本複合機10では、携帯端末Uの離反を検出すると、操作キーK1の無効化を解除するため、それ以降は、全ての操作キーK1を使用できる。そのため、携帯端末Uが離反した以降も操作キーK1の無効化状態を継続させる場合に比べて、操作キーK1の使用制限を受ける期間が短くなる。
【0074】
また、本複合機10では、タスクの実行に使用する操作キーK1が無効化範囲Cに含まれている場合、その操作キーK1の無効化を解除する。そのため、携帯端末U側から送信されるタスクを実行することが出来るので、利便性が高い。
【0075】
また、本複合機10では、携帯端末Uが発信する電波(応答信号St)を利用して、携帯端末Uの接近を検出する。そのため、NFC方式の通信に利用される既存の部品を流用して携帯端末Uの接近を検出できる。また、NFC基板70にて検出される電波を利用して携帯端末Uから複合機10のNFC基板までの距離Lも特定する。そのため、距離Lも既存の部品を流用して検出できる。
【0076】
また、本複合機10では、表示操作パネル50が、筐体であるケース本体20の前側に設置されている。携帯端末Uを複合機10のNFC基板70にかざした時に複合機10の正面にユーザが立つことが多いので、表示操作パネル50が前側に設置されている場合、ユーザが誤って表示操作パネル50の操作キーKに触れる可能性が高い。そうした誤動作の可能性が高い複合機10に本明細書に開示する技術(操作キーを無効化する技術)を適用すると、誤動作の発生頻度を低下させることが可能となり、効果的である。
【0077】
<実施形態2>
実施形態1では、携帯端末Uの接近を、携帯端末Uから返される応答信号Stの有無に基づいて検出した。すなわち、NFC基板70からポーリング用の電波を送信しているにも拘わらず、負荷変調による応答信号Stが返されない場合は、携帯端末Uは「未接近」と判断し、携帯端末Uから応答信号Stが返された場合には、携帯端末Uは「接近」と判断した。
【0078】
複合機10が電波を送信していない未送信時に、携帯端末Uが電波を発信すると、その電波は、複合機10のNFC基板70にて受信される。そのため、複合機10が電波を送信していない未送信時に、NFC基板70にて受信された電波(携帯端末側が送信した電波)の強度を、検出部77にて検出することで、携帯端末の接近/未接近を判断することが出来る。すなわち、NFC基板70で受信した電波の強度が境界値(電波発信源が通信距離にある場合に受信される電波強度)を超える場合には、携帯端末Uは「接近」と判断でき、電波の強度が境界値未満の場合は、携帯端末Uは「未接近」と判断できる。
【0079】
そして、NFC基板70にて受信される電波の強度に基づいて携帯端末Uの接近/未接近を判断する方法は、実施形態1にて採用した応答信号Stの有無により判断する方法と併用できる。そのため、実施形態2では、これら2つの方法を併用して、携帯端末Uが接近しているかどうかを検出する。すなわち、実施形態2では、複合機10が電波を送信している期間(送信時)は、携帯端末Uから返される応答信号Stの有無に基づいて携帯端末Uの接近を検出し、複合機10が電波を送信していない期間(未送信時)は、受信される電波の強度に基づいて携帯端末Uの接近を判断する。
【0080】
このようにすれば、複合機10が電波を送信している期間と電波を送信していない期間の双方について、携帯端末Uの接近を検出することが出来る。そのため、携帯端末Uの接近をより確実に検出できる。
【0081】
尚、複合機10が電波を送信していない未送信時に、NFC基板70にて受信される電波の強度は、携帯端末Uから複合機10のNFC基板70までの距離Lが短いほど大きい。そのため、受信した電波の強度に基づいて、携帯端末Uから複合機10のNFC基板70までの距離Lを特定出来る。従って、複合機10が電波を送信していない未送信時に、境界値を超える電波の受信により携帯端末Uの「接近」を検出した場合には、受信した電波の強度から距離Lを特定できるので、実施形態1の場合と同様に、距離Lに応じて無効化範囲Aと無効化範囲Bを設定出来る。
【0082】
<実施形態3>
実施形態3を図8図9を参照して説明する。図8は実施形態3の複合機の斜視図、図9は複合機の上面壁の平面図(操作キーの無効化範囲を示す)である。実施形態1では、複合機10に対してタッチパネル式の表示操作パネル50を設けた例を示した。実施形態3の複合機10では、タッチパネル式の表示操作パネル50に加えて、押しボタン式の操作キーK2を設けており、表示操作パネル50に表示される操作キーK1と、押しボタン式の操作キーK2の双方を使用して、入力操作を行うことが出来る構成となっている。
【0083】
押しボタン式の操作キーK2は、図8に示すように複合機10の上面壁22において表示操作パネル50の右側に設けられている。図9に示すように、押しボタン式の操作キーK2は、例えばテンキーN1〜N12や、実行キーE1、キャンセルキーE2等であり、数値の入力操作や、タスクの実行、キャンセル操作を行うことが出来る。
【0084】
操作キーK1と操作キーK2の操作力を比較すると、操作キーK2の操作力の方が、操作キーK1の操作力よりも大きく、操作キーK2は操作キーK1よりも高い圧力で押圧された時に操作を受け付ける。尚、操作キーK2が、本発明の「第2操作キー」の一例であり、操作キーK1が本発明の「第1操作キー」の一例である。
【0085】
また、実施形態1では、図5に示す無効化シーケンスを実行して、携帯端末Uが複合機10に対して接近した場合に所定の無効化範囲A〜Cを設定し、無効化範囲内に含まれる操作キーK1を無効化する処理を行った。
【0086】
実施形態3の複合機10も、実施形態1と同様に、図5に示す無効化シーケンスを実行して、携帯端末Uが複合機10に対して接近した場合に、所定の無効化範囲A〜Cを設定し、無効化範囲A〜C内に含まれる操作キーKを無効化する。
【0087】
ただし、操作力の大きい側の操作キーK2は、無効化しない操作キーKとしてメモリ83に予め登録しておく。そして、複合機10の制御部80は、メモリ83に登録された操作キーK2は除外して、操作力の小さい操作キーK1を対象に、操作キーKを無効化する。例えば、図9に示すように、無効化範囲C3に操作キーK1と操作キーK2の双方が含まれていた場合は、操作キーK1だけを無効化し、操作キーK2は無効化しない。
【0088】
操作力の大きい操作キーK2を無効化の対象から除外する理由は、操作キーK2は操作力が大きいため、ユーザが誤って手で触れた程度では、操作キーK2が操作を受け付けるまで押されることがなく、複合機10が誤動作する恐れが小さいからである。ここで、数値例を示しておくと、操作キーK1の操作力F1は一例としてほぼゼロ[N](静電容量方式のタッチパネルの場合)であり、押しボタン式の操作キーK2の操作力F2は一例として7〜9[N]程度である。一方、ユーザが誤って手で操作キーKに触れた場合の平均的な押圧力F3は、概ね3〜5[N]程度であり、操作キーK1の操作力F1よりも大きく、操作キーK2の操作力F2よりも小さい。
【0089】
無効化する操作キーKの数が多いと、制限される入力操作が増えるので、無効化する操作キーKの数は少ない方が好ましい。この点、実施形態3では、無効化範囲A〜Cに操作キーK1と操作キーK2の双方が含まれていた場合は、操作キーK1のみ無効化し、操作キーK2は無効化しない。そのため、無効化範囲A〜Cに操作キーK1と操作キーK2の双方が含まれていた場合に双方の操作キーK1、K2を無効化する場合に比べて、無効化する操作キーKを少なくすることが可能であり、制限される入力操作を最小限に抑えることが可能となる。
【0090】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態1では、携帯端末Uの一例に携帯電話(例えばスマートフォン)を例示したが、携帯端末Uは、通信機器(複合機)とNFC方式で通信できるものであればよく、PDA、ノートPC、タブレットPC、携帯型音楽再生装置、携帯型動画再生装置等であってもよい。
【0091】
(2)実施形態1では、通信装置の一例に複合機10を例示した。通信装置は、携帯端末UとNFC方式で通信できる機器であればよく、プリンタやスキャナ等であってもよい。また、実施形態1では、NFC基板70をケース本体20の上面壁22に設置した複合機10に対して、操作キーKを無効化する技術を適用した例を示した。操作キーKを無効化する技術の適用対象は、NFC基板70がケース本体20の前側に設置された通信機器に限定されるものではない。例えば、図10に示すように、ケース本体210を構成する上部側面壁220Rのうち、前後方向の中央寄りの位置にNFC基板70を設けたプリンタ200に、操作キーKを無効化する技術を適用してもよい。また、操作キーKの設置箇所も、必ずしも、本体ケース210の前端側である必要はなく、例えば、図10に示すように、ケース本体210を構成する上部側面壁220Lのうち、前後方向の中央寄りの位置に、操作キーKが設けられていてもよい。すなわち、NFC基板70に携帯端末Uをかざした時に、ユーザの手が操作キーKに触れる可能性がある通信装置であれば、操作キーKを無効化する技術の適用対象とすることが出来る。
【0092】
(3)上記実施形態1では、タスクの受信後、タスクの実行に使用される操作キーKが無効化されている場合には、その操作キーKの無効化を解除して使用できるようにした。タスクの実行に使用される事が想定される操作キーKや、使用される頻度が高い操作キーKは、複合機10の制御部80のメモリ83に、無効化しない操作キーKとして予め登録しておき、制御部80にて無効化の対象から除外しておくようにしてもよい。
【0093】
(4)上記実施形態1では、携帯端末Uの大きさやNFC基板100の搭載位置によって、無効化範囲を変更する例を説明した。携帯端末Uがジャイロセンサ等を搭載している場合には、NFC方式の通信を利用して携帯端末Uから向きの情報を取得して、携帯端末Uの向きによって無効化範囲の向きや大きさを変更(再設定)してもよい。
【0094】
(5)上記実施形態1では携帯端末Uの離反を検出した時に、操作キーKの無効化を解除するようにした。操作キーKの無効化を解除するか、継続するかの決定は、例えば、携帯端末Uにて稼働するアプリケーションから指令により決定してもよい。
【0095】
(6)実施形態1では、近距離無線方式の一例にNFC方式を例示した。近距離無線方式は、NFC以外に、例えば「ISO/IEC14443、ISO/IEC15693準拠の通信方式」等であってもよい。
【0096】
(7)実施形態1では、制御部80をCPUにより構成する例を示したが、制御部80をASIC等のハード回路により構成してもよく、またCPU(1以上でもよい)とASIC等のハード回路を組み合わせた構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0097】
10...複合機(本発明の「通信装置」の一例)
50...表示操作パネル
70...NFC基板(本発明の「通信部」の一例)
80...制御部
90...端末制御部
100...NFC基板
120...操作パネル
U...携帯端末
K1...操作キー
K2...操作キー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10