(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
環状のロータと、前記ロータの外側に配置されたアウターステータと、前記ロータの内側に配置されたインナーステータと、前記ロータの回転角を検出する回転角検出センサと、を有し、前記回転角検出センサの出力値に基づいて、前記アウターステータ及び前記インナーステータの少なくともいずれか一方に設けられた突極の励磁タイミングを制御するダブルステータ型スイッチトリラクタンス回転機の制御方法であって、
前記アウターステータに設けられた特定の1相の突極を励磁させ、前記回転角検出センサの初期値を調整するための第1ゼロ基準値を取得する第1工程と、
前記インナーステータに設けられた特定の1相の突極を励磁させ、前記回転角検出センサの初期値を調整するための第2ゼロ基準値を取得する第2工程と、を有する、ことを特徴とするダブルステータ型スイッチトリラクタンス回転機の制御方法。
前記第2工程では、前記第1工程で励磁した相と異なる相の突極を励磁させる、ことを特徴とする請求項1に記載のダブルステータ型スイッチトリラクタンス回転機の制御方法。
前記第1工程と前記第2工程の励磁の結果、前記ロータがステータ側の一極分回転していない場合、前記第1工程と前記第2工程を再び繰り返す、ことを特徴とする請求項2に記載のダブルステータ型スイッチトリラクタンス回転機の制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術には、次のような問題がある。
ダブルステータ型スイッチトリラクタンス回転機は、環状のロータと、ロータの外側に配置されたアウターステータと、ロータの内側に配置されたインナーステータと、を有する構成となっている。アウターステータとインナーステータは、組み立て精度の影響で、物理的な位相のズレを生じていることがある。このため、上記従来技術を適用し、停止時に回転角検出センサのゼロ調整(初期値の調整)を行っても、ダブルステータ型スイッチトリラクタンス回転機では、効率的な運転ができない場合があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、回転角検出センサの取り付け精度によらず、また、アウターステータ及びインナーステータの組み立て精度を高めなくても、効率的な運転が可能なダブルステータ型スイッチトリラクタンス回転機の制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、環状のロータと、前記ロータの外側に配置されたアウターステータと、前記ロータの内側に配置されたインナーステータと、前記ロータの回転角を検出する回転角検出センサと、を有し、前記回転角検出センサの出力値に基づいて、前記アウターステータ及び前記インナーステータの少なくともいずれか一方に設けられた突極の励磁タイミングを制御するダブルステータ型スイッチトリラクタンス回転機の制御方法であって、前記アウターステータに設けられた特定の1相の突極を励磁させ、前記回転角検出センサの初期値を調整するための第1ゼロ基準値を取得する第1工程と、前記インナーステータに設けられた特定の1相の突極を励磁させ、前記回転角検出センサの初期値を調整するための第2ゼロ基準値を取得する第2工程と、を有する、という手法を採用する。
この手法を採用することによって、本発明では、アウターステータの特定の1相の突極に励磁し、当該突極の磁気吸引力によってロータを引き付け、回転角検出センサの第1ゼロ基準値を取得すると共に、インナーステータの特定の1相の突極に励磁し、当該突極の磁気吸引力によってロータを引き付け、回転角検出センサの第2ゼロ基準値を取得する。このように、本発明では、アウターステータ側とインナーステータ側の2つのゼロ基準値を取得することで、ダブルステータ型スイッチトリラクタンス回転機の運転状態に応じて回転角検出センサのゼロ調整を2段階で調整できるため、効率的な運転が可能となる。
【0008】
また、本発明においては、前記第2工程では、前記第1工程で励磁した相と異なる相の突極を励磁させる、という手法を採用する。
この手法を採用することによって、本発明では、第1工程においてアウターステータの特定の1相の突極を励磁しても、ロータを引き付けられない場合、すなわち当該特定の1相の突極に対してロータが死角になっている場合であっても、第2工程で異なる相の突極を励磁することで、ロータを引き付けることができるため、回転角検出センサのゼロ基準値を確実に取得することができる。
【0009】
また、本発明においては、前記第1工程と前記第2工程の励磁の結果、前記ロータがステータ側の一極分回転していない場合、前記第1工程と前記第2工程を再び繰り返す、という手法を採用する。
この手法を採用することによって、本発明では、第1工程と第2工程の励磁の結果、ロータがステータ側の一極分回転していない場合には、どちらかの工程でロータが死角になっていたと判断できるため、死角が解消された状態でもう一度、第1工程と第2工程を繰り返すことにより、アウターステータ側とインナーステータ側の2つのゼロ基準値を確実に取得することができる。
【0010】
また、本発明においては、前記アウターステータと前記インナーステータは、電気的に並列接続されており、前記インナーステータのみに通電する第1モードと、前記アウターステータのみに通電する第2モードと、前記アウターステータと前記インナーステータの両方に通電する第3モードとに、通電モードを切り替えるためのスイッチが設けられており、前記第1モードの場合、前記回転角検出センサの初期値を前記第2ゼロ基準値に調整し、前記第2モード及び前記第3モードの場合、前記回転角検出センサの初期値を前記第1ゼロ基準値に調整する、という手法を採用する。
この手法を採用することによって、本発明では、並列接続されて起磁力が異なるアウターステータ及びインナーステータの一方若しくは両方に通電モードを切り替えることにより、低出力の場合には起磁力が小さいインナーステータ単独で、中出力の場合には起磁力が大きいアウターステータ単独で、高出力の場合にはアウターステータ及びインナーステータの両方で動作することにより、効率を向上させることができる。
また、本発明では、インナーステータ単独運転の第1モードのときには、回転角検出センサの初期値をインナーステータ側で取得した第2ゼロ基準値でゼロ調整し、また、アウターステータ単独運転の第2モードのときには、回転角検出センサの初期値をアウターステータ側で取得した第1ゼロ基準値でゼロ調整し、また、アウターステータ及びインナーステータ共同運転の第3モードのときには、アウターステータの方が起磁力が大きいので、回転角検出センサの初期値をアウターステータ側で取得した第1ゼロ基準値でゼロ調整することにより、効率的な運転が可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回転角検出センサの取り付け精度によらず、また、アウターステータ及びインナーステータの組み立て精度を高めなくても、ダブルステータ型スイッチトリラクタンス回転機の効率的な運転が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の一例について図面を参照して説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態におけるダブルステータ型スイッチトリラクタンスモータAの断面構成図である。
【0015】
ダブルステータ型スイッチトリラクタンスモータA(以下、単にスイッチトリラクタンスモータAと称する場合がある)は、
図1に示すように、環状のロータ10と、ロータ10の外側に配置されたアウターステータ20と、ロータ10の内側に配置されたインナーステータ30と、を有する。本実施形態のスイッチトリラクタンスモータAは、U相、V相、W相の3相モータであり、ステータ側の極数が12個、ロータ側の極数が8個の3相12/8極構造となっている。
【0016】
ロータ10は、電磁鋼板が軸方向に複数積層された状態で締結固定されたものである。ロータ10は、
図1に示すように、環状のヨーク部11と、ヨーク部11から外側に突出する第1突極12と、ヨーク部11から内側に突出すると共に第1突極12と同位相で設けられた第2突極13と、を有している。ヨーク部11は、円筒状とされ、磁気的に十分な厚みを有している。ヨーク部11の外周には、45°間隔で8個の第1突極12が設けられている。また、ヨーク部11の内周には、第1突極12と同位相の45°間隔で8個の第2突極13が設けられている。
【0017】
アウターステータ20は、環状の磁性体からなり、その内周に30°間隔で12個設けられた突極21と、突極21のそれぞれに巻回されたコイル(巻線)22と、を有する。コイル22は、周方向に沿ってU相→V相→W相→U相→…の順に相分けされて配置されている。
インナーステータ30は、環状の磁性体からなり、その外周に突極21と同位相の30°間隔で12個設けられた突極31と、突極31のそれぞれに巻回されたコイル(巻線)32と、を有する。コイル32は、コイル22と同様に周方向に沿ってU相→V相→W相→U相→…の順に相分けされて配置されている。
【0018】
図2は、本発明の第1実施形態におけるダブルステータ型スイッチトリラクタンスモータAの回路を示す図である。
上記構成のスイッチトリラクタンスモータAは、
図2に示すようなインバータ40を有する。なお、
図2において、符号41は直流電源を示し、符号42は平滑コンデンサを示す。また、アウターステータ20には各相4つのコイル22が設けられているが視認性の向上のため各相1つのコイル22のみを代表して図示して残りの図示を省略している。また、インナーステータ30においても同様に、各相4つのコイル32が設けられているが視認性の向上のため各相1つのコイル32のみを代表して図示して残りの図示を省略している。
【0019】
本実施形態のスイッチトリラクタンスモータAでは、アウターステータ20とインナーステータ30とが電気的に並列接続されており、一台のインバータ40で動作するようになっている。インバータ40は、アウターステータ20とインナーステータ30の対応する相のコイル22,32同士を並列接続する並列回路50を有する。並列回路50は、2つのスイッチング素子43a,43bと、2つのダイオード44a,44bと、からなる非対称ハーフブリッジ回路45に含まれる。
【0020】
並列回路50には、スイッチ47a,47bが設けられている。スイッチ47a,47bは、インナーステータ30のみに通電する第1モードと、アウターステータ20のみに通電する第2モードと、アウターステータ20とインナーステータ30の両方に通電する第3モードとに、通電モードを切り替えるためのものである。具体的に、第1モードでは、スイッチ47aが「OFF」、スイッチ47bが「ON」になり、第2モードでは、スイッチ47aが「ON」、スイッチ47bが「OFF」になり、第3モードでは、スイッチ47aが「ON」、スイッチ47bが「ON」になる。
【0021】
本実施形態では、アウターステータ20とインナーステータ30とが並列接続されると共に、アウターステータ20とインナーステータ30との起磁力が異なっており、アウターステータ20の起磁力よりもインナーステータ30の起磁力が小さく設定されている。起磁力は、コイル巻き回数と、そこに流れる電流の積によって求まる。ダブルステータ構造では、
図1に示すように、その構造的にインナーステータ30側に十分な巻線スペースを確保することが難しい。
【0022】
スイッチトリラクタンスモータAにおいて起磁力を同一にする場合は、巻線の断面積を小さくして巻線数を増やすか、インナーステータ30の突極31を長く(深く)して巻線スペースを確保する方法が考えられる。しかしながら、前者の方法では電流密度が高くなり、銅損の増大によるモータ効率低下と、巻線の温度上昇の問題が生じる。また、後者の方法では、モータ全体の重量を支えるシャフト径とトレードオフになるため、シャフト径が細くなると重量増加に対して機械的な強度を十分に確保することができなくなるという問題が生じる。
【0023】
そこで、本実施形態では、アウターステータ20の起磁力よりもインナーステータ30の起磁力を小さく設定することで、モータ効率の低下及び巻線の温度上昇の抑制と共に、機械的な強度を十分に確保している。なお、アウターステータ20とインナーステータ30の起磁力が異なる場合においては、一方から出た磁束が他方に逆流してしまい、モータ性能が低下することが懸念されるが、本実施形態のように、ロータ10のヨーク部11の厚みを十分に確保しておくことで悪影響を及ぼさないことが電磁解析試験から確認されている。
【0024】
また、本実施形態のように、アウターステータ20とインナーステータ30とを並列接続することで、アウターステータ20とインナーステータ30とを直列接続した場合よりもモータ性能の向上効果が高くなる。すなわち、直列接続では、インダクタンスが増加するので電流が減少してしまい、メインで駆動するアウターステータ20の起磁力が大きく低下してしまうためである。一方、並列接続では、アウターステータ20の起磁力を確保でき、加えてインナーステータ30の出力を取り出すことができるため、出力がアウターステータ20とインナーステータ30の単純な和となり、モータ性能が容易に向上する。
【0025】
また、本実施形態では、並列接続されて起磁力が異なるアウターステータ20及びインナーステータ30の一方若しくは両方に通電モードを切り替えることで、効率の向上を図っている。すなわち、低出力の場合には低出力に対応したインナーステータ30単独で運転した方が効率は良く、また、中出力の場合には中出力に対応したアウターステータ20単独で運転した方が効率は良く、また、高出力の場合には高出力に対応すべくアウターステータ20及びインナーステータ30共同で運転した方が効率は良くなるためである。
【0026】
図3は、本発明の第1実施形態における通電モードの切り替えによる効率と出力の関係を示すグラフである。
図3に示すように、低出力の場合、インナーステータ30単独で運転した方が効率が良いことが分かる。また、中出力の場合、アウターステータ20単独で運転した方が効率が良いことが分かる。また、高出力の場合、アウターステータ20及びインナーステータ30共同で運転した方が効率が良いことが分かる。
したがって、本実施形態によれば、低出力の場合には第1モードに切り換えて、中出力の場合には第2モードに切り換えて、高出力の場合には第3モードに切り替えることで、低出力から高出力に亘る高効率運転を実現することができる(
図3において実線で示す)。
【0027】
図4は、本発明の第1実施形態におけるダブルステータ型スイッチトリラクタンスモータAのインバータ制御の構成を示す概略図である。
なお、
図4においては、視認性の向上のため3相のうち1相の非対称ハーフブリッジ回路45のみを代表して図示し、他の相の非対称ハーフブリッジ回路45を省略しているが、他の相においても同様の構成となっている。
【0028】
スイッチトリラクタンスモータAは、
図4に示すように、ロータ10の回転角(ロータ位置)を検出するレゾルバ(回転角検出センサ)51と、レゾルバ51の出力値に基づいて、アウターステータ20及びインナーステータ30の少なくともいずれか一方に設けられた突極21,31の励磁タイミングを制御する制御部52と、を有する。
レゾルバ51は、ロータ10の回転角度位置や回転速度を磁気的に検出するためのものであり、例えばロータ10側に設けられた不図示の励磁コイルと、アウターステータ20側あるいはインナーステータ30側に設けられた不図示の検出コイルと、を有する。
【0029】
レゾルバ51の出力信号は、制御部52に入力されるようになっている。制御部52は、インバータ40を構成するスイッチング素子43a,43bにゲート信号を出力し、スイッチング素子43a,43bのスイッチング動作によって直流電流を、U相、V相、W相の3相の交流電流に変換して、各相のコイル22,32に供給するものである。制御部52は、
図5に示すようなトルク制御を行うようになっている。
【0030】
図5は、本発明の第1実施形態における制御部52のトルク制御の簡易ブロック図である。
図5に示すように、制御部52は、ユーザーからトルク指令値が入力されると、予め作成しておいたテーブルデータから、当該トルク指令値に対応した、電流指令値と点弧角・消弧角指令値とを得る。次に、制御部52は、電流指令値と、点弧角・消弧角指令値と、不図示の電流計から取得した相電流と、ロータ位置(レゾルバ信号)と、からPWMを生成し、ゲート信号としてスイッチング素子43a,43bに出力する。制御部52は、それぞれの入力の偏差について、所定ゲインによるPI演算を行い、計測値を指令値に合致させるPI制御を行う。
【0031】
図6は、本発明の第1実施形態におけるレゾルバ信号と各相のインダクタンスの関係を示すグラフである。
図6(a)は、レゾルバ信号(電機角)と位相角との関係を示す。
図6(b)は、アウターステータ20のインダクタンス(
図1における符号Uo等と対応する)と位相角との関係を示す。
図6(c)は、インナーステータ30のインダクタンス(
図1における符号Ui等と対応する)と位相角との関係を示す。
【0032】
インダクタンスとロータ位置には相関があり、インダクタンス最大(Lmax)で
図1に示すように突極(目印を付す)が対向状態となり、インダクタンス最小(Lmin)で後述する
図8に示すように突極(目印を付す)が非対向状態となる。
図6(b)及び
図6(c)に示すように、アウターステータ20のインダクタンス最大(Lmax)のときの位相角aと、インナーステータ30のインダクタンス最大(Lmax)のときの位相角bとが、ズレる場合、
図6(a)に示すように、Uo相のレゾルバ信号とUi相のレゾルバ信号の最大値もズレることとなる。
【0033】
スイッチトリラクタンスモータAでは、点弧角・消弧角によって出力が変動するため、適切な点で点弧角・消弧角を制御するために、レゾルバ信号の精度が重要となる。制御部52は、レゾルバ51の取り付け精度によらず、また、アウターステータ20及びインナーステータ30の組み立て精度を高めなくても、スイッチトリラクタンスモータAの効率的な運転を可能とするべく、
図7に示すような工程で、レゾルバ51のゼロ調整のためのゼロ基準値を取得している。
【0034】
図7は、本発明の第1実施形態におけるレゾルバ51のゼロ調整のための工程を示すフローチャートである。
先ず、アウターステータ20を励磁する(ステップS1)。
このステップS1では、アウターステータ20に設けられた特定の1相の突極21を励磁させ、レゾルバ51の初期値を調整するための第1ゼロ基準値を取得する(第1工程)。なお、アウターステータ20のみを励磁する場合には、
図2に示すスイッチ47aを「ON」、スイッチ47bを「OFF」にする。
【0035】
ステップS1では、例えば、アウターステータ20のU相の突極21(
図1において符号Uoを付す)を励磁させ、当該突極21の磁気吸引力によってロータ10を引き付ける。そして、アウターステータ20の突極21と、ロータ10の第1突極12とが対向状態となったときのレゾルバ51の出力値を、レゾルバ51のゼロ調整のための第1ゼロ基準値として取得する。第1ゼロ基準値は、アウターステータ20側でゼロ調整した値として、制御部52のメモリに記憶される。
【0036】
次に、インナーステータ30を励磁する(ステップS2)。
このステップS2では、インナーステータ30に設けられた特定の1相(アウターステータ20で励磁した相と同相)の突極31を励磁させ、レゾルバ51の初期値を調整するための第2ゼロ基準値を取得する(第2工程)。なお、アウターステータ20のみを励磁する場合には、
図2に示すスイッチ47aを「OFF」、スイッチ47bを「ON」にする。
【0037】
ステップS2では、例えば、インナーステータ30のU相の突極31(
図1において符号Uiを付す)を励磁させ、当該突極31の磁気吸引力によってロータ10を引き付ける。そして、インナーステータ30の突極31と、ロータ10の第2突極13とが対向状態となったときのレゾルバ51の出力値を、レゾルバ51のゼロ調整のための第2ゼロ基準値として取得する。第2ゼロ基準値は、インナーステータ30側でゼロ調整した値として、制御部52のメモリに記憶される。
【0038】
制御部52は、ロータ10の回転負荷に応じて通電モードを切り替える際に、通電モードに応じてレゾルバ51の初期値を第1ゼロ基準値または第2ゼロ基準値で調整する。具体的に、本実施形態では、インナーステータ30単独運転の第1モードのときには、レゾルバ51の初期値をインナーステータ30側で取得した第2ゼロ基準値でゼロ調整し、また、アウターステータ20単独運転の第2モードのときには、レゾルバ51の初期値をアウターステータ20側で取得した第1ゼロ基準値でゼロ調整し、また、アウターステータ20及びインナーステータ30共同運転の第3モードのときには、レゾルバ51の初期値をアウターステータ20側で取得した第1ゼロ基準値でゼロ調整する。
【0039】
これにより、インナーステータ30単独の第1モードのときには、
図6に示す位相角bを基準に点弧角・消弧角を設定することができるため、スイッチトリラクタンスモータAの効率的な運転が可能となる。また、アウターステータ20単独の第2モードのときには、
図6に示す位相角aを基準に点弧角・消弧角を設定することができるため、スイッチトリラクタンスモータAの効率的な運転が可能となる。また、アウターステータ20及びインナーステータ30共同の第3モードのときには、アウターステータ20の方が起磁力が大きいので、
図6に示す位相角aを基準に点弧角・消弧角を設定することで、スイッチトリラクタンスモータAの効率的な運転が可能となる。
【0040】
このような本実施形態によれば、アウターステータ20側とインナーステータ30側の2つのゼロ基準値を取得することで、スイッチトリラクタンスモータAの運転状態に応じてレゾルバ51のゼロ調整を2段階で調整できるため、最適なロータ位置での効率的な運転が可能となる。また、組み立て時のアウターステータ20とインナーステータ30の組み立て精度の緩和に加えて、レゾルバ51の取り付け精度の緩和も可能となる。
【0041】
したがって、上述の本実施形態によれば、環状のロータ10と、ロータ10の外側に配置されたアウターステータ20と、ロータ10の内側に配置されたインナーステータ30と、ロータ10の回転角を検出するレゾルバ51と、を有し、レゾルバ51の出力値に基づいて、アウターステータ20及びインナーステータ30の少なくともいずれか一方に設けられた突極の励磁タイミングを制御するダブルステータ型スイッチトリラクタンスモータAの制御方法であって、アウターステータ20に設けられた特定の1相の突極21を励磁させ、レゾルバ51の初期値を調整するための第1ゼロ基準値を取得する第1工程と、インナーステータ30に設けられた特定の1相の突極31を励磁させ、レゾルバ51の初期値を調整するための第2ゼロ基準値を取得する第2工程と、を有する、という手法を採用することによって、レゾルバ51の取り付け精度によらず、また、アウターステータ20及びインナーステータ30の組み立て精度を高めなくても、ダブルステータ型スイッチトリラクタンスモータAの効率的な運転が可能となる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0043】
図8は、本発明の第2実施形態におけるダブルステータ型スイッチトリラクタンスモータAの断面構成図である。
図9は、本発明の第2実施形態におけるレゾルバ51のゼロ調整のための工程を示すフローチャートである。
ロータ10の停止位置は、
図1に示す対向状態と、
図8に示す非対向状態の二種類が存在するが、非対向状態でのロータ10の停止は非常に稀なケースである。
第2実施形態では、この非対向状態でロータ10が停止している状態であっても、レゾルバ51のゼロ調整を可能とするべく、
図9に示すような工程で、レゾルバ51のゼロ基準値を取得する。
【0044】
第2実施形態では、先ず、アウターステータ20を励磁する(ステップS1)。
このステップS1では、アウターステータ20に設けられた特定の1相の突極21を励磁させる(第1工程)。ステップS1において、例えば、アウターステータ20のU相の突極21(
図8において符号Uoを付す)を励磁させた場合、ロータ10が死角となっており、当該突極21の磁気吸引力がバランスし、ロータ10を引き付けることはできない。
【0045】
第2実施形態では、次に、アウターステータ20で励磁した相と異なるインナーステータ30の相を励磁する(ステップS2)。
このステップS2では、インナーステータ30に設けられた特定の1相(アウターステータ20で励磁した相と異なる相(例えばWi相))の突極31を励磁させる。このように、ステップS1においてUo相の突極21を励磁して、ロータ10を引き付けられない場合であっても、ステップS2でWi相の突極31を励磁することで、
図8に示すように、当該突極31では磁気吸引力がバランスすることなく、ロータ10を引き付けることができるため、レゾルバ51のゼロ基準値を確実に取得することができる。
【0046】
第2実施形態では、次に、アウターステータ20とインナーステータ30に夫々励磁してロータ10が一極分回転しているか否かを判定する(ステップS3)。
このステップS3では、ステップS1とステップS2の励磁の結果、ロータ10がステータ側の一極分回転していない場合、ステップS1とステップS2を再び繰り返させる。すなわち、ステップS1とステップS2の励磁の結果、ロータ10がステータ側の一極分回転していない場合には、どちらかの工程でロータ10が死角になっていたと判断できるためである。ステップS2においては、死角が確実に解消されるので、死角が解消された状態でもう一度、ステップS1とステップS2を繰り返すことにより、アウターステータ20側とインナーステータ30側の2つのゼロ基準値を確実に取得することができる(この場合、ロータ10がステータ側の一極分回転する)。
【0047】
したがって、上述した第2実施形態によれば、ロータ10が非対向状態で停止しても、アウターステータ20とインナーステータ30の異なる相を夫々励磁することで、アウターステータ20側とインナーステータ30側の2つのゼロ基準値を確実に取得することができる。
【0048】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0049】
例えば、上記実施形態では、回転角検出センサとしてレゾルバを例示して説明したが、本発明はこの構成に限定されることなく、例えばエンコーダにも適用することができる。
【0050】
また、例えば、上記実施形態では、3相モータを例示して説明したが、本発明はこの構成に限定されることなく、2相モータ、4相モータ、5相モータ等にも適用することができる。また、3相モータにおいて12/8極構造を例示して説明したが、本発明はこの極数に限定されず、例えば6/4極構造等であっても良い。
なお、4相モータ、5相モータの場合、第2実施形態においては、第2工程において、第1工程で励磁した相と隣接する相の突極を励磁することが望ましい。
【0051】
また、例えば、上記実施形態では、本発明のダブルステータ方スイッチトリラクタンス回転機を、モータに適用した構成について例示したが、本発明はこの構成に限定されることなく、発電機にも適用することができる。また、発電機においては、大型の風力発電機に好適に適用することができる。