(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の液晶配向剤は、(メタ)アクリル系重合体およびポリオルガノシロキサンよりなる群から選ばれる少なくとも一種であって、光配向性基を有する重合体(A)と、特定のシラン化合物(B)と、を含む。以下に、本発明の液晶配向剤に含まれる各成分、および必要に応じて任意に配合されるその他の成分について説明する。なお、本明細書における(メタ)アクリルは、アクリルおよびメタクリルを含む意味である。また、(メタ)アクリロキシ基は、アクリロキシ基およびメタクリロキシ基を含む意味である。
【0013】
<重合体(A)>
本発明における重合体(A)は、光配向性基を有する重合体である。ここで、光配向性基とは、光照射による光異性化反応、光二量化反応または光分解反応によって膜に異方性を付与可能な官能基である。光配向性基として具体的には、例えばアゾベンゼンまたはその誘導体を基本骨格として含有するアゾベンゼン含有基、桂皮酸またはその誘導体を基本骨格として含有する桂皮酸構造を有する基、カルコンまたはその誘導体を基本骨格として含有するカルコン含有基、ベンゾフェノンまたはその誘導体を基本骨格として含有するベンゾフェノン含有基、クマリンまたはその誘導体を基本骨格として有するクマリン含有基、ポリイミドまたはその誘導体を基本骨格として含有するポリイミド含有構造等が挙げられる。これらの中でも、重合体(A)が有する光配向性基としては、高い配向能を有する点および重合体への導入が容易である点において桂皮酸構造を有する基であることが好ましい。
【0014】
桂皮酸構造を有する基としては、例えば、桂皮酸が有するカルボキシル基の水素原子を除去して得られる1価の基、または当該1価の基が有するベンゼン環に置換基が導入された基(以下、これらを「順シンナメート基」ともいう。)や、桂皮酸が有するカルボキシル基がエステル化され、かつベンゼン環に2価の有機基が結合してなる1価の基、または当該1価の基が有するベンゼン環に置換基が導入された基(以下、これらを「逆シンナメート基」ともいう。)などが挙げられる。順シンナメート基は、例えば下記式(cn−1)で表すことができる。また、逆シンナメート基は、例えば下記式(cn−2)で表すことができる。
【化1】
(式(cn−1)中、R
1は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基またはシアノ基である。
R
2は、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基もしくはシクロヘキシレン基、またはこれらの基が有する水素原子の少なくとも一部が、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、当該アルコキシ基の水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された1価の基によって置換された基またはシアノ基である。A
1は、単結合、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜3のアルカンジイル基、−CH=CH−、−NH−、*
1−COO−、*
1−OCO−、*
1−NH−CO−、*
1−CO−NH−、*
1−CH
2−O−または*
1−O−CH
2−(「*
1」はR
2との結合手を示す。)である。R
3は、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基またはシアノ基である。aは0または1であり、bは0〜4の整数である。但し、bが2以上の場合、複数のR
3は同じでも異なっていてもよい。「*」は結合手であることを示す。
式(cn−2)中、R
4は、炭素数1〜3のアルキル基である。R
5は、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基またはシアノ基である。A
2は、酸素原子、*
1−COO−、*
1−OCO−、*
1−NH−CO−または*
1−CO−NH−(「*
1」はR
6との結合手を示す。)である。R
6は、炭素数1〜6のアルカンジイル基である。cは0または1であり、dは0〜4の整数である。但し、dが2以上の場合、複数のR
5は同一であっても異なっていてもよい。「*」は結合手であることを示す。)
【0015】
上記式(cn−1)で表される基の具体例としては、例えば下記式
【化2】
(上記式中、「*」は結合手であることを示す。)
のそれぞれで表される基などを;
上記式(cn−2)で表される基の具体例としては、例えば下記式
【化3】
【化4】
(上記式中、「*」は結合手であることを示す。)
のそれぞれで表される基などを;挙げることができる。
【0016】
本発明における重合体(A)は、官能基として更に(メタ)アクリロキシ基を有していることが好ましい。重合体(A)が(メタ)アクリロキシ基を有することにより、重合体(A)の溶剤に対する溶解性を高めることができる。また、形成された液晶配向膜について、基板に対する密着性をより良好にすることができる。重合体(A)における(メタ)アクリロキシ基の含有割合は、重合体(A)の1gあたりの(メタ)アクリロキシ基のモル数として、0.1〜5ミリモルとすることが好ましく、0.2〜4ミリモルとすることがより好ましい。
また、本発明における重合体(A)は、溶剤に対する溶解性を高めることができる点において、官能基として更に水酸基を有していることが好ましい。このとき、重合体(A)における水酸基の含有割合は、重合体(A)の1gあたりの水酸基のモル数として、0.01〜2ミリモルとすることが好ましく、0.1〜1.5ミリモルとすることがより好ましい。
【0017】
本発明における重合体(A)は、(メタ)アクリル系重合体またはポリオルガノシロキサンにより形成される骨格を有する。このような重合体(A)を合成する方法は特に限定せず、有機化学の定法を適宜組み合わせることにより行うことができる。以下、光配向性基を有するポリオルガノシロキサンおよび光配向性基を有する(メタ)アクリル系重合体のそれぞれについて説明する。
【0018】
[光配向性基を有するポリオルガノシロキサン]
本発明において、重合体(A)としての光配向性基を有するポリオルガノシロキサン(以下、「光配向性ポリオルガノシロキサン(A)」ともいう。)は、例えば、
(I)エポキシ基(オキシラニル基)およびオキセタニル基の少なくともいずれかを有する加水分解性のシラン化合物(ms−1)、または当該シラン化合物(ms−1)とその他のシラン化合物との混合物を加水分解縮合して得られる重合体(以下、「エポキシ含有ポリオルガノシロキサン」ともいう。)と、光配向性基を有するカルボン酸(mc−1)とを反応させる方法;
(II)光配向性基を有する加水分解性のシラン化合物(ms−2)、または当該シラン化合物(ms−2)とその他のシラン化合物との混合物を加水分解縮合させる方法;
などを挙げることができる。
【0019】
・シラン化合物(ms−1)
シラン化合物(ms−1)は、エポキシ基およびオキセタニル基の少なくともいずれかを有する加水分解性のシラン化合物である。その具体例としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、2−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、2−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、2−グリシドキシエチルジメチルメトキシシラン、2−グリシドキシエチルジメチルエトキシシラン、4−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、4−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、4−グリシドキシブチルメチルジメトキシシラン、4−グリシドキシブチルメチルジエトキシシラン、4−グリシドキシブチルジメチルメトキシシラン、4−グリシドキシブチルジメチルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル、(メタ)アクリル酸(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルなどを挙げることができる。シラン化合物(ms−1)としては、これらのうちの1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0020】
・シラン化合物(ms−2)
シラン化合物(ms−2)は、光配向性基を有する加水分解性のシラン化合物である。シラン化合物(ms−2)としては、光配向性基として桂皮酸構造を含む基を有するアルコキシシラン化合物などを好ましく用いることができ、例えば上記式(cn−1)で表される基または上記式(cn−2)で表される基を有するアルコキシシラン化合物などを挙げることができる。このようなアルコキシシラン化合物としては、例えば下記式(ms−2−1)および式(ms−2−2)のそれぞれで表される化合物などを挙げることができる。なお、シラン化合物(ms−2)としては、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【化5】
【0021】
・その他のシラン化合物
その他のシラン化合物は、加水分解性を示すシラン化合物である限り特に限定せず、目的とする重合体(A)に応じて適宜選択することができる。例えば、その他のシラン化合物として、(メタ)アクリロキシ基を有する加水分解性のシラン化合物(ms−3)を用いることにより、(メタ)アクリロキシ基を側鎖に有する光配向性ポリオルガノシロキサン(A)を合成することができる。その具体例としては、例えば3−(メタ)アクリロキシプロピルトリクロロシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリクロロシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルトリクロロシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルトリエトキシシランなどを挙げることができる。シラン化合物(ms−3)としては、これらのうちの1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0022】
また、その他のシラン化合物として、水酸基を有する加水分解性のシラン化合物を用いることにより、光配向性ポリオルガノシロキサン(A)の側鎖に水酸基を導入することができる。水酸基含有のシラン化合物の構造は特に限定しないが、例えば上記式(ms−2−1)および式(ms−2−2)で表される化合物などを挙げることができる。なお、上記式(ms−2−1)および式(ms−2−2)で示す水酸基含有のシラン化合物は桂皮酸構造を有しているが、桂皮酸構造を有していない化合物を用いることもできる。
【0023】
光配向性ポリオルガノシロキサン(A)の合成に際して使用するその他のシラン化合物としては、上記シラン化合物(ms−3)や、水酸基を有する加水分解性のシラン化合物以外のシラン化合物(以下、「シラン化合物(ms−4)」ともいう。)を必要に応じて使用することができる。このようなシラン化合物(ms−4)としては、例えばメチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルジクロロシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、クロロジメチルシラン、メトキシジメチルシラン、エトキシジメチルシラン、クロロトリメチルシラン、ブロモトリメチルシラン、ヨードトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシランなどを挙げることができる。シラン化合物(ms−4)としては、これらのうちの1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0024】
本発明におけるエポキシ含有ポリオルガノシロキサンは、十分な量の光配向性基を重合体の側鎖に導入することを可能にしつつ、エポキシ基またはオキセタニル基が過剰量であることに起因する副反応を抑制する観点において、そのエポキシ当量が、80〜10,000g/モルであることが好ましく、100〜1,000g/モルであることがより好ましい。したがって、上記方法(I)によりエポキシ含有ポリオルガノシロキサンを合成するにあたっては、シラン化合物(ms−1)とその他のシラン化合物との使用割合を、得られるポリオルガノシロキサンのエポキシ当量が上記範囲となるように調製することが好ましい。
また、上記方法(II)により光配向性ポリオルガノシロキサン(A)を合成する場合、シラン化合物(ms−2)とその他のシラン化合物との使用割合は、本発明における重合体(A)としての光配向性ポリオルガノシロキサン(A)が有する光配向性基の濃度が上記好ましい範囲になるように調製することが好ましい。
【0025】
上記式(I)および(II)におけるシラン化合物の加水分解・縮合反応は、上記の如きシラン化合物の1種または2種以上と水とを、好ましくは適当な触媒および有機溶媒の存在下で反応させることにより行うことができる。加水分解・縮合反応に際し、水の使用割合は、シラン化合物(合計量)1モルに対して、好ましくは0.5〜100モルであり、より好ましくは1〜30モルである。
【0026】
加水分解・縮合反応の際に使用することができる触媒としては、例えば酸、アルカリ金属化合物、有機塩基、チタン化合物、ジルコニウム化合物などを挙げることができる。これら触媒の具体例としては、酸として、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フタル酸、マロン酸、ギ酸、シュウ酸等の有機酸などを;アルカリ金属化合物として、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシドなどを;有機塩基として、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロールの如き1〜2級有機アミン:トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセンの如き3級の有機アミン:テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンなどを;それぞれ挙げることができる。
上記触媒としては、エポキシ基またはオキセタニル基の開環などの副反応を抑制できる点や、加水分解縮合速度を速くできる点、保存安定性に優れている点などにおいて、これらの中でもアルカリ金属化合物または有機塩基が好ましく、特に有機塩基が好ましい。また、有機塩基としては、3級の有機アミンまたは4級の有機アミンが好ましい。
有機塩基の使用量は、有機塩基の種類、温度などの反応条件などにより異なり、適宜に設定されるべきであるが、例えば全シラン化合物に対して、好ましくは0.01〜3倍モルであり、より好ましくは0.05〜1倍モルである。
【0027】
上記の加水分解・縮合反応の際に使用することができる有機溶媒としては、例えば炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、アルコールなどを挙げることができる。それらの具体例としては、炭化水素として、例えばトルエン、キシレンなどを;ケトンとして、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノンなどを;エステルとして、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸i−アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチルなどを;エーテルとして、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどを;アルコールとして、例えば1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどを;それぞれ挙げることができる。これらのうち非水溶性の有機溶媒を用いることが好ましい。なお、これらの有機溶媒は、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
加水分解縮合反応における有機溶媒の使用割合は、反応に使用する全シラン化合物100重量部に対して、好ましくは10〜10,000重量部であり、より好ましくは50〜1,000重量部である。
【0028】
上記の加水分解・縮合反応は、上記の如きシラン化合物を有機溶媒に溶解し、この溶液を有機塩基および水と混合して、例えば油浴などにより加熱して実施することが好ましい。加水分解・縮合反応時には、加熱温度を130℃以下とすることが好ましく、40〜100℃とすることがより好ましい。加熱時間は、0.5〜12時間とすることが好ましく、1〜8時間とすることがより好ましい。加熱中は、混合液を撹拌してもよいし、還流下に置いてもよい。また、反応終了後において、反応液から分取した有機溶媒層を水で洗浄することが好ましい。この洗浄に際しては、少量の塩を含む水(例えば、0.2重量%程度の硝酸アンモニウム水溶液など)を用いて洗浄することにより、洗浄操作が容易になる点で好ましい。洗浄は、洗浄後の水層が中性になるまで行い、その後、有機溶媒層を、必要に応じて無水硫酸カルシウム、モレキュラーシーブなどの乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、目的とするポリオルガノシロキサン、すなわち上記方法(I)の場合にはエポキシ含有ポリオルガノシロキサンを、上記方法(II)の場合には本発明の重合体(A)としての光配向性ポリオルガノシロキサン(A)を、それぞれ得ることができる。
【0029】
上記方法(II)では、上記加水分解・縮合反応により得られたエポキシ含有ポリオルガノシロキサンを、次いで、光配向性基を有するカルボン酸(mc−1)と反応させる。これにより、エポキシ含有ポリオルガノシロキサンが有するエポキシ基またはオキセタニル基と、カルボン酸とが反応して光配向性ポリオルガノシロキサン(A)を得ることができる。この反応に使用するカルボン酸は、カルボン酸(mc−1)単独であってもよいし、カルボン酸(mc−1)と共に、カルボン酸(mc−1)以外のその他のカルボン酸を使用してもよい。
【0030】
・カルボン酸(mc−1)
カルボン酸(mc−1)は、光配向性基およびカルボキシル基を少なくとも1つずつ有する化合物であればよく、特に、光配向性基として桂皮酸構造を有する基を有するカルボン酸であることが好ましい。このようなカルボン酸(mc−1)としては、例えば上記(cn−1)および上記式(cn−2)のそれぞれで表される基における結合手の部分に水素原子が結合したカルボン酸などを挙げることができる。より具体的には、例えば上記式(cn−1)の具体例として挙げたそれぞれの基、および上記式(cn−2)の具体例として挙げたそれぞれの基における結合手に水素原子が結合したカルボン酸などを挙げることができる。
【0031】
なお、上記式(cn−1)および上記式(cn−2)のそれぞれで表される基の結合手に水素原子が結合した化合物について、その合成方法は特に限定されず、従来公知の方法を組み合わせて合成することができる。代表的な合成方法としては、例えば塩基性条件下、ハロゲン原子で置換されたベンゼン環骨格を有する化合物と、(メタ)アクリル酸またはその誘導体とを遷移金属触媒の存在下で反応させる方法;塩基性条件下、ベンゼン環の水素原子がハロゲン原子で置換された桂皮酸と、ハロゲン原子で置換されたベンゼン環骨格を有する化合物とを遷移金属触媒の存在下で反応させる方法;等が挙げられる。
【0032】
上記反応に使用するその他のカルボン酸としては、光配向性基を有さないカルボン酸である限りその構造は特に限定せず、目的とする重合体(A)に応じて適宜選択することができる。例えば、その他のカルボン酸として(メタ)アクリロキシ基を有するカルボン酸(mc−2)を用いることにより、(メタ)アクリロキシ基を側鎖に有する光配向性ポリオルガノシロキサン(A)を合成することができる。このようなカルボン酸(mc−2)の具体例としては、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、シス−1,2,3,4−テトラヒドロフタル酸無水物などの不飽和多価カルボン酸無水物;などを挙げることができる。カルボン酸(mc−2)としては、これらのうちから選択される1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、光配向性ポリオルガノシロキサン(A)の合成に際して使用するその他のカルボン酸としては、上記カルボン酸(mc−2)以外の化合物を必要に応じて使用することができる。このようなその他のカルボン酸としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、メチル安息香酸等が挙げられる。
【0033】
エポキシ含有ポリオルガノシロキサンとカルボン酸との反応におけるカルボン酸(mc−1)の使用割合については、ポリオルガノシロキサン1gあたりの光配向性基のモル数が上記好ましい数値範囲となるように、カルボン酸(mc−1)とその他のカルボン酸との使用割合を調整することが好ましい。また、カルボン酸(mc−2)の使用割合については、得られるポリオルガノシロキサンの(メタ)アクリロキシ基の濃度が上記好ましい数値範囲となるように調整することが好ましい
【0034】
エポキシ含有ポリオルガノシロキサンとカルボン酸との反応は、好ましくは触媒および有機溶媒の存在下で行うことができる。ここで、エポキシ含有ポリオルガノシロキサンと反応させるカルボン酸の使用割合としては、ポリオルガノシロキサンが有するエポキシ基およびオキセタニル基の合計1モルに対して、0.001〜1.5モルとすることが好ましく、0.01〜1モルとすることがより好ましく、0.05〜0.9モルとすることが更に好ましい。
【0035】
上記反応に使用する触媒としては、例えば有機塩基、エポキシ化合物の反応を促進するいわゆる硬化促進剤として公知の化合物などを用いることができる。
上記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロールの如き1〜2級有機アミン;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセンの如き3級有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級有機アミン;などを挙げることができる。有機塩基としては、これらのうち、3級有機アミンまたは4級有機アミンが好ましい。
また、上記硬化促進剤としては、例えばベンジルジメチルアミンなどの3級アミン;2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物;ジフェニルフォスフィンなどの有機リン化合物;ベンジルトリフェニルフォスフォニウムクロライドなどの4級フォスフォニウム塩;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7などのジアザビシクロアルケン;オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫などの有機金属化合物;テトラエチルアンモニウムブロマイドなどの4級アンモニウム塩;三フッ化ホウ素などのホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫などの金属ハロゲン化合物;などを挙げることができるほか、潜在性硬化促進剤として公知のものを使用することができる。
上記触媒は、カルボン酸と反応させるポリオルガノシロキサン100重量部に対して、好ましくは100重量部以下、より好ましくは0.01〜100重量部、更に好ましくは0.1〜20重量部の割合で使用することができる。
【0036】
エポキシ含有ポリオルガノシロキサンとカルボン酸との反応において使用することのできる有機溶媒としては、例えば炭化水素、エーテル、エステル、ケトン、アミド、アルコール等を挙げることができる。これらのうち、原料および生成物の溶解性ならびに生成物の精製のしやすさの観点から、エーテル、エステル、ケトンが好ましく、特に好ましい溶媒の具体例として、2−ブタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトンおよび酢酸ブチル等を挙げることができる。当該有機溶媒は、固形分濃度(反応溶液中の溶媒以外の成分の合計重量が、溶液の全重量に対して占める割合)が、0.1重量%以上となる割合で使用することが好ましく、5〜50重量%となる割合で使用することがより好ましい。
反応温度は、好ましくは0〜200℃であり、より好ましくは50〜150℃である。反応時間は、好ましくは0.1〜50時間であり、より好ましくは0.5〜20時間である。また、反応終了後においては、反応液から分取した有機溶媒層を水で洗浄することが好ましい。水洗後、有機溶媒層を、必要に応じて適当な乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、目的とする光配向性ポリオルガノシロキサン(A)を得ることができる。なお、上記方法(I)によれば、エポキシ基およびオキセタニル基の少なくともいずれかとカルボン酸との反応を利用して光配向性基を導入していることから、光配向性基とともに水酸基を有する重合体(A)としての光配向性ポリオルガノシロキサン(A)を得ることができる。
【0037】
上記光配向性ポリオルガノシロキサン(A)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、形成される液晶配向膜の液晶配向性を良好にするとともに、その液晶配向性の経時的安定性を確保するといった観点から、1,000〜20,000であることが好ましく、3,000〜15,000であることがより好ましい。
【0038】
[光配向性基を有する(メタ)アクリル系重合体]
本発明において、重合体(A)としての光配向性基を有する(メタ)アクリル系重合体(以下、「光配向性(メタ)アクリル系重合体(A)」ともいう。)は、例えば、(I)エポキシ基およびオキセタニル基の少なくともいずれかを有する(メタ)アクリル系単量体(ma−1)、または当該(メタ)アクリル系単量体(ma−1)とその他の(メタ)アクリル系単量体(ma−2)との混合物を重合開始剤の存在下で重合させた後、その得られた重合体(以下、「エポキシ含有(メタ)アクリル系重合体」ともいう。)と、光配向性基を有するカルボン酸(mc−1)とを反応させる方法によって得ることができる。
【0039】
上記(メタ)アクリル系単量体(ma−1)としては、例えばエポキシ基およびオキセタニル基の少なくともいずれかを有する不飽和カルボン酸エステルを挙げることができる。その具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル、α−エチルアクリル酸3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−メチル−3−オキセタニルメチル、(メタ)アクリル酸6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸6,7−エポキシヘプチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−メチル−3−オキセタニルメチルおよびアクリル酸4−ヒドロキシブチルグリシジルエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。なお、(メタ)アクリル系単量体(ma−1)としては、上記のものを一種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
また、(メタ)アクリル系単量体(ma−2)は、エポキシ基を有さない不飽和化合物であり、例えば不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステル、不飽和多価カルボン酸無水物などが挙げられる。それらの具体例としては、不飽和カルボン酸として、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ω−カルボキシポリカプロラクトン、クロトン酸、α−エチルアクリル酸、α−n−プロピルアクリル酸、α−n−ブチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等を;
不飽和カルボン酸エステルとして、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−イソブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸オクトキシポリエチレングリコール、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル:α−メトキシアクリル酸メチル、α−エトキシアクリル酸メチル等のα−アルコキシアクリル酸エステル:クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等のクロトン酸エステル等を;
不飽和多価カルボン酸無水物として、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、シス−1,2,3,4−テトラヒドロフタル酸無水物等を;それぞれ挙げることができる。なお、(メタ)アクリル系単量体(ma−2)としては、上記のものを一種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
光配向性(メタ)アクリル系重合体(A)を合成するのに際し、エポキシ含有(メタ)アクリル系重合体1gあたりのエポキシ基およびオキセタニル基の合計量(モル数)は、5.0×10
−5以上であることが好ましく、1.0×10
−4〜1.0×10
−2モル/gであることがより好ましく、5.0×10
−4〜5.0×10
−3であることが更に好ましい。したがって、(メタ)アクリル系単量体(ma−1)の使用割合については、(メタ)アクリル系重合体の1gあたりのエポキシ基およびオキセタニル基の合計のモル数が上記数値範囲となるように調整することが好ましい。
なお、合成に使用するモノマーとしては、本発明の効果を奏する範囲内において、上記(メタ)アクリル系単量体(ma−1)および(ma−2)以外に、例えば1,3−ブタジエンやイソプレン等のビニル系単量体、スチレン等のスチレン系単量体、N−イソプロピルアクリルアミドやN,N−ジメチルメタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド化合物、メチルビニルケトンやエチルビニルケトン等の不飽和ケトン化合物などを含んでいてもよい。
【0042】
上記(メタ)アクリル系単量体を用いた重合反応はラジカル重合により行うことが好ましい。当該重合反応に際して使用する重合開始剤としては、ラジカル重合に際して通常使用する開始剤を挙げることができ、例えば2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1’−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物;過酸化水素;これらの過酸化物と還元剤とからなるレドックス型開始剤等が挙げられる。これらの中でもアゾ化合物が好ましく、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)がより好ましい。重合開始剤としては、これらのものを一種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
重合開始剤の使用割合は、反応に使用する全モノマー100重量部に対して、0.01〜50重量部とすることが好ましく、0.1〜40重量部とすることがより好ましい。
【0043】
上記(メタ)アクリル系単量体の重合反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。当該反応に使用する有機溶媒としては、例えばアルコール、エーテル、ケトン、アミド、エステル、炭化水素化合物などが挙げられる。これらの中でもアルコールおよびエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも一種を使用することが好ましく、多価アルコールの部分エーテルを使用することがより好ましい。その好ましい具体例としては、例えばジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどを挙げることができる。なお、有機溶媒としてはこれらを一種単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0044】
上記(メタ)アクリル系単量体の重合反応に際し、反応温度は、30℃〜120℃とすることが好ましく、60〜110℃とすることがより好ましい。反応時間は、1〜36時間とすることが好ましく、2〜24時間とすることがより好ましい。また、有機溶媒の使用量(a)は、反応に使用するモノマーの合計量(b)が、反応溶液の全体量(a+b)に対して、0.1〜50重量%になるような量にすることが好ましい。
【0045】
このようにしてエポキシ基含有の(メタ)アクリル系重合体を含有する溶液を得ることができる。この反応溶液は、そのままカルボン酸(mc−1)との反応に供してもよく、必要に応じて反応溶液を濃縮または希釈した後、カルボン酸(mc−1)との反応に供してもよい。また、上記反応溶液中に含まれるエポキシ含有(メタ)アクリル系重合体を単離したうえでカルボン酸(mc−1)との反応に供してもよい。工程数の削減を図る観点からすると、エポキシ含有(メタ)アクリル系重合体を反応溶液中に含有させたままカルボン酸(mc−1)との反応に供することが好ましい。
【0046】
こうして得られたエポキシ含有(メタ)アクリル系重合体に対し、次いで、光配向性基を有するカルボン酸(mc−1)を反応させる。当該カルボン酸(mc−1)としては、エポキシ含有ポリオルガノシロキサンとカルボン酸との反応に使用する光配向性基を有するカルボン酸として例示した化合物の説明を適用することができる。また、当該反応に使用するカルボン酸としては、上記カルボン酸(mc−1)を単独で使用してもよいし、あるいは上記カルボン酸(mc−1)以外のその他のカルボン酸を併用してもよい。ここで使用するその他のカルボン酸としては、エポキシ含有ポリオルガノシロキサンとカルボン酸との反応で例示したその他のカルボン酸を挙げることができる。
【0047】
上記エポキシ含有(メタ)アクリル系重合体とカルボン酸との反応は、好ましくは触媒および有機溶媒の存在下で行うことができる。ここで、反応に使用する触媒としては、例えば上記エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンとカルボン酸との反応に使用できる触媒として例示した化合物を挙げることができる。これらの中でも4級アンモニウム塩であることが好ましい。触媒の使用量は、カルボン酸と反応させる(メタ)アクリル系重合体100重量部に対して、好ましくは100重量部以下、より好ましくは0.01〜100重量部以下、更に好ましくは0.1〜20重量部である。
【0048】
反応に使用する有機溶媒としては、上記(メタ)アクリル系単量体の重合に際し使用することができる有機溶媒の例示を適用することができ、中でもエステルであることが好ましい。当該有機溶媒は、固形分濃度(反応溶液中の溶媒以外の成分の合計重量が、溶液の全重量に対して占める割合)が、0.1重量%以上となる割合で使用することが好ましく、5〜50重量%となる割合で使用することがより好ましい。
上記エポキシ含有(メタ)アクリル系重合体とカルボン酸との反応に際し、反応温度は、0〜200℃とすることが好ましく、50〜150℃とすることがより好ましい。反応時間は、0.1〜50時間とすることが好ましく、0.5〜20時間とすることがより好ましい。
【0049】
こうして本発明における重合体(A)としての光配向性(メタ)アクリル系重合体(A)として、不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸エステルの少なくともいずれかに由来する構造単位を主鎖に含み、かつ光配向性基を有する重合体を含有する溶液を得ることができる。この反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれる光配向性(メタ)アクリル系重合体(A)を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離した光配向性(メタ)アクリル系重合体(A)を精製した上で液晶配向剤の調製に供してもよい。光配向性(メタ)アクリル系重合体(A)の単離および精製は公知の方法に従って行うことができる。
【0050】
なお、本発明における光配向性(メタ)アクリル系重合体(A)を合成する方法は上記(I)の方法に限定しない。例えば、(II)光配向性基を有する(メタ)アクリル系単量体、または当該(メタ)アクリル系単量体とその他の(メタ)アクリル系単量体との混合物を重合開始剤の存在下で重合させる方法などによっても得ることができる。
【0051】
上記光配向性(メタ)アクリル系重合体(A)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、形成される液晶配向膜の液晶配向性を良好にするとともに、その液晶配向性の経時的安定性を確保するといった観点から、250〜500,000であることが好ましく、500〜100,000であることがより好ましく、1,000〜50,000であることが更に好ましい。
【0052】
<シラン化合物(B)>
本発明の液晶配向剤は、(メタ)アクリロキシ基、ビニル基、イソシアネート基、アミノ基、チオール基およびエポキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基(以下、「特定官能基」ともいう。)を有するシラン化合物(B)を含有する。このような特定官能基を有するシラン化合物(B)を液晶配向剤中に含有させることにより、基板との密着性が良好であり、かつ液晶配向性が良好な液晶配向膜を得ることができる。
【0053】
本発明の液晶配向剤の調製に使用するシラン化合物(B)としては、上記の特定官能基を有する限りその余の構造は特に限定しないが、例えば下記式(b−1)で表される化合物、上記特定官能基を有する有機ポリマーとアルコキシシリル基などの反応性シリル基とが結合してなるシラン化合物等を挙げることができる。
【化6】
(式(b−1)中、X
1は、(メタ)アクリロキシ基、ビニル基、イソシアネート基、アミノ基、チオール基、グリシドキシ基またはエポキシシクロヘキシル基である。R
7は、炭素数1〜5のアルキル基であり、R
8は、炭素数1〜5のアルキル基又は*−CO−R
I(但し、R
Iは、炭素数1〜5のアルキル基であり、「*」は酸素原子との結合手を示す。)である。R
9は、X
1が(メタ)アクリロキシ基、イソシアネート基、アミノ基、チオール基、グリシドキシ基またはエポキシシクロヘキシル基である場合、炭素数1〜10の2価の炭化水素基であり、X
1がビニル基である場合、単結合または炭素数1〜10の2価の炭化水素基である。nは0〜2の整数である。但し、nが0または1の場合、複数のR
8は互いに同じでも異なっていてもよく、nが2の場合、複数のR
7は互いに同じでも異なっていてもよい。)
【0054】
上記式(b−1)について、R
7、R
8およびR
Iの炭素数1〜5のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基を挙げることができ、これらは直鎖状であっても分岐状であってもよい。R
7、R
8およびR
Iのアルキル基は、炭素数1〜3であることが好ましく、炭素数1または2であることがより好ましい。
R
9は、炭素数1〜10の2価の炭化水素基であり、その具体例としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基などの直鎖状または分岐状のアルカンジイル基;シクロヘキシレン基などの2価の脂環式炭化水素基、フェニレン基などの2価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。R
9としては、炭素数2〜6であることが好ましい。
X
1は、(メタ)アクリロキシ基、ビニル基、イソシアネート基、アミノ基、チオール基、またはエポキシ含有基(グリシドキシ基、エポキシシクロヘキシル基)である。但し、ビニル基については(メタ)アクリロキシ基が有する不飽和二重結合は該当しないものとする。また、ここでいう「アミノ基」は、1級アミノ基、2級アミノ基及び3級アミノ基を含む。X
1は、塗膜の基板に対する密着性の観点から、これらの中でも(メタ)アクリロキシ基、ビニル基、エポキシ含有基、1級アミノ基またはイソシアネート基であることが好ましく、(メタ)アクリロキシ基、エポキシ含有基またはイソシアネート基であることがより好ましく、(メタ)アクリロキシ基またはイソシアネート基であることが更に好ましい。
nは0〜2の整数であり、0または1が好ましい。
【0055】
このような上記式(b−1)で表される化合物の好ましい具体例としては、(メタ)アクリロキシ基を有するシラン化合物として、例えば3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルトリエトキシシラン等を;
ビニル基を有するシラン化合物として、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルメチルジメトキシシラン、p−スチレントリメトキシシラン、p−スチレントリエトキシシラン等を;
イソシアネート基を有するシラン化合物として、例えば3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等を;
アミノ基を有するシラン化合物として、例えばN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−メチル−3−(トリメトキシシリル)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどを;
チオール基を有する化合物として、例えば3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどを;
エポキシ含有基を有する化合物として、例えば上記シラン化合物(ms−1)として例示した化合物などを;それぞれ挙げることができる。なお、シラン化合物(B)は、有機化学の定法を適宜組み合わせて合成したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
また、反応性シリル基と有機ポリマーとが結合してなるシラン化合物としては、例えば(メタ)アクリロキシ基を1つ又は2つ以上有する化合物を挙げることができ、具体的には、品名「X−12−1048」、「X−12−1049」、「X−12−1050」(以上、信越化学(株)製)などのシランカップリング剤を使用することができる。
【0056】
シラン化合物(B)としては、これらの中でも、(メタ)アクリロキシ基を有するシラン化合物、ビニル基を有するシラン化合物、エポキシ含有基を有するシラン化合物、アミノ基を有する化合物およびイソシアネート基を有するシラン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、(メタ)アクリロキシ基を有するシラン化合物、エポキシ含有基を有するシラン化合物およびイソシアネート基を有するシラン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種であることがより好ましく、(メタ)アクリロキシ基を有するシラン化合物およびイソシアネート基を有するシラン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが更に好ましい。
(メタ)アクリロキシ基を有するシラン化合物としては、上記式(b−1)で表されるシラン化合物(但し、X
1は(メタ)アクリロキシ基)及び(メタ)アクリロキシ基を有する有機ポリマーと反応性シリル基とが結合してなるシラン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、基板に対する密着性をより良好にできる点で、上記式(b−1)で表される化合物であることがより好ましい。
【0057】
シラン化合物(B)の配合割合は、液晶配向性を損なうことなく、形成される液晶配向膜の基板に対する密着性の改善効果を好適に得ることができる点において、液晶配向剤中に含まれる重合体(A)100重量部に対して、10〜300重量部とすることが好ましい。その下限値について、密着性の改善効果をより好適に得るには、重合体(A)100重量部に対して、30重量部以上とすることがより好ましく、50重量部以上とすることが更に好ましく、60重量部以上とすることが特に好ましい。上限値については、液晶配向性を維持する観点から、280重量部以下とすることがより好ましく、270重量部以下とすることが更に好ましく、250重量部以下とすることが特に好ましい。
【0058】
<その他の成分>
本発明の液晶配向剤は、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。かかるその他の成分としては、例えば上記重合体(A)以外のその他の重合体、金属キレート化合物、硬化促進剤、界面活性剤、シリカ粒子などを挙げることができる。
【0059】
[その他の重合体]
上記その他の重合体は、溶液特性等の改善のために使用することができる。かかるその他の重合体(A)としては、例えば光配向性基を有さないポリオルガノシロキサン、光配向性基を有さない(メタ)アクリル系重合体、ポリアミック酸、ポリイミド、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体などを挙げることができる。
その他の重合体を液晶配向剤に添加する場合、その配合割合は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100重量部に対して、50重量部以下とすることが好ましく、0.1〜40重量部とすることがより好ましく、0.1〜30重量部とすることが更に好ましい。
【0060】
[金属キレート化合物]
上記金属キレート化合物は、液晶配向剤の重合体成分がエポキシ構造(エポキシ基またはオキセタニル基を有する構造)を有する場合に、エポキシ構造間の架橋反応に対する触媒作用を有する成分であり、低温処理によって形成した膜の機械的強度を担保することを目的として液晶配向剤中に含有される。
金属キレート化合物としては、アルミニウム、チタニウムおよびジルコニウムから選択される金属のアセチルアセトン錯体またはアセト酢酸錯体が好ましい。具体的には、アルミニウムのキレート化合物として、例えばジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトネートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトネート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトネート)アルミニウム、モノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどを;チタニウムのキレート化合物として、例えばジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)チタニウムなどを;ジルコニウムのキレート化合物として、例えばトリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトネート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどを、それぞれ挙げることができる。金属キレート化合物としては、これらのうちから選択される1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
金属キレート化合物としては、これらのうち、アルミニウムのキレート化合物を使用することが好ましく、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(アセチルアセトネート)アルミニウムおよびトリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムよりなる群から選択される1種以上を使用することがより好ましく、特にトリス(アセチルアセトネート)アルミニウムを使用することが好ましい。
上記金属キレート化合物の使用割合は、エポキシ構造を含む構成成分の合計100重量に対して、好ましくは50重量部以下であり、より好ましくは0.1〜40重量部であり、1〜30重量部とすることが更に好ましい。
【0062】
[硬化促進剤]
上記硬化促進剤は、液晶配向剤中の重合体成分がエポキシ構造を有している場合に、エポキシ構造間の架橋反応を促進する機能を有する成分であり、形成される液晶配向膜の機械的強度および液晶配向性の経時的安定性を担保するために液晶配向剤中に含有される。
硬化促進剤としては、例えばフェノール基、シラノール基、チオール基、リン酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基などを有する化合物を使用することができる。これらのうち、フェノール基、シラノール基またはカルボキシル基を有する化合物が好ましく、フェノール基またはシラノール基を有する化合物がより好ましい。
フェノール基またはシラノール基を有する化合物の具体例としては、フェノール基を有する硬化促進剤として、例えばシアノフェノール、ニトロフェノール、メトキシフェノキシフェノール、チオフェノキシフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシナフチル)スルホン、(3−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、フェニル(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、(メトキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4−ベンジルフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどを;
シラノール基を有する硬化促進剤として、例えばトリメチルシラノール、トリエチルシラノール、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジシロキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシジメチルシリル)ベンゼン、トリフェニルシラノール、トリ(p−トリル)シラノール、トリ(m−トリフルオロメチルフェニル)シラノール、トリ(o−トリフルオロメチルフェニル)シラノール、トリ(m−フルオロフェニル)シラノール、トリ(o−フルオロフェニル)シラノール、ジフェニルシランジオール、ジ(o−トリル)シランジオールなどを、それぞれ挙げることができる。なお、硬化促進剤としては、これらのうちから選択される1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0063】
硬化促進剤としては、シラノール基を有する化合物を使用することが特に好ましい。硬化促進剤の使用割合は、エポキシ構造を含む構成成分の合計100重量に対して、好ましくは50重量部以下であり、より好ましくは0.1〜40重量部であり、1〜30重量部とすることが更に好ましい。
【0064】
[界面活性剤]
上記界面活性剤は、液晶配向剤の基板に対する塗布性を向上させることを目的として液晶配向剤中に含有させることができる。このような界面活性剤としては、例えばノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン界面活性剤、ポリアルキレンオキシド界面活性剤、含フッ素界面活性剤などを挙げることができる。なお、界面活性剤としては、これらのうちから選択される1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
界面活性剤の使用割合は、液晶配向剤の全量100重量部に対して、10重量部以下とすることが好ましく、1重量部以下とすることがより好ましい。
【0065】
[シリカ粒子]
上記シリカ粒子は、基板と塗膜との密着性を向上させることを目的として液晶配向剤中に含有させることができる。シリカ粒子の好ましい粒子径は1〜200nm、より好ましくは2〜100nm、特に好ましくは5〜50nmである。また、その形状は球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状または不定形状の粉体の中から選ばれ、好ましくは球状のシリカ粒子が選ばれる。
【0066】
シリカ粒子の比表面積は、好ましくは0.1〜3000m
2/gであり、より好ましくは10〜1500m
2/gである。これらシリカ粒子の使用形態は、乾燥状態の粉末であってもよく、または水もしくは有機溶剤で分散した状態であってもよい。後者の場合、コロイダルシリカとして当業界に知られている微粒子状のシリカ粒子の分散液を直接用いることができる。特に透明性を追求する目的ではコロイダルシリカの使用が好ましい。
【0067】
コロイダルシリカの分散溶媒が水の場合、その水素イオン濃度はpH値として2〜10の範囲であり、好ましくは3〜7の酸性コロイダルシリカが用いられる。また、コロイダルシリカの分散溶媒が有機溶剤の場合、有機溶剤としてメタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、エチレングリコ−ル、ブタノ−ル、エチレングリコ−ルモノプロピルエ−テル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド等の溶剤を単独で使用することができる。あるいは、当該有機溶剤と、これらと相溶する有機溶剤および水の少なくともいずれかとの混合物を用いてもよい。好ましい分散溶剤はメタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、メチルエチルケトン、キシレン等である。
【0068】
シリカ粒子として市販されている商品としては、例えばコロイダルシリカとしては、メタノ−ルシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、STN、ST−O、ST−50、ST−OL(以上、日産化学工業(株)製)等を挙げることができる。また粉体シリカとしては、AEROSIL130、AEROSIL300、AEROSIL380、AEROSILTT600、AEROSILOX50(以上、日本アエロジル(株)製)、シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122(以上、旭硝子(株)製)、E220A、E220(以上、日本シリカ工業(株)製)、SYLYSIA470(富士シリシア(株)社製)、SGフレ−ク(日本板硝子(株)製)等を挙げることができる。
【0069】
シリカ粒子の使用割合は、液晶配向剤に含有される重合体成分の全体量100重量部に対して、5〜50重量部とすることが好ましく、10〜40重量部とすることがより好ましい。また、シリカ粒子と組み合わせるシラン化合物(B)は上記に該当するものであれば特に限定しないが、シリカ粒子の添加による密着性向上の効果を十分に得ることができる点で、エポキシ基を有するシラン化合物とシリカ粒子との組み合わせとすることが好ましい。より好ましくは、上記式(b−1)で表される化合物においてX
1がグリシドキシ基またはエポキシシクロヘキシル基である化合物との組み合わせであり、更に好ましくは、X
1がグリシドキシ基である化合物との組み合わせである。
【0070】
本発明の液晶配向剤は、上記の重合体(A)、シラン化合物(B)および任意に使用されるその他の成分が、好ましくは適当な溶媒中に分散または溶解してなる液状の組成物として調製される。液晶配向剤の調製に際し使用することのできる溶媒は、有機溶媒とすることが好ましく、例えばアルコール、エーテル、ケトン、アミド、エステル、炭化水素などを好適に使用することができる。それらの具体例としては、上記アルコールとして、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのモノアルコール:エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールなどの多価アルコール:エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルなどの多価アルコールの部分エステル等を;
【0071】
エーテルとして、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルなどを;
ケトンとして、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトンなどを;
アミドとして、例えばN,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドンなどを;
【0072】
エステルとして、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸t−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルなどを;
炭化水素として、例えばn−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、i−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素:ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−i−プロピルベンセン、n−アミルナフタレンなどの芳香族炭化水素等を;それぞれ挙げることができる。なお、溶媒としては、これらのうちから選択される1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0073】
上記溶媒としては、これらのうち、多価アルコールの部分エステル、エーテル、ケトンおよびエステルから選択される1種以上を使用することが好ましい。多価アルコールの部分エステルとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテルが;エーテルとしては、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルが;ケトンとしては、メチルエチルケトン、シクロペンタノンおよびシクロヘキサノンから選択される1種以上が;エステルとしては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸t−ブチル、アセト酢酸エチルおよび酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテルから選択される1種以上が、それぞれより好ましい。
【0074】
本発明の液晶配向剤における溶媒は、使用する基板に対するダメージ、形成される液晶配向膜の基板への密着性などを勘案のうえ、適宜に設定されるべきである。適正な溶媒種または混合溶媒の組成は、当業者による予備実験によって容易に知ることができる。
溶媒の使用割合は、液晶配向剤の塗布性、および形成される塗膜の膜厚を適度にする観点から、液晶配向剤の固形分濃度(液晶配向剤中の溶媒以外の全成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)が0.2〜10重量%となる割合とすることが好ましく、3〜10重量%となる割合とすることがより好ましい。
【0075】
<液晶配向膜および位相差フィルム>
上記に説明した本発明の液晶配向剤を用いることにより液晶配向膜を製造することができる。本発明の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜は、位相差フィルムの製造用の液晶配向膜として好適である。以下に、本発明の液晶配向剤を用いて位相差フィルムを製造する方法について説明する。本発明の位相差フィルムは、以下の工程(1)〜(3)を経ることによって製造することができる。
【0076】
[工程(1)液晶配向剤による塗膜の形成]
先ず、本発明の液晶配向剤を基板上に塗布して塗膜を形成する。ここで使用される基板としては、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネートなどの合成樹脂からなる透明基板を好適に例示することができる。これらのうち、TACは、液晶表示素子における偏光フィルムの保護層として一般的に使用されている。また、ポリメチルメタクリレートは、溶媒の吸湿性が低い点、光学特性が良好である点および低コストである点において、基板として好ましく使用することができる。
【0077】
位相差フィルムは、多くの場合、偏光フィルムと組み合わせて使用される。このとき、所期する光学特性を発揮できるように、偏光フィルムの偏光軸に対する角度を特定の方向に精密に制御して位相差フィルムを貼り合わせる必要がある。従って、ここで、所定角度の方向に液晶配向能を有する液晶配向膜を、TACフィルムやポリメチルメタクリレートなどの基板上に形成することにより、位相差フィルムを偏光フィルム上にその角度を制御しつつ貼り合わせる工程を省略することができる。またこれにより、液晶表示素子の生産性の向上に寄与することができる。所定角度の方向に液晶配向能を有する液晶配向膜を形成するには、本発明の液晶配向剤を用いて光配向法によって行うことができる。
【0078】
液晶配向剤の塗布に使用する基板に対しては、基板表面と塗膜との密着性を更に良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成する面において、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、プライマー処理などの従来公知の前処理が実施されていてもよい。本発明の液晶配向剤は特に、塗膜を形成する面にプライマー処理が施された基板に塗布することにより、当該液晶配向剤により形成された液晶配向膜と基板との密着性を優れたものとすることができ好ましい。また、プライマー処理が施されたアクリル基板を特に好ましく用いることができる。プライマー処理としては、例えばウレタン系のプライマーや、シリコン系のプライマーによる処理が好ましく行われる。
なお、前処理が施された基板としては、前処理が施されてない基板を準備し、本発明の液晶配向剤を塗布する前に当該基板に対して上記いずれかの前処理を行ってもよいし、あるいは市販品を用いてもよい。
【0079】
基板上への液晶配向剤の塗布は、適宜の塗布方法によることができ、例えばロールコーター法、スピンナー法、印刷法、インクジェット法、バーコーター法、エクストリューションダイ法、ダイレクトグラビアコーター法、チャンバードクターコーター法、オフセットグラビアコーター法、一本ロールキスコーター法、小径のグラビアロールを使ったリバースキスコーター法、3本リバースロールコーター法、4本リバースロールコーター法、スロットダイ法、エアードクターコーター法、正回転ロールコーター法、ブレードコーター法、ナイフコーター法、含浸コーター法、MBコーター法、MBリバースコーター法などを採用することができる。
塗布後、塗布面を加熱(ベーク)して塗膜を形成する。この時の加熱温度は、40〜150℃とすることが好ましく、80〜140℃とすることがより好ましい。加熱時間は、0.1〜15分とすることが好ましく、1〜10分とすることがより好ましい。
なお、従来知られている液晶配向膜材料は、良好な密着性および液晶配向性を確保するために、この塗膜形成の時点で120℃程度以上の加熱を要していた。これに対し、本発明の液晶配向剤は、この加熱温度を例えば100℃としても、良好な密着性および液晶配向性を示すことができる。従って、本発明の液晶配向剤は、これを適用する基板の耐熱性をさほど考慮する必要がなく、基板選択の自由度が高くなるという利点を有する。
基板上に形成される塗膜の膜厚は、好ましくは1〜1,000nmであり、より好ましくは5nm〜500nmである。
【0080】
[工程(2)光照射工程]
次いで、上記のようにして基板上に形成された塗膜に対し光を照射することにより、塗膜に液晶配向能を付与して液晶配向膜とする。ここで、照射する光としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線、可視光線などを挙げることができる。これらのうち、300〜400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。照射光は偏光であっても非偏光であってもよい。偏光としては、直線偏光を含む光を使用することが好ましい。
光の照射は、用いる光が偏光である場合には、基板面に垂直の方向から行っても斜め方向から行ってもよく、あるいはこれらを組み合わせて行ってもよい。非偏光を照射する場合には、基板面に対して斜めの方向から行う必要がある。
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、水銀−キセノンランプ(Hg−Xeランプ)などを挙げることができる。偏光は、これらの光源を、例えばフィルター、回折格子などと併用する手段などにより得ることができる。
光の照射量は、0.1mJ/cm
2以上1,000mJ/cm
2未満とすることが好ましく、1〜500mJ/cm
2とすることがより好ましく、2〜200mJ/cm
2とすることがさらに好ましい。なお、本発明の液晶配向剤を用いると、光照射量が500mJ/cm
2以下、さらに200mJ/cm
2以下であっても、光配向法によって良好な液晶配向能を付与することができ、液晶配向膜の製造コストの削減に資する。
【0081】
[工程(3)液晶層の形成]
次いで、上記のようにして光照射した後の塗膜上に、重合性液晶を塗布して硬化させる。これにより、重合性液晶を含む塗膜(液晶層)を形成する。ここで使用される重合性液晶は、加熱および光照射のうちの少なくとも1種の処理によって重合する液晶化合物または液晶組成物である。このような重合性液晶としては、従来公知のものを使用することができ、具体的には、例えば非特許文献1(「UVキュアラブル液晶とその応用」、液晶、第3巻第1号(1999年)、pp34〜42)に記載されているネマチック液晶化合物を挙げることができる。また、コレステリック液晶;ディスコティック液晶;カイラル剤を添加されたツイストネマティック配向型液晶などであってもよい。重合性液晶は、複数の液晶化合物の混合物であってもよい。重合性液晶は、さらに、公知の重合開始剤、適当な溶媒などを含有する組成物であってもよい。
形成された液晶配向膜上に上記のような重合性液晶を塗布するには、例えばバーコーター法、ロールコーター法、スピンナー法、印刷法、インクジェット法などの適宜の塗布方法を採用することができる。
【0082】
次いで、上記のように形成された重合性液晶の塗膜に対して、加熱および光照射から選択される1種以上の処理を施すことにより、該塗膜を硬化して液晶層を形成する。これらの処理を重畳的に行うことが、良好な配向が得られることから好ましい。
塗膜の加熱温度は、使用する重合性液晶の種類によって適宜に選択されるべきである。例えばメルク社製のRMS03−013Cを使用する場合、40〜80℃の範囲の温度で加熱することが好ましい。加熱時間は、好ましくは0.5〜5分である。
照射光としては、200〜500nmの範囲の波長を有する非偏光の紫外線を好ましく使用することができる。光の照射量としては、50〜10,000mJ/cm
2とすることが好ましく、100〜5,000mJ/cm
2とすることがより好ましい。
形成される液晶層の厚さとしては、所望の光学特性によって適宜に設定される。例えば波長540nmの可視光における1/2波長板を製造する場合は、形成した位相差フィルムの位相差が240〜300nmとなるような厚さが選択され、1/4波長板であれば、位相差が120〜150nmとなるような厚さが選択される。目的の位相差が得られる液晶層の厚さは、使用する重合性液晶の光学特性によって異なる。例えばメルク製のRMS03−013Cを使用する場合、1/4波長板を製造するための厚さは、0.6〜1.5μmの範囲である。
【0083】
<液晶表示素子>
上記のようにして得られた位相差フィルムは、液晶表示素子の位相差フィルムとして好ましく適用することができる。本発明の液晶配向剤を用いて製造された位相差フィルムが適用される液晶表示素子は、その駆動方式に制限がなく、例えばTN方式、STN方式、IPS方式、FFS方式、VA方式(VA−MVA方式、VA−PVA方式などを含む)などの公知の各種方式であるものとすることができる。
液晶表示素子は、一般に、電極対および液晶配向膜が形成された一対の基板を備え、その基板間に液晶を挟持してなる液晶セルの両面に偏光フィルムが貼付された構造を有する。上記位相差フィルムは、液晶表示素子の視認側に配置された偏光フィルムの外側面に対し、位相差フィルムにおける基板側の面が貼付されて用いられる。従って、位相差フィルムの基板をTAC製またはアクリル基材とし、該位相差フィルムの基板を偏光フィルムの保護膜としても機能させる態様とすることが好ましい。
上記のような本発明の液晶配向剤を用いて製造された位相差フィルムを具備する液晶表示素子は、優れた液晶配向性が長期的に安定して発現するという利点を有する。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0085】
以下の実施例および比較例において、重合体の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnおよびエポキシ当量、ならびに重合体溶液の溶液粘度は以下の方法により測定した。
[重合体の重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mn]
MwおよびMnは、以下の条件におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー(株)製、TSKgelGRCXLII
溶剤:テトラヒドロフラン
温度:40℃
圧力:68kgf/cm
2
[エポキシ当量]
エポキシ当量は、JIS C 2105に記載の塩酸−メチルエチルケトン法により測定した。
[重合体溶液の溶液粘度]
重合体溶液の溶液粘度[mPa・s]は、N−メチル−2−ピロリドンを用い、重合体濃度10重量%に調製した溶液についてE型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
【0086】
<カルボン酸(mc−1)の合成>
[合成例1]
冷却管を備えた500mLの三口フラスコに、1−ブロモ−4−シクロヘキシルベンゼン19.2g、酢酸パラジウム0.18g、トリス(2−トリル)ホスフィン0.98g、トリエチルアミン32.4g、およびジメチルアセトアミド135mLを加えて混合した。次いで、シリンジでアクリル酸7gを混合溶液に加えて撹拌した。この混合溶液を更に120℃で3時間、加熱しながら撹拌した。薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。沈殿物をろ別した後、ろ液を1N塩酸水溶液300mLに注ぎ、沈殿物を回収した。これらの沈殿物を酢酸エチルとヘキサンの1:1(重量比)溶液で再結晶することにより、下記式(1)で表される桂皮酸誘導体(mc−1−1)を10.2g得た。
【化7】
【0087】
<重合体(A)の合成>
[合成例2−1:エポキシ含有ポリオルガノシロキサンの合成]
撹拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた反応容器に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100.0g、メチルイソブチルケトン500gおよびトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で混合しつつ、80℃で6時間反応させた。反応終了後、有機層を取り出し、0.2重量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄したのち、減圧下で溶媒および水を留去することにより、エポキシ含有ポリオルガノシロキサンを粘調な透明液体として得た。
このエポキシ含有ポリオルガノシロキサンについて、
1H−NMR分析を行ったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にオキシラニル基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。このエポキシ含有ポリオルガノシロキサンのMwは2,200、エポキシ当量は186g/モルであった。
【0088】
[合成例2−2:光配向性ポリオルガノシロキサン(A−1)の合成]
100mLの三口フラスコに、合成例2−1で得たエポキシ含有ポリオルガノシロキサン10.1g、アクリル基含有カルボン酸(東亜合成株式会社、商品名「アロニックスM−5300」、アクリル酸ω−カルボキシポリカプロラクトン(重合度n≒2))0.5g、酢酸ブチル20g、合成例1で得た桂皮酸誘導体(mc−1−1)1.5g、およびテトラブチルアンモニウムブロミド0.3gを仕込み、90℃で12時間撹拌した。反応終了後、酢酸ブチル100質量部で希釈し、3回水洗した。この溶液を濃縮し、酢酸ブチルで希釈する操作を2回繰り返し、最終的に光配向性基を有するポリオルガノシロキサン(A−1)を含む溶液を得た。この光配向性ポリオルガノシロキサン(A−1)の重量平均分子量Mwは9,000であった。
【0089】
[合成例2−3:光配向性ポリオルガノシロキサン(A−2)の合成]
100mLの三口フラスコに、合成例2で得たエポキシ含有ポリオルガノシロキサン10.4g、酢酸ブチル20g、合成例1で得た桂皮酸誘導体(mc−1−1)2.0g、およびテトラブチルアンモニウムブロミド0.3gを仕込み、90℃で12時間撹拌した。反応終了後、酢酸ブチル100重量部で希釈し、3回水洗した。この溶液を濃縮し、酢酸ブチルで希釈する操作を2回繰り返し、最終的に光配向性ポリオルガノシロキサン(A−2)を含む溶液を得た。光配向性ポリオルガノシロキサン(A−2)の重量平均分子量Mwは8,500であった。
【0090】
[合成例2−4:光配向性メタクリル系重合体(A−3)の合成]
冷却管と攪拌機を備えたフラスコに、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)1重量部、および溶媒としてジエチレングリコールメチルエチルエーテル180重量部を仕込んだ。ここに、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート70重量部および3−メチル−3−オキセタニルメチルメタクリレート30重量部を加え、フラスコ内を窒素置換した後、緩やかに攪拌を始めた。溶液温度を80℃に上昇させ、この温度を5時間維持することにより、エポキシ基を有するポリメタクリレートを32.8重量%含有する重合体溶液を得た。得られたエポキシ基含有のポリメタクリレートのMnは16,000であった。
別の反応容器中に、上記で得たエポキシ基含有ポリメタクリレートを含む溶液305重量部(ポリメタクリレートに換算して100重量部)、合成例1で得た桂皮酸誘導体(mc−1−1)60重量部、触媒としてテトラブチルアンモニウムブロミド10重量部、および希釈溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150重量部を仕込み、窒素雰囲気下、90℃において12時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100重量部を加えて希釈し、これを3回水洗した。水洗後の有機層を大過剰のメタノール中に投入して重合体を沈殿させ、回収した沈殿物を40℃において12時間乾燥することにより、光配向性ポリメタクリレート(A−3)を得た。
【0091】
[合成例2−5:光配向性ポリオルガノシロキサン(A−4)の合成]
冷却管を備えた50mLの三口フラスコに、(2E)−3−(4−シクロヘキシルフェニル)−2−プロペン酸3.45g、2−{[3−(トリメトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキシラン(C3ES)5.34gおよびトリエチルアミン300mgを仕込み、60℃において12時間撹拌下に反応を行った。得られた反応混合液から減圧下でトリエチルアミンを除去することにより、上記式(ms−2−1)で表されるシラン化合物を黄色い液体として得た。
【0092】
次に、攪拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を装着した別の反応容器に、上記式(ms−2−1)で表される化合物100.0g、メチルイソブチルケトン500g、およびトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温において混合した。次いでここに、滴下漏斗から脱イオン水100gを30分かけて滴下した後、還流下で撹拌しつつ、80℃において6時間反応を行った。
反応終了後、有機層を取り出し、洗浄後の水が中性になるまで0.2重量%硝酸アンモニウム水溶液によって洗浄した後、反応混合物に酢酸ブチル100gを加えて希釈し、これを3回水洗した。水洗後の有機層を減圧下で濃縮した後に酢酸ブチルで希釈する操作を2回繰り返すことにより、光配向性ポリオルガノシロキサン(A−4)を30重量%含有する溶液を得た。得られた光配向性ポリオルガノシロキサン(A−4)のMwは3,500であった。
【0093】
<その他の重合体の合成>
[合成例3:光配向性ポリアミック酸(p−1)の合成]
N−メチル−2−ピロリドン135gに、ジアミンとして下記式(d−1)で表されるジアミン9.5gおよび3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル0.57g、ならびにテトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物4.9gを、300mLの反応容器に加えて溶解し、ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物の合計重量が、反応溶液の全重量に対して10重量%である溶液とし、これを60℃で6時間反応させることにより、光配向性基を有するポリアミック酸(p−1)を10重量%含有する溶液150gを得た。得られた溶液の粘度は17mPa・sであった。
【化8】
【0094】
<液晶配向剤の調製および評価>
[実施例1]
(液晶配向剤の調製)
上記合成例2−2で得た光配向性ポリオルガノシロキサン(A−1)100重量部に、シラン化合物(B)として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学株式会社製、品名「KBM-5103」)150重量部、硬化促進剤としてトリ(p−トリル)シラノール40重量部、金属キレート化合物としてトリス(アセチルアセトネート)アルミニウム(川研ファインケミカル(株)製、品名「アルミキレートA(W)」)10重量部、および溶媒として酢酸ブチルを加えて攪拌した後、孔径1μmのフィルターでろ過することにより、固形分濃度5重量%の液晶配向剤を調製した。なお、得られた液晶配向剤では、光配向性ポリオルガノシロキサン(A−1)が溶媒に十分に溶解していた。
【0095】
(位相差フィルムの製造)
プライマー処理が施されたアクリルフィルム(200mm×100mm、厚さ40μm)の片面全面に、上記で調製した液晶配向剤をバーコーターによって塗布し、温度100℃に調整したオーブン内で1分間ベークして厚さ100nmの塗膜を形成した。この塗膜の表面に、Hg−Xeランプおよびグランテーラープリズムを用いて発生させた波長313nmの輝線を含む直線偏光紫外線10mJ/cm
2を、塗膜面に対して垂直の方向から照射して液晶配向膜を形成した。
次いで、孔径0.2μmのフィルターでろ過した直後の重合性液晶(メルク社製、品名「RMS03−013C」)をバーコーターにより塗布して重合性液晶の塗膜を形成した。温度50℃に調整したオーブン内で1分間ベークした後、Hg−Xeランプから発生させた波長365nmの輝線を含む非偏光の紫外線1,000mJ/cm
2を塗膜面に対して垂直の方向から照射し、重合性液晶を硬化して液晶層を形成することにより位相差フィルムを製造した。
【0096】
(位相差フィルムの評価)
(1)液晶配向性
上記で製造した位相差フィルムの液晶配向性を、クロスニコル下における目視による観察および偏光顕微鏡による観察(倍率2.5倍)によって調べ、液晶配向性を評価した。評価は、目視による観察および偏光顕微鏡による観察の双方で異常ドメインが観察されなかった場合を液晶配向性「優良」、偏光顕微鏡による観察では異常ドメインが観察されたが、目視による観察では異常ドメインが観察されなかった場合を液晶配向性「良好」、目視による観察および偏光顕微鏡による観察の双方で異常ドメインがわずかに観察された場合を液晶配向性「可」、目視による観察および偏光顕微鏡による観察の双方で異常ドメインが明確に観察された場合を液晶配向性「不可」として行った。その結果を下記表1に示す。
(2)密着性
ベーク温度100℃にて製造した上記の位相差フィルムを用いて、液晶配向膜の基板との密着性について評価した。具体的には、ガイドの付いた等間隔スペーサーを用い、カッターナイフにより位相差フィルムの液晶層側の面から切り込みを入れ、10個×10個の格子パターンを形成した。各切込みの深さは、液晶層表面から基板厚さの中ほどまで達するようにした。次いで、上記格子パターンの全面を覆うようにセロハンテープを密着させた後、該セロハンテープを引き剥がした。引き剥がし後の格子パターンの切込み部をクロスニコル下における目視によって観察して密着性を評価した。評価は、切込み線に沿った部分および格子パターンの交差部分に剥離が確認されなかった場合を密着性「優良」、上記部分に剥離が観察された格子目の個数が14個未満であった場合を密着性「良好」、上記部分に剥離が観察された格子目の個数が15個以上50個未満であった場合を密着性「可」、上記部分に剥離が観察された格子目の個数が50個以上であった場合を密着性「不可」として行った。その評価結果を下記表1に示す。なお、この評価方法は、完全剥離した格子目の個数を数えるJIS K 5400よりも厳しい基準の評価である。
【0097】
【表1】
【0098】
表1における成分名の略称は、それぞれ以下の意味である。
[シラン化合物]
S1:3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン
S2:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
S3:多官能シランカップリング剤(品名「X-12-1050」、信越化学(株))
S4:3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン
S5:3−アミノプロピルトリエトキシシラン
S6:3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
S7:ヘキシルトリメトキシシラン
S8:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
なお、表1中の数値は、使用した重合体の全体100重量部に対する各成分の使用量(重量部)を示す。「−」は、当該欄に相当する成分を使用しなかったことを示す。
【0099】
[実施例2]
使用する重合体(A)を上記合成例2−3で得た光配向性ポリオルガノシロキサン(A−2)100重量部に変更した点、およびシラン化合物(B)を3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学株式会社製、品名「KBM-503」)70重量部に変更した点以外は、実施例1と同様にして液晶配向剤を調製した。なお、得られた液晶配向剤では、光配向性ポリオルガノシロキサン(A−2)が溶媒に十分に溶解していた。また、液晶配向剤として上記で調製した液晶配向剤を使用したほかは実施例1と同様にして位相差フィルムを製造し、性能評価を行った。その評価結果を上記表1に示す。
【0100】
[実施例3]
(液晶配向剤の調製)
上記合成例2−4で得た光配向性メタクリル系重合体(A−3)100重量部に、シラン化合物(B)として多官能シランカップリング剤(信越化学株式会社製、品名「X-12-1050」)250重量部、および溶媒として酢酸ブチルを加えて良く攪拌した後、孔径1μmのフィルターでろ過することにより、固形分濃度5重量%の液晶配向剤を調製した。なお、得られた液晶配向剤では、光配向性メタクリル系重合体(A−3)が溶媒に十分に溶解していた。
(位相差フィルムの製造および評価)
液晶配向剤として上記で調製した液晶配向剤を使用した点、および液晶配向剤により形成した塗膜に対する光照射量を10mJ/cm
2から500mJ/cm
2に変更した点以外は、実施例1と同様にして位相差フィルムを製造して評価した。その評価結果を上記表1に示す。
【0101】
[実施例4]
(液晶配向剤の調製)
上記合成例2−5で得た光配向性ポリオルガノシロキサン(A−4)100重量部に、シラン化合物(B)として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学株式会社製、品名「KBM-5103」)180重量部、および溶媒として酢酸ブチルを加えて良く攪拌した後、孔径1μmのフィルターでろ過することにより、固形分濃度5重量%の液晶配向剤を調製した。なお、得られた液晶配向剤では、光配向性ポリオルガノシロキサン(A−4)が溶媒に十分に溶解していた。
(位相差フィルムの製造および評価)
液晶配向剤として上記で調製した液晶配向剤を使用した点、および液晶配向剤により形成した塗膜に対する光照射量を10mJ/cm
2から500mJ/cm
2に変更した点以外は、実施例1と同様にして位相差フィルムを製造し、評価した。その評価結果を上記表1に示す。
【0102】
[実施例5]
使用するシラン化合物(B)を3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学株式会社製、品名「KBE-9007」)150重量部に変更した点以外は、実施例1と同様にして液晶配向剤を調製した。また、液晶配向剤として上記で調製した液晶配向剤を使用したほかは、実施例1と同様にして位相差フィルムを製造し、性能評価を行った。その評価結果を上記表1に示す。
[実施例6]
シラン化合物(B)として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン70重量部の代わりに3−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学株式会社製、品名「KBM-903」)50重量部を添加した点以外は実施例2と同様にして液晶配向剤を調製した。また、液晶配向剤として上記で調製した液晶配向剤を使用したほかは、実施例1と同様にして位相差フィルムを製造し、性能評価を行った。その評価結果を上記表1に示す。
【0103】
[実施例7]
シラン化合物(B)として多官能シランカップリング剤250重量部の代わりに3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学株式会社製、品名「KBM-403」)150重量部を添加した点以外は実施例3と同様にして液晶配向剤を調製した。また、液晶配向剤として上記で調製した液晶配向剤を使用した点、および液晶配向剤により形成した塗膜に対する光照射量を10mJ/cm
2から500mJ/cm
2に変更した点以外は実施例1と同様にして位相差フィルムを製造し、評価した。その評価結果を上記表1に示す。
[実施例8]
シラン化合物(B)として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン150重量部の代わりに3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学株式会社製、品名「KBM-803」)250重量部を添加した点以外は実施例1と同様にして液晶配向剤を調製した。また、液晶配向剤として上記で調製した液晶配向剤を使用したほかは、実施例1と同様にして位相差フィルムを製造し、性能評価を行った。その評価結果を上記表1に示す。
[実施例9]
シラン化合物(B)として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン150重量部の代わりに3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学株式会社製、品名「KBM-403」)100重量部を添加した点、及びシリカ粒子としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、品名「MEK-ST」、粒径10〜20nm、TSC31.6%)20重量部を添加した点以外は実施例1と同様にして液晶配向剤を調製した。また、液晶配向剤として上記で調製した液晶配向剤を使用したほかは実施例1と同様にして位相差フィルムを製造し、性能評価を行った。その評価結果を上記表1に示す。
【0104】
[比較例1]
上記合成例3で得た光配向性ポリアミック酸(p−1)100重量部に、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを加えて良く攪拌した後、孔径1μmのフィルターでろ過することにより固形分濃度5重量%の液晶配向剤を調製した。また、液晶配向剤として上記で調製した液晶配向剤を使用したほかは、実施例1と同様にして位相差フィルムを製造し、評価した。その評価結果を上記表1に示す。
[比較例2]
シラン化合物(B)としての3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを添加しなかった点以外は実施例1と同様にして液晶配向剤を調製した。また、液晶配向剤として上記で調製した液晶配向剤を使用したほかは、実施例1と同様にして位相差フィルムを製造し、性能評価を行った。その評価結果を上記表1に示す。
[比較例3]
シラン化合物(B)としての3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン180重量部の代わりに、ヘキシルトリメトキシシラン(信越化学株式会社製、品名「KBM-3063」)200重量部を添加した点以外は実施例4と同様にして液晶配向剤を調製した。また、液晶配向剤として上記で調製した液晶配向剤を使用した点、および液晶配向剤により形成した塗膜に対する光照射量を10mJ/cm
2から500mJ/cm
2に変更した点以外は、実施例1と同様にして位相差フィルムを製造し、評価した。その評価結果を上記表1に示す。
【0105】
表1に示すように、重合体(A)としての光配向性ポリオルガノシロキサン(A)又は光配向性(メタ)アクリル系重合体(A)を含み、かつシラン化合物(B)を含む実施例1〜9では、液晶配向性および液晶配向膜の基板に対する密着性が十分であった。また、シラン化合物(B)としてエポキシ基を有するシラン化合物を用いた場合、液晶配向剤中にシリカ粒子を添加することによって膜の密着性が改善された(実施例9)。これに対し、シラン化合物(B)を含まない比較例2、3では、膜の密着性が「不可」であった。また、重合体として光配向性ポリアミック酸を含む比較例1では溶媒によって基板が溶解した。