特許第6048259号(P6048259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048259
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】X線検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
   G01N23/04
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-62363(P2013-62363)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-185987(P2014-185987A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241588
【氏名又は名称】豊和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸司
(72)【発明者】
【氏名】白石 由史
(72)【発明者】
【氏名】山田 聡
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−237708(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/157466(WO,A1)
【文献】 特開2002−357568(JP,A)
【文献】 特開2011−33505(JP,A)
【文献】 特開2001−83103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部へのX線の漏洩を防ぐ漏洩防止材が内面に設けられた本体に、被検査物の検査時に前記被検査物を所望の位置に移動させて位置決めする位置決め機構と、前記位置決め機構によって位置決めされた前記被検査物にX線を照射可能な照射部と、前記被検査物を透過したX線を検出する検出部と、を収容して、前記検出部による前記X線の検出量に基づいて前記被検査物を検査するX線検査装置であって、
前記位置決め機構を挟んで前記照射部と前記検出部とを対向配置し、前記位置決め機構は、前記被検査物を移動させない状態で前記照射部から前記X線が照射される際には、前記対向方向における前記照射部と前記検出部との間で前記照射部と対向する位置に移動して、該照射部から照射されるX線を遮ることを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記位置決め機構は、前記被検査物を所定方向に搬送可能で、前記被検査物を搬送しない状態において前記照射部と対向する位置に移動して前記X線を遮る搬送機構を備え、
前記搬送機構は、前記所定方向との直交方向に対向し平行に並設されて、互いに同期しつつそれぞれの外周面に前記被検査物を載置し、前記所定方向に周回して前記被検査物を搬送する一対の搬送ベルトと、前記周回を停止させた前記一対の搬送ベルトの外周面に、前記被検査物を保持する保持部と、を備え、
前記搬送機構は、前記被検査物を検査する際に、前記保持部によって、前記周回を停止させた前記一対の搬送ベルトの外周面に、前記被検査物を保持した状態で前記所望の位置に前記被検査物を位置決め可能としたことを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記搬送機構は、
一対の前記搬送ベルトを前記所定方向に周回可能に支持し、前記直交方向へ移動して前記照射部と対向する位置に接離可能であって、前記被検査物のサイズに応じて前記一方の搬送ベルトを他方の前記搬送ベルトに接離させる第一のベルト支持部材と、
前記他方の搬送ベルトを前記所定方向に周回可能に支持する第二のベルト支持部材と、を備え、
前記第一のベルト支持部材及び前記第二のベルト支持部材に、前記保持部をそれぞれ設けたことを特徴とする請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記保持部を、前記被検査物を各前記外周面に向けて押圧するばね部材で構成したことを特徴とする請求項3に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記第一のベルト支持部材及び前記第二のベルト支持部材のそれぞれに、各前記搬送ベルトの内周面側に配置されて、前記保持部を構成する前記ばね部材から各前記搬送ベルトの外周面に加えられる押圧力を受ける受圧部を設けたことを特徴とする請求項4に記載のX線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外部へのX線の漏洩を防ぐ漏洩防止材が内面に設けられた本体に、被検査物の検査時に前記被検査物を所望の位置に移動させて位置決めする位置決め機構と、前記位置決め機構によって位置決めされた前記被検査物にX線を照射可能な照射部と、前記被検査物を透過したX線を検出する検出部と、を収容して、前記検出部による前記X線の検出量に基づいて前記被検査物を検査するX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、基板に対する電子部品の実装状態をX線を用いて検査するX線検査装置が開示されている。特許文献1のX線検査装置では、基板を載置する載置台を挟んで、X線を前記基板に照射する照射部と、該基板を透過したX線が検出される検出部とが対向配置されており、照射部から放射されたX線の光軸と、載置台の載置面と直交する軸との交点を含む面の断層画像を取得することで、基板の外側からでは観察することが難しい不良原因である前記基板に対するはんだの過小や過大を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−256441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上記のX線検査装置では、基板に代表される被検査物の検査前のウォームアップにおいては、照射部から照射するX線の出力を最大にすることがある。一方、被検査物の検査時においては、X線の照射出力を最大にしないことから、ウォームアップの際と検査時との双方において、照射部を収容した本体の外部にX線が漏洩することを防ぐためには、本体に設けるX線の漏洩防止材の厚み寸法を、ウォームアップの際のX線の照射出力に合わせて決める必要があった。これに伴って、本体の重量が増加する上にX線検査装置の製造コストも増加するという不都合があった。
【0005】
この発明は、このような状況に鑑み提案されたものであって、製造コストの増加を抑制可能なX線検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係るX線検査装置は、外部へのX線の漏洩を防ぐ漏洩防止材が内面に設けられた本体に、被検査物の検査時に前記被検査物を所望の位置に移動させて位置決めする位置決め機構と、前記位置決め機構によって位置決めされた前記被検査物にX線を照射可能な照射部と、前記被検査物を透過したX線を検出する検出部と、を収容して、前記検出部による前記X線の検出量に基づいて前記被検査物を検査するX線検査装置であって、前記位置決め機構を挟んで前記照射部と前記検出部とを対向配置し、前記位置決め機構は、前記被検査物を移動させない状態で前記照射部から前記X線が照射される際には、前記対向方向における前記照射部と前記検出部との間で前記照射部と対向する位置に移動して、該照射部から照射されるX線を遮ることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、前記位置決め機構は、前記被検査物を所定方向に搬送可能で、前記被検査物を搬送しない状態において前記照射部と対向する位置に移動して前記X線を遮る搬送機構を備え、前記搬送機構は、前記所定方向との直交方向に対向し平行に並設されて、互いに同期しつつそれぞれの外周面に前記被検査物を載置し、前記所定方向に周回して前記被検査物を搬送する一対の搬送ベルトと、前記周回を停止させた前記一対の搬送ベルトの外周面に、前記被検査物を保持する保持部と、を備え、前記搬送機構は、前記被検査物を検査する際に、前記保持部によって、前記周回を停止させた前記一対の搬送ベルトの外周面に、前記被検査物を保持した状態で前記所望の位置に前記被検査物を位置決め可能としたことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2において、前記搬送機構は、一対の前記搬送ベルトを前記所定方向に周回可能に支持し、前記直交方向へ移動して前記照射部と対向する位置に接離可能であって、前記被検査物のサイズに応じて前記一方の搬送ベルトを他方の前記搬送ベルトに接離させる第一のベルト支持部材と、前記他方の搬送ベルトを前記所定方向に周回可能に支持する第二のベルト支持部材と、を備え、前記第一のベルト支持部材及び前記第二のベルト支持部材に、前記保持部をそれぞれ設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3において、前記保持部を、前記被検査物を各前記外周面に向けて押圧するばね部材で構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4において、前記第一のベルト支持部材及び前記第二のベルト支持部材のそれぞれに、各前記搬送ベルトの内周面側に配置されて、前記保持部を構成する前記ばね部材から各前記搬送ベルトの外周面に加えられる押圧力を受ける受圧部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明に係るX線検査装置によれば、例えば、X線検査装置のウォームアップの際に、X線の照射出力を最大にした場合でも、照射部に対向させた位置決め機構で、照射出力を最大にしたX線を遮ることができる。よって、本体の漏洩防止材の厚み寸法は、ウォームアップの際よりもX線の照射出力が小さい被検査物の検査時におけるX線の照射出力に合わせて決められる。これに伴って、X線検査装置の製造コストが増加することを抑制できる。
請求項2の発明によれば、例えば、X線検査装置のウォームアップの際に、X線の照射出力を最大にした場合でも、照射部に対向させた搬送機構で、照射出力を最大にしたX線を遮ることができる。加えて、搬送機構に備えられて、所定方向に周回する一対の搬送ベルトによって、被検査物を該所定方向に搬送できるため、被検査物を前記所定方向へ搬送するために、前記一対の搬送ベルトとは異なる大型の搬送装置を備える必要がない。これにより、被検査物を所定方向に搬送する装置を小型化することが可能になる。さらには、保持部によって、周回を停止させた前記一対の搬送ベルトの外周面に、被検査物を保持した状態で前記所望の位置に前記被検査物を位置決め可能としたため、被検査物を検査する際に、保持部によって被検査物が前記所望の位置から位置ずれすることを防止できる。
請求項3の発明によれば、被検査物の検査時には第一のベルト支持部材に、両搬送ベルトの外周面に被検査物を載置させるために両搬送ベルト同士の間隔を調整する働きをさせ、X線検査装置のウォームアップの際には第一のベルト支持部材に、照射部に対向させてX線を遮る働きをさせることが可能になる。加えて、保持部によって、周回を停止させた両搬送ベルトの外周面に被検査物を保持することで、該被検査物が、前記外周面上で位置ずれすることを防止できる。
請求項4の発明によれば、保持部は、ばねの付勢力によって、被検査物を一方の搬送ベルトの外周面や他方の搬送ベルトの外周面に安定して押圧できる。
請求項5の発明によれば、受圧部が、一方及び他方の搬送ベルトの外周面に加えられる押圧力を受け止めることで、一方及び他方の搬送ベルトが撓むことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態のX線検査装置の内部の主要な構成を示す概略正面図である。
図2】同X線検査装置の内部の主要な構成を示す概略側面図である。
図3】同X線検査装置の内部の主要な構成を示す概略平面図である。
図4図3のA−A線要部断面図である。
図5】従動スライド部材でX線照射部から照射されるX線を遮る状態を説明する図である。
図6図5のB−B線要部断面図である。
図7図5のC部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図1ないし図7を参照しつつ説明する。図1ないし図3に示すようにX線検査装置1はシールドボックス2を備えており、このシールドボックス2に、被検査物6の搬送機構3及びクランプ板14,17を備えた平面移動機構101と、平面移動機構101を上下動させる昇降部材12と、を備えた位置決め機構103と、X線照射部4と、X線検出部5とが収容されている。シールドボックス2の内面全面にはX線を遮蔽する鉛板が貼り付けられているため、X線がシールドボックス2の外部に漏洩することが防止されている。本実施形態では鉛板の厚み寸法は、被検査物6(図1ないし図3参照。)の検査時のX線の照射出力によって決められている。この照射出力は、X線照射部4の最大照射出力よりも抑えられている。また、シールドボックス2の正面視右側面には、被検査物6(図1及び図3参照。)をシールドボックス2の内部に搬入するための搬入口(図示せず。)が形成されていると共に、シールドボックス2の正面視左側面には、前記被検査物6をシールドボックス2の外部に搬出するための搬出口(図示せず。)が形成されている。さらに図1に示すように、シールドボックス2の外部には、搬入口側ベルトコンベア7が、前記搬入口を挟んで後述する図2中の第1無端状ベルト21及び第2無端状ベルト26と同一平面上に配置されており、前記外部には、搬出口側ベルトコンベア8が、前記搬出口を挟んで前記第1無端状ベルト21及び第2無端状ベルト26と同一平面上に配置されている。この搬入口側ベルトコンベア7は、X線検査装置1の正面視左右方向に当たるX方向で前記搬入口側へ進行することで被検査物6を該搬入口へ搬送する。一方、搬出口側ベルトコンベア8は、X方向で前記搬出口側とは反対側へ進行することで、前記第1無端状ベルト21及び第2無端状ベルト26によって該搬出口からシールドボックス2の外部に送り出された被検査物6を次工程へ搬送する。図1及び図2に示すように、シールドボックス2の上面に、X線検査装置1の操作者が操作可能な各種のタッチパネルを備えた操作部2Aが設けられている。なお、シールドボックス2は本発明の本体の一例であり、鉛板は本発明の漏洩防止材の一例である。
【0014】
図2及び図4に示すように位置決め機構103は、シールドボックス2に対する被検査物6の搬出入や、被検査物6を所望の被検査位置に位置決めするものであって、平面移動機構101は、被検査物6をX−Y方向(左右前後方向)へ移動させるもので、昇降部材12は、被検査物6をZ方向(上下方向)へ移動させるものである。平面移動機構101が備える搬送機構3は、被検査物6をY方向へ移動させる主動スライド部材9と、従動スライド部材10とを備えている。この主動スライド部材9と従動スライド部材10とは、X線検査装置1の側面視左右方向に当たるY方向(図2及び図3参照。)で対向して配置されている。主動スライド部材9は、X方向に延びる形状を有するベースプレート11を備えている。このベースプレート11のX方向における両端部の下面には、Y方向に延びるスライド溝40(図6参照。)が形成されたベース部材41,41(図2及び図4参照。)が突設されている。一方、従動スライド部材10は、主動スライド部材9と同様にX方向に延びる形状を有する鉄製のベースプレート15を備えている。このベースプレート15のX方向における両端部の下面にも、ベース部材47,47が突設されている。各ベース部材47には、ガイドレール13に摺動自在に嵌るスライド溝40(図6参照。)が形成されている。そして、前記ベースプレート15は、各ベース部材47の外側へ突出するように各ベース部材47の上面に対して固定されている。
【0015】
図2及び図4に示すように主動スライド部材9のベースプレート11には、ベースプレート11に対してX方向へ移動可能な第1クランプ板取付部材45が係合し、後述するクランプ板14が、第1クランプ板取付部材45に固定されて従動スライド部材10側(Y方向)へ突設されている。一方、従動スライド部材10のベースプレート15にも、ベースプレート15に対してX方向へ移動可能に係合する第2クランプ板取付部材48が係合し、後述するクランプ板17が、第2クランプ板取付部材48に固定されて主動スライド部材9側(Y方向)へ突設されている。この第2クランプ板取付部材48は、Y方向で第1クランプ板取付部材45と対向するように配置されている。第1クランプ板取付部材45及び第2クランプ板取付部材48は、平面移動機構101のX方向への移動を可能にしている。
【0016】
図2及び図6に示すようにシールドボックス2の内部には、Y方向に延びる形状を有する昇降部材12が、各ベース部材41の下方位置で上下方向(Z方向)へ移動可能にそれぞれ設けられて、平面移動機構101を上下方向へ移動させるように構成している。各昇降部材12に、Y方向に延びてベース部材41のスライド溝40がスライド可能に嵌るガイドレール13(図2図4ないし図6参照。)が設けられて、平面移動機構101のY方向への移動を可能にしている。
【0017】
また第1クランプ板取付部材45は、従動スライド部材10側へ突出する第1ベルト駆動軸を備えており、この第1ベルト駆動軸の回転力が伝達される第1プーリを備えている。そして、この第1ベルト駆動軸には第1のモータが連結されている。これに加えて第1クランプ板取付部材45には、複数のプーリが回転可能に支持されている。さらに所定幅の第1無端状ベルト21(図2及び図4参照。)が、X方向へ延びるように前記第1プーリと前記複数のプーリとに張架されている。前記第1のモータの駆動によって前記第1ベルト駆動軸が回転すると、第1無端状ベルト21はX方向に周回するようになっている。一方、第2クランプ板取付部材48も、図6に示すように後述のブラケット部材72(図6及び図7参照。)を貫通して主動スライド部材9側へ突出する第2ベルト駆動軸23を備えており、この第2ベルト駆動軸23の回転力が伝達される第3プーリ24を備えている。第2ベルト駆動軸23には第2のモータが連結されている。これに加えてブラケット部材72には、複数のプーリが回転可能に支持されている。さらに所定幅の第2無端状ベルト26(図2図4及び図6参照。)が、X方向へ延びるように第3プーリ24と該複数のプーリとに張架されている。前記第2のモータの駆動によって第2ベルト駆動軸23が回転すると、第2無端状ベルト26はX方向に周回するようになっている。本実施形態では、第1のモータと第2のモータとを同期運転させることで、両無端状ベルト21,26が互いに同期してX方向に周回する。図2及び図4に示すように、第1無端状ベルト21と第2無端状ベルト26とは、Y方向で対向して平行に並設されている。両無端状ベルト21,26の外周面上には、シールドボックス2の搬入口からシールドボックス2内に搬入された被検査物6が載せられて、両無端状ベルト21,26がX方向でシールドボックス2の搬出口側に進行することで被検査物6がシールドボックス2内を搬送される。以上のように搬送機構3が構成されている。なお、X方向は本発明の所定方向の一例であり、両無端状ベルト21,26は本発明の一対の搬送ベルトの一例である。
【0018】
図2及び図4に示すようにクランプ板17は、Y方向でクランプ板14と対向するように配置されている。図7に示すようにクランプ板17は、前部を下向きにした板ばねで構成されている。本実施形態では図6に示すように、クランプ板17を、X方向に所定間隔をおいて複数(ここでは9個)配列した。そして各クランプ板17の後部は、アーム部材70を介して上下動する流体圧シリンダ71のロッド72と接続されている。クランプ板14についても、クランプ板17と同様に構成されて、該クランプ板14の後部も、クランプ板17の後部と同様に、前記ロッド72と接続されている。さらに図7に示すように、第2クランプ板取付部材48における第1クランプ板取付部材45との対向面に、X方向に延びる平板状のブラケット部材72を取り付けて、このブラケット部材72に、X方向に延びて後部が前部に対して下向き略直角に延びるように折り曲げた受圧部材74が固定されている。この受圧部材74の前部は、図7に示すように第2無端状ベルト26の内周面側に位置する。第1クランプ板取付部材45についても、第2クランプ板取付部材48の場合と同様にして、受圧部材が固定されて、この受圧部材の前部は、第1無端状ベルト21の内周面側に位置する。搬送機構3によってシールドボックス2の搬入口からシールドボックス2内に搬入された被検査物6については、各ロッド72を下方向に収縮動作させると、クランプ板14の下向き前部及びクランプ板17の下向き前部が、周回を停止させた両無端状ベルト21,26の外周面上に載せた被検査物6の上面に当接する。このとき各クランプ板14,17は、板ばねの付勢力によって、被検査物6の上方から該被検査物6を両無端状ベルト21,26の外周面上に向けて安定して押圧する。これにより、被検査物6を両無端状ベルト21,26の外周面上に保持できる。このため、被検査位置へ移動させた被検査物6に、X線照射部4からX線が照射されるときに、該被検査物6が前記外周面上で位置ずれすることを防止できる。なお図7では、第2無端状ベルト26の外周面上に保持される被検査物6の図示を省略している。さらに図7に示す受圧部材74が、被検査物6を介してクランプ板17から第2無端状ベルト26の外周面に加えられる押圧力を受ける止めることで、第2無端状ベルト26が上下方向に撓むことを防止できる。第1無端状ベルト21の内周面側に位置する受圧部材についても、受圧部材74と同様に、クランプ板14から被検査物6を介して第1無端状ベルト21の外周面に加えられる押圧力を受け止めることで、第1無端状ベルト21が上下方向に撓むことを防止できる。被検査物6を被検査位置へ移動させる際には、被検査物6を両クランプ板14,17で両無端状ベルト21,26の外周面上に保持した状態で、第1及び第2クランプ板取付部材45,48(搬送機構3)を、X方向でシールドボックス2の搬出口側に同期移動させる。また、被検査物6が前記搬出口へ搬送された後には、各ロッド72を上方向に伸長動作させることで、各クランプ板14,17の下向き前部を被検査物6から離間させる。なお、クランプ板14,17は本発明の保持部の一例であり、クランプ板14,17を構成する板ばねは、本発明の保持部を構成するばね部材の一例である。また、受圧部材74は本発明の受圧部の一例であり、第1無端状ベルト21の内周面側に位置する受圧部材は本発明の受圧部の一例である。
【0019】
また図2及び図4に示すように、主動スライド部材9における各ベース部材41には、第3のモータに連結された駆動軸32が、従動スライド部材10側へ延びて回転可能に保持されている。そして、従動スライド部材10における各ベース部材47には、駆動軸32に螺合するナット部材33が固定されている。第3のモータの駆動によって駆動軸32が回転すると、ナット部材33が駆動軸32の軸方向(Y方向)に移動する。これにより、図4及び図5に示すように、従動スライド部材10を主動スライド部材9に対してY方向に移動させることができるため、従動スライド部材10の移動に合わせて、Y方向で第2無端状ベルト26を第1無端状ベルト21に接離させることが可能になる。このようにすると、両無端状ベルト21,26の外周面上に被検査物6を載せるために、被検査物6のサイズに応じてY方向における両無端状ベルト21,26同士の間隔を調整できる。主動スライド部材9における各ベース部材41には、ナット部材(図示せず。)が固定されて、このナット部材に、第4のモータに連結されてY方向に延びる駆動軸34(図4参照。)を螺合させている。この第4のモータの駆動によって駆動軸34を回転させると、当該ナット部材が駆動軸34の軸方向(Y方向)に移動することに伴って、主動スライド部材9及び従動スライド部材10、すなわち平面移動機構101をY方向に移動させることができる。このとき、Y方向における両無端状ベルト21,26同士の間隔は前記調整された間隔に保持された状態である。なお、主動スライド部材9は本発明の第二のベルト支持部材の一例であり、従動スライド部材10は本発明の第一のベルト支持部材の一例であり、Y方向は本発明の所定方向との直交方向の一例である。また、第2無端状ベルト26は本発明の一方の搬送ベルトの一例であり、第1無端状ベルト21は本発明の他方の搬送ベルトの一例である。
【0020】
図2に示すように、シールドボックス2の内部で搬送機構3の下方に、X線照射部4が設けられている。X線照射部4の筐体の内部に、X線を発生させるX線管35を備えている。筐体の上面にはX線を透過させるX線照射窓36(図3参照。)が開口している。このX線照射部4は、X線照射窓36を通じてX線管35から上方に向けてX線を照射する。図2及び図4に示すようにX線は、X線管35から上方へ略逆円錘状に広がる。
【0021】
図2に示すように、シールドボックス2の内部で搬送機構3の上方に、X線検出部5が設けられている。X線検出部5は、搬送機構3を挟んでX線照射部4と対向して配置されている。このX線検出部5は、X線照射部4から照射されたX線を受けるようにされている。本実施形態では、図2及び図3に示すように被検査物6を、シールドボックス2内で両無端状ベルト21,26に載せて被検査位置へ搬送した後に、両クランプ板14,17で被検査物6の上面を押圧して、検査物6を両無端状ベルト21,26の外周面上に保持する。そして、X線照射部4から照射されたX線が被検査物6を透過してX線検出部5で検出される。一例として被検査物6が電子部品をはんだで接合した基板の場合には、X線検出部5で検出されたX線に応じた画像に基づいて、基板に対する電子部品の接合状態の良否が検査される。なお、X線照射部4は本発明の照射部の一例であり、X線検出部5は本発明の検出部の一例である
【0022】
さらに本実施形態ではX線照射部4が、該X線照射部4の下面に結合された駆動軸の軸心を中心として図1中の矢印で示すように円形に移動可能とされている。加えてX線検出部5は、該X線検出部5の上面に結合された駆動軸の軸心を中心として図1中の矢印で示すように円形に移動可能とされている。ここでは、X線照射部4の円形移動とX線検出部5の円形移動とを同期させている。このようにすることで、X線検出部5で検出されたX線から被検査物6の二次元的な画像を取得できる。したがって、被検査物6が電子部品をはんだで接合した基板の場合には、この画像に基づいて基板に対する電子部品の接合状態をより詳しく検査できる。
【0023】
次に本実施形態のX線検査装置1のウォームアップの際に、搬送機構3によってX線を遮る動作を説明する。この動作は、前記ウォームアップの際に、X線照射部4から照射されるX線の出力を最大にすることがあるため、照射出力を最大にしたX線が、シールドボックス2の外部に漏洩することを防止するために行われる。ウォームアップの際には、被検査物6をシールドボックス2内で搬送する必要がないことから、最初に被検査物6が両無端状ベルト21,26の外周面上に載せられていないことを確認した後に、操作者が操作部2Aを操作して、図4に示す駆動軸32と連結された第3のモータを回転駆動させる。すると、上述したように、従動スライド部材10はY方向に移動する。ここでは、従動スライド部材10をY方向で主動スライド部材9側へ移動させることで、図5,6に示すように、従動スライド部材10のベースプレート15を、該主動スライド部材9側に位置するX線照射部4の上方で該X線照射部4と対向する位置Pに配置させる。このようにすることで、照射出力を最大にしたX線は、ベースプレート15で遮られて直接シールドボックス2の内面に到達することがないため、このX線がシールドボックス2の外部に漏洩することを防止できる。
【0024】
<本実施形態の効果>
本実施形態のX線検査装置1では、ウォームアップの際に、X線の照射出力を最大にした場合でも、X線照射部4に対向させた搬送機構3(従動スライド部材10のベースプレート15)で、照射出力を最大にしたX線を遮ることができる。よって、シールドボックス2の内面全面に貼り付けた鉛板の厚み寸法は、ウォームアップの際よりもX線の照射出力が小さい被検査物6の検査時におけるX線の照射出力に合わせて決められる。これに伴って、X線検査装置1の製造コストが増加することを抑制できる。
【0025】
また、両無端状ベルト21,26によって、被検査物6をX方向へ搬送できるため、被検査物6をX方向へ搬送するために、両無端状ベルト21,26とは異なる大型の搬送装置を備える必要がない。これにより、被検査物6をX方向に搬送する装置を小型化することが可能になる。さらには、両クランプ板14,17によって、周回を停止させた両無端状ベルト21,26の外周面上に、被検査物6を保持した状態で被検査位置に被検査物6を位置決めすると、被検査物6を検査する際に、両クランプ板14,17によって被検査物6が前記被検査位置から位置ずれすることを防止できる。
【0026】
また、被検査物6の検査時には従動スライド部材10に、両無端状ベルト21,26の外周面上に被検査物6を載せるために両無端状ベルト21,26同士の間隔を調整する働きをさせ、X線検査装置1のウォームアップの際には従動スライド部材10に、X線照射部4に対向させてX線を遮る働きをさせることが可能になる。
【0027】
さらに、クランプ板14によって、周回を停止させた第1無端状ベルト21の外周面上に被検査物6を保持すると共に、クランプ板17によって、周回を停止させた第2無端状ベルト26の外周面上に被検査物6を保持することで、該被検査物6が、両無端状ベルト21,26の外周面上で位置ずれすることを防止できる。
【0028】
加えて、両クランプ板14,17は、板ばねの付勢力によって、被検査物6を両無端状ベルト21,26の外周面上に安定して押圧できる。
【0029】
さらに加えて、第1無端状ベルト21の内周面側に位置する受圧部材が、クランプ板14から被検査物6を介して第1無端状ベルト21の外周面に加えられる押圧力を受け止めることで、第1無端状ベルト21が上下方向に撓むことを防止できる。これに加えて、第2無端状ベルト26の内周面側に位置する受圧部材74が、被検査物6を介してクランプ板17から第2無端状ベルト26の外周面に加えられる押圧力を受け止めることで、第2無端状ベルト26が上下方向に撓むことを防止できる。
【0030】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨を逸脱しない範囲内において構成の一部を適宜変更して実施できる。例えば上述した実施形態では、X線を遮るベースプレート15を鉄製としたが、これとは異なり、ベースプレート15を鉛やアルミニウム等の金属で形成してもよい。
【符号の説明】
【0031】
1・・X線検査装置、2・・シールドボックス、3・・搬送機構、4・・X線照射部、5・・X線検出部、6・・被検査物、9・・主動スライド部材、10・・従動スライド部材、14・・主動スライド部材のクランプ板、17・・従動スライド部材のクランプ板、21・・第1無端状ベルト、26・・第2無端状ベルト、74・・受圧部材、103・・位置決め機構、P・・従動スライド部材のベースプレートがX線照射部と対向する位置、X・・X線検査装置の正面視左右方向、Y・・X線検査装置の側面視左右方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7