(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動電圧制御部は、前記駆動電圧を制御して、プラズマによる八木アンテナパターンを前記電磁波伝搬制御部に形成させることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁波伝搬制御装置。
前記駆動電圧制御部は、前記駆動電圧を制御して、プラズマによるメタマテリアルパターンを前記電磁波伝搬制御部に形成させることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁波伝搬制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の電磁波伝搬制御装置の一例を示す図である。
【0011】
電磁波伝搬制御装置1は、電磁波伝搬制御部2、駆動電圧制御部3、駆動電圧生成部4を有する。
電磁波伝搬制御部2は、プラズマ発生部10が複数束ねられた構造となっている。
図1の例では、プラズマ発生部10は、膜状に複数束ねられている。プラズマ発生部10は、電極11,12を有し、電極11,12間に印加される駆動電圧に応じて、筺体13内にプラズマを発生する。なお、筺体13内には、放電しやすくするために所定の圧力でアルゴンなどのガスが封入されていてもよい。
【0012】
筺体13として、たとえば、ガラス管などが適用できる。筺体13としてプラスチック材などを用いてもよいが、筺体13が劣化してプラズマ発生時にガスを発生することを避けるために、プラズマとの反応性が小さい材質(ガラスなど)を用いることが好ましい。
【0013】
駆動電圧制御部3は、プラズマ発生部10の駆動電圧を制御する。なお、駆動電圧制御部3は、束ねられた複数のプラズマ発生部10に同じ駆動電圧を供給するように制御してもよいし、異なる駆動電圧を供給するように制御してもよい。前者のように制御する場合、各プラズマ発生部10の電極11,12は、隣接するプラズマ発生部の電極と電気的に接続されていてもよい。後者のように制御する場合、各プラズマ発生部10の電極11,12は、隣接するプラズマ発生部の電極とは電気的に絶縁される。
【0014】
駆動電圧生成部4は、駆動電圧制御部3の制御のもと、プラズマ発生部10の駆動電圧を生成して、プラズマ発生部10に供給する。
このような電磁波伝搬制御装置1では、電磁波伝搬制御部2は、駆動電圧に基づいた密度のプラズマを発生して、筺体13内に入射される電磁波の伝搬を制御する。プラズマ発生部10で発生するプラズマの周波数は、プラズマ密度に依存する。
【0015】
プラズマ密度Nと、プラズマ周波数fの関係は、以下の式(1)で表される。
【0017】
式(1)において、f
pはプラズマ周波数[Hz]、eは電子の電荷(1.602×10
-19[C])、Nはプラズマ密度[m
-3]、mは電子の質量(9.107×10
-31[kg])、ε
0は真空の誘電率(8.854×10
-12[F/m])である。
【0018】
たとえば、プラズマ発生部10として蛍光灯に近いものを想定する。蛍光灯のプラズマ発生条件は、駆動電圧が100V(ただし安定器などでプラズマ発生電圧(200〜300V程度)まで昇圧される)、ガス成分がアルゴンと水銀、ガス圧が(2〜4hPa)、プラズマ密度Nが、約10
17m
-3のオーダである。
【0019】
このようなプラズマ密度Nの値の場合、式(1)からプラズマ周波数f
pを見積もると、約2.8GHzとなる。
上記のような条件で、電磁波伝搬制御部2の各プラズマ発生部10が、たとえば、2.8GHzのプラズマ周波数f
pのプラズマを発生した場合、入射される電磁波w1の周波数が2.8GHzより小さい場合には、電磁波伝搬制御部2は、電磁波w1を、たとえば、矢印A1方向に反射させる。入射される電磁波w1の周波数が2.8GHzより大きい場合には、電磁波伝搬制御部2は、電磁波w1を、たとえば、矢印A2方向に透過または屈折させる。入射される電磁波w1の周波数が2.8GHzまたはその近傍のときは、電磁波伝搬制御部2は、電磁波w1とプラズマとの共振により電磁波w1を、電磁波伝搬制御部2内に閉じ込める。言い換えると、電磁波伝搬制御部2が電磁波w1を吸収する。
【0020】
プラズマ密度は、プラズマ発生電圧を変えることにより、つまり駆動電圧を変化させることにより変化させることができる。たとえば、電圧が高いほどプラズマ密度が高くなる。そのため、駆動電圧制御部3が、駆動電圧を変化させることにより、電磁波伝搬制御部2は、所望の周波数の電磁波に対して、透過、屈折、反射または吸収を行うことができるようになる。
【0021】
以下、本実施の形態の電磁波伝搬制御装置1の動作(電磁波伝搬制御方法)の例をまとめる。
図2は、電磁波伝搬制御方法の一例の流れを示すフローチャートである。
【0022】
まず、駆動電圧制御部3が、電磁波伝搬制御部2に対して印加する駆動電圧を制御(設定)する(ステップS1)。ここでは、たとえば、制御対象の電磁波w1の周波数に応じた設定が行われる。たとえば、電磁波w1を電磁波伝搬制御部2で反射させたい場合、駆動電圧制御部3は、電磁波w1の周波数よりも大きいプラズマ周波数のプラズマを発生させるように駆動電圧を制御する。電磁波w1を電磁波伝搬制御部2で透過または屈折させたい場合、駆動電圧制御部3は、電磁波w1の周波数よりも小さいプラズマ周波数のプラズマを発生させる、またはプラズマを発生させないように駆動電圧を制御する。電磁波w1を電磁波伝搬制御部2で吸収させたい場合、駆動電圧制御部3は、電磁波w1の周波数と同じまたはその近傍のプラズマ周波数のプラズマを発生させるように駆動電圧を制御する。
【0023】
そして、電磁波伝搬制御部2が、駆動電圧に基づいた密度のプラズマを筺体13内に発生し(駆動電圧がプラズマ発生電圧より低い場合は、非発生)、筺体13内に入射される電磁波の伝搬(反射、吸収、屈折または透過)を制御する(ステップS2)。
【0024】
なお、このような制御の流れは、以降に示す種々の実施の形態でもほぼ同様である。
このように、本実施の形態の電磁波伝搬制御装置1によれば、入射される電磁波の諸元に対応した形状、構成または材質を有する反射体、吸収体、レンズなどを用いずとも、駆動電圧を制御することで電磁波の諸元に応じた伝搬制御が行える。そのため、電磁波伝搬の環境特性に影響を与えずに収集するデータの一貫性、再現性を従来よりも向上でき、入射する電磁波の諸元に応じた精度のよい伝搬制御が可能となる。
【0025】
なお、このような電磁波伝搬制御装置1は、艦船、航空機、車両などに適用可能である。たとえば、無線機器の混信やレーダ間の干渉などを防止するために、特定周波数以外の電磁波を吸収または透過させる、などの用途に用いられる。
【0026】
(第2の実施の形態)
図3は、第2の実施の形態の電磁波伝搬制御装置の一例を示す図である。
第2の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1aにおいて、電磁波伝搬制御部2aは、三角形3面によるコーナリフレクタ形状に形成されている。
【0027】
各面は、
図3に示されているように長さの異なる複数のプラズマ発生部10aが束ねられて形成されている。各プラズマ発生部10aは、
図1に示したプラズマ発生部10と同様に、電極11a,12aを有し、筺体13a内にプラズマを発生する。電極11a,12aには、駆動電圧制御部3の制御のもと駆動電圧生成部4によって駆動電圧が印加される。
【0028】
コーナリフレクタは、入射される電磁波を元の方向へ反射させる諸元を有するものである。本実施の形態の電磁波伝搬制御装置1aでは、駆動電圧制御部3により駆動電圧を制御し、プラズマ発生部10aで発生するプラズマの密度を可変する。これにより、電磁波伝搬制御部2aは、入射される電磁波w2を、元の方向(たとえば、矢印A1方向)に反射するだけでなく、たとえば、矢印A2,A3方向に透過または屈折したり、吸収したりすることができる。
【0029】
駆動電圧制御部3は、駆動電圧を制御してプラズマ発生部10aで発生するプラズマ密度を可変させ、電磁波伝搬制御部2aに入射される電磁波w2の周波数よりも高い周波数のプラズマを発生させることで、電磁波w2を反射させることができる。また、駆動電圧制御部3は、プラズマ発生部10aに電磁波w2の周波数よりも低い周波数のプラズマを発生、またはプラズマ発生部10aをオフ(駆動電圧=0V)させることで、電磁波w2を屈折または透過させることができる。なお、プラズマ密度とプラズマの周波数との関係は前述した式(1)の通りである。
【0030】
このように、第2の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1aにおいても、駆動電圧制御部3が、駆動電圧を変化させることにより、電磁波伝搬制御部2aは、所望の周波数の電磁波に対して、透過、屈折、反射、吸収を行うことができるようになる。そのため、第1の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1と同様の効果が得られる。
【0031】
なお、コーナリフレクタ形状は、
図3に示したものに限られず、プラズマ発生部10aを複数束ねた四角形の膜状構造を組み合わせものであってもよい。
(第3の実施の形態)
図4は、第3の実施の形態の電磁波伝搬制御装置の一例を示す図である。
図4において、第1の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1と同様の要素については、同一符号を付している。
【0032】
第3の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1bは、アンテナ5で電磁波伝搬制御部2を透過または電磁波伝搬制御部2で屈折した電磁波w3a,w3bを検出し、電磁波w3a,w3bの周波数や強度(レベル)を測定する電磁波検出部6を有する。電磁波検出部6は、たとえば、同調回路や検波回路などを含む受信器、または周波数分析器などである。
【0033】
電磁波伝搬制御部2に入射される電磁波w3を反射させる場合、駆動電圧制御部3bは、電磁波検出部6での透過波である電磁波w3aの周波数とレベルの測定結果に基づき、電磁波w3aのレベルが最小(または閾値以下)になるように、駆動電圧を制御する。
【0034】
透過波のレベルを小さくするには、駆動電圧を大きくすればよい。駆動電圧を大きくすると、プラズマ密度が高くなり、式(1)の関係からプラズマ周波数が大きくなるためである。これにより、たとえば、矢印A1方向に反射する電磁波w3のレベルを大きくすることができる。
【0035】
一方、電磁波w3を透過させる場合、駆動電圧制御部3bは、たとえば、駆動電圧を0Vにして、電磁波伝搬制御部2でプラズマを発生させないようにすればよい。これにより、矢印A2方向に透過する電磁波w3aのレベルが最大となる。
【0036】
また、電磁波w3を、たとえば、矢印A3方向に屈折させる場合、駆動電圧制御部3bは、電磁波検出部6での電磁波w3bの周波数とレベルの測定結果に基づき、電磁波w3bのレベルが最大(または閾値以上)になるように、駆動電圧を制御する。これにより、矢印A3方向に屈折する電磁波w3aのレベルを大きくすることができる。
【0037】
以上のような電磁波伝搬制御装置1bによれば、前述の電磁波伝搬制御装置1と同様の効果が得られる。さらに、電磁波伝搬制御装置1bによれば、電磁波伝搬制御部2を通り抜けた電磁波w3a,w3bのレベルをもとに、反射波、透過波または屈折波のレベルを選択的に自動的に強めたり、弱めたりすることができる。
【0038】
(第4の実施の形態)
図5は、第4の実施の形態の電磁波伝搬制御装置の一例を示す図である。
図4において、第1の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1と同様の要素については、同一符号を付している。
【0039】
第4の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1cにおける、電磁波伝搬制御部2cは、電磁波の入射面とは反対側の面に反射体20が設けられている。
反射体20は、たとえば、アルミニウム、鉄、銅などの金属など、目的とする周波数の電磁波を反射する物質が用いられる。電磁波伝搬制御部2cが、航空機や船舶などの機体に取り付けられる場合には、その機体を反射体20としてもよい。
【0040】
図6は、
図5のA−A線における電磁波伝搬制御部の断面を示す図である。
電磁波伝搬制御部2cのプラズマ発生部10cは、電極11c,12c、筺体13cを有する。ここで、筺体13cの厚さ、すなわち、電磁波伝搬制御部2cにおける電磁波の入射面と、反射体20間の距離d1は、制御対象の電磁波w4の波長λの1/2である。
【0041】
第4の実施の形態において、駆動電圧制御部3は、制御対象の周波数の電磁波の半分のレベルがプラズマ発生部10cでの入射面で反射し、半分のレベルがプラズマ発生部10cを透過するように、駆動電圧を調整してプラズマを発生させる。なお、そのような駆動電圧は、たとえば、反射体20がない状態で予め求めておく(たとえば、
図4に示した電磁波検出部6などを用いることで、透過波のレベルが最大値の半分のときの駆動電圧が求められる)。
【0042】
これにより、プラズマ発生時には、プラズマ発生部10cにおける電磁波w4の入射面での反射波(入射波に対し180度の位相がずれている波)と、プラズマ発生部10cを透過した電磁波が反射体20で反射されることによる反射波とが生じる。
【0043】
ここで、
図6に示したような距離d1が、電磁波伝搬制御部2cに入射される電磁波w4の波長λの1/2であるため、プラズマ発生部10cによる反射波と、プラズマ発生部10cを透過して反射体20で反射した反射波とが同相で重なり合う。そのため、反射波のレベルを強めることができる。
【0044】
このように、第4の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1cによれば、特定の周波数(波長)の電磁波に対して、反射波のレベルを強めるような伝搬制御が可能となる。
(第5の実施の形態)
図7は、第5の実施の形態の電磁波伝搬制御装置の一例を示す図である。
図7において、第4の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1cと同様の要素については、同一符号を付している。
【0045】
第5の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1dにおける、電磁波伝搬制御部2dも、電磁波の入射面とは反対側の面に反射体20が設けられている。
図8は、
図7のA−A線における電磁波伝搬制御部の断面を示す図である。
【0046】
電磁波伝搬制御部2dのプラズマ発生部10dは、電極11d,12d、筺体13dを有する。ここで、筺体13dの厚さ、すなわち、電磁波伝搬制御部2dにおける電磁波の入射面と、反射体20間の距離d2は、制御対象の電磁波w5の波長λの1/4である。
【0047】
第5の実施の形態においても、駆動電圧制御部3は、制御対象の周波数の電磁波の半分のレベルがプラズマ発生部10dでの入射面で反射し、半分のレベルがプラズマ発生部10dを透過するように、駆動電圧を調整してプラズマを発生させる。
【0048】
これにより、プラズマ発生時には、プラズマ発生部10dにおける電磁波w5の入射面での反射波と、プラズマ発生部10dを透過した電磁波が反射体20で反射されることによる反射波とが生じる。
【0049】
ここで、本実施の形態では
図8に示したように距離d2が、電磁波伝搬制御部2dに入射される電磁波w5の波長λの1/4であるため、プラズマ発生部10dによる反射波と、プラズマ発生部10dを透過して反射体20で反射した反射波とが逆相で重なり合う。そのため、反射波の強度を弱めることができる。
【0050】
このように、第5の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1dによれば、特定の周波数(波長)の電磁波に対して、反射波のレベルを弱める(入射電磁波を吸収する)ような伝搬制御が可能となる。
【0051】
(第6の実施の形態)
図9は、第6の実施の形態の電磁波伝搬制御装置の一例を示す図である。
図9において、第1の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1と同様の要素については、同一符号を付している。
【0052】
第6の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1eは、電磁波伝搬制御部2で発生するプラズマに対して磁界をかける磁気発生部7を有する。磁気発生部7としては、たとえば、電磁石などが用いられる。矢印mgは、磁界が加えられる方向の一例を示している。
図9の例では、膜状の電磁波伝搬制御部2の厚み方向から、プラズマ発生部10の筺体13内に対して磁界が加えられている。
【0053】
前述したように、入射される電磁波w6を反射、吸収、屈折または透過させるかは、駆動電圧制御部3によって制御される。
プラズマ発生部10に対して磁界が加えられていない場合、直線偏波の電磁波w6が電磁波伝搬制御部2に入射されると、筺体13内に発生されるプラズマは直線状に振動する。このとき、磁気発生部7による磁界がプラズマにかかると、プラズマは左右に回転することから電磁波w6が影響を受け、偏波面が左回りと、右回りの円偏波が生じる。
【0054】
この左右の円偏波の電磁波は、プラズマ内で伝搬速度が異なるため、互いに同相となり強め合う場合と、互いに逆相となり弱め合う場合があることから、反射波w6aや透過波w6b(または屈折波)にフェージングが生じる。
【0055】
以上のような電磁波伝搬制御装置1eによれば、磁気発生部7によりプラズマに磁界をかけることによって、反射波w6aや透過波w6b(または屈折波)にフェージングが生じるような伝搬制御を行うことができる。
【0056】
(第7の実施の形態)
図10は、第7の実施の形態の電磁波伝搬制御装置の一例を示す図である。
図10において、第1の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1と同様の要素については、同一符号を付している。
【0057】
第7の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1fは、変調部8と乗算器9を有している。変調部8は、変調波を生成して乗算器9に供給する。変調波は、たとえば、サイン波、矩形波または、音楽や意味のあるような情報を表現した波であってもよい。乗算器9は、駆動電圧生成部4で生成された駆動電圧と変調部8で生成された変調波とを掛け合わせることで、駆動電圧を変調する。このため、電磁波伝搬制御部2の各プラズマ発生部10の電極11,12には、変調された駆動電圧が印加される。
【0058】
前述したように、入射される電磁波w7を反射、吸収、屈折または透過させるかは、駆動電圧制御部3によって制御することができる。
変調された駆動電圧が各プラズマ発生部10の電極11,12に印加されると、筺体13内に変調波の影響を受けたプラズマが発生する。
【0059】
このとき電磁波w7が電磁波伝搬制御部2に入射されると、反射波w7aまたは透過波w7b(または屈折波)も、変調波の影響を受けたものとなる。
以上のような電磁波伝搬制御装置1fによれば、駆動電圧に変調波を掛け合わせることによって、電磁波伝搬制御部2に入射された電磁波に対して変調を加えて、反射または透過(または屈折)させるような伝搬制御を行うことができる。
【0060】
(第8の実施の形態)
図11は、第8の実施の形態の電磁波伝搬制御装置の一例を示す図である。
図11において、第1の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1と同様の要素については、同一符号を付している。
【0061】
第8の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1gにおいて、駆動電圧制御部3gは、複数束ねられた各プラズマ発生部10に供給する駆動電圧を選択的に制御して、
図11に示すような八木アンテナパターンとなるようなプラズマを発生させる。八木アンテナパターンは、パターン31,32,33,34,35を含む。パターン31〜35を制御対象の電磁波w8に対して金属のように機能させる(電磁波w8を反射させる)ため、パターン31〜35におけるプラズマ周波数は、電磁波w8の周波数よりも高くなるように制御されている。
【0062】
図12は、八木アンテナパターンの例を説明する図である。
八木アンテナパターンに含まれるパターン31〜35のうち、パターン31〜33は、導波器として機能する。パターン31〜33の長さL1は、制御対象の電磁波の半波長よりも若干短い。パターン34は、輻射器として機能する。パターン34の長さL2は、制御対象の電磁波の半波長である。パターン35は、反射器として機能する。パターン35の長さL3は、制御対象の電磁波の半波長よりも若干長い。パターン31〜35間の距離L4,L5,L6,L7は、制御対象の電磁波の1/4波長である。
【0063】
駆動電圧制御部3gは、プラズマを発生させるプラズマ発生部10ごとに、所定の周期のパルス波形の駆動電圧が供給されるように制御する。これにより、生成されるプラズマに定在波を生じさせ、強め合う領域と弱め合う領域を形成することができ、パルス波形の周期やパルス幅などを調整することで、
図11、
図12に示すようなプラズマによるパターン31〜35を形成することができる。また、駆動電圧制御部3gは、オフするプラズマ発生部10の数を選択することで、パターン31〜35間の長さL4〜L7が、制御対象の電磁波の1/4波長になるように調整する。
図11に示す例では、2つ分のプラズマ発生部10の幅が、電磁波w5の1/4波長になっているものとしている。
【0064】
以上のような電磁波伝搬制御装置1gによれば、八木アンテナと同様の機能を実現できる。また、入射される電磁波w8の波長が変化した場合においても駆動電圧のパルス波形を変化させることで、所望のプラズマ周波数での八木アンテナパターンを形成することができ、透過波の発生を抑えられ、反射波の利得を増加させることができる。
【0065】
また、駆動電圧制御部3gによる駆動電圧の制御により、八木アンテナパターンを発生させる電磁波伝搬制御部2での位置を変えたり、八木アンテナパターンにおけるプラズマ周波数を変更することで、反射波や透過波(または屈折波)の伝搬方向を任意に変更したり、減衰させたりすることもできる。
【0066】
(第9の実施の形態)
図13は、第9の実施の形態の電磁波伝搬制御装置の一例を示す図である。
図13において、第1の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1と同様の要素については、同一符号を付している。
【0067】
第9の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1hにおいて、駆動電圧制御部3hは、複数束ねられた各プラズマ発生部10に供給する駆動電圧を選択的に制御し、
図13に示すようなメタマテリアルパターンとなるようなプラズマを発生させる。メタマテリアルパターンは複数のパターン40を有する。
【0068】
メタマテリアルは、入射電磁波の波長よりも短い長さの金属や誘電体を複数配列したパターンにより、人工的に、誘電率、透磁率、導電率を変化させ、入射電磁波を屈折、反射、透過させる機能を有するものである。メタマテリアルでは、パターン間の間隔を変化させることで、入射電磁波を任意に反射させることができる。
【0069】
本実施の形態の電磁波伝搬制御装置1hは、電磁波伝搬制御部2に入射される電磁波w9の波長よりも短い長さのパターン40をプラズマにより発生させ、電磁波w9に対して屈折、反射、透過が可能な機能を実現するものである。パターン40を制御対象の電磁波w9に対して金属のように機能させる(電磁波w9を反射させる)ため、パターン40におけるプラズマ周波数は、電磁波w9の周波数よりも高くなるように制御されている。
【0070】
駆動電圧制御部3hは、プラズマを発生させるプラズマ発生部10ごとに、所定の周期のパルス波形の駆動電圧が供給されるように制御する。これにより、生成されるプラズマに定在波を生じさせ、強め合う領域と弱め合う領域を形成することができ、たとえば、パルス波形の周期やパルス幅などを調整することで、
図13に示すようなパターン40を形成することができる。
【0071】
以上のような電磁波伝搬制御装置1hによれば、駆動電圧制御部3hが、駆動電圧のパルス波形のパルス幅を変化させることにより、パターン40の大きさ、配置周期、配置間隔を変更できる。それにより、反射波や透過波(または屈折は)の伝搬方向を任意に変更することができる。
【0072】
また、駆動電圧制御部3hによる駆動電圧の制御により、パターン40のプラズマ周波数を変更することで、反射波や透過波(または屈折波)を任意に減衰させることもできる。
【0073】
(第10の実施の形態)
図14は、第10の実施の形態の電磁波伝搬制御装置の一例を示す図である。
第10の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1iでは、プラズマ発生部10iが複数束ねられた膜状の構造である電磁波伝搬制御部2−1,2−2,…,2−nが多層化されている。なお、
図14では、図示の都合上、電磁波伝搬制御部2−1〜2−nは隙間を空けて配置されているように図示されているが、以下に説明する例では、各電磁波伝搬制御部2−1〜2−nは接しているものとする。
【0074】
また、電磁波伝搬制御装置1iは、駆動電圧生成部4−1,4−2,…,4−nを有し、駆動電圧生成部4−1〜4−nは、各電磁波伝搬制御部2−1〜2−nのプラズマ発生部10iに駆動電圧を供給する。駆動電圧生成部4−1〜4−nは、駆動電圧制御部3iで制御される。駆動電圧制御部3iは、駆動電圧を制御してプラズマ密度を変化させることで、発生するプラズマの周波数を、式(1)に従って調整することができ、入射される電磁波w10を透過させたり、反射させたりすることができる。なお、駆動電圧制御部3iは、各電磁波伝搬制御部2−1〜2−nごとに設けられていてもよい。
【0075】
なお、電磁波伝搬制御御部2−nは、前述した第4及び第5の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1c,1dの電磁波伝搬制御部2c,2dと同様に、電磁波の入射面とは反対側の面に反射体50が設けられている。
【0076】
図15は、
図14のA−A線における電磁波伝搬制御部の断面を示す図である。
電磁波伝搬制御部2−nのプラズマ発生部10iは、電極11i,12i,筺体13iを有する。ここで、筺体13iの厚さ、すなわち、電磁波伝搬制御部2−nにおける電磁波の入射面と、反射体50間の距離d3は、制御対象の電磁波w10の波長λの1/4である。他の電磁波伝搬制御部におけるプラズマ発生部10iの筺体13iについても、同様の厚さを有する。
【0077】
図16は、複数の電磁波伝搬制御部の制御例を示す図である。シート番号は、電磁波伝搬制御部2−1〜2−nの並び順を示す番号である。たとえば、シート番号“1”は、電磁波伝搬制御部2−1を示しており、シート番号“n”は、電磁波伝搬制御部2−nを示している。
【0078】
電磁波伝搬制御装置1iは、駆動電圧制御部3iでの駆動電圧の制御により、たとえば、以下のシーケンス1〜3の設定を所定の間隔で繰り返し行う。
シーケンス1:駆動電圧制御部3iは、電磁波伝搬制御部2−1〜2−nに供給する駆動電圧を制御して、ある周波数を有する電磁波w10が、電磁波伝搬制御部2−1でほぼ透過し、他の電磁波伝搬制御部でほぼ反射するように設定する。これにより、電磁波w10は、電磁波伝搬制御部2−1の表面で一部が反射されるが、大部分が透過し、電磁波w10の1/4波長分離れた電磁波伝搬制御部2−2の表面で大部分が反射される。電磁波伝搬制御部2−2での反射波と、電磁波伝搬制御部2−1での反射波とは逆相で重なり合い、弱め合う。また、電磁波伝搬制御部2−2を透過した一部の電磁波w10も、シート番号“3”の電磁波伝搬制御部により大部分が反射され、その反射波と電磁波伝搬制御部2−2での反射波とが逆相で重なり合い、弱め合う。
【0079】
シーケンス2:駆動電圧制御部3iは、電磁波伝搬制御部2−1〜2−nに供給する駆動電圧を制御して、ある周波数を有する電磁波w10が、電磁波伝搬制御部2−1〜2−nでほぼ透過するように設定する。これにより、電磁波w10は、電磁波伝搬制御部2−1の表面で一部が反射されるが、大部分が透過し、電磁波w10のn/4波長分離れた電磁波伝搬制御部2−nの反射体50で反射される。反射体50での反射波と、電磁波伝搬制御部2−1での反射波とは逆相で重なり合い、弱め合う。
【0080】
シーケンス3:駆動電圧制御部3iは、電磁波伝搬制御部2−1〜2−nに供給する駆動電圧を制御して、ある周波数を有する電磁波w10が、電磁波伝搬制御部2−1でほぼ透過し、電磁波伝搬制御部2−2でほぼ反射し、他の電磁波伝搬制御部でほぼ透過するように設定する。
【0081】
これにより、電磁波w10は、電磁波伝搬制御部2−1の表面で一部が反射されるが、大部分が透過し、電磁波w10の1/4波長分離れた電磁波伝搬制御部2−2の表面で大部分が反射される。電磁波伝搬制御部2−2での反射波と、電磁波伝搬制御部2−1での反射波とは逆相で重なり合い、弱め合う。また、電磁波伝搬制御部2−2を透過した一部の電磁波w10も、電磁波伝搬制御部2−nの反射体50と、電磁波伝搬制御部2−2との間で繰り返される反射によって減衰する。
【0082】
なお、各シーケンスにおける電磁波伝搬制御部2−1〜2−nの設定については上記の例に限定されず、他の組み合わせであってもよい。
以上のような電磁波伝搬制御装置1iによれば、電磁波w10の反射を弱めるような伝搬制御が可能となる。
【0083】
なお、上記の説明では、電磁波伝搬制御部2−1〜2−nは、接していると説明したが、隣接する2つの電磁波伝搬制御部の電磁波の入射面間が電磁波の1/4波長分の長さであれば、隙間が空いていてもよい。
【0084】
また、電磁波伝搬制御部2−nが、前述した各シーケンスにおいて、電磁波の周波数よりも高いプラズマ周波数のプラズマを発生するように設定されていれば、反射体50はなくてもよい。
【0085】
(第11の実施の形態)
図17は、第11の実施の形態の電磁波伝搬制御装置の一例を示す図である。
第1の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1jでは、プラズマ発生部10が複数束ねられた膜状の構造である電磁波伝搬制御部2−1,2−2,…,2−nが多層化されている。なお、
図17では、電磁波伝搬制御部2−1〜2−nは隙間を空けて配置されているように図示されているが、各電磁波伝搬制御部2−1〜2−nは接していてもよい。
【0086】
また、電磁波伝搬制御装置1jは、駆動電圧生成部4−1,4−2,…,4−nを有し、駆動電圧生成部4−1〜4−nは、各電磁波伝搬制御部2−1〜2−nのプラズマ発生部10に駆動電圧を供給する。駆動電圧生成部4−1〜4−nは、駆動電圧制御部3jで制御される。駆動電圧制御部3jは、駆動電圧を制御してプラズマ密度を変化させることで、発生するプラズマの周波数を、式(1)に従って調整することができ、入射される電磁波w11を透過させたり、反射させたりすることができる。なお、駆動電圧制御部3jは、各電磁波伝搬制御部2−1〜2−nごとに設けられていてもよい。
【0087】
なお、電磁波伝搬制御御部2−nには、前述した第10の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1iとは異なり、反射体が設けられていないが、透過波の制御が不要の場合には、反射体を設けるようにしてもよい。
【0088】
以下に、複数の電磁波伝搬制御部の2つの制御例を示す。
1つ目の制御例は、複数の電磁波伝搬制御部2−1〜2−nにおいて、電磁波w11を反射させる層(反射点の位置(深さ))を変動させることで、反射波w11aと透過波w11bをドップラーシフトさせるものである。
【0089】
図18は、複数の電磁波伝搬制御部の1つ目の制御例を示す図である。シート番号は、電磁波伝搬制御部2−1〜2−nの並び順を示す番号である。
電磁波伝搬制御装置1jは、駆動電圧制御部3jでの駆動電圧の制御により、たとえば、以下の各シーケンスの設定を所定の間隔で行う。
【0090】
シーケンス1:駆動電圧制御部3jは、電磁波伝搬制御部2−1〜2−nに供給する駆動電圧を制御して、ある周波数を有する電磁波w11が、シート番号“1”の電磁波伝搬制御部2−1で透過し、他の電磁波伝搬制御部で反射するように設定する。たとえば、シート番号“1”の電磁波伝搬制御部2−1では駆動電圧を小さく(または0V)にしてプラズマを発生させず、シート番号“2”〜“n”の電磁波伝搬制御部2−1〜2−nでは駆動電圧をプラズマ発生電圧よりも大きくしてプラズマを発生させる。これにより、シーケンス1での電磁波w11の反射点は、シート番号“2”の電磁波伝搬制御部2−2の表面となる。
【0091】
シーケンス2:次に駆動電圧制御部3jは、電磁波伝搬制御部2−1〜2−nに供給する駆動電圧を制御して、ある周波数を有する電磁波w11が、電磁波伝搬制御部2−1,2−2で透過し、他の電磁波伝搬制御部で反射するように設定する。たとえば、シート番号“1”,“2”の電磁波伝搬制御部2−1,2−2では駆動電圧を小さく(または0V)にしてプラズマを発生させず、他の電磁波伝搬制御部では駆動電圧をプラズマ発生電圧よりも大きくしてプラズマを発生させる。これにより、シーケンス2での電磁波w11の反射点は、シート番号“3”の電磁波伝搬制御部の表面となる。
【0092】
シーケンス3:駆動電圧制御部3jは、電磁波伝搬制御部2−1〜2−nに供給する駆動電圧を制御して、ある周波数を有する電磁波w11が、シート番号“1”〜“3”の電磁波伝搬制御部で透過し、他の電磁波伝搬制御部で反射するように設定する。これにより、シーケンス3での電磁波w11の反射点は、シート番号“4”の電磁波伝搬制御部の表面となる。
【0093】
シーケンスm−1:駆動電圧制御部3jは、電磁波伝搬制御部2−1〜2−nに供給する駆動電圧を制御して、ある周波数を有する電磁波w11が、シート番号“n−1”,“n”の電磁波伝搬制御部で反射し、他の電磁波伝搬制御部で透過するように設定する。これにより、シーケンスm−1での電磁波w11の反射点は、シート番号“n−1”の電磁波伝搬制御部の表面となる。
【0094】
シーケンスm:駆動電圧制御部3jは、電磁波伝搬制御部2−1〜2−nに供給する駆動電圧を制御して、ある周波数を有する電磁波w11が、シート番号“n”の電磁波伝搬制御部で反射し、他の電磁波伝搬制御部で透過するように設定する。これにより、シーケンスmでの電磁波w11の反射点は、シート番号“n”の電磁波伝搬制御部の表面となる。
【0095】
その後、駆動電圧制御部3jは、上記のシーケンスを遡る設定を行う。すなわち、駆動電圧制御部3jは、次に再び、シーケンスm−1の設定を行い、シーケンス1の設定まで順に遡っていく。駆動電圧制御部3jは、以上のようなシーケンスの設定を繰り返して、電磁波w11を反射する層(反射点の位置(深さ))を変動させることで、反射波w11aをドップラーシフトさせることができる。
【0096】
なお、各シーケンスにおける電磁波伝搬制御部2−1〜2−nの設定については上記の例に限定されず、他の組み合わせであってもよい。たとえば、上記の例では、駆動電圧制御部3jは、反射点をシート番号“2”,“3”,“4”,…の順に変動させるような設定を行っているが、反射点をシート番号“1”,“3”,“5”,…の順に変動させるような設定を行うようにしてもよい。
【0097】
また、上記の設定例で、電磁波w11を反射させる設定となっている電磁波伝搬制御部においても、駆動電圧制御部3jの制御のもと電磁波w11の一部の大きさを透過させることで、透過波w11bにおいてもドップラーシフトの影響を加えることができる。
【0098】
なお、シーケンスの間隔は、たとえば、電磁波伝搬制御装置1jを搭載する移動体(たとえば、車両、艦船、航空機)の速度に応じて設定する。シーケンスの間隔は一定であってもよいし、可変であってもよい。これにより、反射波w11aを検出して、移動体の位置を特定しようとする悪意あるものに対して、停止している移動体があたかも移動しているものと惑わすことができるなどの効果が得られる。
【0099】
次に、複数の電磁波伝搬制御部の2つ目の制御例を示す。
2つ目の制御例は、複数の電磁波伝搬制御部2−1〜2−nにおいて、駆動電圧制御部3jが、駆動電圧をランダムに変化させるものである。これにより、電磁波w11を反射する層がランダムに変動し、反射波w11aと透過波w11bがランダムにドップラーシフトする。駆動電圧制御部3jは、ランダムに駆動電圧を変化させるために、たとえば、乱数発生器などが用いられる。
【0100】
図19は、複数の電磁波伝搬制御部の2つ目の制御例を示す図である。シート番号は、電磁波伝搬制御部2−1〜2−nの並び順を示している。
電磁波伝搬制御装置1jは、駆動電圧制御部3jでの駆動電圧の制御により、たとえば、以下のシーケンス1〜mの設定を所定の間隔で行う。
【0101】
シーケンス1:駆動電圧制御部3jは、電磁波伝搬制御部2−1〜2−nに供給する駆動電圧をランダムに変化させる。
図19の例では、ある周波数を有する電磁波w11が、シート番号“2”の電磁波伝搬制御部2−2で反射し、他の電磁波伝搬制御部では透過するように設定されている。これにより、シーケンス1での電磁波w11の反射点は、シート番号“2”の電磁波伝搬制御部2−2の表面となる。
【0102】
シーケンス2:さらに駆動電圧制御部3jは、電磁波伝搬制御部2−1〜2−nに供給する駆動電圧をランダムに変化させる。
図19の例では、ある周波数を有する電磁波w11が、電磁波伝搬制御部2−1で反射し、他の電磁波伝搬制御部で透過するように設定されている。これにより、シーケンス2での電磁波w11の反射点は、シート番号“1”の電磁波伝搬制御部2−1の表面となる。
【0103】
シーケンス3:さらに駆動電圧制御部3jは、電磁波伝搬制御部2−1〜2−nに供給する駆動電圧をランダムに変化させる。
図19の例では、ある周波数を有する電磁波w11が、シート番号“3”の電磁波伝搬制御部で反射し、他の電磁波伝搬制御部で透過するように設定されている。これにより、シーケンス3での電磁波w11の反射点は、シート番号“3”の電磁波伝搬制御部の表面となる。
【0104】
シーケンスm:m番目のシーケンスでも同様に、駆動電圧制御部3jは、電磁波伝搬制御部2−1〜2−nに供給する駆動電圧をランダムに変化させる。
図19の例では、ある周波数を有する電磁波w11が、シート番号“n”の電磁波伝搬制御部で反射し、他の電磁波伝搬制御部で透過するように設定されている。これにより、シーケンス3での電磁波w11の反射点は、シート番号“n”の電磁波伝搬制御部の表面となる。
【0105】
以上のように複数の電磁波伝搬制御部2−1〜2−nにおいて、駆動電圧制御部3jは、駆動電圧をランダムに変化させることで、電磁波w11が反射する層(反射点の位置(深さ))をランダムに変動させることができる。これにより反射波w11aや透過波w11bがランダムにドップラーシフトするようになる。
【0106】
なお、シーケンスの間隔は、たとえば、電磁波伝搬制御装置1jを搭載する移動体の速度に応じて設定する。シーケンスの間隔は一定であってもよいし、可変であってもよい。これにより、反射波w11aを検出して、移動体の位置を特定しようとする悪意のあるものに対して、移動体の位置が特定されないように惑わすことができるなどの効果が得られる。
【0107】
(第12の実施の形態)
図20は、第12の実施の形態の電磁波伝搬制御装置の一例を示す図である。また、
図21は、
図20のA−A線における電磁波伝搬制御部の断面を示す図である。
【0108】
第12の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1kにおいて、電磁波伝搬制御部2kは、球状に成形された膜状のプラズマ発生部10k−1,10k−2、…,10k−nが複数入れ子状に束ねられて配置されている。なお、
図21では、プラズマ発生部10k−1〜10k−nは接して配置されているが、所定の間隔を空けて配置されていてもよい。
【0109】
プラズマ発生部10k−1〜10k−nは、電極15−1,15−2,…,15−nを有しており、駆動電圧生成部4−1〜4−nから供給される駆動電圧に応じたプラズマ密度のプラズマを筺体13k−1,13k−2,…,13k−n内に発生する。駆動電圧生成部4−1〜4−nは、駆動電圧制御部3kによって制御されている(
図21では図示が省略されている)。なお、駆動電圧制御部3kは、各プラズマ発生部10k−1〜10k−nごとに設けられていてもよい。
【0110】
たとえば、駆動電圧制御部3kは、球状の電磁波伝搬制御部2kにルネベルグレンズと同様の機能を行わせるように、各プラズマ発生部10k−1〜10k−nに供給する駆動電圧を制御する。ルネベルグレンズは、全方向の空間からの入射電磁波を元の方向に均一に反射させる機能を有するものである。電磁波伝搬制御部2kをルネベルグレンズとして機能させるために、駆動電圧制御部3kは、たとえば、以下のような制御を行う。
【0111】
図22は、電磁波伝搬制御部による電磁波の制御例を示す図である。
駆動電圧制御部3kは、最外殻のプラズマ発生部10k−nが、入射される電磁波w12のレベルの半分を透過し、残りの半分を反射するようなプラズマ周波数のプラズマを発生するように、駆動電圧を調整する。駆動電圧制御部3kは、さらに、電磁波w12が、プラズマ発生部10k−nの内周側の表面で焦点が合うように、他のプラズマ発生部に対して供給する駆動電圧を調整する。たとえば、駆動電圧制御部3kは、電磁波伝搬制御部2kの内側のプラズマ発生部になるほど駆動電圧が小さくなるよう調整し、
図22に示すように電磁波w12を徐々に屈折させ、プラズマ発生部10k−nの裏側表面の点p1で焦点が合うようにする。これにより、電磁波伝搬制御部2kは、電磁波w12を入射方向と同一方向に均一に反射することができるようになる。
【0112】
このように、本実施の形態の電磁波伝搬制御装置1kでは、電磁波伝搬制御部2kをルネベルグレンズとして機能させることができる。また、駆動電圧制御部3kによる駆動電圧の制御により、プラズマ発生部10k−1〜10k−nで発生するプラズマ密度を調整することで、式(1)の関係からプラズマ周波数を変化させることができ、入射される電磁波の周波数に応じた伝搬制御が可能である。
【0113】
以上、実施の形態に基づき、本発明の電磁波伝搬制御装置及び電磁波伝搬制御方法の一観点について説明してきたが、これらは一例にすぎず、上記の記載に限定されるものではない。
【0114】
たとえば、上記の各実施の形態を組み合わせてもよい。たとえば、
図4に示した電磁波検出部6を各実施の形態で用いてもよい。たとえば、電磁波検出部6を、第6の実施の形態の電磁波伝搬制御装置1eで用いて、フェージングされた透過波または屈折波を検出し、それに応じて、磁気発生部7で発生する磁界の強さを変えるようにしてもよい。
【0115】
また、たとえば、
図3に示したコーナリフレクタ形状の電磁波伝搬制御部2aで発生するプラズマに、
図9に示したように磁界を加えて電磁波をフェージングさせてもよいし、電磁波伝搬制御部2aに供給する駆動電圧を、
図10のように変調するようにしてもよい。また、
図13に示したメタマテリアルパターンを、各実施の形態の電磁波伝搬制御部で発生させるようにしてもよい。このように、種々の組み合わせが可能である。