特許第6048276号(P6048276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048276
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】ステアリングサポートメンバーの構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
   B62D25/08 J
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-68977(P2013-68977)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-189238(P2014-189238A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】渥美 亮
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/036780(WO,A1)
【文献】 特開2002−274433(JP,A)
【文献】 米国特許第06851742(US,B1)
【文献】 特開2009−208590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向に沿って架設され、左右両端が車体側部に取付けられる軽合金製のステアリングサポートメンバーと、車両前方に位置する車体パネルとの間に、前記ステアリングサポートメンバーとは別体のステーを設け、前記車体パネルから前記ステー及び前記ステアリングサポートメンバーを車両前後方向で一直線状に連接したステアリングサポートメンバーの構造において、
前記ステーは、前記ステアリングサポートメンバーの内側に重ねられて固定され、この固定箇所には、前記ステー及び前記ステアリングサポートメンバーの一部を互いに対応する突出形状に形成した突出部が設けられ、これら突出部において、締結部材を突出方向に沿って前記ステアリングサポートメンバー及び前記ステーに貫通させて締結することにより、前記ステアリングサポートメンバーと前記ステーとが固定されているとともに、前記ステーには、前記固定箇所から連続して形成された切欠きが車両前方へ向かって延在し
前記ステー及び前記ステアリングサポートメンバーのいずれか一方には、少なくとも前記突出部の突出方向へ延びる複数のリブが車両前後方向に沿って設けられ、これらリブは、相手部材の前記ステアリングサポートメンバーもしくは前記ステーに当接するように構成されていることを特徴とするステアリングサポートメンバーの構造。
【請求項2】
前記ステアリングサポートメンバーの前記ステーとの固定部は、車両前方へ向かって突出して形成され、前記ステアリングサポートメンバーの固定部及び前記ステーは、車両前方へ向かって幅狭となる形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のステアリングサポートメンバーの構造。
【請求項3】
前記ステアリングサポートメンバーの固定部及び前記ステー全体の形状は、車両前方へ向かって先細りとなる円錐形状に形成されていることを特徴とする請求項に記載のステアリングサポートメンバーの構造。
【請求項4】
前記ステーと前記ステアリングサポートメンバーとの固定箇所は、前記ステアリングサポートメンバーのステアリングシャフト取付部よりも車両前方側に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のステアリングサポートメンバーの構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両幅方向に沿って架設され、左右両端が車体側部に取付けられる軽合金製の部材であって、ステアリングシャフト等を支持するステアリングサポートメンバーの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の室内側には、ステアリングシャフト等を支持するステアリングサポートメンバーが車両幅方向に沿って架設されており、該ステアリングサポートメンバーは、車両幅方向の左右両端が車体側部に取付けられている。近年、このステアリングサポートメンバーとして、比強度や比剛性に優れている軽合金製の剛性部材が用いられている。そこで、軽合金製のステアリングサポートメンバーには、その優れた特性を活かすために、車室内の構成部品に適合することが求められている。
【0003】
このような軽合金製のステアリングサポートメンバーの中には、当該ステアリングサポートメンバーとは別体の結合ブラケットを設け、当該結合ブラケットをステアリングサポートメンバーと車両前方の車体パネルとの間に配置し、当該結合ブラケットによって、これら車体パネルとステアリングサポートメンバーとを結合する構造のものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−292420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のステアリングサポートメンバーの構造にあっては、ステアリングサポートメンバーの強度及び剛性が高過ぎてしまい、車両前方からの外部荷重が車体パネル及び結合ブラケットを介してそのままステアリングサポートメンバーに伝達されることになるので、車両前方からの外部荷重を受けた時に、当該荷重を吸収する機構もしくは当該荷重を別方向に分散させる構造を車室内の構成部品に設ける必要が生じることになる。その結果、従来のステアリングサポートメンバーの構造では、車室内の構成部品の構造が複雑化するとともに重量増大を招き、部品のコスト高を招来するという問題を有している。
【0006】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、通常時にはステーとステアリングサポートメンバーとの安定した固定状態を確保し、車両前方からの外部荷重を受けた時にはステーとステアリングサポートメンバーとの固定状態を円滑に解除し、ステーの車両後方への移動によって車両前方からの外部荷重を吸収するとともに、解除方向へのたわみの発生を促進させることが可能なステアリングサポートメンバーの構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、車両幅方向に沿って架設され、左右両端が車体側部に取付けられる軽合金製のステアリングサポートメンバーと、車両前方に位置する車体パネルとの間に、前記ステアリングサポートメンバーとは別体のステーを設け、前記車体パネルから前記ステー及び前記ステアリングサポートメンバーを車両前後方向で一直線状に連接したステアリングサポートメンバーの構造において、前記ステーは、前記ステアリングサポートメンバーの内側に重ねられて固定され、この固定箇所には、前記ステー及び前記ステアリングサポートメンバーの一部を互いに対応する突出形状に形成した突出部が設けられ、これら突出部において、締結部材を突出方向に沿って前記ステアリングサポートメンバー及び前記ステーに貫通させて締結することにより、前記ステアリングサポートメンバーと前記ステーとが固定されているとともに、前記ステーには、前記固定箇所から連続して形成された切欠きが車両前方へ向かって延在し、前記ステー及び前記ステアリングサポートメンバーのいずれか一方には、少なくとも前記突出部の突出方向へ延びる複数のリブが車両前後方向に沿って設けられ、これらリブは、相手部材の前記ステアリングサポートメンバーもしくは前記ステーに当接するように構成されている。
【0009】
さらに、本発明において、前記ステアリングサポートメンバーの前記ステーとの固定部は、車両前方へ向かって突出して形成され、前記ステアリングサポートメンバーの固定部及び前記ステーは、車両前方へ向かって幅狭となる形状に形成されている。
【0010】
そして、本発明において、前記ステアリングサポートメンバーの固定部及び前記ステー全体の形状は、車両前方へ向かって先細りとなる円錐形状に形成されている。
【0011】
また、本発明において、前記ステーと前記ステアリングサポートメンバーとの固定箇所は、前記ステアリングサポートメンバーのステアリングシャフト取付部よりも車両前方側に設けられている。
【発明の効果】
【0012】
上述の如く、本発明に係るステアリングサポートメンバーの構造は、車両幅方向に沿って架設され、左右両端が車体側部に取付けられる軽合金製のステアリングサポートメンバーと、車両前方に位置する車体パネルとの間に、前記ステアリングサポートメンバーとは別体のステーを設け、前記車体パネルから前記ステー及び前記ステアリングサポートメンバーを車両前後方向で一直線状に連接したものであり、前記ステーは、前記ステアリングサポートメンバーの内側に重ねられて固定され、この固定箇所には、前記ステー及び前記ステアリングサポートメンバーの一部を互いに対応する突出形状に形成した突出部が設けられ、これら突出部において、締結部材を突出方向に沿って前記ステアリングサポートメンバー及び前記ステーに貫通させて締結することにより、前記ステアリングサポートメンバーと前記ステーとが固定されているとともに、前記ステーには、前記固定箇所から連続して形成された切欠きが車両前方へ向かって延在し、前記ステー及び前記ステアリングサポートメンバーのいずれか一方には、少なくとも前記突出部の突出方向へ延びる複数のリブが車両前後方向に沿って設けられ、これらリブは、相手部材の前記ステアリングサポートメンバーもしくは前記ステーに当接するように構成されている。
したがって、本発明のステアリングサポートメンバーの構造によれば、通常時には、ステーとステアリングサポートメンバーとの安定した固定状態を確保でき、車両前方からの外部荷重を受けた時には、当該外部荷重が突出方向と交差する方向に作用し、ステーとステアリングサポートメンバーとの固定状態を円滑に解除できるとともに、突出部及び切欠きがガイドレールの役割を果たすことでステーの移動方向が定まり、ステーが車両後方へ移動することによって、車両前方からの外部荷重を効率的に吸収することができる。しかも、連続して形成された切欠きは、ステーとステアリングサポートメンバーとの固定方向と異なる方向に向かって延びているので、ステアリングサポートメンバーに固定されたステーの突出方向以外へ変形を促進するとともに、固定解除方向へのたわみの発生を促進することができる。
また、本発明のステアリングサポートメンバーの構造によれば、ステーとステアリングサポートメンバーとがリブを介して線で当接する構造となり、車両前方からの外部荷重を受けた時に、ステーとステアリングサポートメンバーとの固定状態を容易に解除することができる。しかも、通常時においては、ステーとステアリングサポートメンバーとの固定状態を安定させることができる。
【0014】
さらに、本発明の構造において、前記ステアリングサポートメンバーの前記ステーとの固定部は、車両前方へ向かって突出して形成され、前記ステアリングサポートメンバーの固定部及び前記ステーは、車両前方へ向かって幅狭となる形状に形成されているので、車両前方からの外部荷重を受け、ステーとステアリングサポートメンバーとの固定状態が解除され、ステーが車両後方へ移動する際に、当該ステーがステアリングサポートメンバーに当接して突っ張る可能性を減らすことができ、車両前方からの外部荷重を確実に吸収できる。それに加えて、本発明の構造によれば、ステーと車体パネルとの当接部の面積が小さくなるので、車体パネルからの振動の受けが少なくなり、ステアリングサポートメンバーへの振動伝播の大きさを低減させることができる。
【0015】
また、本発明の構造において、前記ステアリングサポートメンバーの固定部及び前記ステー全体の形状は、車両前方へ向かって先細りとなる円錐形状に形成されているので、ステーの内部及びステアリングサポートメンバーの固定部における車両前方からの外部荷重をバランス良く周辺部分に伝播することができる。これにより、ステーやステアリングサポートメンバーの固定部に角部が存在しないように構成し、外部荷重が当該角部に集中してステーやステアリングサポートメンバーなどの部品が破壊される可能性を無くすことができる。
【0016】
そして、本発明の構造において、前記ステーと前記ステアリングサポートメンバーとの固定箇所は、前記ステアリングサポートメンバーのステアリングシャフト取付部よりも車両前方側に設けられているので、ステアリングサポートメンバーがステアリングシャフトも含めた剛体となり、車両前方からの外部荷重を受けた時のステアリングサポートメンバーの変形を防止でき、相対的にステーのステアリングサポートメンバーとの固定解除を助長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る構造のステアリングサポートメンバー及びステーが車両の車室内の車体に取付けられた状態を示す斜視図である。
図2図1におけるX−X線断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る構造のステアリングサポートメンバー及びステーを示す側面図である。
図4図3のステーを拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1図4は本発明の実施形態に係るステアリングサポートメンバーの構造を示すものである。また、図1及び図3において、矢印F方向は車両前方を示している。
【0019】
車両の車室内の前方側上部には、図1に示すように、車両幅方向に沿って延在するステアリングサポートメンバー1が架設されており、このステアリングサポートメンバー1は、比強度や比剛性に優れている軽合金製の部材を用いて一体的に形成された剛性部品である。また、ステアリングサポートメンバー1は、各種の艤装品を設置する大型樹脂成形部品のインストルメントパネル(図示せず)の内部に配置されており、当該インストルメントパネルやステアリングシャフト2などを支持している。なお、図1では、運転席側のステアリングサポートメンバー1のみを示している。
【0020】
本実施形態のステアリングサポートメンバー1は、図1に示すように、車両幅方向の左右両端が端部結合ブラケット3を介して車体側部のダッシュサイドパネル4に取付けられている。また、本実施形態のステアリングサポートメンバー1は、車両前方に位置するダッシュパネルなどの車体パネル5に取付けられる構造となっている。そのため、ステアリングサポートメンバー1と車体パネル5との間には、ステアリングサポートメンバー1とは別体のステー6が設けられており、車体パネル5からステー6及びステアリングサポートメンバー1が車両前後方向で一直線状に連接されている。
【0021】
本実施形態のステー6は、図1及び図3に示すように、車両前後方向に沿って配置されており、前端部分は車体パネル5に固定され、後端部分はステアリングサポートメンバー1の内側に重ねられて固定されている。ステー6とステアリングサポートメンバー1との固定箇所Pには、図2に示すように、ステー6及びステアリングサポートメンバー1の一部を互いに対応する突出形状に形成した突出部6a,6b,1a,1bが設けられており、該突出部6a,6b,1a,1bの突出方向は、車両上下方向に設定されている。なお、ステアリングサポートメンバー1の突出部1a,1bは、後述する固定部(ステー6との固定部)13の先端部分に設けられている。
そして、ステアリングサポートメンバー1とステー6とは、これら突出部6a,6b,1a,1bにおいて、締結部材のボルト7の軸部を突出方向に沿ってステアリングサポートメンバー1及びステー6を貫通させ、先端ネジ部を外側下部に配置したナット8に螺合させて締め付けることにより互いに固定されている。すなわち、通常状態では、ステアリングサポートメンバー1とステー6とが突出部1a,1b,6a,6bにおいて固定されていることから、高い位置精度を確保した固定状態となっている。さらに、突出方向に圧力が掛かった状態では固定状態が安定するため、軽合金製の高い剛性及び強度を有するステアリングサポートメンバー1を車体パネル5に別体のステー6を介在させながら、安定して強固に固定することが可能に構成されている。
【0022】
このため、突出部1a,1b,6a,6bは、ステアリングサポートメンバー1及びステー6の上下部の対向位置にそれぞれ設けられており、上側突出部1a,6aの突出方向は車両上方となり、下側突出部1b,6bの突出方向は車両下方となるように設定されている。しかも、突出部1a,1b,6a,6bの固定面は、上下で重ね合わせることが可能な平坦面に形成されており、その中間部分の対応位置には、ボルト7の軸部を貫通させるボルト孔9,10がそれぞれ穿設されている。
【0023】
また、ステー6及びステアリングサポートメンバー1のいずれか一方、本実施形態ではステー6の外周面には、図2及び図4に示すように、少なくとも突出部6a,6bの突出方向へ延びる複数のリブ11が車両前後方向に沿って設けられ、これらリブ11は、相手部材のステアリングサポートメンバー1の内周面に当接するように構成されている。そのため、ステー6とステアリングサポートメンバー1とは、リブ11を介して線で当接する構造となり、車両前方からの外部荷重を受けた時に、ステー6とステアリングサポートメンバー1との固定状態を容易に解除し、通常時においては、ステー6とステアリングサポートメンバー1との固定状態を安定させることが可能になっている。なお、本実施形態では、ステー6の左右両側の外周面の上下位置にも、突出部6a,6bのリブ11と同様のリブ11aが設けられている。
【0024】
一方、本実施形態のステアリングサポートメンバー1の運転席側前方であって、ステー6の後端部分との固定箇所Pには、図1及び図3に示すように、車両幅方向の本体部12から車両前方へ向かって突出して一体的に形成された固定部13が設けられている。このステアリングサポートメンバー1の固定部13及びステー6は、車両前方へ向かって幅狭となる形状に形成されている。具体的には、ステアリングサポートメンバー1の固定部13及びステー6全体の形状は、車両前方へ向かって先細りとなる円錐形状に形成されており、固定部13の先端部分の内径は、ステー6の後端部分の外径とほぼ同じ大きさに設定されている。このため、ステー6は、その先端部分をステアリングサポートメンバー1の固定部13の車両後方側から挿入し、当該先端部分を固定部13の車両前方側から取り出すことにより、ステー6の後端部分が固定部13の先端部分の内側に重合配置されて固定されるようになっている。
【0025】
このような配置、形状及び大きさの関係にあるステー6及びステアリングサポートメンバー1の固定部13が車両前方からの外部荷重を受けた場合、ステー6の後端部分とステアリングサポートメンバー1の固定部13との固定状態が解除されながら、ステー6が固定部13の内部を車両後方へ向かって移動することになり、ステー6がステアリングサポートメンバー1の本体部12に当接して突っ張るということは起こらず、車両前方からの外部荷重が吸収されることになる。また、ステー6の前端部分と車体パネル5との当接部の面積が小さくなり、車体パネル5からの振動の受けが少なくなり、ステアリングサポートメンバー1への振動伝播が減ることになる。さらに、ステー6の内部及びステアリングサポートメンバー1の固定部13における車両前方からの外部荷重がバランス良く周辺部分に伝播され、外部荷重が集中するような角部も形成されていないことになる。
【0026】
また、本実施形態のステー6の上下部には、図1及び図4に示すように、ステアリングサポートメンバー1の固定部13との固定箇所Pから連続して形成された切欠き14が、それぞれ車両前方へ向かって先端部付近まで延在している。これら上下の切欠き14は、ステー6の移動方向が定まるガイドレールの役割を果たすものであり、ステー6が車両後方へ移動することによって、車両前方からの外部荷重が効率的に吸収されるように構成されている。しかも、連続して形成された上下の切欠き14は、ステー6の後端部分とステアリングサポートメンバー1の固定部13との固定方向とは交差しており、異なる方向に向かって延びていることから、ステアリングサポートメンバー1の固定部13に固定されたステー6の突出方向以外への変形が促進されるとともに、解除方向へのたわみの発生が促進されるようになっている。
【0027】
さらに、本実施形態の構造では、図1に示すように、ステー6とステアリングサポートメンバー1の固定部13との固定箇所Pは、ステアリングサポートメンバー1のステアリングシャフト取付部15の位置よりも車両前方側に設けられている。このような配置によって、ステアリングサポートメンバー1がステアリングシャフト2も含めた剛体を構成することになり、車両前方からの外部荷重を受けた時のステアリングサポートメンバー1の変形が防止され、相対的にステー6のステアリングサポートメンバー1との固定解除が助長されるようになっている。
【0028】
このように本発明の実施形態に係るステアリングサポートメンバー1の構造は、ステアリングサポートメンバー1として軽合金製の剛性部材を用い、このステアリングサポートメンバー1と車両前方の車体パネル5との間に、ステアリングサポートメンバー1とは別体のステー6を設け、車体パネル5からステー6及びステアリングサポートメンバー1を車両前後方向で一直線状に連接しており、ステー6は、ステアリングサポートメンバー1の車両前方へ向かって突出する固定部13の内側に重ねられて固定され、この固定箇所Pに、ステー6の後端部分及びステアリングサポートメンバー1の固定部13の一部を互いに対応する突出形状に形成した突出部6a,6b,1a,1bが設けられ、これら突出部6a,6b,1a,1bにおいて、ボルト7を車両上下方向の突出方向に沿ってステアリングサポートメンバー1の固定部13及びステー6の後端部分に貫通させ、外側下部に配置したナット8と螺合させて締結することにより、ステアリングサポートメンバー1の固定部13とステー6の後端部分とが固定され、かつステー6の上下部には固定箇所Pから連続形成された切欠き14が車両前方へ向かって延在している。このため、本発明のステアリングサポートメンバー1の構造によれば、通常時はステアリングサポートメンバー1とステー6との安定した固定状態を確保できる一方、車両前方からの外部荷重を受けた時には当該外部荷重が突出方向と交差する方向に作用し、両者の固定状態を円滑に解除でき、ステー6が車両後方へ向かって移動することによって当該外部荷重を効率的に吸収できるとともに、ステー6及びステアリングサポートメンバー1の突出方向以外の方向への変形を促進し、かつ固定解除方向へのたわみを促進できる。
【0029】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【0030】
例えば、既述の実施の形態では、別体のステー6をステアリングサポートメンバー1の固定部13に固定しているが、適応車種などに応じて固定部13を設けることなく、ステー6及びステアリングサポートメンバー1の本体部13の前後長さを調整することにより、ステー6を本体部13に直接固定するようにしても良い。
また、既述の実施の形態では、突出部1a,1b,6a,6bをステアリングサポートメンバー1の固定部13及びステー6の上下部に設けているが、適応車種などによって固定部13及びステー6の左右両側部に設けても良い。この場合の突出部1a,1b,6a,6bの突出方向は車両幅方向となり、締結部材のボルト7は車両幅方向に沿ってステアリングサポートメンバー1の固定部13及びステー6に貫通させて締結することになる。
さらに、既述の実施の形態では、複数のリブ11,11aをステー6の外周面に設けているが、これらリブ11,11aをステアリングサポートメンバー1の内周面に設け、相手部材のステー6の外周面に当接するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 ステアリングサポートメンバー
1a,1b 突出部
2 ステアリングシャフト
3 端部結合ブラケット
4 ダッシュサイドパネル(車体側部)
5 車体パネル
6 ステー
6a,6b 突出部
7 ボルト(締結部材)
8 ナット
9,10 ボルト孔
11,11a リブ
12 本体部
13 固定部
14 切欠き
15 ステアリングシャフト取付部
P 固定箇所
図1
図2
図3
図4