(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機材料は、銅フタロシアニン、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム、ポリフィリン含有錯体、ルテニウム錯体、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジン、ペクチン、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン、N,N’−ジフェニルN,N’−ジ(m−トリル)ベンジジン、トリフェニルアミン誘導体、クマリン、ローダミン、フルオレセイン、ピレン、ポリアミド、ポリオレフィン、バソクプロイン、シロール誘導体、ポリピロール系高分子材料、ポリアニリン系高分子材料、ポリチオフェン系高分子材料、オリゴチオフェン系高分子材料、ポリアセチレン系高分子材料、ポリパラフェニレンビニレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリシラン、ポリイミド、ポリフルオレンからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の粒子状物質の製造方法。
前記有機材料はN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジンおよび/またはN,N’−ジフェニルN,N’−ジ(m−トリル)ベンジジンである請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の粒子状物質の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の粒子状物質の製造方法は、上述したように、粒子と、コート層とを含む粒子状物質を製造する方法である。本発明の製造方法で得られた粒子状物質は、正極材料や負極材料等の電極材料として使用することもできるし、或いは、蛍光灯用の蛍光物質粒子として用いることもできる。さらには、ドラッグデリバリーシステム(DDS)、有機EL(Organic Electro−Luminescence)、重合トナー等として用いることもできる。勿論、これ以外の用途に供することも可能である。なお、本発明の製造方法においては粒子を加熱するため、粒子としては熱変性し難い材料を選択するのが好ましい。
【0010】
粒子状物質が電極材料である場合には、負極活物質や正極活物質等の電極活物質を粒子として選択すれば良い。粒子として使用する負極活物質および正極活物質は特に限定されない。また、例えば粒子が蛍光灯用の蛍光物質粒子であれば、Si、Ca、Sb、Mn、Tb、Eu、Y
2O
3、LaPO
4からなる群から選ばれる少なくとも一種を好ましく用いることができる。粒子がDDS用の蛍光ラベル化剤であれば、スチレン、ブドウ糖、粉末状リポソーム、リン脂質、コレステロール脂質からなる群から選ばれる少なくとも一種を好ましく用いることができる。
【0011】
粒子が非水電解質二次電池用の負極活物質であれば、SiO
x、黒鉛、SnO
x、Ge、TiO
x、Niからなる群から選ばれる少なくとも一種を好ましく用いることができる。なお、SiO
xは、微細なSiと、Siを覆うSiO
2とで構成されるケイ素化合物であり、不均化反応によって生成すると言われている。一般に、酸素を断った状態であれば800℃以上で、ほぼすべてのSiOが不均化して二相に分離すると言われている。具体的には、非結晶性のSiO粉末を含む原料酸化ケイ素粉末に対して、真空中または不活性ガス中などの不活性雰囲気中で800〜1200℃、1〜5時間の熱処理を行うことで、非結晶性のSiO
2相および結晶性のSi相の二相を含むSiO
x粉末が得られる。SiO
xにおけるxの値は、0.3≦x≦1.6である。xが下限値未満であると、SiO
2に対するSiの比率が高くなるため、充放電時の体積変化が大きくなりすぎてサイクル特性が低下する。またxが上限値を超えると、SiO
2に対するSiの比率が低下してエネルギー密度が低下する。xの値は、0.5≦x≦1.5の範囲であるのが好ましく、0.7≦x≦1.2の範囲であるのがより好ましい。
【0012】
また、粒子が非水電解質二次電池用の正極活物質であれば、一般式:LiCoO
2、LiCo
pNi
qMn
rO
2(p+q+r=1、0<p<1、0≦q<1、0≦r<1)、Li
2MnO
2、Sなどの複合金属酸化物を粒子として選択できる。このうち、LiCo
pNi
qMn
rO
2(p+q+r=1、0<p<1、0≦q<1、0≦r<1)としては、LiCo
1/3Ni
1/3Mn
1/3O
2、LiCo
2/10Ni
5/10Mn
3/10O
2が例示され、LiCo
2/10Ni
5/10Mn
3/10O
2が特に好ましく使用される。
【0013】
粒子の粒径は特に限定しないが、後述するように減圧下で移動させつつコートするため、粒径の比較的小さなものであるのが好ましい。例えば、粒子の平均粒径は3nm〜30μm程度であるのが良い。なお、ここでいう平均粒径とは、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均粒子径を指す。また、粒子は一次粒子であっても良いし、二次粒子であっても良い。なお、粒子は成膜可能であれば良く、粒子の形状は、球状、扁平形状、多面体状等種々の形状を選択し得る。
【0014】
本発明の製造方法においては、上述した粒子の表面にコート層をスパッタ成膜する。また、コート層は炭素(C)を含む。したがって、コート層の材料すなわち、スパッタ用のターゲットとしては、炭素(C)を含む材料を選択することができる。ところで、スパッタ用のターゲットとして無機材料としての炭素、つまり、ダイヤモンドライクカーボン(所謂DLC)等のカーボン材料が選択される場合がある。しかし、ターゲットとしてこの種の無機カーボン材料を選択する場合には、コート層中の炭素結合がSP
3混成軌道中心になり易い。この場合、隣接する炭素元素同士が三次元的に配置されるため、導電性および密着性の高いコート層を得難い可能性がある。そして、その結果、粒子に対するコート層の密着性が十分でなくなる可能性がある。例えばDLC膜は、SP
3結合のダイヤモンド構造をとるために非常に強度が高く、硬質膜となり、導電性や密着性を示さなくなる。
【0015】
一方、ターゲットとして有機材料、つまり、無機材料としての炭素および炭化水素以外の炭素化合物を選択する場合には、コート層中の炭素結合がSP
2混成軌道中心になり易い。この場合、隣接する炭素元素同士が二次元的に配置されるため、導電性および密着性に優れるコート層を得易い。有機材料からなるターゲットを用いて得られたコート層は、例えば、グラフェン構造をなすと考えられる。そして、後述するように成膜を行ないつつ加熱(焼成)を行なうことで、グラフェン層が積層された多層グラフェン構造を有するコート層が得られると考えられる。本発明の製造方法においては、ターゲットとして有機材料を含むものを用いることで、強度に優れるコート層を得ることができ、ひいては、コート層と粒子との密着性を高めることができる。なお、炭素(C)がグラフェン構造をなすことで、コート層の導電性が向上すると考えられる。つまり、本発明の製造方法によると導電性に優れる粒子状物質を製造することが可能である。
【0016】
上述したように、有機材料としては、炭素および炭化水素以外の炭素化合物を使用でき、炭素元素(C)以外の組成物は特に限定されない。また、有機材料は高分子であっても良いし低分子であっても良い。例えば、有機材料としては、有機錯体、アミノ酸、糖、正孔輸送メルト材料、電子輸送材料、硫黄系有機材料、π共役系高分子材料、ポリフルオレン系高分子材料、その他の一般的な高分子材料から選ばれる少なくとも一種を選択可能である。
【0017】
このうち有機錯体としては、銅フタロシアニン、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(所謂Alq3)、ポリフィリン含有錯体、ルテニウム錯体からなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。また、アミノ酸としては、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジンからなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。糖としてはペクチンが挙げられ、蛍光剤としてはローダミン、フルオレセイン、ピレン、クマリンからなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。正孔輸送メルト材料としては、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(所謂α−NPD)、N,N’−ジフェニルN,N’−ジ(m―トリル)ベンジジン(所謂TPD)、トリフェニルアミン誘導体、ポリアミド、ポリオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。電子輸送材料としては、バソクプロイン(所謂BCP)、シロール誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。π共役系高分子材料としては、ポリピロール系高分子材料、ポリアニリン系高分子材料、ポリチオフェン系高分子材料、オリゴチオフェン系高分子材料、ポリアセチレン系高分子材料、ポリパラフェニレンビニレンからなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。ポリフルオレン系高分子材料としては、ポリフルオレン、ポリオクチルフルオレンからなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。その他の一般な高分子材料としては、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリシラン、ポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0018】
なお、本発明の製造方法においては、粒子の表面にコート層を形成(成膜)するとともにスパッタ成膜時に粒子を移動させる。このため、少なくともスパッタ成膜時において、ターゲットを粒子の上方に配置し、下方に位置する粒子に向けて炭素材料を飛散させるのが良いと考えられる。ターゲットの上方にて粒子を移動させかつスパッタ成膜を行なうのは困難だからである。そして、ターゲットを粒子の上方に配置するのであれば、ターゲットは粉末状でなくバルク状であるのが良いと考えられる。上記した各種有機材料は、何れも熱可塑性があり、例えば100℃〜300℃程度に加熱すると昇華せずに可塑化する。このため、これらの有機材料を用いる場合にはバルク状のターゲットを製造し易い利点がある。
【0019】
また、有機材料を含むターゲットと、無機材料を含むターゲットとを併用しても良い。この場合、有機材料を含むターゲットと、無機材料を含むターゲットとは一体化しても良いし、別体であっても良い。
【0020】
無機材料としては、カーボン、SiO等の非金属材料を用いても良い。或いは、無機材料として、銅、シリコン、スズ、チタン、ニッケル、ゲルマニウム等の金属材料を用いることもできる。これらの無機材料をターゲットとして併用することで、例えば、無機材料に由来する導電パスをコート層に形成でき、粒子状物質の導電性をさらに向上させ得る等の利点がある。
【0021】
スパッタ成膜方法としては、一般的な方法を用いれば良い。例えば、DC電源を用いたDCスパッタ法を用いても良いし、RF電源を用いたRFスパッタ法を用いても良い。有機材料が高分子であれば、RFスパッタ法を選択するのが好ましい。高分子の有機材料には導電性のない(或いは導電性の低い)ものがあるためである。高分子以外の有機材料に関しても、金属に比べると導電性が低いため、RFスパッタ法を選択するのが好ましい。なお、上述したように、無機材料(特に金属材料)を含むターゲットを、有機材料を含むターゲットと併用する場合も考えられる。この場合には、スパッタ成膜方法として、DCスパッタ法とRFスパッタ法とを併用しても良い。なお、コート層をスパッタ成膜することで、薄膜状(例えば0.1〜100nm程度)のコート層を得ることが可能である。
【0022】
粒子状物質が負極材料である場合、コート層の形成量は、粒子とコート層の合計に対して1〜50質量%とするのが良い。なお、本明細書において、x〜yなる範囲は上限値および下限値を含むものとする。コート層が1質量%未満では導電性向上の効果を得難く、50質量%を超えると、例えばSiO
x等の負極活物質の割合が相対的に減少して、負極容量が低下する可能性がある。したがって、コート層の形成量は5〜30質量%の範囲が好ましく、5〜20質量%の範囲がさらに望ましい。
【0023】
スパッタ成膜は、減圧下でおこなう。ここでいう減圧下とは、スパッタ成膜可能な程度に低圧であることを指し、例えば、真空度1×10
−2Pa〜100Pa程度であれば良い。より好ましくは真空度1×10
−1Pa〜50Pa程度であるのが良い。また、スパッタ成膜は、粒子を移動させつつ、かつ、加熱しつつおこなう。このとき加熱する対象は、より具体的には、粒子上に形成されつつあるコート層の前駆体(コート前駆層と呼ぶ)である。成膜と同時に、粒子上に形成されつつあるコート前駆層を加熱することで、炭素(C)が立体的に(粗に)結合するよりも先にコート前駆層を加熱処理して、薄膜状のコート層を得ることができる。そして、更に成膜と加熱とを続行することで、加熱処理された薄膜層を粒子上に複数積層して、炭素(C)が密に結合したコート層を得ることができる。また、コート層を構成する各々の薄膜層同士も密に積層される。換言すると、本発明の製造方法によると、コート前駆層の形成とコート前駆層の加熱とを同時に進行させることで、密着性および導電性に優れ、かつ、十分な膜厚のコート層を得ることができる。なお、上記したコート前駆層の加熱は、コート前駆層の焼成と換言することもできる。
【0024】
なお、予め粒子上にコート前駆層を成膜したものを加熱炉等で焼成する場合には、多層状のグラフェン層が粒子に十分に密着し難く、コート層の密着性に優れた粒子状物質を得難い場合がある。また、この場合には、炭素(C)の立体結合が進行した状態で加熱することで、コート層が粗になる可能性もある。そして、この場合には、導電性に優れる粒子状物質を得難い場合がある。
【0025】
スパッタ成膜時の加熱温度は特に限定されず、コート層を粒子の表面に十分に密着させ得る程度に高温であれば良い。好ましくは、コート層を焼成可能な温度であるのが良く、スパッタ成膜時における真空度に応じて適宜設定すれば良い。例えば真空度が1×10
−2Pa〜100Pa程度であれば、加熱温度は100℃〜600℃程度であるのが良い。この場合、加熱温度は500℃〜600℃程度であるのがより好ましく、500℃〜550℃程度であるのがさらに好ましい。なお、加熱温度が500℃〜550℃程度の場合には、真空度は1×10
−1Pa〜50Pa程度であれば良い。
【0026】
さらに、本発明の製造方法においては、スパッタ成膜時に粒子を移動させることで、粒子の表面全体にコート層を形成する。粒子は既知の種々の方法で移動させれば良い。例えば、粒子を収容した容器に外力を加えたり、粒子自体に外力を加えたりすることで、粒子を振動または回転させても良いし、または粒子を攪拌しても良い。その他の方法により粒子を移動させても良い。粒子の移動速度は特に限定しないが、コート層の密着性向上のためには4rpm程度であるのが好ましい。
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
実施例1の粒子状物質の製造方法は、有機材料を含むターゲットのみを用い、負極材料としての粒子状物質を製造する方法である。実施例1の粒子状物質の製造方法を模式的に表す説明図を
図1に示す。
【0029】
<負極活物質>
先ず、市販のSiO粉末をボールミルに入れて、Ar雰囲気下で、回転数450rpmで20時間ミリングした。その後、不活性ガス雰囲気中、かつ900℃の温度下で、2時間加熱処理を行った。これにより、SiO粉末が不均化されて、粒子状のケイ素酸化物(SiO
x)が得られた。このSiO
xについて、CuKαを使用したX線回折(XRD)測定を行ったところ、単体ケイ素と二酸化ケイ素とに由来する特有のピークが確認された。このことから、SiO
xには単体ケイ素と二酸化ケイ素が生成していること、つまり、SiO
xが不均化されていることがわかった。SiO
xの平均粒径は、2〜10μm程度であった。上記工程により不均化されたSiO
x(つまり負極活物質)は、実施例1の製造方法における粒子である。
【0030】
<ターゲット>
以下の準備工程、仮焼成工程、焼成工程により、スパッタ成膜に用いるターゲットを準備した。
【0031】
(準備工程)
円板状のバッキングプレートを準備した。バッキングプレートは無酸素銅を材料としてなる。このバッキングプレートに、SUS304製の成形用リングを載せ、成形用リングの内部に有機材料としてのα−NPDを100ml入れた。そして、成形用リング内の有機材料を均した。以上の工程で、バッキングプレート、成形用リングおよび有機材料からなるターゲット前駆材を得た。
【0032】
(仮焼成工程)
上記準備工程で得たターゲット前駆材を、真空チャンバに入れ、真空度5×10
−3Pa、150℃で2時間加熱した。この仮焼成工程により、有機材料を脱気し、かつ、有機材料中の水分を除去した。なお、このときの昇温速度は1℃/分であった。
【0033】
(焼成工程)
仮焼成工程後のターゲット前駆材を、さらに真空チャンバ内において真空度5×10
−3Paかつ、200℃で1時間加熱することで、ターゲット前駆材の更なる脱気および水分除去をおこなった。その後、ターゲット前駆材を当該真空チャンバ内において280℃で1時間加熱することで、ターゲット前駆材を焼成した。この焼成工程により、有機材料中の不純物を除去し、有機材料自体をなじませて、有機材料の材料充填率を高めることができる。なお、α−NPDの融点は280℃〜285℃であるため、この温度域にまで昇温することで、有機材料を溶融(可塑化)することができる。
【0034】
焼成工程により、有機材料がバッキングプレート上で完全(または略完全に)溶融し成形用リングに充填された。その後、真空チャンバを26℃、大気圧に降温および昇圧することで、ターゲット前駆材に含まれる有機材料を固化し、成形用リングの内部に沿った形状に成形した。さらにその後、ターゲット前駆材から成形用リングを取り外してターゲットを得た。
【0035】
〔成膜工程〕
上記工程で得た粒子1およびターゲット2を用い、RF電源によるスパッタ成膜を行なった。スパッタ成膜に用いた装置は、
図1に示すように、真空チャンバ3、ターゲット2(有機ターゲット)、試料台4、加振動器5、試料皿6および図略のヒータを備える。加振動器5は作動部50と駆動部51と駆動軸部52とを持つ。駆動部51は作動部50を動作(振動)させる部分であり、具体的にはモータである。作動部50は真空チャンバ3の内部に配置され、駆動部51は真空チャンバ3の外部に配置されている。駆動軸部52は駆動部51と作動部50とを接続する部分であり、駆動部51の駆動力を作動部50に伝達する。駆動軸部52は、真空チャンバ3に形成されている軸穴30に挿通されている。軸穴30と駆動軸部52との間は気密にシールされている。作動部50の上には試料台4が載置されている。試料台4は作動部50に伴って振動可能である。また、作動部50には図略の電極が取り付けられている。
【0036】
試料台4の上には、試料皿6が載置されている。試料皿6もまた作動部50および試料台4に伴って振動可能である。試料皿6の内部には上記の粒子1が収容されている。なお、真空室はアルゴンガス雰囲気、真空度1.4Pa、550℃に設定されている。参考までに、真空チャンバ3の内部の温度はおよび真空度は、有機材料であるα−NPDを焼成するのに十分な真空度および温度である。
【0037】
ターゲット2は、試料皿6の上方に配置されている。ターゲット2と試料皿6の上面との距離は約140mmである。ターゲット2にもまた図略の電極が取り付けられている。
【0038】
試料台4に取り付けられている電極およびターゲット2に取り付けられている電極にRF電源にて200Wで通電することで、粒子1の表面に向けて粒子状の有機材料7を飛散させ、粒子1の表面にコート層をスパッタ成膜した。カソード(すなわちターゲット2)の表面におけるRF電力は4.4w/cm
2であった。なお、このとき、加振動器5により試料皿6を振動させて、試料皿6中の粒子1を攪拌し続けた。したがって、粒子1の表面全面にコート層が形成された。このときの成膜時間は1.5時間であり、コート層の膜厚は25nmであり、成膜レートは0.02nm/秒であった。
【0039】
以上の工程により、粒子の表面に炭素(C)を含むコート層が形成されてなる粒子状物質を得た。この粒子状物質におけるコート層は粒子に対する密着性に優れていた。また、この粒子状物質は導電性にも優れていた。
【0040】
(その他)本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。