特許第6048294号(P6048294)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048294
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】PWM信号出力装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/06 20060101AFI20161212BHJP
   H02P 21/22 20160101ALI20161212BHJP
   H02P 27/08 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   H02P6/06
   H02P21/22
   H02P27/08
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-88312(P2013-88312)
(22)【出願日】2013年4月19日
(65)【公開番号】特開2014-212641(P2014-212641A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2015年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 稔
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−077609(JP,A)
【文献】 特開2008−054466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/00− 6/34
H02P 21/00− 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されるモータの制御指令に基づいてPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成し、駆動回路(3)に出力するPWM信号出力装置において、
前記制御指令と、前記駆動回路を介して前記モータに通電される電流と、前記モータの回転位置とに基づいて、前記PWM信号を生成するための第1デューティ指令値を少なくともPWM制御周期ごとに演算する第1演算手段(42)と、
この第1演算手段よりも演算内容を簡略化することで、前記第1演算手段よりも短い時間で第2デューティ指令値を演算する第2演算手段(43)と、
常には前記第1演算手段により前記第1デューティ指令値を演算させて、前記演算が期限時間まで完了するか否かを監視し、
前記演算が前記期限時間まで完了しないと判断すると、前記第1デューティ指令値に替えて、前記第2演算手段より演算された前記第2デューティ指令値を出力するように制御する制御手段(24,25)と、
前記第1演算手段としての第1演算ユニットと、
この第1演算ユニットとは独立に構成される、前記第2演算手段としての第2演算ユニットとを備えることを特徴とするPWM信号出力装置。
【請求項2】
前記第2演算手段は、前記第2デューティ指令値を、前記制御指令と前記モータの回転位置とに基づいて演算することを特徴とする請求項1記載のPWM信号出力装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1演算手段による演算が前記期限時間まで完了するか否かを監視するためのタイマ回路(25)を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のPWM信号出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの制御指令に基づいてPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成し、駆動回路に出力するPWM信号出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータをPWM制御する際には、例えばモータに通電される相電流を検出し、その相電流に基づいて演算を行うことでモータの出力状態が反映されている演算結果を得ると、入力される制御指令と演算結果との偏差に応じてPWM制御の指令値(デューティ)を更新するなどしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−154735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の演算は、一般にPWM周期ごとに、或いは半周期ごとに行われるが、演算を行う制御回路の処理負荷が一時的に増加するなどして所定の時間内に演算が完了しない場合がある。そのような場合に、例えばモータを正弦波駆動していると、インバータのような駆動回路が出力する電流波形が歪んで騒音や振動が発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、所定の時間内に演算が完了しない場合があっても、モータを駆動する信号波形の歪を極力低減できるPWM信号出力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のPWM信号出力装置によれば、第1演算手段は、制御指令と、駆動回路を介してモータに通電される電流と、モータの回転位置とに基づいて、PWM信号を生成するための第1デューティ指令値を、少なくともPWM制御周期ごとに演算する。また、第2演算手段は、第1演算手段よりも演算内容を簡略化し、第1演算手段よりも短い時間で第2デューティ指令値を演算する。この場合、第1演算手段としての第1演算ユニットと、第1演算ユニットとは独立に構成される、第2演算手段としての第2演算ユニットとを備える。そして、制御手段は、常には第1演算手段により第1デューティ指令値を演算させるが、その演算が期限時間まで完了するかを監視し、完了しないと判断すると、第1デューティ指令値に替えて第2演算手段より演算された第2デューティ指令値を出力するように制御する。
したがって、第1演算手段による第1デューティ指令値の演算が完了せず、当該指令値の出力が間に合わない状況となっても、第2演算手段より簡略的に短時間で演算された第2デューティ指令値が出力されるので、モータを駆動する信号波形の歪を極力低減できる。
【0007】
請求項2記載のPWM信号出力装置によれば、第2演算手段は、第2デューティ指令値を、制御指令とモータの回転位置とに基づいて演算する。したがって、第1演算手段が第1デューティ指令値をモータの通電電流を考慮して演算する分だけ、つまり、検出した通電電流に基づくフィードバック制御演算が不要となる分だけ第2演算手段の演算内容が簡略化される。これにより、第2演算手段は第2デューティ指令値を迅速に演算できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態であり、モータ制御ECUの内部機能を中心に示す機能ブロック図
図2】モータ駆動システムの構成図
図3】制御内容を示すフローチャート
図4】制御内容を示すタイミングチャート
図5】作用原理を説明する図(その1)
図6】作用原理を説明する図(その2)
図7】第2実施形態を示すマルチコアCPUの機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図2に示すように、例えば車両に搭載される主機バッテリである直流電源1の両端には、平滑コンデンサ2及びインバータ回路3(駆動回路)が接続されている。インバータ回路3は、6個のIGBT(スイッチング素子)4UU,4VU,4WU,4UL,4VL,4WLを三相ブリッジ接続して構成されている。各IGBT4のコレクタ,エミッタ間には、フリーホイールダイオード5(UU〜WU,UL〜WL)が接続されている。インバータ回路3の各相出力端子(IGBT4UU,4VU,4WUのエミッタ)は、モータ(ジェネレータ)6の図示しない各相固定子巻線に接続されている。
【0010】
インバータ回路3のV,W相出力端子と、モータ6のV,W相固定子巻線とを接続する信号線には、電流センサ7(V,W)が介挿されており、電流センサ7により検出されたV,W相電流は、モータ制御ECU(Electronic Control Unit)8に入力されている。また、モータ6には、ロータ(図示せず)の電気角(回転位置)を検出するレゾルバ9が取り付けられており、レゾルバ9により検出された電気角θは、モータ制御ECU8に入力されている。モータ6は、例えばIPM(Interior Permanent Magnet)モータ等である。
【0011】
モータ制御ECU8(PWM信号出力装置)は、上位ECU10と通信を行い、モータ6の制御指令を受信すると、入力されるV,W相電流及び電気角θに基づいてベクトル制御演算を行う。そして、PWM制御指令である各相のデューティ指令値を算出すると、それらのデューティ指令値に基づいて各相PWM信号(UU〜WU,UL〜WL)を生成する。PWM信号は、図示しないドライバを介してインバータ回路3を構成するIGBT4の各ゲートに出力される。
【0012】
また、モータ制御ECU8は、上記の演算を行うためのフル処理演算部11(第1演算手段)と、短縮処理演算部12(第2演算手段)とを有している。これらの演算部11及び12は、モータ制御ECU8の制御プログラムであるソフトウェアにより実行される機能であり、以降で詳述する。
【0013】
図1に示すように、モータ制御ECU8において、上位ECU10より入力される回転数指令ωref(制御指令)は減算器21に入力され、後述するように演算で求められたモータ6の回転数ωとの差分ΔωがPI(Proportional-Integral)制御部22に入力される。尚、回転数指令ωrefは、トルク指令として見ることもできる。PI制御部22は、上記の差分ΔωにPI制御演算を施して電流指令変換部23に出力する。電流指令変換部23は、入力された演算結果をd軸電流指令値Idrefとq軸電流指令値Iqrefとに変換して、デマルチプレクサ(DMUX)24に出力する。
【0014】
デマルチプレクサ24(制御手段)は、タイマ25(制御手段,タイマ回路)より入力される切り換え制御信号に応じて、電流指令値Idref,Iqrefの出力先を切り換える。その一方の出力先は減算器26d,26qであり、減算器26d,26qは、電流指令値Idref,Iqrefと、演算により求められたモータ6のd軸電流Id,q軸電流Iqとの差分ΔId,ΔIqを演算してPI制御部27d,27qに出力する。PI制御部27d,27qは、入力される差分ΔId,ΔIqにPI制御演算を施して減算器28d,28qに出力する。
【0015】
デマルチプレクサ24を介して出力される電流指令値Idref,Iqrefは、非干渉項演算部29にも入力されている。非干渉項演算部29は、上記電流指令値と回転数ωとに基づいて非干渉項Vd’,vq’を演算すると、これらを減算器28d,28qに出力する。減算器28d,28qは、PI制御部27d,27qより入力される演算結果より非干渉項Vd’,vq’を減じて得られる電圧指令値Vd,Vqを、座標変換部30に出力する。尚、デマルチプレクサ24のもう一方の出力先は、座標変換部30となっている。この場合、電流指令変換部23が出力する電流指令値Idref,Iqrefが、そのまま電圧指令値Vd,Vqとなって座標変換部30に入力される。
【0016】
2相/3相変換部30は、入力される電圧指令Vd,Vqについて2相(dq)/3相(uvw)変換を行い、3相電圧Vu,Vv,Vw(デューティ指令値)を生成してPWM生成ユニット31に出力する。PWM生成ユニット31は、3相電圧Vu,Vv,Vwに基づいて3相PWM信号を生成すると、それらをデッドタイム生成部32を介してインバータ回路(INV)3に出力する。デッドタイム生成部32は、入力されるPWM信号に、上アーム側のIGBT4と、下アーム側のIGBT4とが何れもオフになるデッドタイムを付加する。
【0017】
電流センサ7V,7Wにより検出されたV相,W相電流は、A/D変換器33によりA/D変換されて3相/2相変換部34に出力される。3相/2相変換部34では、V相,W相電流から演算によりU相電流を求め、3相電流を2相電流id,iqに変換して減算器26d,26qに出力する。
【0018】
レゾルバ9より出力されるアナログ信号は、R/DコンバータによりA,B,Z相のデジタル信号に変換されて、ABZ/θ変換部36に出力される。ABZ/θ変換部36は、入力される上記デジタル信号(パルス)をカウントすることで電気角θに変換して、3相/2相変換部34と、予測電気角演算部37を介して2相/3相変換部30とに出力する。予測電気角演算部37は、例えば入力される電気角θよりも半周期先の位相となる電気角を演算して、2相/3相変換部30に与える(ただし、予測するのは必ずしも半周期先の位相に限らない)。また、回転数演算部入力される電気角θよりモータ6の回転数ωを演算して、減算器21及び非干渉項演算部29に出力する。
【0019】
また、PWM生成ユニット31は、タイマ25に計時開始信号STARTを与え、2相/3相変換部30は、タイマ25に計時終了信号STOPを与える。そして、タイマ25は、これらの信号が入力される間隔を計時して、その時間が所定の閾値を超えるか否によってデマルチプレクサ24の切り換えを制御する。以上において、2点鎖線で囲んだ部分が図1に示すフル演算処理部11であり、破線で囲んだ部分が短縮処理演算部12となる。
【0020】
次に、本実施形態における処理の概要について説明する。図5に示すように、本実施形態では、PWM制御の半周期毎にデューティ指令値を演算する。例えばキャリアである比較三角波のピークからボトムまでの期間に、次の周期におけるPWMパルスのオンタイミングを決定し、前記ボトムから次のピークまでの期間に、前記PWMパルスのオフタイミングを決定する。したがって、デューティ指令値の演算(更新処理)に要する時間には、半周期毎のタイムリミットがある。
【0021】
そのため、図5(a)に示すように、何らかの原因により更新処理が遅延してタイムリミットを超えると、次周期のPWMパルスのオンタイミングが、本来のタイミングよりも遅れてしまうことになる。例えばモータを正弦波駆動する際には、モータの回転位相に応じて連続的に変化する、正弦波の振幅率に対応したPWMデューティを設定する必要がある。したがって、PWMパルスのオンタイミングが遅れると、通電電流波形に歪が生じて振動や騒音の原因となる。
【0022】
このような事態を回避するため、本実施形態では、図5(b)に示すように、更新処理が遅延してタイムリミットを超えるであろうことが予測されると、デューティ指令値の演算を簡略化して短時間で完了させ、その演算結果に基づいたデューティを出力するように切り換えを行う。
【0023】
図6を参照してより詳細に説明するが、ECUを構成するCPUは、図6(a)(b)に示すように、比較三角波のボトム及びピークのタイミングで電気角θと相電流iv,iwとを読み込んで、デューティの演算を開始する(図5とはイメージが異なる)。図6(b)に示す期間は、CPUによる処理がデューティの演算のみに占有されている期間であり、前記演算が終了すると図6(c)に示すその他の処理が行われる。
【0024】
そして、例えば図6(c)で処理される通信などの負荷が一時的に増加することで、次にデューティの演算を開始するタイミングが遅れた結果、デューティを更新できなければ、前の周期にセットされたデューティがそのまま出力されて、電流波形に歪が生じるおそれがある。尚、図6(c)側の処理時間が延びる場合だけでなく、図6(b)のデューティ演算中においても、モータの出力トルクが大きく変動したり、何らかの異常が連続して発生するなどした場合には、デューティ演算の処理時間自体が延びることもある。また、電気角や相電流の読み込みは、半周期毎のタイミングで毎回行う必要があるので、演算を開始するタイミングを早めることも困難である。
【0025】
そこで、本実施形態では図5(b)に示すように対応する。以下、この処理について詳述する。図3(a)及び図4に示すように、モータ制御ECU8は、比較三角波のボトム及びピークのタイミングで監視処理(タイマ25)を起動すると(S1)、電気角θと相電流iv,iwとを読み込んで(S2,S3)トルク推定演算を行う(S4)。ここで「トルク推定演算」とは、3相/2相変換部34においてd軸電流id,q軸電流iqを演算する処理に対応する。
【0026】
続いて、モータ制御ECU8は、電流フィードバック(F/B)演算を行うと(S5)、PWMスイッチングパターン,すなわちPWMデューティ(第1デューティ指令値)を決定する(S6)。そして、処理時間を監視するタイマ25を停止して(S7)処理を終了する。「電流フィードバック演算」は、図1において、減算器26,PI制御器27,減算器28及び非干渉項演算部29により行われる演算に対応し、PWMデューティの決定は、2相/3相変換部30が3相電圧Vu,Vv,Vwを生成する部分に対応する。つまり、図3(a)に示す処理が、フル演算処理部11に対応する。
【0027】
ここで図4に示すように、ステップS4におけるトルク推定演算が通常よりも長引いたため、タイマ25において設定されているタイムリミットを超えたとする。すると、図3(b)に示す監視処理(制御手段)において処理期限超過となり(S11:YES)、短縮処理が実行される(S12)。短縮処理では、図3(c)に示すように、その時点で新たに電気角θと相電流iv,iwとを読み込む(S21,S22)。そして、電気角θと相電流iv,iw(及びiu)とに基づいて、直ちにPWMデューティ(第2デューティ指令値)を決定する(S23)。
【0028】
上記の短縮処理は、図1では短縮処理演算部12で行われる処理に対応する。すなわち、タイマ25によりデマルチプレクサ24が切り換えられて、電流指令変換部23が出力する電流指令値Idref,Iqrefが、そのまま電圧指令値Vd,Vqとなって座標変換部30に入力される。そして、2相/3相変換部30が3相電圧Vu,Vv,Vwを生成してPWM生成ユニット31に出力する。すなわち、短縮処理演算部12では、フル演算処理部11が行うフィードバック制御に替えて、フィードフォワード制御を行うことになる。これにより、図4に示すように、PWMデューティの演算をより早く完了させて、更新が遅れることで前回のPWMデューティを再度出力する事態を回避する。
【0029】
以上のように本実施形態によれば、モータ制御ECU8のフル処理演算部11は、回転数指令ωrefと、インバータ回路3を介してモータ6に通電される相電流と、モータ6の電気角θとに基づいて、PWM信号を生成するためのデューティ指令値Vu,Vv,Vwを、PWM制御周期の半周期毎に演算する。また、短縮処理演算部12は、フル処理演算部11よりも演算内容を簡略化して、フル処理演算部11よりも短い時間でデューティ指令値Vu,Vv,Vwを演算する。そして、タイマ25は、常にはフル処理演算部11によりデューティ指令値を演算させるが、その演算が期限時間まで完了するかを監視し、完了しないと判断すると、短縮処理演算部12より演算されたデューティ指令値を出力するように制御する。
【0030】
したがって、フル処理演算部11によるデューティ指令値の演算が完了せず、当該指令値の出力が間に合わない状況となっても、短縮処理演算部12より簡略的に短時間で演算されたデューティ指令値が出力されるので、モータ6を駆動する信号波形の歪を極力低減できる。そして、短縮処理演算部12は、デューティ指令値を、回転数指令ωrefと電気角θとに基づいて演算するので、フル処理演算部11がモータ6の相電流を考慮して演算する分だけ、つまり、検出した相電流に基づくフィードバック制御演算が不要となる分だけ演算内容が簡略化される。これにより、デューティ指令値を迅速に演算できる。
【0031】
(第2実施形態)
図7に示すように、第2実施形態のモータ制御ECU41(PWM信号出力装置)は、マルチコアCPUにより構成されている。そして、演算コア42(第1演算手段,第1演算ユニット)は、第1実施形態におけるフル処理演算部11に相当する演算を行い、演算コア43(第2演算手段,第2演算ユニット)は、短縮処理演算部12に相当する演算を行う。メモリ44は、演算コア42及び43が共通にアクセス可能となっており、それぞれが演算を行うためのパラメータ(電気角θ,フィードバック電流値,回転数指令)等が一時的に記憶される。
【0032】
このようにマルチコア構成を採用することで、演算コア42によるデューティ演算処理と、演算コア43によるデューティ演算処理とは並行して実行可能となっている。演算コア42により演算された(第1)デューティ指令値と、演算コア43により演算された(第2)デューティ指令値とは、マルチプレクサ(MUX)45の入力端子にそれぞれ与えられている。マルチプレクサ45の切り換え制御は、第1実施形態と同様にタイマ25によって行われる。
【0033】
演算コア42は、タイマ25の起動(START),停止(STOP)も行う。そして、通常はマルチプレクサ45により、演算コア42により演算されたデューティ指令値がPWM生成ユニット31に出力されるように制御する。そして、演算コア42がタイムリミットまでにタイマ25による計時を停止させることができなければ、タイマ25は、演算コア43側を選択するように切り替える。したがって、演算コア43により簡略的に演算されたデューティ指令値がPWM生成ユニット31に出力される。
【0034】
尚、演算コア43によるデューティ指令値の演算は、演算コア42からの処理開始要求が入力された時点から開始しても良いし、処理開始要求の入力がなくとも、常に演算を行うようにしても良い。また、メモリ44を介して、演算コア42から演算コア43に演算に必要なパラメータ(データ)の受け渡しを行うようにしても良い。例えば、演算コア42が取得した電気角θや相電流iu〜iwをメモリ44の所定領域に書き込んでおき、演算コア43に演算を開始する際に、上記の領域からそれらのデータを読み込んで演算しても良い。
【0035】
以上のように第2実施形態によれば、モータ制御ECU41は、演算コア42及び43を備え、演算コア42にはフル処理演算部11に相当する演算を行わせ、演算コア43には短縮処理演算部12に相当する演算を行わせるようにした。したがって、演算コア42による演算がタイムリミットまでに完了しなかった場合に、演算コア43により演算を代替させる際の余裕を持たせることができる。また、演算コア43の処理能力に余力があれば、その他の処理を実行させることも可能になる。
【0036】
本発明は上記した、又は図面に記載した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
デューティ指令値の演算は、PWM周期毎に行っても良い。
モータ制御ECUは、必ずしもベクトル制御を行う必要はない。
スイッチング素子はIGBTに限ることなく、MOSFETやバイポーラトランジスタなどでも良い。
【符号の説明】
【0037】
図面中、3はインバータ回路(駆動回路)、6はモータ、8はモータ制御ECU(PWM信号出力装置)、11はフル処理演算部(第1演算手段)、12は短縮処理演算部(第2演算手段)、24はデマルチプレクサ(制御手段)、25はタイマ(制御手段)を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7