特許第6048306号(P6048306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6048306インクジェットヘッドおよびその駆動方法と、インクジェットプリンタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048306
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】インクジェットヘッドおよびその駆動方法と、インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20161212BHJP
   B41J 2/045 20060101ALI20161212BHJP
   B41J 2/205 20060101ALI20161212BHJP
   B41J 2/055 20060101ALI20161212BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   B41J2/015 101
   B41J2/045
   B41J2/205
   B41J2/055
   B41J2/01 403
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-100999(P2013-100999)
(22)【出願日】2013年5月13日
(65)【公開番号】特開2014-221517(P2014-221517A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100085501
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 静夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128842
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 温
(74)【代理人】
【識別番号】100128967
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 靖
(72)【発明者】
【氏名】宮井 三嘉
【審査官】 村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/081472(WO,A1)
【文献】 特開2002−086765(JP,A)
【文献】 特開2012−126046(JP,A)
【文献】 特開2012−250477(JP,A)
【文献】 特開2007−098796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容する圧力室と、
駆動信号に基づいて駆動される圧電素子と、
前記圧電素子の駆動に伴って振動し、前記圧力室内のインクに圧力を付与して前記インクを外部に吐出させる振動板とを備え、前記駆動信号に含まれる、1画素を描画する周期内の吐出パルスの数に応じた階調表示を行うインクジェットヘッドであって、
1画素を描画する周期内で、前記吐出パルスとして、第1パルスと第2パルスとが順に前記圧電素子に印加されるときに、前記第1パルスの印加時に振動する前記振動板の最大振幅と、前記第2パルスの印加時に振動する前記振動板の最大振幅とが略等しくなるように、前記第2パルスの電位が前記第1パルスの電位からオフセットされ、
前記第2パルスが、複数のパルスからなることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記第2パルスは、描画する画素に応じて前記圧電素子に印加されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記圧力室の固有振動周期の半分の期間をALとしたとき、
前記第1パルスと前記第2パルスとの間隔が、ALの奇数倍であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記駆動信号は、前記吐出パルスの印加後の前記振動板の残響振動を抑制するための第3パルスをさらに含み、
前記第3パルスが、前記第1パルスの印加終了時点から、ALの偶数倍の期間が経過した時点で前記圧電素子に印加されることを特徴とする請求項3に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記圧電素子が、薄膜圧電素子であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
前記駆動信号の駆動波形が、片極性であることを特徴とする請求項5に記載のインクジェットヘッド。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のインクジェットヘッドを備え、前記インクジェットヘッドから記録媒体に向けてインクを吐出させることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項8】
駆動信号に基づいて圧電素子を駆動して振動板を振動させることにより、圧力室内のインクを外部に吐出させるとともに、前記駆動信号に含まれる、1画素を描画する周期内の吐出パルスの数に応じた階調表示を行うインクジェットヘッドの駆動方法であって、
1画素を描画する周期内で、前記吐出パルスとして、第1パルスと第2パルスとを順に前記圧電素子に印加するときに、前記第1パルスの印加時に振動する前記振動板の最大振幅と、前記第2パルスの印加時に振動する前記振動板の最大振幅とが略等しくなるように、前記第2パルスの電位を前記第1パルスの電位からオフセットさせて前記圧電素子を駆動し、
前記第2パルスが、複数のパルスからなることを特徴とするインクジェットヘッドの駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を駆動して振動板を振動させることにより、圧力室内のインクを外部に吐出させるインクジェットヘッドおよびその駆動方法と、そのインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクを吐出する複数のチャネルを有するインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタが知られている。用紙や布などの記録メディアに対してインクジェットヘッドを相対的に移動させながら、インクの吐出を制御することにより、記録メディアに対して二次元の画像を出力することができる。インクの吐出は、アクチュエータ(圧電式、静電式、熱変形などによるもの)を利用したり、熱によって管内のインクに気泡を発生させることで行うことができる。中でも、圧電式のアクチュエータは、出力が大きい、変調が可能、応答性が高い、インクを選ばない、などの利点を有しており、近年よく利用されている。
【0003】
圧電式のアクチュエータには、バルク状の圧電体を用いたものと、薄膜の圧電体(圧電薄膜)を用いたものとがある。前者は出力が大きいため、大きな液滴を吐出することができるが、大型でコストが高い。これに対して、後者は出力が小さいため、液滴を大きくできないが、小型でコストが低い。高解像度(小液滴で良い)で小型、低コストのプリンタを実現するには、圧電薄膜を用いてアクチュエータを構成することが適していると言える。
【0004】
圧電薄膜は、一対の電極(上部電極、下部電極)で挟まれた状態で、圧力室の上壁を構成する従動膜(振動板)の上に位置する。圧力室にインクを収容した状態で、一対の電極に電圧(駆動信号)を印加して圧電薄膜を伸縮させ、振動板を振動させることにより、圧力室内のインクに圧力が付与される。これにより、圧力室内のインクを外部に吐出することができる。このような圧電式のアクチュエータを横方向に並べることにより、インクジェットヘッドが構成される。
【0005】
圧力室からインクを吐出させる方法としては、インクの安定吐出に有効な点で、圧力室の容積を一旦膨張させ、その後収縮させてインクを吐出させる、引き打ち方式が広く用いられている。引き打ち方式では、待機時に一定の電圧(このときの待機電位をV1とする)をアクチュエータに印加して、振動板を一定量変形させておき、インク吐出時に電位をV0(<V1)に下げ、その後、待機電位V1に戻すことで、圧力室の容積の膨張および収縮を行っている。
【0006】
上記のような圧電式のアクチュエータに用いられる圧電体には、BaTiO3や、PZTと呼ばれるPb(Ti/Zr)O3など、ペロブスカイト型の金属酸化物が広く用いられている。圧電薄膜を用いたアクチュエータでは、基板上に例えばPZTを成膜して作製される。PZTの成膜は、スパッタ法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ゾルゲル法など、種々の方法を用いて行うことが可能である。なお、圧電材料の結晶化には高温が必要となるため、基板にはSiが良く用いられる。
【0007】
ところで、近年では、圧電素子(ここでは一対の電極で圧電薄膜を挟んだものを指す)を用いたインクジェットプリンタでは、より高精細な画像を高速で形成することが求められている。それに伴い、圧電素子には、小型化と高密度化とが求められている。また、圧電素子の駆動には、駆動周期の短縮化と多階調化とが求められている。
【0008】
圧電素子の小型化、高密度化に関しては、例えば特許文献1において、圧電体をスパッタ法等で薄膜形成し、フォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることにより、薄型で小型化および高密度化を実現する技術が提案されている。また、駆動周期の短縮化、多階調化に関しては、例えば特許文献2において、1画素を描画する周期(以下、1画素周期とも称する)内で、同電位の第1パルスと第2パルスとをALの間隔をあけて圧電素子に印加する駆動方法で、第2パルスの有無で吐出液滴量を切り替え、高い駆動周波数で多階調化させる技術が提案されている(第2パルス有りで液滴量大、第2パルス無しで液滴量小)。なお、ALは、インクを収容する圧力室の固有振動周期の半周期を指す。これらの技術を組み合わせることで、薄膜の圧電素子を用いた構成で、高い駆動周波数で多階調表示を実現できるインクジェットプリンタが得られるものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−286953号公報(請求項1、段落〔0005〕、図1図5等参照)
【特許文献2】特開2012−126046号公報(段落〔0044〕〜〔0061〕、図6図8等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、図12は、特許文献2における圧電素子の駆動信号と、その圧電素子の駆動に伴って振動する圧力室上方の振動板の振動波形とを模式的に示している。同図のように、1画素周期内で、圧電素子に印加する2つの吐出パルス(第1パルスP1、第2パルスP2)の電位が、それぞれ待機電位V1よりも低いV0で同電位であると、振動板の振動振幅は、第1パルスP1の印加時(第1振動)よりも第2パルスP2の印加時(第2振動)のほうが大きくなる。これは、第2振動では、第1振動後の振動板の残響振動に、第2パルスP2の印加による振動が上乗せされるためである。なお、特許文献2では、振動板の振動波形は図示されていないが、上記の理由により、第1振動と第2振動とで振動板の振動振幅が変化すると言える。
【0011】
このように、第1振動と第2振動とで振動板の振動振幅が変化すると、連続駆動を行ったときに圧電素子の圧電特性(例えば圧電定数d31)が変化し、連続駆動前とは異なるインク吐出特性となる。この結果、連続駆動の前後でインクの吐出速度が変化し、描画する画素によってインクの吐出位置がずれる、いわゆる画素ズレ(描画乱れ)が生じる。
【0012】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、高速で(高い駆動周波数で)、多階調表示が可能で、かつ、連続駆動時の圧電特性の変動を抑え、これによって描画乱れを抑えることができるインクジェットヘッドおよびその駆動方法と、そのインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一側面に係るインクジェットヘッドは、インクを収容する圧力室と、駆動信号に基づいて駆動される圧電素子と、前記圧電素子の駆動に伴って振動し、前記圧力室内のインクに圧力を付与して前記インクを外部に吐出させる振動板とを備え、前記駆動信号に含まれる、1画素を描画する周期内の吐出パルスの数に応じた階調表示を行うインクジェットヘッドであって、1画素を描画する周期内で、前記吐出パルスとして、第1パルスと第2パルスとが順に前記圧電素子に印加されるときに、前記第1パルスの印加時に振動する前記振動板の最大振幅と、前記第2パルスの印加時に振動する前記振動板の最大振幅とが略等しくなるように、前記第2パルスの電位、前記第2パルスの直前の電位、前記第2パルスの直後の電位の少なくともいずれかがオフセットされている。
【0014】
上記構成のインクジェットヘッドは、1画素を描画する周期(1画素周期)内の吐出パルスの数に応じた階調表示を行うので、高速で(高い駆動周波数で)各画素の描画を行う場合でも、各画素ごとに多階調の表示を行うことができる。
【0015】
また、1画素を描画する周期(1画素周期)内で、吐出パルスとして、第1パルスと第2パルスとが順に圧電素子に印加されるとき、第2パルスの電位、第2パルスの直前の電位、第2パルスの直後の電位の少なくともいずれかがオフセットされる結果、振動板の最大振幅が、第1パルス印加時(第1振動)と第2パルス印加時(第2振動)とで略等しくなる。これにより、連続駆動を行ったときでも圧電素子の圧電特性(例えば圧電定数d31)が変化するのを抑えて、インクの吐出速度が変化するのを抑えることができる。その結果、連続駆動の前後で、描画する画素によってインクの吐出位置がずれる描画乱れ(画素ズレ)が生じるのを抑えることができる。
【0016】
前記第2パルスは、描画する画素に応じて前記圧電素子に印加されてもよい。この場合、第2パルスの有無により、吐出するインクの液滴量を画素に応じて切り替えて多階調の表示を行うことができる。
【0017】
前記圧力室の固有振動周期の半分の期間をALとしたとき、前記第1パルスと前記第2パルスとの間隔が、ALの奇数倍であることが望ましい。この場合、振動板の振動を、第1振動と第2振動とで同位相にすることができる(振動板の振動波形の位相を変化させないようにできる)。これにより、第1振動と第2振動とで振動板がスムーズに振動し、圧電素子を安定して動作(駆動)させることができる。
【0018】
前記駆動信号は、前記吐出パルスの印加後の前記振動板の残響振動を抑制するための第3パルスをさらに含み、前記第3パルスが、前記第1パルスの印加終了時点から、ALの偶数倍の期間が経過した時点で前記圧電素子に印加されてもよい。
【0019】
この場合、第1パルスまたは第2パルスと同極性の第3パルスP3を用いて、第1パルスまたは第2パルスの印加による振動板の残響振動を効率よく抑えることができる。また、第3パルスを第2パルスの印加直後に圧電素子に印加すれば、残響振動を早く止めることが可能となり、複数の画素を描画するときの駆動周期を短くしてさらに高速な描画を実現することが可能となる。
【0020】
前記第2パルスが、複数のパルスからなっていてもよい。この場合、第2パルスに含まれるパルスの数に応じた多階調の表示を行うことが可能となる。
【0021】
前記圧電素子が、薄膜圧電素子であってもよい。薄膜圧電素子は小型化、高密度化が可能であるが、薄いため歪みやすく、連続駆動時に圧電特性が変動しやすい。したがって、第1振動と第2振動とで振動板の振動振幅を揃えて圧電特性の変動を抑えるための、上述した吐出パルス等の電位をオフセットする手法が非常に有効となる。
【0022】
前記駆動信号の駆動波形が、片極性であることが望ましい。圧電素子の待機電位に対して、駆動信号の駆動波形が片極性であれば、両極性の場合よりも駆動時の電位の変動幅(電圧幅)が狭いため、連続駆動時の圧電特性の変動をさらに抑えて、圧電素子を安定して動作させることができる。
【0023】
本発明の他の側面に係るインクジェットプリンタは、上述したインクジェットヘッドを備え、前記インクジェットヘッドから記録媒体に向けてインクを吐出させる構成である。この場合、記録媒体に対して高精細で高品位な画像を高速で描画可能な、高性能なインクジェットプリンタを実現できる。
【0024】
本発明のさらに他の側面に係るインクジェットヘッドの駆動方法は、駆動信号に基づいて圧電素子を駆動して振動板を振動させることにより、圧力室内のインクを外部に吐出させるとともに、前記駆動信号に含まれる、1画素を描画する周期内の吐出パルスの数に応じた階調表示を行うインクジェットヘッドの駆動方法であって、1画素を描画する周期内で、前記吐出パルスとして、第1パルスと第2パルスとを順に前記圧電素子に印加するときに、前記第1パルスの印加時に振動する前記振動板の最大振幅と、前記第2パルスの印加時に振動する前記振動板の最大振幅とが略等しくなるように、前記第2パルスの電位、前記第2パルスの直前の電位、前記第2パルスの直後の電位の少なくともいずれかをオフセットさせて前記圧電素子を駆動する。
【0025】
このような駆動方法により、高速で多階調の表示を実現できるとともに、連続駆動を行ったときでも圧電素子の圧電特性(例えば圧電定数d31)が変化するのを抑えることができ、連続駆動時の描画乱れを抑えることができる。
【発明の効果】
【0026】
上記したインクジェットヘッドおよびその駆動方法によれば、高速かつ多階調表示が可能で、連続駆動時の圧電特性の変動を抑えて描画乱れを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施の一形態に係るインクジェットプリンタの概略の構成を示す説明図である。
図2】上記インクジェットプリンタが備えるインクジェットヘッドのアクチュエータの概略の構成を示す平面図、およびその平面図におけるA−A’線矢視断面図である。
図3】上記インクジェットヘッドの断面図である。
図4】上記インクジェットヘッドの製造工程を示す断面図である。
図5】上記インクジェットヘッドの圧電素子に印加される駆動信号の一例を示す説明図である。
図6】上記駆動信号と、上記圧電素子の駆動に伴って振動する振動板の振動波形と、インクの吐出タイミングとを併せて示した説明図である。
図7】上記駆動信号の他の例を示す説明図である。
図8】上記駆動信号のさらに他の例を示す説明図である。
図9】上記駆動信号のさらに他の例を示す説明図である。
図10】上記駆動信号のさらに他の例を示す説明図である。
図11】上記駆動信号のさらに他の例を示す説明図である。
図12】従来の圧電素子の駆動信号と、上記圧電素子の駆動に伴って振動する振動板の振動波形とを模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0029】
〔インクジェットプリンタの構成〕
図1は、本実施形態のインクジェットプリンタ1の概略の構成を示す説明図である。インクジェットプリンタ1は、インクジェットヘッド部2において、インクジェットヘッド21が記録媒体の幅方向にライン状に設けられた、いわゆるラインヘッド方式のインクジェット記録装置である。
【0030】
インクジェットプリンタ1は、上記のインクジェットヘッド部2と、繰り出しロール3と、巻き取りロール4と、2つのバックロール5・5と、中間タンク6と、送液ポンプ7と、貯留タンク8と、定着機構9とを備えている。
【0031】
インクジェットヘッド部2は、インクジェットヘッド21から記録媒体Pに向けてインクを吐出させ、画像データに基づく画像形成(描画)を行うものであり、一方のバックロール5の近傍に配置されている。なお、インクジェットヘッド21の詳細については後述する。
【0032】
繰り出しロール3、巻き取りロール4および各バックロール5は、軸回りに回転可能な円柱形状からなる部材である。繰り出しロール3は、周面に幾重にも亘って巻回された長尺状の記録媒体Pを、インクジェットヘッド部2との対向位置に向けて繰り出すロールである。この繰り出しロール3は、モータ等の図示しない駆動手段によって回転することで、記録媒体Pを図1のX方向へ繰り出して搬送する。
【0033】
巻き取りロール4は、繰り出しロール3より繰り出されて、インクジェットヘッド部2によってインクが吐出された記録媒体Pを周面に巻き取る。
【0034】
各バックロール5は、繰り出しロール3と巻き取りロール4との間に配設されている。記録媒体Pの搬送方向上流側に位置する一方のバックロール5は、繰り出しロール3によって繰り出された記録媒体Pを、周面の一部に巻き付けて支持しながら、インクジェットヘッド部2との対向位置に向けて搬送する。他方のバックロール5は、インクジェットヘッド部2との対向位置から巻き取りロール4に向けて、記録媒体Pを周面の一部に巻き付けて支持しながら搬送する。
【0035】
中間タンク6は、貯留タンク8より供給されるインクを一時的に貯留する。また、中間タンク6は、複数のインクチューブ10と接続され、各インクジェットヘッド21におけるインクの背圧を調整して、各インクジェットヘッド21にインクを供給する。
【0036】
送液ポンプ7は、貯留タンク8に貯留されたインクを中間タンク6に供給するものであり、供給管11の途中に配設されている。貯留タンク8に貯留されたインクは、送液ポンプ7によって汲み上げられ、供給管11を介して中間タンク6に供給される。
【0037】
定着機構9は、インクジェットヘッド部2によって記録媒体Pに吐出されたインクを当該記録媒体Pに定着させる。この定着機構9は、吐出されたインクを記録媒体Pに加熱定着するためのヒータや、吐出されたインクにUV(紫外線)を照射することによりインクを硬化させるためのUVランプ等で構成されている。
【0038】
上記の構成において、繰り出しロール3から繰り出される記録媒体Pは、バックロール5により、インクジェットヘッド部2との対向位置に搬送され、インクジェットヘッド部2から記録媒体Pに対してインクが吐出される。その後、記録媒体Pに吐出されたインクは定着機構9によって定着され、インク定着後の記録媒体Pが巻き取りロール4によって巻き取られる。このようにラインヘッド方式のインクジェットプリンタ1では、インクジェットヘッド部2を静止させた状態で、記録媒体Pを搬送しながらインクが吐出され、記録媒体Pに画像が形成される。
【0039】
なお、インクジェットプリンタ1は、シリアルヘッド方式で記録媒体に画像を形成する構成であってもよい。シリアルヘッド方式とは、記録媒体を搬送しながら、その搬送方向と直交する方向にインクジェットヘッドを移動させてインクを吐出し、画像を形成する方式である。
【0040】
〔インクジェットヘッドの構成〕
次に、上記したインクジェットヘッド21の構成について説明する。図2は、インクジェットヘッド21のアクチュエータ21aの概略の構成を示す平面図と、その平面図におけるA−A’線矢視断面図とを併せて示したものである。また、図3は、図2のアクチュエータ21aにノズル基板31を接合してなるインクジェットヘッド21の断面図である。
【0041】
インクジェットヘッド21は、複数の圧力室22aを有する基板22上に、熱酸化膜23、下部電極24、圧電薄膜25、上部電極26をこの順で有している。
【0042】
基板22は、厚さが例えば300〜500μm程度の単結晶Si(シリコン)単体からなる半導体基板またはSOI(Silicon on Insulator)基板で構成されている。なお、図2では、基板22をSOI基板で構成した場合を示している。SOI基板は、酸化膜を介して2枚のSi基板を接合したものである。基板22における圧力室22aの上壁は、従動膜となる振動板22bを構成しており、圧電薄膜25の駆動(伸縮)に伴って変位(振動)し、圧力室22a内のインクに圧力を付与する。
【0043】
熱酸化膜23は、例えば厚さが0.1μm程度のSiO2(酸化シリコン)からなり、基板22の保護および絶縁の目的で形成されている。
【0044】
下部電極24は、複数の圧力室22aに共通して設けられるコモン電極であり、Ti(チタン)層とPt(白金)層とを積層して構成されている。Ti層は、熱酸化膜23とPt層との密着性を向上させるために形成されている。Ti層の厚さは例えば0.02μm程度であり、Pt層の厚さは例えば0.1μm程度である。
【0045】
圧電薄膜25は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)で構成されており、各圧力室22aに対応して設けられている。PZTは、PTO(PbTiO3;チタン酸鉛)とPZO(PbZrO3;ジルコン酸鉛)との固溶体である。圧電薄膜25の膜厚は、例えば3〜5μmである。
【0046】
上部電極26は、各圧力室22aに対応して設けられる個別電極であり、Ti層とPt層とを積層して構成されている。Ti層は、圧電薄膜25とPt層との密着性を向上させるために形成されている。Ti層の厚さは例えば0.02μm程度であり、Pt層の厚さは例えば0.1〜0.2μm程度である。上部電極26は、下部電極24との間で圧電薄膜25を挟むように設けられている。
【0047】
下部電極24、圧電薄膜25および上部電極26は、圧力室22a内のインクを外部に吐出させるための薄膜の圧電素子27を構成している。この圧電素子27は、駆動回路28から下部電極24および上部電極26に印加される電圧(駆動信号)に基づいて駆動される。駆動回路28は、圧力室22aからインクを吐出させるための上記駆動信号を生成して圧電素子27に印加するが、その駆動信号の具体例については後述する。
【0048】
圧力室22aの振動板22bとは反対側には、ノズル基板31が接合されている。ノズル基板31には、圧力室22a内のインクをインク滴として外部に吐出するための吐出孔(ノズル孔)31aが形成されている。圧力室22aには、中間タンク6より供給されるインクが収容される。
【0049】
上記の構成において、駆動回路28から下部電極24および上部電極26に電圧(駆動信号)を印加すると、圧電薄膜25が、下部電極24と上部電極26との電位差に応じて、厚さ方向に垂直な方向(基板22の面に平行な方向)に伸縮する。そして、圧電薄膜25と振動板22bとの長さの違いにより、振動板22bに曲率が生じ、振動板22bが厚さ方向に変位(湾曲、振動)する。つまり、振動板22bは、圧電素子27の駆動に伴って振動する。
【0050】
したがって、圧力室22a内にインクを収容しておけば、上述した振動板22bの振動により、圧力室22a内のインクに圧力が付与され、圧力室22a内のインクが吐出孔31aからインク滴として外部に吐出される。
【0051】
〔インクジェットヘッドの製造方法〕
次に、本実施形態のインクジェットヘッド21の製造方法について以下に説明する。図4は、インクジェットヘッド21の製造工程を示す断面図である。
【0052】
まず、基板22を用意する。基板22としては、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)に多く利用されている結晶シリコン(Si)を用いることができ、ここでは、酸化膜22eを介して2枚のSi基板22c・22dが接合されたSOI構造のものを用いている。
【0053】
基板22を加熱炉に入れ、1500℃程度に所定時間保持して、Si基板22c・22dの表面にSiO2からなる熱酸化膜23a・23bをそれぞれ形成する。次に、一方の熱酸化膜23a上に、チタンおよび白金の各層をスパッタ法で順に成膜し、下部電極24を形成する。
【0054】
続いて、基板22を600℃程度に再加熱し、変位膜となるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の層25aをスパッタ法で成膜する。そして、基板22に感光性樹脂41をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光、エッチングすることによって感光性樹脂41の不要な部分を除去し、形成する圧電薄膜25の形状を転写する。その後、感光性樹脂41をマスクとして、反応性イオンエッチング法を用いて層25aの形状を加工し、圧電薄膜25とする。
【0055】
次に、圧電薄膜25を覆うように下部電極24上に、チタン、白金層をスパッタ法で順に成膜し、層26aを形成する。続いて、層26a上に感光性樹脂42をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光、エッチングすることによって感光性樹脂42の不要な部分を除去し、形成する上部電極26の形状を転写する。その後、感光性樹脂42をマスクとして、反応性イオンエッチング法を用いて層26aの形状を加工し、上部電極26を形成する。
【0056】
次に、基板22の裏面(熱酸化膜22d側)に感光性樹脂43をスピンコート法で塗布し、マスクを介して露光、エッチングすることによって、感光性樹脂43の不要な部分を除去し、形成しようとする圧力室22aの形状を転写する。そして、感光性樹脂43をマスクとして、反応性イオンエッチング法を用いて基板22の除去加工を行い、圧力室22aを形成する。
【0057】
その後、基板22と、吐出孔31aを有するノズル基板31とを、接着剤等を用いて接合する。これにより、インクジェットヘッド21が完成する。なお、吐出孔31aに対応する位置に貫通孔を有する中間ガラスを用い、熱酸化膜12bを除去して、基板22と中間ガラス、および中間ガラスとノズル基板31とをそれぞれ陽極接合するようにしてもよい。この場合は、接着剤を用いずに3者(基板22、中間ガラス、ノズル基板31)を接合することができる。
【0058】
なお、下部電極24を構成する電極材料は、上述したPtに限定されるわけではなく、その他にも、例えばAu(金)、Ir(イリジウム)、IrO2(酸化イリジウム)、RuO2(酸化ルテニウム)、LaNiO3(ニッケル酸ランタン)、SrRuO3(ルテニウム酸ストロンチウム)等の金属または金属酸化物、およびこれらの組み合わせが考えられる。
【0059】
また、下部電極24と圧電薄膜25との間に、PLT(チタン酸ランタン鉛)、LaNiO3またはSrRuO3からなる配向制御層(シード層)を設けるようにしてもよい。
【0060】
また、圧電薄膜25を構成する材料は、上述したPZTに限定されるわけではなく、その他にも、例えばPZTにLa(ランタン)や、Nb(ニオブ)、Sr(ストロンチウム)を添加したもの、BaTiO3(チタン酸バリウム)、LiTaO3(タンタル酸リチウム)、Pb(Mg,Nb)O3、Pb(Ni,Nb)O3、PbTiO3等の酸化物やこれらの組み合わせが考えられる。
【0061】
〔駆動信号について〕
次に、駆動回路28が圧電素子27に印加する駆動信号の具体例について、以下に説明する。なお、以下では、1画素を描画する周期(以下、1画素周期とも称する)内で、1滴のインク滴を圧力室22aから吐出させるような圧電素子27の駆動を、1dpd(drop per dot)駆動と呼ぶ。これに対して、1画素周期内で、2滴のインク滴を圧力室22aから吐出させるような圧電素子27の駆動を、2dpd駆動と呼ぶ。1dpd駆動と2dpd駆動とを組み合わせ、1画素周期内で0〜2滴のインク滴の吐出を制御することにより、多階調の表示を行うことができる。
【0062】
図5は、圧電素子27に印加される駆動信号の一例を、1dpd駆動と2dpd駆動とのそれぞれについて示している。同図に示すように、2dpd駆動において、1画素周期内で、駆動信号の吐出パルスとして第1パルスP1と第2パルスP2とが順に圧電素子27に印加されるとき、第2パルスP2の電位は、第1パルスP1の電位からオフセットされている。より具体的には、第2パルスP2の電位V2は、後述する待機電位V1と第1パルスP1の電位V0との間に設定(調整)されており、第1パルスP1の電位V0からずれている。上記の第2パルスP2は、描画する画素に応じて圧電素子27に印加されるが、図5より、第1パルスP1および第2パルスP2は、電位V1に対して極性が同じ(つまり片極性)である。
【0063】
なお、図中のALは、圧力室22aの固有振動周期の半分の期間(例えばμsec)を指す。本実施形態では、第1パルスP1と第2パルスP2との間隔は、AL(ALの1倍)となっているが、ALの奇数倍であればよい。また、第1パルスP1および第2パルスP2の各パルス幅は、圧力室22aから安定した吐出特性でインク滴を吐出させるため、圧力室22aの固有振動周期に基づいてALと等しくなるように設定されている。
【0064】
図6は、図5で示した駆動信号と、振動板22bの振動波形と、インクの吐出タイミングとを併せて示したものである。なお、第1パルスP1の印加によって圧電素子27を駆動したときに、その駆動に伴う振動板22bの振動を第1振動とする。また、第2パルスP2の印加によって圧電素子27を駆動したときに、その駆動に伴う振動板22bの振動を第2振動とする。
【0065】
ここで、本実施形態では、圧力室22aからインクを吐出させる方法として、インクの安定吐出の観点から、引き打ち方式を採用している。この引き打ち方式では、待機時に一定の電圧(待機電位V1(例えば+25V))を圧電素子27に印加して、振動板22bを一定量変形させておき、インク吐出時に電位をV1よりも下げ、その後、待機電位V1に戻すことで、圧力室22aの容積の膨張および収縮を行い、圧力室22aからインクを吐出させる。本実施形態では、第1パルスP1の電位を待機電位V1よりも低いV0(例えばGND)とし、第2パルスP2の電位V2を、電位V1とV0との間にオフセットすることで、引き打ち方式でのインク吐出を実現している。
【0066】
図6のように、第1パルスP1または第2パルスP2が圧電素子27に印加され、振動板22bが振動すると、圧力室22a内のインクは、第1振動、第2振動ともに振動板22bの振動振幅が最大のときにインク滴として外部に吐出される。そして、インク吐出後の残響により、振動板22bは最大振幅以下の振幅で減衰しながら振動する。
【0067】
上記のように、第2パルスP2の電位V2を第1パルスP1の電位V0からオフセットし、第2パルスP2の電圧幅(電位V1−V2)を第1パルスP1の電圧幅(電位V1−V0)よりも狭めることにより、振動板22bの第2振動を、第1振動後の振動板22bの残響振動に、第2パルスP2の印加による振動を上乗せした振動としながらも、図6のように、第2振動の最大振幅(振動中心からの幅)を第1振動における最大振幅と略等しくする(ほぼ揃える)ことができる。
【0068】
このように、第1振動による残響を加味して第2振動の最大振幅を第1振動の最大振幅と略等しくできるので、連続駆動を行ったときに、振動板22bの振動によって圧電素子27にかかる応力を一定にすることができる。これにより、連続駆動を行った場合でも、圧電素子27の圧電特性(例えば圧電定数d31)が変化するのを抑えて、インクの吐出速度が変化するのを抑えることができる。その結果、連続駆動の前後で描画乱れ(画素ズレ)が生じるのを抑えることができる。なお、振動板22bの第2振動後の残響による応力は小さいため、その応力は圧電素子27の圧電特性の変動にはほとんど影響しない。
【0069】
また、図6に示すように、1画素周期内の吐出パルスの数に応じて、1画素周期内で吐出するインク滴の数が変わるので、複数の画素を高速で(高い駆動周波数で)描画する場合でも、上記吐出パルスの数に応じた階調表示を行うことができる。これにより、高速でかつ多階調の表示を行うことができる。
【0070】
特に、第2パルスP2は、描画する画素に応じて圧電素子27に印加されるので、第2パルスP2の有無により、吐出するインクの液滴量を画素に応じて切り替えて多階調の表示を行うことができる(1dpd:液滴量小、2dpd:液滴量大)。また、図6で示すように、第1振動と第2振動とで振動板22bの最大振幅は略等しく、多階調での描画時に圧電素子27にかかる応力は、1dpdと2dpdとで一定にできるので、連続駆動時の圧電素子27の圧電特性の変動を抑えて、多階調の描画を安定して行うことができる。
【0071】
また、図5で示したように、第1パルスP1と第2パルスP2との間隔がALの奇数倍であることにより、第1パルスP1および第2パルスP2の各パルス幅をALとして、図6のように振動板22bの振動を第1振動と第2振動とで同位相にすることができる。これにより、第1振動と第2振動とで振動板22bがスムーズにかつ効率よく振動するため、圧電素子27の動作を安定させることができる。
【0072】
また、本実施形態のように、圧電素子27が、圧電薄膜25を有する薄膜の圧電素子である場合、小型化、高密度化が容易であっても、膜厚が薄いために歪みやすく、連続駆動時に圧電特性が変動しやすい。したがって、第2パルスP2の電位V2のオフセットによって、第1振動と第2振動とで振動板22bの振動振幅を揃えて圧電特性の変動を抑える本実施形態の駆動方法が非常に有効となる。
【0073】
また、本実施形態のように、駆動信号の駆動波形が片極性である場合、待機電位V1に対して両極性の場合よりも、駆動時の電圧幅が狭い。したがって、連続駆動時の圧電特性の変動をさらに抑えて、圧電素子27をさらに安定して動作させることができる。また、圧電素子27の駆動電圧幅が狭いことで、駆動電圧が素子の耐電圧を超えて絶縁破壊が生じるのを極力抑えることができ、圧電素子27ひいてはインクジェットヘッド21の信頼性を向上させることができる。
【0074】
図7は、圧電素子27に印加される駆動信号の他の例を示しており、図8は、上記駆動信号のさらに他の例を示している。連続駆動時の圧電特性の変化を抑えて描画乱れを抑えるべく、振動板22bの第1振動における最大振幅と第2振動における最大振幅とを略等しくすることができるのであれば、図7に示すように、第2パルスP2の電位が第1パルスP1と同電位V0で、第2パルスP2の直前の電位および第2パルスP2の直後の電位が、待機電位V1から第1パルスP1の電位V0側にオフセットされた電位V3であってもよい(電位V0<V3<V1)。また、図8に示すように、第2パルスP2の電位V2が第1パルスP1の電位V0からオフセットされ、かつ、第2パルスP2の直後の電位V3が待機電位V1からオフセットされた電位であってもよい(電位V0<V2<V3<V1)。さらに、図示はしないが、第2パルスP2の電位が第1パルスP1と同電位で、第2パルスP2の直前の電位のみが(待機電位から)オフセットされていてもよく、第2パルスP2の電位、第2パルスP2の直前の電位、第2パルスP2の直後の電位が全て、オフセットされていてもよい。
【0075】
以上のことから、本実施形態では、第1パルスP1の印加時の振動板22bの最大振幅と、第2パルスP2の印加時の振動板22bの最大振幅とが略等しくなるように、第2パルスP2の電位、第2パルスP2の直前の電位、第2パルスP2の直後の電位の少なくともいずれかがオフセットされていれば、連続駆動時の圧電特性の変化を抑えて描画乱れを抑えることができると言える。
【0076】
図9は、圧電素子27に印加される駆動信号のさらに他の例を示している。2dpd駆動において、第2パルスP2が、複数のパルス(同図では3つのパルス)からなっていてもよい。なお、第2パルスP2を構成する各パルスの電位V2は、電位V1とV0との間の電位であれば、全て同じであってもよいし、異なっていてもよい。この場合、第2パルスP2に含まれるパルスの数に応じて、吐出するインク滴の数を制御して、表示できる階調数を増大させることができ、さらに多階調の表示が可能となる。なお、第2パルスP2において、後のパルスほど、電位がV1側にオフセットされていれば、各パルス印加時の振動板22bの最大振幅を略等しくして、連続駆動時の圧電特性の変化および描画乱れをさらに抑えることができる。
【0077】
図10は、圧電素子27に印加される駆動信号のさらに他の例を示している。圧電素子27に印加される駆動信号は、上記の吐出パルス(第1パルスP1、第2パルスP2)に加えて、第3パルスP3を含んでいてもよい。第3パルスP3は、上記吐出パルスの印加後の振動板22bの残響振動を抑制するための、第1パルスP1と同極性のパルスである。このような第3パルスP3を駆動信号に含める場合、第3パルスP3は、1画素周期内で、第1パルスP1の印加終了時点から、ALの偶数倍の期間が経過した時点で圧電素子27に印加されることが望ましい。なお、第3パルスP3のパルス幅は、ここではALとしているが、ALと異なっていてもよい。
【0078】
第1パルスP1と第3パルスP3との間隔がALの偶数倍の期間だけ空くので、1dpd駆動の場合でも、2dpd駆動の場合でも、第1パルスP1または第2パルスP2の印加による振動板22bの残響振動を、第1パルスP1または第2パルスP2と同極性の第3パルスP3を用いて効率よく抑えることができる。つまり、引き打ち方式では、圧力室22aに負圧を作用させてインクを圧力室22a内に引き込んでいる状態から、吐出パルスの印加により、圧力室22aに正圧を作用させてインクを吐出させるが、第1パルスP1と第3パルスP3との間隔がALの偶数倍である場合、第1パルスP1または第2パルスP2の印加後の残響振動により、圧力室22aに負圧が作用する期間に、圧力室22aに正圧を作用させる第3パルスP3を印加して、上記の残響振動を効率よく抑えることができる。
【0079】
また、第1パルスP1と第3パルスP3との間隔がALの2倍である場合、図示はしないが、2dpd駆動において、第2パルスP2の印加直後に第3パルスP3を圧電素子27に印加して、残響振動を早く止めるようにすることが可能となる。これにより、複数の画素を描画する周期を短縮化してさらに高速な描画を実現することが可能となる。なお、第2パルスP2の印加によるインク吐出特性を安定させるためには(第3パルスP3の印加の影響で2滴目のインク吐出を不安定にさせないためには)、図10のように、第2パルスP2と第3パルスP3との間隔を、少なくともALの2倍確保することが望ましい。
【0080】
図11は、圧電素子27に印加される駆動信号のさらに他の例を示しており、本実施形態で示した第2パルスP2の電位のオフセットを、特許文献2の駆動信号に適用したものである。特許文献2の駆動信号では、2dpd駆動において、第1パルスP1および第3パルスP3の各パルス幅をALとし、第2パルスP2のパルス幅をALよりもtだけ短いAL−tとし、第2パルスP2と第3パルスP3との間隔をtとすることで、第3パルスP3の印加によって残響振動を抑えながら、第2パルスP2の印加による運動エネルギーの増大を抑えて、インク滴の吐出速度を1画素周期内でも各画素周期間でも同じようにしている。
【0081】
したがって、特許文献2の駆動波形において、第2パルスP2の電位を、第1パルスP1と同じ電位V0からV2にオフセットさせることにより、振動板22bの最大振幅を第1振動と第2振動とで略等しくして、連続駆動時の圧電素子27の圧電特性の変化を抑えながら、特許文献2と同様の効果を得ることができ、描画乱れ(画素ズレ)をさらに抑えることが可能となる。
【0082】
〔圧電特性の変動確認テスト〕
次に、連続駆動時の圧電素子27の圧電特性の変動について、以下の確認テストを行った。ここでは、同一構成のインクジェットヘッド21を、(a)1dpd駆動、(b)2dpd駆動(第1振動の最大振幅=第2振動の最大振幅)、(c)2dpd駆動(第1振動の最大振幅:第2振動の最大振幅=1:1.2)の3通りで駆動し、連続駆動前後での振動板22bの振動振幅の最大幅および圧電素子27の圧電定数d31をそれぞれ求めた。その結果を表1に示す。なお、(a)〜(c)において、圧電素子27の駆動周波数は50kHzとし、連続駆動時間は1時間とした。また、駆動電圧幅は25V(待機電位V1:+25V、第1パルスP1の電位:0V(GND))とした。また、圧電定数d31については、圧電変位測定計によって測定される圧電素子27(圧電薄膜25)の圧電変位に基づいて求めた。
【0083】
【表1】
【0084】
(a)および(b)の駆動については、連続駆動前後において、振動板22bの振動振幅の最大幅に変化はなく、圧電素子27にかかる最大応力は一定であり、圧電特性の変化はなかった。一方、(c)の駆動については、連続駆動前後で振動振幅の最大幅が変化し、圧電特性の変化が見られた。
【0085】
なお、(c)の駆動において、連続駆動前の振動板の第2振動の最大振幅は、第1振動の最大振幅の1.2倍と大きく、連続駆動後の圧電定数d31は連続駆動前の圧電定数d31に比べて増大した。表1の例では、連続駆動後の圧電定数d31は連続駆動前の1.1倍になった。また、振動板22bの振幅の最大幅は、連続駆動開始後1時間で飽和し、その後は数時間連続駆動しても一定値(表1の例では858nm)であったが、(c)の連続駆動を行った圧電素子27に、(b)の連続駆動を1時間行ったところ、振動板22bの振動振幅の最大幅は780nmとなり、(c)の連続駆動前の状態(初期状態)に戻った。
【0086】
以上より、2dpd駆動において、第1振動と第2振動とで振動板22bの最大振幅が一定の場合(振動振幅の最大幅が一定の場合)、圧電特性が変化しないため、連続駆動の前後で画素ズレのない良好な画像が得られ、第1振動と第2振動とで最大振幅が変化すると(振動振幅の最大幅が変化すると)、圧電特性が変化するため、連続駆動の前後で画素ズレが起こり、描画乱れが生じるものと考えられる。
【0087】
〔補足〕
本実施形態では、第1パルスP1と第2パルスP2とによる2dpd駆動と、第1パルスP1のみによる1dpd駆動とを組み合わせた多階調描画を行っている。一方、単階調描画については、1dpd駆動だけを使って行うことができるが、2dpd駆動だけを使って行うようにしてもよい。2dpd駆動による単階調描画は、1dpd駆動による単階調描画に比べて、濃度の高い描画が可能である。
【0088】
また、2dpd駆動による単階調描画で、1dpd駆動と同じ濃度の描画を行う場合、1dpd駆動よりも低い電圧で駆動を行えるため、駆動電圧の低電圧化が可能である。また、このときの振動板の振動振幅は、1dpd駆動よりも2dpd駆動のほうが小さいため、薄膜の圧電素子(特に圧電薄膜(PZT))にかかる剥離応力が小さくなる。
【0089】
圧電素子に圧電薄膜を用いた場合、電圧印加による絶縁破壊や、振動による膜剥離が発生することがある。2dpd駆動で圧電素子を低電圧、低剥離応力で駆動することで、圧電薄膜の耐久性を改善できる。また、第1振動と第2振動とで最大振幅が略等しいので、圧電特性が安定し、変動しない。
【0090】
また、圧電薄膜において、良好な圧電特性を得るには、薄膜の結晶性が重要である。結晶性が悪いと、圧電特性が悪く、駆動時に高電圧が必要となり、絶縁破壊(不良)が発生しやすくなる。結晶性をよくする方法としては、圧電薄膜の下地膜に配向制御膜を使う方法がある。例えばスパッタ成膜されるPZT薄膜((100)の配向が好適)の場合、下地膜に(111)配向のPt膜が好適である。
【0091】
なお、圧電薄膜と下地膜は一般的に密着力が弱く、大きな振動をさせると、PZTとPtとの界面で剥離が発生するといった不良が発生することがある。このため、単階調描画を行う場合には、1dpd駆動よりも2dpd駆動を用いて、圧電素子を低電圧で駆動するほうが有利である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のインクジェットヘッドは、インクジェットプリンタに利用可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 インクジェットプリンタ
21 インクジェットヘッド
22a 圧力室
22b 振動板
27 圧電素子
P1 第1パルス
P2 第2パルス
P3 第3パルス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12