(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048325
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20060101AFI20161212BHJP
G02B 7/04 20060101ALI20161212BHJP
G03B 17/02 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
G02B7/02 C
G02B7/04 D
G03B17/02
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-140022(P2013-140022)
(22)【出願日】2013年7月3日
(65)【公開番号】特開2015-14648(P2015-14648A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】木村 貴之
【審査官】
川俣 洋史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−031694(JP,A)
【文献】
特開2009−186756(JP,A)
【文献】
特開昭56−077807(JP,A)
【文献】
特開2007−174358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G02B 7/04
G03B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ(11)から入射される光に応じた撮像を行う撮像装置(1)であって、
前記レンズを収納する筒部材(10)と、
前記筒部材の少なくとも一部を含む当該撮像装置の構成部品を内部に収納した状態で保持するホルダ部材(30)と、
を備え、
前記筒部材および前記ホルダ部材は、前記筒部材および前記ホルダ部材のうちの一方に設けられた雌ネジ部(32)に、前記筒部材および前記ホルダ部材のうちの他方に設けられた雄ネジ部(12)を蝶合すること、並びに、前記筒部材および前記ホルダ部材の間に接着剤(51)を塗布することによって接合されており、
前記筒部材および前記ホルダ部材が前記雌ネジ部と前記雄ネジ部との蝶合状態が緩む方向に移動しようとする際に、前記蝶合状態が締まる方向に力を発生させる蝶合維持手段(60)、
を備え、
前記蝶合維持手段は、
前記筒部材および前記ホルダ部材の少なくとも一方に、前記雄ネジ部および前記雌ネジ部として設けられたネジ溝に対して逆ネジ構造となる凸部または凹部を表す逆ネジ部(13)、を備え、
前記逆ネジ部において前記接着剤を固化させることによって構成されていること
を特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記筒部材および前記ホルダ部材の接合面に沿って前記筒部材および前記ホルダ部材のうちの一方に設けられた突起部(14)を、前記筒部材および前記ホルダ部材の接合面に沿って前記筒部材および前記ホルダ部材のうちの他方に設けられた溝部(34)に係合させることで前記筒部材および前記ホルダ部材を位置決めするためのインロー部(55)、を備えたこと
を特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の撮像装置において、
前記インロー部においても接着剤(52)が塗布されていること
を特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の撮像装置において、
前記筒部材および前記ホルダ部材の少なくとも一方には、前記接着剤が塗布される部位において凸部または凹部を有するアンカ部(60)、を備えたこと
を特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズから入射される光に応じた撮像を行う撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の撮像装置として、レンズを収納する筒部材と、筒部材を含む撮像装置の構成部品を内部に収納した状態で保持するホルダ部材と、を備え、筒部材とホルダ部材とを接着剤で接合する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の撮像装置では、筒部材とホルダ部材との接着部位に凹凸を設けることで、接着面積を増やして接着強度を増している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−123220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の撮像装置では、接着剤によって筒部材とホルダ部材とを接着しているだけであるので、高温や振動による耐久性に劣るという問題点があった。
そこで、このような問題点を鑑み、レンズから入射される光に応じた撮像を行う撮像装置において、高温や振動に対する耐久性を向上させることができるようにすることを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために成された撮像装置においては、レンズを収納する筒部材と、筒部材の少なくとも一部を含む当該撮像装置の構成部品を内部に収納した状態で保持するホルダ部材と、を備えている。そして、筒部材およびホルダ部材は、筒部材およびホルダ部材のうちの一方に設けられた雌ネジ部に、筒部材およびホルダ部材のうちの他方に設けられた雄ネジ部を蝶合すること、並びに、筒部材およびホルダ部材の間に接着剤を塗布することによって接合されている。さらに、筒部材およびホルダ部材が雌ネジ部と雄ネジ部との蝶合状態が緩む方向に移動しようとする際に、蝶合状態が締まる方向に力を発生させる蝶合維持手段、を備えている。
【0007】
このような撮像装置によれば、雄ネジ部と雌ネジ部とを蝶合することによって筒部材およびホルダ部材を位置決めするとともに、接着剤で接合し、さらに、蝶合維持手段が、蝶合状態が緩む際に蝶合状態が締まる方向に力を発生させるので、筒部材およびホルダ部材の位置関係を強固に保持することができる。よって、撮像装置の高温や振動に対する耐久性を向上させることができる。
【0008】
なお、各請求項の記載は、可能な限りにおいて任意に組み合わせることができる。この際、発明の目的を達成できる範囲内において一部構成を除外してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の撮像装置の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明にかかる実施の形態を図面と共に説明する。
[本実施形態の構成]
本発明が適用された撮像装置1は、レンズ11から入射される光に応じた撮像を行うカメラとして構成されている。撮像装置1は、例えば、車載用カメラとして構成されており、車室内において直射日光の影響で高温となるガラス側(フロントガラス側)にレンズ11を向けて配置される。本実施形態の撮像装置1では、このようにレンズ11が高温となり、かつ振動が発生する過酷な環境においても、良好な耐久性を有するよう工夫されている。
【0011】
詳細には、
図1および
図2に示すように、バレル10と本体部30とを備えている。バレル10は、レンズを収納する円筒状の部材であり、複数のレンズ11、およびピント調整機構(図示省略)を備えている。
【0012】
また、本体部30は、バレル10を内部に収納した状態で保持するとともに、シャッタ装置35およびフォトダイオードアレイ31も備えている。なお、ピント調整機構は複数のレンズ11による焦点距離を変化させることでピントを適切に調整する周知の機構であり、シャッタ装置35はシャッタ部(図示省略)を開閉することでレンズ11を介してフォトダイオードアレイ31に入射される光量(タイミング)を調整する周知の装置である。また、フォトダイオードアレイ31は、多数のフォトダイオードを備えた周知の撮像素子として構成されている。
【0013】
ここで、バレル10には、雄ネジ部12、凸部13、および溝部14が備えられている。凸部13は、雄ネジ部12として設けられたネジ溝に対して逆ネジ構造(つまり、雄ネジ部12として設けられたネジ溝とは逆方向の螺旋になる構造)となるよう形成されている。
【0014】
また、本体部30には、雌ネジ部32、および突起部34が備えられている。このような構成において、バレル10および本体部30は、バレル10に設けられた突起部14を、本体部30に設けられた溝部14に係合させることでバレル10および本体部30を位置決めし、この状態において雌ネジ部32に雄ネジ部12を蝶合することによって組み付けられる。
【0015】
なお、突起部14および溝部34は、インロー部(インロー)55を構成する。ただし、このインロー部55においては、突起部14の大きさに対して溝部34が大きく形成されており、雌ネジ部32に雄ネジ部12を蝶合しつつバレル10および本体部30の相対的な位置を適切な位置まで変位できるよう配慮されている。なお、フォトダイオードアレイ31とレンズ11との位置関係は、雌ネジ部32および雄ネジ部12による蝶合状態を調整することで設定される。
【0016】
また、バレル10において溝部14の近傍にはゴムパッキン53が備えられており、雌ネジ部32と雄ネジ部12との蝶合が進むにつれてゴムパッキン53がバレル10と本体部30との間で挟まれることで変形が進むよう設定されている。この構成によって、バレル10と本体部30との隙間がゴムパッキン53によって塞がれ、防水性が向上する。
【0017】
このような状態において、バレル10および本体部30の間に接着剤51,52を注入(塗布)することによって、バレル10および本体部30は強固に接合される。接着剤51が固化すると、凸部13との間で係合部60が形成される。この係合部60においては、バレル10および本体部30が雌ネジ部32と雄ネジ部12との蝶合状態が緩む方向に移動しようとする際に、蝶合状態が締まる方向に力を発生させる。
【0018】
なお、インロー部55においても接着剤52が塗布されている。また、接着剤51,52としては、例えば、熱硬化樹脂、エポキシ系樹脂等の材質のものが採用されうる。すなわち、熱や振動に対する耐性が強いものを採用することが好ましい。このような材質の接着剤を採用する場合、バレル10および本体部30はPPS材等の樹脂であると接着効果が高く好ましい。
【0019】
また、接着剤51,52は、バレル10と本体部30との組み付け前に塗布されていてもよいし、本体部30に接着剤51,52の注入口を備えている場合には、バレル10と本体部30との組み付け後にこの注入口から接着剤51,52を注入してもよい。
【0020】
[本実施形態による効果]
以上のように詳述した撮像装置1においては、レンズを収納するバレル10と、バレル10を含む当該撮像装置1の構成部品を内部に収納した状態で保持する本体部30と、を備えている。そして、バレル10および本体部30は、バレル10および本体部30のうちの一方(本実施形態では本体部30)に設けられた雌ネジ部32に、バレル10および本体部30のうちの他方(本実施形態ではバレル10)に設けられた雄ネジ部12を蝶合すること、並びに、バレル10および本体部30の間に接着剤51,52を塗布することによって接合されている。さらに、バレル10および本体部30が雌ネジ部32と雄ネジ部12との蝶合状態が緩む方向に移動しようとする際に、蝶合状態が締まる方向に力を発生させる係合部60、を備えている。
【0021】
このような撮像装置1によれば、雄ネジ部12と雌ネジ部32とを蝶合することによってバレル10および本体部30を位置決めするとともに、接着剤51,52で接合し、さらに、係合部60が、蝶合状態が緩む際に蝶合状態が締まる方向に力を発生させるので、バレル10および本体部30の位置関係を強固に保持することができる。よって、撮像装置1の高温や振動に対する耐久性を向上させることができる。
【0022】
また、上記撮像装置1において、係合部60は、バレル10および本体部30の少なくとも一方に、雄ネジ部12および雌ネジ部32として設けられたネジ溝に対して逆ネジ構造となる凸部13を備え、凸部13において接着剤51を固化させることによって構成されている。
【0023】
このような撮像装置1によれば、固化した接着剤51と凸部13とが密着するので、蝶合状態が緩む際に蝶合状態が締まる方向に力を発生させることができる。また、固化した接着剤51と凸部13との間でアンカ効果も奏することができる。
【0024】
さらに、上記撮像装置1においては、バレル10および本体部30の接合面に沿ってバレル10および本体部30のうちの一方(本実施形態ではバレル10)に設けられた突起部14を、バレル10および本体部30の接合面に沿ってバレル10および本体部30のうちの他方(本実施形態では本体部30)に設けられた溝部34に係合させることでバレル10および本体部30を位置決めするためのインロー部55、を備えている。
【0025】
このような撮像装置1によれば、インロー部55によってバレル10および本体部30を組み付ける際の位置決めを容易にすることができる。
また、上記撮像装置1においては、インロー部55において接着剤52が塗布されている。
【0026】
このような撮像装置1によれば、インロー部55にも接着剤52が塗布されているので、接着面を増加することでバレル10および本体部30をより強固に保持することができる。
【0027】
[その他の実施形態]
本発明は、上記の実施形態によって何ら限定して解釈されない。また、上記の実施形態の構成の一部を、課題を解決できる限りにおいて省略した態様も本発明の実施形態である。また、上記の複数の実施形態を適宜組み合わせて構成される態様も本発明の実施形態である。また、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される発明の本質を逸脱しない限度において考え得るあらゆる態様も本発明の実施形態である。また、上記の実施形態の説明で用いる符号を特許請求の範囲にも適宜使用しているが、各請求項に係る発明の理解を容易にする目的で使用しており、各請求項に係る発明の技術的範囲を限定する意図ではない。
【0028】
例えば、上記実施形態において、係合部60は、凸部13と接着剤51との関係で逆ネジ部としての効果およびアンカ部としての効果を奏するよう構成したが、凸部13に換えて、バレル10または本体部30において窪みとして形成された凹部を採用してもよい。また、逆ネジ部としての凸部13または凹部と、アンカ部としての凸部13または凹部は、それぞれ独立して別々に配置されていてもよい。
【0029】
また、上記実施形態においてはバレル10を円筒形状としたが、任意の形状の筒形状とされていてもよい。
[本実施形態の構成と本発明の構成との対応関係]
上記実施形態におけるバレル10は本発明でいう筒部材に相当し、上記実施形態における本体部30は本発明でいうホルダ部材に相当する。また、上記実施形態における凸部13は本発明でいう逆ネジ部に相当し、上記実施形態における係合部60は本発明でいうアンカ部および蝶合維持手段に相当する。
【符号の説明】
【0030】
1…撮像装置、10…バレル、11…レンズ、12…雄ネジ部、13…凸部、14…溝部、30…本体部、31…フォトダイオードアレイ、32…雌ネジ部、34…突起部、35…シャッタ装置、51…接着剤、52…接着剤、53…ゴムパッキン、55…インロー部、60…係合部。