特許第6048331号(P6048331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048331
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】自動車のフェンダ支持構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/16 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
   B62D25/16 B
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-147326(P2013-147326)
(22)【出願日】2013年7月16日
(65)【公開番号】特開2015-20444(P2015-20444A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 駿介
(72)【発明者】
【氏名】宮本 康史
(72)【発明者】
【氏名】知北 勝
(72)【発明者】
【氏名】三石 直人
(72)【発明者】
【氏名】片岡 愉樹
(72)【発明者】
【氏名】松岡 秀典
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−176636(JP,A)
【文献】 特開2006−044312(JP,A)
【文献】 特開2010−120623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00 − 25/08
B62D 25/14 − 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンネットを支持するボンネット支持部と、フェンダを取付けるフェンダ取付け部とを上壁に有するフェンダブラケットが設けられた自動車のフェンダ支持構造であって、
上記フェンダブラケットは、その上壁の対向する両端から下方に延びる一対の脚部と、
当該脚部の下端に形成され車体に固定される車体固定部とを有し、
上記一対の脚部は、中央開口部と、該中央開口部の両側に位置する両柱状部とを有し、
上記両柱状部が互いに上方ほど離れるように傾斜する逆台形に形成されたことを特徴とする
自動車のフェンダ支持構造。
【請求項2】
ボンネットを支持するボンネット支持部と、フェンダを取付けるフェンダ取付け部とを上壁に有するフェンダブラケットが設けられた自動車のフェンダ支持構造であって、
上記フェンダブラケットは、その上壁の前後両端から下方に延びる前後一対の脚部と、
当該脚部の下端に形成され車体に固定される車体固定部とを有し、
上記前後一対の脚部は、中央開口部と、ボンネット側柱状部と、フェンダ側柱状部とを有し、
上記両柱状部が互いに上方ほど離れるように傾斜し車両正面視および車両背面視で逆台形に形成されたことを特徴とする
自動車のフェンダ支持構造。
【請求項3】
上記フェンダブラケットのボンネット支持部と、上記フェンダの縦壁とが車幅方向にオフセットしており、
上記上壁の前後両端から下方に延びる前後一対の脚部のうち、少なくともボンネット支持部に近い側の脚部は、上記フェンダ側柱状部に対して上記ボンネット側柱状部の方が垂直に近い非対称の逆台形に形成された
請求項2記載の自動車のフェンダ支持構造。
【請求項4】
上記フェンダブラケットのボンネット支持部と、上記フェンダの縦壁とが車幅方向にオフセットしており、上記フェンダ側柱状部に対して上記ボンネット側柱状部の方が幅広に形成された
請求項2または3記載の自動車のフェンダ支持構造。
【請求項5】
上記脚部下端の車体固定部は、車幅方向に並ぶ複数の固定部位、または、車幅方向に連続した固定部位を備えた
請求項2〜4の何れか1項に記載の自動車のフェンダ支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フェンダブラケットの上壁に、ボンネットを支持するボンネット支持部と、フェンダを取付けるフェンダ取付け部とを備えたような自動車のフェンダ支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フロントフェンダパネルを取付けるフェンダブラケットの上壁には、当該フロントフェンダパネルの取付け部と、ボンネットストッパラバーを直接取付けるラバー取付け部、またはボンネット側に設けられたボンネットストッパラバーを支持するボンネット支持部が設けられている。
上述のフェンダブラケットには、ボンネット閉時に該ボンネットとフェンダパネルとの衝突を防止するために高いボンネット支持剛性が要求される一方で、車両と歩行者との接触時には、歩行者保護のために低い剛性で変形ストロークが長くなるよう荷重吸収変形性が要求される。つまり、上述のフェンダブラケットには、高いボンネット支持剛性と、荷重吸収変形性(低剛性)との相反する性能が要求される。
詳しくは、上記ボンネットは、室内側からボンネットオープンレバーを操作することで、バネ力によりホップアップし、その後、ラッチ機構のロック解除レバーを操作して解放するように構成されているので、ボンネット閉時にはバネ力に打ち勝って下降させ、ラッチ機構にロックさせる必要がある。
【0003】
ボンネット上面は衝突物保護のためと、軽量化のために低剛性に形成されているので、ボンネット閉時には所定距離上方から自由落下させ、その勢いでボンネットのストライカをラッチ機構にロックさせるが、このボンネット閉時に上記ボンネットストッパラバーに大きい荷重が付加される。
【0004】
ボンネットとフロントフェンダパネルとの隙は見栄え確保のために小さくなっており、ボンネットストッパラバーを支持するフェンダブラケットには、ボンネットとフロントフェンダパネルとが衝突しないよう高剛性が求められるので、低剛性が要求される歩行者保護性能との両立を図ることが困難であった。
このような問題点を解決するために、特許文献1,2,3に開示された自動車のフェンダ支持構造が既に発明されている。
【0005】
特許文献1に開示された従来構造は、その上壁にフェンダ取付け部とボンネットストッパラバー取付け部(ボンネット支持部)とを有する前側のフェンダブラケットにおいて、ブラケット前側脚部が車幅方向外側に傾いた平行四辺形状に形成され、フェンダ取付け部が片持ち構造で車幅方向外側部位に位置し、ボンネットストッパラバー取付け部が両持ち構造で車幅方向内側部位に位置するものである。
上述のフェンダ取付け部は、片持ち構造のため低剛性であり、またボンネットストッパラバー取付け部は両持ち構造のため高剛性であるから、衝突物保護とボンネット支持の剛性確保との両立を図ることができる。
上述のフェンダブラケットはエプロンレインフォースメントに取付けられており、その前側脚部が平行四辺形状に形成されているので、歩行者衝突時にはボンネットストッパラバーがエプロンレインフォースメントと干渉しないように、その車幅方向外方に変形して倒れ込み、エプロンレインフォースメントの高さ寸法に関係なく、フェンダブラケットを確実に潰し切って荷重吸収を行なうことができる利点があるが、フェンダブラケットの車幅方向全幅が上壁の車幅方向の幅よりも幅広であるため、小型車にはスペース的に不向きである。
また、ブラケット後側脚部には、中間柱状部が設けられており、フェンダブラケットのボンネット側が高剛性に形成されているので、フェンダ衝突時にフェンダブラケットの全体を潰し切りにくい難点があった。
【0006】
特許文献2に開示された従来構造は、ボンネットインナパネルに取付けられたストッパラバーを受けるボンネット支持部を車幅方向内側に設け、このボンネット支持部よりも一段高く車幅方向外側にはフェンダ取付け部を設けたフェンダブラケットであり、ボンネット閉荷重に対して強く、フェンダからの荷重に対して荷重吸収性を有するように構成するため、ボンネット支持部の車幅方向内側に側壁を設けて、その剛性向上を図っているので、衝突物の荷重がフェンダに付加された時、フェンダブラケットのボンネット側を潰し切りにくい難点がある。
【0007】
また、ボンネット支持部とフェンダ取付け部の高さを異ならせ、フェンダ取付け部を一段高く形成しているので、これら両者間には屈曲部が存在し、剛性的に弱い屈曲部をフランジで補強しているので、構造が複雑となり、重量増加、コストアップを招く問題点があった。
さらに、車幅方向内側のボンネット支持部と、車幅方向外側のフェンダ取付け部とが、段差部を介して車幅方向に離れて並んでおり幅広であるため、小型車への採用はスペース的に困難である。
【0008】
特許文献3に開示された従来構造は、フェンダブラケットの前後の両脚部を正面視で台形状に形成したものである。このため、脚部の下側取付け部が車幅方向に大きくなる関係上、小型車への採用はスペース的に困難となる。
また、フェンダブラケットの上壁への下向き荷重に対する安定性が高いので、剛性調整が困難となるうえ、該上壁にボンネットストッパラバーを設けようとすると、さらに大きい上壁が必要となり、脚部の下側取付け部がさらに幅広となるため、小型車にはスペース的に不向きとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−176636号公報
【特許文献2】特開2006−224806号公報
【特許文献3】特開2006−44312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明は、ボンネットを支持するフェンダブラケットを、簡素かつ軽量でコンパクトな小型車向きの形状と成しつつ、ボンネットを強固に支持するボンネット支持剛性と、衝突物のフェンダ衝突時に当該フェンダブラケットの全体が潰れ切る低剛性の確保とを両立することができる自動車のフェンダ支持構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明による自動車のフェンダ支持構造は、ボンネットを支持するボンネット支持部と、フェンダを取付けるフェンダ取付け部とを上壁に有するフェンダブラケットが設けられた自動車のフェンダ支持構造であって、上記フェンダブラケットは、その上壁の対向する両端から下方に延びる一対の脚部と、当該脚部の下端に形成され車体に固定される車体固定部とを有し、上記一対の脚部は、中央開口部と、該中央開口部の両側に位置する両柱状部とを有し、上記両柱状部が互いに上方ほど離れるように傾斜する逆台形に形成されたものである。
【0012】
上記構成によれば、一対の脚部が逆台形であるため、従来の台形状や平行四辺形状のものと比較して脚部下側の幅が狭くコンパクトとなる。
また、上壁への下向き荷重に対し、上記両柱状部は互いに逆方向に倒れようとするので、両柱状部の倒れる方向への荷重成分が相殺されて安定し、上壁の張力が高まって、ボンネット支持剛性を高めることができる。
さらに、一方の柱状部が変形すると、他方の柱状部の倒れ方向の荷重相殺がなくなり、応力も集中するので容易に変形して、フェンダブラケット全体が潰れる。
【0013】
このように、フェンダブラケットの脚部が逆台形であるから、脚部下端の幅を狭めながら、ボンネット支持剛性を高めることができる。また、容易にフェンダブラケット全体を潰して、荷重吸収量の増大を図ることができる。さらに、逆台形でその下端がコンパクトであるから、車体側の取付けスペースの確保が容易で、その取付け部の補強が少なくて済み、車体全体の軽量コンパクト化ができ、小型車への採用が可能となる。
【0014】
この発明の自動車のフェンダ支持構造は、また、ボンネットを支持するボンネット支持部と、フェンダを取付けるフェンダ取付け部とを上壁に有するフェンダブラケットが設けられた自動車のフェンダ支持構造であって、上記フェンダブラケットは、その上壁の前後両端から下方に延びる前後一対の脚部と、当該脚部の下端に形成され車体に固定される車体固定部とを有し、上記前後一対の脚部は、中央開口部と、ボンネット側柱状部と、フェンダ側柱状部とを有し、上記両柱状部が互いに上方ほど離れるように傾斜し車両正面視および車両背面視で逆台形に形成されたものである。
【0015】
上記構成によれば、前後一対の脚部が逆台形であるため、従来の台形状や平行四辺形状のものと比較して脚部下側の車幅方向の幅が狭くコンパクトとなる。
また、上壁への下向き荷重に対し、上記ボンネット側およびフェンダ側の両柱状部は互いに逆方向に倒れようとするので、両柱状部の倒れる方向への荷重成分が相殺されて安定し、上壁も左右方向に引っ張られて、その張力が高まって、ボンネット支持剛性を高めることができる。
さらに、一方の柱状部が変形すると、他方の柱状部の倒れ方向の荷重相殺がなくなり、応力も集中するので容易に変形して、フェンダブラケット全体が潰れる。
【0016】
このように、フェンダブラケットの前後一対の脚部が逆台形であるから、脚部下端の車幅方向の幅を狭めながら、ボンネット支持剛性を高めることができる。また、容易にフェンダブラケット全体を潰して、荷重吸収量の増大を図ることができる。さらに、逆台形でその下端がコンパクトであるから、車体側の取付けスペースの確保が容易で、その取付け部の補強が少なくて済み、車体全体の軽量コンパクト化ができ、小型車への採用が可能となる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記フェンダブラケットのボンネット支持部と、上記フェンダの縦壁とが車幅方向にオフセットしており、上記上壁の前後両端から下方に延びる前後一対の脚部のうち、少なくともボンネット支持部に近い側の脚部は、上記フェンダ側柱状部に対して上記ボンネット側柱状部の方が垂直に近い非対称の逆台形に形成されたものである。
【0018】
上記構成によれば、ボンネット側柱状部がフェンダ側柱状部に対して垂直に近いので、相対的にボンネット側柱状部は上下方向に高剛性であり、このため、ボンネット支持剛性を高めることができる。
【0019】
一方で、フェンダ側柱状部はボンネット側柱状部と比較して、水平に近く上下方向に低剛性であるため、衝突物のフェンダ衝突時に容易に変形し、荷重吸収を図ることができ、またフェンダ側柱状部の変形により荷重相殺がなくなるので、ボンネット側柱状部も直ちに変形し、フェンダブラケット全体が大きく変形する。
このように、ボンネット支持剛性を高めつつ、フェンダ衝突時のフェンダブラケット全体の低剛性化を図ることができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、上記フェンダブラケットのボンネット支持部と、上記フェンダの縦壁とが車幅方向にオフセットしており、上記フェンダ側柱状部に対して上記ボンネット側柱状部の方が幅広に形成されたものである。
【0021】
上記構成によれば、フェンダ側柱状部よりもボンネット側柱状部を幅広に形成したので、ボンネット支持部の高剛性化と、フェンダ取付け部の低剛性化と、をより一層確実に両立することができる。
【0022】
この発明の一実施態様においては、上記脚部下端の車体固定部は、車幅方向に並ぶ複数の固定部位、または、車幅方向に連続した固定部位を備えたものである。
上述の複数の固定部位は、スポット溶接を用いて形成してもよく、上述の連続した固定部位は、レーザ溶接を用いて形成してもよく、さらには、リベット、ボルトナット、連続溶接や摩擦撹拌接合による固定を採用してもよい。
【0023】
上記構成要件によれば、複数の固定部位または連続した固定部位により、脚部の固定が安定するので、結果的にボンネット支持剛性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、ボンネットを支持するフェンダブラケットを、簡素かつ軽量でコンパクトな小型車向きの形状と成しつつ、ボンネットを強固に支持するボンネット支持剛性と、衝突物のフェンダ衝突時に当該フェンダブラケットの全体が潰れ切る低剛性の確保とを両立することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明のフェンダ支持構造を備えた自動車の部分平面図
図2】ボンネットを取外した状態で自動車のフェンダ支持構造を示す平面図
図3図2の要部斜視図
図4図2のA−A線矢視断面図
図5図2のB−B線に沿う要部の断面図
図6図2のC−C線矢視図
図7図2のD−D線矢視図
図8図3からフロントフェンダパネルを取外した状態の要部拡大斜視図
図9図2からフロントフェンダパネルおよび前側のフェンダブラケットを取外した状態で示す拡大平面図
図10】(a)はフェンダブラケットの平面図、(b)はフェンダブラケットの正面図、(c)はフェンダブラケットの側面図、(d)はフェンダブラケットの背面図
図11】作用を説明するための概略正面図
図12】作用を説明するための概略側面図
図13】(a)(b)(c)は衝突物の衝突時におけるフェンダブラケットの変形状態を示す概略側面図
図14】フェンダブラケットの他の実施例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は背面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
ボンネットを支持するフェンダブラケットを、簡素かつ軽量でコンパクトな小型車向きの形状と成しつつ、ボンネットを強固に支持するボンネット支持剛性と、衝突物のフェンダ衝突時に当該フェンダブラケットの全体が潰れ切る低剛性の確保とを両立するという目的を、ボンネットを支持するボンネット支持部と、フェンダを取付けるフェンダ取付け部とを上壁に有するフェンダブラケットが設けられた自動車のフェンダ支持構造であって、上記フェンダブラケットは、その上壁の対向する両端から下方に延びる一対の脚部と、当該脚部の下端に形成され車体に固定される車体固定部とを有し、上記一対の脚部は、中央開口部と、該中央開口部の両側に位置する両柱状部とを有し、上記両柱状部が互いに上方ほど離れるように傾斜する逆台形に形成されるという構成にて実現した。
【実施例】
【0027】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は自動車のフェンダ支持構造を示し、図1は当該フェンダ支持構造を備えた自動車の部分平面図、図2はボンネットを取外した状態で自動車のフェンダ支持構造を示す平面図、図3図2の要部斜視図、図4図2のA−A線矢視断面図、図5図2のB−B線に沿う要部の断面図である。
なお、以下の説明においては自動車の右側のフェンダ支持構造について説明するが、自動車の左側のフェンダ支持構造は右側のそれと左右略対称に構成されるものである。
【0028】
図1図5において、エンジンルーム1の上方を開閉可能に覆うボンネット2と、エンジンルーム1の側方車外側を覆うフロントフェンダパネル3(以下単にフェンダと略記する)とを設けている。
図4に示すように、上述のボンネット2は、ボンネットアウタパネル2aとボンネットインナパネル2bとをヘミング加工により一体化したもので、該ボンネット2はその後端側を開閉支点として前側が開閉するように構成されている。
【0029】
図2図3に示すように、上述のフェンダ3はその上端3aから下方に延びる縦壁3bと、この縦壁3bの下端から車幅方向内方に延びるフランジ3cとを有しており、該フェンダ3のフランジ3cが後述する前部フェンダブラケット30と後部フェンダブラケット70とで車体に支持されている。ここで、上述の縦壁3bはフェンダ3に付勢された荷重を後述する各フェンダブラケット30,70に伝達する伝達要素として作用する。
【0030】
ところで、図2に示すように、カウル部4は車幅方向に延びるダッシュアッパパネル5と、車幅方向に延びるカウルメンバ6とを備えており、カウル部4の側端部にはボンネットヒンジブラケット7が取付けられている。
上述のダッシュアッパパネル5の下部には、エンジンルーム1と車室8とを前後方向に仕切るダッシュロアパネルが設けられており、このダッシュロアパネルからエンジンルーム1の左右両サイド部において車両前方に延びるフロントサイドフレーム9,9(但し、図面においては車両右側のフロントサイドフレーム9のみを示す)が設けられている。
上述のフロントサイドフレーム9は左右一対設けられており、図2に示すように、当該フロントサイドフレーム9の前端にはセットプレート10およびクラッシュカン11を介して、車幅方向に延びるバンパレインフォースメント12が取付けられている。
図2で示したフロントサイドフレーム9の上方かつ車外側には、カウルサイド部から車両の前後方向に延びるエプロンレインフォースメント13を設けている(図3参照)。
【0031】
図3図4に示すように、このエプロンレインフォースメント13はエプロンレインフォースメントインナ14とエプロンレインフォースメントアウタ15とを接合固定して、車両の前後方向に延びる閉断面16を備えた車体強度部材である。
図2図4に示すように、上述のエプロンレインフォースメント13の前端をエプロンフロントパネル17で閉塞して、該エプロンレインフォースメント13の強度向上を図るように構成している。
【0032】
図2図3に示すように、エプロンレインフォースメント13とフロントサイドフレーム9との間には、サスペンションタワー部18を設けている。このサスペンションタワー部18はサスタワー上部パネル19を有し、該サスタワー上部パネル19の車幅方向外側端部19aは、図3図4に示すようにエプロンレインフォースメントインナ14の上壁に接合固定されている。
【0033】
また、図3に示すように、エプロンフロントパネル17の車幅方向外側上部にはフランジ部17aが一体形成されており、このフランジ部17aが図3図4に示すように、エプロンレインフォースメントインナ14の上壁前端部に接合固定されている。
さらに、図2に示すように、エプロンレインフォースメント13におけるエプロンレインフォースメントインナ14の縦壁と、フロントサイドフレーム9の車外側縦壁との間には、エプロンサイドパネル20(いわゆるホイールアーチ)が設けられている。
【0034】
図1図4において、21はヘッドランプ、22はランプハウジングであり、該ランプハウジング22の車幅方向外側には後方に向けて延びる延設部22aが一体形成されている。
また、図1において、23はフロントバンパ、24はドアミラーであり、図2図3において、25は合成樹脂製のラジエータシュラウドにおけるシュラウドアッパ部である。
【0035】
図6図2のC−C線矢視図、図7図2のD−D線矢視図、図8図3からフェンダ3を取外した状態の要部拡大斜視図、図9図2からフェンダおよび前側のフェンダブラケットを取外した状態で示す拡大平面図である。
図2図9に示すように、エプロンレインフォースメント13におけるエプロンレインフォースメントインナ14の上壁には、車両前後方向に離間させて前部フェンダブラケット30と、後部フェンダブラケット70とを設けている。これらの各ブラケット30,70は何れもフェンダ3を支持するためのものである。
【0036】
図10は前部フェンダブラケット30を示し、図10の(a)は平面図、図10の(b)は正面図、図10の(c)は側面図、図10の(d)は背面図である。
図10の(c)に示すように、前部フェンダブラケット30は側面視で、略矩形状に形成されており、当該フェンダブラケット30は、上壁31と、この上壁31の対向する両端、すなわち、上壁31の前後両端から下方に延びる前後一対の脚部32,33と、当該脚部32,33の下端に形成され車体としてのエプロンレインフォースメントインナ14の上壁に固定される車体固定部34,35とを備えている。
【0037】
図8に示すように、前側の車体固定部34は、エプロンレインフォースメントインナ14とエプロンフロントパネル17のフランジ部17aとが上下方向に重合する剛性が高い部分に、同図に×印で示すように車幅方向に並ぶ複数の固定部位SW1にてスポット溶接固定されている。
また、図8に示すように、後側の車体固定部35は、エプロンレインフォースメントインナ14とサスタワー上部パネル19の車幅方向外側端部19aとが上下方向に重合する剛性が高い部分に、同図に×印で示すように車幅方向に並ぶ複数の固定部位SW2にてスポット溶接固定されている。
このように、前後の各脚部32,33下端の車体固定部34,35を、車幅方向に並ぶ複数の固定部位SW1,SW2にて固定することで、脚部32,33の固定の安定化を図っている。なお、スポット溶接による車幅方向に並ぶ複数の固定部位SW1,SW2に代えて、レーザ溶接により車幅方向に連続した固定部位を形成してもよい。
【0038】
図10の(a)に示すように、前部フェンダブラケット30の上壁31は、上壁中間部に対して左右両側に位置する側辺部を一段下げて、これら両者間に稜線V1,V2を形成して、上壁31の面剛性を確保すべく構成している。
また、前部フェンダブラケット30の上壁31には、ボンネットストッパラバー36(図6図7参照)を直接取付けて、このボンネットストッパラバー36を介してボンネット2を支持するボンネット支持部37と、フェンダ3のフランジ3cを取付ける前後のフェンダ取付け部38,39とを備えている。
【0039】
ここで、上述の各フェンダ取付け部38,39の下面にはウエルドナット40,40が設けられている。上述のボンネット支持部37はボンネットストッパラバー36を螺合固定可能な開口部により形成されており、また、上述のフェンダ取付け部38,39は、ウエルドナット40に締結するボルト41,42(図3図4参照)を挿通可能な丸孔により形成されている。
さらに、前側に位置するフェンダ取付け部38の車幅方向外側には、クリップ43(図5参照)を挿入する位置決め孔44が形成されている。
【0040】
図8に示すように、上述の前部フェンダブラケット30における上壁31に形成されたフェンダ取付け部38,39は、フェンダ支持部を兼ねるものであり、これらの各フェンダ取付け部38,39はボンネット支持部37と両脚部32,33との間に設けられており、ボンネット支持部37に固定したボンネットストッパラバー36の下方位置に対応するよう当該ボンネットストッパラバー36の落とし穴45(開口部)が車体としてのエプロンレインフォースメントインナ14の上壁に開口形成されている。
また、前部フェンダブラケット30における上壁31に形成された前側のフェンダ取付け部38と、上下方向に対応すべくエプロンレインフォースメントインナ14の上壁にはボルト41の落とし穴46(開口部)が開口形成されている。
【0041】
一方、図2図3に示すように、上述のボンネットストッパラバー36と対応するフェンダ3のフランジ3cには、フェンダ3とボンネットストッパラバー36との干渉を防止する切欠き凹部3dが形成されている。
【0042】
図2図5に示すように、前部フェンダブラケット30の上壁31におけるフェンダ取付け部38,39は、フェンダ3のフランジ3cと共に、ボルト41,42、ウエルドナット40で挟まれる締結構造により、ボンネット支持部37よりも相対的に補強される。
すなわち、ボンネット支持部37がフェンダ取付け部38,39に対して相対的に脆弱になり、上方から下方に向く衝突荷重の入力時に前部フェンダブラケット30が変形するが、この場合、両脚部32,33は図12に矢印a,bで示すように互いに近づく方向に引っ張られ、該フェンダブラケット30は略M字状に変形しやすくなる。
【0043】
要するに、前部フェンダブラケット30を補強するための別途補強構造を設けることなく、当該フェンダブラケット30を側面視略矩形状のシンプルな形状で構成しつつ、荷重入力時にボンネットストッパラバー36を確実に落とし穴45に落とすように構成したものである。
また、フェンダ3とボンネットストッパラバー36とを同じ前部フェンダブラケット30で支持しているので、寸法精度が確保でき、衝突物の衝突時にボンネットストッパラバー36を落とし穴45に落とすために前部フェンダブラケット30を、確実に略M字状に変形させるように構成している。
【0044】
さらに、図3図4図5図8に示すように、ランプハウジング22の延設部22aを、位置決め孔44に係入するクリップ43で位置決めした後に、ボルト41を用いて、当該延設部22aと、フェンダ3のフランジ部3cと、前部フェンダブラケット30とを共締め固定している。
つまり、ヘッドランプ21とフェンダ3とを前部フェンダブラケット30に固定できるように、当該前部フェンダブラケット30の上壁31には、フェンダ取付け部38と延設部22aとが重ねて設けられており、ヘッドランプ支持構造も用いて、前部フェンダブラケット30の上壁31を補強し、ボンネットストッパラバー36を固定するボンネット支持部37から該前部フェンダブラケット30が略M字状に変形しやすく成すと共に、ヘッドランプ21とフェンダ3とボンネット2との位置決め精度を向上し、これら三者21,3,2間の隙を縮小すべく構成している。
【0045】
ここで、図5に示すように、上述の延設部22aはクランク状脆弱部22bを介してランプハウジング本体に連結されており、当該脆弱部22bにより、歩行者衝突時や軽衝突時に前部フェンダブラケット30に対する後方荷重入力を防止すると共に、図3に示すように、クランク状脆弱部22bが車両前後方向に対して斜め方向にクランクしており、荷重入力時に当該脆弱部22bによりランプハウジング22が車幅方向に変形し、該ランプハウジング22が前部フェンダブラケット30に衝突するのを防止すべく構成している。
【0046】
図5および図10の(c)に示すように、上述の前部フェンダブラケット30は側面視で一対の脚部32,33がボンネット支持方向、詳しくは、ボンネットストッパラバー36の軸線方向に延びる略矩形に形成されており、これにより前部フェンダブラケット30の軽量化を図りつつ、ボンネット支持剛性の向上を図るように構成している。
さらに詳しくは、図10の(c)に示すように、後側の脚部33の上下方向の長さをL1、同側の脚部33とエプロンレインフォースメントインナ14の上壁との成す角度をθ1とし、前側の脚部32の上下方向の長さをL2、同側の脚部32とエプロンレインフォースメントインナ14の上壁との成す角度をθ2とするとき、L1<L2、θ1>θ2の関係式が成立するように、前部フェンダブラケット30は非対称の略矩形状に形成されており、また、ボンネットストッパラバー36に近い方の後側の脚部33がより垂直に近く、荷重入力方向に向いている。
【0047】
一方で、前側の脚部32の下端は、図5に示すように、エプロンフロントパネル17のフランジ部17aに近接させており、当該フランジ部17aを後方に延ばす必要がないよう構成している。
【0048】
図10に示すように、上壁31と、一対の脚部32,33と、車体固定部34,35とを備えた前部フェンダブラケット30は、図10の(b)、図6図8に示すように、その前側の脚部32が、ボンネット側柱状部47と、フェンダ側柱状部48と、これら両柱状部47,48間の中央開口部49とを有しており、両柱状部47,48が互いに上方ほど離れるように傾斜し、車両正面視で逆台形(詳しくは、中空状の逆台形)に形成されている。
【0049】
同様に、図10の(d)、図7図8に示すように、後側の脚部33が、ボンネット側柱状部51と、フェンダ側柱状部52と、これら両柱状部51,52間の中央開口部53とを有しており、両柱状部51,52が互いに上方ほど離れるように傾斜し、車両背面視で逆台形(詳しくは、中空状の逆台形)に形成されている。
【0050】
つまり、図6図7に示すように、前後一対の脚部32,33は、中央開口部49,53と、ボンネット側柱状部47,51と、フェンダ側柱状部48,52とを有し、両柱状部が互いに上方ほど離れるように傾斜し車両正面視および車両背面視で逆台形に形成されており、従来の台形状や平行四辺形状のものと比較して脚部32,33下部の車幅方向の幅が狭くコンパクトになるように構成している。
【0051】
また、図11に示すように、ボンネット2の閉時に前部フェンダブラケット30の上壁31への下向き荷重に対し、ボンネット側柱状部47,51とフェンダ側柱状部48,52とは同図に矢印c,dで示すように、互いに逆方向に倒れようとし、両柱状部の倒れる方向への荷重成分が相殺されて安定し、上壁31が左右方向に引っ張られて、その張力が高まり、ボンネット支持剛性を高めるように構成したものである。
さらに、一方の柱状部の変形時には、他方の柱状部の倒れ方向の荷重相殺がなくなり、応力の集中により前部フェンダブラケット30の全体を容易に変形させ、潰れるように構成したものである。
【0052】
図7図10の(d)に示すように、前部フェンダブラケット30のボンネット支持部37と、フェンダ3の縦壁3bとは車幅方向にオフセットしており、前部フェンダブラケット30の上壁31の前後両端から下方に延びる前後一対の脚部32,33のうち、ボンネット支持部37に近い側の後側の脚部33は、フェンダ側柱状部52に対してボンネット側柱状部51の方が垂直に近い非対称の逆台形に形成されている。
これにより、各柱状部51,52の傾斜角度の差異により、ボンネット支持剛性を高める一方で、フェンダ側柱状部52は衝突物のフェンダ衝突時に容易に変形して、荷重吸収を図るように構成したものであり、高いボンネット支持剛性の確保と、フェンダ衝突時のフェンダブラケット30全体の低剛性化とを両立すべく構成したものである。
【0053】
図10の(b)、図6に示すように、ボンネット支持部37から遠い側の前側の脚部32は、ボンネット側柱状部47に対してフェンダ側柱状部48の方が垂直に近い非対称の逆台形に形成されており、前側の脚部32および後述する後部フェンダブラケット70と、後側の脚部33とで左右の各柱状部の傾斜の関係を逆にすることで、衝突物が衝突する荷重入力時に、前部フェンダブラケット30を横倒れすることなく、座屈させやすいように構成したものである。
【0054】
また、図6図7図10に示すように、前後両側の各脚部32,33において、フェンダ側柱状部48,52に対してボンネット側柱状部47,51の方が幅広に形成されており、これにより、ボンネット支持部37の高剛性化と、フェンダ取付け部38,39、特に、フェンダ取付け部39の低剛性化と、をより一層確実に両立すべく構成したものである。
【0055】
図2図4図5に示すように、フェンダ3の前部は前部フェンダブラケット30で支持されるが、フェンダ3の後部は同図に示す後部フェンダブラケット70で支持されている。
図5図6図9に示すように、後部フェンダブラケット70は、上壁71と、上壁71の前後両端から下方に延びる前後一対の脚部72,73と、これら各脚部72,73の下端に一体的に屈曲形成された車体固定部74,75とを有している。
【0056】
前後一対の車体固定部74,75は、図9に示すように、エプロンレインフォースメントインナ14の上壁と、サスタワー上部パネル19の車幅方向外側端部19aが上下方向に重合された剛性が高い部位において、固定部位SW3,SW3で、これら両者14,19aにスポット溶接固定されている。
【0057】
前側の脚部72は、図6に示すように、ボンネット側柱状部76と、フェンダ側柱状部77と、これら両柱状部76,77間の中央開口部78とを有しており、該脚部72は車両正面視で略逆三角形状に形成されている。
【0058】
後側の脚部73は、図9に示すように、ボンネット側柱状部79と、フェンダ側柱状部80と、これら両柱状部79,80間の中央開口部81とを有しており、該脚部73は車両背面視で略逆三角形状に形成されている。
上述の後部フェンダブラケット70においては、前後の両脚部72,73共に、フェンダ側柱状部77,80がボンネット側柱状部76,79に対して垂直に近い非対称の逆三角形状に形成されており、前部フェンダブラケット30に対して倒れ方向が逆になるように設定すると共に、脚部72,73を略逆三角形状とすることで、車体固定部74,75のコンパクト化を図っている。
さらに、図5に示すように、後部フェンダブラケット70の前後両脚部72,73の上下方向中間部には、屈曲部82を形成していて、衝突物の衝突時に該屈曲部82を起点として後部フェンダブラケット70が確実に上下方向に変形するように構成している。
【0059】
そして、図4図5図9に示すように、後部フェンダブラケット70の上壁71には、ボルト83およびウエルドナット84を用いて、フェンダ3のフランジ3cが取付けられる。
なお、図中、矢印Fは車両の前方を示し、矢印Rは車両の後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示し、矢印UPは車両の上方を示す。
【0060】
図示実施例は上記の如く構成するものにして、以下作用を説明する。
ボンネット2閉時にはボンネットストッパラバー36を介して前部フェンダブラケット30の上壁に下向き荷重が作用するが、ボンネット側柱状部47,51およびフェンダ側柱状部48,52は、図11に矢印c,dで示すように、互いに逆方向に倒れようとし、両柱状部の倒れる方向への荷重成分が相殺されると共に、上壁31は左右方向に引っ張られて、その張力が高まるので、高い支持剛性にてボンネット2を支持することができる。
【0061】
一方、衝突物の衝突時には、図12に示すように、前部フェンダブラケット30の上壁31がV字状に湾曲し、前後の脚部32,33の上端間が図12の矢印a,b方向に引き込まれて短くなり、前部フェンダブラケット30は側面視で略M字状に変形する。図12に示すように、前部フェンダブラケット30の両脚部32,33が共に内側に傾くため、従来のような平行四辺形的な倒れを防止することができる。
【0062】
図13はインパクタXを衝突させた際の前部フェンダブラケット30の変形状態を示す概略側面図であって、前部フェンダブラケット30の上壁31がV字状に変形する際、図13の(a)に矢印eで示すように、両脚部32,33の上端部に外向きの回転荷重が付勢され、図13の(a)に部位fで示す如く、脚部33の上部が外向きに湾曲する。しかし、脚部32,33の下端(部位j参照)はエプロンレインフォースメントインナ14の上壁に固定された車体固定部34,35との間で外向き屈曲への反力が発生し、外側に折れにくいため、車体固定部34,35よりも若干上方に離れた部位gが内向きに湾曲し、脚部32,33が側面視で略S字状に変形し、さらに図13の(a)に示す上方から下方への圧縮荷重hにより、両脚部32,33は部位f、gにて図13の(b)(c)に示すように、S字状に曲がるものと推測される。
【0063】
図13に示すように、脚部32,33が側面視で略S字状に変形した場合、屈曲変形部位は図13の(a)に示す部位f,g,i,jの片側4ヶ所となり、また脚部32,33が直線状態からS字状に曲がるため、従来の屈曲部を有する台形状フェンダブラケットの片側3ヶ所に対して変形部位の数および各変形部位の屈曲角度が共に増加し、荷重吸収量の向上を図ることができる。
すなわち、上述の前部フェンダブラケット30は、特開2007−106381号公報に開示されたように、脚部に予め屈曲部を備えた略台形状のフェンダブラケットに対して、コンパクトでありながら、平行四辺形的な変形を防止することができ、安定して座屈変形するものであって、さらに上述の如く側面視で略S字変形を誘発することができるので、衝撃荷重吸収に有利となる。
【0064】
このように、図1図13で示した実施例の自動車のフェンダ支持構造は、ボンネット2を支持するボンネット支持部37と、フェンダ3を取付けるフェンダ取付け部38,39とを上壁31に有するフェンダブラケット(前部フェンダブラケット30参照)が設けられた自動車のフェンダ支持構造であって、上記フェンダブラケット(前部フェンダブラケット30)は、その上壁31の対向する両端から下方に延びる一対の脚部32,33と、当該脚部32,33の下端に形成され車体(エプロンレインフォースメントインナ14参照)に固定される車体固定部34,35とを有し、上記一対の脚部32,33は、中央開口部49,53と、該中央開口部49,53の両側に位置する両柱状部47,48,51,52とを有し、上記両柱状部47,48,51,52が互いに上方ほど離れるように傾斜する逆台形に形成されたものである(図1図2図8参照)。
【0065】
この構成によれば、一対の脚部32,33が逆台形であるため、従来の台形状や平行四辺形状のものと比較して脚部32,33下側の幅が狭くコンパクトとなる。
また、上壁31への下向き荷重に対し、上記両柱状部47,48,51,52は互いに逆方向に倒れようとするので、両柱状部47,48,51,52の倒れる方向への荷重成分が相殺されて安定し、上壁31の張力が高まって、ボンネット支持剛性を高めることができる。
さらに、一方の柱状部が変形すると、他方の柱状部の倒れ方向の荷重相殺がなくなり、応力も集中するので容易に変形して、前部フェンダブラケット30全体が潰れる。そのため、低剛性でありながらフェンダブラケット30全体を変形させることで荷重吸収量の向上を図ることができる。
【0066】
このように、フェンダブラケット(前部フェンダブラケット30)の脚部32,33が逆台形であるから、脚部32,33下端の幅を狭めながら、ボンネット支持剛性を高めることができる。また、容易にフェンダブラケット30全体を潰して、荷重吸収量の増大を図ることができる。さらに、逆台形でその下端がコンパクトであるから、車体側の取付けスペースの確保が容易で、その取付け部の補強が少なくて済み、車体全体の軽量コンパクト化ができ、小型車への採用が可能となる。
【0067】
上記実施例のフェンダ支持構造は、また、ボンネット2を支持するボンネット支持部37と、フェンダ3を取付けるフェンダ取付け部38,39とを上壁31に有するフェンダブラケット(前部フェンダブラケット30参照)が設けられた自動車のフェンダ支持構造であって、上記フェンダブラケット(前記フェンダブラケット30)は、その上壁31の前後両端から下方に延びる前後一対の脚部32,33と、当該脚部32,33の下端に形成され車体(エプロンレインフォースメントインナ14参照)に固定される車体固定部34,35とを有し、上記前後一対の脚部32,33は、中央開口部49,53と、ボンネット側柱状部47,51と、フェンダ側柱状部48,52とを有し、上記両柱状部47,48,51,52が互いに上方ほど離れるように傾斜し車両正面視および車両背面視で逆台形に形成されたものである(図1図2図8参照)。
【0068】
この構成によれば、前後一対の脚部32,33が逆台形であるため、従来の台形状や平行四辺形状のものと比較して脚部32,33下側の車幅方向の幅が狭くコンパクトとなる。
また、上壁31への下向き荷重に対し、上記ボンネット側およびフェンダ側の両柱状部47,51,48,52は互いに逆方向に倒れようとするので、両柱状部の倒れる方向への荷重成分が相殺されて安定し、上壁31も左右方向に引っ張られて、その張力が高まって、ボンネット支持剛性を高めることができる。
さらに、一方の柱状部が変形すると、他方の柱状部の倒れ方向の荷重相殺がなくなり、応力も集中するので容易に変形して、前記フェンダブラケット30全体が潰れる。
【0069】
このように、フェンダブラケット(前部フェンダブラケット30)の前後一対の脚部32,33が逆台形であるから、脚部32,33下端の車幅方向の幅を狭めながら、ボンネット支持剛性を高めることができる。また、容易にフェンダブラケット30全体を潰して、荷重吸収量の増大を図ることができる。さらに、逆台形でその下端がコンパクトであるから、車体側の取付けスペースの確保が容易で、その取付け部の補強が少なくて済み、車体全体の軽量コンパクト化ができ、小型車への採用が可能となる。
また、上記前記フェンダブラケット30のボンネット支持部37と、上記フェンダ3の縦壁3bとが車幅方向にオフセットしており、上記上壁31の前後両端から下方に延びる前後一対の脚部32,33のうち、少なくともボンネット支持部37に近い側の脚部33は、上記フェンダ側柱状部52に対して上記ボンネット側柱状部51の方が垂直に近い非対称の逆台形に形成されたものである(図7参照)。
【0070】
上記構成によれば、ボンネット側柱状部51がフェンダ側柱状部52に対して垂直に近いので、相対的にボンネット側柱状部51は上下方向に高剛性であり、このため、ボンネット支持剛性を高めることができる。
【0071】
一方で、フェンダ側柱状部52はボンネット側柱状部51と比較して、水平に近く上下方向に低剛性であるため、衝突物のフェンダ衝突時に容易に変形し、荷重吸収を図ることができ、またフェンダ側柱状部52の変形により荷重相殺がなくなるので、ボンネット側柱状部51も直ちに変形し、フェンダブラケット30全体が大きく変形する。
このように、ボンネット支持剛性を高めつつ、フェンダ衝突時のフェンダブラケット30全体の低剛性化を図ることができる。
さらに、上記前部フェンダブラケット30のボンネット支持部37と、上記フェンダ3の縦壁3bとが車幅方向にオフセットしており、上記フェンダ側柱状部48,52に対して上記ボンネット側柱状部47,51の方が幅広に形成されたものである(図6図7参照)。
【0072】
この構成によれば、フェンダ側柱状部48,52よりもボンネット側柱状部47,51を幅広に形成したので、ボンネット支持部の高剛性化と、フェンダ取付け部の低剛性化と、をより一層確実に両立することができる。
加えて、上記脚部32,33下端の車体固定部34,35は、車幅方向に並ぶ複数の固定部位SW1,SW2を備えたものである(図8参照)。
上述の複数の固定部位SW1,SW2に代えて、レーザ溶接を用いて車幅方向に連続した固定部位を形成してもよい。
【0073】
この構成によれば、複数の固定部位SW1,SW2または連続した固定部位により、脚部32,33の固定が安定するので、結果的にボンネット支持剛性の向上を図ることができる。
【0074】
図14は前部フェンダブラケットの他の実施例を示し、図14の(a)は平面図、図14の(b)は正面図、図14の(c)は側面図、図14の(d)は背面図である。
図14に示すこの前部フェンダブラケット30Aは、フェンダ3のフランジ3cの側面視傾斜角度に対してエプロンレインフォースメントインナ14の上壁における側面視傾斜角度が水平に近い車両に採用するものである。
図14に示すこの実施例の場合、同図の(c)に示すように前側の脚部32は略垂直に立設し、後側の脚部33よりも短く設定されている。
また、後側の脚部33は、上壁31と略直角、換言すれば衝突物の衝突荷重が入力する方向に指向しており、かつ前側の脚部32よりも長く設定している。
また、上述の前部フェンダブラケット30Aは図14の(c)に示すように、側面視略台形状に形成されていて、平行四辺形的な変形を防止して、衝突荷重入力時には安定して座屈変形するように構成している。
【0075】
図14の(b)に示す正面図において、ボンネット側柱状部47はフェンダ側柱状部48に対して垂直に近く、かつ、ボンネット側柱状部47の幅がフェンダ側柱状部48の幅に対して幅広に形成されており、前側の脚部32は非対称の逆台形状に構成されている。
【0076】
図14の(d)に示す背面視において、ボンネット側柱状部51はフェンダ側柱状部52に対して垂直に近く、かつ、ボンネット側柱状部51の幅が、フェンダ側柱状部52の幅に対して幅広に形成されており、後側の脚部33も非対称の逆台形状に構成されている。
【0077】
前後の各脚部32,33においてボンネット側柱状部47,51を共に垂直に近い状態に指向させ、かつ、幅広に形成することで、高いボンネット支持剛性を確保すべく構成している。
また前側の脚部32の中央開口部49よりも後側の脚部33の中央開口部53の開口面積を小さく設定すると共に、前後の車体固定部34,35に形成したビード54,55のうち、後側の車体固定部35のビード55を上記中央開口部53の下部口縁まで上下方向に延ばして、脚部33の剛性向上を図っている。
【0078】
図14で示したこの実施例においても、ボンネット2を支持するボンネット支持部37と、フェンダ3を取付けるフェンダ取付け部38,39とを上壁31に有する前部フェンダブラケット30Aが設けられた自動車のフェンダ支持構造であって、上記前部フェンダブラケット30Aは、その上壁31の前後両端から下方に延びる前後一対の脚部32,33と、当該脚部32,33の下端に形成され車体(エプロンレインフォースメントインナ14)に固定される車体固定部34,35とを有し、上記前後一対の脚部32,33は、中央開口部49,53と、ボンネット側柱状部47,51と、フェンダ側柱状部48,52とを有し、上記両柱状部47,48,51,52が互いに上方ほど離れるように傾斜し車両正面視および車両背面視で逆台形に形成されたものであるから、上方からの衝突荷重入力時に側面視で略M字状に変形する点以外については、先の実施例とほぼ同様の作用、効果を奏するので、図14において図10と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
なお、図5図6で開示したように、上記前部フェンダブラケット30はエプロンレインフォースメント13の前部に設けられ、この前部フェンダブラケット30よりも車両後方に後部フェンダブラケット70が設けられ、該後部フェンダブラケット70は車幅方向内側に位置するボンネット側柱状部76,79の傾斜が水平に近くなるよう形成されている。
【0079】
このように構成すると、後部フェンダブラケット70もその下部が車幅方向にコンパクトでありながら、前部フェンダブラケット30はボンネット側支持剛性が高く、後部フェンダブラケット70はフェンダ側支持剛性が高く、前後の各フェンダブラケット30,70で左右逆方向に強くなるため、フェンダ3の全体を安定して支持することができる。
【0080】
また、実施例で開示したように、前部フェンダブラケット30、30Aの一対の脚部32,33の中央開口部49,53には、中間柱状部、中間染部材や筋違が存在しない構造と成している。
このように構成すると、衝突物のフェンダ衝突時において、ボンネット側柱状部47,51を不安定にして確実に変形させることができる。
【0081】
さらに、実施例で開示したように、前部フェンダブラケット30,30Aの車体固定部34,35はエプロンレインフォースメント13に接合される既存の別パネル(サスタワー上部パネル19やエプロンフロントパネル17のフランジ部17a)で補強したものである。
このように構成すると、脚部32,33下端を小型コンパクトに形成し、車体固定部34,35の車幅方向寸法が小さくても、上記別パネルで車体を補強しているので、前部フェンダブラケット30,30Aを車体に強固に固定することができ、軽量高剛性化を図ることができる。
【0082】
この発明の構成と上述の実施例との対応において、
この発明のフェンダブラケットは、実施例の前部フェンダブラケット30,30Aに対応し、
以下同様に、
車体固定部を固定する車体は、エプロンレインフォースメント13、特にそのインナ14に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記実施例においては前部フェンダブラケット30,30Aの車体固定部34,35をエプロンレインフォースメントインナ14の上壁前後に固定したが、これら車体固定部34,35を車幅方向の内外に離間して固定するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上説明したように、本発明は、ボンネットを支持するボンネット支持部と、フェンダを取付けるフェンダ取付け部とを上壁に有するフェンダブラケットが設けられた自動車のフェンダ支持構造について有用である。
【符号の説明】
【0084】
2…ボンネット
3…フェンダ
3b…縦壁
14…エプロンレインフォースメントインナ(車体)
30,30A…前部フェンダブラケット(フェンダブラケット)
31…上壁
32,33…脚部
34,35…車体固定部
37…ボンネット支持部
38,39…フェンダ取付け部
47,51…ボンネット側柱状部
48,52…フェンダ側柱状部
49,53…中央開口部
SW1,SW2…固定部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14