(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048338
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】リニアモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 41/03 20060101AFI20161212BHJP
H02K 9/02 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
H02K41/03 A
H02K9/02 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-156878(P2013-156878)
(22)【出願日】2013年7月29日
(65)【公開番号】特開2015-27234(P2015-27234A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2015年1月15日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100139000
【弁理士】
【氏名又は名称】城戸 博兒
(72)【発明者】
【氏名】牧野 省吾
(72)【発明者】
【氏名】大戸 基道
【審査官】
マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/066868(WO,A1)
【文献】
特開2007−023342(JP,A)
【文献】
特開平03−124259(JP,A)
【文献】
特開2001−262936(JP,A)
【文献】
米国特許第06087742(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0009010(US,A1)
【文献】
米国特許第07859142(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/03
H02K 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空隙を介して互いに対向する固定子及び電機子を備え、
前記固定子は、
前記電機子と対向する方向に交差するように延びた長尺形状を呈し、当該長尺形状の長手方向に沿って並び且つそれぞれ前記電機子側に突出する複数の突極を有し、
前記電機子は、
前記固定子側に突出するティースをなす電機子コアと、
前記ティースに巻かれた電機子巻線と、
前記固定子の前記長手方向に沿って並ぶように前記ティースの先端側に設けられた複数の永久磁石と、
前記ティースと前記永久磁石との間に介在する断熱材層とを有し、
複数の前記永久磁石は、前記ティースの突出方向における前記永久磁石同士の厚さの違いにより前記電機子コア側に凹凸を形成し、前記凹凸は前記ティースに嵌合するリニアモータ。
【請求項2】
複数の前記永久磁石として、前記ティース側に向かう磁界を生じる第1永久磁石と、前記固定子側に向かう磁界を生じる第2永久磁石と、前記固定子の前記長手方向に沿う磁界を生じる第3永久磁石とを備え、
前記第1永久磁石と前記第2永久磁石とは互いに交互に並び、前記第3永久磁石は前記第1永久磁石と前記第2永久磁石との間に配置され、
前記ティースの突出方向において、前記第1永久磁石の厚さと前記第2永久磁石の厚さとは同等であり、前記第3永久磁石の厚さが前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石の厚さに対して異なる、請求項1記載のリニアモータ。
【請求項3】
空隙を介して互いに対向する固定子及び電機子を備え、
前記固定子は、
前記電機子と対向する方向に交差するように延びた長尺形状を呈し、当該長尺形状の長手方向に沿って並び且つそれぞれ前記電機子側に突出する複数の突極を有し、
前記電機子は、
前記固定子側に突出するティースをなす電機子コアと、
前記ティースに巻かれた電機子巻線と、
前記固定子の前記長手方向に沿って並ぶように前記ティースの先端側に設けられた複数の永久磁石と、
前記ティースと前記永久磁石との間に介在する断熱材層とを有し、
複数の前記永久磁石は、モールド材により一体化された状態で前記電機子コアに固定され、
前記モールド材は、前記固定子側から前記複数の永久磁石を覆う被膜を構成するリニアモータ。
【請求項4】
前記モールド材は、前記複数の永久磁石の前記電機子コア側に、前記ティースに嵌合する凹凸を形成する、請求項3記載のリニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
リニアモータは、空隙を介して互いに対向する電機子及び長尺の固定子を備え、固定子の長手方向に沿って電機子及び固定子の相対運動を発生させる。このようなリニアモータの一種として、電機子には電機子コア、電機子巻線及び複数の永久磁石が設けられ、固定子には複数の突極が設けられたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。電機子コアは、固定子側に突出するティースをなし、電機子巻線はティースに巻かれる。複数の永久磁石はティースの先端側に設けられ、固定子の長手方向に沿って並ぶように配置される。複数の突極は、固定子の長手方向に沿って並ぶと共に、それぞれ電機子側に突出する。電機子は、電機子コア、電機子巻線及び永久磁石を協働させて進行磁界を発生させる。この進行磁界が固定子の突極に作用することで上記相対運動が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−219199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したリニアモータでは、電機子巻線の発熱に伴って推力が低下する場合がある。そこで本発明は、電機子巻線の発熱に伴う推力の低下を抑制できるリニアモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るリニアモータは、空隙を介して互いに対向する固定子及び電機子を備え、固定子は、電機子と対向する方向に交差するように延びた長尺形状を呈し、当該長尺形状の長手方向に沿って並び且つそれぞれ電機子側に突出する複数の突極を有し、電機子は、固定子側に突出するティースをなす電機子コアと、ティースに巻かれた電機子巻線と、固定子の長手方向に沿って並ぶようにティースの先端側に設けられた複数の永久磁石と、ティースと永久磁石との間に介在する断熱材層とを有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電機子巻線の発熱に伴う推力の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係るリニアモータの概略構成を示す断面図である。
【
図2】ティースと永久磁石との接合部を示す拡大図である。
【
図3】第2実施形態に係るリニアモータの概略構成を示す断面図である。
【
図6】第3実施形態に係るリニアモータの電機子の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係るリニアモータ1は、例えば様々な製造装置又は加工装置等のFA機器において、テーブル送り等に利用される。
図1及び
図2に示すように、リニアモータ1は、互いに空隙を介して対向する電機子2及び固定子3を備える。固定子3は、電機子2との対向方向に直交するように延びる長尺形状を呈し、設置対象(例えばFA機器の本体部)に固定される。電機子2は、固定子3の長手方向に沿って移動自在となるように、リニアガイド(不図示)により支持される。電機子2は、駆動対象(例えばFA機器のテーブル)に固定される。リニアモータ1は、固定子3の長手方向に沿って、固定子3に対する電機子2の相対運動を発生させることで駆動対象を移送する。なお、電機子2が設置対象に固定され、固定子3が駆動対象に固定されてもよい。この場合、リニアモータ1は、電機子2に対する固定子3の相対運動を発生させることで駆動対象を移送する。
【0010】
続いて、固定子3及び電機子2の構成について詳細に説明する。説明において、「上下」、「前後」及び「左右」は、電機子2側を上側とし、固定子3側を下側とし、固定子3の一端側を前側とした方向を意味する。
【0011】
固定子3は、ヨーク3aと複数の突極3bとを有する。ヨーク3aは、前後方向に沿って延びると共に左右方向に沿って広がった帯状を呈する。複数の突極3bは、前後方向に沿って並ぶと共に、それぞれヨーク3aから上側に突出する。突極3bは、左右方向に沿って延び、台形の断面形状を呈する。突極3bの断面形状は台形に限られず、例えば矩形又は半円形であってもよい。
【0012】
固定子3は、例えば3%珪素鉄等の鉄系の軟磁性材料により構成される。固定子3は、珪素鋼板等の電磁鋼板を左右方向に沿って積層したものであってもよく、軟磁性複合材料(SMC)を圧縮成形したものであってもよく、鉄系の構造材により一体的に形成されたものであってもよい。
【0013】
電機子2は、電機子コア4と、6セットの電機子巻線7と、23個の永久磁石8とを有する。
【0014】
電機子コア4は、ヨーク5と、6個のティース6とを有する。ヨーク5は、前後方向に沿って延びると共に左右方向に沿って広がった平板状を呈する。ヨーク5の下面には、前後方向に沿って並ぶ6箇所の凹部5aが形成されている。凹部5aは、それぞれ左右方向に沿って延びている。
【0015】
6個のティースは、6箇所の凹部5aにそれぞれ嵌合し、ヨーク5から下側に突出している。ヨーク5とティース6とは例えば接着により固定されている。ティース6の先端部には、前側及び後側に広がる2箇所の張出部6aが形成されている。ティース6の先端面には、凹部6bが形成されている。凹部6bは、前後方向においてティース6の中央部に位置し、左右方向に沿って延びている。
【0016】
ヨーク5及びティース6は、例えば3%珪素鉄等の鉄系の軟磁性材料により構成される。ヨーク5及びティース6は、珪素鋼板等の電磁鋼板を左右方向に沿って積層したものであってもよく、軟磁性複合材料(SMC)を圧縮成形したものであってもよい。
【0017】
6セットの電機子巻線7は、6個のティース6にそれぞれ巻かれている。最前のティース6Aに巻かれた電機子巻線7Aと、前から3番目のティース6Cに巻かれた電機子巻線7Cと、前から5番目のティース6Eに巻かれた電機子巻線7Eとには、互いに位相が1/3周期ずれた3相の交流がそれぞれ供給される。以下、電機子巻線7Aに供給される交流を「U相交流」といい、電機子巻線7Cに供給される交流を「V相交流」といい、電機子巻線7Eに供給される交流を「W相交流」という。
【0018】
前から2番目のティース6Bに巻かれた電機子巻線7Bと、前から4番目のティース6Dに巻かれた電機子巻線7Dと、前から6番目のティース6Fに巻かれた電機子巻線7Fとには、W相交流と、U相交流と、V相交流とがそれぞれ供給される。電機子巻線7D,7F,7Bへの交流の供給方向は、電機子巻線7A,7C,7Eへの交流の供給方向に対してそれぞれ逆向きである。
【0019】
電機子コア4及び電機子巻線7は、モールド材P1により一体化され、電磁石ユニットU1を構成している。電磁石ユニットU1は、前後方向に延びた直方体形状を呈する。モールド材P1は、例えばエポキシ系樹脂である。
【0020】
23個の永久磁石8は、前後方向に沿って並んだ状態で、電磁石ユニットU1の下に配置されている。それぞれの永久磁石8は、左右方向に沿って延び、矩形の断面形状を呈する。6個の永久磁石(第1永久磁石)8Aは、下側がS極、上側がN極となるように配置されている。すなわち、永久磁石8Aは上側に向かう磁界を生じるように配置されている。6個の永久磁石(第2永久磁石)8Bは、下側がN極、上側がS極となるように配置されている。すなわち、永久磁石8Bは下側に向かう磁界を生じるように配置されている。永久磁石8Aと永久磁石8Bとは交互に並んでおり、ティース6ごとに一対の永久磁石8A,8Bが位置している。すなわち、それぞれのティース6の先端側には、前後方向に沿って並ぶ一対の永久磁石8A,8Bが設けられている。なお、上述した張出部6aにより、ティース6の先端面が拡張されている。これにより、ティース6と永久磁石8A,8Bとの対向面積が大きくなり、電磁石ユニットU1が発生する磁界と永久磁石8A,8Bが発生する磁界とが効率よく合成される。
【0021】
6個の永久磁石8Cは、ティース6の先端側において永久磁石8A,8Bの間に配置されている。5個の永久磁石8Dは、ティース6同士の間において、永久磁石8A,8Bの間に配置されている。永久磁石(第3永久磁石)8C,8Dは、いずれも永久磁石8A側がS極、永久磁石8B側がN極となるように配置されている。すなわち、永久磁石8C,8Dは、いずれも前後方向に沿う磁界を生じるように配置されている。このように、永久磁石8A,8B,8C,8Dは、所謂ハルバッハ配列を構成している。
【0022】
ティース6の突出方向において、永久磁石8Aの厚さと永久磁石8Bの厚さとは略同等であり、永久磁石8C,8Dの厚さは永久磁石8A,8Bの厚さに比べ大きい。これにより、23個の永久磁石8は、上側に凹凸R1を構成する。凹凸R1はティース6に嵌合する。具体的には、永久磁石8Cの上部がティース6の凹部6bに嵌合し、永久磁石8Dの上部がティース6同士の間に嵌合する。
【0023】
23個の永久磁石8は、断熱材層9を介してティース6に固定されている。断熱材層9は、ティース6の構成材料に比べ熱伝導率が低い断熱材により構成される。断熱材としては、例えばセラミック又はガラス繊維等が挙げられる。断熱材は軟磁性材料を含んでいてもよい。断熱材層9の厚さは、可能な限り薄いことが好ましく、例えば0.2〜0.3mmである。
【0024】
電機子2は、次の手順により組み立てられる。まず、ヨーク5とティース6とが分離した状態で、それぞれのティース6に上側から電機子巻線7を装着する。ティース6に電機子巻線7を巻き付けてもよいし、予め巻かれた電機子巻線7をティース6に被せてもよい。上側から電機子巻線7を装着するので、張出部6aが障害とならず、作業を容易に行うことができる。次に電機子コア4と電機子巻線7とをモールド材P1により一体化する。次に、断熱材層9を介して永久磁石8をティース6に固定する。このとき、予めシート状に形成された断熱材層9をティース6に接着し、永久磁石8を断熱材層9に接着してもよい。断熱性を有する接着剤によりティース6と永久磁石8とを接着し、硬化した接着剤により断熱材層9を形成してもよい。
【0025】
このようなリニアモータ1では、電機子2の電機子コア4、電機子巻線7及び永久磁石8の協働により進行磁界が生じ、この進行磁界が突極3bに作用することで推力が発生する。この推力により、固定子3の長手方向に沿って電機子2及び固定子3の相対運動が生じる。
【0026】
リニアモータ1を駆動し続けると、電機子巻線7が発熱する。従来のリニアモータでは、電機子巻線の発熱に伴い推力が低下する場合があった。本発明者等は、電機子巻線の発熱に伴う永久磁石の温度上昇が、推力低下の一因であることを見出した。
【0027】
リニアモータ1によれば、ティース6と永久磁石8との間に断熱材層9が介在するので、電機子巻線7から永久磁石8への伝熱が抑制される。これにより、電機子巻線7の発熱に伴う永久磁石8の温度上昇を抑制できる。永久磁石8には、温度上昇に伴い磁力が低下する傾向がある。このため、永久磁石8の温度上昇を抑制することにより、電機子巻線7の発熱に伴う推力の低下を抑制できる。
【0028】
複数の永久磁石8は、ティース6の突出方向における永久磁石8同士の厚さの違いにより上側に凹凸R1を形成し、凹凸R1はティース6に嵌合する。このため、電機子コア4と永久磁石8との接合強度が高められる。これにより、断熱材層9の材質選定及び厚さ設定等における強度面の制約が緩和されるので、永久磁石8の温度上昇をより確実に抑制できる。
【0029】
ティース6の突出方向において、永久磁石8Aの厚さと永久磁石8Bの厚さとは略同等であり、永久磁石8C,8Dの厚さが永久磁石8A,8Bの厚さに対して異なる。電機子2と固定子3との対向方向に沿う磁界を生じる永久磁石8A,8Bの厚さを略同等にすることで進行磁界の強度を安定化させつつ、永久磁石8C,8Dにより凹凸R1を形成し、電機子コア4と永久磁石8との接合強度を高めることができる。
【0030】
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係るリニアモータ10の電機子20は、カバー部材80を更に有する点で、第1実施形態に係る電機子2と異なる。また、電機子20は、電機子コア4を一体化した点、永久磁石8C,8Dを有しない点でも電機子2と異なる。
【0031】
図3及び
図4に示すように、電機子20の電機子コア40は、ヨーク5及び6個のティース6に代えて、ヨーク50及び6箇所のティース60を有する。ヨーク50とティース60とは一体的に形成されている。ティース60の先端部には、張出部6a及び凹部6bに相当する部分は形成されていない。
【0032】
永久磁石8Aと永久磁石8Bとは交互に並んでおり、ティース60ごとに一対の永久磁石8A,8Bが位置している。すなわち、それぞれのティース60の先端側には、前後方向に沿って並ぶ一対の永久磁石8A,8Bが設けられている。永久磁石8A,8Bは、断熱材層9を介してティース60に固定されている。
【0033】
カバー部材80は、薄板状を呈し、下側から全ての永久磁石8を覆うように配置される。カバー部材80は、非磁性材料により構成されることが好ましい。好適な非磁性材料としては、例えば非磁性ステンレス等が挙げられる。
図4に示すように、ティース60の先端部の左右には、下方に突出する固定爪81が設けられており、カバー部材80は固定爪81によりティース60に固定される。カバー部材80は永久磁石8に直接接着固定されてもよい。
【0034】
電機子20は次の手順により組み立てられる。まず、それぞれのティース60に下側から電機子巻線7を装着する。ティース60に電機子巻線7を巻き付けてもよいし、予め巻かれた電機子巻線7をティース60に被せてもよい。ティース60には張出部6aに相当する部分が設けられていないので、容易に電機子巻線7の装着作業を行うことができる。次に、電機子コア40と電機子巻線7とをモールド材P1により一体化する。次に、断熱材層9を介して永久磁石8をティース6に固定する。次に、固定子3側から永久磁石8を覆うようにカバー部材80を配置し、固定爪81によりカバー部材80をティース60に固定する(
図5参照)。
【0035】
電機子20では、永久磁石8がカバー部材80によってしっかりと電機子コア4側に保持される。これにより、断熱材層9の材質選定及び厚さ設定等における強度面の制約が緩和されるので、永久磁石の温度上昇をより確実に抑制できる。
【0036】
〔第3実施形態〕
第3実施形態に係るリニアモータの電機子21は、カバー部材80をなくすと共に、モールド材P2により永久磁石8を一体化した点で、第2実施形態に係る電機子20と異なる。
【0037】
図6に示すように、電機子21の12個の永久磁石8は、モールド材P2により一体化されて永久磁石ユニットU4を構成している。モールド材P2は、例えばエポキシ系樹脂である。モールド材P2は、永久磁石8を固定子3側から覆う被膜Fを構成している。モールド材P2は、ティース60同士の間において電機子コア4側に隆起して凹凸R2を構成している。凹凸R2は、ティース60に嵌合する。
【0038】
電機子21では、永久磁石8同士がモールド材P2により一体化されることにより、それぞれの永久磁石8がしっかりと電機子コア4側に保持される。被膜Fにより永久磁石8が固定子3側から覆われるので、永久磁石8が更にしっかりと電機子コア4側に保持される。凹凸R2がティース6に嵌合するので、電機子コア4と永久磁石8との接合強度が高められる。これらのことから、断熱材層9の材質選定及び厚さ設定等における強度面の制約が更に緩和されるので、永久磁石8の温度上昇を更に確実に抑制できる。
【0039】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、電機子2及び電機子20において、永久磁石8をモールド材P2により一体化してもよい。断熱材層9を介する接着のみで十分な強度が得られる場合には、凹凸R1,R2を構成すること、カバー部材80を設けること、モールド材P2により永久磁石8を一体化すること及び被膜Fを設けることは必須ではない。
【0040】
ティース6,60の数、電機子巻線7の数及び3相交流の割り当ては適宜変更可能である。永久磁石8の数及び配置も適宜変更可能である。電機子巻線7に供給する交流は、必ずしも3相に限られない。推力を継続的に発生させられる構成であれば、単層、2相又は4相以上であってもよい。
【0041】
図7に示すように、永久磁石8の側面にヒートシンク82を更に設けてもよい。これにより、永久磁石8の温度上昇を更に確実に抑制できる。
【符号の説明】
【0042】
1,10…リニアモータ、2,20,21…電機子、3…固定子、3b…突極、4,40…電機子コア、6,60…ティース、7…電機子巻線、8…永久磁石、8A…第1永久磁石、8B…第2永久磁石、8C,8D…第3永久磁石、9…断熱材層、80…カバー部材、F…被膜、P2…モールド材、R1,R2…凹凸。