特許第6048342号(P6048342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048342
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
   H01R13/42 B
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-166851(P2013-166851)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-35395(P2015-35395A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 愛次
(72)【発明者】
【氏名】後藤 優一
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−236678(JP,A)
【文献】 特開2011−253717(JP,A)
【文献】 特開2014−216243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40 − 13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に設けられたキャビティ内に端子金具を後方から収容し、前記キャビティの内壁に設けられた弾性係止片によって前記端子金具を後方から係止するコネクタであって、
前記弾性係止片は、前方に向けて片持ち状に延出して形成されることで基端部を支点に前記キャビティの外側に設けられた撓み空間に向かって弾性変位する弾性部と、
前記弾性部の前記キャビティ側に設けられ、前記端子金具を収容する際に前記端子金具に後方から押圧され、前記端子金具が正規の収容位置に至ると前記端子金具を後方から係止する係止突部とを有しており、
前記弾性部の前記撓み空間側には、前記撓み空間側から前記弾性部側に向かうほど前記弾性部の幅方向中央に向けて薄肉となる先細部を有する支持部が設けられており、
前記先細部は、前記弾性部において前記係止突部が前記キャビティ側に配されない領域と、前記弾性部において前記係止突部が前記キャビティ側に配される領域とに跨がるように配されているコネクタ。
【請求項2】
前記支持部は、前記弾性部に沿うように前記弾性部の基端部から先端に向かって前後方向に延びて形成されている請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記係止突部は、前記弾性係止片の幅方向略中央部に設けられており、
前記支持部は、前記弾性係止片の幅方向両側に互いに対向した形態で一対配されている請求項1または請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記弾性係止片の付け根部分には、前記撓み空間と前後方向に連通する凹部が設けられている請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ハウジング内に設けられたキャビティ内に端子金具を後方から収容してなるコネクタとして、下記特許文献1に記載のものが知られている。このコネクタは、キャビティ内に片持ち状に設けられた弾性変位可能な弾性係止片が端子金具を後方から係止することにより、端子金具がハウジングに抜け止めされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−49081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、コネクタの小型化が進められており、ハウジングの小型化が検討されている。一方、特許文献1に記載のようなコネクタでは、一般に端子金具が後方に引っ張られると弾性係止片の根元部分である基端部に応力が集中する。このため、ハウジングの小型化を目的に弾性係止片全体を小型化すると、弾性係止片の基端部の剛性が低下してしまい、弾性係止片の基端部に応力が集中した際に弾性係止片の基端部が破損してしまう。だからといって、弾性係止片の基端部を肉厚や幅広にするなどして剛性を高くすると、端子金具を挿入する際の挿入抵抗が高くなってしまう。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、端子金具のキャビティへの挿入抵抗を高くすることなく、弾性係止片の剛性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として本発明は、ハウジング内に設けられたキャビティ内に端子金具を後方から収容し、前記キャビティの内壁に設けられた弾性係止片によって前記端子金具を後方から係止するコネクタであって、前記弾性係止片は、前方に向けて片持ち状に延出して形成されることで基端部を支点に前記キャビティの外側に設けられた撓み空間に向かって弾性変位する弾性部と、前記弾性部の前記キャビティ側に設けられ、前記端子金具を収容する際に前記端子金具に後方から押圧され、前記端子金具が正規の収容位置に至ると前記端子金具を後方から係止する係止突部と、を有しており、前記弾性部の前記撓み空間側には、前記撓み空間側から前記弾性部側に向かうほど幅方向中央に向けて薄肉となる先細部を有する支持部が設けられており、前記先細部は、前記弾性部において前記係止突部が前記キャビティ側に配されない領域と、前記弾性部において前記係止突部が前記キャビティ側に配される領域とに跨がるように配されているところに特徴を有する。
【0007】
例えば、撓み空間に向かって弾性変位する弾性部と、弾性部に突設されることで端子金具を後方から係止する係止突部とを有する弾性係止片において、端子金具の保持力を向上させるために、弾性部の撓み空間側全体に肉を盛ると、弾性部の剛性が高くなることで端子金具の保持力は高くなるものの、端子金具をキャビティ内に挿入する挿入抵抗が高くなってしまう。だからといって、弾性部において係止突部が設けられた領域の肉厚を薄くすると、端子金具の挿入抵抗は低減できるものの、端子金具が後方に引っ張られた際に、弾性部において係止突部が設けられた領域に応力が集中して弾性部が捲れ変形するなど弾性係止片が破損することで端子金具の保持力を確保することができなくなってしまう。
【0008】
ところが、上記のような構成のコネクタによると、弾性部において係止突部がキャビティ側に設けられている領域(最も応力が集中する領域)と弾性部において係止突部がキャビティ側に設けられていない領域とに先細部が跨がるようにして支持部が形成されているから、弾性部において係止突部が設けられた領域に応力が集中したとしても、先細部が踏ん張ることにより、弾性部が捲れ変形するなどして破損することを抑制することができる。これにより、端子金具の挿入抵抗を低減させつつ、端子金具の保持力を確保することができる。
【0009】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
支持部は、前記弾性部に沿うように前記弾性部の基端部から先端に向かって前後方向に延びて形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、弾性部の剛性を前後方向に亘って確保することができる。
【0010】
前記係止突部は、前記弾性部の幅方向略中央部に設けられており、
前記支持部は、前記弾性部の幅方向両側に互いに対向した形態で一対配されている構成としてもよい。
このような構成によると、支持部が弾性部の幅方向両側に対向して設けられることで略アーチ状をなすから、弾性部の剛性をさらに向上させることができる。
【0011】
前記弾性係止片の付け根部分には、前記撓み空間と前後方向に連通する凹部が設けられている構成としてもよい。
このような構成によると、弾性係止片の付け根を弾性変位し易くすることでキャビティへの端子金具の挿入力をさらに低減させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、端子金具のキャビティへの挿入抵抗を高くすることなく、弾性係止片の剛性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ハウジングの正面図
図2図1のA−A線断面図
図3図1のC−C線断面図
図4】弾性係止片の拡大斜視図
図5】弾性係止片の拡大正面図
図6】弾性係止片の拡大底面図
図7】電線の端末に接続された雌端子の正面図
図8】同側面図
図9】ハウジングに雌端子を収容する前の状態を示す断面図であって、図1のD−D線の断面に相当する断面図
図10】ハウジングに雌端子を収容する前の状態を示す断面図であって、図1のB−B線の断面に相当する断面図
図11】ハウジングに雌端子が正規の位置に収容された状態を示す断面図であって、図10の断面に相当する断面図
図12】雌端子が後方に僅かに引っ張られて弾性係止片が弾性変位した状態を示す断面図であって、図10の断面に相当する断面図
図13】雌端子が後方に僅かに引っ張られて弾性係止片が弾性変位した状態を示す断面図であって、図3の断面に相当する断面図
図14】雌端子が後方に引っ張られて長尺補強部が天井板を後方から係止した状態を示す断面図であって、図10の断面に相当する断面図
図15】雌端子が後方に引っ張られて長尺補強部が後側スタビライザを後方から係止した状態を示す断面図であって、図3の断面に相当する断面図
図16】雌端子が後方に引っ張られて長尺補強部が天井板によって僅かに潰された状態を示す断面図であって、図10の断面に相当する断面図
図17】雌端子が後方に引っ張られて長尺補強部が後側スタビライザによって僅かに潰された状態を示す断面図であって、図3の断面に相当する断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
本発明の実施形態について図1乃至図17を参照して説明する。
本実施形態は、図11に示すように、電線Wの端末に接続された雌端子(「端子金具」に相当する)20をハウジング40内に設けられたキャビティ41内に後方から収容してなるコネクタ10を例示している。なお、以下の説明において、上下方向とは、図1および図11における上下方向を基準とする。また、前後方向とは、図11における左右方向を基準として、図示左側を前側とし、図示右側を後側として説明する。
【0015】
電線Wは、図8に示すように、アルミニウム合金等からなる芯線W1を絶縁被覆W2で覆ったものである。なお、芯線の材質としては、銅、銅合金、アルミニウムなど任意の金属材を用いることができる。
雌端子20は、図8に示すように、導電性を有する金属板材をプレス加工することにより形成されており、図示しない相手側端子が接続される角筒状の端子接続部21と、端子接続部21の後方に設けられた電線接続部22とを前後方向に繋げた形態とされている。
【0016】
端子接続部21は、図7に示すように、底板21Aの幅方向両側縁から対向状態をなして立ち上がる一対の側板21Bの上端部を底板21Aと対向するように折り曲げて天井板21Cを形成することで正面視略矩形状をなす角筒状に形成されている。なお、図8乃至図17では、以下の説明の便宜上、雌端子20を上下反転して図示している。
【0017】
端子接続部21の幅方向両側には、雌端子20をキャビティ41内に挿入する際にキャビティ41の内壁に当接することで誤挿入を防止する一対のスタビライザ24が設けられている。一対のスタビライザ24は、図7に示すように、側板21Bから上方(雌端子20の挿入方向と交差する方向)に延出された形態をなしている。また、一対のスタビライザ24のうち、一方は、図8に示すように、端子接続部21の後端部に設けられた後側スタビライザ24Rとされ、他方は、端子接続部21の前後方向略中央部よりもやや後方寄りの位置に設けられた前側スタビライザ24Fとされている。
【0018】
端子接続部21の底板21A側の内面には、図11に示すように、後方から前方に向かって片持ち状に延出された弾性接触片23が設けられている。弾性接触片23は、上下方向に弾性変位可能とされており、前方から相手側端子が端子接続部21内に挿入されると相手側端子と弾性的に接触することで、雌端子20と相手側端子とを電気的に接続する。
【0019】
電線接続部22は、図8に示すように、電線Wの端末において露出された芯線W1に圧着されるワイヤバレル22Aと、電線Wの絶縁被覆W2に圧着されるインシュレーションバレル22Bとを前後方向に並べた形態とされている。ワイヤバレル22Aとインシュレーションバレル22Bとに共通して設けられた底板に電線Wを載置してワイヤバレル22Aとインシュレーションバレル22Bとを圧着することで電線Wの端末に雌端子20が接続される。
【0020】
ハウジング40は、図2および図3に示すように、前後方向に長いブロック状に形成されており、ハウジング40の前端部には、外方に張り出すフランジ部42が設けられている。
【0021】
ハウジング40の内部には、図1に示すように、幅方向に横並びとなる複数(本実施形態では四つ)のキャビティ41と、各キャビティ41の下方に対応するように配された複数(本実施形態では四つ)の治具挿入孔43とが設けられている。
【0022】
各キャビティ41は、図2および図3に示すように、前後方向に貫通して形成されており、キャビティ41の後部に位置する後側キャビティ41Rは、キャビティ41の前部に位置する前側キャビティ41Fよりも拡径した形態をなしている。また、キャビティ41には、図9および図10に示すように、後方から雌端子20が挿入可能とされている。そして、キャビティ41内に雌端子20が正規の位置まで挿入されると、図11に示すように、前側キャビティ41Fには雌端子20の端子接続部21が適合して収容されるようになっている。
【0023】
各キャビティ41の前端開口は、図1に示すように、略矩形状をなしており、相手側端子が挿入される端子挿入孔44とされている。端子挿入孔44の開口縁には、図9および図10に示すように、前方から後方に向かうほどキャビティ41の軸心に向かって傾斜する誘い込み面44Aが設けられており、相手側端子が誘い込み面44Aによって端子挿入孔44に誘い込まれるようになっている。
【0024】
キャビティ41の後部における底壁には、図2図3および図10に示すように、弾性係止片45が設けられている。この弾性係止片45は、底壁に沿って前方へ片持ち状に延出する形態をなしており、弾性係止片45の板厚は、同弾性係止片45の基端部が最も薄く設定されている。
【0025】
弾性係止片45の下方には、弾性係止片45の撓み空間46が設けられており、この撓み空間46は、図10に示すように、ハウジング40の前端から後方に延びる治具挿入孔43と前後方向に連通している。つまり、弾性係止片45は、キャビティ41と治具挿入孔43との境界部分に配されており、弾性係止片45は、同弾性係止片45の基端部を支点にキャビティ41側と撓み空間46側とに向かって上下方向に弾性変位可能とされている。
【0026】
また、弾性係止片45は、図2図3および図10に示すように、キャビティ41の底壁に沿って前方へ片持ち状に延出することで上下方向に弾性変位可能な係止片本体47と、係止片本体47の上面から上方に突出することでキャビティ41内に収容された端子接続部21を後方から係止する係止突部48と、係止片本体47を補強する一対の補強部49とを備えて構成されている。なお、係止片本体47と一対の補強部49とを合わせたものが弾性部に相当する。
【0027】
係止片本体47は、図9に示すように、端子挿入孔44の誘い込み面44Aの幅寸法よりも小さい大きさでキャビティ41の幅方向略中央部に配されており、図1に示すように、治具挿入孔43を通して前方に臨んでいる。
【0028】
係止片本体47の前端部には、図2図3および図10に示すように、上下方向に先細りとなる押圧操作可能な解除部47Aが設けられている。この解除部47Aは、治具挿入孔43を通して挿入された解除治具(図示せず)によって上方から押圧操作可能とされており、解除部47Aを押圧操作することで、係止片本体47が撓み空間46内に向かって弾性変位し、係止突部48が雌端子20の通過経路から離脱するようになっている。
【0029】
また、治具挿入孔43には、前方から検知ピン(図示せず)が挿入可能とされており、検知ピンが治具挿入孔43を通して撓み空間46内に所定量進入されることで係止片本体47が弾性変位していない自然状態であることを確認できるようになっている。
【0030】
係止突部48は、図2乃至図5および図10に示すように、係止片本体47の上面からキャビティ41に向かって突出する形態で解除部47Aの後端から係止片本体47の前後方向略中央部に亘ってブロック状に形成されており、係止突部48の上端部がキャビティ41内において端子接続部21が通過する通過経路内に配されるように設定されている。
【0031】
一方、端子挿入孔44の下側に位置する誘い込み面44Aの幅方向略中央部には、図1に示すように、係止突部48を成形するための型抜き孔44Bが前側キャビティ41Fの幅寸法よりも幅狭に設けられており、型抜き孔44Bおよび端子挿入孔44を通して係止突部48が前方に臨んでいる。つまり、係止突部48の幅寸法は、前側キャビティ41Fに適合して収容される端子接続部21の幅寸法よりも幅狭に設定されている。
【0032】
また、係止突部48は、図2乃至図4に示すように、上部が下部に比べて前後方向に短い形態とされており、係止突部48の後面が係止片本体47から斜め上方に向かって傾斜する傾斜面48Rとされ、係止突部48の前面が下端部から上端部に向けてオーバーハング状に傾斜する係止面48Fとされている。
【0033】
係止突部48は、キャビティ41内に雌端子20を挿入する際に、端子接続部21の天井板21Cにおける前端縁の幅方向略中央部が傾斜面48Rに当接することで後方から押圧され、係止片本体47が斜め下前方に向かって弾性変位するに伴って斜め下前方に向かって変位する。そして、雌端子20が正規の位置まで挿入されると、係止突部48に対する天井板21Cの押圧状態が解除されて係止片本体47が弾性復帰し、係止面48Fの上端位置により端子接続部21の天井板21Cを後方から係止する。これにより、雌端子20がキャビティ41内に抜け止めされる。
【0034】
また、雌端子20が後方に引っ張られると、図11に示すように、端子接続部21の天井板21Cが係止面48Fを前方から押圧することで、係止片本体47が基端部を支点に斜め上後方に向かって弾性変位し、これに伴って係止突部48が斜め上後方に向かって変位する(図12および図13参照)。詳細には、係止面48Fによって天井板21Cが係止面48Fの上端部から下端部に案内されるような状態となり、係止片本体47が斜め上後方に向かって弾性変位することで、係止突部48が斜め上後方に向かって変位する。そして、端子接続部21の天井板21Cにおける後端縁の幅方向略中央部(図9の中央領域S1)が係止突部48の下端部によって後方から係止される(図12参照)。
【0035】
つまり、係止片本体47と共に係止突部48が斜め上後方に変位すると、図12に示すように、天井板21Cが配された高さ位置における係止突起48の前後方向の長さ寸法L2は、図11に示すように、係止片本体47が変位しない自然状態の場合における天井板21Cが配された高さ位置の係止突起48の前後方向の長さ寸法L1よりも長くなる。言い換えると、係止片本体47と共に係止突部48が斜め上後方に変位することで、端子接続部21の天井板21Cが係止突部48を剪断する面積を大きくできるようになっている。
【0036】
一対の補強部49は、図3乃至図6に示すように、係止片本体47に沿うように係止片本体47の基端部から前方に延出され、係止片本体47の幅方向両側面から幅方向に突出した形態で係止片本体47と一体に設けられている。また、一対の補強部49のうち、端子接続部21の後側スタビライザ24Rが配される側に設けられた補強部49は、図9に示すように、解除部47Aの後端位置まで前後方向に延びた長尺補強部50とされ、前側スタビライザ24Fが配される側に設けられた補強部49は、解除部47Aの後端位置よりもやや後方まで前後方向に延びた短尺補強部51とされている。
【0037】
また、各補強部49は、図1および図3に示すように、端子挿入孔44を通して前方に臨む高さ位置に設けられており、前側キャビティ41Fの底壁の下面と補強部49の上面とが同じ高さ位置に設定されている。つまり、各補強部49は、治具挿入孔43を通して成形金型を型抜きすることで係止片本体47と一体に成形されており、補強部49が設けられた高さ位置の弾性係止片45の幅寸法は、係止突部48の幅寸法よりも大きく設定されている。
【0038】
一対の補強部49の幅寸法は、図4に示すように、ほぼ同じ寸法とされ、補強部49が設けられた高さ位置の弾性係止片45の幅寸法は、前側キャビティ41Fに適合して収容される端子接続部21の幅寸法とほぼ同じに設定されている。
つまり、図9に示すように、端子接続部21の天井板21Cのうち係止突部48が係止する部分を中央領域S1とすると、天井板21Cにおいて中央領域S1の幅方向両側に位置する側方領域S2の幅寸法は補強部49の幅寸法とほぼ同じ寸法とされている。
【0039】
各補強部49の先端部(前端部)は、図3および図10に示すように、下端部が切り欠かれることで補強部49の基端部よりも上下方向に薄肉に設けられており、長尺補強部50の前面は、斜め下方に延びる受面50Aとされている。
【0040】
また、各補強部49は、雌端子20が後方に引っ張られて、係止片本体47が基端部を支点に斜め上後方に向かって弾性変位すると、これに伴って斜め上後方に向かって変位する(図12および図13参照)。そして、この状態から更に雌端子20が後方に引っ張られると、図14に示すように、端子接続部21の天井板21Cによって係止突部48の下端部が僅かに剪断され、係止片本体47が更に斜め上後方に向かって弾性変位し、端子接続部21の通過経路内に長尺補強部50の先端部が進入する。ここで、長尺補強部50の先端部は、補強部49の基端部よりも上下方向に薄肉に設けられているから、補強部の先端部が補強部の基端部と同じ肉厚で形成されている場合に比べて、長尺補強部50の先端部を補強部49の基端部よりも斜め上後方に向かって弾性変位し易くすることができるようになっている。
【0041】
また、端子接続部21の通過経路内に長尺補強部50の先端部が進入すると同時に、長尺補強部50の先端部に設けられた受面50Aが立ち上がった状態となって天井板21Cの後端縁と後側スタビライザ24Rの後端とに後方から当接し、長尺補強部50の受面50Aが天井板21Cと後側スタビライザ24Rとの双方を後方からしっかりと係止するようになっている(図14および図15参照)。
【0042】
また、弾性係止片45の下側(撓み空間側)には、図1図5および図6に示すように、係止片本体47と補強部49とに亘って配された一対の支持部52が設けられている。各支持部52は、弾性係止片45の幅方向両側において、補強部49に沿うように補強部49の基端部から補強部49の前後方向略中央部まで前後方向に延びた形態をなしている。
【0043】
各支持部52は、図1および図5に示すように、正面から視た形状が上下反転した略台形状(略逆台形状)をなしており、一対の支持部52において互いに対向する内側の部分は上方に向かうほど幅方向中央に向かって傾斜状に薄肉となる先細部53とされている。各先細部53は、図1図5および図6に示すように、係止片本体47と補強部49とに亘って配されており、両支持部52を正面から視ると略アーチ状をなしている。
【0044】
詳細には、弾性係止片45において係止突起48が上側(キャビティ側)に配されない補強部49と、弾性係止片45において係止突起48が上側(キャビティ側)に配される係止片本体47とを跨ぐようにして先細部53が配されている。言い換えると、先細部53が係止片本体47と補強部49とに連なるように配されている。そして、この先細部53を有する支持部52が弾性係止片45の幅方向両側に設けられることで、一対の支持部52を正面から視ると略アーチ状に構成されている。つまり、弾性係止片45は、幅方向中央の板厚が幅方向両側の板厚よりも薄くなっている。
【0045】
また、各支持部52の間に位置する撓み空間46の奥部には、図2に示すように、係止片本体47の付け根部分を後方に切り欠いた凹部54が設けられている。この凹部54は、係止片本体47の付け根部分を後方に切り欠くことで、係止片本体47の付け根部分の板厚寸法を係止片本体47で最も薄く形成された基端部と同一の板厚寸法に設定している。つまり、係止片本体47において最も板厚が薄い部分を前後方向に長くすることで係止片本体47を弾性変位し易くできるようになっている。
【0046】
本実施形態のコネクタ10は、以上のような構成であって、雌端子20をハウジング40のキャビティ41に挿入してコネクタ10を構成する手順を説明し、続けて、雌端子20が後方に引っ張られた際の作用効果を説明する。
まず、図9および図10に示すように、ハウジング40の後方に雌端子20を上下反転させて配置し、雌端子20を後方からキャビティ41内に挿入する。この挿入過程において、雌端子20の端子接続部21が後側キャビティ41R内に挿入されると、端子接続部21の天井板21Cの前端縁が弾性係止片45における係止突部48の傾斜面48Rに当接する。この状態から更に雌端子20を挿入すると、天井板21Cの前端縁によって係止突部48が後方から押圧され、係止片本体47が斜め下前方に向かって弾性変位することで端子接続部21が係止突部48に乗り上げる。
【0047】
ところで、例えば、コネクタの低背化や小型化を目的に弾性係止片を小型化すると、弾性係止片の基端部の剛性が低下して、弾性係止片の基端部に応力が集中した際に弾性係止片の基端部が破損してしまう虞がある。このため、弾性係止片の撓み空間側である下側全体に肉を盛る方法も考えられるが、この方法によると、弾性係止片の剛性は高くなるものの、雌端子をキャビティ内に挿入する挿入抵抗が高くなってしまう。また、雌端子の挿入抵抗を低減するために、弾性係止片において係止突部が設けられた領域の肉厚を薄くすると、雌端子が後方に引っ張られた際に、弾性係止片において係止突部が設けられた領域に応力が集中して、弾性係止片が捲れ変形するなど端子金具の保持力を確保することができなくなってしまう。
【0048】
ところが、本実施形態によると、雌端子20が後方に引っ張られる際に弾性係止片45において最も応力が集中する係止片本体47の下端部(弾性係止片45において係止突部48がキャビティ41側に設けられている領域)と、補強部(弾性係止片45において係止突部48がキャビティ41側に設けられていない領域)49の下端部とを先細部53が跨がるようにして支持部52が形成されているから、雌端子20が後方に引っ張られることで弾性係止片45が斜め上後方に押圧されて係止片本体47に応力が集中したとしても、支持部52の先細部53が踏ん張ることにより、弾性係止片45が捲れ変形するなどして破損することを抑制することができる。
また、一対の支持部52が略アーチ状となることで、弾性係止片45の幅方向略中央部の板厚が幅方向両側の板厚に比べて薄くなっているから、弾性係止片の下側全体に肉盛りをする場合に比べて、雌端子の挿入抵抗を低減させることができる。これにより、雌端子20の保持力を低下させることなく、雌端子20の挿入抵抗を低減させることができる。
【0049】
また、係止片本体47の付け根部分を後方に切り欠いて凹部54を設けたことにより、係止片本体47において最も板厚が薄い基端部を前後方向に長くしているから、係止片本体の付け根部分に凹部を設けない場合に比べて、係止片本体47を弾性変位し易くし、雌端子20の挿入抵抗を低減できるようになっている。
【0050】
そして、雌端子20が正規の位置まで挿入されると、係止突部48に対する天井板21Cの押圧状態が解除されて係止片本体47が弾性復帰し、係止突部48の係止面48Fの上端位置によって端子接続部21の天井板21Cを後方から係止する。これにより、雌端子20がキャビティ41内に抜け止めされ、コネクタ10が完成する。
【0051】
ところで、電線Wが引っ張られるなどして雌端子20が後方に引っ張られる場合の対策として、例えば、弾性係止片とリテーナとの双方によって二重係止し、雌端子の保持力を確保する方法がある。しかしながら、上記のように二重係止させるためには、ハウジングに対して別体のリテーナを装着する必要があるため、部品点数が多くなると共に組立工数が増加しまう。
【0052】
ところが、本実施形態によると、図11に示すように、雌端子20が後方に引っ張られて端子接続部21の天井板21Cが係止突部48の係止面48Fを前方から押圧すると、係止面48Fによって天井板21Cが係止面48Fの上端部から下端部に案内されるような状態となり、係止片本体47が基端部を支点に斜め上後方に向かって弾性変位することで、係止突部48が斜め上後方に向かって変位する(図12及び図13参照)。そして、係止突部48の下端部が端子接続部21の天井板21Cにおける後端縁の幅方向略中央部(中央領域S1)を後方から係止する。
【0053】
つまり、係止片本体47が変位しない自然状態(図11参照)に比べて、図12に示すように、天井板21Cが配された高さ位置における係止突部48の前後方向の長さ寸法が長くなり(L2>L1)、端子接続部21の天井板21Cが係止突部48を剪断する面積を大きくすることができる。これにより、係止片本体が弾性変位しない場合に比べて、雌端子20の保持力を向上させることができる。
【0054】
また、係止片本体47が弾性復帰しようとする反力によって係止突部48が天井板21Cを後方から押圧しつつ係止した状態となるから、係止突部が天井板を押圧せずに後方から係止する場合に比べて、雌端子20の保持力を向上させることができる。
【0055】
また、この状態から更に雌端子20が後方に引っ張られると、図14に示すように、端子接続部21の天井板21Cによって係止突部48の下端部が僅かに剪断され、係止片本体47が更に斜め上後方に向かって弾性変位する。すると、図14および図15に示すように、端子接続部21の通過経路内に長尺補強部50の先端部が進入し、これと同時に長尺補強部50の先端部に設けられた受面50Aが立ち上がった状態となって天井板21Cの後端縁における幅方向両側部分(側方領域S2)と後側スタビライザ24Rの後端との双方に後方から当接する。そして、長尺補強部50の受面50Aが天井板21Cと後側スタビライザ24Rとの双方を後方から押圧しつつ係止する。
【0056】
つまり、天井板21Cを係止突部48が後方から係止した後に長尺補強部50の受面50Aが天井板21Cと後側スタビライザ24Rとの双方を後方から押圧しつつ係止するから、係止片本体47が弾性復帰しようとする反力をより効果的に活用すると共に、雌端子20に対する弾性係止片45の係止領域を大きくすることができる。これにより、リテーナなどを装着することなく、雌端子20の保持力を確保しつつ、部品点数を低減させると共に、組立工数を低減させることができる。
【0057】
以上のように、本実施形態のコネクタ10によると、弾性係止片45において最も応力が集中する係止片本体(キャビティ41側に係止突部48が設けられる領域)47と、補強部(弾性係止片45において係止突部48がキャビティ41側に設けられていない領域)49とに先細部53が跨がるようにして支持部52が形成されているから、雌端子20が引っ張られるなどして係止突部48の下側に配された係止片本体47に応力が集中したとしても、支持部52の先細部53が踏ん張ることにより、弾性係止片45が捲れ変形するなどして破損することを抑制することができる。
【0058】
また、弾性係止片45の下端部に一対の支持部52が略アーチ状に形成されることで、弾性係止片45の幅方向略中央部の板厚が幅方向両側の板厚に比べて薄くなっているから、弾性係止片の下側全体に肉盛りをする場合に比べて、雌端子20の挿入抵抗を低減させることができる。これにより、雌端子20の保持力を確保しつつ、雌端子20の挿入抵抗を低減させることができる。
【0059】
更に、本実施形態によると、係止片本体47の付け根部分を後方に切り欠いて凹部54を設けて、係止片本体47において最も板厚が薄い基端部を前後方向に長くしているから、係止片本体の付け根部分に凹部を設けない場合に比べて、係止片本体47を弾性変位し易くし、雌端子20の挿入抵抗をさらに低減することができる。
【0060】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、弾性係止片45において先細部53を幅方向中央に向かって傾斜状に薄肉となる構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、先細部を幅方向中央に向かって弧状に薄肉となる形態に構成してもよい。
(2)上記実施形態では、支持部52を補強部49の基端部から補強部49の前後方向略中央部まで前後方向に延びた形態に構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、支持部が補強部の先端(前端)まで延びた形態に構成してもよい。
(3)上記実施形態では、係止片本体47が斜め上後方に弾性変位することで補強部(長尺補強部50)49が端子接続部21を後方から係止する構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、補強部が端子接続部を係止する構成でなくてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10:コネクタ
20:雌端子(端子金具)
40:ハウジング
41:キャビティ
45:弾性係止片
46:撓み空間
47:係止片本体(弾性部)
48:係止突部
49:補強部(弾性部)
52:支持部
53:先細部
54:凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図17