(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前身頃領域および後身頃領域および股下領域を有するカバーシートと、このカバーシートに接合される液不透過性のバックシートと、このバックシートに接合される液透過性のトップシートと、このトップシートと前記バックシートとの間に配される吸収体とを具えた吸収性物品の製造方法であって、
前記バックシートの連続体を一定間隔毎に切断する際の切断位置の基準となる少なくとも2つの色相を有するマーカーを図柄と共に前記バックシートの連続体に一定間隔毎に印刷するステップと、
前記バックシートの連続体の搬送中に前記バックシートの連続体に印刷された前記マーカーの通過をカラーセンサーにより検出するステップと、
前記マーカーの前記カラーセンサーによる検出に基づき、前記バックシートの連続体を所定の切断位置にて切断するステップと
を具え、前記カラーセンサーによる前記バックシートの連続体における前記マーカーの検出領域には、前記マーカーと同じ色相の組み合わせを有する図柄が存在しないようにしたことを特徴とする吸収性物品の製造方法。
【背景技術】
【0002】
特に乳幼児などを対象とした使い捨ておむつには、衣服と同じように表面の色などの他に柄やキャラクターなどが印刷され、利用者や着用者が楽しく使えるような工夫がなされている。例えば、使い捨ておむつのカバーシートの内側に液不透過性のバックシートを配し、このバックシートの表面に図柄を印刷し、カバーシートを介してバックシートの表面の図柄を視認できるようにしたものが特許文献1などで知られている。また、色付きの不織布や柄などを印刷した液不透過性の不織布を使い捨ておむつのカバーシートとして使用したものや、カバーシ−トの表面にキャラクターなどの図柄を直接印刷したものなども周知である。
【0003】
このような使い捨ておむつを製造する場合、カバーシートやバックシートの連続体にあらかじめ所定間隔毎に上述した図柄を印刷しておき、これを引き出しながら一定間隔で切断して使い捨ておむつの製造ラインに供給することが一般的である。このため、カバーシートやバックシートの連続体を図柄の位置に合わせて正確に切断する必要があり、そのためのマーカーが図柄と共にカバーシートやバックシートの連続体に印刷されている。そしてこのマーカーを光学的なセンサーを用いて検出し、これに基づいてカバーシートやバックシートの連続体の切断位置を制御する技術が特許文献2などに開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2に開示された従来のマーカーは、その印刷位置を図柄の印刷位置に関係付けて規定しなければならず、結果として図柄の選択自由度を低下させてしまう欠点があった。
【0006】
このような不具合を回避する一つの手段として、図柄の印刷位置を検出できるイメージセンサーを用い、画像処理によってシートの連続体の切断位置を決定する方法も知られている。しかしながら、この方法は単なる光学センサーを利用することができる引用文献1,2に開示された方法よりも画像処理のための撮像装置を含む高価な設備を新たに組み入れる必要が生ずる。
【0007】
本発明の目的は、高価な撮像装置や画像処理システムを用いることなく、図柄の選択自由度を従来のものよりも改善することが可能な吸収性物品
およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による吸収性物品は、前身頃領域および後身頃領域および股下領域を有するカバーシートと、このカバーシートに接合される液不透過性のバックシートと、このバックシートに接合される液透過性のトップシートとを具えている。バックシートに図柄およびマーカーが印刷されたこの吸収性物品は、トップシートとバックシートとの間に配される吸収体をさらに具え、前記マーカーが少なくとも2つの色相を有することを特徴とするものである。
【0009】
本発明が意図する図柄とは、人物,動物,植物,乗り物,食べ物,道具,衣服,玩具,建築物,自然の造形物,星座,神話や昔話の登場人物,アニメーションキャラクターなどの絵または写真や、文字、記号、図形、模様およびこれらの組み合わせを含む。さらに、背景やこれらの色相などの相違も包含される。
【0010】
また、本発明が意図するマーカーは、この吸収性物品の製造過程にて用いられるバックシートの連続体に一定間隔毎に図柄と共に形成されている。そして、バックシートの連続体の走行中に光学的に検出され、バックシートの連続体の一定間隔毎の切断位置を規定するのに役立つ。従って、本発明におけるマーカーは、センサーが光学的に認識できる輪郭形状を有していれば良く、文字,記号,図柄およびこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むことができ、マーカーが図柄の一部であってもよい。
【0011】
マーカーをバックシートの表裏両面に印刷し、かつこれらの位置を相互にずらした状態で印刷することも有効である。
【0012】
マーカーを構成する少なくとも2つの色相のうちの1つがバックシートを構成する材料の色相を含むものであってよい。
【発明の効果】
【0013】
本発
明によると、その製造時にバックシートの連続体に印刷されたマーカーの検出領域に図柄の一部が位置する場合、この部分の図柄の色相がマーカーの色相の組み合わせと全く同じでない限り、マーカーの位置を確実に検出することができる。結果として、色相が単一のマーカーを印刷した従来のものよりも、図柄の選択自由度を大幅に高めることができる。
【0014】
図柄の一部をマーカーとして兼用させた場合、バックシートの全域に亙って図柄を形成することが可能となり、図柄の選択自由度をさらに高めることができる。
【0015】
マーカーをバックシートの表裏両面に印刷し、かつこれらの位置を相互にずらした状態で印刷した場合、マーカーに立体感を与えることができ、これを図柄の一部として効果的に利用することも可能となる。
【0016】
少なくとも2つの色相のうちの1つがバックシートを構成する材料の色相を含む場合、印刷インキの使用量を削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明による吸収性物品の実施形態について、
図1〜
図4を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施形態のみに限らず、本発明の精神に帰属する他の吸収性物品にも応用することが可能である。
【0019】
本発明をパンツ型使い捨ておむつに応用した第1の実施形態の外観を
図1に示し、これを破断展開して分解状態にて
図2に示し、これに用いられるバックシートの連続体の外観を
図3に示す。本実施形態におけるパンツ型使い捨ておむつ(以下、単におむつと記述する場合がある)10は、前身頃領域10Fと、後身頃領域10Rと、これら前身頃領域10Fおよび後身頃領域10Rをつなぐ股下領域10Cとを有する。また、着用時に前身頃領域10Fと後身頃領域10Rとで着用者のウエストの部分を取り囲むウエスト周り開口部10Wが形成されている。同様に、前身頃領域10Fおよび後身頃領域10Rの下端部と股下領域10Cとで着用者の両脚の太股部分を取り囲む左右一対の脚周り開口部10Lが形成されている。
【0020】
このおむつ10は、外側から順にカバーシート11と、バックシート12と、吸収体13と、着用者の肌に触れるトップシート14とを順に重ねて接合したものである。股下領域10Cと共におむつ10の前身頃領域10Fおよび後身頃領域10Rを画成するカバーシート11の左右両側縁部が相互に接合されて閉じ合わせ部10Jを形成している。これにより、先のウエスト周り開口部10Wと、左右一対の脚周り開口部10Lとが画成され、カバーシート11の股下領域10Cの左右両側には、それぞれ脚周り開口部10Lとなる半円弧状をなす一対の切欠き部11cが形成されている。
【0021】
本実施形態におけるカバーシート11は、外側のアウターカバーシート11oと、このアウターカバーシート11oに接合されるインナーカバーシート11iとを含み、これらは良好な手触りを得るためにそれぞれ薄い不織布にて形成される。液不透過性のバックシート12は、インナーカバーシート11iに接合され、先の吸収体13は、バックシート12と液透過性のトップシート14との間に配され、吸収体13を介してトップシート14がバックシート12に接合される。良好な手触りを得るために薄い不織布にて形成されるアウターカバーシート11oとインナーカバーシート11iとの間には、脚周りギャザーを形成するための糸ゴム15,16と、ウエスト周りギャザーを形成するための糸ゴム17とがそれぞれ伸長状態で接合されている。
【0022】
本実施形態における液不透過性のバックシート12の外側面(インナーカバーシート11iとの接合面)の前身頃領域10Fおよび後身頃領域10Rには、前後で異なる図柄D
1,D
2がバックシート12の幅方向のほぼ全域に亙って形成されている。また、バックシート12の外側面の前身頃領域10Fの一部には、製造時にこのバックシートの連続体12w(
図3参照)を切断線12C(
図3中の二点鎖線)に沿って切断する際の基準となるマーカーMもその幅方向一側端部に形成されている。バックシート12の幅方向(
図3中、左右方向)に沿ったマーカーMの位置は、バックシート12の幅方向に沿った図柄D
1の形成領域内にある。つまり、マーカーMの形成領域をバックシート12の長手方向に沿って延在させた場合(
図3中の斜線部分を参照のこと)、図柄D
1,D
2の一部と重なり合う状態となる。なお、便宜的に
図3中の斜線部分の領域をマーカー検出領域と記述することにする。
【0023】
マーカーMは少なくとも2つの色相を有し、本実施形態では例えば外側が桃色で内側が黄色の2色の花びら模様をマーカーMとして採用し、これが図柄D
1の一部を構成するようにデザインしている。しかしながら、先にも延べたように、マーカーMは文字,記号,図柄およびこれらの組み合わせなどで構成することが可能である。
【0024】
ところで、このおむつ10の製造にあたっては、あらかじめ図柄D
1,D
2がマーカーMと共に印刷されたバックシートの連続体12wを正確に切断して個々のバックシート12を得る必要がある。このため、おむつ10の製造ラインに配されたカラーセンサーによってマーカーMの位置を検出し、この検出情報に基づいて
図3中の二点鎖線で示した切断線12Cにてバックシートの連続体12wをほぼ一定間隔毎に切断する。
【0025】
上述したように、本実施形態では図柄D
1,D
2をバックシート12の幅方向ほぼ全域に形成しているため、マーカーMの通過を検出するためのセンサーがマーカー検出領域にある図柄D
1,D
2の部分をマーカーMと誤認識しないようにする必要がある。このようなセンサーの誤認識を高価な画像処理技術ではなく、単なるセンサーによって識別することができるように、マーカー検出領域にある図柄D
1,D
2の色相の組み合わせに対してマーカーMの色相の組み合わせを異ならせることが有効である。これにより、安価なカラーセンサーを用いた場合でもマーカーMのみを正確に認識することが可能となる。より具体的には、マーカー検出領域に図柄D
1,D
2を印刷する場合、このマーカー検出領域に印刷される図柄D
1,D
2の部分の色相の組み合わせをマーカーMの色相の組み合わせと異ならせることができさえすればよい。換言すれば、この条件を満たす限り、マーカーMをバックシート12の幅方向中央部や長手方向中央部など、任意の位置に形成することが可能である。これによって、バックシート12の全域に図柄を形成することができ、従来のものよりも図柄のデザインの自由度を高めることが可能である。この場合におけるマーカーMおよび図柄D
1,D
2の色相の組み合わせの相違は、複数の特定の波長の光の割合を光学的に検出するカラーセンサーにて識別可能な程度であればよく、従って比較的似たような色相の組み合わせであっても問題がないこともある。
【0026】
なお、マーカー検出領域に位置する図柄D
1,D
2の一部がカラーセンサーによって認識できないような寸法形状の場合には、この領域における図柄D
1,D
2の色相の組み合わせをマーカーMの色相の組み合わせと同一にしても問題はない。また、マーカーMを構成する色相の1つがこのマーカーMが印刷されるバックシート12を構成する材料自体の色相であってもよい。
【0027】
これらの図柄D
1,D
2およびマーカーMは、先のカバーシート11を通して外側から認識することが可能である。
【0028】
吸収体13は、マット状をなすフラッフパルプ中にSAP(Super Absorbent Polymer:高吸水性ポリマー)を分散させ、これをティシュで包み込んだものが一般的である。吸収体13は、前身頃領域10Fから股下領域10Cを通って後身頃領域10Rまで延在するように配されている。本実施形態における吸収体13は、その長手方向中央部に位置する股下領域10Cの幅が細くくびれた砂時計の如き輪郭形状を有している。
【0029】
本実施形態における液透過性のトップシート14の左右両側縁部には、液不透過性のサイドシート18が接合され、左右のサイドシート18の内側端縁部には、立体ギャザーを形成するための糸ゴム19が伸張状態で接合されている。
【0030】
なお、このようなおむつ10の製造手順に関しては、特許文献1や特許文献2または特開2001−346825号公報などで周知であり、本発明の趣旨からも逸脱してしまうので、その説明を省略する。
【0031】
本発明が対象とするおむつ10の構造は、上述したようなものに限定されるわけではなく、特許請求の範囲に規定された吸収性物品の構成を含むおむつでありさえすれば、どのような構造であってもよい。例えば、展開型の使い捨ておむつなどであっても本発明を適用可能である。また、バックシート12が透光性を有する場合、上述したマーカーMおよび図柄D
1,D
2をバックシート12の内側面(吸収体13に接する面)にも重ねて印刷することが可能である。
【0032】
例えば、バックシート12の部分を抽出拡大した
図4に示すように、カバーシート11に接するバックシート12の表面には、先の実施形態と同じような図柄D
1およびマーカーMが形成されている。このバックシート12の内側面(吸収体13と接する面)にも図柄D
1'とマーカーM'とが重なり合うように印刷されている。この場合、図柄D
1'の一部およびマーカーM'の位置を表面側の図柄D
1およびマーカーMの位置に対して少し位置をずらして印刷することにより、図柄D
1の一部とマーカーMとに視覚的な立体感を与えることができる。もちろん、裏面側の図柄D
1'の全体の印刷位置をずらすことも可能である。この場合、バックシート12の裏面に印刷されたマーカーM'に対して位置をずらして印刷される表面側のマーカーMの検出をカラーセンサーが正しく行えるように、バックシート12の表裏両面のマーカーM,M'の位置ずれ量を規定する必要がある。
【0033】
このように、本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のないあらゆる構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。