特許第6048347号(P6048347)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048347
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/023 20120101AFI20161212BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20161212BHJP
【FI】
   F16H57/023
   F16H57/04 H
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-178295(P2013-178295)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-45401(P2015-45401A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120352
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152087
【弁理士】
【氏名又は名称】伏木 和博
(72)【発明者】
【氏名】福井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】糟谷 悟
(72)【発明者】
【氏名】池 宣和
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 昌士
(72)【発明者】
【氏名】加納 成吾
【審査官】 中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−113304(JP,A)
【文献】 特開平07−237461(JP,A)
【文献】 特開2009−222159(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0054445(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0082570(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102010027714(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/023
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の駆動力源に駆動連結される入力部材と、
前記入力部材と同軸に配置された変速入力部材を有し、前記変速入力部材の回転を変速して変速出力部材に伝達する油圧駆動式の変速装置と、
前記入力部材とは別軸に配置され、前記変速出力部材から伝達される駆動力を複数の前記車輪に分配する差動歯車装置と、
少なくとも前記変速装置及び前記差動歯車装置を収容するケースと、
ポンプ用回転電機により駆動される電動オイルポンプと、
前記電動オイルポンプから吐出される油の油圧を制御して少なくとも前記変速装置に供給する油圧制御装置と、を備え、
前記電動オイルポンプ及び前記ポンプ用回転電機が、前記ケース内に収容され、
前記変速入力部材の回転軸心である変速軸心と、前記差動歯車装置の回転軸心である差動軸心と、前記ポンプ用回転電機の回転軸心であるポンプ軸心と、が互いに平行となるように、前記変速装置、前記差動歯車装置、及び前記ポンプ用回転電機が配置され、
車両搭載状態で、前記差動軸心が前記変速軸心に対して下方となり、かつ各軸心に平行な軸方向に見て前記変速軸心を通る鉛直面とは重ならないように、前記差動歯車装置が配置され、
前記油圧制御装置が、前記軸方向に見て、前記鉛直面に対して前記差動軸心側とは反対側に配置され、
前記ポンプ軸心が、前記変速軸心よりも下方であって、かつ、前記軸方向に見て前記変速軸心と前記油圧制御装置との間となるように、前記ポンプ用回転電機が配置されている車両用駆動装置。
【請求項2】
前記ポンプ用回転電機の少なくとも一部が、前記ケース内に貯留される油の油面よりも下方となるように配置されている請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
油を濾過するためのストレーナをさらに備え、
前記ストレーナが、前記変速軸心よりも下方であって、かつ、前記軸方向に見て前記差動軸心と前記電動オイルポンプとの間に配置されている請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記駆動力源により駆動される機械式オイルポンプをさらに備え、
前記機械式オイルポンプの回転軸心が、前記変速軸心よりも下方であって、かつ、前記軸方向に見て前記変速軸心と前記油圧制御装置との間となるように、前記機械式オイルポンプが配置されている請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧駆動式の変速装置への油供給源として電動オイルポンプを備える車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料消費量の低減や排出ガスの低減を図るため、近年、車両の停止時に内燃機関を停止させるアイドリングストップ機能を備えた車両が増加している。また、内燃機関及び回転電機の両方を駆動力源とするハイブリッド車両においては、車両の停止時に加え、減速時にも内燃機関を停止させる機能を備えることが一般的である。しかし、油圧駆動式の変速装置を備えた車両では、内燃機関を停止させることにより、当該内燃機関により駆動される機械式オイルポンプも停止する。この場合、他の油圧供給手段がなければ、変速装置に油が供給されなくなり、変速装置を適切に動作できなくなる場合がある。そこで、機械式オイルポンプとは別に、補助ポンプとして電動オイルポンプを設け、内燃機関の停止時に、電動オイルポンプから吐出される油を変速装置へ供給する構成が提案されている。
【0003】
例えば特開2010−236581号公報(特許文献1)に、そのような構成の車両用駆動装置が開示されている。この特許文献1にも開示されているように、電動オイルポンプは、車両用駆動装置のケースの外部に取り付けられることが一般的である。このような外付けタイプの電動オイルポンプでは、その駆動用のポンプ用回転電機は、空冷により冷却される。電動オイルポンプの吐出性能を確保し、或いはさらに向上させるためには、ポンプ用回転電機の温度上昇を有効に抑制する必要がある。しかし、空冷構造は、他の冷却構造(水冷構造や油冷構造)に比べて冷却性能に劣る場合が多く、単位体積当たりのポンプ用回転電機の温度上昇を有効に抑制できない可能性がある。このため、特許文献1の構成は、ポンプ用回転電機の高出力化や小型化にとって不利であった。
【0004】
ここで、ポンプ用回転電機に冷却水を供給するための冷却水路を設けることで、ポンプ用回転電機の冷却に水冷構造を採用することも、一応は考えられる。しかし、そのような冷却水路の設置は、装置構成を複雑化し、装置全体の大型化につながってしまう。また、電動オイルポンプを車両用駆動装置のケースの内部に設けることで、ポンプ用回転電機の冷却に油冷構造を採用することも、一応は考えられる。しかし、通常、車両用駆動装置のケースの内部空間は大きさが限られている。このため、電動オイルポンプを無理に車両用駆動装置のケース内に配置しようとすれば、やはり、装置全体の大型化につながってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−236581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、装置全体の大型化を抑制しつつ、ポンプ用回転電機を高出力化又は小型化することが可能な構造の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用駆動装置の特徴構成は、
車輪の駆動力源に駆動連結される入力部材と、
前記入力部材と同軸に配置された変速入力部材を有し、前記変速入力部材の回転を変速して変速出力部材に伝達する油圧駆動式の変速装置と、
前記入力部材とは別軸に配置され、前記変速出力部材から伝達される駆動力を複数の前記車輪に分配する差動歯車装置と、
少なくとも前記変速装置及び前記差動歯車装置を収容するケースと、
ポンプ用回転電機により駆動される電動オイルポンプと、
前記電動オイルポンプから吐出される油の油圧を制御して少なくとも前記変速装置に供給する油圧制御装置と、を備え、
前記電動オイルポンプ及び前記ポンプ用回転電機が、前記ケース内に収容され、
前記変速入力部材の回転軸心である変速軸心と、前記差動歯車装置の回転軸心である差動軸心と、前記ポンプ用回転電機の回転軸心であるポンプ軸心と、が互いに平行となるように、前記変速装置、前記差動歯車装置、及び前記ポンプ用回転電機が配置され、
車両搭載状態で、前記差動軸心が前記変速軸心に対して下方となり、かつ各軸心に平行な軸方向に見て前記変速軸心を通る鉛直面とは重ならないように、前記差動歯車装置が配置され、
前記油圧制御装置が、前記軸方向に見て、前記鉛直面に対して前記差動軸心側とは反対側に配置され、
前記ポンプ軸心が、前記変速軸心よりも下方であって、かつ、前記軸方向に見て前記変速軸心と前記油圧制御装置との間となるように、前記ポンプ用回転電機が配置されている点にある。
【0008】
本願において、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力(トルクと同義)を伝達可能に連結された状態を意味する。この概念には、2つの回転要素が一体回転するように連結された状態や、1つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態が含まれる。このような伝動部材には、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(軸、歯車機構、ベルト等)が含まれ、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等)が含まれても良い。
また、用途に限らず、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
【0009】
この特徴構成によれば、電動オイルポンプを駆動するポンプ用回転電機が、変速装置及び差動歯車装置と共にケース内に収容されるので、ポンプ用回転電機の冷却に油冷構造を採用することができる。よって、例えば空冷構造である場合に比べて冷却性能を高めることができ、ポンプ用回転電機の温度上昇を有効に抑制することができる。従って、ポンプ用回転電機を大型化することなく高出力化し、或いは、ポンプ用回転電機の出力を一定以上に保ったまま小型化することができる。或いは、それらの両方をバランス良く実現することができる。
【0010】
また、上記の特徴構成によれば、車両搭載状態で、差動軸心が、変速軸心に対して軸方向に見て一方の側方に位置し、油圧制御装置が、軸方向に見て変速軸心に対して差動軸心側とは反対側に配置される。つまり、車両搭載状態で、軸方向に見て、水平方向に沿って概ね差動歯車装置、変速装置、油圧制御装置の順に配置される。また、車両搭載状態で、差動軸心が、変速軸心に対して下方に位置する。一般に、差動歯車装置は変速装置に比べて大径に形成される場合が多く、上記の構成では、車両用駆動装置のケースの内部において、変速装置よりも下方であって差動歯車装置と油圧制御装置との間にデッドスペースが生じやすい。また、通常、軸方向に見た場合に、差動歯車装置や変速装置が円形状をなすのに対して、油圧制御装置は矩形状をなす場合が多く、変速装置よりも下方であって変速軸心と油圧制御装置との間に、上記のデッドスペースが特に生じやすい。この点に鑑み、上記の特徴構成では、ポンプ軸心が、変速軸心よりも下方であって、かつ、軸方向に見て変速軸心と油圧制御装置との間となるように、ポンプ用回転電機を配置している。このようなレイアウト構成を採用することで、車両用駆動装置のケース内部のスペースを有効活用して電動オイルポンプ及びポンプ用回転電機を配置できる。よって、車両用駆動装置全体の大型化を有効に抑制することができる。
【0011】
以下、本発明の好適な態様について説明する。
【0012】
1つの態様として、前記ポンプ用回転電機の少なくとも一部が、前記ケース内に貯留される油の油面よりも下方となるように配置されていると好適である。
【0013】
この構成によれば、ケース内に貯留される油により、ポンプ用回転電機の少なくとも一部を、実質的に常時冷却できる。よって、ポンプ用回転電機の温度上昇をより有効に抑制することができ、ポンプ用回転電機のさらなる高出力化及び/又は小型化を実現できる。
【0014】
1つの態様として、油を濾過するためのストレーナをさらに備え、前記ストレーナが、前記変速軸心よりも下方であって、かつ、前記軸方向に見て前記差動軸心と前記電動オイルポンプとの間に配置されていると好適である。
【0015】
この構成によれば、上述した、変速装置よりも下方であって差動歯車装置と油圧制御装置との間に生じるデッドスペースを有効活用して、装置全体の大型化を抑制しつつ、ストレーナを配置することができる。このとき、車両搭載状態で、軸方向に見て、水平方向に沿って概ねストレーナ、電動オイルポンプ、油圧制御装置の順に配置される。よって、ストレーナから油圧制御装置までの油の流れを概ね直線的とすることができ、電動オイルポンプの吸入効率及び吐出効率を高めることができる。
【0016】
1つの態様として、前記駆動力源により駆動される機械式オイルポンプをさらに備え、前記機械式オイルポンプの回転軸心が、前記変速軸心よりも下方であって、かつ、前記軸方向に見て前記変速軸心と前記油圧制御装置との間となるように、前記機械式オイルポンプが配置されていると好適である。
【0017】
この構成によれば、車輪の駆動力源が駆動している場合には、機械式オイルポンプによって吐出される油を変速装置に供給することができる。また、この構成では、上述した、変速装置よりも下方であって変速軸心と油圧制御装置との間に生じるデッドスペースを有効活用して、機械式オイルポンプを配置することができる。よって、車両用駆動装置のケースの内部に機械式オイルポンプ及び電動オイルポンプの両方を配置しつつ、装置全体の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】車両用駆動装置の外観を示す側面図
図2】車両用駆動装置の概略構成を示す模式図
図3図2においてAで示される位置での鉛直断面を含む軸方向視図
図4図2におけるBで示される位置での鉛直断面を含む軸方向視図
図5】ポンプ軸心を通る水平断面を含む平面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る車両用駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る車両用駆動装置1は、車両の車輪Wの唯一の駆動力源Pとして内燃機関Eを備えた車両(いわゆるエンジン車両)を駆動するための車両用駆動装置(エンジン車両用駆動装置)である。本実施形態では、車両用駆動装置1は、車両の停止時に内燃機関Eを停止させるアイドリングストップ機能を備えた車両(アイドリングストップ車両)を駆動するための車両用駆動装置(アイドリングストップ車両用駆動装置)として構成されている。アイドリングストップ車両では、燃料消費量の低減や排出ガスの低減を図ることができる。
【0020】
図1は、本実施形態に係る車両用駆動装置1の外観を示す側面図である。図1には、車両用駆動装置1を構成する各種部品及び各種装置等を収容するケース2(駆動装置ケース)が示されている。また、このケース2に連結される内燃機関Eは、その外形が二点鎖線で示されている。
【0021】
図2に示すように、車両用駆動装置1は、内燃機関Eに駆動連結される入力軸31と、複数(本例では2つ)の車輪Wにそれぞれ駆動連結される複数(本例では2つ)の出力軸36とを備えている。また、車両用駆動装置1は、変速装置33と、カウンタギヤ機構34と、差動歯車装置35とを備えている。変速装置33、カウンタギヤ機構34、及び差動歯車装置35は、入力軸31と出力軸36とを結ぶ動力伝達経路に、入力軸31の側から記載の順に設けられている。これらは、ケース2内に収容されている。本実施形態では、入力軸31が本発明における「入力部材」に相当する。
【0022】
内燃機関Eは、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等)である。本実施形態では、内燃機関Eの出力軸である内燃機関出力軸(クランクシャフト等)が、入力軸31に駆動連結されている。なお、内燃機関出力軸が、ダンパ等を介して入力軸31に駆動連結されても良い。
【0023】
入力軸31には、変速装置33が駆動連結されている。変速装置33は、本実施形態では、複数の変速用係合装置を備え、変速比の異なる複数の変速段を切替可能に備えた自動有段変速装置である。なお、変速装置33として、プーリに接続された可動シーブを備え、変速比を無段階に変更可能な自動無段変速装置等を用いても良い。いずれの場合においても、変速装置33は油圧によって駆動されるように構成されている。変速装置33は、入力軸31に入力される回転及びトルクを、その時点における変速比に応じて変速するとともにトルク変換して、変速出力ギヤ33gに伝達する。本実施形態では、「入力部材」でもある入力軸31が本発明における「変速入力部材」を兼用している。また、変速出力ギヤ33gが本発明における「変速出力部材」に相当する。なお、本実施形態では、変速入力部材としての入力軸31と、変速出力部材としての変速出力ギヤ33gとが、同軸に配置されている。
【0024】
なお、入力軸31と変速装置33との間に、例えば流体継手(トルクコンバータやフルードカップリング)等の他の装置が備えられていても良い。この場合、中間軸(流体継手の出力軸)が変速入力部材となり、当該中間軸に入力される回転及びトルクが、変速装置33により、その時点における変速比に応じて変速されるとともにトルク変換されて、変速出力ギヤ33gに伝達される。流体継手には、ロックアップクラッチが備えられていても良い。
【0025】
変速出力ギヤ33gは、カウンタギヤ機構34を介して差動歯車装置35に駆動連結されている。差動歯車装置35は、左右2つの出力軸36を介して、左右2つの車輪Wにそれぞれ駆動連結されている。差動歯車装置35は、変速出力ギヤ33gからカウンタギヤ機構34を介して伝達される回転及びトルクを、左右2つの車輪Wに分配する。これにより、車両用駆動装置1は、駆動力源Pとしての内燃機関Eのトルクを車輪Wに伝達させて、車両を走行させることができる。
【0026】
なお、本実施形態では、変速装置33が入力軸31と同軸に配置されるとともに、差動歯車装置35及び出力軸36が入力軸31とは別軸に配置されている。また、カウンタギヤ機構34が、入力軸31及び出力軸36の両方と別軸に配置されている。そして、変速装置33の回転軸心である第一軸心X1と、カウンタギヤ機構34の回転軸心である第二軸心X2と、差動歯車装置35の回転軸心である第三軸心X3とが、互いに平行に配置されている。なお、“変速装置33の回転軸心”とは、当該変速装置33の入力軸(変速入力軸であって、本実施形態における入力軸31)の回転軸心である。すなわち、第一軸心X1は、変速装置33の入力軸(変速入力軸)の回転軸心である。また、“変速装置33が入力軸31と同軸に配置される”とは、変速入力軸の回転軸心と入力軸31の回転軸心とが一致すること(本実施形態のように両者が共用されることを含む概念)を意味する。
【0027】
図3及び図4に示すように、第一軸心X1、第二軸心X2、及び第三軸心X3は、これらに平行な軸方向Lに見て、三角形(本例では中心角が約90°〜110°程度の鈍角三角形)の頂点に位置するように配置されている。このような複軸構成は、例えばFF(Front Engine Front Drive)車両に搭載される車両用駆動装置1の構成として適している。なお、本実施形態では、第一軸心X1が本発明における「変速軸心」に相当し、第三軸心X3が本発明における「差動軸心」に相当する。
【0028】
図2に示すように、車両用駆動装置1は、入力軸31に駆動連結された機械式オイルポンプ50を備えている。機械式オイルポンプ50は、ポンプ駆動機構40を介して入力軸31に駆動連結されている。本実施形態では、ポンプ駆動機構40は、駆動要素としての第一スプロケット41と、被駆動要素としての第二スプロケット42と、連結要素としてのチェーン43とを含む。第一スプロケット41は、入力軸31に固定されており、入力軸31と一体回転する。第二スプロケット42は、機械式オイルポンプ50のポンプ本体部51(図5を参照)に駆動連結された第一ポンプ駆動部材52に固定されており、第一ポンプ駆動部材52と一体回転する。チェーン43は、第一スプロケット41と第二スプロケット42とに巻きかけられている。
【0029】
機械式オイルポンプ50のポンプ本体部51は、本例では内接型ギヤポンプとされている。ポンプ本体部51は、互いに噛み合うギヤをそれぞれ有するインナーロータ及びアウターロータを有する。但し、このような構成に限定される訳ではなく、例えば外接型ギヤポンプやベーンポンプ等であっても良い。図5に示すように、ポンプ本体部51は、第一ポンプケース54内に形成されたポンプ室に収容されている。機械式オイルポンプ50は、内燃機関Eが駆動している状態(入力軸31が回転している状態)で、入力軸31に伝達される内燃機関Eのトルクにより、ポンプ駆動機構40を介して駆動される。機械式オイルポンプ50は、オイルパン(本実施形態ではケース2内における下部領域がオイルパンとして機能する)に貯留された油を吸入して吐出する。
【0030】
図2に示すように、車両用駆動装置1は、上述した機械式オイルポンプ50に加えて、補助ポンプとして電動オイルポンプ70を備えている。電動オイルポンプ70は、入力軸31と出力軸36とを結ぶ動力伝達経路から独立して設けられたポンプ用回転電機60に駆動連結されている。本実施形態では、電動オイルポンプ70は、ポンプ用回転電機60と一体的に設けられている。図5に示すように、ポンプ用回転電機60と電動オイルポンプ70とは、同軸に配置された状態で、第二ポンプケース74内に共に収容されている。ポンプ用回転電機60は、第二ポンプケース74に固定されたステータ61と、このステータ61の径方向内側に回転自在に支持されたロータ62とを有する。ロータ62は、電動オイルポンプ70のポンプ本体部71に駆動連結された第二ポンプ駆動部材72に固定されており、第二ポンプ駆動部材72と一体回転する。
【0031】
電動オイルポンプ70のポンプ本体部71は、機械式オイルポンプ50のポンプ本体部51と同様、本例では内接型ギヤポンプとされている。ポンプ本体部71は、互いに噛み合うギヤをそれぞれ有するインナーロータ及びアウターロータを有する。但し、このような構成に限定される訳ではなく、例えば外接型ギヤポンプやベーンポンプ等であっても良い。ポンプ本体部71は、第二ポンプケース74内に形成されたポンプ室に収容されている。電動オイルポンプ70は、ポンプ用回転電機60が駆動している状態で、当該ポンプ用回転電機60のトルクにより駆動される。電動オイルポンプ70も、オイルパンに貯留された油を吸入して吐出する。
【0032】
図5に示すように、機械式オイルポンプ50及び電動オイルポンプ70の少なくとも一方から吐出された油は、油圧制御装置84へと導かれる。油圧制御装置84は、電動オイルポンプ70及び電動オイルポンプ70の少なくとも一方から吐出された油の油圧を制御する。油圧制御装置84で所定油圧に調圧された油は、その後、車両用駆動装置1の各油圧機器(本実施形態では、少なくとも変速装置33に備えられる油圧駆動式の変速用係合装置)に供給される。本実施形態では、電動オイルポンプ70を備えていることで、内燃機関Eの停止状態でも、変速用係合装置に油を供給してその係合状態を形成することができ、適切に車両を発進させることができる。
【0033】
ところで、電動オイルポンプ70及びその駆動用のポンプ用回転電機60は、ケース2の外部に取り付けられることが一般的である。これは、ケース2における限られた大きさの内部空間に電動オイルポンプ70等を配置するのが困難であると考えられているからである。これに対して、本発明の重要なポイントの1つは、図3及び図4に示すように、電動オイルポンプ70及びポンプ用回転電機60をケース2内に収容した点である。なお、電動オイルポンプ70等を単純にケース2内に収容するだけでは、装置全体の大型化を招く可能性がある。そこで本発明では、以下に説明するように、ケース2内の限られた空間を有効活用して電動オイルポンプ70等を配置することで、装置全体の大型化を抑制している。この点も、本発明の重要なポイントの1つである。なお、以下の説明は、車両搭載状態(車両に搭載された状態)を念頭に置いているものとする。
【0034】
本実施形態では、ポンプ用回転電機60は、入力軸31及び変速装置33、カウンタギヤ機構34、並びに差動歯車装置35及び出力軸36とは別軸に配置されている。そして、ポンプ用回転電機60の回転軸心である第四軸心X4は、変速入力軸(本例では入力軸31)の回転軸心である第一軸心X1、カウンタギヤ機構34の回転軸心である第二軸心X2、及び差動歯車装置35の回転軸心である第三軸心X3に対して、平行に配置されている。図4に示すように、第四軸心X4は、軸方向Lに見て、各軸心X1〜X3を頂点とする三角形の外側に位置するように配置されている。なお、本実施形態では、第四軸心X4が本発明における「ポンプ軸心」に相当する。
【0035】
本実施形態では、油圧制御装置84は、軸方向Lに見て扁平な矩形状に形成されている。また、油圧制御装置84は、軸方向Lに見た場合の側方において、概ね上下方向に沿った起立姿勢でケース2内に配置されている。このような油圧制御装置84の配置は、軸方向Lに直交する水平方向の全幅を小さく抑えて、装置全体を小型化するのに有利である。
【0036】
以下、説明の便宜上、軸方向Lに見た場合における水平方向の一方側(図3及び図4における左側)を“第一サイドS1”と称し、他方側(右側)を“第二サイドS2”と称する。ケース2における変速装置33、カウンタギヤ機構34、及び差動歯車装置35の周囲を覆う異形筒状の周壁21には、軸方向Lに見て第二サイドS2に向かって開口する開口部21aが形成されている。この開口部21aの位置に、油圧制御装置84が配置されている。なお、開口部21aを覆うように、周壁21に対してカバー部材24がシールされた状態で固定されている。
【0037】
図3等に示すように、本実施形態では、変速入力軸(本例では入力軸31)の回転軸心である第一軸心X1、カウンタギヤ機構34の回転軸心である第二軸心X2、及び差動歯車装置35の回転軸心である第三軸心X3のうち、第二軸心X2が最も上方に位置している。また、各軸心X1〜X3のうち、第三軸心X3が最も下方に位置している。つまり、各軸心X1〜X3は、上下方向に沿って、上方から第二軸心X2、第一軸心X1、第三軸心X3の順に配置されている。また、軸方向Lに見て、第一軸心X1と第三軸心X3とが、第二軸心X2に対して互いに反対側に配置されている。本例では、第一軸心X1が第二軸心X2に対して油圧制御装置84側となる第二サイドS2に配置され、第三軸心X3が第二軸心X2に対して油圧制御装置84側とは反対側となる第一サイドS1に配置されている。つまり、各軸心X1〜X3は、水平方向に沿って、第一サイドS1から第三軸心X3、第二軸心X2、第一軸心X1の順に配置されている。第一軸心X1よりも第二サイドS2に、油圧制御装置84が配置されている。
【0038】
ここで、第一軸心X1と第三軸心X3と油圧制御装置84との配置関係に注目すると、第三軸心X3は、第一軸心X1に対して、下方かつ軸方向Lに見て一方の側方(本例では第一サイドS1)に配置されている。また、油圧制御装置84は、軸方向Lに見て、第一軸心X1に対して第三軸心X3側とは反対側(本例では第二サイドS2)に配置されている。そして、第三軸心X3、第一軸心X1、及び油圧制御装置84は、軸方向Lに見て、水平方向に沿って、第一サイドS1から記載の順に配置されている。そして、差動歯車装置35及び油圧制御装置84は、軸方向Lに見て、第一軸心X1を通る鉛直面とは重ならないようにそれぞれ配置されている。第一軸心X1を通る鉛直面に対して第一サイドS1に差動歯車装置35が配置され、第二サイドS2に油圧制御装置84が配置されている。
【0039】
また、本実施形態では、カウンタギヤ機構34は、軸方向Lに見て、変速装置33及び差動歯車装置35とそれぞれ重複する部分を有する位置に配置されている。なお、2つの部材の配置に関して、「ある方向に見て重複する部分を有する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを意味する。一方、変速装置33と差動歯車装置35とは、軸方向Lに見て重複する部分を有することなく配置されている。第一軸心X1と第三軸心X3との離間距離は、変速装置33の半径と差動歯車装置35の半径との合計よりも大きく設定されている。また、差動歯車装置35は、変速装置33に比べて大径に形成されている。さらに、上下方向において、変速装置33の最下点は第三軸心X3よりも下方(本例では同程度の位置)に位置するように設定され、油圧制御装置84は少なくとも変速装置33の最下点よりも下方に位置するように配置されている。本例では、油圧制御装置84の最下点は、差動歯車装置35の最下点と変速装置33の最下点との中央部付近に位置している。
【0040】
このような構成では、ケース2の内部において、軸方向Lに見て変速装置33よりも下方であって差動歯車装置35と油圧制御装置84との間にはデッドスペースが生じる(図3等を参照)。そこで、本実施形態では、そのようなデッドスペースを有効活用するという観点から、ポンプ用回転電機60を、図4に示すように、第一軸心X1よりも下方であって、かつ、軸方向Lに見て差動歯車装置35と油圧制御装置84との間に配置している。さらに本実施形態では、ポンプ用回転電機60の回転軸心である第四軸心X4を、第一軸心X1よりも下方であって、かつ、軸方向Lに見て第一軸心X1と油圧制御装置84との間に配置している。ポンプ用回転電機60は、軸方向Lに見て、変速装置33及び油圧制御装置84とは重複する部分を有することなく配置されている。
【0041】
また、電動オイルポンプ70及びポンプ用回転電機60は、その全体が、軸方向Lに見て第一軸心X1と油圧制御装置84との間に配置されている。また、電動オイルポンプ70及びポンプ用回転電機60は、変速装置33の外周面と油圧制御装置84の第一サイドS1の側面との間に形成される、軸方向Lに見てV字状の領域に配置されている。また、電動オイルポンプ70及びポンプ用回転電機60は、上下方向では、その全体が、第三軸心X3よりも下方であって差動歯車装置35の最下点よりも上方に配置されている。このようなレイアウト構成を採用することで、ケース2の内部スペース(特に、ケース2内の下部スペース)を有効活用できる。よって、車両用駆動装置1の全体の大型化を有効に抑制することができる。
【0042】
また、電動オイルポンプ70の駆動用のポンプ用回転電機60がケース2内に収容されるので、ポンプ用回転電機60の冷却に、ケース2内に貯留された油を利用する油冷構造を採用することができる。よって、ポンプ用回転電機60の冷却性能を高めることができ、ポンプ用回転電機60の温度上昇を有効に抑制することができる。従って、ポンプ用回転電機60を大型化することなく高出力化し、或いは、ポンプ用回転電機60の出力を一定以上に保ったまま小型化することができる。或いは、それらの両方をバランス良く実現することができる。特に、ポンプ用回転電機60を、その少なくとも一部をケース2内に貯留される油の油面OLよりも下方となるように配置すれば、ポンプ用回転電機60における油に浸る部分を、実質的に常時冷却できる。よって、ポンプ用回転電機60の温度上昇をより有効に抑制することができ、ポンプ用回転電機60のさらなる高出力化及び/又はさらなる小型化を実現できる。ここで、油面OLの位置は、車両用駆動装置1の動作中(車両の走行中)における標準的な位置に設定されると好適である。なお、静止油面が、油面OLとして設定されても良い。
【0043】
本実施形態では、上述したデッドスペースの有効活用の観点から、図3に示すように、機械式オイルポンプ50をも、第一軸心X1よりも下方であって、かつ、軸方向Lに見て差動歯車装置35と油圧制御装置84との間に配置している。また、機械式オイルポンプ50(第一ポンプ駆動部材52)の回転軸心である第五軸心X5を、第一軸心X1よりも下方であって、かつ、軸方向Lに見て第一軸心X1と油圧制御装置84との間に配置している。機械式オイルポンプ50は、軸方向Lに見て、変速装置33及び油圧制御装置84とは重複する部分を有することなく配置されている。
【0044】
図5に示すように、本実施形態では、機械式オイルポンプ50は、ポンプ用回転電機60及び電動オイルポンプ70とは別軸に配置されている。ポンプ用回転電機60の回転軸心である第四軸心X4は、機械式オイルポンプ50の回転軸心である第五軸心X5に対して、本例では僅かに第一サイドS1にずれている。この意味で、機械式オイルポンプ50とポンプ用回転電機60及び電動オイルポンプ70とは、本例では実質的に同軸であるとも言える。これらは、軸方向Lに並ぶように配置されている。このようなレイアウト構成を採用することで、機械式オイルポンプ50の配置も含めて、ケース2の内部のスペースを有効活用できる。なお、第四軸心X4が第五軸心X5に対して第二サイドS2にずれていても良い。
【0045】
さらに本実施形態では、同様の観点から、図3に示すように、両オイルポンプ50,70に吸入される油を濾過するためのストレーナ82を、第一軸心X1よりも下方であって、かつ、軸方向Lに見て差動歯車装置35と油圧制御装置84との間に配置している。本実施形態では、ストレーナ82を、第一軸心X1よりも下方であって、かつ、軸方向Lに見て差動歯車装置35と両オイルポンプ50,70との間に配置している。ストレーナ82と両オイルポンプ50,70とは、上下方向の同程度の位置において、水平方向に並ぶように配置されている。このようなレイアウト構成を採用することで、ストレーナ82の配置も含めて、ケース2の内部のスペースを有効活用できる。また、ストレーナ82の少なくとも一部も、ポンプ用回転電機60と同様に油面OLよりも下方に配置されるので、油の適切な吸入が可能となって好都合である。
【0046】
また、そのようなレイアウト構成では、図5に示すように、水平方向に沿ってストレーナ82、両オイルポンプ50,70、及び油圧制御装置84の順に配置される。よって、ストレーナ82から油圧制御装置84までの油の流れを概ね直線的とすることができる。具体的には、互いに接合される第一ポンプケース54及び第二ポンプケース74には、4つの油路(第一吸入油路55、第一吐出油路56、第二吸入油路75、及び第二吐出油路76)が形成されている。第一吸入油路55は、ストレーナ82と機械式オイルポンプ50のポンプ本体部51の吸入口とを接続する油路である。第一吐出油路56は、ポンプ本体部51の吐出口と油圧制御装置84とを接続する油路である。第二吸入油路75は、ストレーナ82と電動オイルポンプ70のポンプ本体部71の吸入口とを接続する油路である。第二吐出油路76は、ポンプ本体部71の吐出口と油圧制御装置84とを接続する油路である。
【0047】
第一吸入油路55と第二吸入油路75とは、上流側(ストレーナ82側)の一部を共用するように形成されている。第一吐出油路56と第二吐出油路76とは、互いに独立した油路として形成されている。第一吸入油路55及び第二吸入油路75の共通油路部分と、第一吐出油路56及び第二吐出油路76のそれぞれの下流側(油圧制御装置84側)の一部は、互いに平行に直線状に配置されている。これらの油路を通って流れる油の流れを概ね直線的とすることで、両オイルポンプ50,70の吸入効率及び吐出効率を高めることができるという利点がある。よって、装置全体のエネルギ効率の向上に寄与することができる。
【0048】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る車両用駆動装置の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0049】
(1)上記の実施形態では、エンジン車両用の駆動装置に本発明を適用した例について説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、車両の車輪Wの駆動力源Pとして内燃機関E及び回転電機(車輪駆動用回転電機)の両方を備えたハイブリッド車両用の駆動装置にも、本発明を適用することができる。ハイブリッド車両用の駆動装置の場合、機械式オイルポンプ50は、内燃機関E及び回転電機のうちの予め定められたいずれか一方のトルクによって駆動される構成であっても良い。或いは、機械式オイルポンプ50は、内燃機関E及び回転電機のうちの回転速度の高い方によって選択的に駆動される構成であっても良い。また、車両の車輪Wの唯一の駆動力源Pとして回転電機(車輪駆動用回転電機)を備えた電動車両用の駆動装置にも、本発明を適用することができる。
【0050】
(2)上記の実施形態では、ポンプ用回転電機60の少なくとも一部が、ケース2内に貯留される油の油面OLよりも下方となるように配置された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。ポンプ用回転電機60の全体が、ケース2内の油の油面OLよりも上方に配置されても良い。この場合、例えば車両走行時に、慣性等の影響で油面が上昇したときに少なくとも一部が油に浸かるように、ポンプ用回転電機60の配置位置を決定しても良い。或いは、ポンプ用回転電機60に油を噴射し又はポンプ用回転電機60の周囲に油を流通させる油路が、ケース2の壁に設けられても良い。
【0051】
(3)上記の実施形態では、ストレーナ82が、軸方向Lに見て差動歯車装置35と両オイルポンプ50,70との間に配置された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、ストレーナ82が、両オイルポンプ50,70と上下方向に重なる位置に配置されても良い。
【0052】
(4)上記の実施形態では、軸方向Lに見て扁平な矩形状に形成された油圧制御装置84が、概ね上下方向に沿った起立姿勢で配置された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、油圧制御装置84が、上下方向に対して傾斜した傾斜姿勢で配置されても良い。また例えば、油圧制御装置84が、軸方向Lに見て正方形状に形成されても良い。
【0053】
(5)上記の実施形態では、機械式オイルポンプ50と電動オイルポンプ70とが、別軸に、軸方向Lに並べて配置された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、両オイルポンプ50,70が、軸方向Lに離間して配置されても良い。この場合において、機械式オイルポンプ50が、例えば入力軸31と同軸に配置されても良い。或いは、両オイルポンプ50,70が、同軸に配置されても良い。
【0054】
(6)上記の実施形態では、第一吸入油路55と第二吸入油路75とが、上流側の一部を共用するように形成されている構成を例として説明した。また、第一吐出油路56と第二吐出油路76とが、互いに独立した油路として形成されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、第一吸入油路55と第二吸入油路75とが互いに独立した油路として形成されても良い。また、第一吐出油路56と第二吐出油路76とが、下流側の一部を共用するように形成されても良い。
【0055】
(7)上記の実施形態では、機械式オイルポンプ50と入力軸31とを駆動連結するためのポンプ駆動機構40が、2つのスプロケット41,42とそれらに巻きかけられたチェーン43とを含む例について説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。ポンプ駆動機構40としては、公知の任意の具体的構成を採用することができる。例えば、ポンプ駆動機構40が、入力軸31と一体回転する第一プーリと、第一ポンプ駆動部材52に固定された第二プーリと、これら2つのプーリに巻回されたベルトとを含んで構成されても良い。或いは、ポンプ駆動機構40が、入力軸31と一体回転する第一歯車部材と、第一ポンプ駆動部材52に固定された第二歯車部材と、これら2つの部材に形成された各歯車に噛み合う歯車機構とを含んで構成されても良い。
【0056】
(8)上記の実施形態では、変速装置33において、変速入力部材としての入力軸31と、変速出力部材としての変速出力ギヤ33gとが同軸に配置された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、変速入力軸と変速出力部材とが別軸に配置された変速装置33を用いても良い。
【0057】
(9)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。従って、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、例えばアイドリングストップ機能を備えた車両を駆動するための車両用駆動装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 :車両用駆動装置
2 :ケース
31 :入力軸(入力部材、変速入力部材)
33 :変速装置
33g :変速出力ギヤ(変速出力部材)
35 :差動歯車装置
36 :出力軸
50 :機械式オイルポンプ
60 :ポンプ用回転電機
70 :電動オイルポンプ
82 :ストレーナ
84 :油圧制御装置
P :駆動力源
E :内燃機関
W :車輪
X1 :第一軸心(変速軸心)
X3 :第三軸心(差動軸心)
X4 :第四軸心(ポンプ軸心)
L :軸方向
OL :油面
図1
図2
図3
図4
図5