(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発泡剤含有樹脂層が、ポリエチレン、オレフィン−カルボン酸ビニルエステル共重合体、オレフィン−α,β不飽和カルボン酸エステル共重合体、及び少なくともα,β不飽和カルボン酸無水物を構成コモノマーとして含むオレフィン共重合体よりなる群から選択される2種以上の樹脂成分を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
前記発泡剤含有樹脂層が、少なくともα,β不飽和カルボン酸無水物を構成コモノマーとして含むオレフィン共重合体、及びポリエチレンよりなる群から選択される1種又は2種以上の樹脂成分(1)と、オレフィン−カルボン酸ビニルエステル共重合体、及びオレフィン−α,β不飽和カルボン酸エステル共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種又は2種以上の樹脂成分(2)を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
前記発泡剤含有樹脂層が、ポリエチレン及びエチレン−無水マレイン酸−アクリル酸メチル共重合体よりなる群から選択される1種又は2種以上の樹脂成分(1)と、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、及びエチレン−アクリル酸メチル共重合体よりなる群から選択される1種又は2種以上の樹脂成分(2)を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.発泡積層シート(I)
本発明の発泡積層シートは、繊維質基材上に、発泡樹脂層を積層した発泡積層シートであって、該発泡積層シートが、JIS K7128−3に規定されるシートの引裂き強さ試験方法において、引張速度3mm/分、掴み具間距離
80mmでの巾方向の引張強度の第1極大点から第2極大点までの変位が1〜5mmである、ことを特徴とする。本明細書において、当該発泡積層シートを「発泡積層シート(I)」と表記することもある。以下、発泡積層シート(I)について詳述する。
【0014】
物性
(引き裂き強度)
本発明の発泡積層シート(I)は、JIS K7128−3に規定されるシートの引裂き強さ試験方法において、引張速度3mm/分、掴み具間距離
80mmでの巾方向の引張強度の第1極大点から第2極大点までの変位が1〜5mmである。このような引き裂き強度を充足することにより、優れた下地ずれ追従性を備えることができ、下地の継ぎ目にズレが生じても、クラックの発生を抑制することが可能になる。一方、前記変位が5mmを超えると、耐クラック性が低下したり、必要以上に伸び易くなって施工時に貼り付け位置がずれ易くなる傾向が見られる。下地ずれ追従性をより一層向上させるという観点から、前記変位として、好ましくは1〜3mmが挙げられる。
【0015】
なお、前記引裂き強さ試験方法において、巾方向の引張強度とは、基材として使用される繊維質基材の巾方向(即ち、横引張)の引張強度である。繊維質基材の巾方向とは、繊維質基材の繊維の並び方向とは直交する方向であり、目視や水中伸度(巾方向は縦方向に比べて水中伸度が大きい)を測定することにより決定することができる。
【0016】
また、巾方向の引張強度の第1極大点から第2極大点の変位とは、前記引裂き強さ試験を行った際に、引張距離を横軸に、引張強度を縦軸にプロットした図において、最初に引張強度の極大を示す引張距離(第1極大点)から次に引張強度の極大を示す引張距離(第2極大点)までの距離を示す。第1極大点は繊維質基材の破断が開始する点であり、第2極大点は樹脂層の破断が開始する点である。例えば、繊維質基材上に発泡樹脂層を積層した発泡積層シートを前記引裂き強さ試験方法に供すると、
図1に示すようなチャート(横軸:引張距離、縦軸:引張強度)が得られ、
図1に示すA(繊維質基材の破断開始点)からB(樹脂層の破断開始点)までの距離が、第1極大点から第2極大点の変位に相当する。なお、
図1において、C点は発泡積層シートが完全に破断する破断点を表している。即ち、前記第1極大点から第2極大点の変位は、下地ずれによって繊維質基材が破断されても樹脂層が破断されない状態を維持できる応力範囲に該当しており、本発明では、当該変位は、下地ずれが生じた際にクラック等の破損が生じるのを抑制する効果の指標として使用される。
【0017】
なお、前記引裂き強さ試験方法は、JIS K7128−3に定められた形状に発泡積層シートを切り取って行われる。また、JIS K7128−3に規定されるシートの引裂き強さ試験方法は、具体的には、後記する実施例の欄に記載の条件で行われる。
【0018】
(表面強度)
本発明の発泡積層シート(I)は、前記引き裂き強度を充足することに加えて、壁紙工業会が規定する表面強化壁紙性能規定による試験結果が4級以上を満たしていることが好ましい。このような表面強度を充足することにより、優れた耐スクラッチ性を備えることができ、日常生活で生じ得る傷付きを効果的に抑制することが可能になる。
【0019】
なお、表面強化壁紙性能規定における試験による試験結果が4級以上とは、タテ方向とヨコ方向共に4級以上であることを意味する。また、ここで、「タテ方向」、「ヨコ方向」とは、それぞれ、前記引裂き強さ試験方法における「縦方向」、「巾方向」と同義である。
【0020】
前記表面強度を充足する発泡積層シート(I)、又は前記引き裂き強度及び必要に応じて前記表面強度を充足する発泡積層シート(I)は、当該発泡積層シートを構成する繊維質基材と樹脂層の組成、厚さ等を適宜調節することにより調製される。とりわけ、樹脂層中の発泡樹脂層の物性は、前記引き裂き強度や表面強度の充足性に大きく寄与するので、繊維質基材を選定した上で、発泡樹脂層の組成や厚さを、前記引き裂き強度及び必要に応じて前記表面強度を充足するように、適宜調節することによって、本発明の発泡積層シート(I)が調製される。
【0021】
積層構造
本発明の発泡積層シート(I)は、繊維質基材上に、少なくとも発泡樹脂層を含む樹脂層を積層した積層構造を有する。
【0022】
本発明の発泡積層シート(I)において、樹脂層は、少なくとも発泡樹脂層を含んでいればよく、前記引き裂き強度及び必要に応じて前記表面強度を充足することを限度として、発泡樹脂層以外に1又は複数の層を有する積層構造であってもよい。
【0023】
例えば、繊維質基材と樹脂層の接着性を向上させるために、必要に応じて、基材と発泡樹脂層との間に、非発泡樹脂層Bが形成されていてもよい。
【0024】
また、発泡樹脂層の上面(繊維質基材側とは反対の面)には、発泡積層シートに意匠性を付与する目的で、必要に応じて絵柄模様層が形成されていてもよい。更に、絵柄模様を鮮明にしたり発泡樹脂層の耐傷性を向上させたりする目的で、必要に応じて、発泡樹脂層の上面(繊維質基材側とは反対の面)、又は絵柄模様層を形成する場合には発泡樹脂層と絵柄模様層の間に、非発泡樹脂層Aを形成してもよい。
【0025】
また、前記絵柄模様層を形成する場合には、耐汚染性の付与、絵柄模様層の表面に艶調整、絵柄模様層の保護等のために、前記絵柄模様層の上面に表面保護層を有してもよい。
【0026】
このように本発明の発泡積層シート(I)は、樹脂層として、発泡樹脂層以外に、必要に応じて、非発泡樹脂層B、非発泡樹脂層A、絵柄模様層、及び表面保護層よりなる群から選択される少なくとも1つの層を含んでいてもよい。即ち、発泡積層シート(I)における積層構造の一例として、繊維質基材/必要に応じて設けられる非発泡樹脂層B/発泡樹脂層/必要に応じて設けられる非発泡樹脂層A/必要に応じて設けられる絵柄模様層/必要に応じて設けられる表面保護層が順に積層された積層構造が挙げられる。とりわけ、発泡積層シート(I)における積層構造の好適な例として、繊維質基材/非発泡樹脂層B/発泡樹脂層/非発泡樹脂層A/絵柄模様層/表面保護層が順に積層された積層構造が挙げられる。
【0027】
また、本発明の発泡積層シート(I)における繊維質基材とは反対側の表面には、意匠性を付与するために、エンボス加工による凹凸模様が施されていてもよい。
【0028】
以下、本発明の発泡積層シート(I)を構成する各層の組成及び形成方法について説明する。
[繊維質基材]
本発明に使用される繊維質基材としては、通常、壁紙用紙として用いられるものを使用することができる。また、繊維質基材には、必要に応じて難燃剤、無機質剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、着色剤、サイズ剤、定着剤等が含まれていてもよい。繊維質基材として、具体的には、壁紙用一般紙(パルプ主体のシートをサイズ剤でサイズ処理したもの)、難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙、繊維混抄紙(合成繊維とパルプを混合して抄紙したもの)等が挙げられる。なお、本発明に使用される繊維質基材には、分類上、不織布に該当しているものも包含される。
【0029】
繊維質基材の坪量については、特に制限されないが、例えば50〜300g/m
2程度、好ましくは50〜120g/m
2程度が挙げられる。
【0030】
[樹脂層]
樹脂層は、繊維質基材の上面に設けられ、少なくとも発泡樹脂層を含む層である。樹脂層は、発泡樹脂層単独からなる単層構造であってもよく、また、発泡樹脂層以外に、非発泡樹脂層B、非発泡樹脂層A、絵柄模様層、及び表面保護層よりなる群から選択される少なくとも1つの層を含む積層構造であってもよい。
【0031】
樹脂層の単位面積当たりの質量、樹脂層を構成する各層の密度については、使用する樹脂成分の種類、発泡樹脂層以外の層の数等に応じて適宜設定されるが、前記引き裂き強度を充足させるという観点、更には前記引き裂き強度と表面強度の双方を充足させるという観点から、樹脂層の単位面積当たりの質量が70〜110g/m
2、好ましくは72〜100g/m
2であり、且つ樹脂層に含まれる発泡樹脂層の密度が0.1〜0.3g/cm
3、好ましくは0.12〜0.28g/cm
3が挙げられる。
【0032】
樹脂層の厚みについては、使用する樹脂成分の種類、発泡樹脂層以外の層の数等に応じて、前記引き裂き強度及び必要に応じて前記表面強度を充足させる範囲に適宜設定すればよいが、例えば300〜1500μm、好ましくは400〜800μmが挙げられる。
【0033】
(1)発泡樹脂層
発泡樹脂層は、樹脂層に含まれる必須の層であり、樹脂成分及び発泡剤を含む発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより形成される。
【0034】
(樹脂成分)
発泡樹脂層に使用される樹脂成分としては、本発明の発泡積層シート(I)に前記引き裂き強度及び必要に応じて前記表面強度を充足させ得ることを限度として、特に制限されないが、例えば、1)ポリエチレン、又は2)カルボン酸ビニルエステル、α,β不飽和カルボン酸、α,β不飽和カルボン酸エステル、及びα,β不飽和カルボン酸無水物よりなる群から選択される少なくとも1種を構成コモノマーとして含むオレフィン系樹脂が挙げられる。以下、前記1)ポリエチレンと2)オレフィン系樹脂について説明する。
【0035】
1)ポリエチレン
前記ポリエチレンとしては、エチレンの単独重合体であってもよく、またエチレンとαオレフィンの共重合体であってもよい。当該共重合体のコモノマーとして使用されるαオレフィンとしては、ポリオレフィンに備える密度等に応じて適宜設定されるが、例えば、炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜8の直鎖状又は分岐状のαオレフィンの中から1種又は2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0036】
前記ポリエチレンとしては、具体的には、密度0.942g/cm
3以上の高密度ポリエチレン(HDPE)及び密度0.93g/cm
3以上0.942g/cm
3未満の中密度ポリエチレン(MDPE)、密度0.91g/cm
3以上0.93g/cm
3未満の低密度ポリエチレン(LDPE)、密度が0.85g/cm
3以上0.93g/cm
3未満の線状低密度ポリエチレン、(LLDPE)等が挙げられる。これらのポリエチレンは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのポリエチレンの中でも、前記引き裂き強度及び表面強度の双方を充足させるという観点から、好ましくは低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、更に好ましくは線状低密度ポリエチレンが挙げられる。
【0037】
前記線状低密度ポリエチレンとしては、具体的には、炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜8の直鎖状又は分岐状のαオレフィンをコモノマーとして含むものが挙げられる。線状低密度ポリエチレンにおけるコモノマーとして、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。これらのコモノマーは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
2)オレフィン系樹脂
前記オレフィン系樹脂は、オレフィン系モノマーと、カルボン酸ビニルエステル、α,β不飽和カルボン酸、α,β不飽和カルボン酸エステル、及びα,β不飽和カルボン酸無水物よりなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーとを重合させることにより得られる樹脂である。
【0039】
前記オレフィン系モノマーとしては、特に制限されないが、例えば、炭素数2〜12のオレフィン、好ましくは炭素数2〜8のオレフィンが挙げられる。より具体的には、前記オレフィン系樹脂に使用されるオレフィン系モノマーとして、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等のオレフィンが挙げられる。これらのオレフィン系モノマーの中でも、好ましくはエチレンが挙げられる。これらのオレフィン系モノマーは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
前記カルボン酸ビニルエステルとしては、具体的には、酢酸ビニル等が挙げられる。また、前記α,β不飽和カルボン酸としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。前記α,β不飽和カルボン酸エステルとしては、具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等が挙げられる。前記α,β不飽和カルボン酸無水物としては、2つの異なる不飽和カルボン酸が脱水縮合した混成酸無水物、同一の不飽和カルボン酸2分子が脱水縮合した対称型酸無水物、及び2つのカルボキシル基を有する不飽和カルボン酸1分子において該2つのカルボキシル基が脱水縮合した分子内環状無水物のいずれであってもよく、具体的には無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。
【0041】
これらのコモノマーの中でも、前記引き裂き強度及び表面強度の双方を充足させるという観点から、好ましくはカルボン酸ビニルエステル、α,β不飽和カルボン酸エステル、α,β不飽和カルボン酸無水物が挙げられる。とりわけ、カルボン酸ビニルエステルとして、更に好ましくは酢酸ビニル;α,β飽和カルボン酸エステルとして、更に好ましくはアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル;α,β不飽和カルボン酸無水物として、更に好ましくは不飽和カルボン酸の分子内環状無水物、特に好ましくは無水マレイン酸が挙げられる。
【0042】
これらのコモノマーは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
前記オレフィン系樹脂としては、具体的にはオレフィン−カルボン酸ビニルエステル共重合体、オレフィン−α,β不飽和カルボン酸共重合体、オレフィン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、少なくともα,β不飽和カルボン酸無水物を構成コモノマーとして含むオレフィン共重合体(以下、「不飽和カルボン酸無水物共重合体」と表記することもある)等が挙げられる。また、前記不飽和カルボン酸無水物共重合体としては、例えば、オレフィン−α,β不飽和カルボン酸無水物共重合体、オレフィン−α,β不飽和カルボン酸エステル−α,β不飽和カルボン酸無水物共重合体等が挙げられ、好ましくは、オレフィン−α,β不飽和カルボン酸エステル−α,β不飽和カルボン酸無水物共重合体が挙げられる。なお、不飽和カルボン酸無水物共重合体において、α,β不飽和カルボン酸無水物は主鎖を構成してもよく、またグラフト鎖を構成してもよい。
【0044】
前記オレフィン系樹脂として、より具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−オレフィン共重合体、エチレン−無水マレイン酸−アクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。これらのエチレン共重合体は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
これらのオレフィン系樹脂の中でも、前記引き裂き強度を充足させるという観点、更には前記引き裂き強度と表面強度の双方を充足させるという観点から、好ましくはエチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、不飽和カルボン酸無水物含有エチレン共重合体が挙げられ、更に好ましくはエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−無水マレイン酸−アクリル酸メチル共重合体が挙げられる。
【0046】
また、オレフィン系樹脂において、オレフィン系モノマーとコモノマーの比率については、それらの種類に応じて適宜設定すればよいが、例えば、オレフィン系樹脂の総質量当たり、コモノマーの含有量として、通常5〜42質量%、好ましくは10〜35質量%が挙げられる。
【0047】
(好適な樹脂成分)
発泡樹脂層を形成する樹脂成分として、本発明の発泡積層シート(I)に前記引き裂き強度を充足させるという観点、更には前記引き裂き強度と表面強度の双方を充足させるという観点から、好ましくは、前記1)ポリエチレン、及び前記2)オレフィン系樹脂の内、2種以上の組み合わせ;更に好ましくは、ポリエチレン、オレフィン−カルボン酸ビニルエステル共重合体、オレフィン−α,β不飽和カルボン酸エステル共重合体、及び不飽和カルボン酸無水物共重合体の内、2種以上の組み合わせ;特に好ましくはポリエチレン、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、及びα,β不飽和カルボン酸無水物を構成コモノマーとして含むエチレン共重合体の内、2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0048】
前記2種以上の樹脂成分の組み合わせの具体例として、ポリエチレン、及び不飽和カルボン酸無水物共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分(1)と、オレフィン−カルボン酸ビニルエステル共重合体、及びオレフィン−α,β不飽和カルボン酸エステル共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分(2)の組み合わせが挙げられる。より好適な具体例として、ポリエチレン及びエチレン−不飽和カルボン酸エステル−不飽和カルボン酸無水物共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分(1)と、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体、及びエチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分(2)の組み合わせが挙げられる。特に好適な具体例として、ポリエチレン及びエチレン−無水マレイン酸−アクリル酸メチル共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分(1)と、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、及びエチレン−アクリル酸メチル共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分(2)の組み合わせが挙げられる。このように前記樹脂成分(1)と(2)を組み合わせることによって、発泡積層シート(I)は、前記引き裂き強度と表面強度の双方をより有効に充足できることに加え、更に優れた耐汚染性も備えることができる。
【0049】
とりわけ、前記樹脂成分(1)及び(2)の組み合わせの中でも、好適な一態様として、ポリエチレンとオレフィン−カルボン酸ビニルエステル共重合体との組み合わせ;より好ましくはポリエチレンとエチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体との組み合わせ、特に好ましくは線状低密度ポリエチレンと、エチレン−酢酸ビニル共重合体の組み合わせが挙げられる。
【0050】
また前記樹脂成分(1)及び(2)の組み合わせの中でも、他の好適な一態様として、不飽和カルボン酸無水物共重合体と、オレフィン−α,β不飽和カルボン酸エステル共重合体及び/又はオレフィン−カルボン酸ビニル共重合体との組み合わせ;より好ましくはα,β不飽和カルボン酸無水物を構成コモノマーとして含むエチレン共重合体と、エチレン−α,β不飽和カルボン酸エステル共重合体及び/又はエチレン−カルボン酸ビニル共重合体との組み合わせ;特に好ましくはエチレン−無水マレイン酸−アクリル酸メチル共重合体とエチレン−メタクリル酸メチル共重合体の組み合わせ、エチレン−無水マレイン酸−アクリル酸メチル共重合体とエチレン−アクリル酸メチル共重合体の組み合わせ、及びエチレン−無水マレイン酸−アクリル酸メチル共重合体とエチレン酢酸ビニル共重合体との組み合わせが挙げられる。
【0051】
発泡樹脂層の樹脂成分として前記樹脂成分(1)及び(2)の組み合わせを採用する場合、これらの比率については適宜設定すればよいが、前記引き裂き強度及び表面強度の双方を充足させるという観点から、例えば、前記樹脂成分(1)100質量部当たり、前記樹脂成分(2)が100〜1000質量部、好ましくは150〜250質量部が挙げられる。
【0052】
より具体的には、ポリエチレンとオレフィン−カルボン酸ビニルエステル共重合体の組み合わせを採用する場合であれば、ポリエチレン100質量部当たり、オレフィン−カルボン酸ビニルエステル共重合体が100〜1000質量部、好ましくは150〜200質量部が挙げられる。また、不飽和カルボン酸無水物共重合体と、オレフィン−α,β不飽和カルボン酸エステル共重合体の組み合わせを採用する場合であれば、不飽和カルボン酸基無水物共重合体100質量部当たり、エチレン−α,β不飽和カルボン酸エステル共重合体が60〜900質量部、好ましくは100〜250質量部が挙げられる。また、また、不飽和カルボン酸無水物共重合体と、オレフィン−カルボン酸ビニルエステル共重合体の組み合わせを採用する場合であれば、不飽和カルボン酸無水物共重合体100質量部当たり、オレフィン−カルボン酸ビニルエステル共重合体が60〜900質量部、好ましくは100〜250質量部が挙げられる。
【0053】
(樹脂成分の含有量)
発泡樹脂層における樹脂成分の含有量については、使用する樹脂成分の種類や組み合わせを考慮して適宜設定されるが、前記引き裂き強度を充足させるという観点、更には前記引き裂き強度と表面強度の双方を充足させるという観点から、発泡樹脂層の総質量に対して、樹脂成分が総量で通常50〜80質量%、好ましくは55〜70質量%が挙げられる。
【0054】
(発泡剤)
発泡樹脂層に使用される発泡剤としては、特に制限されず、公知の発泡剤から選択することができる。例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系;オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジド系等の有機系熱分解型発泡剤;マイクロカプセル型発泡剤;重曹等の無機系発泡剤等が挙げられる。これらの発泡剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
発泡剤の含有量は、発泡剤の種類、発泡倍率等に応じて適宜設定できる。発泡倍率が7倍以上、好ましくは7〜10倍程度のものであればよく、発泡剤は、例えば、樹脂成分100質量部に対して1〜20質量部程度とすればよい。
【0056】
(他の添加剤)
発泡樹脂層には、発泡剤の発泡効果を向上させるために、必要に応じて発泡助剤が含まれていてもよい。発泡助剤としては、特に制限されないが、例えば、金属酸化物、脂肪酸金属塩等が挙げられる。より具体的には、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウム、オクチル酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等が挙げられる。これらの発泡助剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの発泡助剤の含有量は、発泡助剤の種類、発泡剤の種類や含有量等に応じて適宜設定されるが、例えば、樹脂成分100質量部に対して、0.3〜10質量部程度、好ましくは1〜5質量部程度が挙げられる。
【0057】
また、発泡樹脂層には、難燃性の付与、目透き抑制、表面強度向上等のために、必要に応じて無機充填剤が含まれていてもよい。無機充填剤としては、特に制限されないが、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物等が挙げられる。これらの無機充填剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0058】
また、発泡樹脂層には、必要に応じて顔料が含まれていてもよい。顔料としては、特に制限されず、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等が挙げられる。これらの顔料は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
無機充填剤及び/又は顔料の含有量が増える程、発泡樹脂層が脆くなりやすく、前記引き裂き強度及び表面強度を充足し難くなる傾向があるため、無機充填剤及び/又は顔料の含有量については前記引き裂き強度及び必要に応じて前記表面強度を充足できる範囲で適宜設定される。具体的には、無機充填剤及び/又は顔料の含有量としては、樹脂成分100質量部に対して、これらの総量が0〜80質量部程度、好ましくは10〜70質量部程度が挙げられる。
【0060】
更に、発泡樹脂層には、前記引き裂き強度及び必要に応じて前記表面強度を充足できる限り、必要に応じて、酸化防止剤、架橋剤、架橋助剤、表面処理剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0061】
(発泡樹脂層の架橋)
本発明の発泡積層シート(I)に前記引き裂き強度及び必要に応じて前記表面強度を備えさせるために、発泡樹脂層は、架橋されていることが好ましい。発泡樹脂層を架橋させるには、例えば、発泡前の発泡剤含有樹脂層に対して予め架橋処理を行った後に、当該発泡剤含有樹脂層を発泡させればよい。架橋処理の方法としては、具体的には、電子線架橋、化学架橋が挙げられ、好ましくは電子線架橋が挙げられる。電子線架橋を行う条件としては、具体的には、加速電圧100〜300kV、好ましくは100〜200kVで、照射量を2〜100kGy、好ましくは2.5〜70kGyに設定して、電子線照射処理を行う方法が例示される。また、化学架橋を行う条件としては、具体的には、ジクミルパーオキシド等の有機過酸化物を発泡剤含有樹脂層に含有させ、温度160〜180℃程度、加熱時間5〜10分間で加熱処理を行う方法が例示される。
【0062】
(発泡樹脂層の厚み)
発泡樹脂層の厚みについては、前記引き裂き強度及び必要に応じて前記表面強度を充足できる範囲で適宜設定すればよいが、例えば、300〜700μmが挙げられる。発泡樹脂層の発泡前の厚み(即ち、発泡剤含有樹脂層の厚み)としては、例えば、40〜120μmが挙げられる。
【0063】
(発泡樹脂層の形成方法)
発泡樹脂層は、樹脂成分、発泡剤、及び必要に応じて他の添加剤を含む樹脂組成物を用いて、基繊維質基材の上、非発泡樹脂層Bを設ける場合には非発泡樹脂層Bの上に塗工すればよい。発泡樹脂層の形成方法については、特に制限されないが、好ましくは溶融成型により形成する方法、更に好ましくはTダイ押出機により押出し形成する方法が挙げられる。
【0064】
(2)非発泡樹脂層B(接着樹脂層)
非発泡樹脂層Bは、樹脂層を構成する層として、繊維質基材と発泡樹脂層との接着力を向上させる目的で、必要に応じて、発泡樹脂層の下面(繊維質基材と接触される面)に形成される接着樹脂層である。
【0065】
非発泡樹脂層Bの樹脂成分としては、前記引き裂き強度及び必要に応じて前記表面強度を充足できることを限度として特に制限されず、繊維質基材と発泡樹脂層との接着力を向上させ得る樹脂成分を適宜選択して使用することができる。非発泡樹脂層Bの樹脂成分として、前記引き裂き強度を充足させるという観点、更には前記引き裂き強度と表面強度の双方を充足させるという観点から、好ましくはエチレン−酢酸ビニル共重合体が挙げられる。
【0066】
非発泡樹脂層Bに使用されるエチレン−酢酸ビニル共重合体において、酢酸ビニルの比率については、特に制限されないが、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体の総質量当たり10〜46質量%、好ましくは15〜41質量%が挙げられる。
【0067】
非発泡樹脂層Bの厚さについては、特に制限されないが、例えば3〜50μm程度、好ましくは3〜20μm程度が挙げられる。
【0068】
非発泡樹脂層Bの形成方法については、特に制限されないが、例えば、溶融成型により形成する方法、好ましくはTダイ押出機により押出し形成する方法が挙げられる。特に、溶融樹脂を同時に押出すことにより2層以上の同時製膜が可能なマルチマニホールドタイプのTダイを用いて、発泡樹脂層と非発泡樹脂層Bを同時押出して形成することが望ましい。
【0069】
(3)非発泡樹脂層A
非発泡樹脂層Aは、樹脂層を構成する層として、絵柄模様層を形成する際の絵柄模様を鮮明にしたり発泡樹脂層の耐傷性を向上させたりする目的で、必要に応じて、発泡樹脂層の上面に形成される層である。
【0070】
非発泡樹脂層Aの樹脂成分としては、前記引き裂き強度及び必要に応じて前記表面強度を充足できることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの樹脂成分の中でも、好ましくはポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0071】
ポリオレフィン系樹脂としては、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、アイオノマー等が挙げられる。これらの中でも、前記引き裂き強度を充足させるという観点、更には前記引き裂き強度と表面強度の双方を充足させるという観点から、好ましくはエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体が挙げられる。
【0072】
非発泡樹脂層Aに使用されるエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体において、(メタ)アクリル酸の比率については、特に制限されないが、例えばエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の総質量当たり5〜15質量%、好ましくは11〜15質量%が挙げられる。
【0073】
非発泡樹脂層Aの厚さについては、特に制限されないが、例えば3〜30μm程度、好ましくは3〜15μm程度が挙げられる。
【0074】
非発泡樹脂層Aの形成方法については、特に制限されないが、例えば、溶融成型により形成する方法、好ましくはTダイ押出機により押出し形成する方法が挙げられる。特に、マルチマニホールドタイプのTダイを用いて、発泡樹脂層と非発泡樹脂層Bを同時押出して形成することが望ましい。また、非発泡樹脂層A、発泡樹脂層、及び非発泡樹脂層Bの3つの層を設ける場合には、3層の同時製膜が可能なマルチマニホールドタイプのTダイを用いて、これらの3層を同時押出して形成することが望ましい。
【0075】
(4)絵柄模様層
絵柄模様層は、樹脂層を構成する層として、発泡積層体シート(I)に意匠性を付与する目的で、必要に応じて、発泡樹脂層(又は非発泡樹脂層A)の上面に形成される層である。
【0076】
絵柄模様としては、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。絵柄模様は、発泡積層シートの用途に応じて適宜選択できる。
【0077】
絵柄模様層は、例えば、絵柄模様を印刷することにより形成できる。印刷手法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、着色剤、結着剤樹脂、溶剤(又は分散媒)等を含む印刷インキが使用できる。これらのインキは公知又は市販のものを使用してもよい。
【0078】
着色剤としては、特に制限されないが、例えば、前記の発泡樹脂層で使用されるような顔料を適宜使用することができる。
【0079】
結着剤樹脂としては、基材シートの種類に応じて適宜設定すればよく、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらの結着剤樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0080】
溶剤(又は分散媒)としては、特に制限されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水などが挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0081】
絵柄模様層の厚みは、絵柄模様の種類等に応じて適宜設定されるが、例えば0.1〜10μm程度が挙げられる。
【0082】
(5)表面保護層
表面保護層は、樹脂層を構成する層として、絵柄模様層を設ける場合に、耐汚染性の付与、絵柄模様層の表面に艶調整、絵柄模様層の保護等のために、必要に応じて、前記絵柄模様層の上面に形成される層である。
【0083】
表面保護層の形成に使用される樹脂成分については、熱可塑性樹脂や硬化性樹脂等の公知の樹脂成分の中から、前記引き裂き強度及び必要に応じて前記表面強度を充足できる樹脂成分を適宜選定すればよい。
【0084】
表面保護層の形成に使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール計樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、前記引き裂き強度を効果的に充足させるという観点から、好ましくは、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸メチル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂等のエチレン(メタ)アクリル酸系共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂ケン化物、アイオノマー、エチレン−オレフィン共重合体等のエチレン共重合体等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、表面保護層の形成にエチレン共重合体のような架橋可能な熱可塑性樹脂を使用する場合には、必要に応じて、当該熱可塑性樹脂に架橋処理を行ってもよい。
【0085】
また、表面保護層の形成に使用される硬化性樹脂としては、前記引き裂き強度及び必要に応じて前記表面強度を充足できる限り、その硬化反応のタイプについては、特に制限されず、例えば、常温硬化性樹脂、加熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、1液反応硬化性樹脂、2液反応硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等のいずれであってもよいが、好ましくは1液反応硬化性樹脂が挙げられる。硬化性樹脂として、前記引き裂き強度及び必要に応じて前記表面強度を効果的に充足させるという観点から、好ましくは、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられ、更に好ましくは1液反応硬化性アクリル系樹脂が挙げられる。これらの硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、表面保護層の形成に硬化性樹脂を使用する場合、必要に応じて、硬化反応を進行させるために、架橋剤、重合開始剤、重合促進剤等を用いてもよい。
【0086】
また、表面保護層は、単層からなるものであってもよく、同一の又は異なる2以上の層が積層されているものであってもよい。例えば、最表面に硬化樹脂で形成した層が形成され、その下層に熱可塑性樹脂で形成した層が積層されている2層構造であってもよい。
【0087】
表面保護層の厚みとしては、特に制限されないが、例えば1〜20μm、好ましくは1〜5μmが挙げられる。
【0088】
表面保護層の形成は、使用する樹脂成分の種類に応じた方法を採用すればよい。例えば、熱可塑性樹脂を用いて表面保護層を形成する場合であれば、予め作成された熱可塑性樹脂フィルムを絵柄模様層の表面に貼付することにより行ってもよく、また、絵柄模様層の表面に熱可塑性樹脂を製膜することにより行ってもよい。また、硬化性樹脂を用いて表面保護層を形成する場合であれば、熱硬化性樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を混合した樹脂組成物を、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の方法で発泡樹脂層(或いは非発泡樹脂層A又は絵柄模様層)に塗工した後に、必要に応じて加熱等によって当該樹脂組成物を乾燥、硬化させることによって行われる。
【0089】
(6)凹凸模様
発明の発泡積層シート(I)に、意匠性を付与するために、必要に応じて、表面(繊維質基材とは反対側の表面)にエンボス加工による凹凸模様が施されていてもよい。エンボス加工は、エンボス版の押圧等の公知の手段により行うことができる。凹凸模様としては、特に制限されず、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等が挙げられる。
【0090】
発泡積層シート(I)の製造方法
本発明の発泡積層シート(I)は、前記引き裂き強度及び必要に応じて前記表面強度を充足するように、各層の組成、厚さ、積層構造を適宜調節して製造されるが、その製造手順の例について、以下に説明する。但し、本発明の本発明の発泡積層シート(I)の製造方法は、以下に示す内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下の製造方法の説明において、本発明の発泡積層シート(I)は、構成する各層の形成方法について既に説明している内容については割愛する。
【0091】
まず、繊維質基材上に、少なくとも発泡剤含有樹脂層を含む樹脂層を積層させる。樹脂層として、非発泡樹脂層A及び/又は非発泡樹脂層Bを設ける場合には、非発泡樹脂層A、発泡剤含有樹脂層及び非発泡樹脂層Bを、マルチマニホールドタイプのTダイを用いて同時押出し形成することが望ましい。
【0092】
発泡剤含有樹脂層をTダイ押出機で押出し形成する際のシリンダー温度及びダイス温度については、使用する樹脂成分の種類等に応じて適宜設定すればよいが、一般に100〜140℃程度である。
【0093】
次いで、樹脂層として、必要に応じて絵柄模様層を介して表面保護層を積層させる。表面保護層の形成において、硬化性樹脂を使用する場合には、樹脂の硬化反応のタイプに応じて加熱処理、架橋処理などを行い、硬化性樹脂を硬化させる。また、表面保護層が、エチレン系共重合体等の架橋可能な熱可塑性樹脂を使用する場合にも、必要に応じて、当該熱可塑性樹脂に架橋処理を行ってもよい。
【0094】
斯して、繊維質基材上に樹脂層が積層された非発泡積層シートが調製される。当該樹脂層は、必要に応じて設けられる非発泡樹脂層B/発泡樹脂層/必要に応じて設けられる非発泡樹脂層A/必要に応じて設けられる絵柄模様層/必要に応じて設けられる表面保護層が順に積層された積層構造になる。
【0095】
その後、得られた非発泡積層シートの樹脂層中の発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより本発明の発泡積層シート(I)が製造される。
【0096】
発泡剤含有樹脂層を発泡させる際の加熱条件としては、特に制限されないが、例えば、加熱温度210〜240℃程度、加熱時間20〜80秒程度が挙げられる。
【0097】
発泡剤含有樹脂層の発泡を行う前に、発泡剤含有樹脂層の熔融張力を調整して所望の発泡倍率を得られ易くするために、必要に応じて、発泡剤含有樹脂層に対して架橋処理を行うことができる。前述するように、表面保護層を設け、当該表面保護層に架橋処理を行う場合には、発泡剤含有樹脂層の架橋と表面保護層の架橋を同時に行ってもよい。
【0098】
また、本発明の発泡積層シート(I)は、その表面に凹凸模様を賦型するためのエンボス加工を行ってもよい。エンボス加工は、エンボス版等の公知の手段により実施することができる。具体的には、発泡樹脂層及び発泡樹脂層及び必要に応じて設けられる表面保護層を加熱軟化した状態にした後に、エンボス版を押圧することにより所望のエンボス模様を賦型できる。
【0099】
用途
本発明の発泡積層シート(I)は、被着体を装飾するための化粧シートとして好適に使用される。即ち、本発明の発泡積層シート(I)を被着体に貼付することにより化粧板が提供される。
【0100】
本発明の発泡積層シート(I)の被着体としては、具体的には、内装用下地ボードが挙げられる。内装用下地ボードは、木質基板であってもよく、また非木質基板であってもよい。木質基板としては、例えば、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピー等の各種素材の突板、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木質系の板が挙げられる。また、非木質基板としては、例えば、コンクリート板、石板などの無機質板、プラスチック板、石膏ボード等が挙げられる。これらの基板は、1枚の基板からなるものであっても、また2枚以上の基板が積層されてなるものであってもよい。本発明の発泡積層シート(I)は、壁面又は天井面用の化粧シートとして好適に使用されるので、その被着体として、好ましくは壁面又は天井面用の内装用下地ボードが挙げられる。
【0101】
また、発明の発泡積層シート(I)は、優れた下地ずれ追従性を備えているので、地震による内装用下地ボードの継ぎ目部分のズレに追従する作用が向上しているので、耐震構造物壁装用の化粧シートとして使用することもできる。「耐震構造物」とは、地震に耐え得る強度を備えており、地震による揺れをなくすのではなく、むしろ積極的に揺れて地震振動を吸収するように設計された構造物であり、制振構造物や免震構造物とは区別されるものである。
【0102】
また、発明の発泡積層シート(I)と被着体とを貼り付けるために用いる接着剤としては、でんぷん系、尿素系、酢酸ビニル樹脂系、ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系、イソシアネート系等の接着剤を用いることができ、単独であるいは任意混合した混合型接着剤として用いられる。接着剤には、必要に応じて、タルク、炭酸カルシウム、クレー、チタン白等の無機質粉末、小麦粉、木粉、プラスチック粉、着色剤、防虫剤、防カビ剤等を添加混合して用いることができる。
【0103】
接着剤の塗布は、スプレー、スプレッダー、バーコーター等の塗布装置を用いて行うことができる。一般に、接着剤は固形分を35〜80質量%とし、塗布量50〜300g/m
2の範囲で被着体又は本発明の発泡積層シート(I)の繊維質基材表面に塗布される。
【0104】
本発明の発泡積層シート(I)の被着体への貼着は、前述の通り、通常、化粧シートの裏面に接着剤層を形成し、被着体を貼着するか、被着体の上に接着剤を塗布し、化粧シートを貼着する等の方法によって行われる。化粧シートの貼着には、コールドプレス、ホットプレス、ロールプレス、ラミネーター、ラッピング、縁貼り機、真空プレス等の貼着装置を用いる他、施工職人による貼付け(現場施工)により貼着することができる。
【0105】
本発明の発泡積層シート(I)を被着体に貼付することにより得られた化粧板は、壁材、天井面材等として使用される。
【0106】
2.発泡積層シート(II)
本発明は、更に、繊維質基材上に、少なくとも発泡樹脂脂層を含む樹脂層を積層した発泡積層シートであって、該発泡樹脂層が、少なくともα,β不飽和カルボン酸無水物を構成コモノマーとして含むオレフィン共重合体、及びポリエチレンよりなる群から選択される1種又は2種以上の樹脂成分(1)と、オレフィン−カルボン酸ビニルエステル共重合体、及びオレフィン−α,β不飽和カルボン酸エステル共重合体よりなる群から選択される1種又は2種以上の樹脂成分(2)を含む発泡積層シートを提供する。本明細書において、当該発泡積層シートを「発泡積層シート(II)」と表記することもある。
【0107】
本発明の発泡積層シート(II)における積層構造については、前述する「1.発泡積層シート(I)」の欄に記載の通りである。
【0108】
本発明の発泡積層シート(II)は、樹脂層に含まれる発泡樹脂層において、前記樹脂成分(1)及び(2)を組み合わせて使用する点に特徴があり、このような特定の樹脂成分の組み合わせを用いて発泡樹脂層を形成することにより、優れた下地ずれ追従性及び耐スクラッチ性の双方を兼ね備えることが可能になる。更に、本発明の発泡積層シート(II)は、かかる特定組成の発泡樹脂層を採用することにより、優れた耐汚染性を備えることもできる。
【0109】
本発明の発泡積層シート(II)において、樹脂成分(1)及び(2)として使用される樹脂成分の種類、これらの比率、樹脂成分(1)及び(2)の好適な組み合わせ等については、前述する「1.発泡積層シート(I)」の欄に記載の通りである。また、発泡樹脂層に配合される樹脂成分以外の成分、その含有量、発泡樹脂層の厚さ等についても、前述する「1.発泡積層シート(I)」の欄に記載の通りである。
【0110】
また、本発明の発泡積層シート(II)において、繊維質基材、及び樹脂層として必要に応じて設けられる発泡樹脂層以外の層についても、その組成、厚さ等についても、前述する「1.発泡積層シート(I)」の欄に記載の通りである。
【0111】
また、本発明の発泡積層シート(II)の製造方法、用途等についても、前述する「1.発泡積層シート(I)」の欄に記載の通りである。
【0112】
3.非発泡積層シート(I)
本発明は、更に、繊維質基材上に、樹脂成分及び発泡剤を含む非発泡樹脂層を少なくとも含む樹脂層が積層された非発泡積層シートであって、該非発泡樹脂層を発泡させて発泡積層シートにした場合に、該発泡積層シートがJIS K7128−3に規定されるシートの引裂き強さ試験方法において、引張速度3mm/分、掴み具間距離
80mmでの巾方向の引張強度の第1極大点から第2極大点までの変位が1〜5mmを満たすことを特徴とする非発泡積層シート(非発泡積層シート(I)と表記することもある)を提供する。
当該非発泡積層シート(I)は、前記発泡積層シート(I)の製造原反として使用されるものであり、前記発泡積層シート(I)において、樹脂層中の発泡樹脂層が発泡剤含有樹脂層に代わっていること以外は、層構造、各層の組成等は、前記発泡積層シート(I)の場合と同様である。即ち、当該非発泡積層シート(I)における発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより、前記発泡積層シート(I)が製造される。
【0113】
4.非発泡積層シート(II)
本発明は、更に、繊維質基材上に、樹脂成分及び発泡剤を含む非発泡樹脂層を少なくとも含む樹脂層が積層された非発泡積層シートであって、該樹脂成分が、不飽和カルボン酸無水物共重合体、及びポリエチレンよりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分(1)と、オレフィン−カルボン酸ビニルエステル共重合体、及びオレフィン−α,β不飽和カルボン酸エステル共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分(2)を含む非発泡積層シート(非発泡積層シート(II)と表記することもある)を提供する。
当該非発泡積層シート(II)は、前記発泡積層シート(II)の製造原反として使用されるものであり、前記発泡積層シート(II)において、樹脂層中の発泡樹脂層が発泡剤含有樹脂層に代わっていること以外は、層構造、各層の組成等は、前記発泡積層シート(II)の場合と同様である。即ち、当該非発泡積層シート(II)における発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより、前記発泡積層シート(II)が製造される。
【実施例】
【0114】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0115】
[発泡積層シートの製造]
実施例1−6
3種3層Tダイ押出し機を用いて、非発泡樹脂層A/発泡剤含有樹脂層/非発泡樹脂層Bの順に厚み5μm/65μm/5μmになるように押出量を調整して、3層構造の樹脂シート(樹脂層)を形成した。押出し条件は、シリンダー温度はいずれも120℃とし、またダイス温度もいずれも120℃とした。得られた樹脂シート中の発泡剤含有樹脂層は未発泡の状態を維持していた。得られた樹脂層の両端をスリットして960mm巾にした。なお、非発泡樹脂層A、発泡剤含有樹脂層、及び非発泡樹脂層Bは、それぞれ表1に示す組成の樹脂組成物を用いて形成した。
【0116】
次いで、巾970mmの紙パルプからなる壁紙用紙(「WK-665」、KJ特殊紙製)の紙面を120℃となるように加熱して、前記樹脂シートの非発泡樹脂層Bが壁紙用紙と接するように積層させて、ラミネートロールに通して壁紙用紙と樹脂シートを熱圧着させて積層体を得た。このとき、樹脂シートは壁紙用紙の中央に配置して積層させ、壁紙用紙の両端部の5mmは樹脂シートが積層されていない状態にした。
【0117】
その後、得られた積層体の樹脂シート面に電子線を加速電圧195kV、照射線量30kGyの条件で照射することにより、樹脂シート中の発泡剤含有樹脂層に対して架橋処理を行った。
【0118】
次いで、積層体の表面(非発泡樹脂層A)に対してコロナ放電処理した後、グラビア印刷機により絵柄印刷として水性インキ(「ハイドリック」、大日精化工業製)を用いて布目絵柄を印刷し絵柄模様層(厚さ2μm程度)を形成した。その後、グラビア印刷機により、絵柄模様層上に、水性インキ(ALTOP−402B、大日精化工業製、アクリル系1液硬化型樹脂)を印刷して、表面保護層(厚さ2μm程度)を形成した。
【0119】
次に、得られた積層体をオーブンにて加熱(220℃で35秒)しながら、発泡剤含有樹脂層を発泡させて発泡樹脂層を形成させると共に、表面保護層上に織物調パターンを有する金属ロールを押し付けて型押しすることにより、発泡積層シートを得た。
【0120】
得られた積層シートの厚みは600μm、当該積層シートにおける樹脂層(非発泡樹脂層B、発泡樹脂層、非発泡樹脂層A、絵柄模様層、表面保護層の合計)の単位面積当たりの質量は91.4g/m
2、樹脂層(非発泡樹脂層A、発泡剤含有樹脂層、非発泡樹脂層B、絵柄模様層、表面保護層)の密度は0.18g/cm
3であった。なお、樹脂層の密度は、単位長さ当たりの発泡シート断面積から体積を算出し、樹脂の質量を体積で割ることにより算出した。
【0121】
【表1】
【0122】
比較例1
比較例1では、非発泡樹脂層A、発泡剤含有樹脂層、及び非発泡樹脂層Bを、それぞれ表2に示す組成の樹脂組成物を用いて形成したこと、並びに発泡剤含有樹脂層に対する架橋処理を加速電圧195kV、照射線量60kGyの条件で電子線照射を行ったこと以外は、前記実施例と同条件で発泡積層シートを製造した。
【0123】
比較例2及び3
比較例2及び3では、非発泡樹脂層A、発泡剤含有樹脂層、及び非発泡樹脂層Bを、それぞれ表2に示す組成の樹脂組成物を用いて形成したこと以外は、前記実施例と同条件で発泡積層シートを製造した。
【0124】
【表2】
【0125】
比較例4
塩化ビニル(「PQB83」、新第一塩ビ製)100質量部、可塑剤(「DINP」、シージーエスター製)38質量部、着色剤(「DE−24」、日弘ビックス製)21質量部、発泡剤(「ビニホールAC♯3」、永和化成工業製)3質量部、安定剤(「アデカスタブFL−47」、ADEKA製)3.25質量部、安定剤(「アデカスタブO−111」、ADEKA製)2質量部、希釈剤(「シェルゾールS」、シェルケミカルジャパン製)18.1質量部、及び炭酸カルシウム(「ホワイトンH」、白石工業製)90質量部からなる樹脂組成物のプラスチゾルを作製した。このプラスチゾルをコンマコーターを用いて巾970mmの紙パルプから成る壁紙用紙(「WK―665」、KJ特殊紙製)の紙面に塗工し、150℃の乾燥炉にてセミゲル化させて、壁紙用紙上に発泡剤含有樹脂層を積層した積層体を得た。得られた積層体の発泡剤含有樹脂層の厚みは110μmであった。
【0126】
次いで、得られた樹脂シートの発泡剤含有樹脂層面上に、グラビア印刷機により絵柄印刷として水性インキ(「ハイドリック」、大日精化工業製)を用いて布目絵柄を印刷し絵柄模様層(厚さ2μm程度)を形成した。その後、グラビア印刷機により、絵柄模様層上に、水性インキ(ALTOP−402B、大日精化製、アクリル系1液硬化型樹脂)を印刷して、表面保護層(厚さ2μm程度)を形成した。
【0127】
次に、得られた積層体をオーブンにて加熱(220℃で35秒)しながら、発泡剤含有樹脂層を発泡させて発泡樹脂層を形成させると共に、表面保護層上に織物調パターンを有する金属ロールを押し付けて型押しすることにより、積層シートを得た。得られた積層シートの厚みは650μm、当該積層シートシートにおける樹脂層(発泡樹脂層、絵柄模様層、表面保護層の合計)の単位面積当たりの質量は91.0g/m
2、樹脂層(発泡樹脂層、絵柄模様層、表面保護層)の密度は0.14g/cm
3であった。
【0128】
[発泡積層シートの物性値及び性能の評価]
JIS K7128−3に規定されるシートの引裂き強さ試験
JIS K7128−3に規定されるシートの引裂き強さ試験を行うことにより、前記で得られた各発泡積層シートについて、巾方向の引張強度の第1極大点から第2極大点までの変位を測定した。具体的には、以下の手順で測定を行った。
【0129】
先ず、各発泡積層シートを
図2に示す形状に切り取り、温度23±2℃、相対湿度50±5%で88時間以上保存した。次いで、テンシロン万能材料試験機(オリエンテック製 型番:RTC-1250A)にて、引張速度3mm/分、掴み具間距離
80mmに設定して引裂き強さ試験を行い、引張距離と引張強度の相関関係を測定し、巾方向の引張強度の第1極大点から第2極大点までの変位を求めた。なお、当該引裂き強さ試験は、温度23±2℃、相対湿度50±5%の環境で行った。
【0130】
下地ずれに対する耐破損性
前記で得られた各発泡積層シートについて、下地ずれに対する耐破損性を以下の方法に従って評価した。
【0131】
9.5mm厚の99mm×99mm角の石膏ボード(「タイガーボード」 吉野石膏製)を2枚用意した。2枚の石膏ボードの一辺を隙間無く突き合わせた状態にして、2枚の石膏ボードの全面を覆うように各発泡積層シートをデンプン系接着剤で貼付した。このとき、発泡積層シートの流れ方向(壁紙用紙の巾方向に対して垂直方向)が、2枚の石膏ボードを突き合わせた辺と並行になるように設定した。
【0132】
次いで、室温で乾燥を行い石膏ボードと発泡積層シートを十分に接着させた後に、2枚の石膏ボードを突き合わせた辺に対して垂直方向に、2枚の石膏ボードを引っ張り、2枚の石膏ボードの突き合わせ部分に1.5mm、2.0mm、又は2.5mmの間隙を生じさせた。その際に、発泡積層シートの外観を観察し、以下の判定基準に従って、評価を行った。
<積層シートの外観の判定基準>
○:積層シートの破損は一切認められなかった。
△:積層シートの樹脂表面に部分的にクラックが認められる。
×:2枚の石膏ボードの突き合わせ部分の積層シートが完全破断している。
【0133】
耐スクラッチ性
前記で得られた各発泡積層シートについて、壁紙工業会が規定する表面強化壁紙性能規定に従って試験することにより、耐スクラッチ性を評価した。具体的には、以下の手順で測定を行った。
【0134】
各発泡積層シートを30mm×250mmの形状に切り取り、20±10℃、相対湿度65±20%で24時間以上保存したものを試験片として使用した。耐スクラッチ性は、JIS L 0849に規定されている摩擦試験機II形(「学振型摩擦試験機」、テスター産業製)を用いて行ったが、摩擦子としては
図3に示す爪とホルダーを用いた。摩擦試験機II形の摩擦子は、爪の先端面が試験片台と水平であり、左右に動かないように取り付けた。試験片は、摩擦子の往復方向と平行になるように試験片の繊維質シート面に両面テープを用いて貼り付け、試験片が動かないように試験片台にしっかりと固定した。その後、試験片上に摩擦子を静かに置き、移行距離120mmの間を毎分30回の往復速度で5回往復させた。なお、摩擦子の荷重は2N(200gf)、爪の先端部寸法は4.0mm×2.0mmとし、スタート側:R0.15mm(±0.03mm)及びリターン側:R0.20mm(±0.03mm)とした。また、本試験は、20±10℃、相対湿度65±20%の環境下で実施した。
【0135】
各試験片のタテ方向及びヨコ方向について、前記条件で試験を行った後に、各試験片表面の傷付き程度を目視にて確認し、下記の判定基準に従って耐スクラッチ性の評価を行った。
<耐スクラッチ性の判定基準>
5級:変化なし
4級:表面に少し変化あり
3級:表面が裂けて見える
2級:表面が裂けて繊維質基材が見える(長さ1cm未満)
1級:表面が裂けて繊維質基材が見える(長さ1cm以上)
【0136】
耐汚染性
前記で得られた各発泡積層シートについて、壁紙工業会が規定する表面強化壁紙性能規定に従って試験することにより、耐スクラッチ性を評価した。具体的には、以下の手順で測定を行った。
【0137】
各発泡積層シートに、汚染物(コーヒー、醤油、赤色クレヨン、水性サインペン)をそれぞれ付着させた。24時間後に、各汚染物を拭き取った。なお、コーヒーと醤油は、水を用いて拭き取り、赤色クレヨンと水性サインペンは中性洗剤を用いて拭き取った。次いで、各汚染物を拭き取った後の外観を目視にて観察し、下記の判定基準に従って耐汚染性の評価を行った。
<耐汚染性の判定基準>
5級:汚れが残らない
4級:ほとんど汚れが残らない
3級:やや汚れが残る
2級:かなり汚れが残る
1級:汚れが濃く残る
【0138】
評価結果
得られた結果を表3に示す。実施例1及び4の結果から明らかなように、前記引裂き強さ試験における引張強度の第1極大点から第2極大点までの変位が1〜5mmである場合には、下地ずれ追従性が良好で下地ずれに対する耐破損性が優れており、更には耐スクラッチ性も十分に満足させ得ることが明らかとなった。また、実施例1及び4では、優れた耐スクラッチ性も備えていた。
【0139】
また、実施例1〜6の結果から明らかなように、発泡積層シート中の発泡樹脂層を形成する樹脂成分として、ポリエチレン及び/又は不飽和カルボン酸無水物含有エチレン共重合と、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体及び/又はエチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体を組み合わせて使用することによっても、優れた下地ずれ追従性と耐スクラッチ性を備えさせ得ることが確認された。また、実施例1〜6では、優れた耐汚染性も備えていた。
【0140】
一方、比較例1及び4から明らかなように、前記引裂き強さ試験における引張強度の第1極大点から第2極大点までの変位が1mm未満の発泡積層シートでは、下地ずれ追従性の点で劣っていた。
【0141】
【表3】