(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工場の建屋の外部の荷受場が、その建屋の外の地面よりも高い位置において、その建屋から外へ突出して設けられており、前記荷受場と前記地面との間に前記給電筐体が配置され、前記給電筐体のフォーク通し穴の高さが、前記荷受場と前記地面との間となっていること
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電動フォークリフトの非接触充電システム。
工場の建屋の内部の荷受場が、電動フォークリフトが走行可能な前記建屋内部のフロアよりも高い位置に設けられており、前記荷受場と前記フロアとの間に前記給電筐体が配置され、前記給電筐体のフォーク通し穴の高さが、前記荷受場と前記フロアとの間となっていること
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電動フォークリフトの非接触充電システム。
前記給電筐体のフォーク通し穴に前記電動フォークリフトのフォークを挿入した状態で、前記フォークの前端が上方に持ち上がるように前記フォークをチルトさせることで、前記給電筐体を、前記電動フォークリフトに配設された前記2次側の受電パッド側へと引き寄せることが可能であること
を特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電動フォークリフトの非接触充電システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている非接触充電システムでは、車体本体部の下部下方にコア付き巻線を突設させる。このため、特許文献1に開示されている非接触充電システムを既存の電動フォークリフトに適用する場合、フォークリフトを持ち上げる等して作業スペースを確保する必要があり、2次側のコア付き巻線の取り付け作業が容易ではなかった。更に、コイル状の電線を床面下方に敷設するための工事が必要であり、1次側のコイル状電線の敷設が容易ではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、既存の電動フォークリフトに搭載されているバッテリを非接触で充電する充電システムの構築が容易となる電動フォークリフトの非接触充電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、電動フォークリフトに搭載されているバッテリを充電する充電システムであって、前記電動フォークリフトの外部で交流電源に接続され、給電筐体に配設される1次側の給電コイルと、前記電動フォークリフトの車体本体部の前面下部であって、前記電動フォークリフトの一対のマスト間に配設された2次側の受電パッドと、前記電動フォークリフトに配設され、前記2次側の受電パッドから送られてくる交流電圧を直流電圧に変換する整流器と、を備え、前記給電筐体の側面には、前記一対のマストの前方に配置された前記電動フォークリフトのフォークを挿入することが可能なフォーク通し穴が設けられており、前記一対のマストの長手方向に沿って前記2次側の受電パッドよりも高い位置まで上昇させた前記フォークを、前記電動フォークリフトの外部に配置された前記給電筐体の前記フォーク通し穴に挿入した状態で、前記1次側の給電コイルから、前記電動フォークリフトに配設された前記2次側の受電パッドへ、非接触で電力が供給されて、前記バッテリが充電されることを特徴とするものである。
【0007】
上記構成によれば、1次側の給電コイルを地中に埋設せずに済む。また、フォークリフトの車体本体部の前面下部は、その車体本体部の内部に設けられたシャフトや油圧系統の保守のために、開口している。したがって、その開口を形成している車体本体部のフレームに、2次側の受電パッドを固定するだけで済む。さらに、フォークを保持する部材は、車体本体部の前方に配置された一対のマストのそれぞれの内側面の側で支持され、かつ、その内側面の側で支持されている箇所から車体本体部の前方へ突出している。したがって、フォークが上下動したときに、車体本体部の前面下部の開口を形成するフレームに固定された2次側の受電パッドに干渉する部材は存在しない。したがって、フォークが上下動しても、2次側の受電パッドがダメージを受けるおそれはない。また、車体本体部の前面下部の開口は、フォークが上昇したときに前方に遮蔽物がなくなり、一対のマスト間から接近可能となる。したがって、フォークを上昇させることにより、2次側の受電パッドが一対のマスト間から接近可能となるので、1次側の給電コイルを2次側の受電パッドに近づけて、1次側の給電コイルから2次側の受電パッドへ、非接触で電力を供給することができる。以上のことから、既存の電動フォークリフトに搭載されているバッテリを非接触で充電する充電システムの構築が容易となる。さらに、1次側の給電コイルが配設される給電筐体にはフォークを挿入できるフォーク通し穴が設けられていて、このフォーク通し穴にフォークを挿入した状態で電力の供給が行われるようになっているため、充電を行おうとするときに、2次側の受電パッドが運転席からでは電動フォークリフトの運転者に視認できなかったとしても、電動フォークリフトの外部に配置された給電筐体を目視することで、フォーク通し穴の高さまでフォークを上昇させればよいことが視覚的に認識できるので、作業性が高いシステムとなる。また、給電筐体に対する電動フォークリフトの位置合わせについても、左右方向にはフォーク通し穴の入り口とフォークの前端とが正対する位置とし、奥行き方向にはフォークがフォーク通し穴の中に入った位置とすればよいことがわかり易いため、運転者は容易に位置合わせを行うことができ、この点からも作業性が高いシステムとなる。
【0008】
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明であって、前記2次側の受電パッドが、両端部にそれぞれ磁極領域が設定された平板状の磁性体と、前記磁性体の各磁極領域の周囲にそれぞれ、前記磁性体の端の外方から前記磁性体の本体部の上面に渡って渦状に巻かれたコイルを備え、前記各コイルはそれぞれ、前記磁性体の本体部の上面において平面的に1段に巻かれ、前記磁性体の端部外方において上下に2段以上に巻かれることを特徴とするものである。
【0009】
例えば、国際公開第2010/090539号には、磁気透過性の磁心の両端部にそれぞれ磁極領域を設定し、各磁極領域の周りにそれぞれ、平面的且つ螺旋状にコイルを巻いて構成された受電パッドが開示されている。しかし、この受電パッドは、各磁極領域の周囲にそれぞれ、平面的且つ螺旋状にコイルを巻いて構成されているため、パッドの平面的な広がりが大きく、パッドの外形寸法が大きくなる。さらに、磁性体の上面においてコイルを横一列に巻くと、コイルの一方の端部は磁性体の裏側から引き出すことが必要となり、パッドの製作が困難となる。これに対して、上記請求項2に記載の発明の構成によれば、各コイルを、磁性体の端部外方で上下に2段以上に巻くことにより、コイルを横一列に巻いたパッドと比較して、平面的な寸法を短くできる。また磁性体の端部外方においてコイルが磁性体に近づくことになるので、磁性体の起磁力が強くなり、性能が向上する。さらに、磁性体の端の外方をコイルが通過することにより、コイルの一方の端部を磁性体の裏側から引き出す必要がなくなり、パッドの製作が容易となる。
【0010】
また請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明であって、前記磁性体に設定された磁極領域に、前記磁性体に接する第2の磁性体を設けたことを特徴とするものである。この構成によれば、磁極領域に第2の磁性体を設けたことにより、さらに磁性体の起磁力が強くなり、性能が向上する。
【0011】
また請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明であって、工場の建屋の外部の荷受場が、その建屋の外の地面よりも高い位置において、その建屋から外へ突出して設けられており、前記荷受場と前記地面との間に前記給電筐体が配置され、前記給電筐体のフォーク通し穴の高さが、前記荷受場と前記地面との間となっていることを特徴とするものである。
【0012】
工場の建屋には、その建屋からトラックへ荷物を移したり、逆に、トラックから建屋へ荷物を移すための荷受場が、トラックの荷台の床面と同じ高さで、建屋から外へ突出して設けられたりしている場合があり、この場合、その荷受場の下方はデッドスペースとなっている。これに対して、上記請求項4に記載の発明の構成によれば、そのデッドスペースを有効利用することが可能となる。電動フォークリフトのバッテリを充電する際には、荷受場の下方に配置された1次側の給電コイルから発生する有意な磁界の範囲内に2次側の受電パッドが入るように、フォークを受電パッドよりも高く上昇させた状態で電動フォークリフトの車体本体部を荷受場に接近させればよい。このとき、どのように位置合わせすれば1次側の給電コイルから発生する有意な磁界の範囲内に2次側の受電パッドが入るようになるか、については、フォークを給電筐体のフォーク通し穴に挿入できるように位置合わせすればよい。そして、フォーク通し穴の高さが荷受場と地面の間なので、充電を行う際にフォーク通し穴に挿入されたフォークは荷受場の下方に位置することとなるため、荷物の確認や運搬のために荷受場周りで作業者が歩き回っていたとしても、その作業者がフォークに躓いてしまうおそれがなく、安全性が高い。
【0013】
また請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明であって、工場の建屋の内部の荷受場が、電動フォークリフトが走行可能な前記建屋内部のフロアよりも高い位置に設けられており、前記荷受場と前記フロアとの間に前記給電筐体が配置され、前記給電筐体のフォーク通し穴の高さが、前記荷受場と前記フロアとの間となっていることを特徴とするものである。
【0014】
工場の建屋には、フォークリフトが走行するフロアとは別に、そのフロアよりも高いフロアが設けられている場合がある。この場合、高さが異なるフロア間で荷物の受け渡しをするための荷受場が、高い方のフロアから突出して設けられている場合があり、この場合、その荷受場の下方はデッドスペースとなっている。これに対して、上記請求項5に記載の発明の構成によれば、そのデッドスペースを有効利用することが可能となる。電動フォークリフトのバッテリを充電する際には、荷受場の下方に配置された1次側の給電コイルから発生する有意な磁界の範囲内に2次側の受電パッドが入るように、フォークを受電パッドよりも高く上昇させた状態で電動フォークリフトの車体本体部を荷受場に接近させればよい。このとき、どのように位置合わせすれば1次側の給電コイルから発生する有意な磁界の範囲内に2次側の受電パッドが入るようになるか、については、フォークを給電筐体のフォーク通し穴に挿入できるように位置合わせすればよい。そして、フォーク通し穴の高さが荷受場とフロアの間なので、充電を行う際にフォーク通し穴に挿入されたフォークは荷受場の下方に位置することとなるため、荷物の確認や運搬のために荷受場周りで作業者が歩き回っていたとしても、その作業者がフォークに躓いてしまうおそれがなく、高い安全性が得られる。
【0015】
また請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発明であって、前記給電筐体のフォーク通し穴の奥行きが、電動フォークリフトのフォークの長さ以上であることを特徴とする。この構成によれば、フォークを根元まで(マスト側の端部まで)フォーク通し穴に挿入しても、フォークの先端が給電筐体から露出しなくなるため、作業者が歩き回る設備内に給電筐体が配置されていたとしても、作業者が電動フォークリフトと反対側の給電筐体の側面を通過するときにフォークに接触するおそれがなく、高い安全性が得られる。また、給電筐体が奥行き方向に長いものとなるので、重心安定性が高くなり、フォークの先端を給電筐体の側面にぶつけてしまっても給電筐体が倒れるおそれがない。
【0016】
また請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の発明であって、前記給電筐体のフォーク通し穴に前記電動フォークリフトのフォークを挿入した状態で、前記フォークの前端が上方に持ち上がるように前記フォークをチルトさせることで、前記給電筐体を、前記電動フォークリフトに配設された前記2次側の受電パッド側へと引き寄せることが可能であることを特徴とする。この構成によれば、フォーク通し穴へフォークを十分に奥まで挿入しないまま電動フォークリフトが停車してしまったとしても、電動フォークリフトを再度走行させることなく、フォークのチルトを行うだけで給電筐体を2次側の受電パッドに近づけることが可能となるため、奥行き方向への位置合わせをさほど正確に行う必要がなくなり、作業が行い易くなる。また、フォークをフォーク通し穴へ挿入しようとした際にフォークの位置合わせに失敗して、フォーク先端を給電筐体の壁面にぶつけて給電筐体を本来の位置から奥行き方向へずらしてしまったとしても、その後で改めてフォークをフォーク通し穴へ挿入してからフォークをチルトさせることで、給電筐体を手前側(車体本体部側)へ引き寄せて、本来の位置へと容易に戻すことができる。
【0017】
また請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の発明であって、前記給電筐体内に直流電源が備えられており、前記1次側の給電コイルが接続される交流電源が、前記給電筐体内に備えられた直流電源から供給される直流電圧を交流電圧に変換して、変換した交流電圧を前記1次側の給電コイルへと供給するものであることを特徴とする。この構成によれば、商用電源などのシステム外部の電源から電力の供給を受けることなく、給電筐体単体で1次側の給電コイルへの電力供給ひいては電動フォークリフトのバッテリへの充電ができるため、野外など商用電源のコンセントが用意されていない場所においても、給電筐体を配置しておけばそこで充電を行えるようになり、電動フォークリフトの非接触充電システムの柔軟な運用が可能となる。
【0018】
また請求項9に記載の発明は、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の発明であって、前記給電筐体に、前記給電筐体の配置を変更自在とするための車輪が取り付けられていることを特徴とする。この構成によれば、給電筐体が動かし易くなるため、電動フォークリフトの走行状況などに応じて給電筐体の配置を容易に変更することができ、電動フォークリフトの非接触充電システムの柔軟な運用が可能となる。
【0019】
また請求項10に記載の発明は、リーチ式の電動フォークリフトに搭載されているバッテリを充電する充電システムであって、前記リーチ式の電動フォークリフトの外部で交流電源に接続され、給電筐体に配設される1次側の給電コイルと、前記リーチ式の電動フォークリフトの車体本体部から前方に突出された左右一対のアウトリガー上の前記車体本体部側に配設された2次側の受電パッドと、前記リーチ式の電動フォークリフトに配設され、前記2次側の受電パッドから送られてくる交流電圧を直流電圧に変換する整流器と、を備え、前記給電筐体の側面には、前記リーチ式電動フォークリフトの一対のマストの前方に配置された左右一対のフォークを挿入することが可能なフォーク通し穴が設けられており、前記リーチ式の電動フォークリフトの外部に配置された前記給電筐体の前記フォーク通し穴に前記フォークを挿入した上で、前記フォークを前記アウトリガー上面より高く上昇させて、前記フォークと共に前記給電筐体を前記車体本体部側へと引き寄せた状態で、前記1次側の給電コイルから、前記リーチ式の電動フォークリフトに配設された前記2次側の受電パッドへ、非接触で電力が供給されて、前記バッテリが充電されることを特徴とする。
【0020】
上記構成によれば、リーチ式の電動フォークリフトに関しても、1次側の給電コイルを地中に埋設せずに済み、2次側の受電パッドは、車体本体部の前方に突出するアウトリガー上に配設するだけで済む。さらに、給電筐体のフォーク通し穴にフォークを通して、給電筐体を車体本体部側へ引き寄せた状態で充電が行えるので、作業者が充電のために行うべき操作は、荷物の揚げ下ろし作業を行う際に行う操作と同様の操作でよく、充電のために新しい操作を習得しなくてよい。また、充電の際にフォークが車体本体部側へ引き寄せられた状態となるので、充電中には、リーチ式の電動フォークリフトの前方にフォークが突出しないこととなり、リーチ式の電動フォークリフトの運転者以外の作業者がフォークに躓いてしまうおそれがなくなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、1次側の給電コイルを地中に埋設せずに済むようにし、また、フォークリフトの車体本体部の前面下部に開口を形成するフレームや、リーチ式フォークリフトの車体本体部前方に突出するアウトリガーに、2次側の受電パッドを固定するだけで済むようにしたので、既存の電動フォークリフトに搭載されているバッテリを非接触で充電する充電システムの構築が容易となる、という効果を有している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。但し、同じ構成要素には同じ符号を付与することによって重複する説明を省略する。また、図面は、理解し易くするために、それぞれの構成要素を模式的に図示している。なお、以下の実施の形態で示す各構成要素の形状や数、寸法の数値等は一例であって特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、以下の実施の形態で示す構成は一例であって特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で、適宜、変更することが可能である。
【0024】
図1(a)は本発明の実施の形態における非接触充電システムが採用された電動フォークリフトおよび給電箱体を示す斜視図、
図2(a),
図2(b)は本発明の実施の形態における非接触充電システムのバッテリ充電時の状態を示す側面図である。以下では、既存のカウンタバランス式電動フォークリフト(バッテリ車)に搭載されているバッテリ(例えば、鉛蓄電池など)を充電する場合について説明する。なお、リーチ式の電動フォークリフト(バッテリ車)に対しても、以下で説明する実施の形態と同様に本発明を適用することができる。
【0025】
図1(a)に示すように、電動フォークリフト11の車体本体部の前面下部であって、前記電動フォークリフト11の一対のマスト12間に、2次側の受電パッド13が配設される。また、図示しないが、電動フォークリフト11には、2次側の受電パッド13から送られてくる電圧を直流電圧に変換する整流器を少なくとも含む充電器が配設される。一方、電動フォークリフト11の外部には、交流電源の一例である高周波電源装置(図示せず)に接続される1次側の給電コイル(図示せず)が配設された給電箱体(給電筐体の一例)14が設置される。
【0026】
図1(a)に示すように、給電箱体14の内部には非接触給電用パッドとして1次側の送電パッド50が備え付けられていて、この1次側の送電パッド50に1次側の給電コイルが設けられる。また、給電箱体14の側面(前面)には、フォーク通し穴14aが設けられている。このフォーク通し穴14aは略水平方向に延びており、反対側の側面(背面)まで繋がっている。そして、電動フォークリフト11の一対のマスト12の前方に配置された二本のフォーク15をそれぞれ挿入することが可能なように、フォーク通し穴14aは左右に二つ設けられており、各フォーク通し穴14aの大きさはフォーク15の断面積(長さ方向と垂直な面における断面積)以上であり、二つのフォーク通し穴14a同士の間隔は二つのフォーク15同士の間隔と同程度になっている。
図1(a)において、フォーク通し穴14aは給電箱体14の上方部に設けられている。そして、1次側の送電パッド50は二つのフォーク通し穴14aより下方で、左右方向については二つのフォーク通し穴14aの間で、奥行き方向(フォーク通し穴14aの延びる方向)についてはフォーク通し穴14aの開口部があるのと同じ側面(前面)寄りに配置されている。
【0027】
給電箱体14に配設された1次側の給電コイルを有する1次側の送電パッド50は、給電箱体14の外部の空間に磁束経路を提供する。例えば、平板状のフェライトの両端部にそれぞれ磁極領域を設定し、各磁極領域の周りにそれぞれ、平面的且つ螺旋状に給電コイルを巻いたものとしてもよい。この場合には、特定の方向にアーチ状の磁束経路が提供される。
【0028】
また、1次側の給電コイルによって有意な磁束経路が発生する領域は有限である。そこで、電動フォークリフト11のバッテリを充電する際には、車体本体部の前面下部に配設された2次側の受電パッド13が、給電箱体14の内部に配設された1次側の給電コイルから発生している有意な磁界の範囲(磁束経路が形成されている領域)内に入るようにする。これにより、電動フォークリフト11の外部に配置された1次側の給電コイル(図示せず)から、電動フォークリフト11に配設された2次側の受電パッド13へ、非接触で電力が供給されて、電動フォークリフト11に搭載されているバッテリ(図示せず)が充電される。
【0029】
具体的には、まず、一対のマスト12の前方に配置された電動フォークリフト11のフォーク15を、一対のマスト12の長手方向に沿って上昇させて、フォーク15が2次側の受電パッド13よりも高い位置となると、2次側の受電パッド13の前方を遮蔽していたフォーク15の支持部材等も上方に移動して、2次側の受電パッド13前方を遮蔽するものがなくなるため、一対のマスト12間から2次側の受電パッド13へと接近することが可能な状態となる。ここで、電動フォークリフト11の外部に配置されている給電箱体14の上方部側面に設けられたフォーク通し穴14aの高さは、一対のマスト12間から2次側の受電パッド13へ接近可能な状態におけるフォーク15の高さと同程度となっており、その高さまで上昇したフォーク15はフォーク通し穴14aへ挿入することが可能となる。そして、
図2(a)に示すように、フォーク15をフォーク通し穴14aへ挿入すると、車体本体部の前面下部に配設されフォーク15の下方で接近可能となっている2次側の受電パッド13(
図2(a)には図示せず)と、左右方向にはフォーク通し穴14a同士の間で高さ方向にはフォーク通し穴14aより下方の1次側の送電パッド50とが対向することとなる。このようにしてフォーク15をフォーク通し穴14aに挿入した状態で、送電パッド50に設けられた1次側の給電コイル(図示せず)から、電動フォークリフト11に配設された2次側の受電パッド13へ、非接触で電力が供給されて、電動フォークリフト11に搭載されているバッテリ(図示せず)が充電される。
【0030】
1次側の給電コイルが設けられた給電箱体14は、例えば
図2(a)に示すように、工場の建屋16の外部に設けられた荷受場17と、その荷受場17の下方の地面18との間に配置してもよい。
図2(a)に示すように、工場の建屋16には、その建屋16からトラックへ荷物を移したり、逆に、トラックから建屋16へ荷物を移すための荷受場17が、トラックの荷台の床面と同じ高さで、建屋16から外へ突出して設けられたりしている場合がある。つまり、工場の建屋16の外部の荷受場17が、その建屋16の外の地面18よりも高い位置において、その建屋16から外へ突出して設けられている場合がある。この場合、その荷受場17の下方はデッドスペースとなっている。これに対して、この実施の形態によれば、そのデッドスペースを有効利用することが可能となる。
【0031】
電動フォークリフト11のバッテリ(図示せず)を充電する際には、荷受場17の下方に配置された給電箱体14の内部に設けられた1次側の給電コイルを有する1次側の送電パッド50から発生する有意な磁界の範囲内に2次側の受電パッド13が入るように、フォーク15を給電箱体14のフォーク通し穴14a程度まで上昇させた状態で電動フォークリフト11の車体本体部を荷受場17に接近させて、電動フォークリフト11を停止させればよい。例えば、荷受場17の床面に停止位置の目印となるラインを描いておき、そのラインの下方に給電箱体14を置いておくことにより、運転者は、2次側の受電パッド13を給電箱体14に容易に接近させることができる。ここで、給電箱体14とそのフォーク通し穴14aが運転者から目視できるようであれば、運転者はフォーク15をどの程度上昇させればよいのかを視覚的に認識し易く、また、左右方向の位置合わせについても、フォーク通し穴14aにフォーク15が挿入できるように位置を合わせればよいことが認識できるので、停止位置の目印となるラインとフォーク通し穴14aの目視を併用することで位置合わせを正確に行うことができる。
【0032】
なお、フォーク15を荷受場17よりやや低めの高さまで上昇させた状態で電動フォークリフト11の車体本体部を荷受場17に接近させて、電動フォークリフト11を停止させた後に、給電箱体14を移動させてきて、そのフォーク通し穴14aにフォーク15を通して給電箱体14を2次側の受電パッド13の前方に配置してもよい。この場合、給電箱体14は人手で持ち運び可能な大きさにするのが好適である。また、給電箱体14が大きくとも、例えば
図1(c)に示すように、給電箱体14の底面に車輪14bが取り付けられている(図では4つの車輪14bが底面の四隅にそれぞれ取り付けられている)と、給電箱体の配置が変更自在となり、容易に給電箱体14を移動させてくることができる。
【0033】
ここで、
図2(a)に示す荷受場17の端部には、緩衝部材として、例えば弾性体19が設けられている。したがって、電動フォークリフト11が荷受場17に衝突しても、電動フォークリフト11に大きな損傷が発生することはない。また、荷受場17の下方に給電箱体14が配置されていることにより、フォーク15が通されるフォーク通し穴14aの高さは荷受場17と地面18との間となるので、給電箱体14を用いて電動フォークリフト11のバッテリを充電する間、フォーク15は荷受場17の下方に位置することとなる。そのため、荷物の確認や運搬のために荷受場17周りで作業者が歩き回っていたとしても、その作業者がフォーク15に躓いてしまうおそれはない。
【0034】
ところで、フォーク15とフォーク通し穴14aとがうまく位置合わせされていない状態で電動フォークリフト11の車体本体部を荷受場17に接近させると、フォーク15の先端が給電箱体14の壁面に衝突することがある。しかし、フォーク通し穴14aの奥行きをフォーク15の長さ以上にしておくと、給電箱体14の奥行き方向の寸法もフォーク15の長さ以上となって、水平方向に大きな、重心安定性の高いものとなるので、フォーク15の先端が衝突しても、給電箱体14は奥行き方向へ押しやられて少し位置がずれるだけで、倒れてしまうことはない。そして、給電箱体14の位置が少し奥行き方向へずれた場合には、フォーク15をフォーク通し穴14aに挿入し直した上で、マスト12に連結されているチルトシリンダ12aを短縮させてマスト12を手前側(車体本体側)にチルト(傾斜)させると、
図2(b)に示すように、フォーク15の先端側(前端側)が上方へ持ち上がるようにフォーク15が傾斜するので、給電箱体14はそのフォーク通し穴14aの上側の面とフォーク15の上面とを擦れ合わせながらフォーク15の根元側(車体本体側)まで滑り降りるようにして引き寄せられる。これにより、給電箱体14を元の位置に戻すことができる。こうした給電箱体14の引き寄せは給電箱体14の位置がずれていない場合にも用いることができ、例えばフォーク15を途中までしかフォーク通し穴14aに通さないまま電動フォークリフト11を停車(停止)させてしまった場合には、電動フォークリフト11を再度走行させなくとも、フォーク15をチルトさせて給電箱体14を車体本体側へ引き寄せれば、1次側の送電パッド50と2次側の受電パッド13が接近して、1次側の給電コイルの有意な磁界の範囲に2次側の受電パッド13が入るようにできる。なお、フォーク15を逆方向に(先端が下方に下がるように)チルトさせれば、給電箱体14を奥側(車体本体から離れる方向)へ移動させることもできるので、給電箱体14を手前側まで移動させ過ぎた場合にも、容易に奥側へと戻すことができる。なお、こうしたフォーク15のチルトによる手前側または奥側への給電箱体14の移動が円滑に行われるように、フォーク通し穴14a内面の摩擦係数や給電箱体14の重量を大きくし過ぎないことが望ましい。
【0035】
図3(a)は電動フォークリフト11の車体本体部の前面下部の拡大図である。
図3(a)に示すように、電動フォークリフトの車体本体部の前面下部には、その車体本体部の内部に設けられたシャフトや油圧系統の保守のために、開口部11aが形成されている。したがって、2次側の受電パッド13は、その開口部11aを形成している車体本体部のフレーム11bに固定するだけでよい。2次側の受電パッド13の固定には、例えば電動フォークリフトの車体本体部のフレーム11bを把持する支持部材20を用いることができる。
図3(a)に示す支持部材20は、ボルトによって締め付け力(把持の圧力)が調整可能となっている。このように、フレーム11bを把持する支持部材20を用いることにより、2次側の受電パッド13の固定のためにフレーム11bに穴等を形成する加工を行わずに済むので、2次側の受電パッド13の固定が容易となる。なお、電動フォークリフトの車体本体部の前面下部の開口11aは、保守のために設けられている。したがって、2次側の受電パッド13は取り付け自在に固定される必要がある。さらに、フォーク15を保持する部材は、車体本体部の前方に配置された一対のマスト12のそれぞれの内側面の側で支持され、かつ、その内側面の側で支持されている箇所から車体本体部の前方へ突出している。したがって、フォーク15が上下動したときに、車体本体部の前面下部の開口部11aを形成するフレーム11bに固定された2次側の受電パッド13に干渉する部材は存在しない。したがって、フォーク15が上下動しても、2次側の受電パッド13がダメージを受けるおそれはない。また、車体本体部の前面下部の開口部11aは、フォーク15が上昇したときに一対のマスト12間の前方が遮蔽されない状態となる。したがって、フォーク15を上昇させることにより、2次側の受電パッド13が一対のマスト12間から接近可能となるので、
図3(b)に示すように、フォーク15を給電箱体14のフォーク通し穴14aの高さまで上昇させてフォーク通し穴14aへと挿入することで、1次側の給電コイルが設けられた給電箱体14が2次側の受電パッド13に近づき、1次側の給電コイルから2次側の受電パッド13へ、非接触で電力を供給することができる。
【0036】
なお、この実施の形態では、工場の建屋の外部で、電動フォークリフト11のバッテリを充電する場合について説明したが、工場の建屋の内部に荷受場が設けられている場合には、建屋の内部で電動フォークリフト11のバッテリを充電してもよい。工場の建屋には、フォークリフトが走行するフロアとは別に、そのフロアよりも高いフロアが設けられている場合がある。この場合、高さが異なるフロア間で荷物の受け渡しをするための荷受場が、高い方のフロアから突出して設けられている場合がある。つまり、工場の建屋の内部の荷受場が、フォークリフトが走行可能な建屋内部のフロアよりも高い位置に設けられている場合があり、この場合、その荷受場の下方はデッドスペースとなっている。そこで、工場の建屋の外部で電動フォークリフト11のバッテリを充電する場合と同様に、1次側の給電コイルが設けられた給電箱体14を、工場の建屋の内部に設けられた荷受場と、その荷受場の下方のフロアとの間に配置してもよい。
【0037】
また、この実施の形態では、荷受場の下方のデッドスペースを活用するために、荷受場の下方に、1次側の給電コイル(図示せず)が設けられた給電箱体14を配置する例について説明したが、1次側の給電コイルを配置する位置は、荷受場の下方に限定されるものではない。
【0038】
続いて、2次側の受電パッド13の構成の一例について説明する。2次側の受電パッド13には、
図4および
図5に示す非接触給電用パッド30が使用されてもよい。
図4は本発明の実施の形態における非接触給電用パッドの平面図、
図5は
図4のA−A断面図である。
図4および
図5に示すように、非接触給電用パッド30は、両端部にそれぞれ磁極領域31、32が設定された細長い板状(スリップ状)の第1フェライト(磁性体の一例)33と、これら磁極領域31、32にそれぞれ、第1フェライト33の両端に合わせて、且つ第1フェライト33の上面に接して設けられた板状の第2フェライト(第2の磁性体の一例)34と、第1フェライト33の各磁極領域31、32の周囲にそれぞれ、第1フェライト33の端の外方から第1フェライト33の本体部の上面に渡って渦状(螺旋状)に巻かれたコイル35、36と、これら第1フェライト33、第2フェライト34、およびコイル35、36を支持する、プラスチック等の磁気非透磁性の部材からなる薄い皿状の背面プレート37を備えており、背面プレート37内には、第2フェライト34の前面(上面)を除いて樹脂38が充填されて、背面プレート37に、第1フェライト33、第2フェライト34、およびコイル35、36が固定されている。各コイル35、36の両端部はそれぞれ、背面プレート37の外方に引き出されており、端子39が取り付けられている。
【0039】
第1フェライト33の長軸方向における第2フェライト34の寸法(第2フェライト34の幅方向の寸法)は、第1フェライト33の長軸寸法の1/4の寸法以下に設定され、第2フェライト34の高さ寸法(厚さ)は、コイル35、36を形成する導線35a、36aの太さに合わせて設定されている。また、背面プレート37の奥行きは、その背面プレート37の奥行き方向(第1フェライト33の幅方向または第2フェライト34の長軸方向)におけるコイル35または36の寸法に略設定され、横幅は、その横幅方向(第1フェライト33の長軸方向または第2フェライト34の幅方向)におけるコイル35とコイル36の寸法を加算した寸法以上に設定されている。例えば、第1フェライト33の幅方向におけるコイル35または36の寸法D1が100mmの場合、背面プレート37の奥行きは、略100mmに設定され、第1フェライト33の長軸方向におけるコイル35とコイル36の寸法D2が共に150mmの場合、背面プレート37の横幅は、300mm以上に設定される。背面プレート37の横幅は、コイル35とコイル36との間の間隙の寸法Sに応じて異なる。
【0040】
また各コイル35、36はそれぞれ、
図5に示すように、第1フェライト33の本体部の上面において平面的に1段に巻かれ、第1フェライト33の端の外方において、上下に2段に巻かれている。なお、巻線数は8本としている。
【0041】
具体的には、各コイル35、36は、次のように巻かれている。
(1)まず各コイル35、36をそれぞれ、磁極領域31、32に内側から外側へ、第1フェライト33の側面の外方(第1フェライト33の上面下方における第1フェライト33の端の外方)から第1フェライト33の本体部の上面に渡って巻く。No.1〜No.4の導線35a、36aに相当する。
(2)各コイル35、36が所定回数巻かれると、No.5の導線35a、36aがそれぞれ、第1フェライト33の本体部の上面から第2フェライト34の側面に巻かれる。
(3)続いて各コイル35、36をそれぞれ、第2フェライト34の側面の外方(第1フェライト33の上面の上方における第1フェライト33の端の外方)から第1フェライト33の本体部の上面に渡って、平面的に内側から外側へ巻く。No.5〜No.8の導線35a、36aに相当する。
【0042】
これにより、第1フェライト33および第2フェライト34の端の外方をコイル35、36が通過するので、各コイル35、36の一方の端部を第1フェライト33の裏側から引き出す必要がなくなり、各コイル35、36の両端部を背面プレート37から引き出し易くなる。よって、非接触給電用パッド30の製作が容易となる。また、第2フェライト34の下方に位置する第1フェライト33の端部外方をコイル35、36が通過した後に、第1フェライト33の上方に位置する第2フェライト34の端部外方をコイル35、36が通過するので、非接触給電用パッド30の製作が容易となる。
【0043】
この非接触給電用パッド30を、前記した2次側の受電パッド13に使用する場合、例えば
図6に示すように、電動フォークリフト11に備え付けられた2次側の非接触給電用パッド30(受電パッド13)は、同じく電動フォークリフト11に備え付けた充電器40に接続される。この充電器40が、電動フォークリフト11に搭載されているバッテリ41を充電する。
【0044】
具体的には、並列接続された2つのコイル35、36の両端に、これらのコイル35、36とともに高周波電圧の周波数で共振する共振コンデンサ42を接続し、この共振コンデンサ42の両端に充電器40を接続して、バッテリ41を充電する回路を構成してもよい。充電器40は少なくとも整流器を含み、誘導電圧(高周波電圧)から直流電圧(例えば、DC300V)を生成し、バッテリ41を充電する。
【0045】
既存の電動フォークリフト11は、プラグが人手によって差し込まれるコネクタを装備しており、そのコネクタが、電動フォークリフト11内部の電源系統を介してバッテリ41に接続している。また、既存の電動フォークリフト11は、充電器を内部に備えており、電動フォークリフト11のコネクタには、商用電源に繋がるケーブルの先端に設けられているプラグが差し込まれる。充電器は少なくとも整流器を含み、商用電源から送られた交流電圧(例えば、AC200V)を直流電圧(例えば、DC300V)に変換する。この直流電圧によって、バッテリ41が充電される。そこで、本実施の形態では、電動フォークリフト11の内部の電源系統にインターフェース回路を組み込み、そのインターフェース回路を充電器40に接続する構成としている。充電器40は少なくとも整流器を含み、交流電圧を直流電圧に変換する。充電器40は、整流器以外に、例えばフィルタや、DC−DCコンバータ等を含むことができる。
【0046】
この構成によれば、1次側の給電コイルによって有意な磁束経路が発生している領域内に2次側の非接触給電用パッド30(受電パッド13)が配置されたとき、その2次側の非接触給電用パッド30の2つのコイル35、36に誘導電圧(高周波電圧)が誘起され、その誘導電圧が充電器40によって直流電圧(例えば、DC300V)に変換され、その直流電圧が、インターフェース回路を介して電動フォークリフト11の電源系統に供給され、電動フォークリフト11のバッテリ41が充電される。
【0047】
なお、
図6には、2つのコイル35、36のそれぞれの両端に、1つの共振コンデンサ42が共通に並列接続された回路構成を示しているが、コイル35、36に対して共振コンデンサ42を直列に接続して直列共振回路を構成してもよい。
【0048】
また、
図6には、2つのコイル35、36を並列に接続した回路構成を示しているが、受電パッド13として2次側で使用される非接触給電用パッド30において、2つのコイル35、36は直列に接続されてもよい。
【0049】
以上のように本実施の形態によれば、1次側の給電コイルを地中に埋設せずに済む。また、電動フォークリフト11の車体本体部の前面下部には、その車体本体部の内部に設けられたシャフトや油圧系統の保守のために、開口部11aが形成されている。したがって、その開口部11aを形成している車体本体部のフレーム11bに、2次側の受電パッド12を固定するだけで済む。さらに、フォーク15を保持する部材は、車体本体部の前方に配置された一対のマスト12のそれぞれの内側面の側で支持され、かつ、その内側面の側で支持されている箇所から車体本体部の前方へ突出している。したがって、フォーク15が上下動したときに、車体本体部の前面下部の開口部11aを形成するフレーム11bに固定された2次側の受電パッド13に干渉する部材は存在しない。したがって、フォーク15が上下動しても、2次側の受電パッド13がダメージを受けるおそれはない。また、車体本体部の前面下部の開口部11aは、フォーク15が上昇したときに一対のマスト12間で前方が遮蔽されない状態となる。したがって、フォーク15を上昇させることにより、2次側の受電パッド13が一対のマスト12間から接近可能となるので、1次側の給電コイルが設けられた給電箱体14を2次側の受電パッド13に近づけて、1次側の給電コイルから2次側の受電パッド13へ、非接触で電力を供給することができる。以上のことから、既存の電動フォークリフト11に搭載されているバッテリを非接触で充電する充電システムの構築が容易となる。
【0050】
さらに、本実施の形態によれば、1次側の給電コイルが配設される給電箱体14にはフォーク15を挿入できるフォーク通し穴14aが設けられていて、このフォーク通し穴14aにフォーク15を挿入した状態で電力の供給が行われるようになっているため、充電を行おうとするときに、2次側の受電パッド13が運転席からでは電動フォークリフト11の運転者に視認できなかったとしても、電動フォークリフト11の外部に配置された給電箱体14を目視できる場合には、フォーク通し穴14aの高さまでフォーク15を上昇させればよいことが視覚的に認識できるので、作業性が高くなる。また、給電箱体14に対する電動フォークリフト11の位置合わせについても、左右方向にはフォーク通し穴14aの入り口とフォーク15の前端とが正対する位置とし、奥行き方向にはフォーク15がフォーク通し穴14aの中に入った位置とすればよいことがわかり易いため、運転者は容易に位置合わせを行うことができ、この点からも作業性が高くなる。
【0051】
また本実施の形態によれば、各コイル35、36がそれぞれ第1フェライト33の端部外方で上下2段に巻かれるので、コイルを横一列の巻いたパッドと比較して、パッドの平面的な寸法(パッドの外形寸法)を短くできる。また、非接触給電用パッド30は、可搬であって通常3次元というよりも2次元的に配設できる。またフェライト33、34の端部外方においてコイル35、36がフェライト33、34に近づくことになり、フェライト33、34の起磁力が強くなり、性能を向上できる。さらに、フェライト33、34の端の外方をコイル35、36が通過することにより、各コイル35、36の一方の端部を下方のフェライト33の裏側から引き出す必要がなくなり、パッドの製作が容易となる。
【0052】
また本実施の形態によれば、第2フェライト34の下方に位置する第1フェライト33の端部外方をコイル35、36が通過した後に、第1フェライト33の上方に位置する第2フェライト34の端部外方をコイル35、36が通過するので、パッドの製作が容易となる。
【0053】
また本実施の形態によれば、各磁極領域31、32に、第1フェライト33に接する第2フェライト34を設けたので、コイル35、36を巻き易くなり、作業性を向上でき、パッドの製作が容易となり、さらにフェライト33、34の起磁力が強くなり、性能を向上できる。
【0054】
また本実施の形態によれば、第1フェライト33の長軸方向における各磁極領域31、32の寸法を、第1フェライト33の長軸寸法の1/4以下としたので、磁極領域31、32を除いた第1フェライト33の上面の寸法として、第1フェライト33の長軸寸法の1/2が確保され、各コイル35、36を第1フェライト33の本体部の上面に渡って巻くスペースを確保できる。
【0055】
なお、本実施の形態では、第1フェライト33の裏面側に設けた背面プレート37を、プラスチック等の磁気非透磁性の部材から形成しているが、アルミニウム製の部材としてもよい。アルミニウム製の背面プレートは、第1フェライト33に欠陥や不具合があった場合に、小規模な漏洩磁束を防止できる。
【0056】
また本実施の形態では、各コイル35、36の巻線数を8本としているが、8本に限ることはない。また各コイル35、36を第1フェライト33の端部外方で2段としているが、さらに多くの段数、3段、4段とすることも可能である。但し、非接触給電用パッド30の厚さを薄くするには2段が好ましい。
【0057】
また本実施の形態では、各磁極領域31、32に第2フェライト34を固定しているが、第2フェライト34が無くても、非接触給電用パッド30としての機能を果たすことができる。
【0058】
また本実施の形態では、コイル35、36を2本の導線によって形成しているが、コイル35、36を直列接続する場合には、1本の導線によりコイル35、36を形成してもよい。
【0059】
また本実施の形態では、給電箱体14の内部に設ける給電コイルの一例として、非接触給電用パッドである送電パッド50に設けられたものを例示したが、必ずしも非接触給電用パッドを用いる必要はなく、例えば給電箱体14の内部においてコの字形のコアに巻き付けられた給電コイルを用いてもよい。また、送電パッド50として、
図4および
図5を用いて説明した非接触給電用パッド30を用いてもよい。1次側で使用されるこうした非接触給電用パッドは、パッドの前面の前方の空間に、アーチ状の磁束経路を提供する。よって、1次側の非接触給電用パッドは、パッドの前面が電動フォークリフト11の車体本体部の前面下部に対向するように配置される。また、この1次側の非接触給電用パッドが有意の水平磁束成分を提供できるパッドの前面からの距離(給電範囲)は、有限である。
【0060】
1次側で使用される非接触給電用パッド(送電パッド50)として
図4および
図5を用いて説明した非接触給電用パッド30が使用される場合、コイル(給電コイル)35とコイル(給電コイル)36との間の間隙の寸法Sは、コイル35とコイル36の巻き数が一定の下で、有意の水平磁束成分を提供できる非接触給電用パッド30の前面からの距離(給電範囲)を決める因子の一つであり、その給電範囲は、寸法Sが長くなるほど、大きくなる。
【0061】
また、給電箱体14の内部に、
図4および
図5に示す非接触給電用パッド30を設ける場合、例えば
図7(a)に示すように、非接触給電用パッド30は高周波電源装置43に接続される。具体的には、給電箱体14の内部に設けられた1次側の非接触給電用パッド30は、例えば
図7(a)に示すように、商用電源44(例えば、AC200V)に接続する高周波電源装置43から2つのコイル(給電コイル)35、36に高周波電圧が印加される。これにより
図8に示すように、磁束が、一方の磁極領域31または32(一方の第2フェライト34)から第1フェライト33の内部を通って他方の磁極領域32または31(他方の第2フェライト34)から出て、空気中を通って一方の磁極領域31または32に到る磁束経路45が形成され、すなわち非接触給電用パッド30の前面の前方にアーチ状の磁束経路45が形成され、パッド30の前面の前方に有意の水平の磁束成分が提供される。なお、パッド30の裏面側には本質的に磁束経路は形成されない。したがって、電動フォークリフト11に設けた2次側の受電パッド13が、アーチ状の磁束経路45内に配置されると、1次側の非接触給電用パッド30に対して上下方向にずれても、また横方向にずれても、受電パッド13の内部に設けられた2つのコイルに誘導電圧(高周波電圧)が誘起され、充電器40によりバッテリ41が充電される。
【0062】
この構成によれば、1次側の非接触給電用パッドの前面の前方に形成されているアーチ状の磁束経路内に2次側の受電パッド13が配置されたとき、その2次側の受電パッド13の内部に設けられた2つのコイルに誘導電圧(高周波電圧)が誘起され、その誘導電圧が充電器40によって直流電圧(例えば、DC300V)に変換され、その直流電圧が、インターフェース回路を介して電動フォークリフト11の電源系統に供給され、電動フォークリフト11のバッテリ41が充電される。
【0063】
なお、
図7(a)には、2つのコイル(給電コイル)35、36が高周波電源装置43に直接接続された回路構成を示しているが、その2つのコイル35、36と高周波電源装置43との間に、コイル35、36とともに高周波電圧の周波数で共振する共振コンデンサを接続してもよい。この場合、コイル35、36に対して共振コンデンサを並列に接続して並列共振回路を構成してもよいし、直列に接続して直列共振回路を構成してもよい。
【0064】
また、
図7(a)には、2つのコイル(給電コイル)35、36を直列に接続した回路構成を示しているが、1次側で使用される非接触給電用パッド30において、2つのコイル35、36は並列に接続されてもよい。
【0065】
また、
図7(a)には、交流電源として、商用電源44に接続する高周波電源装置43を用いた構成を示しているが、商用電源44に代えて、
図7(b)に示すように、蓄電池や太陽光発電パネルなどの、直流電圧を供給する直流電源47を用いることもでき、この直流電源47から供給される直流電圧を、高周波電源装置43が有する直流−交流変換機能(DC−ACコンバータ)により交流電圧に変換し、変換した交流電圧を1次側の非接触給電用パッド30(に含まれる給電コイル)に供給するように構成したものを交流電源としてもよい。この構成において、直流電源47を給電箱体14内に備えるようにしておくと、給電箱体14を外部の電源と接続する必要がなくなる。すなわち、
図1(a),
図2(a),
図2(b)に示されているような、商用電源に接続するための電源ケーブル46が必要なくなり、
図1(b)に示すように、電源ケーブル46を除外した給電箱体14を構成することができる。こうした給電箱体14は外部の商用電源から電力の供給を受けることなく使用できるため、配置の自由度が高くなる。例えば野外など、商用電源のコンセントが用意されていない場所でも、この給電箱体14を配置しておけば、そこで電動フォークリフト11のバッテリの充電を行うことができる。また、
図1(c)に示している、給電箱体14の底面に車輪14bを取り付けた構成に、電源ケーブル46を除外した構成を組み合わせると、車輪14bによって移動が容易となっている給電箱体14の移動可能範囲が、電源ケーブル46の長さに制限されなくなるので、給電箱体14を配置できる場所がより広がることとなり、電動フォークリフト11の非接触充電システムをより柔軟に運用することができる。
【0066】
また、
図1には、本発明によるバッテリの充電を行う対象として、カウンターウェイト式の電動フォークリフト11を示しているが、本発明はリーチ式の電動フォークリフトにも適用することができる。
図9に本発明の適用対象となるリーチ式電動フォークリフト61の一例を示す。このリーチ式電動フォークリフト61は、その車体本体部から前方に突出された左右一対のアウトリガー63を有し、このアウトリガー63の長手方向に沿って左右一対のマスト62を前後に移動させることで、マスト62前方に配置されたフォーク65を、そのフォーク65が支持している荷物と共にアウトリガー63の範囲内で前後へ移動させることが可能となっている。
【0067】
こうしたリーチ式電動フォークリフト61に本発明を適用する場合、カウンターウェイト式の電動フォークリフト11に対して用いられる給電箱体14(
図1)よりも高さ寸法が小さく構成された給電パレット64を給電筐体として用いるとよい。
給電パレット64の側面には(前面から後面にかけて)、給電箱体14と同様に、フォーク65を通す(挿入する)ことのできるフォーク通し穴64aが設けられている。このフォーク通し穴64aを設ける位置については、給電パレット64が地面または床面に載置されている場合に、リーチ式電動フォークリフト61のフォーク65を最下段まで下降した状態で挿入できる高さとするとよい。
そして、給電パレット64の高さ寸法については、フォーク通し穴64aにフォーク65を通した状態でフォーク65を上昇させ、フォーク65をアウトリガー63の上面より少し高い位置(
図9に示すフォーク65の高さ程度)まで上昇させたときに給電パレット64の底面高さがアウトリガー63の上面と一致する程度の寸法とするとよい。具体的には、荷物の揚げ下ろしに使用する荷役パレット(平パレット)と同程度の高さ寸法にするとよい。
また、
図1の給電箱体14においては1次側の送電パッド50が二つのフォーク通し穴14aの間で少し下方に配設されるのに対して、
図9の給電パレット64に配設される、1次側の送電パッド70は、二つのフォーク通し穴64aのどちらか(
図9ではリーチ式電動フォークリフト61から見て右側)よりも外方側で、フォーク通し穴64aと同程度の高さに、フォーク通し穴64aの開口部と同じ側面(前面)寄りに配設される。この1次側の送電パッド70は、カウンターウェイト式の電動フォークリフト11(
図1)における1次側の送電パッド50と同様、商用電源など外部の交流電源に接続される1次側の給電コイルを有する。
一方、
図9に示すリーチ式電動フォークリフト61のアウトリガー63のどちらか(
図9では車体本体部から見て右側)の上には、その車体本体部側の位置(
図9では車体本体部との間に充電器67を挟む位置)に、2次側の受電パッド66が配設される。
【0068】
以上のようなリーチ式電動フォークリフト61へ給電パレット64を用いて充電する際には、まずフォーク65を下げて、フォーク通し穴64aにフォーク65を挿入してから、フォーク65をアウトリガー63上面より高く上昇させる。そうすると、フォーク通し穴64aの内面を介してフォーク65に支持されている給電パレット64は、その下面がアウトリガー63より上にくる位置まで上昇する。この状態でマスト62を車体本体部側へと移動させることにより、
図10(a),
図10(b)に示すように、フォーク65と共に給電パレット64を車体本体部側へと引き寄せる。
給電パレット64において1次側の送電パッド70が配設される位置と、リーチ式電動フォークリフト61において2次側の受電パッド66が配設される位置とは、
図10(a),
図10(b)に示すように、給電パレット64が車体本体部側へと引き寄せられたときに、互いに対向することとなる位置とされている。そのため、給電パレット64が車体本体部側へと引き寄せられたとき、1次側の送電パッド70が有する給電コイル(図示せず)から発生する有意な磁界の範囲内に2次側の受電パッド66が入ることとなるので、2次側の受電パッド66およびこれと接続されている充電器67を介して、リーチ式電動フォークリフト61に搭載されているバッテリ(図示せず)への充電が行われる。
以上のようにして、フォーク65をフォーク通し穴64aに挿入し、フォーク65と共に給電パレット64を車体本体部側へと引き寄せた状態で、送電パッド70に設けられた1次側の給電コイルから、リーチ式電動フォークリフト61に配設された2次側の受電パッド63へ、非接触で電力が供給されて、(充電器67による整流などを経て)リーチ式電動フォークリフト61に搭載されているバッテリが充電される。
【0069】
リーチ式電動フォークリフト61に関する以上の実施の形態によれば、カウンターウェイト式の電動フォークリフト11に関する実施の形態と同じく、1次側の給電コイルを地中に埋設せずに済む。また、2次側の受電パッドは、車体本体部の前方に突出するアウトリガー63上に配設するだけで済む。そのため、既存のリーチ式電動フォークリフト61に搭載されているバッテリを非接触で充電する充電システムの構築が容易となる。さらに、給電パレット64のフォーク通し穴64aにフォーク65を通して、給電パレット64を車体本体部側へ引き寄せた状態で充電が行えるので、作業者が充電のために行うべき操作は、荷物の揚げ下ろし作業を行う際に行う操作と同様の操作でよく、充電のために新しい操作を習得しなくてよい。また、充電の際にフォーク65が車体本体部側へ引き寄せられた状態となるので、
図10(a),
図10(b)に示すように、充電中には、フォーク65がリーチ式電動フォークリフト61の前方に突出したりはしないこととなり、リーチ式電動フォークリフト61の運転者以外の作業者がフォーク55に躓いてしまうおそれがなくなる。