【実施例1】
【0013】
始めに、実施例1のスライドレール10の構成について、
図1〜
図7を用いて説明する。本実施例のスライドレール10は、
図1に示すように、自動車の左座席として構成されたシート1とフロアFとの間に左右一対で設けられており、シート1をフロアFに対して前後方向に位置調整できるようにする構成となっている。ここで、上記シート1は、着座乗員の背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、を備えて構成されている。シートバック2は、その左右両サイドの下端部が、シートクッション3の左右両サイドの後端部に連結されて支持された状態とされている。また、シートクッション3は、その底面部が、上述した左右一対のスライドレール10を介して、フロアF上に前後スライド可能な状態に連結されて支持された状態とされている。
【0014】
上述した各スライドレール10は、これらの間に配設された電動モータMを駆動させたり駆動を止めたりすることにより、シート1をフロアFに対して前後方向にスライドさせたりスライドさせた位置に止めたりするようになっている。以下、上述した各スライドレール10の具体的な構成について
図2〜
図7を用いて詳しく説明していく。
図2に示すように、各スライドレール10は、ロアレール11と、アッパレール12と、複数の鋼球を備えたベアリング13と、送りねじ機構20と、から構成されている。ここで、ロアレール11が本発明の「他方のレール」に相当し、アッパレール12が本発明の「一方のレール」に相当する。
【0015】
ロアレール11は、前後方向に長尺な1枚の鋼板材が短手方向に所々に折り曲げられて形成されたものであり、フロアF上にボルト締結されて一体的に固定された状態として設けられている。上記ロアレール11は、その横断面形状が長手方向に略一様となるレール形状に形成されている。具体的には、
図6に示すように、ロアレール11は、フロアF上にシート上方側に面を向けて設置される底面部11Aと、底面部11Aの左右両側部からシート上方側に延びて互いに内向する側に逆U字状に曲げ返された左右一対のロア側ひれ部11B,11Cと、を有する横断面形状に形成されている。
【0016】
アッパレール12は、
図2に示すように、上述したロアレール11と同様に、前後方向に長尺な1枚の鋼板材が短手方向に所々に折り曲げられて形成されたものである。上述したアッパレール12は、上述したロアレール11の長手方向のどちらか一方側の開口端部からロアレール11内に差し込まれることにより、ロアレール11に対して長手方向にスライド可能な状態に組み付けられるようになっている。上述したアッパレール12は、
図6に示すように、上述したロアレール11の左右のロア側ひれ部11B,11Cの間の隙間11Fを通って高さ方向に形状が延びる左右一対の縦面部12Aと、これら縦面部12Aの上端部間に架け渡される形に形成された天板部12Bと、各縦面部12Aの下端部から互いに相反する外向きにU字状に反り上がるように曲げ返された左右一対のアッパ側ひれ部12C,12Dと、を有する横断面形状に形成されている。
【0017】
上述したアッパレール12は、上述したロアレール11に対し、そのU字状に曲げ返された左右のアッパ側ひれ部12C,12Dが、ロアレール11の逆U字状に曲げ返された左右のロア側ひれ部11B,11C内にそれぞれ掛かり合うように軸方向に差し込まれて組み付けられている。このように差し込まれることにより、アッパレール12は、ロアレール11に対して、上述した左右のアッパ側ひれ部12C,12Dとロア側ひれ部11B,11Cとの引掛り構造により、ロアレール11の底面部11Aによってシート下方側から支持されると共に、シート上方側に抜け止め(剥離防止)された状態に組み付けられた状態とされている。
【0018】
そして、上述したアッパレール12の左右のアッパ側ひれ部12C,12Dの両外側の側部と、ロアレール11の左右のロア側ひれ部11B,11Cの両外側の内面部と、の間には、それぞれ、転動体となる複数の鋼球を備えたベアリング13が、前後2箇所ずつに計4個介在して設けられた状態とされている。各ベアリング13は、それぞれ、左右のアッパ側ひれ部12C,12Dの外側の下角部と左右のロア側ひれ部11B,11Cの外側の下角部との間、及び、左右のアッパ側ひれ部12C,12Dの外側の端部と左右のロア側ひれ部11B,11Cの外側の上角部との間に、それぞれ、鋼球を介在させた状態として設けられている。これらベアリング13の配設により、アッパレール12は、ロアレール11に対して、上下左右等の各横断面方向に大きくガタ付くことなく、前後方向にスムーズにスライドすることができるように支えられた状態とされている。
【0019】
図2に示すように、送りねじ機構20は、丸棒状の送りねじ21と、送りねじ21に電動モータMから出力された駆動力を伝達するギヤユニット22と、送りねじ21に螺合された金属製の送りナット23と、から構成されている。
【0020】
上述した送りねじ21は、アッパレール12のスライド方向に沿って軸方向が延びるように向けられた状態として、その前部と後部とが、それぞれ軸受け具21Aとエンドキャップ21Bとによって、アッパレール12の天板部12Bの底部箇所に軸回転可能に支持された状態に組み付けられた状態とされている。詳しくは、上述した軸受け具21Aは、上述した送りねじ21を前端側から通して軸支する軸受け21A1と、後述するギヤボックス22Cをアッパレール12の天板部12Bに取り付けるL字ブラケット21A2と、から構成されている。
【0021】
軸受け21A1は、その上面部にシート上方側に突出して設けられたねじ軸部21A1aが、L字ブラケット21A2の底面部21A2aとアッパレール12の天板部12Bとにシート下方側から貫通するように挿通されて、アッパレール12のシート上方側に突出した先の端部がナット21A1bによって螺合締結されて固定されることにより、アッパレール12の天板部12Bに一体的に結合されて設けられた状態とされている(
図7参照)。
【0022】
L字ブラケット21A2は、シート下方側に面を向ける底面部21A2aと、底面部21A2aの前縁部からシート上方側に折れ曲がって前方側に面を向ける形で延びる前面部21A2bと、を有するL字板形状に形成されている。上記L字ブラケット21A2は、その前面部21A2bに、後述するギヤユニット22のギヤボックス22Cがシート前方側からあてがえられて、これらの間にボルト軸21A2cがシート前方側から通されてギヤボックス22Cと共締めされることにより、ギヤボックス22Cと一体的に結合された状態とされている。そして、L字ブラケット21A2は、上述したように、その底面部21A2aが軸受け21A1とアッパレール12の天板部12Bとの間に挟まれた状態に締結されることにより、ギヤユニット22のギヤボックス22Cをアッパレール12の天板部12Bに一体的に取り付けた状態に保持するようになっている(
図7参照)。
【0023】
エンドキャップ21Bは、上述したアッパレール12の後端部に嵌め込まれて装着されている。このエンドキャップ21Bは、上述したアッパレール12の後端部への装着に併せて、その中央部に凹み形成された軸受け溝21B1内に送りねじ21の後端部を差し込むことにより、同後端部を軸受け溝21B1内で軸回転可能に支持した状態としてアッパレール12の後端部に装着された状態とされている(
図7参照)。
【0024】
ギヤユニット22は、ウォーム22Aと、ウォームホイール22Bと、ギヤボックス22Cと、から構成されている。ウォーム22とウォームホイール22Bは、ギヤボックス22Cにより、互いに直交する向きで噛合するように組み付けられて保持された状態とされている。上述したウォーム22Aには、電動モータMに直結されたコネクティングロッドMrの端部が差し込まれて動力伝達可能な状態に連結されている。上述したウォーム22Aは、スライドレール10のスライド方向とは直角な図示左右方向(シート幅方向)に軸方向が向けられた状態として設けられている。ウォームホイール22Bは、上述したウォーム22Aの下部に噛合した状態に組み付けられており、スライドレール10のスライド方向(送りねじ21の軸方向)に軸方向が向けられた状態とされている。上述したウォームホイール22Bは、前述した送りねじ21の前端部が差し込まれて一体的に軸連結された状態とされており、上述した電動モータMの駆動によってウォーム22Aを介して駆動操作されることにより、送りねじ21を軸回転させるようになっている。
【0025】
図3に示すように、送りナット23は、四角容器型のゴムブッシュ25を介して略ハット型形状のホルダ24内に組み付けられた状態とされており、上記ホルダ24がロアレール11の底面部11A(
図4参照)上にボルト締結されて固定されることにより、上記ホルダ24を介してロアレール11の底面部11A上に支持された状態として設けられている。
【0026】
上述したホルダ24は、一枚の鋼板材が側面視で略ハット型の形状となるように折り曲げられて形成されている。具体的には、ホルダ24は、シート下方側に面を向ける前後側の各座面部24Aと、各座面部24Aの後側或いは前側の縁部からシート上方側に折れ曲がって延びる前後側の各起立面部24Bと、各起立面部24Bの上縁部間を繋ぐ天板面部24Cと、各座面部24Aの前側或いは後側の縁部からシート上方側に折れ曲がって延びる前後側の各ガイド壁部24Dと、各ガイド壁部24Dの上縁部から後側或いは前側に折れ曲がって延びる各ガイドひれ部24Eと、を有する略ハット型形状に形成されている。
【0027】
上述した各座面部24Aと各ガイドひれ部24Eとは、互いに高さ方向に対面する平行な面形状に形成されている。また、各起立面部24Bと各ガイド壁部24Dとも、互いに前後方向に対面する平行な面形状に形成されている。上記ホルダ24は、上述した各座面部24Aがロアレール11の底面部11A上にあてがえられた状態で、ロアレール11の底面部11Aに貫通形成された2箇所の通し孔11A1内に下方側からそれぞれ締結ボルト24Fが差し込まれて各座面部24Aに締結されることにより、ロアレール11の底面部11A上に一体的に結合された状態とされている(
図7参照)。
【0028】
上述した送りナット23は、上述した四角容器型のゴムブッシュ25内にシート下方側の開口から押し込まれることにより、その四角形状の外周部がゴムブッシュ25の内周面と合致した状態に組み付けられた状態とされている。そして、上記送りナット23は、上述したゴムブッシュ25が上述したホルダ24の各起立面部24Bと天板面部24Cとによって囲まれた空間内部に押し込まれることにより、その前後側の各面と上側の面がそれぞれホルダ24の各起立面部24Bと天板面部24Cとにあてがわれた状態としてホルダ24に組み付けられた状態とされている。上述したゴムブッシュ25は、上述した内接している送りナット23と外接しているホルダ24とにそれぞれ加硫接着されて一体的に結合された状態とされている。
【0029】
上記組み付けにより、送りナット23に軸方向に貫通して形成された雌ねじ孔23Aと、ゴムブッシュ25の前後側の壁部に形成された丸孔状の各通し孔25Aと、ホルダ24の前後側の起立面部24Bに形成された丸孔状の各通し孔24B1と、が互いに軸方向に一直線上に貫通する形に設けられた状態とされている。上記ホルダ24の各起立面部24Bに形成された各通し孔24B1の孔径は、送りナット23の雌ねじ孔23Aの孔径よりも大きくなっており、送りねじ21の回転駆動時に生じる送りナット23の軸ズレをゴムブッシュ25の弾性変形により吸収することができるようになっている。
【0030】
また、
図2〜
図3に示すように、上述したホルダ24には、その前後2箇所の部位に、ホルダ24を上述したロアレール11の底面部11A上に締結ボルト24Fによって締結する際に、ホルダ24のロアレール11に対する取り付け位置を幅方向に位置決めする樹脂製の位置決め部材26が設けられている。これら位置決め部材26は、上記ホルダ24の前後側の各起立面部24Bと各座面部24Aと各ガイド壁部24Dと各ガイドひれ部24Eとによって囲まれた領域内にそれぞれ左右両側から差し込まれて設けられている。上記各位置決め部材26は、上記ホルダ24の各面部によって、前後方向や高さ方向にガタ付かないようにそれぞれ挟み込まれた状態として、幅方向にのみスライド可能となるようにガイドされて設けられた状態とされている。
【0031】
上述したホルダ24は、
図4に示すように、上述した各座面部24Aの中央部が、それぞれバーリング加工によって上方側に円筒状に張り出すフランジ部24A1を有した形に形成されており、各円筒内の孔が、それぞれねじ切りされて、各締結ボルト24Fを下方側から螺合させることができる雌ねじ孔24A2として形成されている。上述したホルダ24の前後2箇所に差し込まれて設けられた左右一対の各位置決め部材26は、それぞれ、上述した各雌ねじ孔24A2が形成された各座面部24Aの幅方向の中央部にて、互いに幅方向に突き当てられた状態として設けられている。
【0032】
ここで、
図3に示すように、上述した各位置決め部材26は、それぞれ、クランク状に折り曲げられた樹脂板として形成されている。これら位置決め部材26には、それぞれ、互いの突き当てられる側(幅方向の内側)の縁部の隅部に、互いに突き当てられる方向に部分的に突出した突起片26Aが形成されている。これら突起片26Aの先端面には、それぞれ、粘着剤が塗布されており、これら突起片26Aが互いに幅方向に突き当てられることにより、互いにくっついて一体的とされた状態に保持される構成となっている。また、上述した各突起片26Aが形成された領域を除く、各位置決め部材26の互いに突き当てられる側(幅方向の内側)の縁部面は、図示下方側に面を向けるように湾曲した形に面取りされた傾斜面26Bとなって形成されている(
図4参照)。
【0033】
上述した左右一対の各位置決め部材26は、
図4に示すように、それぞれ、上述したホルダ24の前後2箇所にそれぞれ差し込まれた状態で、ホルダ24がロアレール11の底面部11A上にセットされることにより、ロアレール11の左右両側のロア側ひれ部11B,11Cの立壁面がそれぞれ両外側に位置する状態に組み付けられた状態となる。これにより、左右一対の各位置決め部材26は、ロアレール11の左右両側のロア側ひれ部11B,11Cの立壁面によって挟まれた領域内でしか幅方向にスライドすることができないように組み付けられた状態とされている。これにより、左右一対の各位置決め部材26は、上述したホルダ24の各雌ねじ孔24A2内に締結ボルト24Fの軸部が螺合される前は、上述した各傾斜面26Bによって形作られる山状の面形状が各雌ねじ孔24A2の直上部領域にかかる位置に保持された状態とされている。
【0034】
上述した左右一対の各位置決め部材26は、
図5に示すように、上述したホルダ24の各座面部24Aの雌ねじ孔24A2内に締結ボルト24Fの軸部が下方側から差し込まれて螺合されて、各締結ボルト24Fの軸の先端部が各雌ねじ孔24A2を突き出て各傾斜面26Bに押し当てられることにより、各突起片26A同士の粘着が外されて、それぞれが互いに幅方向の相反する外側に向かってスライドし、ロアレール11の左右両側のロア側ひれ部11B,11Cの立壁面に押し付けられた状態となる。これにより、上記ホルダ24が、ロアレール11に対して幅方向の中央位置に寄せられるように両側から押圧力を受けて位置決めされた状態となり、送りねじ21を軸ズレのない正しい位置で螺合させることのできる中央位置に固定された状態となる。
【0035】
すなわち、上述した各締結ボルト24Fの軸部を通すためにロアレール11の底面部11Aに形成される各通し孔11A1は、通し位置のズレを吸収するために各締結ボルト24Fの軸部の外径よりも大きく形成されなければならないため、従来は、この寸法差によって各締結ボルト24Fの締結位置にズレが生じてしまうという問題があった。しかし、上記各位置決め部材26の設定により、上記締結位置のズレを解消して、ホルダ24をロアレール11の底面部11A上の適切な位置に締結することができる。
【0036】
ここで、上述した各位置決め部材26は、各締結ボルト24Fがそれらの頭部をロアレール11の底面部11Aに当接させる位置まで螺合されていくため、ロアレール11の左右両側のロア側ひれ部11B,11Cの立壁面に押し付けられた後も、更に押圧が強められる方向に力を受け続けるが、それぞれが樹脂製となっているため、それらの変形により、各ロア側ひれ部11B,11Cの立壁面に押し付けられた後の余分な押し付け力を吸収することができるようになっている。
【0037】
このように、本実施例のスライドレール10は、ホルダ24が取り付けられるロアレール11の底面部11Aに、締結ボルト24Fの軸径よりも大きな通し孔11A1が形成されていても、位置決め部材26により、締結ボルト24Fをロアレール11に対して幅方向に位置決めした状態に組み付けることができる。したがって、上記締結ボルト24Fに締結されるホルダ24も、ロアレール11に対して幅方向に位置決めされることとなるため、このホルダ24によって支えられる送りナット23のロアレール11に対する組み付け位置のズレをなくして、送りねじ21と送りナット23との間に軸ズレを生じさせにくくすることができる。したがって、送りねじ21の軸ズレによって生じる駆動時の脈動音や異音の発生を適切に抑えることができる。
【0038】
また、位置決め部材26が締結ボルト24Fを間に挟む幅方向の両サイドに一対で設けられることにより、ホルダ24をロアレール11に対して幅方向により適切に位置決めするこができる。また、位置決め部材26がホルダ24に形成されたガイド構造により幅方向にスライド可能な状態にガイドされて設けられる構成となっていることにより、位置決め部材26をホルダ24に組み付けて設けることができるため、位置決め部材26をホルダ24とロアレール11との間に簡単に組み付けることができる。