(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両を駆動するモータ(50)と、前記モータへ電力を供給する蓄電池(30)と、前記蓄電池に供給する電力を発電するジェネレータ(20、22、24)と、前記ジェネレータを駆動するエンジン(10)とを備えた前記車両に搭載され、前記ジェネレータにより発電させるために前記エンジンの作動を制御する発電制御装置(110、110A)であって、
前記車両が走行開始から走行終了までに走行する時間である走行時間と、前記走行時間内の各時刻における走行速度と、道路勾配を含む走行経路とを含む走行状況を予測する予測部(S10、113)と、
その予測部が予測した走行状況に基づいて、前記走行時間を前記車両が走行するのに必要な発電量またはその関係値である必要発電量関係値を算出する必要発電量算出部(S50)と、
前記予測部が予測した前記走行時間と、前記必要発電量算出部が算出した前記必要発電量関係値から、前記必要発電量関係値を前記走行時間で出力できる発電パターンを実施発電パターンに設定する発電パターン設定部(S60、116)と、
前記発電パターン設定部が設定した実施発電パターンにしたがって前記車両の走行中に前記エンジンを駆動させて前記ジェネレータに発電させる発電制御部(S70、112)とを備えることを特徴とする発電制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に機械系の構成図を示すように、実施形態1の車両は、エンジン10、ジェネレータ20、蓄電池(以下、単に電池)30、インバータ40、モータ50、トランスミッション60、車軸70を備えている。
【0016】
エンジン10は内燃機関であり、ガソリン、軽油等の液体燃料により駆動する。実施形態1の車両は、シリーズ方式のハイブリッド車両であり、エンジン10はジェネレータ20に接続されているが、車軸70には接続されていない。このエンジン10は、ジェネレータ20を駆動するためのものであり、車両駆動用ではないことから、エンジンの動力のみで走行する車両に搭載されるものに比較して出力が小さいものが採用されている。
【0017】
ジェネレータ20はエンジン10が発生した動力により駆動され、電力を発生させる。発生した電力はインバータ40を介して電池30に蓄電される。
【0018】
電池30はニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の蓄電可能な電池であり、蓄電された電力はインバータ40を介してモータ50に供給される。
【0019】
インバータ40は、ジェネレータ20が発生した交流電流を直流に変換して電池30に供給する。また、電池30から出力された直流電流を交流電流に変換してモータ50に出力する。
【0020】
モータ50は、車両を駆動させるためのものであり、トランスミッション60を介して車軸70に連結されている。トランスミッション60は、有段変速機でも無段変速機でもよく、モータ50の回転軸の回転を変速して車軸70に伝達する。車軸70には図示しないタイヤが一体回転するように結合されており、車軸70が回転することにより車両が走行する。
【0021】
図2は、
図1に示した各部材を制御する電気系統の構成図の一例である。
図2において、破線は車内LANにより接続されていることを示し、実線は直接接続されていることを示す。
【0022】
ドメインコントロールユニット(以下、DCU)110は、各要素を制御するECUであるエンジンECU120、MGECU130、電池ECU140、トランスミッションECU150との間で通信を行なって、それらのECUに必要な情報を提供する。このDCU110には、アクセル開度、シフト位置が、それらを検出するセンサから入力される。また、電池ECU140から、電池30の充電状態を示すSOC(%)が入力される。
【0023】
発電制御装置に相当するDCU110は、これらの情報から、エンジンECU120にトルク指令値を出力し、MGECU130にMG回転数指令値を出力し、トランスミッションECU150に変速比を出力する。
【0024】
エンジンECU120は、A/Fセンサ、ノックセンサからの信号を検出しつつ、DCU110から入力されたトルク指令値が示すトルクを発生させる。MGECU130は、ジェネレータ20とモータ50を制御するECUである。このMGECU130は、ジェネレータ20の現在の回転数、モータ50の回転数、インバータ40の電流と電圧を検出しつつ、DCU110から入力されたMG回転数指令値が示す回転数を発生させるためのPWM制御信号をインバータ40に出力する。
【0025】
電池ECU140は、電池30の電流、電圧に基づいて電池30のSOCを逐次監視し、そのSOCをDCU110に出力する。トランスミッションECU150は、DCU110から指示された変速比にトランスミッション60を制御する。
【0026】
図3は発電効率特性を例示する図である。この発電効率特性は、発電出力と発電効率との関係を示している。この発電効率特性は、本実施形態ではDCU110が備える図示しない記憶装置に記憶されているものとする。よって、DCU110が発電効率特性記憶部に相当する。DCU110は、後述するステップS60において、この発電効率特性を使用する。
【0027】
図3に示すように、最大発電出力(図中のMAX出力)時の発電効率は、最大発電効率(図中のMAX効率)での発電ではない。また、
図4には、車両スペックを例示しており、
図4のENG出力の欄に示すように、MAX出力で発電するときは、MAX効率で発電するときよりも、エンジン10も大きな出力が必要である。そのため、ENG燃料消費率の欄に示されているように、MAX出力時のENG燃料消費率は、MAX効率時のENG燃料消費率よりも悪くなる。
図4の下2欄、走行動力および電池容量は一例である。
【0028】
図5に実施形態1の航続時間、航続距離と、エンジン10の動作状態との関係を示している。なお、
図5における数値は、説明の便宜上、簡単な数値にしている。
【0029】
図4の車両スペックに示した走行動力、電池容量である場合には、エンジン10をオフにしていると、たとえば、航続時間が1時間、航続距離が100kmとなる。エンジン10をオフにしていることから、エンジン10によりジェネレータ20を駆動させる発電量であるENG発電量は0である。
【0030】
これに対して、走行中にエンジン10をMAX効率で作動させると、走行中のENG発電量を20kwhとすることができ、航続時間が2時間、航続距離が200kmとなる。MAX効率で20kwhを発電するので、燃料消費量は4.6Lとなり、ENG燃費は21.7km/Lとなる。なお、ENG燃費は、(航続距離−エンジンオフ時の航続距離)/燃料消費量により算出する。
【0031】
また、走行中にエンジン10をMAX出力で作動させると、走行中のENG発電量を60kwhとすることができ、航続時間が4時間、航続距離が400kmとなる。MAX出力で60kwhを発電するので、燃料消費量は18.6Lとなり、ENG燃費は16.1km/Lとなる。
【0032】
この
図5から分かるように、MAX出力で発電すると、航続距離はMAX効率時よりも延びるものの、ENG燃費はMAX効率時よりも低くなる。換言すれば、MAX効率で発電すると、ENG燃費はMAX出力時よりもよいものの、航続距離はMAX出力時よりも短くなる。
【0033】
そこで、実施形態1では、走行状況を予測し、予測した走行状況に基づいて、MAX効率一定で発電する発電パターンと、MAX出力一定で発電する発電パターンのいずれがよいかを走行開始時に選択する(
図6)。
図6の処理はDCU110が、車両の走行開始時に行う。走行開始の判断は、たとえば、図示しないナビゲーション装置において案内経路が設定されたことにより行う。あるいは、イグニッションオンにより走行開始と判断してもよい。
【0034】
ステップS10では走行状況を予測する。走行状況は、車両の走行中に消費するエネルギーに関連する情報である。走行状況には、車両の走行時間を含んでおり、その他に、各時刻における走行速度、走行経路を含む。また、走行経路は各地点における道路勾配を含む。これらは、図示しないナビゲーション装置から取得する。
【0035】
図7は、このステップS10で予測した走行状況のうち、走行時間に対する走行速度の関係を示す概念図である。この
図7において、走行速度が減少している区間は回生制動により発電することができる。
【0036】
ステップS20では、車載電気負荷(すなわち車両内の電気機器)が、走行時間中に逐次消費する消費電力を予測する。車載電気負荷にはたとえばエアコン、オーディオ等があり、外気温度などの予め設定された入力パラメータに基づいて、予め設定した関数やマップから決定する。
【0037】
ステップS30では、走行中に必要な電力量の合計値である必要電力量W
totalを算出する。必要電力量W
totalは、逐次の消費電力P
tを、走行時間全体にわたり積分して求める。逐次の消費電力P
tは、以下の式1あるいは式2により算出する。
(式1) F>0の場合(力行) P
t=F・v/η
m+P
e
(式2) F<0の場合(回生) P
t=k(a,v)/η
g+P
e
【0038】
式1、2においてFは総駆動動力、vは車速、η
mはモータ効率、k(a,v)は、車速、加速度から回生動力を算出するための関数あるいはマップ、η
gはジェネレータ効率、P
eは車載電気負荷の消費電力である。総駆動動力Fは下記式3から算出する。
(式3) F=F
1+F
2+F
3+F
4
【0039】
式3において、F
1はそれぞれ転がり抵抗のための駆動力、F
2は空気抵抗のための駆動力、F
3は勾配抵抗のための駆動力、F
4は加速度のための駆動力であり、それぞれ、式4〜式7から算出する。下記式4〜式7においてf
1(v)は車速から転がり抵抗を算出するための関数あるいはマップ、f
2(v)は車速から空気抵抗を算出するための関数あるいはマップ、mは総質量、gは重力加速度、αは勾配傾斜角度、aは車両加速度である。車両加速度aはアクセル開度およびシフト位置に基づいて決定する。
(式4) F
1=f
1(v)
(式5) F
2=f
2(v)
(式6) F
3=m・g・sinα
(式7) F
4=m・a
【0040】
必要電力量W
totalは、逐次の消費電力P
tから下記式8により算出する。
(式8) W
total=∫P
tdt
【0041】
ステップS40では電池SOCを電池ECU140から取得する。ステップS50では必要発電量を算出する。必要発電量は、ステップS30で算出した必要電力量と現在の電池残量との差である。現在の電池残量は、
図4に示した電池容量とステップS40で取得した電池SOCとの積である。
【0042】
ステップS60では、走行中に実施する発電パターン(以下、実施発電パターン)を選択する。発電パターンは走行中の時刻と発電電力との関係を示したものである。実施形態1では、発電パターンの候補は、MAX効率一定で発電する発電パターンと、MAX出力一定で発電する発電パターンの2つの発電パターンである。
【0043】
そこで、ステップS60では、ステップS50で算出した必要発電量を走行時間T
totalで割ることにより算出できる走行中の平均消費電力を、MAX効率時の発電電力P(効率)、MAX出力時の発電電力P(出力)と比較する。比較の結果に応じて次の(1)〜(3)のいずれかの処理を行う。
【0044】
(1)平均消費電力がP(効率)よりも小さい場合には、走行中の発電量がステップS50で算出した必要発電量となるまで、MAX効率一定で発電する発電パターンを選択する。(2)平均消費電力がP(効率)以上であるが、P(出力)よりも小さい場合には、走行中の発電量がステップS50で算出した必要発電量となるまで、MAX出力で発電する発電パターンを選択する。(3)平均消費電力がP(出力)以上となる場合には、航続可能距離が不足していることを示す警告を運転者に出力する。
【0045】
ステップS70では、走行中、ステップS60で選択した実施発電パターンでエンジン10、ジェネレータ20を制御する。
【0046】
以上、説明した実施形態1によれば、走行状況を予測し(S10)、予測した走行状況に基づいて走行に必要な電力量(必要電力量)を算出する(S30)。そして、現在の電池残量で不足する不足分を発電することができる発電パターンのうち発電効率のよい発電パターンを、走行中に行う実施発電パターンとして選択する(S60)。実施発電パターンは、現在の電池残量で不足する不足分を発電することができる発電パターンであることから、必要な航続距離を確保することができる。また、不足分を発電することができる発電パターンのうち発電効率のよい発電パターンを選択することから、燃費も向上させることができる。
【0047】
(実施形態2)
次に実施形態2を説明する。この実施形態2以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用することができる。
【0048】
実施形態2では、
図6に示す処理に代えて
図8に示す処理を実行する。
図8でも、まず、
図6と同じステップS10〜S50を実行する。
【0049】
ステップS50に続くステップS52は発電パターン生成部に相当し、発電パターンを生成する。このステップS52では、実施形態1の2つの発電パターン、すなわち、MAX効率一定の発電パターン、MAX出力一定の発電パターンの他、ステップS10で予測した走行時間にステップS50で予測した必要発電量を発電できる発電パターンを少なくとも一つ生成する。
【0050】
図9は、
図8のステップS52で生成する発電パターンの例である。
図9の例では3つの発電パターンを生成している。パターン3はMAX出力一定で必要電力量を全て発電する発電パターンである。パターン2は必要電力量を走行時間T
totalで割った一定電力を走行中に発電する発電パターンである。パターン1は切替時刻t
xまでMAX効率一定で発電し、その後は、必要発電量を発電するまでMAX出力で発電するパターンである。上記切替時刻t
xは変数であり、たとえば、T
total/4、2×T
total/4、3×T
total/4の3つの値をとる。
【0051】
ステップS54では、各発電パターンにおける燃料消費量を算出する。具体的には、予め記憶している発電効率マップ(
図3)と、各発電パターンにおける発電電力とから、エンジン10の出力を決定する。そして決定したエンジンの出力と、車両スペックとから、各パターンにおける燃料消費量を算出する。
【0052】
ステップS60では、ステップS54で算出した各発電パターンの燃料消費量のうち最も燃料消費量が少ない発電パターンを選択し、選択した発電パターンを実施発電パターンに設定する。
【0053】
ステップS70では、走行中、ステップS60で設定した実施発電パターンでエンジン10、ジェネレータ20を制御する。
【0054】
以上、説明した実施形態2によれば、実施形態1では2つの発電パターンのいずれかを実施発電パターンとして選択していたが、実施形態2では、3つの発電パターンを生成している(S52)。そして、その3つの発電パターンから最も燃費のよい発電パターンを実施発電パターンに選択している(S80)。よって、必要な航続距離を確保しつつ、実施形態1よりもさらに燃費を向上させることができる。
【0055】
(実施形態3)
実施形態3では、実施形態2の
図8の処理に代えて
図10の処理を実行する。
図10は、
図8にステップS62、S64、S66が追加されている。
【0056】
ステップS62では、ステップS60で選択した実施発電パターンの燃費を算出する。ステップS64は請求項の判断部に相当し、ステップS62で算出した燃費が予め設定されている基準燃費(基準燃費関係値に相当)よりもよいかどうかを判断する。この判断がYESであれば、ステップS70に進み、走行中、ステップS60で選択した実施発電パターンでエンジン10、ジェネレータ20を制御する。
【0057】
しかし、ステップS64の判断がNOである場合には、ステップS66に進む。ステップS66では、車速の調整を行う。具体的には車速の上限値を制限する。たとえば、これまでの上限値から10km/hなどの一定値を引いた値を車速の上限値とする。この制限は道路種別ごとに行なってもよい。車速が低いほど少ない燃料消費量で同じ距離を走行することができる。つまり、車速は燃費に関連する。よって、車速は請求項の燃費関連走行パラメータである。ステップS66を実行した後は、ステップS10に戻る。
【0058】
ステップS10では、車速の上限値が制限された状態で、走行状況の予測を再度行う。さらに、ステップS20〜S60を実施して、発電パターンの燃料消費量を再算出し、最も燃費のよい発電パターンを実施発電パターンとして再選択する。そして、ステップS62、64において、再選択した実施発電パターンの燃費が基準燃費よりもよいかどうかを再び判断する。このステップS64の判断がYESとなるまで、ステップS66、および、その後のステップS10〜S62を繰り返す。
【0059】
以上、説明した実施形態3では、複数の発電パターンから選択した実施発電パターンの燃費が基準燃費よりもよくなるまで車速の制限を行って、走行状況の再予測、再予測した走行状況に基づく発電パターンの再生成、実施発電パターンの再選択を行う。そのため、必要な航続距離を確保しつつ、燃費を基準燃費よりもよくすることができる。
【0060】
(実施形態4)
実施形態4では、DCU110は、
図11に示すように、事前処理部111、発電制御部112、予測部113、実充電率取得部114、補正部115、発電パターン設定部116を備える。
【0061】
事前処理部111は、実施形態1〜3で示した処理のうちステップS70を除いた処理を実行する。
【0062】
発電制御部112はステップS70の処理を実行する。すなわち、発電制御部112は、ステップS60で選択した実施発電パターンにしたがって、車両の走行中にエンジン10を駆動させてジェネレータ20に発電させる制御を行う。
【0063】
予測部113は、実施発電パターンの設定時に、走行中の電池30のSOCの予測値である予測SOC(予測充電率に相当)を時間に対応づけて予測する。たとえば次の方法により予測SOCを決定する。すなわち、各時刻における必要電力とその時刻における発電電力との差を積分することで、電池30への入出力電力量(kwh)を予測する。この入出力電力量と電池容量とからSOCの変化量を予測する。そして、予測したSOCの変化量を現在のSOCに加算することで予測SOCを決定する。なお、事前処理部111に代えて、この予測部113がステップS10を実行してもよい。
【0064】
実充電率取得部114は、走行中に、電池30のSOCを逐次取得する。電池30のSOCは電池ECU140から取得する。以下、取得したSOCを実SOC(実充電率に相当)という。
【0065】
補正部115は、車両の走行中、実SOCと、予測部113が予測した現時点に対応する予測SOCとを逐次比較する。そして、実SOCと予測SOCの相違に応じて、ステップS50で算出した必要発電量を補正する。実SOCの方が予測SOCよりも低い場合には、必要発電量が予測よりも多かったことになるので、必要発電量が多くなるように補正を行う。反対に、実SOCの方が予測SOCよりも高い場合には必要発電量が少なくなるように補正を行う。一例としては必要発電量に、予測SOC÷実SOCを乗じる補正を行う。
【0066】
発電パターン設定部116は、補正部115が必要発電量を補正した場合に、補正後の必要発電量に基づいて実施発電パターンを再設定する。実施発電パターンの再設定は、
図6、8、10のいずれかの処理を再び実行することにより行う。
【0067】
以上、説明した実施形態4では、走行中に、実SOCと、走行開始前に予測した予測SOCとを逐次比較し、実SOCと予測SOCとの相違に応じて必要発電量を補正する。さらに、補正した必要発電量に基づいて実施発電パターンを再設定することから、実際の走行状況が走行開始前に予測した走行状況とずれていたとしても、必要な航続距離を確保しつつ、燃費も向上させることができる。
【0068】
(実施形態5)
実施形態5では、DCU110は、
図12に示すように、事前処理部111、発電制御部112、残必要発電量算出部117、残予測発電量算出部118、車速制限部119を備える。
【0069】
残必要発電量算出部117は、車両の走行中に、走行時間の終了までに必要となる発電量である残必要発電量を逐次算出する。算出方法は、算出時点が異なるのみであり、
図6、8、10と同じ処理である。
【0070】
残予測発電量算出部118は、走行時間の終了までに実施発電パターンに従って発電する場合に予測される発電量である残予測発電量を逐次算出する。算出方法は、実施発電パターンのうち、現時点以降の各時刻における発電電力を積分することで算出する。
【0071】
車速制限部119は、残必要発電量と残予測発電量とを比較する。そして、残必要発電量の方が多い場合には車速の上限値を制限する。車速の制限は、ステップS66と同様にして行う。
【0072】
車速の上限値を制限したことで、走行時間がそれまでの予測よりも延長される。発電制御部112は、延長した期間においても発電を行う。延長期間における発電量は、残必要発電量と残予測発電量の差分以上とする。
【0073】
以上、説明した実施形態5では、実際の走行状況が予測した走行状況と異なった結果、走行開始時に設定した実施発電パターンでは必要発電量を発電することができないと判定したときは、車速を制限することで走行終了までの時間を延長する。そして、延長した走行時間にも発電を行うので、実際の走行状況が走行開始前に予測した走行状況とずれていたとしても、必要発電量を発電することができ、ひいては、必要な航続距離を確保することができる。
【0074】
(実施形態6)
実施形態6は、機械系の構成が実施形態1と相違する。
図13に示すように、実施形態6は、ジェネレータ20、モータ50に代えて、モータ/ジェネレータ(以下、MG)22を備える。MG22はモータとしての機能と、ジェネレータとしての機能を備える。
【0075】
MG22は、ジェネレータとして機能するときはエンジン10の回転により回転させられて電力を発生する。発生した電力は、インバータ40により交流から直流に変換されて電池30に蓄電される。モータとして機能するときは、インバータ40を介して電池30から電力が供給され、トランスミッション60を介して車軸70を回転させる。また、エンジン10の駆動力により回転させられてモータとして機能することも可能である。さらに、電池30から供給される電力と、エンジン10の駆動力の両方を同時に駆動力としてモータとして機能することもできる。
【0076】
図14に、
図13に示した各部材を制御する電気系統の構成図の一例を示している。MGECU130はMG22の回転数、インバータ40の電流、電圧を検知しつつ、インバータ40にPWM信号を出力してMG22の回転数を制御する。その他の構成は
図2と同じである。
【0077】
この実施形態6でも、実施形態1〜3で説明した処理により実施発電パターンを決定することができる。ただし、実施形態6では、エンジン10の駆動力によりMG22をモータとして機能させて車軸70を回転させることができる。すなわち、電池30が電力を出力しなくても車両走行が可能である。これは、一旦、エンジン10の駆動力でMG22により発電させて蓄電し、その蓄電した電力でMG22をモータとして用いることと、効率を除けば等価である。そこで、後述する等価発電電力を、これまでの発電電力(以下、単純発電電力)に代えて用いることが好ましい。等価発電電力については実施形態8で説明する。
【0078】
(実施形態7)
実施形態7も、機械系の構成が実施形態1と相違する。
図15に示すように、実施形態7では、2つのMG22、24を備える。また、トランスミッション60に代えて遊星歯車装置62を備える。
【0079】
遊星歯車装置62は動力分配機構とも呼ばれ、エンジン10の動力をMG22、24、車軸70に分配する。遊星歯車装置62により動力を分配する作動は周知であるため、ここでの説明は省略する。
【0080】
図16に示すように、実施形態7では、これまでの実施形態のDCU110としての機能をHVECUO110Aが備える。MGECU130は2つのMG22、24の回転数、インバータ40の電流、電圧を検知しつつ、インバータ40にPWM信号を出力してMG22、MG24の回転数を制御する。その他の構成は
図2と同じである。
【0081】
この実施形態7でも、実施形態1〜3で説明した処理により実施発電パターンを決定することができる。ただし、実施形態7でも次に説明する等価発電電力を単純発電電力に代えて用いることが好ましい。
【0082】
(実施形態8)
実施形態8の機械系、電気系統の構成は実施形態7であり、これまでの実施形態との相違点は単純発電電力に代えて等価発電電力を用いる点である。なお、実施形態6の機械系、電気系統の構成にも、実施形態8は適用できる。
【0083】
実施形態6、7では、エンジン10の動力は、電池30に一旦充電されずに、MG22あるいは車軸70を直接駆動することもある。そのため、エンジン10の動力により駆動されるMG22、24の発電量だけではエンジン10が作動したことによる航続距離への影響を正しく判定できない。そこで、エンジン10の動力による発電とエンジン10の動力による直接駆動の両方を反映する等価発電電力を用いて燃費の判断を行う。
【0084】
実施形態8では、HVECUO110Aは
図17に示す処理を実行する。
図17において、ステップS50までは
図6、8、10と同じである。
【0085】
ステップS50に続くステップS51では、等価発電電力−燃料消費量マップを作成する。
図18は、そのマップを作成する機能をブロック図にて示す図である。
【0086】
車軸出力決定部511は、各時刻の車軸70の出力(回転数、トルク)を決定する。この車軸出力決定部511は、ステップS30で説明した総駆動動力F(kw)に基づいて予め記憶してある関係から決定する。
【0087】
充電要求決定部512は、電池30が要求する充電要求電力c(kw)を決定する。この充電要求電力cは可変であり、予め設定された複数の充電要求電力cを決定する。たとえば、1kw、2kw、・・・20kwのように決定する。充電要求電力cはマイナスの値でもよい。マイナスの値の場合、電池30は電力を出力すること意味する。電池30が電力を出力してもよいことから、エンジン10の動力で走行しているとき、電池30は電力を出力することはできるが、電池30へ充電はできない実施形態6にも実施形態8の制御は適用可能なのである。
【0088】
加算部513は、車軸出力決定部511が決定した総駆動動力F(kw)と、充電要求決定部512が決定した充電要求電力c(kw)を加算する。加算した値は、動力源に出力を要求する動力(以下、要求動力)p(kw)を意味する。要求動力pはエンジン動作点決定部514へ入力される。
【0089】
エンジン動作点決定部514は、要求動力pから公知の動作点決定マップをもとに、エンジン10の動作点(すなわちエンジン回転数、エンジントルク)を決定する。エンジン10の動作点は、充電要求決定部512が決定した複数の充電要求電力cごとに決定する。
【0090】
エンジン10の動作点が決まれば瞬時のエンジン10の燃料消費量も決まる。瞬時燃料消費量決定部515は、エンジン10の動作点から瞬時燃料消費量が定まる公知のマップを持ち、このマップと、エンジン動作点決定部514が決定したエンジン10の動作点から、瞬時燃料消費量(ml)を決定する。瞬時燃料消費量はエンジン10の充電要求電力cごとに決定する。
【0091】
また、エンジン10の動作点および車軸70の回転数、トルクが決まると、MG22、MG24の動作点も一義的に決まる。具体的には、下記式9〜式12の関係がある。なお、下記式においてρは遊星歯車装置62のギア比(サンギアの歯数/リングギアの歯数)である。
(式9) MG22の回転数=((1+ρ)/ρ)エンジン回転数−1/ρ車軸回転数
(式10) MG22の出力トルク=−(ρ/(1+ρ))エンジントルク
(式11) MG24の回転数=車軸回転数
(式12) MG24の出力トルク=車軸出力トルク+MG24出力トルク/ρ
【0092】
MG1制御値決定部516は、エンジン動作点決定部514が決定したエンジン回転数、エンジントルクと、上記式9、10から、MG22の動作点を決定する。MG22の動作点は、充電要求決定部512が決定した複数の充電要求電力cごとに決定する。
【0093】
MG2制御値決定部517は、車軸出力決定部511が決定した車軸回転数、車軸出力トルクと、上記式11、12から、MG24の動作点を決定する。MG24の動作点も、充電要求決定部512が決定した複数の充電要求電力cごとに決定する。
【0094】
図15から分かるように、MG22、MG24の動作点が決まれば、インバータ40を介してそれらMG22、MG24と接続されている電池30が、電力を出力しているか充電されているかも決まる。また、出力している電力、充電されている電力も決まる。電池出力決定部518は、MG22、MG24の動作点に基づいて、電池30の出力を決定する。電池30の出力は、充電要求決定部512が決定した複数の充電要求電力cごとに決定する。
【0095】
さらに、この電池出力決定部518は、エンジン10が作動していないときの電池30の出力も決定する。エンジン10が作動していないときは、要求動力pを全てMG22、MG24で出力することになる。そこで、要求動力と電池30の出力との関係を定めたマップを予め記憶しておき、このマップと要求動力pから、エンジン10が作動していないときの電池30の出力を決定する。あるいは、MG1制御値決定部516、MG2制御値決定部517において、エンジン10が作動していないときのMG22、24の動作点を決定し、各MG22、24の動作点に基づいて、エンジン10が作動していないときの電池30の出力を決定してもよい。
【0096】
等価発電電力決定部519は、エンジン10が作動しない時の電池30の出力からエンジン10が作動している時の電池30の出力を引くことで、等価発電電力を算出する。等価発電電力は、MG22、24あるいは車軸70を直接駆動するエンジン動力を発電電力に換算して、実際の発電電力に加えた値を意味する。エンジン10が作動している時の電池30の出力が、複数の充電要求電力cごとに決定されていることから、等価発電電力も複数の充電要求電力cごとに算出する。
【0097】
マップ作成部520は、等価発電電力決定部519が決定した等価発電電力と、瞬時燃料消費量決定部515が決定した瞬時燃料消費量から、等価発電電力−燃料消費量マップを作成する。
図19は、この等価発電電力−燃料消費量マップの概念図である。
【0098】
図19には、(A)〜(C)の3つのマップが示されている。これら3つのマップの違いは、車軸出力決定部511が決定した総駆動動力Fの違いである。ステップS51では、ステップS30で算出した総駆動動力Fごとに、
図19(A)〜(C)に例示したマップを作成する。
【0099】
続くステップS53では発電パターンを生成する。ここで生成する発電パターンは
図9に類似している。
図9との違いは、
図9では縦軸が発電電力であったが、このステップS53で生成する発電パターンは縦軸が等価発電電力である。その他は
図9と同じであり、ステップS50で算出した必要発電量を以上となる等価発電量(等価発電電力の積分値)を出力することができる発電パターンである。なお、等価発電量は必要発電量関係値であり、また、ステップS53は等価発電パターン生成部に相当する。
【0100】
ステップS55では、走行中の総燃料消費量を算出する。総燃料消費量の算出においては、各時刻における総駆動動力Fに応じて、マップ作成部520が作成した複数のマップのうちどのマップを用いるかを決定する。そして、決定したマップにおいて、発電パターンの該当時刻における瞬時燃料消費量を決定する。そして、各時刻に対して決定した瞬時燃料消費量を積算することで総燃料消費量を算出する。総燃料消費量は、発電パターンごとに算出する。
【0101】
ステップS60、S70は
図8と同じであり、ステップS60では、総燃料消費量の最も少ない発電パターンを選択し、ステップS70では、選択した発電パターンとなるように、エンジン10とMG22、24を制御する。
【0102】
以上、説明した実施形態8によれば、エンジン10がMG22、24あるいは車軸70を直接駆動する動力を発電電力に換算した等価発電電力と、その等価発電電力となっているときの燃料消費量の関係を決定する等価発電電力−燃料消費量マップを作成している(S51)。さらに、複数の等価発電電力の発電パターンに対して、上記マップを用いて総燃料消費量を算出している(S55)。そのため、エンジン10がMG22、24あるいは車軸70を直接駆動することもある構成においても、駆動に使用される総燃料消費量を精度よく算出することができる。このようにして算出した総燃料消費量を比較して、最も総燃料消費量が少ない発電パターンを選択する(S60)。よって、エンジン10がMG22、24あるいは車軸70を直接駆動することもある構成においても、燃費を向上させる発電パターンを選択することができる。
【0103】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0104】
(変形例1)
実施形態1では式1〜式8を用いて必要電力量W
totalを算出していたが、実施形態1の方法よりも簡略化し、航続距離sに予め設定した所定の係数kを乗じた値を必要電力量W
totalとしてもよい。
【0105】
(変形例2)
実施形態4、5に示したDCU110の機能は、実施形態6、7の構成にも適用できる。なお、実施形態5に示したDCU110の機能を、実施形態6、7の構成に適用する場合、残必要発電量算出部117は、走行時間の終了までに必要となる等価発電電力の積分値である残等価必要発電量(残必要発電量関係値に相当)を逐次算出する。また、残予測発電量算出部118は、走行時間の終了までに実施発電パターンに従って発電する場合に予測される等価発電電力を積分して残予測等価発電量(残予測発電量関係値に相当)を逐次算出する。
【0106】
(変形例3)
実施形態8では、要求動力pに基づいてエンジン10の動作点を決定していたが、これに限られない。エンジン10の動作点は、たとえば、最高効率の動作点など、予め所定の動作点に設定しておき、要求動力pと、予め設定したエンジン10の動作点とに基づいて、MG22、MG24の動作点を決定してもよい。
【0107】
(変形例4)
実施形態6、7では、電池30が電力を出力しなくても、エンジン10により車両は走行することが可能である。ただし、電池30が電力を出力できない場合、エンジン10の出力および電池30の出力の両方を用いて走行する場合よりも車両の駆動力は低くなる。換言すれば、電池30が電力を出力できない場合でも、低速でしか走行できない低速走行路であれば、エンジン10によるMG22、24あるいは車軸70の直接駆動のみにより走行可能である。
【0108】
そこで、走行状況を予測する際(S10)、車両の走行経路と目的地も予測する。そして、予測した目的地付近の走行経路が低速走行路である場合、その低速走行路はエンジン10によるMG22、24あるいは車軸70の直接駆動のみにより走行するものとして、その低速走行路を除外して必要発電量あるいは等価必要発電量を算出してもよい。なお、低速走行路であることは、たとえば、地図情報に備えられている各道路の制限速度から判断する。
【0109】
このようにすれば、最低限の必要発電量あるいは等価必要発電量を算出することができる。よって、発電量を抑えることができるので、走行区間における燃費が向上する。
【0110】
(変形例5)
前述の実施形態では、必要発電量関係値として等価発電量を示したが、発電はエンジン10の動力により行うことから、エンジン10が出力すべき動力を必要発電量関係値として用いることもできる。
【0111】
(変形例6、7)
実施形態3では、燃費関連パラメータとして車速を制限していたが、加速度も燃費に関連する。そこで、車速に代えて、あるいは、車速に加えて、燃費関連パラメータとして加速度を制限してもよい(変形例6)。また、燃費関連パラメータを制限する代わりに、あるいは、燃費関連パラメータを制限することに加えて、走行距離を制限してもよい(変形例7)。走行距離を制限しつつ目的地は変更しない場合には、一旦、目的地までの途中の地点で駐車して充電を行う。充電は、エンジンを駆動させて行ってもよいし、車両外部の充電設備を利用可能な車両であれば、車両外部の充電設備を利用して充電してもよい。
【0112】
(変形例8)
前述の実施形態では、発電パターンを設定する際に、各発電パターンの燃費を比較していたが、走行距離が同じであるため、燃料消費量で比較してもよい。なお、燃料消費量は燃費に対応して変動するので、燃料消費量は請求項の燃費関係値に相当する。また、実施形態3において燃費に代えて燃料消費量を用いる場合、基準燃費に代えて基準燃焼消費量を用いる。この基準燃料消費量は基準燃費関係値に相当する。
【0113】
(変形例9)
実施形態1の
図6のステップS60では、平均消費電力がP(効率)以上であるが、P(出力)よりも小さい場合には、走行中の発電量がステップS50で算出した必要発電量となるまで、MAX出力で発電する発電パターンを設定していた。
【0114】
しかし、平均消費電力がP(効率)以上であるが、P(出力)よりも小さい場合に、必ずしも、MAX出力で発電する必要はない。走行中にステップS50で算出した必要発電量が発電できるのであれば、MAX効率からMAX出力の間の発電出力で発電してもよい。