(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両幅方向を長手方向として配置されたバンパリインフォースメントの前面に隣接して配置されたアッパーアブソーバの車両幅方向外側端部を含む部分に車両幅方向に沿って配設された柔軟な管状体である上部チューブと、
前記バンパリインフォースメントの下方に車両幅方向を長手方向として配置されたフロントメンバの前面に隣接して配置されたロアアブソーバの車両幅方向外側端部を含む部分に車両幅方向に沿って配設された柔軟な管状体である下部チューブと、
前記アッパーアブソーバの車両幅方向外側端部を含む部分に車両幅方向に沿って帯状に配設され、押圧されるとオン又はオフになる圧力検知手段と、
前記上部チューブ及び前記下部チューブの内部の圧力変化を検知すると共に該圧力変化に基づく信号を出力する内圧検知手段と、
を備えた歩行者衝突検知システム。
前記圧力検知手段がオン又はオフになる前後での前記内圧検知手段の出力値を所定の閾値と比較することで、対人衝突の有無を判定する判定手段をさらに備えた請求項2に記載の歩行者衝突検知システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、同じ歩行者であっても、例えば6歳児等の小児では、バンパへの荷重はロードサイドマーカー等の物に衝突した時の荷重よりも小さく、バンパへの荷重の大小のみでは、対人衝突か、対物衝突かを正確に判定することが困難であるという問題がある。特にフロントバンパのコーナー部では、衝突による荷重がバンパカバー内に設けられたチャンバに対して垂直に作用せず、フロントバンパ中央部に衝突した場合に比して算出される荷重が小さくなりやすい。その結果、フロントバンパのコーナー部での対人衝突を対物衝突と誤判定するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、フロントバンパのコーナー部での衝突から対人衝突を精度よく判別する歩行者衝突検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の歩行者衝突検知システムは、車両幅方向を長手方向として配置されたバンパリインフォースメントの前面に隣接して配置されたアッパーアブソーバの車両幅方向外側端部を含む部分に車両幅方向に沿って配設された柔軟な管状体である上部チューブと、前記バンパリインフォースメントの下方に車両幅方向を長手方向として配置されたフロントメンバの前面に隣接して配置されたロアアブソーバの車両幅方向外側端部を含む部分に車両幅方向に沿って配設された柔軟な管状体である下部チューブと、前記アッパーアブソーバの車両幅方向外側端部を含む部分に車両幅方向に沿って帯状に配設され、押圧されるとオン又はオフになる圧力検知手段と、前記上部チューブ及び前記下部チューブの内部の圧力変化を検知すると共に該圧力変化に基づく信号を出力する内圧検知手段と、を備えている。
【0008】
請求項1に記載の歩行者衝突検知システムは、バンパリインフォースメントの前面にアッパーアブソーバが配置されている。かかる緩衝材の車両幅方向外側端部を含む部分、すなわちフロントバンパのコーナー部に相当する箇所を含んだ部分に、上部チューブ及び押圧されるとオン又はオフになる圧力検知手段が各々車両幅方向に沿って配設されている。また、バンパリインフォースメントの下方にあるフロントメンバの前面に配置されたロアアブソーバのコーナー部に相当する箇所には下部チューブが車両幅方向に沿って配設されている。さらに、上部チューブ及び下部チューブの内部の圧力の変化を検知すると共に当該圧力変化に基づく信号を出力する内圧検知手段が設けられている。
【0009】
このように、フロントバンパのコーナー部に相当する箇所に、押圧を検知する圧力検知手段と、上下2段のチューブと当該チューブの内部の圧力の変化を検知する内圧検知手段とを設けている。これにより、フロントバンパのコーナー部への衝突の態様に応じて、圧力検知手段がオン又はオフになると共に内圧検知手段がチューブの内部の圧力変化に基づく信号を出力する。これに基づいて、例えば、歩行者との衝突と、ロードサイドマーカー又はパイロン等の設置物との衝突を判別できる
【0010】
請求項2に記載の歩行者衝突検知システムは、請求項1に記載の発明において、車両前方から順に、前記下部チューブ、前記圧力検知手段、前記上部チューブが配設されている。
【0011】
請求項2に記載の歩行者衝突検知システムでは、車両前方から順に下部チューブ、圧力検知手段、上部チューブを配設している。これにより、衝突後に車両のフード上に投げ出される歩行者と、地面に固定された設置物とでは、圧力検知手段がオン又はオフになるタイミング及び内圧検知手段の出力値が異なってくる。 かかる差異に基づいて歩行者との衝突と、ロードサイドマーカー又はパイロン等の設置物との衝突を精度よく判別できる。
【0012】
請求項3に記載の歩行者衝突検知システムは、請求項2に記載の発明において、前記圧力検知手段がオン又はオフになる前後での前記内圧検知手段の出力値を所定の閾値と比較することで、対人衝突の有無を判定する判定手段をさらに備えている。
【0013】
請求項3に記載の歩行者衝突検知システムでは、圧力検知手段がオン又はオフになる前後での内圧検知手段の出力値を所定の閾値と比較する判定手段を備えている。内圧検知手段の出力値を所定の閾値と比較する簡素なアルゴリズムにより、歩行者との衝突と、ロードサイドマーカー又はパイロン等の設置物との衝突を精度よく判別できる。
【0014】
請求項4に記載の歩行者衝突検知システムは、請求項3に記載の発明において、前記所定の閾値は、第1の閾値、第2の閾値及び第3の閾値を含み、前記第1の閾値は前記第2の閾値以下で、かつ前記第2の閾値は前記第3の閾値未満であって、前記判定手段は、前記圧力検知手段がオン又はオフになる前の前記内圧検知手段の出力値が前記第1の閾値を下回り、かつ前記圧力検知手段がオン又はオフになった後の前記内圧検知手段の出力値が前記第2の閾値を上回った場合、又は前記圧力検知手段がオン又はオフになる前の前記内圧検知手段の出力値が前記第1の閾値を上回り、かつ前記圧力検知手段がオン又はオフになった後の前記内圧検知手段の出力値が前記第3の閾値を上回った場合に対人衝突と判定する。
【0015】
請求項4に記載の歩行者衝突検知システムでは、第1の閾値≦第2の閾値<第3の閾値である第1の閾値、第2の閾値及び第3の閾値を用いている。判定手段は、圧力検知手段がオン又はオフになる前後での内圧検知手段の出力値を、第1の閾値、第2の閾値及び第3の閾値と比較することにより、対人衝突の有無を判定することができる。
【0016】
請求項5に記載の歩行者衝突検知システムは、請求項4に記載の発明において、前記上部チューブと前記下部チューブとが連通された1本の管状体をなすと共に、該管状体の一端に前記内圧検知手段が設けられており、前記判定手段は、前記圧力検知手段がオン又はオフになった後は、前記内圧検知手段の出力値から前記圧力検知手段がオン又はオフになった時の前記内圧検知手段の出力値を減算した減算出力値を算出し、該減算出力値を前記圧力検知手段がオン又はオフになった後の前記内圧検知手段の出力値とする。
【0017】
請求項5に記載の歩行者衝突検知システムでは、圧力検知手段がオン又はオフになった後は、内圧検知手段の出力値から圧力検知手段がオン又はオフになった時の内圧検知手段の出力値を減算した減算出力値を算出し、この減算出力値を対人衝突の有無の判定に用いている。減算出力値は、圧力検知手段がオン又はオフになった後に新たに内圧検知手段が検知した圧力に基づくものであるので、減算出力値を判定に用いることにより、上部と下部とが連通された1本のチューブを含む簡素な構成を適用できる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の歩行者衝突検知システムによれば、フロントバンパのコーナー部での衝突から対人衝突を判別することができる。
【0019】
請求項2に記載の歩行者衝突検知システムによれば、フロントバンパのコーナー部での衝突から対人衝突を精度よく判別することができる。
【0020】
請求項3に記載の歩行者衝突検知システムによれば、フロントバンパのコーナー部での衝突から対人衝突の有無を判定することができる。
【0021】
請求項4に記載の歩行者衝突検知システムによれば、フロントバンパのコーナー部での様々な態様の衝突において、対人衝突の有無を判定することができる。
【0022】
請求項5に記載の歩行者衝突検知システムによれば、上部と下部とが連通された1本のチューブを含む簡素な構成であっても、フロントバンパのコーナー部での衝突から対人衝突の有無を判定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施の形態)
以下、
図1〜
図4を用いて、本実施の形態に係る歩行者衝突検知システム10を備えたフロントバンパ12について説明する。本実施の形態における歩行者衝突検知システム10は、本発明の歩行者衝突検出システムに対応するものである。また、図面において適宜示される矢印FRは車両前側を示し、矢印LHは車両左側(車両幅方向一側)を示し、矢印UPは車両上側を示している。
【0025】
図1に示されるように、フロントバンパ12は、車両(自動車)の前端に配置されており、フロントバンパ12への衝突(の有無)を歩行者衝突検知システム10によって判別するようになっている。以下、具体的に説明する。
【0026】
フロントバンパ12は、バンパ骨格部材であるバンパリインフォースメント(以下、「バンパR/F」と称する)14を備えている。このバンパR/F14は、例えば鉄系やアルミ系等の金属材料により製作されて、車両幅方向を長手方向として配置された骨格部材として構成されている。また、バンパR/F14は、車体側の骨格部材を構成する左右一対のフロントサイドメンバ16の前端間を架け渡して車体に対し支持されている。さらに、バンパR/F14の車両幅方向両側部分は、フロントサイドメンバ16に対して車両幅方向外側へ僅かに突出されており、バンパR/F14の車両幅方向両端部における車両前方側の角部14Aには、平面視で角Rが形成されている。
【0027】
バンパR/F14の車両前側には、感圧部材20が設けられており、感圧部材20は、車両幅方向を長手方向とした長尺状に形成されている。この感圧部材20は、チャンバ本体部22と、長尺状の柔軟な管状体である圧力チューブ104と、タッチセンサ102と、を含み、これらが発泡樹脂材又は合成樹脂材で構成されたアッパーアブソーバ32Aで覆われている。圧力チューブ104は、全体の形状が略U字型で断面が略円環状の中空構造体として構成されており、圧力チューブ104の車両幅方向外側端部は、バンパR/F14の車両幅方向外側端部よりも車両幅方向外側に配置されている。また、圧力チューブ104の一端には、(広義には、「検出器」として把握される要素である)圧力センサ28Aが接続され、他端は閉塞されている。圧力センサ28Aは、圧力チューブ104が変形した場合の圧力チューブ104内の圧力変化に応じた信号をECU(Electronic Control Unit)30へ出力する。タッチセンサ102は、衝突による押圧を検知し、検知した結果を電気信号としてECU30へ出力する帯状のスイッチである。タッチセンサ102は、原則として、通常時はオフで衝突による押圧を検知した時にオンになるが、通常時はオンで衝突による押圧を検知した時にオフになってもよい。
【0028】
図2にも示されるように、チャンバ本体部22は、車両幅方向を長手方向とした中空構造体として構成されており、チャンバ本体部22の内部空間が圧力チャンバ26とされている。また、チャンバ本体部22はバンパR/F14の前面14B(車両前後方向外側面)に固定的に取付けられている。
【0029】
また、感圧部材20は、チャンバ本体部22においてバンパR/F14に固定的に取付けられた状態で、その形状を維持可能な剛性を有しており、チャンバ本体部22には、図示しない位置に大気と連通された連通孔を有している。したがって、通常(静的には)、圧力チャンバ26内は大気圧とされている。そして、チャンバ本体22は、車両前側から比較的低い圧縮荷重を受けて上記連通孔から空気を逃がしながら潰れて、圧力チャンバ26の内圧を動的に変化させながら圧力チャンバ26の体積が減じられるようになっている。
【0030】
また、感圧部材20では、チャンバ本体部22をブロー成形等によって例えば箱形の中空構造体に形成している。また、この箱形に形成されたチャンバ本体部22の長手方向両端部は、圧力チューブ104の端と
図1での平面視で重複している。
【0031】
一方、
図2に示されるように、チャンバ本体部22の上端中央部には、圧力センサ28Bが設けられており、圧力センサ28Bは、「衝突判定部」としてのECU30に電気的に接続されている。そして、圧力センサ28Bは圧力チャンバ26の圧力に応じた信号をECU30に出力する。
【0032】
ECU30は、圧力センサ28Bの出力信号に基づいて、衝突荷重を算出するようになっている。また、ECU30には、衝突速度センサ(図示省略)が電気的に接続されている。この衝突速度センサ(車速センサ)は、衝突体との衝突速度に応じた信号をECU30に出力して、ECU30が、衝突速度センサの出力信号に基づいて、衝突速度を算出するようになっている。そして、ECU30は、算出された衝突荷重及び衝突速度から衝突体の有効質量を求めると共に、有効質量が閾値を超えるか否かを判断して、フロントバンパ12の中央部への衝突体が歩行者であるのか歩行者以外(例えば、ロードサイドマーカーやポストコーン等)であるのかを判定するようになっている。
【0033】
また、バンパR/F14の車両前側のバンパカバー34の内側にはアッパーアブソーバ32Aが設けられている。このアッパーアブソーバ32Aは、ウレタンフォーム等の発泡樹脂材で構成されている。また、アッパーアブソーバ32Aは、車両幅方向を長手方向とした略長尺状に形成され、平面視でバンパR/F14に沿うように配置されて、その後端部において、バンパR/F14の前面14Bに固定(接触)されている。
【0034】
また、本実施の形態では、フロントバンパ12には、補助灯を設置するため又はラジエータへの導風のための開口部24が設けられているので、
図1の2−2線に沿った断面図である
図2では、フロントバンパ12は上下に二分割されて描かれている。
図2に示した下部の構造体は、フロントメンバ(第2メンバ)140の前面140Bに固定(接触)されたロアアブソーバ32Bとバンパカバー34とを含む。ロアアブソーバ32Bは、アッパーアブソーバ32Aと同様にウレタンフォーム等の発泡樹脂材又は合成樹脂材で構成されている。
【0035】
さらに、フロントバンパ12は、合成樹脂材等によって構成されたバンパカバー34を備えている。このバンパカバー34は、アッパーアブソーバ32A、ロアアブソーバ32Bと対向するように配置されて、図示しない部分で車体に対し固定的に支持されている。また、バンパカバー34の車両幅方向両側部分は、平面視で車両幅方向外側へ向かうに従って車両後側へ湾曲されている。
【0036】
図3は、
図1に示したフロントバンパ12の3−3線に沿った断面図であり、フロントバンパ12の車両幅方向外側部分、いわゆるコーナー部を拡大した側断面図である。また、
図3は、コーナー部におけるタッチセンサ102、圧力チューブ104及びアッパーアブソーバ32A、ロアアブソーバ32Bの配置を示している。バンパカバー34の内側において、バンパR/F14の前面14Bにアッパーアブソーバ32A、フロントメンバ140の前面140Bにロアアブソーバ32Bが各々固定される点はバンパ中央部と同様である。バンパコーナー部では、アッパーアブソーバ32Aには、タッチセンサ102及び圧力チューブ104が埋設され、ロアアブソーバ32Bには圧力チューブ104が埋設されている。圧力チューブ104は、
図1に示したように、バンパコーナー部における車両幅方向の端部付近で折り返すように設けられた略U字型をした1本の柔軟な管である。圧力チューブ104の略U字の一辺に相当する部分はアッパーアブソーバ32Aに埋設され、他の一辺はアッパーアブソーバ32Aの下方に配置されたロアアブソーバ32Bに埋設されている。
【0037】
図3に記したa,bは、アッパーアブソーバ32Aとロアアブソーバ32Bの間に設定した平面(水平面)Aを基準としたタッチセンサ102と圧力チューブ104との上下の位置関係を示している。また、c,d,eは、バンパR/F14の後方に設定した平面(鉛直面)Bを基準としたタッチセンサ102と圧力チューブ104との前後の位置関係を示している。本実施の形態では、a≧bであり、タッチセンサ102が、アッパーアブソーバ32A内の圧力チューブ104の中心線と同じ高さ、又は圧力チューブ104の中心線よりも上位に埋設される。また、本実施の形態では、c<d≦eであり、ロアアブソーバ32B内の圧力チューブ104の中心線は、タッチセンサ102の中心線よりも前方、又はタッチセンサ102の中心線と前後において同位置に設けられる。そして、アッパーアブソーバ32A内の圧力チューブ104の中心線は、タッチセンサ102よりも後方に設けられる。
図3の例では、車両正面視及び側面視においても、タッチセンサ102と圧力チューブ104とは重複していない。
【0038】
図4は、
図1に示されるフロントバンパ12のコーナー部を矢印4方向からバンパカバー34を透視した場合の図である。
図4に示したように、圧力チューブ104は横向きの略U字型に配設されており、下方に位置する圧力チューブ104の端には圧力センサ28Aが設けられ、圧力センサ28AはECU30に接続されている。また、圧力チューブ104よりも上方にはタッチセンサ102が設けられている。また、チャンバ本体部22の車幅方向外側位置端は、上方に位置する圧力チューブ104の一部及びタッチセンサ102に車幅方向において重複して設けられている。
【0039】
なお、特許請求の範囲の記載においては、上部チューブが上方に位置する圧力チューブ104(上方の圧力チューブ104)、下部チューブが下方に位置する圧力チューブ104(下方の圧力チューブ104)に相当する。また、圧力検知手段はタッチセンサ102に、内圧検知手段は圧力センサ28Aに各々対応している。
【0040】
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
図3に示したように、下方に位置する圧力チューブ104はタッチセンサ102よりも車両の前方に設けられているので、フロントバンパ12のコーナー部に何らかの衝突があった場合には、まず、下方の圧力チューブ104が押圧され、次いでタッチセンサ102が衝突を検知した後に、上方の圧力チューブ104が押圧される。
【0041】
本実施の形態では、車両が何と衝突したかにより、タッチセンサ102による衝突の検知の前後で圧力チューブ104に設けられた圧力センサ28Aが各々出力する信号の強弱の関係に差異が生じる。
【0042】
図5は、歩行者と車両との衝突の一態様を示す側面図である。歩行者202が車両204に衝突された場合、まず、歩行者202の脚部にフロントバンパ12のロアアブソーバ32Bの部分が当接し、下方の圧力チューブ104が押圧される。しかしながら、歩行者等の人体は、脚部が地面に固定されていないので、衝突直後に脚部は地面から離れ、
図5の矢印Cの方向からフード206上に倒れ込む。その結果、下方の圧力チューブ104への押圧は限定的なものとなるが、歩行者202がフード206上に倒れ込む過程でアッパーアブソーバ32A内の上方の圧力チューブ104が強く押圧される。
【0043】
図6は、ロードサイドマーカー等の地面に固定された設置物208と車両204との衝突の一態様を示す側面図である。ロードサイドマーカー等の設置物208は、歩行者202のように車両204との衝突によって車両204のフード206上に倒れ込むことが原則としてなく、
図6の矢印D方向に倒れる。従って、衝突直後から下方の圧力チューブ104は強く押圧されるが、上方の圧力チューブ104への押圧は限定的なものとなる。
【0044】
図7は、本実施の形態の圧力チューブ104に設けられた圧力センサ28Aの衝突直後からの出力の変化示す図であり、(A)は歩行者との衝突と判定する場合、(B)は歩行者との衝突とは判定しない場合を示している。
図7(A),(B)において、圧力センサ出力値70A,70Bは圧力チューブ104内部の圧力の変化に基づく圧力センサ28Aの出力値である。タッチセンサ検知ライン72A,72Bは、
図8のタッチセンサ検知ライン82A,82B及び
図9のタッチセンサ検知ライン92A,92B同様にタッチセンサ102が衝突を検知してオンになったことを示している。また、減算出力値74A,74Bは、タッチセンサ102がオンになった後の圧力センサの出力値を、タッチセンサ102がオンになった時の圧力センサ28Aの出力値で減算した結果を示している。
【0045】
本実施の形態では、車両が歩行者又は設置物と衝突した場合、まず下方の圧力チューブ104が押圧され、次いでタッチセンサ102がオンになり、上方の圧力チューブ104が押圧される。したがって、タッチセンサ102がオンになった後の圧力センサ28Aの出力値には、下方の圧力チューブ104の押圧に係る出力値と上方の圧力チューブ104の押圧に係る出力値とが含まれる。タッチセンサ102がオンになった後の上方の圧力チューブ104の押圧に係る出力値は、タッチセンサ102がオンになった後の圧力センサ28Aの出力値から下方の圧力チューブ102の押圧に係る出力値を減算したものである。本実施の形態では、下方の圧力チューブ104のみが押圧されている時であるタッチセンサ102がオンになった時の圧力センサ28Aの出力値で、タッチセンサ102がオンになった後の圧力センサの出力値を減算して減算出力値74A,74Bを算出している。減算出力値74A,74Bは、上方の圧力チューブ104の押圧に係る圧力センサ28Aの出力値の近似値、又は、上方の圧力チューブ104の押圧に係る作用が上記の減算前の出力値よりも大きく反映された出力値である。
【0046】
図5及び
図6を用いて説明したように、車両が歩行者と衝突した場合には、衝突直後における下方の圧力チューブ104の押圧は限定的となる反面、タッチセンサ102がオンになった後には、上方の圧力チューブ104が強く押圧される。本実施の形態では、タッチセンサ102がオンになる前の圧力センサ出力値が第1の閾値a未満であり、かつ上方の圧力チューブ104の押圧に係る出力値に近似する減算出力値が第2の閾値bを超えた場合に車両が歩行者と衝突したと判定する。第1の閾値a及び第2の閾値bは、各々所定の閾値であり、具体的にはコンピュータを用いたシミュレーション及び車両衝突実験等を通じで決定する。また、原則として、本実施の形態では、a<bであるが、a=bであってもよい。
【0047】
図7(A)の場合は、タッチセンサ102がオンになる前の圧力センサ出力値70Aが第1の閾値a未満であり、かつ減算出力値74Aが第2の閾値bを超えているので、車両が歩行者と衝突したと判定される。
図7(B)の場合は、タッチセンサ102がオンになる前の圧力センサ出力値70Bが第1の閾値aを超えているので、減算出力値74Bが第2の閾値bを超えていても車両が歩行者と衝突したとは判定されない。
【0048】
図8は、本実施の形態の圧力チューブ104に設けられた圧力センサ28Aの衝突直後からの出力の変化の
図7とは異なる一態様を示す図であり、(A)は歩行者との衝突と判定する場合、(B)は歩行者との衝突とは判定しない場合を示している。
【0049】
図8(A)の場合は、タッチセンサ102がオンになる前の圧力センサ出力値80Aが第1の閾値a未満であり、かつ減算出力値84Aが第2の閾値bを超えているので、車両が歩行者と衝突したと判定される。
図8(B)の場合は、タッチセンサ102がオンになる前の圧力センサ出力値80Bが第1の閾値a未満ではあるが、減算出力値84Bが第2の閾値b未満なので車両が歩行者と衝突したとは判定されない。
【0050】
図9は、本実施の形態の圧力チューブ104に設けられた圧力センサ28Aの衝突直後からの出力の変化の
図7、
図8とは異なる一態様を示す図であり、(A)は歩行者との衝突と判定する場合、(B)は歩行者との衝突とは判定しない場合を示している。
【0051】
図9は、体重が大きな歩行者又は強固な設置物に車両が衝突した結果、圧力センサ28Aの出力値が
図7、
図8の場合よりも大きくなった場合を示しており、
図9(A)及び
図9(B)のいずれの場合においても、タッチセンサ102がオンになる前の圧力センサ出力値90A,90Bが第1の閾値aを超えており、かつ減算出力値94A,94Bが第2の閾値bを超えている。このため、
図9の場合では、上述の第1の閾値a及び第2の閾値bの関係のみからでは、歩行者との衝突の有無を判定することはできない。
【0052】
しかしながら、前述のように歩行者との衝突では、衝突直後に歩行者はフード上に倒れ込む過程で上方の圧力チューブ104が強く押圧されるが、ロードサイドマーカー等の設置物は衝突直後に車両前方に倒れ込むので、上方の圧力チューブ104は強く押圧されない。本実施の形態では、タッチセンサ102がオンになる前の圧力センサ出力値が第1の閾値aを超えた場合には、減算出力値が第1の閾値a及び第2の閾値bよりも大きな第3の閾値cを超えた場合に、車両が歩行者に衝突したと判定する。
【0053】
図9(A)の場合は、減算出力値94Aが第3の閾値cを超えているので、車両が歩行者と衝突したと判定される。
図9(B)の場合は、減算出力値94Bが第3の閾値c未満なので車両が歩行者と衝突したとは判定されない。
【0054】
本実施の形態では、タッチセンサ102がオンになる前の圧力センサ出力値が第1の閾値a未満の場合には、減算出力値が第2の閾値bを超えた場合に歩行者と衝突したと判定している。また、タッチセンサ102がオンになる前の圧力センサ出力値が第1の閾値aを超えた場合には、減算出力値が第3の閾値cを超えた場合に歩行者と衝突したと判定している。
【0055】
本実施の形態は、1本の圧力チューブ104をフロントバンパ12のコーナー部に横になったU字型に配設され、圧力チューブ104の一端には1の圧力センサ28Aが設けられている。
【0056】
また、本実施の形態では、タッチセンサ102がオンになる前の圧力センサ出力値と、タッチセンサ102がオンになった後の圧力センサ出力値からタッチセンサ102がオン時の圧力センサ出力値を減算した減算出力値とから歩行者との衝突の有無を判定している。上述のように、タッチセンサ102がオンになる前の圧力センサ出力値は下方の圧力チューブ104への押圧に係るものであり、減算出力値は主に上方の圧力チューブ104への押圧にかかるものであると考えられる。さらに、対人衝突ではフロントバンパ12の下部が押圧された後にタッチセンサ102がオンになり、その後にフロントバンパ12の上部が強く押圧される。本実施の形態では、前述のように、タッチセンサ102がオンになる前の圧力センサ出力値と減算出力値とをa≦b<cの関係を有する第1の閾値a、第2の閾値b及び第3の閾値cを適用して、対人衝突か否かを判定している。
【0057】
このように本実施形態によれば、1本の圧力チューブ104と1個の圧力センサ28Aとによる簡素な構成で、フロントバンパ12のコーナー部での対人衝突の有無を判定できるという効果を奏する。
【0058】
図10は、第1の実施の形態に係る歩行者衝突検知システム10の対人衝突判定のフローチャートの一例を示す図である。
図10の処理は、ECU30で実行される。まず、ステップ100では、衝突直後から圧力センサ28Aの出力値を記憶する。ステップ102では、タッチセンサ102がオンになったか否かを判定し、肯定判定の場合には、ステップ104で、減算出力値を算出して記憶する。
【0059】
ステップ106では、記憶したタッチセンサ102がオンになる前の圧力センサ出力値と減算出力値とにa≦b<cの関係を有する第1の閾値a、第2の閾値b及び第3の閾値cを適用して、対人衝突か否かを判定して処理を終了する。
【0060】
(第1の実施の形態の変形例)
図11は、第1の実施の形態の変形例の一例を示す図である。
図4に示した第1の実施の形態では、フロントバンパ12の中央部を中心にチャンバ本体部22が設けられていたが、
図11では、チャンバ本体部の代わりにタッチセンサ112と圧力チューブ114とがフロントバンパ12の車幅方向全域に配設されている。
【0061】
図11に示した変形例では、チャンバ本体部22によって検知したフロントバンパ12への衝突を、第1の実施の形態よりもフロントバンパ12の中央部寄りに配設したタッチセンサ112及び圧力チューブ114に設けられた圧力センサ28Cによって検知する。検知した圧力センサ出力値と圧力センサ出力値から算出される減算出力値とに上述のa≦b<cの関係を有する第1の閾値a、第2の閾値b及び第3の閾値cを適用して、対人衝突か否かを判定する。
【0062】
チャンバ本体部22で衝突を検知した場合には、前述のように衝突荷重を算出して対人衝突の有無を判定するが、
図11に示した変形例では、かかる衝突荷重の算出が不要となるので、演算処理を簡略化できる。
【0063】
なお、
図11に示した変形例では、圧力センサ28Cを圧力チューブ114の一端に設け、他端を閉塞することを原則とするが、圧力チューブ114の他端にも圧力センサ28Dを設け、圧力センサ28Cのバックアップとして用いてもよい。
【0064】
図12は、第1の実施の形態の変形例の他の一例を示す図である。
図12では、チャンバ本体部22の代わりに、タッチセンサ122Aが設けられ、かつ、上方の圧力チューブ124がフロントバンパ12の中央部寄りにまで配設されている。また、下方の圧力チューブ124は、
図4に示した第1の実施の形態と同様にフロントバンパ12のコーナー部に配設され、下方の圧力チューブ124側の端に圧力センサ28Eが設けられている。
【0065】
図12に示した変形例では、フロントバンパ12のコーナー部での衝突を、コーナー部に設けられたタッチセンサ122Bで、フロントバンパ12の中央部での衝突をタッチセンサ122Aで各々検知する。そして、コーナー部での衝突は、第1の実施の形態と同様に、タッチセンサ122Bがオン前の圧力センサ出力値とタッチセンサ122Bがオン後の減算出力値とにa≦b<cの関係を有する第1の閾値a、第2の閾値b及び第3の閾値cを適用して、対人衝突か否かを判定する。
【0066】
また、
図12に示した変形例では、フロントバンパ12の中央部での衝突は、圧力チューブ124に設けられた圧力センサ28Eの出力信号に基づいて衝突荷重を算出して、対人衝突か否かを判定する。
【0067】
図13は、
図11に示す変形例の他の一例を示す図である。
図13では、チャンバ本体部22の代わりにタッチセンサ132がフロントバンパ12のコーナー部から中央部にかけて配設されている。また、フロントバンパ12の上部に圧力チューブ134Aが、同下部には圧力チューブ134Bが、フロントバンパ12のコーナー部から同中央部寄りにまで各々配設され、圧力チューブ134A,134Bのコーナー部側の一端には圧力センサ28F,28Gが各々設けられている。
【0068】
図11が示す変形例のように上方と下方とが連通した1本の圧力チューブではなく、上方と下方とで独立した2本の圧力チューブ134A,134Bを配設したことにより、フロントバンパ12の上部の衝突と下部の衝突とを各々の圧力チューブ内の圧力変化によって判別できる。従って、上記した各実施の形態のように、減算出力値を算出する必要がなく、対人衝突の判定に係る演算処理を簡略化できる。
【0069】
また、
図13に示した変形例では、フロントバンパ12の中央部での衝突もタッチセンサ132、上方の圧力チューブ134Aに設けられた圧力センサ28F及び下方の圧力チューブ134Bに設けられた圧力センサ28Gによって検知する。検知した圧力センサ出力値と圧力センサ出力値から算出される減算出力値とに上述のa≦b<cの関係を有する第1の閾値a、第2の閾値b及び第3の閾値cを適用して、対人衝突か否かを判定する。
【0070】
チャンバ本体部22で衝突を検知した場合には、前述のように衝突荷重を算出して対人衝突の有無を判定するが、
図13に示した変形例では、かかる衝突荷重の算出が不要となるので、演算処理を簡略化できる。
【0071】
なお、
図13に示した変形例では、上方の圧力センサ28Fを上方の圧力チューブ134Aの一端に、下方の圧力センサ28Gを下方の圧力チューブ134Bの一端に設け、他端を閉塞することを原則とするが、上方の圧力チューブ134Aの他端に圧力センサ28Hを、下方の圧力チューブ134Bの他端に圧力センサ28Iを各々設けてもよい。圧力センサ28Hは圧力センサ28Fの、圧力センサ28Iは圧力センサ28Gの、各々バックアップとして用いることができる。
【0072】
以上説明したように、本実施の形態によれば、バンパ12のコーナー部での衝突から対人衝突を精度よく判別することができる。