(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ワイヤーハーネスを荷姿形態に保つための構成としては、ワイヤーハーネスを折畳んだ状態で、その外周に粘着テープ等を巻付けることが考えられる。
【0006】
しかしながら、折畳まれたワイヤーハーネスに粘着テープ等を巻付けるためには、当該折畳まれたワイヤーハーネスを持上げる必要がある。ワイヤーハーネスは、長尺部材であり、そのような巻付作業を行うことは困難である。
【0007】
そこで、本発明は、ワイヤーハーネスの荷姿形態を容易に製造できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の態様は、曲げ返されたワイヤーハーネスに荷姿用線状部材を巻付けるためのワイヤーハーネスの荷姿形態製造支援装置であって、曲げ返されたワイヤーハーネスを載置可能で、かつ、作業用開口が形成された作業台と、前記作業用開口を挟む位置で前記作業台に立設された2つのワイヤーハーネス位置決め部材と、を備える。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係るワイヤーハーネスの荷姿形態製造支援装置であって、前記作業台に、前記ワイヤーハーネスを展開した状態で支持可能な展開支持部が設けられているものである。
【0010】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るワイヤーハーネスの荷姿形態製造支援装置であって、前記荷姿用線状部材を、前記作業用開口において前記2つのワイヤーハーネス位置決め部材を結ぶ軸の周りで旋回可能に支持する旋回支持部を備えるものである。
【0011】
第4の態様は、第3の態様に係るワイヤーハーネスの荷姿形態製造支援装置であって、前記旋回支持部を旋回駆動する旋回駆動部をさらに備える。
【0012】
第5の態様は、第3又は第4の態様に係るワイヤーハーネスの荷姿形態製造支援装置であって、前記旋回支持部は、荷姿用線状部材としての粘着テープの巻回体を回転可能に支持する巻回体支持部を含む。
【0013】
第6の態様は、ワイヤーハーネスを曲げ返してこれに荷姿用線状部材を巻付ける、ワイヤーハーネスの荷姿形態の製造方法であって、(a)作業台上に立設された2つのワイヤーハーネス位置決め部材によってワイヤーハーネスを位置決め支持しつつ、前記ワイヤーハーネスを前記作業台上に曲げ返して載置する工程と、(b)前記ワイヤーハーネスのうち曲げ返しによって集合した部分に、前記作業台のうち前記2つのワイヤーハーネス位置決め部材間に形成された作業用開口を利用して、荷姿用線状部材を巻付ける工程と、を備える。
【0014】
第7の態様は、第6の態様に係るワイヤーハーネスの荷姿形態の製造方法であって、前記工程(b)において、前記ワイヤーハーネスのうち曲げ返しによって集合した部分に、前記荷姿用線状部材を手作業で巻付けるものである。
【0015】
第8の態様は、第6又は第7の態様に係るワイヤーハーネスの荷姿形態の製造方法であって、前記工程(a)の前において、前記作業台上で、ワイヤーハーネスの外観検査を行う工程をさらに備える。
【発明の効果】
【0016】
第1の態様に係るワイヤーハーネスの荷姿形態製造支援装置によると、作業台上でワイヤーハーネスを曲げ返して載置することができる。この際、2つのワイヤーハーネス位置決め部材によって曲げ返されたワイヤーハーネスを位置決め支持し、ワイヤーハーネスのうち曲げ返しによって集合した部分を、2つのワイヤーハーネス位置決め部材間であって作業用開口上方位置を通過する位置に配設することができる。これにより、作業用開口を利用して、ワイヤーハーネスのうち曲げ返しによって集合した部分の周りに荷姿用線状部材を容易に巻付けることができ、ワイヤーハーネスの荷姿形態を容易に製造できる。
【0017】
第2の態様によると、作業台上でワイヤーハーネスを展開した状態で支持してその外観検査等を実施し、続けて、ワイヤーハーネスの荷姿形態を容易に製造できる。
【0018】
第3の態様によると、旋回支持部を旋回させることで、当該旋回支持部によって支持された荷姿用線状部材が、ワイヤーハーネスのうち曲げ返しによって集合した部分であって作業用開口上に配設された部分に容易に巻付けることができる。
【0019】
第4の態様によると、旋回駆動部の駆動によって、荷姿用線状部材をワイヤーハーネスのうち曲げ返しによって集合した部分に容易に巻付けることができる。
【0020】
第5の態様によると、荷姿用線状部材としての粘着テープを、荷姿用線状部材をワイヤーハーネスのうち曲げ返しによって集合した部分に容易に巻付けることができる。
【0021】
第6の態様によると、作業用開口を利用して、ワイヤーハーネスのうち曲げ返しによって集合した部分の周りに荷姿用線状部材を容易に巻付けることができ、ワイヤーハーネスの荷姿形態を容易に製造できる。
【0022】
第7の態様によると、手作業による荷姿用線状部材の巻付作業を容易に行える。
【0023】
第8の態様によると、同じ作業台上で、外観作業に続けて、荷姿用線状部材を巻付ける工程を実施でき、ワイヤーハーネスの荷姿形態を容易に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
{第1実施形態}
以下、第1実施形態に係るワイヤーハーネスの荷姿形態製造支援装置及びワイヤーハーネスの荷姿形態の製造方法について説明する。
【0026】
<ワイヤーハーネス10の荷姿形態について>
まず、ワイヤーハーネス10の荷姿形態の一例について説明しておく。
図1はワイヤーハーネス10の一例を示す図であり、
図2は同ワイヤーハーネス10の荷姿形態18の一例を示す図である。
【0027】
ワイヤーハーネス10は、複数の電線12が束ねられることにより形成されている。複数の電線12は、当該複数の電線に巻回された粘着テープ、結束バンド等の結束部材によって束ねられた状態に維持される。ワイヤーハーネス10は、その延在方向途中で分岐していてもよい。
図1に示す例では、ワイヤーハーネス10は、その延在方向途中の1箇所で分岐している。ワイヤーハーネス10には、光ケーブル等が含まれていてもよい。また、ワイヤーハーネス10には、コルゲートチューブ等の保護部材、車体への固定のためのクランプ部材が取付けられていてもよい。
【0028】
ワイヤーハーネス10は、車両における配線経路に応じた形態となるように結束される。また、ワイヤーハーネス10の端部にはコネクタ14が接続されている。そして、本ワイヤーハーネス10が車両に組付けられた状態で、各コネクタ14が車両の各種電気部品に接続される。これにより、ワイヤーハーネス10は、車両における各種でき部品同士を電気的に接続する配線材として用いられる。
【0029】
上記ワイヤーハーネス10は、長尺形状を呈する。このため、ワイヤーハーネス10の製造箇所から、車両へのワイヤーハーネス10の組付箇所への搬送は困難となる。
【0030】
そこで、
図2に示すように、ワイヤーハーネス10を少なくとも1箇所で曲げて、当該ワイヤーハーネス10の延在方向の一部と他の部分とを集合させ、その集合部分に荷姿用線状部材16を巻付ける。結束部材としては、粘着テープ、紐、結束バンド等を用いることができる。粘着テープであれば、当該粘着テープをワイヤーハーネス10の集合部分に巻付けて粘着させることで、ワイヤーハーネス10の集合部分の結束状態を維持できる。これにより、ワイヤーハーネスの荷姿形態18を製造できる。紐を用いる場合、ワイヤーハーネス10の集合部分に巻付けた後、当該紐の両端を結べばよい。
【0031】
図2に示すワイヤーハーネス10の荷姿形態18では、ワイヤーハーネス10が8の字を描くように曲げられ、ワイヤーハーネス10の2つの曲げ部分間で、ワイヤーハーネス10の延在方向における複数の中間部分が交差しつつ集合している。そして、その集合部分の外周に荷姿用線状部材16が巻付けられている。
【0032】
かかるワイヤーハーネス10の荷姿形態18によると、ワイヤーハーネス10をコンパクトな形態とすることができる。このため、ワイヤーハーネス10を搬送し易い。例えば、複数のワイヤーハーネス10の荷姿形態をコンテナ等に収容して容易に搬送することができる。
【0033】
本実施形態で説明するワイヤーハーネスの荷姿形態製造支援装置及びワイヤーハーネスの荷姿形態の製造方法は、上記のようなワイヤーハーネス10の荷姿形態18を製造するため技術に関する。
【0034】
<ワイヤーハーネスの荷姿形態製造支援装置>
図3はワイヤーハーネス10の荷姿形態製造支援装置20を示す斜視図である。このワイヤーハーネス10の荷姿形態製造支援装置20は、曲げ返された状態で載置支持されたワイヤーハーネス10に対して、荷姿用線状部材としての粘着テープ16aを巻付ける際に、その巻付作業を支援するためのものであり、作業台30と、2つのワイヤーハーネス位置決め部材40とを備える。
【0035】
作業台30は、曲げ返されたワイヤーハーネス10を載置可能な上向きの作業面31を有している。ここでは、作業台30は、方形状の板状部材とされている。作業台30は、図示省略の支持機構によって、作業者の手作業に適した高さ位置に支持されている。作業台30は、水平姿勢で支持されていてもよいし、傾斜姿勢で支持されていてもよい。
【0036】
作業台30には、作業用開口32が形成されている。ここでは、作業台30の幅方向中間部にその幅方向に対して直交する方向に長い方形状の作業用開口32が形成されている。作業用開口32の幅寸法(作業用開口32の短辺の延在方向における寸法)は、粘着テープ16aの幅よりも大きく設定され、好ましくは、作業者の手が通過可能な程度の寸法に設定されている。作業用開口32の長さ寸法(作業用開口32の長辺の延在方向における寸法)は、ワイヤーハーネス10のうち折り返しによって集合した部分の幅寸法よりも大きく設定されている。作業用開口32の長さ寸法は、ワイヤーハーネス10のうち折り返しによって集合した部分の幅寸法に、作業者の手を通過可能な寸法を2倍して加算した程度に設定されていることが好ましい。そして、ワイヤーハーネス10のうち折り返しによって集合した部分を、作業用開口32上を横切るように配設した状態で、当該作業用開口32の長手方向両端側に作業者の手が通過可能な開口が形成されることが好ましい。
【0037】
ここでは、作業用開口32の周囲全体が作業台30によって囲まれているが、これは必須ではない。例えば、作業用開口の長手方向一端部又は両端部が、作業台の周縁部に達していてもよい。
【0038】
2つのワイヤーハーネス位置決め部材40は、作業用開口32を挟む位置で作業台30に立設されている。換言すれば、2つのワイヤーハーネス位置決め部材40の間に、作業用開口32が形成されている。
【0039】
各ワイヤーハーネス位置決め部材40は、作業台30の周縁部よりも内側よりの位置であって、作業用開口32の両側外方に離れた位置に配設されている。このため、各ワイヤーハーネス位置決め部材40の基端部の周囲全体に、作業台30の作業面31が配設されており、ワイヤーハーネス位置決め部材40の周囲全体で、作業面31上にワイヤーハーネス10の曲げ返し部分を安定して載置することができる。
【0040】
もっとも、ワイヤーハーネス位置決め部材40の基端部の周囲全体に、作業台30の作業面31が配設されていることは必須ではない。ワイヤーハーネス位置決め部材は、作業台の周縁部又は作業用開口32の周縁部に位置して立設されていてもよい。
【0041】
なお、ここでは、2つのワイヤーハーネス位置決め部材40のうちの一方は、作業用開口32の長手方向中央部に対してその一端側にずらした位置に配設され、2つのワイヤーハーネス位置決め部材40のうちの他方は、作業用開口32の長手方向中央部に対してその他端側にずらした位置に配設されている。これにより、作業台30の手前側部分及び奥側部分のスペースを活用して、曲げ返されたワイヤーハーネス10を、比較的小さい幅の作業スペース内に収めて作業台30上に載置することができる。
【0042】
また、ワイヤーハーネス位置決め部材40は、金属等で丸棒状に形成されている。作業台30に対するワイヤーハーネス位置決め部材40の固定は、ネジ止、嵌め込み構造等によって行うことができる。ワイヤーハーネス位置決め部材40の構成は上記例に限られず、角柱状等に形成されていてもよい。ワイヤーハーネス位置決め部材は、ワイヤーハーネスの曲げ返された部分を当該ワイヤーハーネス位置決め部材周りに配設して、一定位置に支持できる構成であればよい。
【0043】
なお、上記2つのワイヤーハーネス位置決め部材40以外に、ワイヤーハーネスを補助的に支持する部材等が設けられていてもよい。ワイヤーハーネス10の外観検査を行う際に、ワイヤーハーネス10を支持するための部材を設けた例については、第2実施形態で説明する。
【0044】
また、2つのワイヤーハーネス位置決め部材間に複数の作業用開口が設けられていてもよい。これにより、ワイヤーハーネスに対して2箇所で荷姿用線状部材を容易に巻回することができる。
【0045】
また、作業用開口は、一方向に長い方形状である必要はない。作業用開口は、正方形状、多角形状、円形状等であってもよい。
【0046】
<ワイヤーハーネスの荷姿形態の製造方法>
上記ワイヤーハーネス10の荷姿形態製造支援装置20を用いて、曲げ返されたワイヤーハーネス10に荷姿用線状部材としての粘着テープ16aを巻付ける、ワイヤーハーネス10の荷姿形態18の製造方法について説明する。
【0047】
まず、
図4に示すように、作業台30上に立設された2つのワイヤーハーネス位置決め部材40によってワイヤーハーネス10を位置決め支持しつつ、ワイヤーハーネス10を作業台30上に曲げ返した状態で載置する。
【0048】
より具体的には、作業者が、ワイヤーハーネス10を、一方のワイヤーハーネス位置決め部材40で曲げ返した後、他方のワイヤーハーネス位置決め部材40に向けて引っ張り、他方のワイヤーハーネス位置決め部材40で逆曲げ方向に曲げ返し、再度、一方のワイヤーハーネス位置決め部材40に向けて引っ張り、一方のワイヤーハーネス位置決め部材40で曲げ返す。これを繰返すと、ワイヤーハーネス10が2つのワイヤーハーネス位置決め部材40で折返されると共に、ワイヤーハーネス10の折返し部分がワイヤーハーネス位置決め部材40の基端部の周縁部で作業台30上に載置支持される。また、2つのワイヤーハーネス位置決め部材40間において、ワイヤーハーネス10のうち折り返しによって集合した部分が、交差しつつ作業用開口32上を横切るように配設される。これにより、ワイヤーハーネス10が8の字を描くように曲げられる。
【0049】
次に、
図5に示すように、ワイヤーハーネス10のうち曲げ返しによって集合した部分に、作業用開口を利用して、粘着テープ16aを巻付ける。本実施形態では、粘着テープ16aは、手作業によって巻付けられる。
【0050】
粘着テープ16aとしては、
図5及び
図6に示すように、輪状の巻芯16bに、帯状の粘着テープ16aが複数回巻かれた形態である粘着テープ巻回体16cを用いることができる。粘着テープ16aの一側部又は両側部には、その幅方向途中まで切込むスリット16sが形成されていることが好ましい。粘着テープ16aにスリット16sが形成されていれば、ワイヤーハーネス10の荷姿形態を車両に組付ける際に、粘着テープ16aを容易に切断して、車両への組付に適した状態に容易に展開できるからである。
【0051】
そして、作業者が粘着テープ巻回体16cを手で持ち、粘着テープ16aの先端部をワイヤーハーネス10の上記集合部分等に貼付け、その後、粘着テープ巻回体16cをワイヤーハーネス10の集合部分周りに移動させる(
図5の矢符A参照)。この際、ワイヤーハーネス10の集合部分の上方には空間が広がっており、その両側方には作業用開口32の両端側部分が開口しており、その下方には作業用開口32を通じて空間が広がっている。このため、粘着テープ巻回体16cを、ワイヤーハーネス10の集合部分周りに容易に移動させることができる。
【0052】
粘着テープ巻回体16cを、ワイヤーハーネス10の集合部分周りで移動させると、粘着テープ16aは、ワイヤーハーネス10の集合部分周り又は既に巻付けられた粘着テープ16aに粘着し、ワイヤーハーネス10の集合部分を結束した状態に維持する。粘着テープ16aを巻付ける際には、作業者が手でワイヤーハーネス10の一部を押える等してもよい。ワイヤーハーネス10の集合部分周りに粘着テープ16aを1回以上巻付けた後、巻付けられた粘着テープ16aと、粘着テープ巻回体16cに残存する粘着テープ16aとを、スリット16sを利用して切断すると、これにより、
図7に示すように、作業台30上に、ワイヤーハーネス10の集合部分が粘着テープ16aによって結束されたもの、すなわち、ワイヤーハーネス10の荷姿形態18を製造することができる。
【0053】
<効果等>
以上のように構成されたワイヤーハーネス10の荷姿形態製造支援装置20及びワイヤーハーネス10の荷姿形態18の製造方法によると、作業台30上でワイヤーハーネス10を曲げ返して載置することができる。この際、2つのワイヤーハーネス位置決め部材40によって、曲げ返されたワイヤーハーネス10を位置決め支持し、ワイヤーハーネス10の曲げ返しによって集合した部分を、2つのワイヤーハーネス位置決め部材40間の作業用開口32の上方位置を通過する位置に配設することができる。これにより、ワイヤーハーネス10を持上げたりすることなく、作業用開口32を利用して、ワイヤーハーネス10のうち曲げ返しによって集合した部分の周りに荷姿用線状部材としての粘着テープ16a等を容易に巻付けることができる。
【0054】
また、ワイヤーハーネス10を作業台30上に載置した状態で、粘着テープ16a等の巻付作業を実施できるため、ワイヤーハーネス10の曲げ返し形態が崩れ難い。このため、ワイヤーハーネス10の荷姿形態18が安定化し、その搬送形態の品質向上を図ることができる。
【0055】
また、手作業によって粘着テープ16a等の巻付作業を行うため、作業台30に粘着テープ16aを旋回させる駆動機構等を組込む必要が無く、ワイヤーハーネス10の荷姿形態製造支援装置20の構成が簡易となる。
【0056】
{第2実施形態}
第2実施形態に係るワイヤーハーネスの荷姿形態製造支援装置及びワイヤーハーネスの荷姿形態の製造方法について説明する。
【0057】
<ワイヤーハーネスの荷姿形態製造支援装置>
図8はワイヤーハーネス110の荷姿形態製造支援装置120を示す斜視図であり、
図9は旋回支持部150を示す平面図であり、
図10は粘着テープ巻回体16cの支持部分を示す斜視図である。
【0058】
このワイヤーハーネス110の荷姿形態製造支援装置120は、上記第1実施形態と同様に、曲げ返された状態で載置支持されたワイヤーハーネス110に対して、荷姿用線状部材としての粘着テープ16aを巻付ける際に、その巻付作業を支援するためのものであり、作業台130と、2つのワイヤーハーネス位置決め部材140と、旋回支持部150と、旋回駆動部160とを備える。本荷姿形態製造支援装置120と上記荷姿形態製造支援装置20との主な相違点は、ワイヤーハーネス110のうち折り返しによって集合した部分周りで粘着テープ巻回体16cを旋回させる構成として、旋回支持部150と、旋回駆動部160とを備えることである。
【0059】
作業台130は、上記作業台30と同様に、曲げ返されたワイヤーハーネス110を載置可能な上向きの作業面131を有している。ここでは、作業台130は、方形状の板状部材とされている。作業台130は、脚部138によって、作業者の手作業に適した高さ位置に支持されている。作業台130は、水平姿勢で支持されていてもよいし、傾斜姿勢で支持されていてもよい。ここでは、作業台130は、作業者側に向けて斜め下方に傾斜する姿勢で支持されている。
【0060】
作業台130には、上記作業用開口32と同様の作業用開口132が形成されている。ここでは、作業用開口132は一方向に長い方形状に形成されているが、その長手方向は、上記第1実施形態における作業用開口32とは異なり、作業台130の幅方向(
図8の左右方向)に沿って長い形状に形成されている。
【0061】
また、作業用開口132の2つの短辺の外方延長上に、旋回支持部150を通過させるための細長開口133が形成されている。
【0062】
2つのワイヤーハーネス位置決め部材140は、第1実施形態におけるワイヤーハーネス位置決め部材40と同様に、作業用開口132を挟む位置で作業台130に立設されている。
【0063】
ここでは、各ワイヤーハーネス位置決め部材140は、作業用開口132と細長開口133とで囲まれる方形領域部分内に立設されている。このため、各ワイヤーハーネス位置決め部材140の基端部の周囲全体に、作業台130の作業面131が配設されており、ワイヤーハーネス位置決め部材140の周囲全体で、作業面131上にワイヤーハーネス110の曲げ返し部分を安定して載置することができる。
【0064】
なお、ここでは、2つのワイヤーハーネス位置決め部材140を結ぶ方向は、作業用開口132の長手方向に対して直交している。
【0065】
ワイヤーハーネス位置決め部材140は、上記ワイヤーハーネス位置決め部材40と同様に、金属等で棒状部材に形成されている。
【0066】
また、作業台130の作業面131は、作業台130の幅方向、即ち、2つのワイヤーハーネス位置決め部材140を結ぶ方向に対して交差(ここでは直交)する方向において、作業用開口132の両側にも広がっている。作業面131のうち作業用開口132の両側に広がる部分に、展開支持部134が立設されている。
【0067】
ここでは、展開支持部134は、作業用開口132から外方に離れた位置であって、傾斜する作業台130の上よりの位置に立設されている。展開支持部134は、金属等で丸棒状に形成されている。作業台130に対する展開支持部134の固定は、ネジ止、嵌め込み構造等によって行うことができる。
【0068】
そして、展開支持部134によって、ワイヤーハーネス110を展開した状態で支持できるようになっている(
図11参照)。ここで、ワイヤーハーネス110の展開状態とは、ワイヤーハーネス110をなるべく交差しないように広げて、全体を容易に目視できるようにし、その外観検査に適した形態に広げた状態をいう。
【0069】
なお、展開支持部134の構成は上記例に限られず、角柱状、U字形状、T字形状等に形成されていてもよい。
【0070】
旋回支持部150は、作業台130において、粘着テープ巻回体16cを、2つのワイヤーハーネス位置決め部材140を結ぶ軸の周りで旋回可能に支持するように構成されている。
【0071】
ここでは、旋回支持部150は、軸受部152と、リング体154と、旋回棒部156とを備える。
【0072】
軸受部152は、周知である軸受構造を含む構造等によってリング体154を回転可能に支持する部材であり、作業用開口132の2つの短辺の一端側延長上にある2つの細長開口133の先端部間に設けられている。
【0073】
より具体的には、作業台130は、作業用開口132の2つの短辺の一端側延長上にある2つの細長開口133の先端部間で、当該2つの細長開口133及び作業用開口132とで囲まれる方形領域部分130aと、その他の周囲領域部分130bとに分断されている(
図9参照)。軸受部152は、上記2つの細長開口133の先端部間で、作業台130のうち前記周囲領域部分130bにブラケット等を介して固定されている。また、方形領域部分130aは、軸受部152に対してブラケット等を介して片持ち状に支持されている。
【0074】
リング体154は、軸受部152の外周囲に回転可能に配設されたリング状部材である。リング体154は、2つの細長開口133を通る回転軌跡に沿って回転可能に支持されている。
【0075】
旋回棒部156は、リング体154の一方主面に細長開口133の延在方向に沿う姿勢で取付けられている。旋回棒部156は、少なくとも作業用開口132に達する長さ寸法に設定される。ここでは、旋回棒部156は、作業用開口132を越える長さ寸法に設定されている。
【0076】
この旋回棒部156は、荷姿用線状部材としての粘着テープ巻回体16cを回転可能に支持する巻回体支持部157を備える。
【0077】
すなわち、旋回棒部156は、丸棒状に形成されており、その長手方向中間部に鍔部157aが固定されている(
図10参照)。また、旋回棒部156には、その先端部より筒部158が着脱可能に装着される。筒部158の内径寸法は、旋回棒部156の外径寸法よりも大きい(僅かに大きく)。また、筒部158には、内外に貫通するネジ孔158hが形成され、当該ネジ孔158hにネジ159が螺合されている。そして、旋回棒部156を巻芯16b内に挿入するようにして、粘着テープ巻回体16cを旋回棒部156に対して鍔部157aに接触する位置まで外嵌めする。この後、筒部158を旋回棒部156に外嵌めし、粘着テープ巻回体16cに接触する手前の位置で、ネジ159を締付けて、筒部158の内周部でネジ159の先端部を旋回棒部156の外周面に押付ける。これにより、筒部158が旋回棒部156に対して一定位置に取付けられる。この状態では、展開支持部134は、鍔部157aと筒部158との間で、旋回棒部156周りに回転可能に支持されることになる。すなわち、旋回棒部156のうち粘着テープ巻回体16cが外嵌めされる部分と、鍔部157aと、筒部158とで、巻回体支持部157が構成されている。
【0078】
旋回棒部156からの粘着テープ巻回体16cの抜け防止は、上記筒部158の他、ゴム又は樹脂等で形成された筒部材を外嵌めすること等によって実現されてもよい。
【0079】
上記旋回棒部156は、リング体154の回転中心周りに回転する。ここでは、リング体154の回転中心は、2つのワイヤーハーネス位置決め部材140の基端部を結ぶ軸と一致している。このため、旋回棒部156及びこれによって支持された粘着テープ巻回体16cは、2つのワイヤーハーネス位置決め部材140の基端部を結ぶ軸周りに回転する。もっとも、旋回棒部156等の回転軸と、2つのワイヤーハーネス位置決め部材140の基端部を結ぶ軸とは一致している必要はなく、一方が他方に対して傾いていてもよい。このような場合も、旋回棒部156及びこれによって支持された粘着テープ巻回体16cが、2つのワイヤーハーネス位置決め部材140の基端部を結ぶ軸周りに回転する場合に含まれる。
【0080】
旋回駆動部160は、旋回支持部150を旋回駆動するように構成されている。
【0081】
ここでは、旋回駆動部160は、回転量の制御が可能なステッピングモータ等のモータ162を含む。モータ162の軸には歯車164が取付けられている(
図9参照)。
【0082】
また、上記リング体154は、軸受部152に対して旋回棒部156の反対側に環状に突出しており、その環状突出部分の内周部に内歯車155が形成されている。
【0083】
旋回駆動部160は、歯車164を内歯車155にかみ合せる位置及び姿勢で、作業台130に固定されている。そして、モータ162を回転駆動させると、その回転駆動力が歯車164及び内歯車155を介してリング体154に伝達され、もって、リング体154、旋回棒部156が回転駆動される。
【0084】
なお、旋回駆動部の回転運動は、他のギヤ伝達構造、プーリ及びベルト等を介した伝達構造等によって旋回支持部に伝達される構成であってもよい。
【0085】
上記モータ162の回転数は、制御ユニット166によって制御可能に構成されている。制御ユニット166は、CPU、ROMおよびRAM等を備える一般的なマイクロコンピュータであり、その演算動作は非一時的な記憶装置に予め格納されたソフトウェアプログラムに従って実行される。
【0086】
ここでは、制御ユニット166には、スイッチ168からの信号及びモータ162から回転量等を示す信号が入力される。制御ユニット166は、スイッチ168を介して回転開始指令を受付けると、駆動回路を通じてモータ162を回転駆動させる。そして、制御ユニット166は、モータ162からの回転数を示す信号に基づいて、リング体154及び旋回棒部156の回転数を判断し、その回転数が予め設定された回転数(1回以上、3〜4回が好ましい)に達した時点で、モータ162の回転を停止する。
【0087】
なお、制御ユニット166が実行する各種処理の一部又は全部がハードウェアによって実現されてもよい。
【0088】
また、旋回駆動部160を設けることは必須ではない。作業者の手動によって、旋回支持部が旋回する構成であってもよい。
【0089】
<ワイヤーハーネスの荷姿形態の製造方法>
上記ワイヤーハーネス110の荷姿形態製造支援装置120を用いて、曲げ返されたワイヤーハーネス110に荷姿用線状部材としての粘着テープ16aを巻付ける、ワイヤーハーネス110の荷姿形態118の製造方法について説明する。
【0090】
なお、旋回棒部156には、事前に粘着テープ巻回体16cが回転可能に支持されているものとする。
【0091】
まず、
図11に示すように、作業台130上で、ワイヤーハーネス110の外観検査工程を行う。
【0092】
すなわち、本作業台130は、ワイヤーハーネス110を組立てる作業箇所に近い位置に設けられており、組立てられたワイヤーハーネス110が本作業台130に移される。そして、ワイヤーハーネス110を作業台130上で展開支持部134によって展開された状態に支持する。このように作業台130で展開支持されたワイヤーハーネス110に対して、保護部材、車両への固定用部品等が設計された通りにとりつけられているか否か、各部の寸法が設計通りであるか否か等の外観検査が実施される。
【0093】
この後、
図12に示すように、2つのワイヤーハーネス位置決め部材140によってワイヤーハーネス110を位置決め支持しつつ、ワイヤーハーネス110を作業台130上に曲げ返して載置する。
【0094】
ここでは、ワイヤーハーネス110を、一方のワイヤーハーネス位置決め部材140で曲げ返した後、他方のワイヤーハーネス位置決め部材140に向けて引っ張り、他方のワイヤーハーネス位置決め部材140で同方向に曲げるように曲げ返し、再度、一方のワイヤーハーネス位置決め部材140に向けて引っ張ることを繰返す。すると、ワイヤーハーネス110が2つのワイヤーハーネス位置決め部材140で折返されると共に、ワイヤーハーネス110の折返し部分がワイヤーハーネス位置決め部材140の基端部の周縁部で作業台130上に載置支持される。また、2つのワイヤーハーネス位置決め部材140間において、ワイヤーハーネス110のうち折り返しによって集合した部分が、並行状態で作業用開口32上を横切るように配設される。なお、上記第1実施形態と同様に、ワイヤーハーネス110が8の字を描くように曲げられていてもよい。
【0095】
この後、粘着テープ巻回体16cから引出される粘着テープ16aの先端部をワイヤーハーネス110の集合部分に粘着させる。そして、作業者がスイッチ168を操作して制御ユニット166に対して回転開始指令を与える。すると、制御ユニット166による制御下、旋回駆動部160が旋回棒部156を所定数回転させる。これにより、旋回棒部156及び粘着テープ巻回体16cが前記作業用開口132において前記集合部分周りに回転し(
図12矢符B参照)、粘着テープ16aが当該集合部分に巻付けられる。
【0096】
なお、旋回棒部156が旋回する際、ワイヤーハーネス110の一部が外方に大きくはみ出し、細長開口133に達していると、当該旋回棒部156は、ワイヤーハーネス110のはみ出し部分に干渉する。この干渉の有無を確認することによって、ワイヤーハーネス110が所定の範囲内に収るように曲げられているか否かを確認することができ、もって、ワイヤーハーネス110の荷姿形態118を安定化させることができる。
【0097】
旋回棒部156及び粘着テープ巻回体16cが所定数回転した後、その回転が停止する。この後、作業者が、粘着テープ16aをスリット16sで切断すると、ワイヤーハーネス110の集合部分に粘着テープ16aが巻付けられ、ワイヤーハーネス110の荷姿形態を製造することができる。
【0098】
<効果等>
以上のように構成されたワイヤーハーネス110の荷姿形態製造支援装置120及びワイヤーハーネス110の荷姿形態118の製造方法によると、粘着テープ16aを手作業で巻付けることによる作用効果を除いて、上記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0099】
また、作業台130にワイヤーハーネス110を展開した状態で支持可能な展開支持部134が設けられているため、当該作業台130でワイヤーハーネス110の外観作業を行った後、続けて同じ作業台130でワイヤーハーネス110を荷姿形態118に製造する作業を行える。このため、これらの一連の作業を効率的に実施でき、ワイヤーハーネス110を荷姿形態118に容易に製造できる。
【0100】
勿論、上記展開支持部134を設けること、外観作業を実施することは必須ではない。
【0101】
また、旋回支持部150によって粘着テープ巻回体16cを旋回させることによって、粘着テープ16aをワイヤーハーネス110のうち曲げ返しによって集合された部分であって作業用開口132に配設された部分に容易に巻付けることができる。
【0102】
また、旋回駆動部160を設ければ、当該旋回駆動部160の駆動によって、粘着テープ16aをワイヤーハーネス110の上記集合部分に容易に巻付けることができる。
【0103】
{変形例}
なお、上記各実施形態で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0104】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。