(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
同軸上に、入力部と、4つのプラネタリギヤセットと、上記入力部に入力された動力が、上記4つのプラネタリギヤセットにより形成される動力伝達経路を介して伝達される出力部と、上記動力伝達経路を変更するための5つの摩擦締結要素とを備えた自動変速機であって、
上記4つのプラネタリギヤセットは、
第1サンギヤ、第1キャリア及び第1リングギヤを有する、ダブルピニオン型の第1プラネタリギヤセット、
第2サンギヤ、第2キャリア及び第2リングギヤを有する、シングルピニオン型の第2プラネタリギヤセット、
第3サンギヤ、第3キャリア及び第3リングギヤを有する、シングルピニオン型の第3プラネタリギヤセット、並びに、
第4サンギヤ、第4キャリア及び第4リングギヤを有する、シングルピニオン型の第4プラネタリギヤセット
であり、
上記第3キャリア及び上記第4サンギヤが上記入力部に常時連結され、
上記出力部が上記第4リングギヤに常時連結され、
上記第1キャリアと上記第3サンギヤとが常時連結され、
上記第2サンギヤと上記第3リングギヤとが常時連結され、
上記第1リングギヤと上記第2リングギヤとが常時連結され、
上記5つの摩擦締結要素は、
上記第2キャリアと上記第4キャリアとの間を断接する第1クラッチ、
上記第2サンギヤ及び上記第3リングギヤと上記第4キャリアとの間を断接する第2クラッチ、
上記第1キャリア及び上記第3サンギヤと上記第2キャリアとの間を断接する第3クラッチ、
上記第1リングギヤ及び上記第2リングギヤと変速機ケースとの間を断接する第1ブレーキ、並びに、
上記第1サンギヤと上記変速機ケースとの間を断接する第2ブレーキ
であることを特徴とする自動変速機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、第1プラネタリギヤセットのキャリアと入力軸とを連結する連結部材、第4プラネタリギヤセットのリングギヤと出力部とを連結する連結部材、プラネタリギヤセット同士を連結する連結部材等が、プラネタリギヤセットの外周側や内周側を通り抜けるように配設されるため、自動変速機がその軸方向に対して垂直な方向(径方向)に大きくなるという問題がある。特に第4プラネタリギヤセットの内周側においては、入力軸の他に3つの連結部材が通っているため、自動変速機における第4プラネタリギヤセットに対応する部分が軸方向に対して垂直な方向にかなり大きくなってしまう。しかも、第4プラネタリギヤセットのリングギヤに出力部が連結されるので、第4プラネタリギヤセットの各構成ギヤには大きな力がかかることになるため、該各構成ギヤを小型化することが困難である。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、4つのプラネタリギヤセットと5つの摩擦締結要素とを備えた自動変速機であって、その軸方向に対して垂直な方向にコンパクトにすることが可能な新規な自動変速機を提供しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明では、同軸上に、入力部と、4つのプラネタリギヤセットと、上記入力部に入力された動力が、上記4つのプラネタリギヤセットにより形成される動力伝達経路を介して伝達される出力部と、上記動力伝達経路を変更するための5つの摩擦締結要素とを備えた自動変速機を対象として、上記4つのプラネタリギヤセットは、第1サンギヤ、第1キャリア及び第1リングギヤを有する、ダブルピニオン型の第1プラネタリギヤセット、第2サンギヤ、第2キャリア及び第2リングギヤを有する、シングルピニオン型の第2プラネタリギヤセット、第3サンギヤ、第3キャリア及び第3リングギヤを有する、シングルピニオン型の第3プラネタリギヤセット、並びに、第4サンギヤ、第4キャリア及び第4リングギヤを有する、シングルピニオン型の第4プラネタリギヤセットであり、上記第3キャリア及び上記第4サンギヤが上記入力部に常時連結され、上記出力部が上記第4リングギヤに常時連結され、上記第1キャリアと上記第3サンギヤとが常時連結され、上記第2サンギヤと上記第3リングギヤとが常時連結され、上記第1リングギヤと上記第2リングギヤとが常時連結され、上記5つの摩擦締結要素は、上記第2キャリアと上記第4キャリアとの間を断接する第1クラッチ、上記第2サンギヤ及び上記第3リングギヤと上記第4キャリアとの間を断接する第2クラッチ、上記第1キャリア及び上記第3サンギヤと上記第2キャリアとの間を断接する第3クラッチ、上記第1リングギヤ及び上記第2リングギヤと変速機ケースとの間を断接する第1ブレーキ、並びに、上記第1サンギヤと上記変速機ケースとの間を断接する第2ブレーキである、という構成とした。
【0007】
上記の構成により、第4プラネタリギヤセットの第4サンギヤが入力部に常時連結されかつ出力部が第4リングギヤに常時連結されるので、第4プラネタリギヤセットの外周側及び内周側を通り抜けるような連結部材が存在しない構成にすることができる。これにより、第4プラネタリギヤセットの各構成ギヤを小型化しなくても、自動変速機における第4プラネタリギヤセットに対応する部分が軸方向に対して垂直な方向(径方向)に大きくなるのを抑制することができる。また、自動変速機の軸方向における4つのプラネタリギヤセットの並び方を適切にすることで、第4プラネタリギヤセット以外のプラネタリギヤセットの外周側及び内周側を通り抜ける連結部材の数を出来る限り少なくすることが可能になる。よって、自動変速機を径方向にコンパクトにすることが可能になる。
【0008】
上記自動変速機において、上記4つのプラネタリギヤセットは、上記自動変速機の軸方向に並んで配設され、上記4つのプラネタリギヤセットのうち、上記軸方向の一側の端に位置するプラネタリギヤセットが、上記第4プラネタリギヤセットであり、他側の端に位置するプラネタリギヤセットが、上記第1プラネタリギヤセットである、ことが好ましい。
【0009】
このことにより、自動変速機の軸方向の一側の端に位置する第4プラネタリギヤセットの外周側及び内周側を通り抜けるような連結部材が存在しないことで、自動変速機における一側の端部を径方向にコンパクトにすることが可能になる。また、他側の端に位置する第1プラネタリギヤセットでは、第1リングギヤが第1ブレーキに連結され、第1サンギヤが第2ブレーキに連結されるので、自動変速機の軸方向において、第1プラネタリギヤセットに対して第2プラネタリギヤセットとは反対側に第2ブレーキが配設されることになり、自動変速機における第2ブレーキに対応する部分(自動変速機の他側の端部)も径方向にコンパクトにすることが可能になる。したがって、自動変速機の特に軸方向両端部を径方向にコンパクトにすることが可能になる。また、第1プラネタリギヤセットの外周側には、通常、第1ブレーキが設けられるが、第1プラネタリギヤセットの外周側及び内周側を通り抜けるような連結部材が存在しないので、自動変速機における第1プラネタリギヤセットに対応する部分の径が大きくなるのを抑制することができる。さらに、第2及び第3プラネタリギヤセットの外周側及び内周側を通り抜ける連結部材の数も1つ又は2つにすることができ、自動変速機の軸方向の中間部も、径方向に大きくなるのを抑制することができる。
【0010】
上記配置の場合、上記4つのプラネタリギヤセットは、上記軸方向の上記一側から、上記第4プラネタリギヤセット、上記第3プラネタリギヤセット、上記第2プラネタリギヤセット及び上記第1プラネタリギヤセットの順に上記軸方向に並んで配設され、上記第1クラッチ及び上記第2クラッチは、上記軸方向において、上記第3プラネタリギヤセットと上記第4プラネタリギヤセットとの間に配設され、上記第3クラッチは、上記軸方向において、上記第1プラネタリギヤセットと上記第2プラネタリギヤセットとの間に配設されている、ことが好ましい。
【0011】
このことで、第1クラッチ及び第2クラッチを径方向に並べ、これらに隣接するように径方向に延びる中間壁を変速機ケースに設け、この中間壁から第1及び第2クラッチに対して制御油圧を容易に供給することができるようになる。また、第3クラッチは、第1プラネタリギヤセットと第2プラネタリギヤセットとの間に配置され、しかも、第3クラッチの径方向外側には、第1リングギヤと第2リングギヤとを連結する連結部材が存在するが、第1プラネタリギヤセットに対して第2プラネタリギヤセットとは反対側に、変速機ケースの端部壁を設けることができるので、その端部壁から第1プラネタリギヤセットの内周側を通るような油路を形成することで、第3クラッチに対しても制御油圧を容易に供給することができるようになる。よって、第1乃至第3クラッチへの油圧供給構造を簡素化することができる。
【0012】
或いは、上記4つのプラネタリギヤセットは、上記軸方向の上記一側から、上記第4プラネタリギヤセット、上記第2プラネタリギヤセット、上記第3プラネタリギヤセット及び上記第1プラネタリギヤセットの順に上記軸方向に並んで配設され、上記第1クラッチ及び上記第2クラッチは、上記軸方向において、上記第2プラネタリギヤセットと上記第4プラネタリギヤセットとの間に配設され、上記第3クラッチは、上記軸方向において、上記第1プラネタリギヤセットと上記第3プラネタリギヤセットとの間に配設されている、という構成としてもよい。
【0013】
このようにしても、上記の並び方と同様に、第1乃至第3クラッチへの油圧供給構造を簡素化することができる。
【0014】
上記2通りの並び方のいずれか一方の場合において、上記出力部は、上記軸方向において、上記第1クラッチ及び上記第2クラッチと上記第4プラネタリギヤセットとの間に配設され、上記変速機ケースは、上記軸方向における上記出力部と上記第1クラッチ及び上記第2クラッチとの間にて、上記軸方向に対して垂直な方向に延びかつ上記出力部を支持する中間壁を有し、上記第1クラッチ及び上記第2クラッチに、上記中間壁を介して制御油圧が供給されるように構成されている、ことが好ましい。
【0015】
このことにより、第1クラッチ及び第2クラッチに対し、出力部を支持する中間壁を介して制御油圧を容易に供給することができ、第1及び第2クラッチへの油圧供給構造をより一層簡素化することができる。
【0016】
更に、上記第3クラッチに、上記変速機ケースにおける上記軸方向の上記他側の端部壁、及び、該端部壁から上記第1プラネタリギヤセットの中心部を貫通する貫通部材を介して制御油圧が供給されるように構成されている、ことが好ましい。
【0017】
こうすることで、第3クラッチに対し、端部壁及び貫通部材を介して制御油圧を容易に供給することができる。
【0018】
上記自動変速機において、上記自動変速機は、前進8速及び後退1速を達成するものであり、上記第1クラッチ、上記第2クラッチ及び上記第1ブレーキの締結により後退速が形成され、上記第1クラッチ、上記第3クラッチ及び上記第1ブレーキの締結により第1速が形成され、上記第1クラッチ、上記第1ブレーキ及び上記第2ブレーキの締結により第2速が形成され、上記第1クラッチ、上記第3クラッチ及び上記第2ブレーキの締結により第3速が形成され、上記第1クラッチ、上記第2クラッチ及び上記第2ブレーキの締結により第4速が形成され、上記第1クラッチ、上記第2クラッチ及び上記第3クラッチの締結により第5速が形成され、上記第2クラッチ、上記第3クラッチ及び上記第2ブレーキの締結により第6速が形成され、上記第2クラッチ、上記第3クラッチ及び上記第1ブレーキの締結により第7速が形成され、上記第2クラッチ、上記第1ブレーキ及び上記第2ブレーキの締結により第8速が形成される、という構成が好ましい。
【0019】
このことにより、各摩擦締結要素の適切な締結によって、前進8速及び後退1速を確実に達成することができる。また、各変速段時において、5つの摩擦締結要素のうち、非締結状態にある摩擦締結要素(締結状態にある摩擦締結要素よりも回転抵抗が大きくなる)の数を、締結状態にある摩擦締結要素の数よりも少なくして、動力伝達を効率良く行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の自動変速機によると、第4プラネタリギヤセットの各構成ギヤを小型化しなくても、自動変速機における第4プラネタリギヤセットに対応する部分が軸方向に対して垂直な方向に大きくなるのを抑制することができ、また、自動変速機の軸方向における4つのプラネタリギヤセットの並び方を適切にすることで、第4プラネタリギヤセット以外のプラネタリギヤセットの外周側及び内周側を通り抜ける連結部材の数を出来る限り少なくすることが可能になり、よって、自動変速機を、軸方向に対して垂直な方向にコンパクトにすることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る自動変速機1のスケルトンを示す。この自動変速機1は、車両に搭載されるとともに、前進8速及び後退1速を達成するものである。
【0024】
上記自動変速機1は、変速機ケース2内に、動力源4(詳しくは、動力源4の出力軸)に連結される、入力部としての入力軸3と、第1プラネタリギヤセットPL1と、第2プラネタリギヤセットPL2と、第3プラネタリギヤセットPL3と、第4プラネタリギヤセットPL4と、上記入力軸3に入力された動力が、上記第1乃至第4プラネタリギヤセットPL1,PL2,PL3,PL4により形成される動力伝達経路を介して伝達される、出力部としての出力ギヤ7と、上記動力伝達経路を変更するための5つの油圧式の摩擦締結要素CL1,CL2,CL3,B1,B2と、を備えている。
【0025】
入力軸3、第1乃至第4プラネタリギヤセットPL1,PL2,PL3,PL4、出力ギヤ7、及び、5つの摩擦締結要素CL1,CL2,B1,B2,B3は、同軸上に配設されている。
【0026】
本実施形態では、入力軸3は、自動変速機1の軸方向の一側(
図1の右側)から他側(
図1の左側)までの全体に亘って延びている。そして、入力軸3の軸方向一側端部が、動力源4に連結されており、動力源4から入力軸3に動力が入力される。尚、入力軸3の軸方向一側端部が動力源4に連結される代わりに、入力軸3の軸方向他側端部が動力源4に連結されていてもよく、動力源4を2つ設けて、これら動力源4に入力軸3の両端部がそれぞれ連結されていてもよい。
【0027】
上記動力源4は、内燃機関であってもよく、電動モータであってもよい。また、入力軸3は、動力源4に直接連結されていてもよく、例えばトルクコンバータや断接クラッチ等を介して間接的に連結されていてもよい。入力軸3の両端部がそれぞれ動力源4に連結される場合には、例えば、入力軸3の一側端部が連結される動力源4を内燃機関とし、他側端部が連結される動力源4を電動モータとしてもよい。
【0028】
本実施形態では、上記車両はFF車であり、該車両の前部に、動力源4及び自動変速機1が搭載されて、その搭載された状態での動力源4の出力軸及び自動変速機1の入力軸3は、上記車両の車幅方向に水平に延びている。
【0029】
上記第1プラネタリギヤセットPL1は、入力軸3と同軸上に配設されていて、第1サンギヤS1、第1キャリアC1及び第1リングギヤR1を有する。第1キャリアC1には、ダブルピニオンP1が設けられている。すなわち、第1プラネタリギヤセットPL1は、ダブルピニオン型のプラネタリギヤセットである。
【0030】
上記第2プラネタリギヤセットPL2は、入力軸3と同軸上に配設されていて、第2サンギヤS2、第2キャリアC2及び第2リングギヤR2を有する。第2キャリアC2には、シングルピニオンP2が設けられている。すなわち、第2プラネタリギヤセットPL2は、シングルピニオン型のプラネタリギヤセットである。
【0031】
上記第3プラネタリギヤセットPL3は、入力軸3と同軸上に配設されていて、第3サンギヤS3、第3キャリアC3及び第3リングギヤR3を有する。第3キャリアC3には、シングルピニオンP3が設けられている。すなわち、第3プラネタリギヤセットPL3も、シングルピニオン型のプラネタリギヤセットである。
【0032】
上記第4プラネタリギヤセットPL4は、入力軸3と同軸上に配設されていて、第4サンギヤS4、第4キャリアC4及び第4リングギヤR4を有する。第4キャリアC4には、シングルピニオンP4が設けられている。すなわち、第4プラネタリギヤセットPL4も、シングルピニオン型のプラネタリギヤセットである。
【0033】
入力軸方向(自動変速機1の軸方向)において、入力軸方向の上記一側(動力源4の側)から順に、第4プラネタリギヤセットPL4、第3プラネタリギヤセットPL3、第2プラネタリギヤセットPL2及び第1プラネタリギヤセットPL1が並んでいる。
【0034】
上記第3キャリアC3及び上記第4サンギヤS4は、上記入力軸3に常時連結されている。また、上記第1キャリアC1と上記第3サンギヤS3とが常時連結され、上記第2サンギヤS2と上記第3リングギヤR3とが常時連結され、上記第1リングギヤR1と上記第2リングギヤR2とが常時連結されている。さらに、出力ギヤ7が第4リングギヤR4に常時連結されている。
【0035】
第4リングギヤR4に常時連結された出力ギヤ7は、入力軸3と同軸上に配設されていて、該第4リングギヤR4によって駆動される。出力ギヤ7は、入力軸方向において、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2(これらは、後述の如く、入力軸方向において、第3プラネタリギヤセットPL3と第4プラネタリギヤセットPL4との間に配設される)と第4プラネタリギヤセットPL4との間に配設されている。
【0036】
第4サンギヤS4が入力軸3に常時連結されかつ出力ギヤ7が第4リングギヤR4に常時連結されるので、第4プラネタリギヤセットPL4の外周側及び内周側を通り抜けるような連結部材が存在しない。これにより、変速機ケース2の上記一側の端部(第4プラネタリギヤセットPL4及び出力ギヤ7に対応する部分)の外径は、変速機ケース2の入力軸方向の中間部に比べて小さい。
【0037】
上記5つの摩擦締結要素は、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、第3クラッチCL3、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2であって、入力軸3と同軸上に配設されている。第1クラッチCL1、第2クラッチCL2及び第3クラッチCL3は、多板クラッチで構成され、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2は、本実施形態では、多板クラッチタイプで構成されるが、バンド式で構成されてもよい。
【0038】
上記第1クラッチCL1は、上記第2キャリアC2と上記第4キャリアC4との間を断接するものであり、上記第2クラッチCL2は、上記第2サンギヤS2及び上記第3リングギヤR3と上記第4キャリアC4との間を断接するものであり、上記第3クラッチCL3は、上記第1キャリアC1及び上記第3サンギヤS3と上記第2キャリアC2との間を断接するものである。
【0039】
第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2は、入力軸方向において、第3プラネタリギヤセットPL3と第4プラネタリギヤセットPL4との間に配設され、第2クラッチCL2は、第1クラッチCL1の径方向内側に位置している。また、第3クラッチCL3は、入力軸方向において、第1プラネタリギヤセットPL1と第2プラネタリギヤセットPL2との間に配設されている。
【0040】
上記第1ブレーキB1は、上記第1リングギヤR1及び上記第2リングギヤR2と変速機ケース2との間を断接するものであり、上記第2ブレーキB2は、上記第1サンギヤS1と変速機ケース2との間を断接するものである。
【0041】
第1ブレーキB1は、第1リングギヤR1の径方向外側、つまり第1プラネタリギヤセットPL1(第1リングギヤR1)と変速機ケース2との間に配設され、第2ブレーキB2は、入力軸方向において、第1プラネタリギヤセットPL1に対して第2プラネタリギヤセットPL3とは反対側(上記他側)に配設されている。変速機ケース2の上記他側の端部(第2ブレーキB2に対応する部分)の外径は、上記一側の端部と同程度に小さい径となっている。
【0042】
出力ギヤ7は、カウンタ機構11のカウンタ入力部としてのカウンタ入力ギヤ13と噛み合っていて、該カウンタ入力ギヤ13を駆動する。このカウンタ機構11は、入力軸3と平行に延びるように配設されたカウンタ軸12と、該カウンタ軸12上に配設され、出力ギヤ7により駆動される上記カウンタ入力ギヤ13と、該カウンタ軸12上に配設されたカウンタ出力部としてのカウンタ出力ギヤ14とを有している。カウンタ軸12、カウンタ入力ギヤ13及びカウンタ出力ギヤ14は、一体的に回転するようになされている。そして、カウンタ出力ギヤ14は、デファレンシャル機構21のデフ入力部としてのデフリングギヤ22と噛み合っていて、該デフリングギヤ22を駆動する。カウンタ軸12は、入力軸3に対して車両後側でかつ上側に位置している。また、カウンタ軸12は、カウンタ軸12の両端部にそれぞれ配設されたカウンタ軸受15(本実施形態では、テーパローラベアリング)によって回転可能に支持されている。
【0043】
上記デファレンシャル機構21は、上記デフリングギヤ22に固定されたデフケース23を有している。デフリングギヤ22及びデフケース23は、デフ軸受28(本実施形態では、テーパローラベアリング)によって、デフリングギヤ22の中心軸(後述の左右のドライブシャフト26の中心軸と一致)回りに回転可能に支持されていている。
【0044】
上記デフケース23内には、2つのデフピニオンギヤ24と、デフリングギヤ22と同心上に配置された2つのデフサイドギヤ25とが配設されている。各デフピニオンギヤ24は、デフケース23に固定されているとともに、2つのデフサイドギヤ25と噛み合っている。各デフピニオンギヤ24は、デフケース23と共にデフリングギヤ22の中心軸回りに回転するとともに、各デフピニオンギヤ24の中心軸回りに自転することが可能に構成されている。そして、各デフピニオンギヤ24は、デフケース23がデフリングギヤ22の中心軸回りに回転すると、その回転を2つのデフサイドギヤ25に伝達する。このとき、2つのデフサイドギヤ25にかかる負荷が同じであれば、デフピニオンギヤ24は自転しないで、デフケース23の回転を2つのデフサイドギヤ25に同じ回転数でもって伝達する一方、負荷が異なれば、デフピニオンギヤ24が自転することで、差動回転を2つのデフサイドギヤ25に伝達する。
【0045】
上記2つのデフサイドギヤ25は、該デフサイドギヤ25と同心上に配置された左右のドライブシャフト26にそれぞれ連結されており、左右のドライブシャフト26は、上記車両の車幅方向(入力軸3及びカウンタ軸12と平行な方向)に延びて左右の前輪(図示せず)にそれぞれ連結されている。こうして、出力ギヤ7に生じる動力は、カウンタ機構11及びデファレンシャル機構21を介して、上記車両の前輪に伝達されることになる。左右のドライブシャフト26は、カウンタ軸12に対して車両後側でかつ下側に位置している。
【0046】
上記変速機ケース2は、入力軸方向における出力ギヤ7と第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2との間にて、入力軸方向に対して垂直な方向(入力軸3の径方向)に延びかつ出力ギヤ7を支持する中間壁2aを有している。この中間壁2aの第4プラネタリギヤセットPL4の側(右側)の面は、出力ギヤ7のスラスト方向(入力軸方向)の支持を行うスラスト支持面2bとされている。また、中間壁2aにおけるスラスト支持面2bの下部には、入力軸方向の出力ギヤ7の側(第4プラネタリギヤセットPL4の側)に突出する突出部が形成され、この突出部の径方向外側の面が、ベアリング10(本実施形態では、テーパローラベアリング)を介して出力ギヤ7の径方向の支持を行う径方向支持面2cとされている。中間壁2aの内周側端部は、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2の側に折れ曲がって、第2クラッチCL2における後述の第2ピストン65の径方向内側の位置にまで延びている。
【0047】
図1に簡略化して描いているように、第1クラッチCL1は、入力軸方向に摺動可能に構成された第1ピストン60と、第1締結油圧室61とを有している。第4キャリアC4と第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2とが、連結部材62によって連結されており、この連結部材62は、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2の側の端部近傍において、入力軸方向の第4プラネタリギヤセットPL4の側に凹状に凹む第1及び第2凹部62a,62bを有するように曲げられており、第2凹部62bが第1凹部62aの径方向内側に位置する。連結部材62において第1凹部62aの径方向外側の壁部に相当する部分は第1クラッチCL1に連結され、第2凹部62aの径方向内側の壁部に相当する部分は第2クラッチCL2に連結される。そして、上記第1締結油圧室61は、第1凹部62aと第1ピストン60とによって形成される。
【0048】
第1ピストン60は、第1締結油圧室61への油圧供給により、第1クラッチCL1において入力軸方向に交互に配置された複数のクラッチ板と複数の摩擦板とを入力軸方向に押圧して互いに係合させ、これにより、第1クラッチCL1が締結されることになる。また、図示は省略するが、第1クラッチCL1には、第1ピストン60を挟んで締結油圧室61とは反対側に遠心バランス油圧室が設けられている。すなわち、第1クラッチCL1の非締結時に、第1締結油圧室61内のオイルが遠心力により入力軸3から遠い側に移動することにより、第1ピストン60をクラッチ板及び摩擦板を係合する側へ移動させようとするが、上記遠心バランス油圧室への油圧供給により、上記遠心力によるピストン60の移動を阻止する(他の摩擦締結要素も同様)。
【0049】
第2クラッチCL2は、入力軸方向に摺動可能に構成された第2ピストン65と、第2凹部62bと、該第2凹部62b内に配設された隔壁部材67と、第2ピストン65とによって形成された第2締結油圧室66とを有している。第2凹部62b内において隔壁部材67に対して第2ピストン65とは反対側の部分は、第1クラッチCL1への油圧供給路68とされ、この油圧供給路68は、後述の油圧供給路2dと第1締結油圧室61とを接続する。
【0050】
第3クラッチCL3は、入力軸方向に摺動可能に構成された第3ピストン71と、第1キャリアC1と第3サンギヤS3とを連結する連結部材73と第3ピストン71とによって形成された第3締結油圧室72とを有している。連結部材73は、第3クラッチCL3にも連結されている。
【0051】
第1ブレーキB1は、入力軸方向に摺動可能に構成された第4ピストン75と、変速機ケース2と第4ピストン75とによって形成された第4締結油圧室76とを有している。
【0052】
第2ブレーキB2は、入力軸方向に摺動可能に構成された第5ピストン78と、変速機ケース2における入力軸方向の上記他側の端部壁2fと第5ピストン78とによって形成された第5締結油圧室79とを有している。
【0053】
第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2には、上記中間壁2aを介して制御油圧が供給されるようになされている。すなわち、中間壁2aの周方向の一部には、第1クラッチCL1(第1締結油圧室61)への油圧供給路2d(
図1において入力軸3よりも上側に記載の中間壁2aに記載)が設けられている。また、同様に、中間壁2aにおいて油圧供給路2dとは周方向に異なる位置に、第2クラッチCL2(第2締結油圧室66)への油圧供給路2e(
図1において入力軸3よりも下側に記載の中間壁2aに記載)が設けられている。これら油圧供給路2d,2eは、中間壁2aにおける上記折れ曲がった内周側端部の径方向外側の面にそれぞれ開口している。そして、連結部材62における第2凹部62bの径方向内側の壁部に相当する部分には、油圧供給路2dの上記開口と上記油圧供給路68とを接続する油圧供給孔と、油圧供給路2eの上記開口と第2締結油圧室66とを接続する油圧供給孔とが設けられている。また、連結部材62における第2凹部62bの径方向外側の壁部(第1凹部62aの径方向内側の壁部でもある)に相当する部分には、油圧供給路2dと油圧供給路68とを接続する油圧供給孔が設けられている。中間壁2aと連結部材62における第2凹部62bの径方向内側の壁部に相当する部分との間における油圧供給路2d,2eの上記開口の近傍には、シール部材(図示せず)がそれぞれ設けられている。尚、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2の遠心バランス油圧室への油圧供給構造も、第1締結油圧室61及び第2締結油圧室66への油圧供給構造と同様である。
【0054】
したがって、第1クラッチCL1(第1締結油圧室61)には、油圧供給路2d及び油圧供給路68を介して制御油圧が供給され、第2クラッチCL2(第2締結油圧室66)には、油圧供給路2eを介して制御油圧が供給されることになる。このように中間壁2aを利用して、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2に制御油圧を容易に供給することができ、第1クラッチCL1への油圧供給構造を簡素化することができる。
【0055】
第3クラッチCL3には、変速機ケース2の上記端部壁2f、及び、該端部壁2fから第1プラネタリギヤセットPL2の中心部を貫通する貫通部材81を介して制御油圧が供給されるようになされている。貫通部材81は、その内部を入力軸3が通るスリーブ状部材であって、入力軸3と同軸上に配置されている。貫通部材81は、本実施形態では、端部壁2fに一体形成されていて、端部壁2fから第3ピストン71の径方向内側の位置にまで突出している。
【0056】
端部壁2f及び貫通部材81には、第3クラッチCL3への油圧供給路2gが設けられている。貫通部材81における突出先端近傍における外周面に、油圧供給路2gが開口している。また、上記連結部材73には、油圧供給路2gの上記開口と第3締結油圧室72とを接続する油圧供給孔が設けられている。これにより、第3クラッチCL3(第3締結油圧室72)には、端部壁2f及び貫通部材81を通る油圧供給路2gを介して制御油圧が供給されることになる。したがって、第3クラッチCL3への油圧供給構造も簡素化することができる。
【0057】
第1ブレーキB1の第4締結油圧室76には、変速機ケース2に設けられた油圧供給路2hを介して制御油圧が供給され、第2ブレーキB2の第5締結油圧室79には、変速機ケース2に設けられた油圧供給路2iを介して制御油圧が供給される。
【0058】
次に、上記自動変速機1の変速方法について説明する。
【0059】
図2は、各変速段時における第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、第3クラッチCL3、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2の締結状態を示す。○印が締結していることを示し、空欄が締結を解除していることを示す。
【0060】
また、
図2には、第1プラネタリギヤセットPL1、第2プラネタリギヤセットPL2、第3プラネタリギヤセットPL3及び第4プラネタリギヤセットPL4の各構成ギヤの歯数を、以下のように設定したときの各変速段時におけるギヤ比(減速比)と、変速段間のギヤステップ(第1速のギヤ比/第2速のギヤ比、第2速のギヤ比/第3速のギヤ比、第3速のギヤ比/第4速のギヤ比、第4速のギヤ比/第5速のギヤ比、第5速のギヤ比/第6速のギヤ比、第6速のギヤ比/第7速のギヤ比、第7速のギヤ比/第8速のギヤ比)とを併せて示す。尚、
図2のギヤ比では、レシオレンジ(第1速のギヤ比/第8速のギヤ比)は、7.242となる。
【0061】
上記各構成ギヤの歯数は、
第1サンギヤS1:42、第1リングギヤR1:108、ダブルピニオンギヤP1:33
第2サンギヤS2:56、第2リングギヤR2:108、シングルピニオンギヤP2:26
第3サンギヤS3:54、第3リングギヤR3:86、シングルピニオンギヤP3:16
第4サンギヤS4:40、第4リングギヤR4:108、シングルピニオンギヤP4:34
となっている。尚、上記歯数は例示であって、これに限るものではない。
【0062】
後退速は、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2及び第1ブレーキB1の締結により形成される。このとき、入力軸3に連結された第3キャリアC3及び第4サンギヤS4が、入力軸3の回転数をN0として、回転数N0で入力軸3と同じ向きに回転する。尚、以下、断りのない限り、回転の向きは入力軸3と同じとし、入力軸3の回転とは逆の向きに回転する場合には、その旨を記載する。
【0063】
第1ブレーキB1の締結により、第1リングギヤR1及び第2リングギヤR2は、固定されて回転しない。第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2の締結により、第2サンギヤS2、第2キャリアC2、第3リングギヤR3及び第4キャリアC4は、同じ回転数で回転することになる。第2サンギヤS2及び第2キャリアC2が同じ回転数で回転するので、第2リングギヤR2も、これらと同じ回転数で回転することになるが、第2リングギヤR2は固定されているので、第2サンギヤS2及び第2キャリアC2も固定されることになる。この結果、第3リングギヤR3及び第4キャリアC4も固定されることになる。
【0064】
第4キャリアC4が固定されかつ第4サンギヤがN0で回転するので、第4リングギヤR4(つまり出力ギヤ7)は、入力軸3の回転とは逆の向きでN0よりも低い回転数で回転することになる。
【0065】
尚、第3リングギヤR3が固定されかつ第3キャリアC3がN0で回転するので、第3サンギヤS3及び該第3サンギヤS3に連結された第1キャリアC1が、N0よりも高い回転数N11で回転する。そして、第1リングギヤR1が固定されかつ第1キャリアC1がN11で回転するので、第1サンギヤS1は、入力軸3の回転とは逆の向きでN11よりも高い回転数で回転する。
【0066】
第1速は、第1クラッチCL1、第3クラッチCL3及び第1ブレーキB1の締結により形成される。このとき、入力軸3に連結された第3キャリアC3及び第4サンギヤS4が、回転数N0で回転する。
【0067】
第1ブレーキB1の締結により、第1リングギヤR1及び第2リングギヤR2は、固定されて回転しない。第1クラッチCL1及び第3クラッチCL3の締結により、第1キャリアC1、第2キャリアC2、第3サンギヤ及び第4キャリアC4が、N0よりも低い回転数N12で回転し、第2サンギヤS2及び第3リングギヤR3が、N0よりも高い回転数N13で回転する。
【0068】
第4キャリアC4がN12で回転しかつ第4サンギヤがN0で回転するので、第4リングギヤR4(つまり出力ギヤ7)は、N12よりも低い回転数N1で回転することになる。
【0069】
尚、第1リングギヤR1が固定されかつ第1キャリアC1がN12で回転するので、第1サンギヤS1は、入力軸3の回転とは逆の向きに回転する。
【0070】
第2速は、第1クラッチCL1、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2の締結により形成される。このとき、入力軸3に連結された第3キャリアC3及び第4サンギヤS4が、回転数N0で回転する。
【0071】
第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2の締結により、第1サンギヤS1、第1リングギヤR1及び第2リングギヤR2は、固定されて回転しない。また、第1サンギヤS1及び第1リングギヤR1の固定により、第1キャリアC1も固定され、これと連結された第3サンギヤS3も固定されて回転しない。
【0072】
第3サンギヤS3が固定されかつ第3キャリアC3がN0で回転するので、第3リングギヤR3及び該第3リングギヤR3に連結された第2サンギヤS2が、N0よりも高い回転数N14(>N13)で回転する。
【0073】
第2リングギヤR2が固定されかつ第2サンギヤS2がN14で回転するので、第2キャリアC2が、N14よりも低い回転数N15(>N12)で回転する。また、第1クラッチCL1の締結により、第4キャリアC4もN15で回転する。
【0074】
第4キャリアC4がN15で回転しかつ第4サンギヤS4がN0で回転するので、第4リングギヤR4(つまり出力ギヤ7)は、N15よりも低い回転数N2(>N1)で回転することになる。
【0075】
第3速は、第1クラッチCL1、第3クラッチCL3及び第2ブレーキB1の締結により形成される。このとき、入力軸3に連結された第3キャリアC3及び第4サンギヤS4が、回転数N0で回転する。
【0076】
第2ブレーキB2の締結により、第1サンギヤS1は、固定されて回転しない。第1クラッチCL1及び第3クラッチCL3の締結により、第1キャリアC1、第2キャリアC2、第3サンギヤS3及び第4キャリアC4が、N0よりも低い回転数N16(>N12)で回転し、第2サンギヤS2及び第3リングギヤR3が、N0よりも高い回転数N17で回転し、第1キャリアC1及び第3サンギヤS3が、N16よりも低い回転数N18で回転する。
【0077】
第4キャリアC4がN16で回転しかつ第4サンギヤS4がN0で回転するので、第4リングギヤR4(つまり出力ギヤ7)は、N16よりも低い回転数N3(N>2)で回転することになる。
【0078】
第4速は、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2及び第2ブレーキB2の締結により形成される。このとき、入力軸3に連結された第3キャリアC3及び第4サンギヤS4が、回転数N0で回転する。
【0079】
第2ブレーキB2の締結により、第1サンギヤS1は、固定されて回転しない。第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2の締結により、第1リングギヤR1、第2サンギヤS2、第2キャリアC2、第2リングギヤR2、第3リングギヤR3及び第4キャリアC4が、N0よりも低い回転数N19(>N18)で回転し、第1キャリアC1及び第3サンギヤS3が、N19よりも高い回転数N20(>N16)で回転する。
【0080】
第4キャリアC4がN19で回転しかつ第4サンギヤS4がN0で回転するので、第4リングギヤR4(つまり出力ギヤ7)は、N19よりも低い回転数N4(>N3)で回転することになる。
【0081】
第5速は、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2及び第3クラッチCL3の締結により形成される。このとき、入力軸3に連結された第3キャリアC3及び第4サンギヤS4が、回転数N0で回転する。
【0082】
第1クラッチCL1及び第3クラッチCL3の締結により、第1キャリアC1、第2キャリアC2、第3サンギヤS3及び第4キャリアC4が、同じ回転数で回転することになる。また、第2クラッチCL2の締結により、第4キャリアC4と連結された状態になる第3リングギヤR3及び第2サンギヤS2も、これらと同じ回転数で回転する。第3サンギヤS3及び第3リングギヤR3が同じ回転数で回転するので、第3キャリアC3も、第3サンギヤS3及び第3リングギヤR3と同じ回転数で回転する。これにより、第1キャリアC1、第2サンギヤS2、第2キャリアC2、第3サンギヤS3、第3リングギヤR3及び第4キャリアC4が、N0で回転する。
【0083】
また、第2サンギヤS2及び第2キャリアC2がN0で回転するので、第2リングギヤR2及び該第2リングギヤR2に連結された第1リングギヤR1も、N0で回転し、第1キャリアC1及び第1リングギヤR1がN0で回転するので、第1サンギヤS1も、N0で回転する。
【0084】
第4サンギヤS4及び第4キャリアC4がN0で回転するので、第4リングギヤR4(つまり出力ギヤ7)は、N0と同じ回転数N5(>N4)で回転することになる。
【0085】
第6速は、第2クラッチCL2、第3クラッチCL3及び第2ブレーキB2の締結により形成される。このとき、入力軸3に連結された第3キャリアC3及び第4サンギヤS4が、回転数N0で回転する。
【0086】
第2ブレーキB2の締結により、第1サンギヤS1は、固定されて回転しない。第2クラッチCL2及び第3クラッチCL3の締結により、第2サンギヤS2、第3リングギヤR3及び第4キャリアC4が、N0よりも高い回転数N21で回転し、第1キャリアC1、第2キャリアC2及び第3サンギヤS3が、N0よりも低い回転数N22で回転し、第1リングギヤR1及び第2リングギヤR2が、N22よりも低い回転数N23で回転する。
【0087】
第4キャリアC4がN21で回転しかつ第4サンギヤS4がN0で回転するので、第4リングギヤR4(つまり出力ギヤ7)は、N21よりも高い回転数N6(>N5)で回転することになる。
【0088】
第7速は、第2クラッチCL2、第3クラッチCL3及び第1ブレーキB1の締結により形成される。このとき、入力軸3に連結された第3キャリアC3及び第4サンギヤS4が、回転数N0で回転する。
【0089】
第1ブレーキB1の締結により、第1リングギヤR1及び第2リングギヤR2は、固定されて回転しない。第2クラッチCL2及び第3クラッチCL3の締結により、第1キャリアC1、第2キャリアC2及び第3サンギヤS3が、N0よりも低い回転数N24で回転し、第2サンギヤS2、第3リングギヤR3及び第4キャリアC4が、N0よりも高い回転数N25(>N21)で回転する。
【0090】
第4キャリアC4がN25で回転しかつ第4サンギヤS4がN0で回転するので、第4リングギヤR4(つまり出力ギヤ7)は、N25よりも高い回転数N7(>N6)で回転することになる。
【0091】
第8速は、第2クラッチCL2、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2の締結により形成される。このとき、入力軸3に連結された第3キャリアC3及び第4サンギヤS4が、回転数N0で回転する。
【0092】
第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2の締結により、第1リングギヤR1、第1サンギヤS1及び第2リングギヤR2は、固定されて回転しない。また、第1リングギヤR1及び第1サンギヤS1の固定により、第1キャリアC1も固定され、これと連結された第3サンギヤS3も固定されて回転しない。
【0093】
第3サンギヤS3が固定されかつ第3キャリアC3がN0で回転するので、第3リングギヤR3及び該第3リングギヤR3に連結された第2サンギヤS2が、N0よりも高い上記回転数N14で回転する。また、第1クラッチCL1の締結により、第4キャリアC4もN14(>N25)で回転する。
【0094】
第4キャリアC4がN14で回転しかつ第4サンギヤS4がN0で回転するので、第4リングギヤR4(つまり出力ギヤ7)は、N14よりも高い回転数N8(>N7)で回転することになる。
【0095】
尚、第2サンギヤS2は、第3リングギヤR3と同じ回転数N14で回転し、第2リングギヤRが固定されているので、第2キャリアC2は、N14よりも低い回転数で回転する。
【0096】
したがって、本実施形態では、4つのプラネタリギヤセットPL1,PL2,PL3,PL4のうち、入力軸方向の上記一側(動力源4側)の端に位置する第4プラネタリギヤセットPL4の第4サンギヤS4が入力軸3に常時連結されかつ出力ギヤ7が第4リングギヤR4に常時連結されるので、第4プラネタリギヤセットPL4の外周側及び内周側を通り抜けるような連結部材が存在しない(第4プラネタリギヤセットPL4の内周側を入力軸3のみが通り抜ける)構成になる。これにより、第4プラネタリギヤセットPL4の各構成ギヤを小型化しなくても、自動変速機1における第4プラネタリギヤセットPL4に対応する部分(自動変速機1(変速機ケース2)の上記一側の端部)を径方向にコンパクトにすることができる。
【0097】
また、入力軸方向の上記他側の端に位置する第1プラネタリギヤセットPL1では、第1リングギヤR1が第1ブレーキB1に連結され、第1サンギヤS1が第2ブレーキB2に連結されるので、入力軸方向において、第1プラネタリギヤセットPL1に対して第2プラネタリギヤセットPL2とは反対側に第2ブレーキB2が配設されることになり、自動変速機1における第2ブレーキB2に対応する部分(自動変速機1(変速機ケース2)の上記他側の端部)も径方向にコンパクトにすることが可能になる。
【0098】
さらに、第1プラネタリギヤセットPL1の内周側には、貫通部材81が貫通し、外周側には、第1ブレーキB1が存在するが、第1プラネタリギヤセットPL1の外周側及び内周側を通り抜けるような連結部材が存在しないので、自動変速機1における第1プラネタリギヤセットPL1に対応する部分の径が大きくなるのを抑制することができる。
【0099】
さらにまた、第2プラネタリギヤセットPL2の内周側を通り抜ける連結部材は、第1キャリアC1及び第3クラッチCL3と第3サンギヤS3とを連結する連結部材のみであり、第2プラネタリギヤセットPL2の外周側を通り抜ける連結部材は存在しない。また、第3プラネタリギヤセットPL3の外周側を通り抜ける連結部材は、第2キャリアC2と第1クラッチCL2とを連結する連結部材のみであり、内周側を通り抜ける連結部材は存在しない(内周側を入力軸3のみが通り抜ける)。したがって、自動変速機1の入力軸方向の中間部も、径方向に大きくなるのを抑制することができる。よって、自動変速機1を径方向にコンパクトにすることが可能になる。
【0100】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0101】
例えば、上記実施形態では、4つのプラネタリギヤセットPL1,PL2,PL3,PL4が、入力軸方向の上記一側から、第4プラネタリギヤセットPL4、第3プラネタリギヤセットPL3、第2プラネタリギヤセットPL2及び第1プラネタリギヤセットPL1の順に入力軸方向に並んで配設されているが、
図3に示すように、入力軸方向の上記一側から、第4プラネタリギヤセットPL4、第2プラネタリギヤセットPL2、第3プラネタリギヤセットPL3及び第1プラネタリギヤセットPL1の順に入力軸方向に並んで配設されていてもよい。この場合、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2は、入力軸方向において、第2プラネタリギヤセットPL2と第4プラネタリギヤセットPL4との間に配設され、第3クラッチCL3は、入力軸方向において、第1プラネタリギヤセットPL1と第3プラネタリギヤセットPL3との間に配設される。また、上記実施形態と同様に、出力ギヤ7は、入力軸方向において、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2と第4プラネタリギヤセットPL4との間に配設され、出力ギヤ7を支持する中間壁2aが、入力軸方向における出力ギヤ7と第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2との間に配設され、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2に、中間壁2aを介して制御油圧が供給される。さらに、上記実施形態と同様に、第3クラッチCL3に、変速機ケース2における上記他側の端部壁2f、及び、該端部壁2fから第1プラネタリギヤセットPL1の中心部を貫通する貫通部材81(スリーブ状部材)を介して制御油圧が供給される。
【0102】
また、上記実施形態では、自動変速機1をFF車に搭載したが、FR車に搭載するようにしてもよい。この場合、自動変速機1は、入力軸3が車両前後方向に延びるように搭載される。そして、動力源4は、入力軸3の上記他側の端部に連結されて、上記他側の端部が車両前側になる。4つのプラネタリギヤセットPL1,PL2,PL3,PL4は、
図1又は
図3のように配設され、それらのうち第4プラネタリギヤセットPL4が最も車両後側に配設される。また、上記実施形態のような出力ギヤ7やカウンタ機構11は設けられず、最も車両後側に配設された第4プラネタリギヤセットPL4の第4リングギヤR4に連結された出力部としての出力軸が、入力軸3と同軸に設けられ、この出力軸8が、自動変速機1の車両後側へ水平に延びて、不図示のプロペラシャフトに連結される。
【0103】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。