(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような平板型の冷却器は、車載デバイス、例えば発熱量の大きいパワー半導体を多数含む電力変換装置などに用いられることがある。車載デバイスは、搭載レイアウトの都合で傾斜して車両に搭載される場合がある。例えば、電気自動車において、傾斜した上面を有するモータケースのその上面にモータ駆動用の電力変換装置が固定される場合などである。即ち、特許文献1のような平板型の冷却器も、本来は液体冷媒が水平方向に流れるように、即ち、平板型の冷却器筐体の面積最大面を鉛直方向に向けて配置することが好ましいが、そのように配置されない場合もある。特に、冷媒入口/出口が湾曲部よりも低いと、湾曲部に空気が溜まってしまい、冷却能力が低下する虞がある。
【0005】
本明細書が開示する技術は、上記の課題を解決する。本明細書は、U字型の流路を有する平板型の冷却器であって冷媒の入口と出口がU字の湾曲部よりも低くなるように配置される冷却器に関し、湾曲部に空気が溜まり難い構造の冷却器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する冷却器は、上記したように、U字に湾曲する冷媒流路を内部に有する平板状の冷却器であって、冷媒入口、冷媒流入部、湾曲部、冷媒流出部、冷媒出口を備えている。冷媒入口は、U字の一端に設けられている。冷媒流入部は、冷媒入口に続く部位である。湾曲部は、冷媒流入部の冷媒流れ方向の下流側に続く流路であってその流路が180度カーブしている部位である。冷媒流出部は、湾曲部の下流側に位置しているとともに冷媒流入部と平行に伸びている部位である。冷媒流出部では、冷媒が冷媒流入部とは逆方向に流れる。また、冷媒出口は、U字の他端に設けられている。
【0007】
本明細書が開示する冷却器は、冷媒入口及び冷媒出口が湾曲部よりも鉛直方向で低くなるように冷却器全体が傾斜して配置される。なお、冷却器は、冷媒入口と冷媒出口は水平方向に並ぶように配置される。典型的には、この冷却器は、車両に搭載される電力変換装置に内蔵されており、その電力変換装置が、上記のごとく傾斜して取り付けられる。例えば電力変換装置は、傾斜した上面を有するモータケース(トランスミッション)の上面に搭載される。
【0008】
本明細書が開示する冷却器は、上記のごとく冷媒入口/出口が湾曲部よりも低い位置にあっても湾曲部に到達した空気が冷媒出口に向かって押し出されるように、冷媒流出部の流路断面積を冷媒流入部の流路断面積よりも小さくしている。さらに、冷媒流出部に、冷媒をU字のカーブの外側に向けて誘導するフィンを設けている。なお、前述したように、「外側」とは、U字の湾曲部のカーブ外側に続く領域を意味する。別言すれば、冷媒流出部における外側とは、冷媒流出部においてこれに平行な冷媒流入部から遠い側を意味する。
【0009】
上記の構造は次の利点を有する。冷却器内の流路において鉛直方向で最も高い湾曲部にも冷媒の流れが存在する。それゆえ、湾曲部に到達した空気は、湾曲部から冷媒流出部にかけて溜まる。冷媒流出部の流路断面積を冷媒流入口の冷媒断面積よりも小さくすることで、冷媒流出部の冷媒流速が高められる。冷媒の流速を高めることで空気を冷媒出口へ追い出し易くなる。また、湾曲部の外側は内側よりも流路長さが長くなるので流路抵抗が大きく、流速が低下し易い。そこで、冷媒流出部に上記のフィンを設け、流速が大きい流路内側の冷媒を流路外側へ誘導することで、流路外側の流量を多くして、やはり、空気を追い出し易くする。繰り返すが、「外側」、「内側」とは、冷媒流出部の流路のなかで、冷媒流入部から遠い側が「外側」に相当し、冷媒流入部に近い側が「内側」に相当する。
【0010】
本明細書が開示する冷却器は、流路断面積とフィンの相乗効果によって、冷媒流出部に溜まった空気を冷媒出口へ追い出し易くする。即ち、冷媒入口/出口が湾曲部よりも低くなるように配置されたU字流路を有する冷却器において、上記の構造は、流路内に空気を溜まり難くする。
【0011】
本明細書が開示する技術の詳細、及び、さらなる改良は、発明の実施の形態で説明する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施例)図面を参照して第1実施例の冷却器2を説明する。まず、
図1を参照して冷却器2の車載構造を説明する。
図1は、電気自動車(不図示)に搭載されたトランスミッション91と、その上面に固定された電力変換装置92の側面図である。
図1では、トランスミッション91と電力変換装置92は破線で描いてあり、電力変換装置92に組み込まれた冷却器2だけを実線で描いてある。なお、図中のFHV座標系においてF軸正方向が車両前方に相当し、H軸方向が車両の横方向(車幅方向)に相当し、V軸方向が車両上方に相当する。なお、自動車は水平な地面に置かれているものとする。即ち、図中の座標系のFH平面が水平面に相当する。
【0014】
トランスミッション91は、複軸横置きタイプであり、3本のシャフト(不図示)が車幅方向に伸びている。3本のシャフトを有するため、側面方向(図中のH方向)からみると、その上面が、車両前方へ向かうにつれて低くなるように傾斜している。トランスミッション91は、走行用のモータ(不図示)も内蔵している。電力変換装置92は、バッテリ(不図示)の直流電力を交流電力に変換してモータ(不図示)に供給する。電力変換装置92とモータとの間のパワーケーブルは短い方がよいので、電力変換装置92は、モータを内蔵するトランスミッション91の上面に固定される。前述したようにトランスミッション91の上面が傾斜しているので、電力変換装置92も傾斜している。なお、図中の符号Eが示す矢印が水平方向を表しており、符号Sが示す直線はトランスミッション91の上面に平行な直線である。別言すれば符号Sが示す直線は、冷却器2の最大面積を有する側面に平行である。符号Cは、水平方向とトランスミッション上面(冷却器2)とがなす角度(傾斜角度)を示している。傾斜角度は、例えば20度である。
【0015】
電力変換装置92の構造の説明は省略するが、電力変換装置92は内部に冷却器2を備えている。冷却器2は、電力変換装置92の内部の部品を冷却する。冷却器2は、電力変換装置92の底面に平行に取り付けられているが、電力変換装置92そのものが傾斜しているため、冷却器2も傾斜している。後述するが、冷却器2は、その上面と下面が他の側面よりも広い平板型である。水平方向に対する冷却器2の傾斜角度は、トランスミッション91の上面の傾斜角Cと同じであり、例えば20度である。
【0016】
冷却器2には、冷媒供給管と冷媒排出管が連結されている。冷媒供給管と冷媒排出管は、冷却器2の車両前側で連結されている。
図1に良く表されているように、冷却器2は、冷媒供給管と冷媒排出管が連結されている車両前側(図中の座標系におけるF軸正方向)が、車両後側よりも低く位置している。なお、
図1におけるXYZ座標系は、そのXY平面が傾斜した冷却器2の上面と平行になるように設定されている座標系である。Z軸は、傾斜した冷却器2の上面の法線方向に相当する。
【0017】
図2(A)は、カバーを外した冷却器2の平面図である。なお、
図2のXYZ座標系は、
図1に示したXYZ座標系であり、X軸が水平方向を意味しないことに留意されたい。なお、Y軸は水平方向に伸びている。
図2(B)は、
図2(A)のBB線に沿って見た断面図である。なお、
図2(B)では、カバー15を図示してある。
【0018】
冷却器2の構造を特に
図2を参照して説明する。
図2(A)、(B)を参照すると明らかなとおり、冷却器2は、図中の座標系のXY平面に平行な広い面を有する平板状の筐体12を有する。また、冷却器2は、内部にU字型に湾曲する冷媒流路を有する。冷却器2の一端(図中X軸の正方向の端)に冷媒入口3が設けられている。冷媒入口3に、不図示の冷媒供給管が接続される。
図2(A)において冷媒入口3の左側の矢印が冷媒の流れる向きを表している。冷却器2は、冷媒入口3から、冷媒の流れる方向の下流側に向かって、冷媒流入部4、湾曲部5、冷媒流出部6、及び、冷媒出口7を有する。冷媒流入部4は、冷媒入口3に続く部位であり、図中X軸方向に沿って直線的に伸びている。湾曲部5は、冷媒流入部4の下流側に続く流路であり、U字に180度カーブしている。また、湾曲部5には、湾曲部の全体のカーブと同じ方向にC字に湾曲している複数の第1フィン13が設けられている。なお、
図2(A)中の符号Qが示す矢印は冷媒の流れの方向を示している。冷媒流出部6は、湾曲部5の下流側に続く流路である。冷媒流出部6は、冷媒流入部4と平行に伸びているが、冷媒の流れは冷媒流入部とは逆方向となる。冷媒流出部6と冷媒流入部4は、直線的に伸びる仕切壁16によって仕切られている。仕切壁16については
図2(B)も参照されたい。
【0019】
また、冷媒流出部6には、第1フィン13に続くように複数の第2フィン14が設けられている。第2フィン14は、直線的に伸びる冷媒流出部6の延設方向と異なり、冷媒の流れの上流から下流にかけて、湾曲部5のU字のカーブの内側から外側に向けて伸びている。別言すれば、第2フィン14は、冷媒の流れの上流から下流にかけて、冷媒流入部4から遠ざかる方向へと伸びている。この第2フィン14は、冷媒流出部6における冷媒の流れを湾曲部5のU字のカーブの外側からその下流に続く領域へと向けさせる。その効果については後述する。
【0020】
冷媒出口7は、冷媒流出部6の下流側に続く部位であり、冷却器2からの冷媒の出口に相当する。
図2(A)によく示されているように、冷媒入口3と冷媒出口7は、冷却器2の同じ側端に設けられている。なお、
図1に示すように、FHV座標系におけるH軸は水平方向を向いており、XYZ座標系のY軸は、H軸と平行であるから、Y軸も水平方向を向いている。そうすると
図2(A)から明らかなとおり、冷却器2は、冷媒入口3と冷媒出口7を結ぶ直線が水平方向を向くように配置される。
【0021】
冷却器2のほかの構造的特徴として、冷媒流入部4の流路断面積よりも冷媒流出部6の流路断面積が小さいことが挙げられる。
図2(B)に示すように流路の高さ(Z方向の流路の幅)は、冷媒流入部4と冷媒流出部6で同じである。一方、流路の幅(Y軸方向の流路の幅)は、冷媒流入部4よりも冷媒流出部6が狭い。図中の符号L1が冷媒流入部4における流路幅を示しており、符号L2が冷媒流出部6における流路幅を示している。明らかに冷媒流入部4の流路幅L1>冷媒流出部6の流路幅L2である。従って、冷媒流入部4の流路断面積よりも冷媒流出部6の流路断面積が小さことが解る。
【0022】
なお、冷媒流入部4の流路幅L1>冷媒流出部6の流路幅L2であるとともに、複数の第1フィン13は、湾曲部5の上流端を幅方向(Y軸方向)に等間隔に区画しており、また湾曲部5の下流端を幅方向に等間隔に区画している。このことは、隣接する第1フィン13の幅が湾曲部5の上流端から下流端にかけて徐々に狭くなっていることを意味している。
【0023】
冷却器2の上記構造の利点を説明する。まず、前述したように、冷却器2は、車載された状態において、冷媒入口3と冷媒出口7が湾曲部5よりも低くなるように配置される(
図1と
図2(A)のXYZ座標系を参照されたい)。このことは、冷媒に混在する気泡が、冷却器2の内部空間において鉛直方向に高い位置である湾曲部5に溜まり易いことを意味している。なお、
図2(A)中の右端が、鉛直方向で最も高い位置に相当するが、冷却器2の内部には冷媒の流れが存在するため、気泡が溜まるのは、
図2(A)中の右端よりも下流であり、図中で符号Aが示す破線の範囲である。
【0024】
冷媒流入部4と冷媒流出部6の流路断面積の相違、及び、第2フィン14は、冷却器2の内部の気泡を排出することに貢献する。冷媒流出部6の流路断面積が冷媒流入部4の流路断面積よりも小さいことは、冷媒流出部6における冷媒の流速を高める効果を奏する。冷媒流入部4と冷媒流出部6で流量を同じにするには流路断面積の小さい冷媒流出部6における流速が冷媒流入部4における流速よりも早くなければならないからである。冷媒流出部6における流速を高めることは、即ち、冷媒流出部6(破線Aが示す範囲)に溜まった気泡を冷媒出口7へ向けて押し出すことを促進する。
【0025】
また、第2フィン14は、前述したように、冷媒流出部6における冷媒の流れを湾曲部5のU字のカーブの外側からその下流に続く領域へと向けさせる。
図2(A)によく示されているように、第2フィン14は、気泡が溜まり易い範囲Aを通過する冷媒の量を増大させる。この点も、冷媒流出部6(破線Aが示す範囲)に溜まった気泡を冷媒出口7へ向けて押し出すことを促進する。
【0026】
以上の通り、冷却器2は、冷媒入口3と冷媒出口7が、流路がU字にカーブした湾曲部5よりも低くなるように配置されたときに、湾曲部5に溜まる気泡を押し出し易くする。即ち、冷却器2は、気泡が留まり難い構造を有している。
【0027】
(第2実施例)
図3を参照して第2実施例の冷却器2aを説明する。
図3(A)は、カバー15を外した冷却器2aの平面図であり、
図3(B)は、
図3(A)のB−B線における断面図である。なお、冷却器2aにおいて、冷却器2と同じ部位には同じ符号を付してある。なお、第1実施例の冷却器2は3個の第2フィン14を有し、第2実施例の冷却器2aは2個の第2フィンを有する点で異なる。
【0028】
冷却器2aも、第1実施例の冷却器2と同様に車両に配置される。即ち、冷媒入口3と冷媒出口7を結ぶ直線が水平方向を向くように配置される。そして、冷媒入口3と冷媒出口7が湾曲部5よりも鉛直方向で低くなるように配置される。
【0029】
また、冷却器2aは、冷却器2と同じ特徴を有する。即ち、冷媒流出部6の流路断面積が、冷媒流入部4の流路断面積よりも小さくなっている。また、冷媒流出部6に、冷媒をU字のカーブの外側に向けて誘導するフィン(第2フィン14)が設けられている。
【0030】
冷却器2aはさらに、次の特徴を有する。冷却器2と同様に、冷却器2aも、隣接する第2フィン13の間隔が湾曲部5の上流端から下流端にかけて徐々に狭くなっている。だたし、上流端におけるフィンの間隔と下流端のフィンの間隔との差が、湾曲部5のカーブの内側よりも外側で大きい。
図3(B)を参照しながら具体的に説明する。
図3(B)は、180度カーブしている湾曲部5の上流端と下流端を同時にみた断面図である。
図3(B)は、仕切壁16よりも右側が湾曲部5の上流端に相当し、仕切壁16よりも左が湾曲部5の下流端に相当する。上流端では、隣接する第1フィンの間隔は幅P3で全て等しい。しかし、下流端では、湾曲部5のカーブの外側ほど、第1フィンの間隔の幅が小さくなっている。
図3(B)では、最外周の第1フィン13dとその内側の第1フィン13cとの間の幅P2が、最内周の第1フィン13aとその外側の第1フィン13bとの間の間隔P1よりも狭くなっている。なお、間隔P1は、上流側のフィン間隔P3に等しい。即ち、カーブ外側の方が上流端のフィン間隔と下流端のフィン間隔の差が大きい。このことは、冷媒流入部4の流路断面積よりも冷媒流出部6の流路断面積が小さいことの効果と同じく、湾曲部5のカーブ外側の下流端の流速を高める。即ち、冷媒は、気泡が溜まり易い破線範囲Aに向けて高い流速で流れ込む。このことは、破線範囲Aの気泡が冷媒出口7に向けて押し流すことを助長する。
図3に示す冷却器2aは、
図2に示す冷却器2よりも気泡を押し出し易い構造を有している。
【0031】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。