特許第6048435号(P6048435)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6048435SOI基板およびそれを用いた物理量センサ、SOI基板の製造方法および物理量センサの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048435
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】SOI基板およびそれを用いた物理量センサ、SOI基板の製造方法および物理量センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20161212BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20161212BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20161212BHJP
   G01P 15/125 20060101ALI20161212BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20161212BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   H01L27/12 B
   H01L21/02 B
   H01L29/84 Z
   G01P15/125 Z
   B81B3/00
   B81C1/00
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-65941(P2014-65941)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-191917(P2015-191917A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2014年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 純也
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 テツヲ
(72)【発明者】
【氏名】浅井 信哉
【審査官】 右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−145154(JP,A)
【文献】 特開2011−164057(JP,A)
【文献】 特開2000−331899(JP,A)
【文献】 特開2013−229356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
B81B 3/00
B81C 1/00
G01P 15/125
H01L 27/12
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面(10a)を有するシリコン基板で構成される第1基板(10)を用意する工程と、
前記第1基板の一面に窪み部(11)を形成する工程と、
前記第1基板を熱酸化して熱酸化膜(20、90)を形成する工程と、
前記第1基板の一面側に前記熱酸化膜を介して第2基板(30)を接合する工程と、を行い、
前記熱酸化膜を形成する工程の後、前記第1基板の一面のうちの前記窪み部の開口部における周辺部を境界領域(12a)とし、前記境界領域より面積が大きく、前記境界領域を取り囲む領域を周辺領域(12b)としたとき、前記熱酸化膜(20)のうちの前記境界領域に形成された部分の厚さを前記周辺領域に形成された部分の厚さ以下にする熱酸化膜調整工程を行い、
前記第2基板を接合する工程では、前記熱酸化膜のうちの前記周辺領域に形成された部分と前記第2基板とを接合し、
前記熱酸化膜調整工程では、前記第1基板の一面側に、前記熱酸化膜のうちの前記境界領域に形成された部分が露出するようにレジスト(90)を形成した後、前記レジストをマスクとして前記熱酸化膜のうちの前記境界領域に形成された部分を薄膜化することにより、前記熱酸化膜のうちの前記境界領域に形成された部分の厚さを前記周辺領域に形成された部分の厚さ以下にすることを特徴とするSOI基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法で製造したSOI基板を用意する工程と、
前記第2基板に、所定方向に変位可能とされた複数の可動電極(44)を有する可動部(40)と、前記可動電極と対向する第1固定電極(51)が備えられる第1支持部(52)を有する第1固定部(50)と、前記可動電極と対向する第2固定電極(61)が備えられる第2支持部(62)を有し、前記第2支持部が前記可動部を挟んで前記第1支持部と反対側に配置された第2固定部(60)と、を含んで構成されるセンシング部(31)を形成する工程と、を行う物理量センサの製造方法において、
前記SOI基板を用意する工程における前記熱酸化膜調整工程では、前記熱酸化膜のうちの前記第1支持部における前記可動部側と反対側の端部と対向する部分に第1溝部(21a)を形成すると共に、前記第2支持部における前記可動部側と反対側の端部と対向する部分に第2溝部(21b)を形成する工程を行い、
前記センシング部を形成する工程では、前記第1支持部における前記可動部側の端部の一部が前記窪み部の壁面に形成された前記熱酸化膜で囲まれる空間(13)に突出すると共に前記可動部側と反対側の端部の一部が前記第1溝部上に突出するように第1固定部を形成し、かつ、前記第2支持部における前記可動部側の端部の一部が前記空間に突出すると共に前記可動部側と反対側の端部の一部が前記第2溝部上に突出するように前記第2固定部を形成することにより、前記第1支持部のうちの前記熱酸化膜を介して前記第1基板と接合されている部分の面積と、前記第2支持部のうちの前記熱酸化膜を介して前記第1基板と接合されている部分の面積とを等しくすることを特徴とする物理量センサの製造方法。
【請求項3】
一面(10a)を有し、前記一面に窪み部(11)が形成されたシリコン基板で構成される第1基板(10)と、
前記第1基板に形成された熱酸化膜(20)と、
前記第1基板の一面側に前記熱酸化膜を介して配置された第2基板(30)と、を備えるSOI基板において、
前記熱酸化膜は、前記第1基板の一面のうちの前記窪み部の開口部における周辺部を境界領域(12a)とし、前記境界領域より面積が大きく、前記境界領域を取り囲む領域を周辺領域(12b)としたとき、前記熱酸化膜のうちの前記境界領域に形成された部分の厚さが前記周辺領域に形成された部分の厚さより薄くされており、
前記第2基板は、前記熱酸化膜のうちの前記周辺領域に形成された部分のみと接合され、
前記熱酸化膜のうちの前記境界領域に形成された部分と前記第2基板との間には、緩和空間(70)が構成されていることを特徴とするSOI基板。
【請求項4】
請求項に記載のSOI基板を備え、
前記第2基板に、所定方向に変位可能とされた複数の可動電極(44)を有する可動部(40)と、前記可動電極と対向する第1固定電極(51)が備えられる第1支持部(52)を有する第1固定部(50)と、前記可動電極と対向する第2固定電極(61)が備えられる第2支持部(62)を有し、前記第2支持部が前記可動部を挟んで前記第1支持部と反対側に配置された第2固定部(60)と、を含んで構成されるセンシング部(31)が形成されている物理量センサにおいて、
前記熱酸化膜には、前記第1支持部における前記可動部側と反対側の端部と対向する部分に第1溝部(21a)が形成されていると共に、前記第2支持部における前記可動部側と反対側の端部と対向する部分に第2溝部(21b)が形成されており、
前記第1支持部は、前記可動部側の端部の一部が前記窪み部の壁面に形成された前記熱酸化膜で囲まれる空間(13)に突出すると共に前記可動部側と反対側の端部の一部が前記第1溝部上に突出し、
前記第2支持部は、前記可動部側の端部の一部が前記空間に突出すると共に前記可動部側と反対側の端部の一部が前記第2溝部上に突出しており、
前記第1支持部のうちの前記熱酸化膜を介して前記第1基板と接合されている部分の面積と、前記第2支持部のうちの前記熱酸化膜を介して前記第1基板と接合されている部分の面積とが等しくされていることを特徴とする物理量センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一面に窪み部が形成された第1基板に熱酸化膜が形成され、第1基板の一面側に熱酸化膜を介して第2基板が配置されたSOI基板およびそれを用いた物理量センサ、SOI基板の製造方法および物理量センサの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、一面に窪み部が形成された第1基板に熱酸化膜が形成され、第1基板の一面側に熱酸化膜を介して第2基板が配置されたSOI(Silicon on Insulator)基板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、このようなSOI基板では、第1基板としてシリコン基板が用いられる。
【0003】
上記SOI基板は、次のように製造される。すなわち、まず、第1基板の一面に窪み部を形成する。次に、第1基板を熱酸化して熱酸化膜を形成する。このとき、熱酸化膜は、第1基板の全面に形成され、窪み部の壁面にも形成される。そして、第1基板の一面に形成された熱酸化膜と第2基板とを接合することにより、上記SOI基板が製造される。
【0004】
このようなSOI基板は、第2基板にドライエッチング等を行って物理量に応じたセンサ信号を出力するセンシング部を形成する場合、窪み部に形成された熱酸化膜をエッチングストッパとして利用できる。このため、窪み部の底面が荒れることを抑制できる。また、窪み部に熱酸化膜(絶縁膜)が形成されていることにより、第1基板と第2基板とが異物を介して電気的に接続されることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−229356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記SOI基板では、第1基板を熱酸化して熱酸化膜を形成すると、窪み部の開口部に応力が集中する。このため、熱酸化膜のうちの窪み部の開口部に形成される部分は、他の領域に形成される部分よりも膜厚が厚くなる。つまり、第1基板の一面において、熱酸化膜は、窪み部の開口部に形成される部分が他の領域に形成される部分より盛り上がって形成される。したがって、このような状態で熱酸化膜と第2基板とを接合すると、熱酸化膜のうちの盛り上がっている部分のみが第2基板と接合されるため、熱酸化膜と第2基板との接合性が悪くなるという問題がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、熱酸化膜と第2基板との接合性を向上できるSOI基板およびそれを用いた物理量センサ、SOI基板の製造方法および物理量センサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、一面(10a)を有するシリコン基板で構成される第1基板(10)を用意する工程と、第1基板の一面に窪み部(11)を形成する工程と、第1基板を熱酸化して熱酸化膜(20、90)を形成する工程と、第1基板の一面側に熱酸化膜を介して第2基板(30)を接合する工程と、を行い、以下の点を特徴としている。
【0009】
すなわち、熱酸化膜を形成する工程の後、第1基板の一面のうちの窪み部の開口部における周辺部を境界領域(12a)とし、境界領域より面積が大きく、境界領域を取り囲む領域を周辺領域(12b)としたとき、熱酸化膜(20)のうちの境界領域に形成された部分の厚さを周辺領域に形成された部分の厚さ以下にする熱酸化膜調整工程を行い、第2基板を接合する工程では、熱酸化膜のうちの周辺領域に形成された部分と第2基板とを接合し、熱酸化膜調整工程では、第1基板の一面側に、熱酸化膜のうちの境界領域に形成された部分が露出するようにレジスト(90)を形成した後、レジストをマスクとして熱酸化膜のうちの境界領域に形成された部分を薄膜化することにより、熱酸化膜のうちの境界領域に形成された部分の厚さを周辺領域に形成された部分の厚さ以下にすることを特徴としている。
【0010】
これによれば、熱酸化膜のうちの周辺領域に形成された部分と第2基板とを接合することでSOI基板を構成しているため、熱酸化膜と第2基板との接合性を向上できる。
【0011】
また、請求項に記載の発明では、請求項に記載の製造方法で製造したSOI基板を用意する工程と、第2基板に、所定方向に変位可能とされた複数の可動電極(44)を有する可動部(40)と、可動電極と対向する第1固定電極(51)が備えられる第1支持部(52)を有する第1固定部(50)と、可動電極と対向する第2固定電極(61)が備えられる第2支持部(62)を有し、第2支持部が可動部を挟んで第1支持部と反対側に配置された第2固定部(60)と、を含んで構成されるセンシング部(31)を形成する工程と、を行う物理量センサの製造方法において、以下の点を特徴としている。
【0012】
すなわち、SOI基板を用意する工程における熱酸化膜調整工程では、熱酸化膜のうちの第1支持部における可動部側と反対側の端部と対向する部分に第1溝部(21a)を形成すると共に、第2支持部における可動部側と反対側の端部と対向する部分に第2溝部(21b)を形成する工程を行い、センシング部を形成する工程では、第1支持部における可動部側の端部の一部が窪み部の壁面に形成された熱酸化膜で囲まれる空間(13)に突出すると共に可動部側と反対側の端部の一部が第1溝部上に突出するように第1固定部を形成し、かつ、第2支持部における可動部側の端部の一部が空間に突出すると共に可動部側と反対側の端部の一部が第2溝部上に突出するように第2固定部を形成することにより、第1支持部のうちの熱酸化膜を介して第1基板と接合されている部分の面積と、第2支持部のうちの熱酸化膜を介して第1基板と接合されている部分の面積とを等しくすることを特徴としている。
【0013】
これによれば、位置ずれが発生しても、第1、第2支持部における熱酸化膜を介して第1基板と接合されている部分の面積が変化せず、寄生容量も変化しない。このため、検出精度が低下することを抑制できる。
【0014】
そして、請求項に記載の発明では、一面(10a)を有し、一面に窪み部(11)が形成されたシリコン基板で構成される第1基板(10)と、第1基板に形成された熱酸化膜(20)と、第1基板の一面側に熱酸化膜を介して配置された第2基板(30)と、を備えるSOI基板において、以下の点を特徴としている。
【0015】
すなわち、熱酸化膜は、第1基板の一面のうちの窪み部の開口部における周辺部を境界領域(12a)とし、境界領域より面積が大きく、境界領域を取り囲む領域を周辺領域(12b)としたとき、熱酸化膜のうちの境界領域に形成された部分の厚さが周辺領域に形成された部分の厚さより薄くされており、第2基板は、熱酸化膜のうちの周辺領域に形成された部分のみと接合され、熱酸化膜のうちの境界領域に形成された部分と第2基板との間には、緩和空間(70)が構成されていることを特徴としている。
【0016】
これによれば、使用環境が高温に変化して熱酸化膜が膨張する場合、熱酸化膜が緩和空間に膨張でき、熱酸化膜と第2基板との間に熱応力が発生することを抑制できる。
【0017】
また、請求項に記載の発明では、請求項に記載のSOI基板を備え、第2基板に、所定方向に変位可能とされた複数の可動電極(44)を有する可動部(40)と、可動電極と対向する第1固定電極(51)が備えられる第1支持部(52)を有する第1固定部(50)と、可動電極と対向する第2固定電極(61)が備えられる第2支持部(62)を有し、第2支持部が可動部を挟んで第1支持部と反対側に配置された第2固定部(60)と、を含んで構成されるセンシング部(31)が形成されている物理量センサにおいて、以下の点を特徴としている。
【0018】
すなわち、熱酸化膜には、第1支持部における可動部側と反対側の端部と対向する部分に第1溝部(21a)が形成されていると共に、第2支持部における可動部側と反対側の端部と対向する部分に第2溝部(21b)が形成されており、第1支持部は、可動部側の端部の一部が窪み部の壁面に形成された熱酸化膜で囲まれる空間(13)に突出すると共に可動部側と反対側の端部の一部が第1溝部上に突出し、第2支持部は、可動部側の端部の一部が空間に突出すると共に可動部側と反対側の端部の一部が第2溝部上に突出しており、第1支持部のうちの熱酸化膜を介して第1基板と接合されている部分の面積と、第2支持部のうちの熱酸化膜を介して第1基板と接合されている部分の面積とが等しくされていることを特徴としている。
【0019】
これによれば、第1支持部と第1基板との間に形成される寄生容量と、第2支持部と第1基板との間に形成される寄生容量が等しくなるため、検出精度が低下することを抑制できる。
【0020】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態における加速度センサの平面図である。
図2図1中のII−II線に沿った断面図である。
図3図2中の領域Aの拡大図である。
図4図1に示す加速度センサの製造工程を示す断面図である。
図5図4(b)中の領域Bの拡大図である。
図6】本発明の第2実施形態における加速度センサの製造工程を示す断面図である。
図7図6(f)中の領域Cの拡大図である。
図8】本発明の第3実施形態における加速度センサの平面図である。
図9図8中のIX−IX線に沿った断面図である。
図10A図4(e)の工程において位置ずれがある場合の第1支持部近傍の断面図である。
図10B図4(e)の工程において位置ずれがない場合の第1支持部近傍の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0023】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、物理量センサとして加速度を検出するセンシング部が形成された加速度センサを例に挙げて説明する。
【0024】
図1および図2に示されるように、本実施形態の加速度センサは、一面10aおよび他面10bを有する支持基板10と、支持基板10に形成された熱酸化膜20と、熱酸化膜20を挟んで支持基板10と反対側に配置された半導体層30とを有するSOI基板1を用いて構成されている。
【0025】
なお、支持基板10および半導体層30はシリコン基板で構成されている。また、本実施形態では、支持基板10が本発明の第1基板に相当し、半導体層30が本発明の第2基板に相当している。
【0026】
SOI基板1には、周知のマイクロマシン加工が施されてセンシング部31が形成されている。具体的には、半導体層30には、溝部32が形成されることによって櫛歯形状の梁構造体を有する可動部40および第1、第2固定部50、60が形成されており、この梁構造体によって加速度に応じたセンサ信号を出力するセンシング部31が形成されている。
【0027】
また、支持基板10のうちの梁構造体の形成領域に対応した部分には、窪み部11が形成されている。そして、熱酸化膜20は、窪み部11の壁面を含む支持基板10の全面に形成されている。つまり、熱酸化膜20は、支持基板10の他面10bや側面にも形成されている。
【0028】
熱酸化膜20は、図3に示されるように、支持基板10の一面10aのうちの窪み部11の開口部における周辺部分を境界領域12aとし、当該境界領域12aを取り囲む領域を周辺領域12bとしたとき、境界領域12aに形成されている部分の厚さが周辺領域12bに形成されている部分の厚さ以下とされている。本実施形態では、熱酸化膜20は、境界領域12aに形成されている部分の厚さが周辺領域12bに形成されている部分の厚さより薄くされている。なお、境界領域12aは、周辺領域12bより面積が小さくされている。
【0029】
そして、半導体層30は、熱酸化膜20のうちの周辺領域12bに形成された部分と接合されている。これにより、熱酸化膜20のうちの支持基板10の一面10aに沿って形成された部分と窪み部11の壁面に沿って形成された部分とを連結する境界部20aと、半導体層30との間に緩和空間70が構成されている。つまり、熱酸化膜20のうちの境界領域12aに形成された部分と半導体層30との間には、緩和空間70が構成されている。
【0030】
図1および図2に示されるように、半導体層30に形成された可動部40は、窪み部11上を横断するように配置されており、矩形状の錘部41における長手方向の両端が梁部42を介してアンカー部43a、43bに一体に連結した構成とされている。アンカー部43a、43bは、窪み部11の開口縁部で熱酸化膜20を介して支持基板10に支持されている。これにより、錘部41および梁部42は、窪み部11の壁面に形成された熱酸化膜20で囲まれる空間13(以下では、単に空間13という)に臨んだ状態となっている。
【0031】
ここで、図1および図2中のx軸方向、y軸方向、z軸方向の各方向について説明する。図1および図2中では、x軸方向は錘部41の長手方向(図1中紙面上下方向)である。y軸方向はSOI基板1の面内においてx軸と直交する方向(図1中紙面左右方向)である。z軸方向は、SOI基板1の平面方向と直交する方向(図1中紙面奥行き方向)である。
【0032】
梁部42は、平行な2本の梁がその両端で連結された矩形枠状とされており、2本の梁の長手方向と直交する方向に変位するバネ機能を有している。具体的には、梁部42は、x軸方向の成分を含む加速度を受けたとき、錘部41をx軸方向へ変位させると共に、加速度の消失に応じて元の状態に復元させるようになっている。したがって、このような梁部42を介して支持基板10に連結された錘部41は、加速度の印加に応じて、窪み部11上にて梁部42の変位方向(x軸方向)へ変位可能となっている。
【0033】
また、可動部40は、錘部41の長手方向と直交した方向(y軸方向)に、錘部41の両側面から互いに反対方向へ一体的に突出形成された複数個の可動電極44を備えている。図1では、可動電極44は、錘部41の左側および右側に各々4個ずつ突出して形成されており、空間13に臨んだ状態となっている。また、各可動電極44は、錘部41および梁部42と一体的に形成されており、梁部42が変位することによって錘部41と共にx軸方向に変位可能となっている。
【0034】
第1、第2固定部50、60は、同じ形状とされており、窪み部11の開口縁部のうち、アンカー部43a、43bが支持されている部分以外にて、熱酸化膜20を介して支持基板10に支持されている。すなわち、第1、第2固定部50、60は、可動部40を挟むように配置されている。図1では、第1固定部50が可動部40に対して紙面左側に配置され、第2固定部60が可動部40に対して紙面右側に配置されている。そして、第1、第2固定部50、60は互いに電気的に独立している。
【0035】
また、第1、第2固定部50、60は、可動電極44の側面と所定の検出間隔を有するように平行した状態で対向配置された複数個の第1、第2固定電極51、61と、熱酸化膜20を介して支持基板10に支持された第1、第2支持部52、62とを有している。
【0036】
第1、第2固定電極51、61は、図1では4個ずつ形成されており、可動電極44における櫛歯の隙間にかみ合うように櫛歯状に配列されている。そして、各支持部52、6に片持ち状に支持されることにより、空間13に臨んだ状態となっている。
【0037】
第1支持部52は、第1固定電極51が備えられる第1連結部52aと、第1連結部52aを外部回路と電気的にするための第1接続部52bとを有している。同様に、第2支持部62は、第2固定電極61が備えられる第2連結部62aと、第2連結部62aを外部回路と電気的にするための第2接続部62bとを有している。
【0038】
第1、第2連結部52a、62aは、本実施形態では、長辺が錘部41の長手方向(x軸方向)と平行となる平面矩形状とされており、それぞれ可動部40側の端部に第1、第2固定電極51、61を備えている。そして、第1、第2連結部52a、62aのうちの可動部40側の端部は、それぞれ空間13に突出している。
【0039】
第1、第2接続部52b、62bは、それぞれ第1、第2連結部52a、62aと接続され、所定箇所がボンディングワイヤ(図示せず)等を介して外部回路と電気的に接続されるようになっている。なお、可動部40は、アンカー部43bがボンディングワイヤ(図示せず)等を介して外部回路と電気的に接続される。
【0040】
以上が本実施形態における加速度センサの構成である。このような加速度センサでは、可動電極44と第1固定電極51との間に形成される第1容量と、可動電極44と第2固定電極61との間に形成される第2容量との容量差に基づいて加速度が検出される。
【0041】
次に、上記加速度センサの製造方法について図4を参照しつつ説明する。
【0042】
まず、図4(a)に示されるように、一面10aおよび他面10bを有する支持基板10を用意する。そして、支持基板10の一面10aに図示しないレジスト等を形成し、当該レジストをマスクとしてドライエッチング等で窪み部11を形成する。
【0043】
次に、図4(b)に示されるように、支持基板10を熱酸化することにより、支持基板10の全面に熱酸化膜20を形成する。このとき、図5に示されるように、支持基板10のうちの境界領域12aでは、応力が集中するため、周辺領域12bより厚い熱酸化膜20が形成される。言い換えると、境界領域12aでは、熱酸化膜20が盛り上がって形成される。すなわち、支持基板10における境界領域12aとは、熱酸化膜20が盛り上がって形成される部分ともいえる。
【0044】
続いて、図4(c)に示されるように、熱酸化膜20のうちの境界領域12aに形成された部分が露出するように、支持基板10の一面10a側にレジスト80を形成する。そして、当該レジスト80をマスクとし、ドライエッチングやウェットエッチング等を行うことにより、熱酸化膜20のうちの境界領域12aに形成された部分を周辺領域12bに形成された部分より薄膜化する熱酸化膜調整工程を行う。なお、この工程では、支持基板10が熱酸化膜20から露出しないように、熱酸化膜20のうちの境界領域12aに形成された部分を周辺領域12bに形成された部分より薄くする。
【0045】
その後、図4(d)に示されるように、支持基板10の一面10a側に形成された熱酸化膜20と半導体層30とを接合してSOI基板1を形成する。具体的には、熱酸化膜20は、境界領域12aに形成された部分が周辺領域12bに形成された部分より薄くされているため、熱酸化膜20のうちの周辺領域12bに形成された部分と半導体層30とを接合する。これにより、周辺領域12bは境界領域12aより面積が広くされているため、熱酸化膜20と半導体層30との接合性を向上できる。
【0046】
熱酸化膜20と半導体層30との接合は、特に限定されるものではないが、例えば、次のように行うことができる。すなわち、まず、熱酸化膜20の表面(接合面)および半導体層30の表面(接合面)にNプラズマ、Oプラズマ、またはArイオンビームを照射し、熱酸化膜20および半導体層30の各表面(接合面)を活性化させる。次に、適宜形成されたアライメントマークを用いて赤外顕微鏡等によりアライメントを行い、室温〜550℃の低温で熱酸化膜20および半導体層30をいわゆる直接接合により接合する。
【0047】
なお、ここでは直接接合を例に挙げて説明したが、熱酸化膜20と半導体層30とは、陽極接合や中間層接合等の接合技術によって接合されてもよい。また、接合後に、高温アニール等の接合品質を向上させる処理を行ってもよい。さらに、接合後に、半導体層30を研削研磨によって所望の厚さに加工してもよい。
【0048】
その後、図4(e)に示されるように、半導体層30上に図示しないレジストを形成し、当該レジストをマスクとしてドライエッチング等を行って溝部32を形成する。これにより、半導体層30に上記可動部40および第1、第2固定部50、60を有するセンシング部31が形成されて上記加速度センサが製造される。なお、この工程では、熱酸化膜20をエッチングストッパとすることにより、窪み部11の底部が荒れることを抑制できる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態では、支持基板10を熱酸化して熱酸化膜20を形成した後、熱酸化膜20のうちの境界領域12aに形成された部分を周辺領域12bに形成された部分より薄くしている。そして、熱酸化膜20のうちの周辺領域12bに形成された部分と半導体層30とを接合することにより、SOI基板1を構成している。このため、従来のSOI基板と比較して、熱酸化膜20と半導体層30との接合性を向上できる。
【0050】
また、熱酸化膜20のうちの支持基板10の一面10aに沿って形成された部分と窪み部11の壁面に沿って形成された部分とを連結する境界部20aと、半導体層30との間に緩和空間70が構成されている。このため、使用環境が高温に変化して熱酸化膜20が膨張する場合、熱酸化膜20が緩和空間70に膨張でき、熱酸化膜20と半導体層30との間に熱応力が発生することを抑制できる。
【0051】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して熱酸化膜20のうちの境界領域12aに形成された部分の膜厚と周辺領域12bに形成された部分の膜厚とを等しくするものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0052】
本実施形態では、まず、図6(a)に示されるように、図4(a)と同様の工程を行い、支持基板10に窪み部11を形成する。
【0053】
次に、図6(b)に示されるように、支持基板10における窪み部11の開口部を丸めるために、支持基板10を熱酸化して丸め用絶縁膜90を形成する。なお、この工程は、窪み部11の開口部を丸めることを主目的とするものであるため、上記図3(b)の工程で行う熱酸化より加熱温度が低くてもよいし、加熱時間が短くてもよい。また、この工程においても、支持基板10のうちの境界領域12aでは、応力が集中するため、周辺領域12bより厚い丸め用絶縁膜90が形成される。
【0054】
そして、図6(c)に示されるように、図6(b)の工程で形成した丸め用絶縁膜90をウェットエッチング等で除去する。
【0055】
続いて、図6(d)に示されるように、上記図4(b)と同様の工程を行い、支持基板10を熱酸化して支持基板10の全面に熱酸化膜20を形成する。このとき、図6(b)の工程において、窪み部11の開口部が丸められているため、熱酸化した際に境界領域12a(窪み部11の開口部)に応力が集中することを抑制できる。このため、支持基板10には、一面10a上に膜厚がほぼ等しい熱酸化膜20が形成される。つまり、熱酸化膜20のうちの境界領域12aに形成された部分の膜厚と周辺領域12bに形成された部分の膜厚とがほぼ等しくなる。
【0056】
なお、図6(d)の工程は、窪み部11の開口部が丸められている状態で行っている。このため、熱酸化膜20のうちの支持基板10の一面10aに沿って形成された部分と窪み部11の壁面に沿って形成された部分とを連結する境界部20aは、丸められた窪み部11の開口部に沿って形成される(図7参照)。つまり、熱酸化膜20のうちの支持基板10の一面10aに沿って形成された部分と窪み部11の壁面に沿って形成された部分とを連結する境界部20aは、支持基板10側と反対側の面が丸められた状態となっている。
【0057】
次に、図6(e)に示されるように、図4(d)と同様の工程を行い、熱酸化膜20と半導体層30とを接合する。本実施形態では、図6(d)の工程において、熱酸化膜20のうちの境界領域12aに形成された部分の膜厚と周辺領域12bに形成された部分の膜厚とがほぼ等しくなる。このため、熱酸化膜20のうちの境界領域12aに形成された部分および周辺領域12bに形成された部分が半導体層30と接合される。
【0058】
その後、図6(f)に示されるように、上記図4(e)と同様の工程を行うことにより、上記加速度センサが製造される。
【0059】
なお、本実施形態においても、図7に示されるように、熱酸化膜20のうちの支持基板10の一面10aに沿って形成された部分と窪み部11の壁面に沿って形成された部分とを連結する境界部20aと、半導体層30との間に緩和空間70が構成される。
【0060】
以上説明したように、本実施形態では、熱酸化膜20のうちの境界領域12aに形成された部分および周辺領域12bに形成された部分が半導体層30と接合されるため、さらに接合性を向上しつつ、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0061】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。上記各実施形態の加速度センサでは、可動電極44と第1固定電極51との間に形成される第1容量と、可動電極44と第2固定電極61との間に形成される第2容量との容量差に基づいて加速度が検出される。しかしながら、実際には、第1容量には、第1固定部50(第1支持部52)と支持基板10との間の寄生容量が含まれ、第2容量には、第2固定部60(第2支持部62)と支持基板10との間の寄生容量が含まれる。この場合、第1容量に含まれる寄生容量と第2容量に含まれる寄生容量とが等しい場合には、第1容量と第2容量との容量差を演算する際に寄生容量がキャンセルされるため、検出精度に特に影響はない。ところが、センシング部31を形成する際のアライメントずれ等により、第1、第2連結部52a、62aのうちの可動部40側の端部が空間13に突出する長さが異なる場合がある。すると、第1固定部50(第1支持部52)と支持基板10との間の寄生容量と、第2固定部60(第2支持部62)と支持基板10との間の寄生容量が異なり、検出精度が低下してしまう。
【0062】
したがって、本実施形態は、検出精度が低下することを抑制できるようにしたものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0063】
本実施形態では、図8および図9に示されるように、熱酸化膜20には、第1連結部52aのうちの可動部40側と反対側の端部と対向する部分に第1溝部21aが形成されている。また、熱酸化膜20には、第2連結部62aのうちの可動部40側と反対側の端部と対向する部分に第2溝部21bが形成されている。具体的には、これら第1、第2溝部21a、21bは、第1、第2連結部52a、62aのうちの熱酸化膜20との接合部分における空間13側の境界(以下では、単に第1、第2連結部52a、62aの空間13側の境界という)に沿った方向(x軸方向)に延設されている。
【0064】
そして、第1、第2連結部52a、62aは、それぞれ可動部40側と反対側の端部が第1、第2溝部21a、21b上に突出している。詳述すると、第1連結部52aは、第1連結部52a(第1支持部52)と第1溝部21aにおける開口部との境界の方向と長さが、第1連結部52a(第1支持部52)の空間13側の境界の方向と長さが等しくなるように、第1溝部21a上に突出している。同様に、第2連結部62aは、第2連結部62a(第2支持部62)と第2溝部21bにおける開口部との境界の方向と長さが、第2連結部62a(第2支持部62)の空間13側の境界の方向と長さが等しくなるように、第2溝部21b上に突出している。
【0065】
そして、第1、第2連結部52a、62aおよび第1、第2接続部52b、62bからなる第1、第2支持部52、62は、熱酸化膜20を介して支持基板10と接合されている部分の面積(対向する部分の面積)が互いに等しくされている。すなわち、第1支持部52(第1固定部50)と支持基板10との間に形成される寄生容量と、第2支持部62(第2固定部60)と支持基板10との間に形成される寄生容量とが等しくされている。
【0066】
なお、ここでの境界の方向と長さが等しい、および面積が等しいとは、完全に一致する場合に加えて、製造誤差等によって生じる若干の誤差を含むものである。
【0067】
このような加速度センサは、上記図4(b)の工程において、熱酸化膜20に第1、第2溝部21a、21bを形成し、図4(e)の工程において、上記センシング部31を形成することによって製造される。
【0068】
そして、図4(e)の工程では、マスク(レジスト)をパターニングする際に数μm程度の位置ずれが発生し、例えば、可動部40および第1、第2固定部50、60が全体的に第1固定部50側(y軸方向)に位置ずれすることがある。この場合、図10Aに示されるように、第1連結部52aのうちの空間13に突出する部分の長さaが短くなり、第1溝部21aに突出する部分の長さbが長くなる。
【0069】
しかしながら、第1連結部52aのうちの空間13および第1溝部21aに突出する部分の長さの和は、位置ずれが発生しなかった場合(図10B)と位置ずれが発生した場合(図10A)とで等しい。つまり、第1連結部52aのうちの熱酸化膜20を介して支持基板10と接合されている部分の面積(支持基板10と対向する部分の面積)は変化せず、第1連結部52aと支持基板10との間に形成される寄生容量は変化しない。
【0070】
同様に、特に図示しないが、位置ずれが発生したとしても、第2連結部62aのうちの空間13および第2溝部21bに突出する部分の長さの和は変化せず、第2連結部62aと支持基板10との間に形成される寄生容量は変化しない。
【0071】
すなわち、第1、第2溝部21a、21bのy軸方向の長さ(幅)を製造上起こり得る位置ずれ量より予め大きく設けておくことにより、上記のように位置ずれが発生したとしても、寄生容量が変化することを抑制できる。このため、上記のように加速度センサを製造することにより、位置ずれが発生したとしても、寄生容量が変化しない加速度センサとすることができる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態では、第1、第2溝部21a、21bが形成されており、第1、第2支持部52、62は、それぞれ一部が空間13および第1、第2溝部21a、21b上に突出している。そして、熱酸化膜20を介して支持基板10と接合されている部分の面積(対向する部分の面積)が互いに等しくされている。このため、第1、第2支持部52、62(第1、第2固定部50、60)と支持基板10との間に形成される寄生容量が等しくなり、検出精度が低下することを抑制できる。
【0073】
また、このような加速度センサを製造する際には、第1溝部21aを形成し、第1連結部52aのうちの可動部40側の端部が空間13上に突出すると共に、可動部40側と反対側の端部が第1溝部21a上に突出するように第1固定部50を形成している。そして、第2溝部21bを形成し、第2連結部62aのうちの可動部40側の端部が空間13上に突出すると共に、可動部40側と反対側の端部が第2溝部21b上に突出するように第2固定部60を形成している。
【0074】
このため、可動部40および第1、第2固定部50、60を形成する際、可動部40および第1、第2固定部50、60が全体的にy軸方向に位置ずれしたとしても、第1、第2支持部52、62のうちの熱酸化膜20を介して支持基板10と接合されている部分の面積(支持基板10と対向する部分の面積)は変化しない。すなわち、第1、第2支持部52、62(第1、第2固定部50、60)と支持基板10との間に形成される寄生容量は変化しない。したがって、位置ずれが発生したとしても、寄生容量が変化せず、検出精度が低下することを抑制した加速度センサを製造できる。
【0075】
なお、上記では、y軸方向の位置ずれを例に挙げて説明したが、製造上発生し得るx軸方向およびz軸周りの回転方向の位置ずれが発生したとしても、本実施形態によれば、寄生容量が変化せず、検出精度が低下することを抑制した加速度センサを製造できる。
【0076】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0077】
例えば、上記第1実施形態では、図4(c)の工程において、支持基板10の一面10a側から研削または研磨することにより、支持基板10の一面10aに形成された熱酸化膜20を平坦化してもよい。つまり、熱酸化膜20のうちの境界領域12aに形成されている部分の厚さを周辺領域12bに形成されている部分の厚さと等しくしてもよい。
【0078】
また、上記第1、第2実施形態では、物理量センサとして、加速度を検出する加速度センサを例に挙げて説明したが、例えば、角速度を検出する角速度センサや圧力を検出する圧力センサに適用することができる。また、上記第3実施形態では、物理量センサとして、容量差を用いて物理量を検出する角速度センサや圧力センサ等に適用することができる。
【0079】
さらに、上記第2実施形態に上記第3実施形態を組み合わせ、熱酸化膜20に第1、第2溝部21a、21bを形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 支持基板(第1基板)
10a 一面
11 窪み部
12a 境界領域
12b 周辺領域
20 熱酸化膜
30 半導体層(第2基板)
90 熱酸化膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B