(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中古組電池を構成する複数の中古二次電池の中から、二次電池としての劣化保証が可能な中古二次電池か否かの判定を行って劣化保証可能な中古二次電池を選び出し、組電池を再構成する組電池再構成品の再構成方法であって、
前記複数の中古二次電池と同種類の前記二次電池について二次電池劣化と判定される時点での前記二次電池におけるセパレータの保液量から保液量減少速度を用いて、予め設定された所定劣化保証期間を遡った時点での前記保液量を保液量閾値として設定し、
判定対象の前記中古二次電池と同種類の前記二次電池について前記保液量及び交流内部抵抗値の関係を予め求めて、前記保液量閾値に対応する前記交流内部抵抗値を交流内部抵抗閾値として設定し、
判定対象の前記中古二次電池の前記交流内部抵抗値を取得し、
前記交流内部抵抗値の取得値が前記交流内部抵抗閾値未満である前記中古二次電池を前記劣化保証が可能な中古二次電池として選び出し、選び出した中古二次電池を用いて組電池を再構成する、組電池再構成品の再構成方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。以下で説明する材質、数値、数量などは、説明のための例示であって、中古二次電池の再構成品適用判定方法の仕様または組電池の再構成方法の仕様などにより変更が可能である。以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0015】
また、以下では中古組電池を構成する中古二次電池から組電池再構成品であるリビルト品を再構成する場合において中古二次電池の再構成品適用判定方法を行う場合を説明するが、この判定方法はリユース品を構成する場合の判定方法として用いてもよい。「リビルト品」は、複数の中古組電池の中から選び出した中古二次電池を再利用して1つの組電池として再構成される組電池である。「リユース品」は、1つの中古組電池を構成するすべての中古二次電池をそのまま再利用して再生される組電池である。また、以下ではリビルト品を再構成する場合に中古二次電池の再構成品適用判定方法を2回行う場合を説明するが、リビルト品の再構成方法において、再構成品適用判定方法を1回のみ行ってもよい。リビルト品は、例えば電気自動車またはハイブリッド車両の駆動源である走行用モータの電源として用いられる。
【0016】
まず、中古二次電池の再構成品適用判定方法を説明し、次に、この判定方法を利用した組電池再構成品の再構成方法を説明する。
【0017】
以下では二次電池の基本的種類として、ニッケル水素電池を用いる場合を説明する。ここで、二次電池は陽極と陰極との間に電解液が保持される電池セルを基本構成単位として構成される。通常は、陽極と陰極とが電解質膜を含むセパレータで分離され、セパレータに電解液が保持される二次電池であれば、これ以外の基本的種類の二次電池であってもよい。例えば二次電池はリチウムイオン二次電池であってもよい。基本的種類は、正極物質、負極物質、及び電解質で区別される。
【0018】
また、以下では「二次電池」が、複数個、例えば6個、8個、12個のいずれかの電池セルを積層した状態で結合され、互いに電気的に直列接続されることにより形成される電池モジュールである場合を説明する。通常、電池セルを積層した場合、隣接する電池セルで電極を共用できるため、電池セル単位では分解することができず、再利用の単位は電池モジュール単位になる。「電池モジュール」を、複数個、例えば28個を積層して電気的に直列接続して「電池スタック」と呼ばれる組電池を形成し、この組電池が車両に搭載して使用されるが、「電池スタック」は「電池モジュール」単位に分解することが可能である。なお、以下で説明する「二次電池」は電池セル、電池モジュール、または組電池を意味する。
【0019】
組電池が車両に搭載して使用されると、各電池セルの内部に設けられるセパレータの電解液保持量である保液量が徐々に減少して、それが電池劣化の原因となる。このために本発明ではセパレータの保液量との関係で、中古二次電池が組電池の再構成品に適しているか否かを以下で説明するように判定する。
【0020】
中古二次電池は、使用済みの二次電池であり、予め定めた保証期間が過ぎたもの、何等かの理由で以後の劣化保証ができるか否かの判定を行いたいものである。中古二次電池を含む中古組電池がユーザなどから組電池再構成部門で回収された場合、組電池再構成部門は、中古二次電池が組電池再構成品への適用が可能であるかを判定する。後述するように、組電池再構成部門は、再構成品へ適用可能と判定された中古二次電池を用いて組電池再構成品を再構成する。なお、再構成部門は再構成を行う団体または会社であってもよい。
【0021】
以下では、複数の二次電池で構成される組電池の保証期間が過ぎている場合、または保証期間の残りが少ない場合に、組電池を構成する各二次電池(電池モジュール)について以後の劣化保証ができるか否かの判定を行うものとする。
【0022】
図1は、実施形態の中古二次電池の再構成品適用判定方法の実行に用いるフローチャートを示す図である。
図1のフローチャートにおいて、人手による処理作業を含むステップは破線枠で囲んで示している。実線枠で囲まれたステップは、適当なコンピュータがソフトウェアを実行することで実現される処理で、具体的には中古二次電池の再構成品適用判定プログラムに相当する。このプログラムは、前段階のプログラムと後段階のプログラムとで分けて2つのコンピュータで分けて実行してもよい。実線枠で囲まれたステップの一部をハードウェアで実現してもよい。破線枠のうち、後述のS18の判定はコンピュータで行ってもよい。
【0023】
実施形態の再構成品適用判定方法は、判定対象の中古二次電池の交流内部抵抗値Xを取得し、判定対象の中古二次電池と同種類の二次電池におけるセパレータの保液量について予め設定された保液量閾値に対応する交流内部抵抗閾値X0と交流内部抵抗値Xの取得値とを比較した結果に基づいて、中古二次電池の組電池再構成品への適用可否を判定する。
【0024】
具体的には、中古二次電池の再構成品適用判定を行うには、まず、判定の対象となる中古二次電池を準備する。そしてコンピュータにおいて、中古二次電池の再構成品適用判定プログラムが立ち上がると、コンピュータがユーザからの入力条件、または予め設定された設定値に基づいて保液量閾値の設定を行う(ステップS10)。なお、以下ではステップSは単にSと記載する。
【0025】
二次電池について使用時間が長くなることにより、電池モジュールを形成するケースからの電解液の透過、正極の膨張による正極への水分の取り込み、または負極の腐食反応による水分消費などが生じる。これによって、セパレータの保液量が減少する。保液量が減少すると二次電池の内部抵抗が上昇し、二次電池の出力が低下する。また、保液量が減少しすぎると、セパレータに二次電池構成材料の析出が生じて析出物、例えばコバルト、マンガンによって陽極と陰極との間の微小短絡が生じやすくなる。これによって保液量の減少が二次電池の劣化につながる。そこで、再利用に際して、二次電池の劣化の許容値に対応する保液量が存在し、これが保液量閾値である。
【0026】
また保液量閾値は、判定対象となる中古二次電池の同じ種類ごとに設定されるので、判定対象の中古二次電池の種類を確認し、そのうえでS10が実行される。中古二次電池の種類は、ニッケル水素二次電池において、定格電圧仕様、定格充放電電流仕様によって区別される。二次電池は複数の電池セルにより構成される電池モジュールを対象としているので、当該電池モジュールにおける電池セルの個数及び接続方法によって定格電圧仕様、定格充放電電流仕様が異なる。本実施形態で「同種類の二次電池」とは、ニッケル水素電池などの基本的種類、定格電圧仕様、定格充放電電流仕様の全部が同じであることを意味する。
【0027】
中古二次電池が再構成品へ適用可能か否かを判定するための保液量閾値の設定は、
図2の関係を用いて行う。
図2は、再構成品適用判定方法において、二次電池の保液量閾値を設定する場合に用いる保液量と経過時間との関係を示している。
図2は、横軸に時間tを、縦軸に二次電池におけるセパレータの保液量Dを示している。
図2に示すように保液量は時間の経過にしたがって減少する。
【0028】
ここで組電池再構成品に中古二次電池を使用することを考えた場合、現在使用可能であることが保証されるのではなく、中古二次電池が現在時点t0から、予め設定される所定劣化保証期間TAの終了時点t1までの間で使用可能であることが保証される必要がある。保液量Dtは二次電池の機能保証ができる下限の保液量(劣化限度保液量)である。保液量D0は、時間t0における保液量で、その後に所定劣化保証期間TAが経過した場合に保液量Dtとなる保液量である。この保液量D0が「保液量閾値」である。すなわち、保液量D0は、当該二次電池について、これから所定劣化保証期間TAだけ使用可能であることを保証できる保液量である。
【0029】
保液量閾値D0は、
図2で示す保液量と時間との関係を用いて設定する。この場合、時間t0における保液量D0と時間t1における保液量D1とを結ぶ特性線が保液量の減少特性であり、その傾き(−ΔD/Δt)が保液量の減少速度である。所定劣化保証期間TA、劣化限度保液量Dt、及び保液量の減少速度は、判定対象の中古二次電池と同種類の二次電池について予め求めておくことができる。
【0030】
例えば、保液量の減少速度は、予め実験により求められる。この場合、二次電池をハイブリッド車両に搭載して使用を継続することで二次電池の充放電を繰り返し、予め設定された複数の使用時点で中古組電池を取り出して複数の中古二次電池の電池セルに分解して、セパレータを取り出しその内部の所定面積当たりの液量割合を調べることにより保液量を求める。これにより、保液量と経過時間との関係から保液量の減少速度が求められる。車両搭載用の二次電池では、所定劣化保証期間TAを車両の種類または走行状態に応じて設定することもできる。
【0031】
判定対象の中古二次電池についての所定劣化保証期間TA、劣化限度保液量Dt、及び保液量の減少速度が予めコンピュータに入力され、TA、Dt、及び保液量と、D0=Dt+│(ΔD/Δt)│×tの関係式とを用いてD0が算出され、算出されたD0が保液量閾値として設定される。これによって、Dtから減少速度を用いて所定劣化保証期間TAを遡った時点での保液量閾値D0が設定される。中古二次電池の種類ごとに保液量閾値D0を求めてコンピュータの記憶部に記憶させ、中古二次電池の種類が入力されることにより種類に応じた保液量閾値D0を読み出し、読みだした値を保液量閾値として設定してもよい。
図2では(ΔD/Δt)を一定としたが、非線形的に減少速度が時間とともに変化するときは、微小区間に区切って、D0=Dt+Σ{│(ΔD/Δt)│×Δt}としてD0を算出してもよい。
【0032】
次に、判定対象の中古二次電池と同種類の二次電池について保液量と交流内部抵抗値Xとの関係を予め求めて、保液量閾値D0に対応する交流内部抵抗値を交流内部抵抗閾値X0として設定する(S12)。判定対象の中古二次電池の内部の保液量を外部から確認することは難しい。発明者は、保液量に関連づけられる測定値として何が適当かを求めるために種々に実験を行い、直流内部抵抗値ではなく、所定測定周波数を有する交流電流を二次電池に印加した場合に測定され取得される交流内部抵抗値が、保液量と大きく関連することを見出した。交流内部抵抗値が高い場合、電解液内のイオンの移動抵抗が高いので保液量が少ないと判断できる。直流内部抵抗値は「DCIR」と呼ばれ、交流内部抵抗値は「ACIR」と呼ばれる。この場合、所定測定周波数は、判定対象の中古二次電池と同種類の二次電池について保液量と、交流内部抵抗値との間を関係づける相関度が予め設定された値以上となる周波数である。また、交流内部抵抗値は、インピーダンス値であり、実数部と虚数部とに分けることが可能であるが、保液量の変化の検出には特に虚数部の変化をみることが好ましい。
【0033】
図3は、ニッケル水素二次電池の交流内部抵抗値である交流インピーダンス値について、測定周波数をパラメータとして複素平面上で交流インピーダンス値の絶対値と位相とが変化するときのベクトル先端の軌跡を示すコールコールプロットである。横軸が実数部、縦軸が虚数部である。
図3に示すように測定周波数がある程度の高周波領域で実数部の変化分よりも虚数部の変化分がかなり大きい値を示す。言い換えれば、検出感度は虚数部の方が実数部よりもよい。以下では、交流内部抵抗値とは特に断りがない場合、インピーダンス値の虚数部の値Xを示すものとする。本発明者は、保液量と交流内部抵抗との相関度が高い所定測定周波数(
図3の破線枠α内のいずれかの周波数)として、1kHzを用いることがよいことを確認した。
【0034】
なお、交流内部抵抗値として、インピーダンス値の実数部を用いてもよく、また、実効電圧Ve、実効電流Ieの検出値からインピーダンス値の絶対値│z│(=Ve/Ie)を求めて、絶対値│z│を交流内部抵抗値として用いてもよい。
【0035】
図4は、80個のニッケル水素二次電池を分解し得られた保液量D(g)と、二次電池の交流内部抵抗値X(mΩ)との関係を示す図である。実線Amは80個のデータを統計処理し、相関関係を求めた時の平均線で、破線A1,A2は平均線Amを中心とする3σの信頼区間の内部抵抗に対して下限線及び上限線を示している。
図4に示すように、保液量が減少するのに従って、交流内部抵抗値Xは大きな値を示す。交流内部抵抗閾値Xmは、二次電池が搭載される車両の走行距離が劣化保証モデルの1例である平均走行距離の場合の抵抗値である。交流内部抵抗閾値X0は二次電池が搭載される車両の走行距離が劣化保証モデルの別例である走行距離が平均値+3σで保液量が平均値−3σの場合の抵抗値である。このため、交流内部抵抗値XがXmである場合は、車両が平均的な走行距離で使用される場合の保液量閾値D0に対応し、交流内部抵抗値XがX0である場合は、車両が実質上最長の走行距離で使用される場合の保液量閾値D0に対応する。
【0036】
また、上記の説明で説明した保液量についての減少速度は、一定値を用いる場合に限定しない。例えば、次に説明するように、保液量の減少速度として、保液量について温度との関係で変化する温度関係減少速度を用いてもよい。そして、判定対象の中古二次電池と同種類の二次電池について二次電池劣化と判定される時点t1での保液量である劣化限度保液量Dtから、温度関係減少速度を用いて予め設定された所定劣化保証期間TAを遡った時点での保液量を保液量閾値D0として設定してもよい。
【0037】
例えば
図4の交流内部抵抗閾値X0は、高温地区で使用され、年間走行距離が実質上最長である過酷使用ユーザモデルの場合の保液量閾値D0に対応する抵抗値として設定してもよい。高温地区としては、例えば北米の砂漠地帯などの高温地区、または、南米、アフリカなどの高温地区が想定される。
【0038】
図5は、本実施形態の中古二次電池の再構成品適用判定方法において、所定劣化保証期間TAにおける保液量の減少量を求める場合に用いる電池温度と年間温度頻度との関係、及び電池温度と二次電池における保液量減少速度との関係を示している。
図5の一点鎖線B1は、平均的温度地区で使用され年間走行距離が平均的な平均使用ユーザモデルの年間温度頻度と二次電池の温度との関係を示している。
図5の実線B2は、高温地区で使用され年間走行距離が実質上最長の過酷使用ユーザモデルの二次電池の年間温度頻度と二次電池の温度との関係を示している。年間温度頻度は、二次電池温度の1年間における割合(%)の分布である。
図5のB1,B2を比較すると、B2の場合、B1に比べて二次電池が高温側で使用される頻度が高いことが分かる。
【0039】
また、
図5の実線B3は、保液量についての減少速度が二次電池温度によって変化する場合の保液量減少速度である温度関係減少速度と、二次電池の温度との関係を示している。
【0040】
図5に示すように、実線B3で示す温度関係減少速度は二次電池温度が高くなるほど、保液量減少速度が高くなる。例えば、
図5の実線B2で示す過酷使用ユーザモデルの場合、B1の平均使用ユーザモデルに対して高温側で二次電池が使用されるので、
図2に二点鎖線βで示すように保液量減少速度が高くなる。従って、所定劣化保証期間TAを他のユーザモデルと同様に設定する場合に、保液量閾値D0は
図2のD0より高く設定される必要がある。この場合、
図4を参照して保液量閾値D0が高くなる場合に交流内部抵抗値Xは小さくなることが分かる。例えば、
図5の実線B2の過酷使用ユーザモデルで二次電池が使用される場合に平均の二次電池温度を用いて、温度関係減少速度から求めた減少速度Vを用いて、劣化限度保液量Dtから所定劣化保証期間を遡った時点での保液量閾値D0を求めることもできる。そして、D0に対応する交流内部抵抗閾値X0が設定される。この場合、X0は、過酷使用ユーザモデルの交流内部抵抗閾値として用いられる。この場合、実質上最も過酷なユーザモデルで設定されるので、二次電池の劣化保証を実質上最も厳しい条件で行うことができ、すべての中古二次電池の劣化保証に単一の交流内部抵抗閾値X0を用いることができる。このため、中古二次電池を組電池の再構成品に適用可能か否かの判定処理が容易になる。過酷使用ユーザモデルの抵抗閾値X0として例えば測定周波数1kHzでインピーダンス値の虚数部を用いる場合に7.00mΩが設定される。
【0041】
また、温度関係減少速度を用いて保液量閾値D0を設定する方法の別例として、例えば
図5の実線B2の過酷使用ユーザモデルの年間温度頻度分布と、実線B3の保液量減少速度とを、二次電池の使用が想定されるすべての二次電池温度領域で積算し、得られた年間の保液量減少量(Jg/年)の算出値を用いてD0を設定してもよい。この場合、算出された年間保液量減少量(Jg/年)に所定劣化保証期間TAの年(K年)を乗算し((J×K)g)、
図4の劣化限度保液量Dtに(J×K)gを加算した場合の保液量を保液量閾値D0と設定することで、保液量減少速度を用いて所定劣化保証期間TAを遡った時点での保液量閾値が設定される。この場合も保液量閾値D0に対応する交流内部抵抗閾値X0が設定される。この場合、中古二次電池として電池モジュールの交流内部抵抗値Xを取得する場合、
図4の保液量D及び
図5の保液量減少速度として、1つの電池セル当たりの保液量及び保液量減少速度を用いてもよい。
【0042】
次に、
図1に戻って、判定対象の中古二次電池の交流内部抵抗値Xの取得が行われる(S14)。具体的には、中古二次電池に所定測定周波数の交流電流信号を印加して、中古二次電池の電圧応答から交流内部抵抗値の取得値Xを測定して取得する。そして、交流内部抵抗値の取得値Xと交流内部抵抗閾値X0とを比較した結果に基づいて、組電池の再構成品への適用可否を判定する。より具体的には、交流内部抵抗値の取得値Xが交流内部抵抗閾値X0よりも小さいか否かを判定し(S16)、S16の判定がYESの場合、再構成品へ適用可能と判定し(S18)、処理を終了する。一方、S16の判定がNOの場合、再構成品への適用不能と判定して判定対象の中古二次電池は廃棄処理またはリサイクル処理、すなわち分解して使用可能な部品をリサイクル使用するように処理し(S20)、処理を終了する。
【0043】
S18における再構成品適用の判定において、S16の判定がYESとなるだけでなく、別の再構成品適用条件が成立することも含んで中古二次電池を再構成品へ適用可能と判定してもよい。例えば別の再構成品適用条件として、中古二次電池について測定された直流内部抵抗値が所定値以下であること、中古二次電池について測定された端子間電圧値が所定電圧値以上であること、及び中古二次電池の外観検査で窪み、割れ、曲りなどの損傷がないことを含んでもよい。この場合、中古二次電池の直流内部抵抗値が所定値を超える場合、または中古二次電池の端子間電圧値が所定電圧値未満である場合、または中古二次電池に損傷があると判定された場合も、S16の判定がNOの場合と同様、S20で廃棄処理またはリサイクル処理を行う。
【0044】
次に、
図1で説明した中古二次電池の再構成品適用判定を用いて、組電池再構成品の再構成方法であるリビルト方法を
図6、
図7を用いて説明する。
図6は、本実施形態のリビルト方法及びリユース品構成方法の実行に用いるフローチャートを示している。
図7は、
図6に示すリビルト方法において、中古組電池10を分解して、劣化保証が可能な中古二次電池12を選び出し、組電池再構成品が再構成される状態を時系列で示している。
【0045】
図7を参照しながら、
図6のリビルト方法及びリユース品構成方法を説明する。本例のリビルト方法は、中古組電池10を構成する複数の中古二次電池12の中から、二次電池としての劣化保証が可能な中古二次電池12か否かの判定を行って劣化保証可能な中古二次電池12を選び出し、組電池の再構成品であるリビルト品22を再構成する再構成方法である。まず、ユーザまたは回収業者からある期間で使用された中古組電池10(
図7(a))が再構成を行う再構成部門で回収され(S30)、準備される。次いでS32で中古組電池10の外観検査が行われ、損傷がなく外観が良好であるか否かが判定される。S32の判定がYESの場合、S34の処理に移行する。S32の判定がNOの場合、S36で廃棄処理またはリサイクル処理が行われる。S34では中古組電池10が複数(図示の例では28個)の中古二次電池12(
図7(b))に分解される。
図7では中古二次電池12として複数の中古電池セルから構成される中古電池モジュールを示している。また、中古二次電池12の下に符号を付して各中古二次電池12を区別している。
【0046】
次いで、S38で一次良否判定として、28個の中古二次電池12のすべてについて
図1の再構成品適用判定が行われる。具体的には、
図1のS14と同様に、判定対象の複数の中古二次電池12の全数について交流内部抵抗値Xが取得され、S16と同様に交流内部抵抗値Xの取得値が交流内部抵抗閾値X0未満か否かが判定される。この場合、
図1のS10、S12の処理は、各中古二次電池12で共通として1回のみ行われるか、または
図6のS30の前段階で行われてもよい。S38の一次良否判定では、28個の中古二次電池12の少なくとも一部の中古二次電池12の取得値Xが交流内部抵抗閾値X0未満(X<X0)であるか否かが判定される。
【0047】
S38の判定がYESの場合、取得値Xが交流内部抵抗閾値X0未満である中古二次電池12を一次判定良品として決定し、S40に移行する。
図7(b)(c)など
図7の一部では、一次判定良品または後述の二次判定良品である中古二次電池12の上側に丸印を付し、不良と判定された中古二次電池12の上側に×印を付している。
【0048】
S38の判定がNOの場合、すべての中古二次電池12が一次判定不良品であるので、S36の処理が行われる。
【0049】
S40では1つの中古組電池10から得られるすべての中古二次電池12である1パック分が一次判定良品であるか否かが判定される。S40の判定がYESの場合、
図7(c)のようにすべての中古二次電池12が一次判定良品である。この場合、すべての中古二次電池12の再構成であるリユース品14(
図7(d))への再組立が可能と判定される。そして中古二次電池12が集められ再組立が行われ(S42)、販売店にリユース品14として出荷されリユースが行われる(S44)。なお、S38の判定では、
図1のS18の判定の場合と同様に別の再構成品適用条件が成立することを一次判定良品として判定することの条件としてもよい。
【0050】
S40の判定がNOの場合、
図7(e)で示すように中古組電池10を構成する中古二次電池12の一部だけが劣化保証が可能な一次判定良品であるので、
図7(f)で示すようにS46で一次判定良品の中古二次電池12を選び出す処理が行われる。そしてS48で、選び出された一次判定良品の中古二次電池12をリビルト品22(
図7(j))の構成品として使用する前に、再度、交流内部抵抗値Xを取得し、再度取得された交流内部抵抗値Xの取得値が交流内部抵抗閾値X0未満であるか否かが判定され、これによって、中古二次電池12がリビルト品22に使用可能な二次判定良品であるか否かが判定される(
図7(g))。このように同じ中古二次電池12において、二度の良否判定を行うのは、異なる複数の中古組電池10から選び出された中古二次電池12で1つのリビルト品22を再構成する場合に一次良否判定から再構成するまでの間で保管期間が長期となる場合があり、良品でなくなった中古二次電池12を排除するためである。
【0051】
S48の判定がYESの場合、二次判定良品の中古二次電池12から構成される中古電池群18と、別の1つ以上の図示しない中古組電池から分解され二次判定良品として選び出された別の中古二次電池19から構成される中古電池群20とが、1つの中古組電池を構成する数だけ集められる(S50)(
図7(h))。そして、集められた中古電池群18,20が組み合わされて、再構成が行われ(S52)(
図7(j))、リビルト品22として販売店に出荷される。S48の判定がNOの場合、S36の処理が行われ、二次判定不良の中古二次電池12は廃棄またはリサイクルされる。なお、一次判定良品を二次判定良品として使用可能か否かの判定は、リビルト品22へ適用するために予め定められた全体仕様を満たすか否かの判断を含んでもよい。例えば、S48の判定においても、
図1のS18の判定と同様に、別の再構成品適用条件が成立することを条件として含んで、中古二次電池12が二次判定良品であり、リビルト品22へ適用可能か否かを判定してもよい。
【0052】
本実施形態の中古二次電池12の再構成品適用判定方法によれば、保液量との関係で、中古二次電池12がリビルト品22に適しているか否かを判定できる。また、交流内部抵抗値の取得値から再構成適否を判定するので、非破壊で、かつ簡易的に保液量との関係で再構成適否を判定できる。また、判定対象の中古二次電池12と同種類の二次電池について二次電池劣化と判定される時点での保液量Dtから、保液量減少速度を用いて所定劣化保証期間TAを遡った時点での保液量を保液量閾値D0として設定する。このため、中古二次電池12が現在から所定劣化保証期間TAの終了時
まで二次電池劣化と判定されることが
ない中古二次電池12を選択することができる。したがって、中古二次電池12のリビルト品22への適用の判定に、より適した判定方法を提供できる。なお、上記の特許文献1に記載されたセル劣化判定方法では、二次電池セルが現在劣化しているか否かを判定するのみであり、将来の劣化を判定するものではなく、中古二次電池再構成品の適用可否の判定には適しない。
【0053】
また、本実施形態の組電池再構成品の再構成方法によれば、保液量との関係でリビルト品22に適用可能な中古二次電池12を選び出し、リビルト品22の再構成に適した再構成方法を提供できる。
【0054】
なお、本発明は以上で説明した実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲により規定されている本発明の技術的範囲ないし本質から逸脱することないすべての変更及び修正を包含するものである。