特許第6048462号(P6048462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048462
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】保護回路
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/087 20060101AFI20161212BHJP
   H02H 3/08 20060101ALI20161212BHJP
   H02H 3/20 20060101ALI20161212BHJP
   H02H 3/24 20060101ALI20161212BHJP
   H02H 7/00 20060101ALI20161212BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20161212BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   H02H3/087
   H02H3/08 L
   H02H3/20 A
   H02H3/24 A
   H02H7/00 A
   H02J1/00 309H
   H02J1/00 309D
   H02J1/00 309Q
   H02M3/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-173467(P2014-173467)
(22)【出願日】2014年8月28日
(65)【公開番号】特開2016-48995(P2016-48995A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2015年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】313001480
【氏名又は名称】オンキヨー&パイオニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 拓也
【審査官】 緑川 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−084742(JP,A)
【文献】 特開昭48−006259(JP,A)
【文献】 特開2012−143110(JP,A)
【文献】 米国特許第08537517(US,B1)
【文献】 特開平09−074666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/08−3/253
H02H 7/00
H02J 1/00−1/16
H02M 3/00−3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ACアダプタから供給される電力で動作する負荷回路を保護する保護回路であって、
該ACアダプタに接続される入力端子からDC/DCコンバータを介して該負荷回路に接続される出力端子に向かって延びる給電ラインと、
該入力端子と該DC/DCコンバータとの間に設けられるスイッチ部であって、該入力端子と該DC/DCコンバータの間に直列接続されて配置されるスイッチング素子、該スイッチング素子に並列に接続され該スイッチング素子のオン抵抗よりも大きな抵抗値を有する電流制限抵抗素子、及び、該電流制限抵抗素子に電流が流れるときに該スイッチング素子をオンさせるスイッチ制御素子を含み、該スイッチング素子は、該電流制限抵抗素子と該スイッチ制御素子を流れる電流の遅延時間に応じて、オンするタイミングが前記ACアダプタから電力が供給開始した時点よりも遅延するスイッチ部と、
過電圧または過電流が検出されるときに該DC/DCコンバータの動作を停止して該負荷回路を保護する保護回路部と、
を備え、
該保護回路部は、
該入力端子における供給電圧が予め定めた過電圧閾値を超すときにオンする過電圧検出素子と、
該給電ラインに流れる電流が予め定めた過電流閾値を超すときにオンする過電流検出素子と、
該過電圧検出素子と該過電流検出素子を互いに並列接続した接続点と接地電位との間に直列に接続される異常検出抵抗素子、及び該異常検出抵抗素子の端子電圧でオンオフする異常検出トランジスタを有し、該異常検出トランジスタがオフのときに該DC/DCコンバータを動作可能としオンのときに該DC/DCコンバータを動作停止させる制御信号を出力する制御信号出力部と、
該異常検出トランジスタの出力端子と該接地電位との間に設けられるレベル変換素子によって該制御信号の電圧レベルを所定の分圧比で低下させたイネーブル信号を生成し、該入力端子からの供給電圧が所定の低電圧閾値未満のときに該イネーブル信号の電圧レベルを該DC/DCコンバータの動作閾値電圧未満として、該異常検出トランジスタがオフであっても該DC/DCコンバータの動作を停止させる低電圧保護部と、
を含む、保護回路。
【請求項2】
請求項に記載の保護回路において、
前記保護回路部は、
前記電流制限抵抗素子の出力側端子と前記接地電位の間に設けられ、該電流制限抵抗素子の出力側端子の電圧が予め定めた最大定格電圧を超すときにオンして、該最大定格電圧を超える電圧が前記DC/DCコンバータに供給されることを防止する定格電圧保護部を有する、保護回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護回路に係り、特にACアダプタから供給される電力で動作する負荷回路を保護するソフトスタート機能を有する保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電源で動作する民生機器等は、商用電源からACアダプタを介して直流電力の供給を受けることが多い。その際に、指定のACアダプタ以外のACアダプタが接続されると、所定の直流電力が供給されず、過電圧、過電流、低電圧等となって正常に動作できず、場合によっては損傷が生じる。
【0003】
例えば、特許文献1には、ACアダプタを用いて電源が供給される電子機器において、ACアダプタの仕様違い等で過電圧が供給されるのを防止するために、ツェナーダイオードと抵抗とトランジスタを用いた過電圧検出回路が述べられている。
【0004】
民生機器等によっては、過電圧保護回路と共に、ソフトスタート(またはソフトスイッチ)機能を有する保護回路がある。ソフトスタート機能によれば、ACアダプタが挿入された時点から所定の遅延時間をおいて電力の供給を受けることができるので、ACアダプタの挿入時の急激な電圧変化等を緩和できる。
【0005】
例えば、特許文献2には、異常電圧保護回路として、ACアダプタが接続される入力端子から15V以上の供給電圧の電力が供給されるときにオンするツェナーダイオードを含む給電検知回路と、18V以上の供給電圧の電力が供給されるときにオンするツェナーダイオードを含む過電圧検知回路と、この2つの検知回路の検知結果に基づいて出力端子に接続される電子回路への給電を制御するマイクロコンピュータを備える構成が開示される。
【0006】
ここでは、マイクロコンピュータはボタン電池等の内蔵電源で作動し、給電検知回路が15V未満を検知するときは出力端子に給電せず、給電検知回路が15V以上のときはソフトスタートのためのカウンタ作動を開始し、カウンタが所定時間経過を示すと出力端子に給電を開始するが、途中で過電圧検知回路が18V以上を検知するときはカウンタをリセットする。すなわち、入力端子から15Vから18Vの範囲の供給電圧の電力供給が行われたときに、給電検出から所定時間経過した後に出力端子に給電することが述べられている。
【0007】
また、民生機器等によっては、ACアダプタから供給された直流電力の電圧値をさらに最適な電圧値に調整するためのDC/DCコンバータを内蔵するものがある。DC/DCコンバータはACコンバータから供給される電力を一度受け止めて最適な電圧値にして負荷回路に供給するので、過電圧等の供給を防止できる。
【0008】
特許文献3は、ACアダプタと負荷回路との間に設けられるDC−DCコンバータは負荷回路に対する過電圧保護回路の機能を有しているが、DC−DCコンバータが故障すると、過電圧保護回路としての機能が失われ、負荷回路に過電圧が供給される恐れがあることを指摘している。そこで、ACアダプタの後にヒューズが設けられ、ヒューズとDC−DCコンバータとの間に直列にFETを接続し、DC−DCコンバータの負荷側端子の電圧がFETのゲートに印加される構成とし、DC−DCコンバータが故障して負荷側端子の電圧が過電圧のときにFETを遮断することで、負荷に過電圧が供給されないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−18280号公報
【特許文献2】特開2010−220277号公報
【特許文献3】特開平9−284994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ソフトスタート機能を有する民生機器等では、ACアダプタが接続されるまで内部回路が動作しないので、ソフトスタート機能と過電圧検出機能等をどのタイミングで行うかが課題の1つである。特許文献2ではボタン電池を有するマイクロプロセッサでこの課題の解決を図っているが、ボタン電池等を内蔵していない民生機器等の場合には適用できない。
【0011】
本発明は、ACアダプタから供給される電力で動作し、ソフトスタート機能を有し過電圧等の保護も行える保護回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る保護回路は、ACアダプタから供給される電力で動作する負荷回路を保護する保護回路であって、ACアダプタに接続される入力端子からDC/DCコンバータを介して負荷回路に接続される出力端子に向かって延びる給電ラインと、入力端子とDC/DCコンバータとの間に設けられるスイッチ部であって、入力端子と該DC/DCコンバータの間に直列接続されて配置されるスイッチング素子、スイッチング素子に並列に接続され該スイッチング素子のオン抵抗よりも大きな抵抗値を有する電流制限抵抗素子、及び、電流制限抵抗素子に電流が流れるときにスイッチング素子をオンさせるスイッチ制御素子を含み、スイッチング素子は、電流制限抵抗素子とスイッチ制御素子を流れる電流の遅延時間に応じて、オンするタイミングが前記ACアダプタから電力が供給開始した時点よりも遅延するスイッチ部と、過電圧または過電流が検出されるときにDC/DCコンバータの動作を停止して負荷回路を保護する保護回路部と、を備え、保護回路部は、入力端子における供給電圧が予め定めた過電圧閾値を超すときにオンする過電圧検出素子と、給電ラインに流れる電流が予め定めた過電流閾値を超すときにオンする過電流検出素子と、過電圧検出素子と過電流検出素子を互いに並列接続した接続点と接地電位との間に直列に接続される異常検出抵抗素子、及び異常検出抵抗素子の端子電圧でオンオフする異常検出トランジスタを有し、異常検出トランジスタがオフのときにDC/DCコンバータを動作可能としオンのときにDC/DCコンバータを動作停止させる制御信号を出力する制御信号出力部と、異常検出トランジスタの出力端子と接地電位との間に設けられるレベル変換素子によって制御信号の電圧レベルを所定の分圧比で低下させたイネーブル信号を生成し、入力端子からの供給電圧が所定の低電圧閾値未満のときにイネーブル信号の電圧レベルをDC/DCコンバータの動作閾値電圧未満として、異常検出トランジスタがオフであってもDC/DCコンバータの動作を停止させる低電圧保護部と、を含む。
【0015】
また、本発明に係る保護回路において、保護回路部は、電流制限抵抗素子の出力側端子と接地電位の間に設けられ、電流制限抵抗素子の出力側端子の電圧が予め定めた最大定格電圧を超すときにオンして、最大定格電圧を超える電圧がDC/DCコンバータに供給されることを防止する定格電圧保護部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上記構成によれば、保護回路は、スイッチ部と、過電圧または過電流が検出されるときにDC/DCコンバータの動作を停止して負荷回路を保護する保護回路部とを備える。保護回路部は、過電圧検出素子と過電流検出素子を互いに並列接続した接続点と接地電位との間に直列に接続される異常検出抵抗素子の端子電圧でオンオフする異常検出トランジスタによって、DC/DCコンバータを動作停止させる制御信号を出力する。このように、保護回路によれば、ACアダプタから供給される電力で動作し、ソフトスタート機能を有し過電圧等の保護を行うことができる。
【0017】
保護回路部において、過電圧検出素子と過電流検出素子を互いに並列接続するので、過電圧の場合も過電流の場合も1つの異常検出トランジスタによってDC/DCコンバータの動作を停止して負荷回路を保護することができる。
【0018】
また、保護回路のスイッチ部は、給電ラインに直列接続されて配置されるソフトスタート用のスイッチング素子がオンするタイミングを決める遅延時間を、電流制限抵抗素子とスイッチ制御素子を流れる電流の遅延時間で決める。上記特許文献2のようにボタン電池で動作するマイクロプロセッサ等を用いることなく、ACアダプタから供給される電力でスイッチ部を動作させることができる。
【0019】
また、保護回路において、制御信号の電圧レベルを所定の分圧比で低下させたイネーブル信号を生成するので、異常検出トランジスタがオフであってスイッチ部を介して電力が供給されても電圧が所定の電圧範囲を下回る低電圧のときにDC/DCコンバータの動作を停止させる。これによって、供給電圧が低過ぎることによる負荷回路の誤動作等を防止できる。
【0020】
また、保護回路において、過電圧検出素子が過電圧を検出してDC/DCコンバータの動作を停止させて負荷回路を保護しても、過電圧は電流制限抵抗を介してDC/DCコンバータに入力されてしまうので、DC/DCコンバータには過電圧が印加されこれによってDC/DCコンバータが損傷することがある。そこで、上記構成では、供給電圧が予め定めた最大定格電圧を超すときにオンする定格電圧保護部が電流制限抵抗素子の出力側端子と接地電位の間に設けられる。これにより、DC/DCコンバータが損傷することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る実施の形態のソフトスタート機能を有する保護回路を含むオーディオ機器の構成を示す図である。
図2図1における保護回路の詳細回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、保護回路を含む民生機器等としてオーディオ機器を述べるが、これは説明のための例示であって、ACアダプタから供給される電力で動作する民生機器等の電子機器であればよい。以下で述べる回路定数、電圧値、電流値、電力値、数量等は説明のための例示であって、保護回路の仕様に応じ適宜変更が可能である。以下では、スイッチング素子やトランジスタ等として、バイポーラトランジスタとMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を使い分けて述べるが、バイポーラトランジスタを同等のMOSFETに置き替え、あるいはMOSFETを同等のバイポーラトランジスタに置き替えてもよい。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
図1は、保護回路を含むオーディオ機器10の構成を示す図である。図1には、オーディオ機器10の構成要素ではないが、オーディオ機器10に接続されるACアダプタ8が図示されている。オーディオ機器10は、内部に二次電池や乾電池等の直流電源を有せず、ACアダプタ8から供給される直流電力で動作する音響機器である。
【0024】
ACアダプタ8は、AC100V等の商用電源の交流電力を所定の電圧値を有する直流電力に変換するAC/DC変換器である。ACアダプタ8は、オーディオ機器10の製品仕様で定められる入力電圧範囲を出力電圧範囲とし、オーディオ機器10の入力電流範囲を出力電流範囲とした仕様で製造され、一般的にはオーディオ機器10の付属品として販売される。ACアダプタ8の仕様の一例を挙げると、50Hzまたは60Hzの周波数のAC100Vから240Vの範囲の商用交流電源を入力電源として、公称出力電圧値が25V、公称出力電流値が200mAの直流電力を出力する。
【0025】
オーディオ機器10は、音響回路本体である負荷回路12とスピーカー等と共に、ACアダプタ8側に保護回路20を含んで構成される。保護回路20は、例えば、オーディオ機器10に付属品として指定されたACアダプタ8とは異なる仕様のACアダプタから電力が供給されたときに、オーディオ機器10の仕様を外れる過電圧、過電流、低電圧、過電力が負荷回路12に供給されないように保護する回路である。
【0026】
保護回路20は、ACアダプタに接続される入力端子22と、負荷回路12に接続される出力端子24と、入力端子22から出力端子24に向かって延びる給電ライン25と、給電ライン25に沿って入力端子22側から出力端子24側に向かって、スイッチ部26とDC/DCコンバータ28が接続配置される。また、給電ライン25における電圧状態、電流状態を検出して、DC/DCコンバータ28に供給される電圧値が過電圧や最大定格電圧を超えないように、また給電ライン25を流れる電流値が過電流とならないようにする保護回路部30が設けられる。
【0027】
入力端子22は、ACアダプタ8の2つの出力端子と接続される2つの端子である。1つの端子は接地電位に接続され、もう1つの端子は給電ライン25の入力側端子に接続される。給電ライン25は、保護回路20の内部で電力を伝達する電力線である。出力端子24は、2つの端子を有し、1つの端子は接地電位に接続され、もう1つの端子は給電ライン25の出力側端子に接続される。保護回路20の入力端子22は、オーディオ機器10の筐体において外部に露出して設けられる。保護回路20と負荷回路12とはオーディオ機器10の内部で互いに接続されるので、保護回路20の出力端子24はオーディオ機器10の筐体内部にあり、外部からは視認されない。
【0028】
入力端子22と出力端子24の間に、スイッチ部26と、DC/DCコンバータ28と、保護回路部30が配置される。保護回路部30は、過電圧検出素子32と、過電流検出素子34と、過電圧検出または過電流検出に伴いスイッチ部26とDC/DCコンバータ28に制御信号を出力する制御信号出力部36と、低電圧保護部38と、定格電圧保護部40を含んで構成される。図2は、保護回路20の詳細な回路図である。
【0029】
図2において、C1は、給電ライン25の入力端子22側と接地電位との間に配置されるコンデンサで、ACアダプタ8から入力端子22を経由して給電ライン25に供給される電圧、電流を平滑化する。
【0030】
スイッチ部26は、ACアダプタ8から供給される直流電力について、入力端子22にACアダプタ8が接続されて直流電力の供給が開始した時点から所定の遅延時間をおいてDC/DCコンバータ28の側に直流電力の供給を行う電力供給遅延回路である。
【0031】
スイッチ部26は、給電ライン25に直列に接続配置されるスイッチング素子Q1と、スイッチング素子Q1に並列に接続される電流制限抵抗素子R1と、電流制限抵抗素子R1に電流が流れるときにスイッチング素子Q1をオンさせるスイッチ制御素子Q2と、スイッチ制御素子Q2の制御端子の電圧値を定める3つの抵抗素子R2、R3、R4と、スイッチ制御素子Q2の出力端子からスイッチング素子Q1の制御端子へ入力される電圧値を定める2つの抵抗素子R5、R6を含む。
【0032】
なお、以下では、抵抗素子Rというのは、抵抗素子の区別をするための呼称と共に、その抵抗素子の抵抗値がRであることを示すものとする。例えば、抵抗素子Rとは、説明の順番で2番目の抵抗素子であって、その抵抗値がRΩであることを示す。
【0033】
スイッチング素子Q1は、オンのときに給電ライン25を短絡して入力端子22側から供給された電力をDC/DCコンバータ28の側に伝達する電力伝達モードとし、オフのときは給電ライン25を開放遮断して入力端子22側から供給された電力をDC/DCコンバータ28の側に伝達させない遮断モードとする。このように、スイッチング素子Q1は、給電ライン25において電力の伝達と遮断を切り替える切替手段である。
【0034】
スイッチング素子Q1は、pチャンネル型MOSFETで、ソース端子が給電ライン25の入力端子22側に接続され、ドレイン端子が給電ライン25のDC/DCコンバータ28側に接続され、ゲート端子はR5とR6の接続点に接続される。図2ではスイッチング素子Q1は3つ並列接続される。Q1の並列数は、給電ライン25を短絡して電力伝達モードとするときに流れる電流値の大きさを満たすように設定される。オーディオ機器10の仕様によってQ1の並列数は1つで足りることもあり、4以上とすることもある。
【0035】
電流制限抵抗素子R1は、スイッチング素子Q1に並列に接続される抵抗素子で、入力端子22に電力の供給が行われたことを検出する電力供給検出手段の機能を有する。すなわち、電流制限抵抗素子R1のDC/DCコンバータ28側の端子を出力側端子とすると、出力側端子は、R2、R3、R4を介して接地電位に接続されるので、電流制限抵抗素子R1に電流が流れないときは出力側端子の電圧値V=接地電位=0Vである。入力端子22に電力の供給が行われた時点のタイミングでは、スイッチング素子Q1はオフ状態であるので、入力端子22に供給された電力は電流制限抵抗素子R1と、R2、R3、R4を介して接地電位に流れる。これにより、電流制限抵抗素子R1の出力側端子の電圧値Vは、入力端子22に供給された電力の電圧値をVとして、V=V×{R1/(R1+R2+R2)}に上昇する。電流制限抵抗素子R1の出力側端子の電圧値Vの上昇に基づいて、電力供給が開始したことを検出できる。
【0036】
電流制限抵抗素子R1の抵抗値R1の上限は、電力供給検出手段として必要な最小限の電流を流すことができる抵抗値で定められ、抵抗値R1の下限は、スイッチング素子Q1がオフのときに給電ライン25を流れる電力が最大定格値を超さないように定められる。また、電流制限抵抗素子R1の抵抗値は、スイッチング素子Q1のオン抵抗値よりも十分高い抵抗値である。一例を挙げると、電流制限抵抗素子R1の抵抗値は、0.3kΩとすることができる。図2では電流制限抵抗素子R1は3つ並列接続される。R1の並列数は、1つの抵抗素子R1の定格電力値の仕様によって定まり、場合によってR1の並列数は1つで足りることもあり、4以上となることもある。
【0037】
スイッチ制御素子Q2は、電流制限抵抗素子R1に電流が流れるときにスイッチング素子Q1をオンさせるトランジスタである。スイッチ制御素子Q2はnチャネル型バイポーラトランジスタで、エミッタ端子が接地電位に接続され、コレクタ端子が抵抗素子R6、R5を介して給電ライン25の入力端子22側に接続され、ベース端子はR3とR4の接続点に接続される。
【0038】
抵抗素子R1、R2、R3、R4のそれぞれの抵抗値は、電流制限抵抗素子R1に電流が流れたときの出力側端子の電圧値Vをスイッチ制御素子Q2がオンする電圧値Vに変換するように設定される。スイッチ制御素子Q2がオンする電圧値Vはスイッチ制御素子Q2のベース端子の電圧値Vが閾値電圧となるときである。例えば、Q2の閾値電圧を0.6Vとすると、V=V×{R4/(R1+R2+R3+R4)}=0.6Vとなるように、R4を適当に定めることができる。なお、R2とR3の接続点の電圧値Vは後述する制御信号の電圧値であるので、(R1+R2)と(R3+R4)の分圧比は制御信号の電圧値の設定で定められる。R1の設定については既に説明した。
【0039】
抵抗素子R5、R6のそれぞれの抵抗値は、スイッチ制御素子Q2がオンしたときの出力電圧値であるコレクタ端子電圧値Vをスイッチング素子Q1がオンする電圧値Vに変換するように設定される。スイッチング素子Q1がオンする電圧値Vは、スイッチング素子Q1のゲート端子の電圧値Vが閾値電圧となるときである。Q1の閾値電圧を入力端子22における電圧値Vに対し1.0V低い電圧とすると、V=V×{R5/(R5+R6+Q2のオン抵抗)}=1.0Vとなるように、R5、R6の分圧比を適当に定めることができる。あるいは、Q2のオン電流をI45とすると、V=I45×R5=1.0VからR5の値を定めることができる。
【0040】
スイッチ部26の作用は以下の通りである。オーディオ機器10にACアダプタ8が接続されていない状態では、電流制限抵抗素子R1の出力側端子はR2、R3、R4を介して接地電位に接続され、入力端子22は、R1、R2、R3、R4を介して接地電位に接続されるので、V=V=0Vである。したがって、Q2はオフ状態であり、Q1もオフ状態である。オーディオ機器10にACアダプタ8が接続されたタイミングをtとすると、その時点で入力端子22の電圧値はACアダプタ8から供給された電力の電圧値Vとなるが、Q2はまだオフ状態であるのでV=0Vのままである。そこでVと0Vの電圧差によって電流制限抵抗素子R1に電流が流れ、これにより、電流制限抵抗素子R1の出力側端子の電圧値Vが0Vから上昇する。これに伴い、VがQ2の閾値電圧に上昇し、Q2がオンする。Q2がオンすると、Vが低下し、これに伴い、VがQ1の閾値電圧に低下してQ1がオンする。これによって、給電ライン25は遮断モードから電力伝達モードとなり、入力端子22に供給された電力がDC/DCコンバータ28に向けて給電される。
【0041】
ここで、Q2がオンするタイミングtは、入力端子22から供給された電力が電流制限抵抗素子R1を流れて電流制限抵抗素子R1の出力側端子の電圧値がVに上昇するのに必要な遅延時間、電圧値Vと接地電位との間の電圧差によってR2、R3、R4に電流が流れてR3とR4の接続点の電圧値VがQ2の閾値電圧に上昇するのに必要な遅延時間、電圧値VによってQ2がオンしてQ2の出力電圧がVに低下するのに必要な遅延時間、Vが低下したことでR5とR6の接続点の電圧値VがQ1の閾値電圧に低下するのに必要な遅延時間、電圧値VによってQ1がオンするまでに必要な遅延時間を合計した全遅延時間だけ、入力端子22にACアダプタ8から電力が供給されたタイミングtより遅れる。このようにして、ACアダプタ8によって電力供給が開始したタイミングtからΔt=t−tだけ遅延して、DC/DCコンバータ28に電力が供給される。このように電力供給に遅延時間を設けることで、ACアダプタ8の接続時における電圧値や電流値の急激な変化の衝撃からDC/DCコンバータ28を安全に保護することができる。
【0042】
次に、保護回路部30の内容を説明する。保護回路部30は、過電圧検出素子32、過電流検出素子34、制御信号出力部36、低電圧保護部38、定格電圧保護部40の5つのブロックで構成される。
【0043】
過電圧検出素子32は、一方側端子が給電ライン25の入力端子22の側に接続され、他方側端子がR7、R8を介して接地電位に接続されるツェナーダイオードZ1である。過電圧検出素子32は、その両端子間の電圧差が所定の過電圧閾値を超すとオンする素子である。所定の過電圧閾値の一例を挙げると約27Vである。
【0044】
過電圧検出素子32の作用は以下の通りである。オーディオ機器10にACアダプタ8が接続されていない状態では、過電圧検出素子32の他方側端子はR7、R8を介して接地電池に接続され、過電圧検出素子32の一方側端子もR1、R2、R3、R4を介して接地電位に接続されているので、過電圧検出素子32の両端子間の電圧差=0Vとなって、過電圧検出素子32はオフ状態である。
【0045】
オーディオ機器10にACアダプタ8が接続されたタイミングtでは、過電圧検出素子32の一方側端子には入力端子22の電圧値Vが印加される。電圧値Vが過電圧閾値=27V未満のときは、過電圧検出素子32はオフのままである。電圧値Vが過電圧閾値=27Vを超すときは、過電圧検出素子32はオンし、過電圧検出素子32の他方側端子の電圧値VがVに近い値に上昇する。オーディオ機器10にACアダプタ8が接続されたタイミングtにおける電圧値Vの上昇に基づいて、ACアダプタ8から供給される電力の電圧値が過電圧であることを検出できる。
【0046】
過電流検出素子34は、2つの抵抗素子R9、R10と1つのトランジスタQ3で構成される複合素子である。トランジスタQ3はpチャネル型バイポーラトランジスタで、エミッタ端子は過電圧検出素子32の一方側端子に接続され、コレクタ端子は過電圧検出素子32の他方側端子に接続点33で接続され、ベース端子はR9を介して電流制限抵抗素子R1の出力側端子に接続される。ベース端子とエミッタ端子の間はR10を介して接続される。
【0047】
この接続関係をスイッチング素子Q1について見ると、電流制限抵抗素子R1の出力側端子はQ1のドレイン端子であり、過電圧検出素子32の一方側端子はQ1のソース端子である。したがって、トランジスタQ3のベース端子はR9を介してQ1のドレイン端子に接続され、トランジスタQ3のエミッタ端子はQ1のソース端子に接続される。したがって、トランジスタQ3のベースエミッタ間の電圧値は、Q1のドレインソース間の電圧値となる。
【0048】
過電流検出素子34の作用は以下の通りである。オーディオ機器10にACアダプタ8が接続されていない状態では、V=V=0Vであるので、Q1のドレインソース間の電圧値=0Vである。したがって、Q3はオフ状態である。オーディオ機器10にACアダプタ8が接続されたとき、スイッチ部26の機能によりQ1がオンして、給電ライン25にQ1を介して電流が流れる。Q1に流れる電流はドレインソース間電流であるので、その電流値が大きくなるに連れ、Q1のドレインソース間の電圧値が大きくなる。Q1のドレインソース間の電圧値が大きくなるに連れ、過電流検出素子34を構成するトランジスタQ3のベースエミッタ間の電圧値が大きくなる。給電ライン25を流れる電流値をQ1を流れる電流値として、この電流値が予め定めた閾値電流値となったときに、トランジスタQ3がオンするようにR9、R10の値を設定することで、給電ライン25を流れる電流値が閾値電流値を超えるときにトランジスタQ3をオンとすることができる。
【0049】
トランジスタQ3がオフのときは、トランジスタQ3のコレクタ端子は過電圧検出素子32の他方側端子に接続点33で接続され、接続点33はR7、R8を介して接地電位に接続されるので、接続点33の電圧値Vは0Vである。トランジスタQ3がオンすると、トランジスタQ3のコレクタ端子の電圧値Vは、トランジスタQ3のオン電流の大きさに応じて上昇する。したがって、ソフトスタート機能が働くタイミングtにおける電圧値Vの上昇に基づいて給電ライン25を流れる電流値が過電流であることを検出できる。
【0050】
給電ライン25を流れる電流値が過電流であることを検出したときのトランジスタQ3のコレクタ端子の電圧値6は、トランジスタQ3がオンするときのコレクタエミッタ間を流れる電流値で定めることができる。トランジスタQ3がオンするときのコレクタエミッタ間を流れる電流値は、R9、R10の値によって設定することができる。したがって、R9、R10を適切に設定することで、過電圧検出素子32が過電圧を検出したときの過電圧検出素子32の他方側端子の電圧値6と、過電流検出素子34が過電流を検出したときのトランジスタQ3のコレクタ端子の電圧値6を同じ値とできる。
【0051】
制御信号出力部36は、過電圧検出または過電流検出に伴いスイッチ部26とDC/DCコンバータ28に制御信号を出力する。図2では、制御信号の電圧値をVで示した。
【0052】
制御信号出力部36は、2つの抵抗素子R7、R8と、1つのトランジスタQ4と、2つのコンデンサC2、C3を含んで構成される。2つの抵抗素子R7、R8は互いに直列に接続され、R7の一方側端子は、過電圧検出素子32の他方側端子と過電流検出素子34を構成するトランジスタQ3のコレクタ端子の接続点33に接続され、R8の他方は接地電位に接続される。R7の他方側端子とR8の一方側端子は互いに接続される。
【0053】
トランジスタQ4は、nチャネル型バイポーラトランジスタで、エミッタ端子は接地電位に接続され、ベース端子はR7の他方側端子とR8の一方側端子の接続点に接続される。コレクタ端子は、制御信号を出力する端子で、低電圧保護部38を構成する抵抗素子R11を介してDC/DCコンバータ28のイネーブル端子ENに接続されると共に、スイッチ部26の抵抗素子R2、R3の接続点に接続される。
【0054】
コンデンサC2は、直列に接続された抵抗素子R7、R8に並列に接続されるコンデンサで、接続点33の電圧値Vを平滑化する。コンデンサC3は、トランジスタQ4のコレクタ端子とエミッタ端子との間に並列に接続されるコンデンサで、制御電圧値Vを平滑化する。
【0055】
制御信号出力部36の作用は以下の通りである。ACアダプタ8からの供給電力の電圧値が過電圧閾値以下であり、かつ給電ライン25を流れる電流値が過電流閾値以下のときは、通常状態であるので、スイッチ部26のスイッチ制御素子Q2のゲート端子の電圧値VがQ2の閾値電圧以上となってオンし、スイッチング素子Q1が所定の遅延時間の経過後オンして、給電ライン25は電力伝達モードとなり、ACアダプタ8から供給された電力がDC/DCコンバータ28の入力電圧端子VINに給電される。このとき、制御信号出力部36のトランジスタQ4はオフ状態で、制御信号の電圧値Vは、抵抗素子R2、R3の接続点の電圧値となる。抵抗素子R2、R3の接続点の電圧値はスイッチ制御素子Q2のゲート端子の電圧値Vよりも高い値で、DC/DCコンバータ28のイネーブル端子ENの動作閾値電圧よりも十分高い値に設定される。
【0056】
ACアダプタ8からの供給電力の電圧値Vが過電圧閾値を超えるとき、あるいはVが過電圧閾値以下であっても給電ライン25を流れる電流値が過電流閾値を超えるときは、接続点33の電圧値Vが上昇する。これによって制御信号出力部36のトランジスタQ4がオンし、トランジスタQ4のコレクタ端子の電圧値はほぼ接地電位に近い値に低下する。すなわち、制御信号の電圧値Vは、ほぼ接地電位に近い値となり、抵抗素子R2、R3の接続点の電圧値をほぼ接地電位まで引き下げる。これにより、スイッチ制御素子Q2は強制的にオフ状態となり、スイッチング素子Q1も強制的にオフ状態となって、給電ライン25は遮断モードとなり、ACアダプタ8からの電力はDC/DCコンバータ28の入力電圧端子VINに給電されない。これと共に、接地電位に近い電圧値Vを有する制御信号はDC/DCコンバータ28のイネーブル端子ENに伝送され、DC/DCコンバータ28の動作を停止させる。これにより、DC/DCコンバータ28の出力電圧端子VOUTからは電力が出力されず、過電圧から負荷回路12は安全に保護される。
【0057】
このように、制御信号出力部36における抵抗素子R7、R8は、ACアダプタ8からの供給電力の電圧値Vが過電圧閾値を超えている異常状態であるか、または、給電ライン25を流れる電流値が過電流閾値を超えている異常状態であるかを検出するための異常検出抵抗素子である。また、トランジスタQ4は、異常検出抵抗素子の端子電圧でオンオフし、オフのときにDC/DCコンバータ28を動作可能としオンのときにDC/DCコンバータ28を動作停止させる制御信号を出力する異常検出トランジスタである。制御信号出力部36は、2つの抵抗素子R7、R8と1つのトランジスタQ4の最小限の構成要素で、過電圧検出と過電流検出の2つの場合について共通した同じ制御信号を出力するものである。なお、抵抗素子R7、R8の抵抗値は、異常検出するには十分であるが、過電圧の電力や過電流の電力を接地電位に流すには不十分な高抵抗値に設定される。
【0058】
過電圧検出素子32と過電流検出素子34と制御信号出力部36の作用によれば、ACアダプタ8からの供給電力がDC/DCコンバータ28の仕様よりも過電圧状態または過電流状態であるときにDC/DCコンバータ28を保護する。
【0059】
低電圧保護部38は、ACアダプタ8から供給される電力の電圧値がオーディオ機器10の仕様で予め定めた電圧範囲よりも低電圧のときに、DC/DCコンバータ28の動作を停止させて低電圧電力を負荷回路12に出力させないようにして、負荷回路12を低電圧による誤動作から安全に保護する。これは、ACアダプタ8からの供給電力がオーディオ機器10の仕様よりも低電圧状態のときは、過電圧検出素子32も過電流検出素子34も無力であり、そのままDC/DCコンバータ28の入力電圧端子VINに入力されてしまうからである。
【0060】
低電圧保護部38は、制御信号出力部36のトランジスタQ4がオフ状態のときに、トランジスタQ4の出力端子であるコレクタ端子と接地電位との間に設けられる抵抗素子R11、R12を電圧レベル変換素子として、制御信号の電圧値Vの電圧レベルを所定の分圧比で低下させた電圧値VENを有するイネーブル信号を生成する。
【0061】
ACアダプタ8からの供給電力の電圧値がオーディオ機器10の仕様における電圧範囲にあるとき制御信号の電圧値は、DC/DCコンバータ28のイネーブル端子ENの閾値電圧よりも十分高い値に設定され、イネーブル信号の電圧値VENもイネーブル端子ENの閾値電圧よりも高い値となるように抵抗素子R11、R12が設定される。R11、R12については、もう1つ条件が付き、ACアダプタ8からの供給電力の電圧値がオーディオ機器10の仕様における電圧範囲の下限値のときイネーブル信号の電圧値VENがイネーブル端子ENの閾値電圧となるように設定される。
【0062】
一例を挙げると、オーディオ機器10の仕様における電圧範囲を27Vから18Vとし、DC/DCコンバータ28のイネーブル端子ENの閾値電圧を4Vとして、ACアダプタ8からの供給電力の電圧値が27Vから18Vの範囲にあれば、制御信号の電圧値Vを6Vから4V、イネーブル信号の電圧値VENを5Vから4Vとする。このときは、DC/DCコンバータ28はイネーブル状態となって動作を行うことができる。ACアダプタ8からの供給電力の電圧値が仕様範囲外の18V未満の低電圧となると、イネーブル信号の電圧値VENは4V未満となって、DC/DCコンバータ28は動作を停止する。
【0063】
このように、低電圧保護部38は、抵抗素子R11、R12を適切に設定することによって、負荷回路12を仕様範囲外の低電圧による誤動作から安全に保護する。
【0064】
定格電圧保護部40は、DC/DCコンバータ28の入力電圧端子VINに定格電圧以上の電圧が供給されないようにするためのものである。これは、制御信号出力部36によって過電圧または過電流の異常状態が検出されるとき、DC/DCコンバータ28の動作は停止するが、このときでも電流制限抵抗素子R1には電流が流れて給電ライン25を通りDC/DCコンバータ28の入力電圧端子VINに給電されるためである。制御信号出力部36で説明したように、R7、R8は過電圧の電力や過電流の電力を接地電位に流すには不十分な高抵抗であるために過電圧状態または過電流状態は解消されず、DC/DCコンバータ28の入力電圧端子VINには過大な電力が供給される可能性がある。
【0065】
定格電圧保護部40は、ツェナーダイオードZ2とコンデンサC4で構成される。ツェナーダイオードZ2は、DC/DCコンバータ28の入力電圧端子VIN側の給電ライン25に一方端が接続され、他方端が接地電位に接続される。ツェナーダイオードZ2がオンする閾値電圧Z2は、電流制限抵抗素子R1の抵抗値R1と共に、給電ライン25を流れる電力値が定格電力値を超さないように設定される。例えば、定格電力値を25V×200mA=5Wとすると、電流制限抵抗素子R1の抵抗値R1=0.3kΩとして、(Z2/0.3kΩ)×Z2=5Wであるので、(Z2)=1500Vとなり、Z2=38.7Vとなるので、閾値電圧Z2=38VのツェナーダイオードZ2を設ける。このように、定格電圧保護部40は、電流制限抵抗素子R1とともに、給電ライン25のDC/DCコンバータ28側に定格電力以上の電力が流れないようにする機能を有する。
【0066】
DC/DCコンバータ28は、給電ライン25から入力電圧端子VINに給電された直流電力の電圧値を負荷回路12に適した電圧値を有する直流電力に電圧変換して出力電圧端子VOUTから出力する直流電圧変換器である。DC/DCコンバータ28は、イネーブル端子ENを有し、イネーブル端子ENに入力されるイネーブル信号の電圧値VENが閾値電圧以上のときに動作可能で、電圧値VENが閾値電圧未満のときは動作を停止し、入力電圧端子VINに電力が供給されても出力電圧端子VOUTには電力を出力しない。
【0067】
上記構成によれば、ACアダプタ8から供給される電力で動作し、ソフトスタート機能を有し、負荷回路12に対し、過電圧、過電流、低電圧、定格電力等の保護を行うことができる。
【符号の説明】
【0068】
8 ACアダプタ、10 オーディオ機器、12 負荷回路、20 保護回路、22 入力端子、24 出力端子、25 給電ライン、26 スイッチ部、28 DC/DCコンバータ、30 保護回路部、32 過電圧検出素子、33 接続点、34 過電流検出素子、36 制御信号出力部、38 低電圧保護部、40 定格電圧保護部。
図1
図2