(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
直流電源で動作する民生機器等は、商用電源からACアダプタを介して直流電力の供給を受けることが多い。その際に、指定のACアダプタ以外のACアダプタが接続されると、所定の直流電力が供給されず、過電圧、過電流、低電圧等となって正常に動作できず、場合によっては損傷が生じる。
【0003】
例えば、特許文献1には、ACアダプタを用いて電源が供給される電子機器において、ACアダプタの仕様違い等で過電圧が供給されるのを防止するために、ツェナーダイオードと抵抗とトランジスタを用いた過電圧検出回路が述べられている。
【0004】
民生機器等によっては、過電圧保護回路と共に、ソフトスタート(またはソフトスイッチ)機能を有する保護回路がある。ソフトスタート機能によれば、ACアダプタが挿入された時点から所定の遅延時間をおいて電力の供給を受けることができるので、ACアダプタの挿入時の急激な電圧変化等を緩和できる。
【0005】
例えば、特許文献2には、異常電圧保護回路として、ACアダプタが接続される入力端子から15V以上の供給電圧の電力が供給されるときにオンするツェナーダイオードを含む給電検知回路と、18V以上の供給電圧の電力が供給されるときにオンするツェナーダイオードを含む過電圧検知回路と、この2つの検知回路の検知結果に基づいて出力端子に接続される電子回路への給電を制御するマイクロコンピュータを備える構成が開示される。
【0006】
ここでは、マイクロコンピュータはボタン電池等の内蔵電源で作動し、給電検知回路が15V未満を検知するときは出力端子に給電せず、給電検知回路が15V以上のときはソフトスタートのためのカウンタ作動を開始し、カウンタが所定時間経過を示すと出力端子に給電を開始するが、途中で過電圧検知回路が18V以上を検知するときはカウンタをリセットする。すなわち、入力端子から15Vから18Vの範囲の供給電圧の電力供給が行われたときに、給電検出から所定時間経過した後に出力端子に給電することが述べられている。
【0007】
また、民生機器等によっては、ACアダプタから供給された直流電力の電圧値をさらに最適な電圧値に調整するためのDC/DCコンバータを内蔵するものがある。DC/DCコンバータはACコンバータから供給される電力を一度受け止めて最適な電圧値にして負荷回路に供給するので、過電圧等の供給を防止できる。
【0008】
特許文献3は、ACアダプタと負荷回路との間に設けられるDC−DCコンバータは負荷回路に対する過電圧保護回路の機能を有しているが、DC−DCコンバータが故障すると、過電圧保護回路としての機能が失われ、負荷回路に過電圧が供給される恐れがあることを指摘している。そこで、ACアダプタの後にヒューズが設けられ、ヒューズとDC−DCコンバータとの間に直列にFETを接続し、DC−DCコンバータの負荷側端子の電圧がFETのゲートに印加される構成とし、DC−DCコンバータが故障して負荷側端子の電圧が過電圧のときにFETを遮断することで、負荷に過電圧が供給されないようにしている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、保護回路を含む民生機器等としてオーディオ機器を述べるが、これは説明のための例示であって、ACアダプタから供給される電力で動作する民生機器等の電子機器であればよい。以下で述べる回路定数、電圧値、電流値、電力値、数量等は説明のための例示であって、保護回路の仕様に応じ適宜変更が可能である。以下では、スイッチング素子やトランジスタ等として、バイポーラトランジスタとMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を使い分けて述べるが、バイポーラトランジスタを同等のMOSFETに置き替え、あるいはMOSFETを同等のバイポーラトランジスタに置き替えてもよい。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
図1は、保護回路を含むオーディオ機器10の構成を示す図である。
図1には、オーディオ機器10の構成要素ではないが、オーディオ機器10に接続されるACアダプタ8が図示されている。オーディオ機器10は、内部に二次電池や乾電池等の直流電源を有せず、ACアダプタ8から供給される直流電力で動作する音響機器である。
【0024】
ACアダプタ8は、AC100V等の商用電源の交流電力を所定の電圧値を有する直流電力に変換するAC/DC変換器である。ACアダプタ8は、オーディオ機器10の製品仕様で定められる入力電圧範囲を出力電圧範囲とし、オーディオ機器10の入力電流範囲を出力電流範囲とした仕様で製造され、一般的にはオーディオ機器10の付属品として販売される。ACアダプタ8の仕様の一例を挙げると、50Hzまたは60Hzの周波数のAC100Vから240Vの範囲の商用交流電源を入力電源として、公称出力電圧値が25V、公称出力電流値が200mAの直流電力を出力する。
【0025】
オーディオ機器10は、音響回路本体である負荷回路12とスピーカー等と共に、ACアダプタ8側に保護回路20を含んで構成される。保護回路20は、例えば、オーディオ機器10に付属品として指定されたACアダプタ8とは異なる仕様のACアダプタから電力が供給されたときに、オーディオ機器10の仕様を外れる過電圧、過電流、低電圧、過電力が負荷回路12に供給されないように保護する回路である。
【0026】
保護回路20は、ACアダプタに接続される入力端子22と、負荷回路12に接続される出力端子24と、入力端子22から出力端子24に向かって延びる給電ライン25と、給電ライン25に沿って入力端子22側から出力端子24側に向かって、スイッチ部26とDC/DCコンバータ28が接続配置される。また、給電ライン25における電圧状態、電流状態を検出して、DC/DCコンバータ28に供給される電圧値が過電圧や最大定格電圧を超えないように、また給電ライン25を流れる電流値が過電流とならないようにする保護回路部30が設けられる。
【0027】
入力端子22は、ACアダプタ8の2つの出力端子と接続される2つの端子である。1つの端子は接地電位に接続され、もう1つの端子は給電ライン25の入力側端子に接続される。給電ライン25は、保護回路20の内部で電力を伝達する電力線である。出力端子24は、2つの端子を有し、1つの端子は接地電位に接続され、もう1つの端子は給電ライン25の出力側端子に接続される。保護回路20の入力端子22は、オーディオ機器10の筐体において外部に露出して設けられる。保護回路20と負荷回路12とはオーディオ機器10の内部で互いに接続されるので、保護回路20の出力端子24はオーディオ機器10の筐体内部にあり、外部からは視認されない。
【0028】
入力端子22と出力端子24の間に、スイッチ部26と、DC/DCコンバータ28と、保護回路部30が配置される。保護回路部30は、過電圧検出素子32と、過電流検出素子34と、過電圧検出または過電流検出に伴いスイッチ部26とDC/DCコンバータ28に制御信号を出力する制御信号出力部36と、低電圧保護部38と、定格電圧保護部40を含んで構成される。
図2は、保護回路20の詳細な回路図である。
【0029】
図2において、C1は、給電ライン25の入力端子22側と接地電位との間に配置されるコンデンサで、ACアダプタ8から入力端子22を経由して給電ライン25に供給される電圧、電流を平滑化する。
【0030】
スイッチ部26は、ACアダプタ8から供給される直流電力について、入力端子22にACアダプタ8が接続されて直流電力の供給が開始した時点から所定の遅延時間をおいてDC/DCコンバータ28の側に直流電力の供給を行う電力供給遅延回路である。
【0031】
スイッチ部26は、給電ライン25に直列に接続配置されるスイッチング素子Q1と、スイッチング素子Q1に並列に接続される電流制限抵抗素子R1と、電流制限抵抗素子R1に電流が流れるときにスイッチング素子Q1をオンさせるスイッチ制御素子Q2と、スイッチ制御素子Q2の制御端子の電圧値を定める3つの抵抗素子R2、R3、R4と、スイッチ制御素子Q2の出力端子からスイッチング素子Q1の制御端子へ入力される電圧値を定める2つの抵抗素子R5、R6を含む。
【0032】
なお、以下では、抵抗素子R
Xというのは、抵抗素子の区別をするための呼称と共に、その抵抗素子の抵抗値がR
Xであることを示すものとする。例えば、抵抗素子R
2とは、説明の順番で2番目の抵抗素子であって、その抵抗値がR
2Ωであることを示す。
【0033】
スイッチング素子Q1は、オンのときに給電ライン25を短絡して入力端子22側から供給された電力をDC/DCコンバータ28の側に伝達する電力伝達モードとし、オフのときは給電ライン25を開放遮断して入力端子22側から供給された電力をDC/DCコンバータ28の側に伝達させない遮断モードとする。このように、スイッチング素子Q1は、給電ライン25において電力の伝達と遮断を切り替える切替手段である。
【0034】
スイッチング素子Q1は、pチャンネル型MOSFETで、ソース端子が給電ライン25の入力端子22側に接続され、ドレイン端子が給電ライン25のDC/DCコンバータ28側に接続され、ゲート端子はR5とR6の接続点に接続される。
図2ではスイッチング素子Q1は3つ並列接続される。Q1の並列数は、給電ライン25を短絡して電力伝達モードとするときに流れる電流値の大きさを満たすように設定される。オーディオ機器10の仕様によってQ1の並列数は1つで足りることもあり、4以上とすることもある。
【0035】
電流制限抵抗素子R1は、スイッチング素子Q1に並列に接続される抵抗素子で、入力端子22に電力の供給が行われたことを検出する電力供給検出手段の機能を有する。すなわち、電流制限抵抗素子R1のDC/DCコンバータ28側の端子を出力側端子とすると、出力側端子は、R2、R3、R4を介して接地電位に接続されるので、電流制限抵抗素子R1に電流が流れないときは出力側端子の電圧値V
1=接地電位=0Vである。入力端子22に電力の供給が行われた時点のタイミングでは、スイッチング素子Q1はオフ状態であるので、入力端子22に供給された電力は電流制限抵抗素子R1と、R2、R3、R4を介して接地電位に流れる。これにより、電流制限抵抗素子R1の出力側端子の電圧値V
1は、入力端子22に供給された電力の電圧値をV
0として、V
1=V
0×{R1/(R1+R2+R2)}に上昇する。電流制限抵抗素子R1の出力側端子の電圧値V
1の上昇に基づいて、電力供給が開始したことを検出できる。
【0036】
電流制限抵抗素子R1の抵抗値R1の上限は、電力供給検出手段として必要な最小限の電流を流すことができる抵抗値で定められ、抵抗値R1の下限は、スイッチング素子Q1がオフのときに給電ライン25を流れる電力が最大定格値を超さないように定められる。また、電流制限抵抗素子R1の抵抗値は、スイッチング素子Q1のオン抵抗値よりも十分高い抵抗値である。一例を挙げると、電流制限抵抗素子R1の抵抗値は、0.3kΩとすることができる。
図2では電流制限抵抗素子R1は3つ並列接続される。R1の並列数は、1つの抵抗素子R1の定格電力値の仕様によって定まり、場合によってR1の並列数は1つで足りることもあり、4以上となることもある。
【0037】
スイッチ制御素子Q2は、電流制限抵抗素子R1に電流が流れるときにスイッチング素子Q1をオンさせるトランジスタである。スイッチ制御素子Q2はnチャネル型バイポーラトランジスタで、エミッタ端子が接地電位に接続され、コレクタ端子が抵抗素子R6、R5を介して給電ライン25の入力端子22側に接続され、ベース端子はR3とR4の接続点に接続される。
【0038】
抵抗素子R1、R2、R3、R4のそれぞれの抵抗値は、電流制限抵抗素子R1に電流が流れたときの出力側端子の電圧値V
1をスイッチ制御素子Q2がオンする電圧値V
2に変換するように設定される。スイッチ制御素子Q2がオンする電圧値V
2はスイッチ制御素子Q2のベース端子の電圧値V
2が閾値電圧となるときである。例えば、Q2の閾値電圧を0.6Vとすると、V
2=V
1×{R4/(R1+R2+R3+R4)}=0.6Vとなるように、R4を適当に定めることができる。なお、R2とR3の接続点の電圧値V
3は後述する制御信号の電圧値であるので、(R1+R2)と(R3+R4)の分圧比は制御信号の電圧値の設定で定められる。R1の設定については既に説明した。
【0039】
抵抗素子R5、R6のそれぞれの抵抗値は、スイッチ制御素子Q2がオンしたときの出力電圧値であるコレクタ端子電圧値V
4をスイッチング素子Q1がオンする電圧値V
5に変換するように設定される。スイッチング素子Q1がオンする電圧値V
5は、スイッチング素子Q1のゲート端子の電圧値V
5が閾値電圧となるときである。Q1の閾値電圧を入力端子22における電圧値V
0に対し1.0V低い電圧とすると、V
5=V
0×{R5/(R5+R6+Q2のオン抵抗)}=1.0Vとなるように、R5、R6の分圧比を適当に定めることができる。あるいは、Q2のオン電流をI
45とすると、V
5=I
45×R5=1.0VからR5の値を定めることができる。
【0040】
スイッチ部26の作用は以下の通りである。オーディオ機器10にACアダプタ8が接続されていない状態では、電流制限抵抗素子R1の出力側端子はR2、R3、R4を介して接地電位に接続され、入力端子22は、R1、R2、R3、R4を介して接地電位に接続されるので、V
1=V
2=0Vである。したがって、Q2はオフ状態であり、Q1もオフ状態である。オーディオ機器10にACアダプタ8が接続されたタイミングをt
0とすると、その時点で入力端子22の電圧値はACアダプタ8から供給された電力の電圧値V
0となるが、Q2はまだオフ状態であるのでV
1=0Vのままである。そこでV
0と0Vの電圧差によって電流制限抵抗素子R1に電流が流れ、これにより、電流制限抵抗素子R1の出力側端子の電圧値V
1が0Vから上昇する。これに伴い、V
2がQ2の閾値電圧に上昇し、Q2がオンする。Q2がオンすると、V
4が低下し、これに伴い、V
5がQ1の閾値電圧に低下してQ1がオンする。これによって、給電ライン25は遮断モードから電力伝達モードとなり、入力端子22に供給された電力がDC/DCコンバータ28に向けて給電される。
【0041】
ここで、Q2がオンするタイミングt
1は、入力端子22から供給された電力が電流制限抵抗素子R1を流れて電流制限抵抗素子R1の出力側端子の電圧値がV
1に上昇するのに必要な遅延時間、電圧値V
1と接地電位との間の電圧差によってR2、R3、R4に電流が流れてR3とR4の接続点の電圧値V
2がQ2の閾値電圧に上昇するのに必要な遅延時間、電圧値V
2によってQ2がオンしてQ2の出力電圧がV
4に低下するのに必要な遅延時間、V
4が低下したことでR5とR6の接続点の電圧値V
5がQ1の閾値電圧に低下するのに必要な遅延時間、電圧値V
5によってQ1がオンするまでに必要な遅延時間を合計した全遅延時間だけ、入力端子22にACアダプタ8から電力が供給されたタイミングt
0より遅れる。このようにして、ACアダプタ8によって電力供給が開始したタイミングt
0からΔt=t
1−t
0だけ遅延して、DC/DCコンバータ28に電力が供給される。このように電力供給に遅延時間を設けることで、ACアダプタ8の接続時における電圧値や電流値の急激な変化の衝撃からDC/DCコンバータ28を安全に保護することができる。
【0042】
次に、保護回路部30の内容を説明する。保護回路部30は、過電圧検出素子32、過電流検出素子34、制御信号出力部36、低電圧保護部38、定格電圧保護部40の5つのブロックで構成される。
【0043】
過電圧検出素子32は、一方側端子が給電ライン25の入力端子22の側に接続され、他方側端子がR7、R8を介して接地電位に接続されるツェナーダイオードZ1である。過電圧検出素子32は、その両端子間の電圧差が所定の過電圧閾値を超すとオンする素子である。所定の過電圧閾値の一例を挙げると約27Vである。
【0044】
過電圧検出素子32の作用は以下の通りである。オーディオ機器10にACアダプタ8が接続されていない状態では、過電圧検出素子32の他方側端子はR7、R8を介して接地電池に接続され、過電圧検出素子32の一方側端子もR1、R2、R3、R4を介して接地電位に接続されているので、過電圧検出素子32の両端子間の電圧差=0Vとなって、過電圧検出素子32はオフ状態である。
【0045】
オーディオ機器10にACアダプタ8が接続されたタイミングt
0では、過電圧検出素子32の一方側端子には入力端子22の電圧値V
0が印加される。電圧値V
0が過電圧閾値=27V未満のときは、過電圧検出素子32はオフのままである。電圧値V
0が過電圧閾値=27Vを超すときは、過電圧検出素子32はオンし、過電圧検出素子32の他方側端子の電圧値V
6がV
0に近い値に上昇する。オーディオ機器10にACアダプタ8が接続されたタイミングt
0における電圧値V
6の上昇に基づいて、ACアダプタ8から供給される電力の電圧値が過電圧であることを検出できる。
【0046】
過電流検出素子34は、2つの抵抗素子R9、R10と1つのトランジスタQ3で構成される複合素子である。トランジスタQ3はpチャネル型バイポーラトランジスタで、エミッタ端子は過電圧検出素子32の一方側端子に接続され、コレクタ端子は過電圧検出素子32の他方側端子に接続点33で接続され、ベース端子はR9を介して電流制限抵抗素子R1の出力側端子に接続される。ベース端子とエミッタ端子の間はR10を介して接続される。
【0047】
この接続関係をスイッチング素子Q1について見ると、電流制限抵抗素子R1の出力側端子はQ1のドレイン端子であり、過電圧検出素子32の一方側端子はQ1のソース端子である。したがって、トランジスタQ3のベース端子はR9を介してQ1のドレイン端子に接続され、トランジスタQ3のエミッタ端子はQ1のソース端子に接続される。したがって、トランジスタQ3のベースエミッタ間の電圧値は、Q1のドレインソース間の電圧値となる。
【0048】
過電流検出素子34の作用は以下の通りである。オーディオ機器10にACアダプタ8が接続されていない状態では、V
0=V
1=0Vであるので、Q1のドレインソース間の電圧値=0Vである。したがって、Q3はオフ状態である。オーディオ機器10にACアダプタ8が接続されたとき、スイッチ部26の機能によりQ1がオンして、給電ライン25にQ1を介して電流が流れる。Q1に流れる電流はドレインソース間電流であるので、その電流値が大きくなるに連れ、Q1のドレインソース間の電圧値が大きくなる。Q1のドレインソース間の電圧値が大きくなるに連れ、過電流検出素子34を構成するトランジスタQ3のベースエミッタ間の電圧値が大きくなる。給電ライン25を流れる電流値をQ1を流れる電流値として、この電流値が予め定めた閾値電流値となったときに、トランジスタQ3がオンするようにR9、R10の値を設定することで、給電ライン25を流れる電流値が閾値電流値を超えるときにトランジスタQ3をオンとすることができる。
【0049】
トランジスタQ3がオフのときは、トランジスタQ3のコレクタ端子は過電圧検出素子32の他方側端子に接続点33で接続され、接続点33はR7、R8を介して接地電位に接続されるので、接続点33の電圧値V
6は0Vである。トランジスタQ3がオンすると、トランジスタQ3のコレクタ端子の電圧値V
6は、トランジスタQ3のオン電流の大きさに応じて上昇する。したがって、ソフトスタート機能が働くタイミングt
1における電圧値V
6の上昇に基づいて給電ライン25を流れる電流値が過電流であることを検出できる。
【0050】
給電ライン25を流れる電流値が過電流であることを検出したときのトランジスタQ3のコレクタ端子の電圧値
V6は、トランジスタQ3がオンするときのコレクタエミッタ間を流れる電流値で定めることができる。トランジスタQ3がオンするときのコレクタエミッタ間を流れる電流値は、R9、R10の値によって設定することができる。したがって、R9、R10を適切に設定することで、過電圧検出素子32が過電圧を検出したときの過電圧検出素子32の他方側端子の電圧値
V6と、過電流検出素子34が過電流を検出したときのトランジスタQ3のコレクタ端子の電圧値
V6を同じ値とできる。
【0051】
制御信号出力部36は、過電圧検出または過電流検出に伴いスイッチ部26とDC/DCコンバータ28に制御信号を出力する。
図2では、制御信号の電圧値をV
3で示した。
【0052】
制御信号出力部36は、2つの抵抗素子R7、R8と、1つのトランジスタQ4と、2つのコンデンサC2、C3を含んで構成される。2つの抵抗素子R7、R8は互いに直列に接続され、R7の一方側端子は、過電圧検出素子32の他方側端子と過電流検出素子34を構成するトランジスタQ3のコレクタ端子の接続点33に接続され、R8の他方は接地電位に接続される。R7の他方側端子とR8の一方側端子は互いに接続される。
【0053】
トランジスタQ4は、nチャネル型バイポーラトランジスタで、エミッタ端子は接地電位に接続され、ベース端子はR7の他方側端子とR8の一方側端子の接続点に接続される。コレクタ端子は、制御信号を出力する端子で、低電圧保護部38を構成する抵抗素子R11を介してDC/DCコンバータ28のイネーブル端子ENに接続されると共に、スイッチ部26の抵抗素子R2、R3の接続点に接続される。
【0054】
コンデンサC2は、直列に接続された抵抗素子R7、R8に並列に接続されるコンデンサで、接続点33の電圧値V
6を平滑化する。コンデンサC3は、トランジスタQ4のコレクタ端子とエミッタ端子との間に並列に接続されるコンデンサで、制御電圧値V
3を平滑化する。
【0055】
制御信号出力部36の作用は以下の通りである。ACアダプタ8からの供給電力の電圧値が過電圧閾値以下であり、かつ給電ライン25を流れる電流値が過電流閾値以下のときは、通常状態であるので、スイッチ部26のスイッチ制御素子Q2のゲート端子の電圧値V
2がQ2の閾値電圧以上となってオンし、スイッチング素子Q1が所定の遅延時間の経過後オンして、給電ライン25は電力伝達モードとなり、ACアダプタ8から供給された電力がDC/DCコンバータ28の入力電圧端子VINに給電される。このとき、制御信号出力部36のトランジスタQ4はオフ状態で、制御信号の電圧値V
3は、抵抗素子R2、R3の接続点の電圧値となる。抵抗素子R2、R3の接続点の電圧値はスイッチ制御素子Q2のゲート端子の電圧値V
2よりも高い値で、DC/DCコンバータ28のイネーブル端子ENの動作閾値電圧よりも十分高い値に設定される。
【0056】
ACアダプタ8からの供給電力の電圧値V
0が過電圧閾値を超えるとき、あるいはV
0が過電圧閾値以下であっても給電ライン25を流れる電流値が過電流閾値を超えるときは、接続点33の電圧値V
6が上昇する。これによって制御信号出力部36のトランジスタQ4がオンし、トランジスタQ4のコレクタ端子の電圧値はほぼ接地電位に近い値に低下する。すなわち、制御信号の電圧値V
3は、ほぼ接地電位に近い値となり、抵抗素子R2、R3の接続点の電圧値をほぼ接地電位まで引き下げる。これにより、スイッチ制御素子Q2は強制的にオフ状態となり、スイッチング素子Q1も強制的にオフ状態となって、給電ライン25は遮断モードとなり、ACアダプタ8からの電力はDC/DCコンバータ28の入力電圧端子VINに給電されない。これと共に、接地電位に近い電圧値V
3を有する制御信号はDC/DCコンバータ28のイネーブル端子ENに伝送され、DC/DCコンバータ28の動作を停止させる。これにより、DC/DCコンバータ28の出力電圧端子VOUTからは電力が出力されず、過電圧から負荷回路12は安全に保護される。
【0057】
このように、制御信号出力部36における抵抗素子R7、R8は、ACアダプタ8からの供給電力の電圧値V
0が過電圧閾値を超えている異常状態であるか、または、給電ライン25を流れる電流値が過電流閾値を超えている異常状態であるかを検出するための異常検出抵抗素子である。また、トランジスタQ4は、異常検出抵抗素子の端子電圧でオンオフし、オフのときにDC/DCコンバータ28を動作可能としオンのときにDC/DCコンバータ28を動作停止させる制御信号を出力する異常検出トランジスタである。制御信号出力部36は、2つの抵抗素子R7、R8と1つのトランジスタQ4の最小限の構成要素で、過電圧検出と過電流検出の2つの場合について共通した同じ制御信号を出力するものである。なお、抵抗素子R7、R8の抵抗値は、異常検出するには十分であるが、過電圧の電力や過電流の電力を接地電位に流すには不十分な高抵抗値に設定される。
【0058】
過電圧検出素子32と過電流検出素子34と制御信号出力部36の作用によれば、ACアダプタ8からの供給電力がDC/DCコンバータ28の仕様よりも過電圧状態または過電流状態であるときにDC/DCコンバータ28を保護する。
【0059】
低電圧保護部38は、ACアダプタ8から供給される電力の電圧値がオーディオ機器10の仕様で予め定めた電圧範囲よりも低電圧のときに、DC/DCコンバータ28の動作を停止させて低電圧電力を負荷回路12に出力させないようにして、負荷回路12を低電圧による誤動作から安全に保護する。これは、ACアダプタ8からの供給電力がオーディオ機器10の仕様よりも低電圧状態のときは、過電圧検出素子32も過電流検出素子34も無力であり、そのままDC/DCコンバータ28の入力電圧端子VINに入力されてしまうからである。
【0060】
低電圧保護部38は、制御信号出力部36のトランジスタQ4がオフ状態のときに、トランジスタQ4の出力端子であるコレクタ端子と接地電位との間に設けられる抵抗素子R11、R12を電圧レベル変換素子として、制御信号の電圧値V
3の電圧レベルを所定の分圧比で低下させた電圧値V
ENを有するイネーブル信号を生成する。
【0061】
ACアダプタ8からの供給電力の電圧値がオーディオ機器10の仕様における電圧範囲にあるとき制御信号の電圧値は、DC/DCコンバータ28のイネーブル端子ENの閾値電圧よりも十分高い値に設定され、イネーブル信号の電圧値V
ENもイネーブル端子ENの閾値電圧よりも高い値となるように抵抗素子R11、R12が設定される。R11、R12については、もう1つ条件が付き、ACアダプタ8からの供給電力の電圧値がオーディオ機器10の仕様における電圧範囲の下限値のときイネーブル信号の電圧値V
ENがイネーブル端子ENの閾値電圧となるように設定される。
【0062】
一例を挙げると、オーディオ機器10の仕様における電圧範囲を27Vから18Vとし、DC/DCコンバータ28のイネーブル端子ENの閾値電圧を4Vとして、ACアダプタ8からの供給電力の電圧値が27Vから18Vの範囲にあれば、制御信号の電圧値V
3を6Vから4V、イネーブル信号の電圧値V
ENを5Vから4Vとする。このときは、DC/DCコンバータ28はイネーブル状態となって動作を行うことができる。ACアダプタ8からの供給電力の電圧値が仕様範囲外の18V未満の低電圧となると、イネーブル信号の電圧値V
ENは4V未満となって、DC/DCコンバータ28は動作を停止する。
【0063】
このように、低電圧保護部38は、抵抗素子R11、R12を適切に設定することによって、負荷回路12を仕様範囲外の低電圧による誤動作から安全に保護する。
【0064】
定格電圧保護部40は、DC/DCコンバータ28の入力電圧端子VINに定格電圧以上の電圧が供給されないようにするためのものである。これは、制御信号出力部36によって過電圧または過電流の異常状態が検出されるとき、DC/DCコンバータ28の動作は停止するが、このときでも電流制限抵抗素子R1には電流が流れて給電ライン25を通りDC/DCコンバータ28の入力電圧端子VINに給電されるためである。制御信号出力部36で説明したように、R7、R8は過電圧の電力や過電流の電力を接地電位に流すには不十分な高抵抗であるために過電圧状態または過電流状態は解消されず、DC/DCコンバータ28の入力電圧端子VINには過大な電力が供給される可能性がある。
【0065】
定格電圧保護部40は、ツェナーダイオードZ2とコンデンサC4で構成される。ツェナーダイオードZ2は、DC/DCコンバータ28の入力電圧端子VIN側の給電ライン25に一方端が接続され、他方端が接地電位に接続される。ツェナーダイオードZ2がオンする閾値電圧Z2は、電流制限抵抗素子R1の抵抗値R1と共に、給電ライン25を流れる電力値が定格電力値を超さないように設定される。例えば、定格電力値を25V×200mA=5Wとすると、電流制限抵抗素子R1の抵抗値R1=0.3kΩとして、(Z2/0.3kΩ)×Z2=5Wであるので、(Z2)
2=1500V
2となり、Z2=38.7Vとなるので、閾値電圧Z2=38VのツェナーダイオードZ2を設ける。このように、定格電圧保護部40は、電流制限抵抗素子R1とともに、給電ライン25のDC/DCコンバータ28側に定格電力以上の電力が流れないようにする機能を有する。
【0066】
DC/DCコンバータ28は、給電ライン25から入力電圧端子VINに給電された直流電力の電圧値を負荷回路12に適した電圧値を有する直流電力に電圧変換して出力電圧端子VOUTから出力する直流電圧変換器である。DC/DCコンバータ28は、イネーブル端子ENを有し、イネーブル端子ENに入力されるイネーブル信号の電圧値V
ENが閾値電圧以上のときに動作可能で、電圧値V
ENが閾値電圧未満のときは動作を停止し、入力電圧端子VINに電力が供給されても出力電圧端子VOUTには電力を出力しない。
【0067】
上記構成によれば、ACアダプタ8から供給される電力で動作し、ソフトスタート機能を有し、負荷回路12に対し、過電圧、過電流、低電圧、定格電力等の保護を行うことができる。