特許第6048503号(P6048503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6048503-スラリー製造装置及びスラリー製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048503
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】スラリー製造装置及びスラリー製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 5/10 20060101AFI20161212BHJP
   B01F 3/12 20060101ALI20161212BHJP
   B01F 15/02 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   B01F5/10
   B01F3/12
   B01F15/02 B
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-526783(P2014-526783)
(86)(22)【出願日】2013年3月25日
(86)【国際出願番号】JP2013058499
(87)【国際公開番号】WO2014017123
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2015年12月1日
(31)【優先権主張番号】特願2012-164745(P2012-164745)
(32)【優先日】2012年7月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071010
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 行造
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138438
【弁理士】
【氏名又は名称】尾首 亘聰
(74)【代理人】
【識別番号】100138519
【弁理士】
【氏名又は名称】奥谷 雅子
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100131082
【弁理士】
【氏名又は名称】小原 正信
(74)【代理人】
【識別番号】100185535
【弁理士】
【氏名又は名称】逢坂 敦
(72)【発明者】
【氏名】羽片 豊
(72)【発明者】
【氏名】堀田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】石田 悠
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−036862(JP,A)
【文献】 特開平11−123322(JP,A)
【文献】 特開平02−241532(JP,A)
【文献】 特開平02−241531(JP,A)
【文献】 特開平07−075723(JP,A)
【文献】 特開平05−317672(JP,A)
【文献】 特開平02−131129(JP,A)
【文献】 特開2003−205230(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0125264(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 1/00 − 5/26
B01F 15/00 − 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリー状若しくは液体状の処理原料と粉状の添加物との混合物を循環させながら分散させてスラリーを製造するスラリー製造装置であって、
前記処理原料又は前記混合物を貯留可能であるとともに該処理原料に混合する前記添加物が供給可能とされるタンクと、
出口側が前記タンクに接続され、前記混合物を分散処理する分散装置と、
前記混合物を循環させるポンプと、
前記分散装置、前記タンク及び前記ポンプを直列的に接続する配管と、
前記添加物を前記タンクに供給する粉体供給デバイスと、
前記処理原料を前記タンクに供給する処理原料供給デバイスとを備え、
前記分散装置は、前記粉体供給デバイスから前記添加物を供給している際には分散後の混合物を前記タンクの底面を流れるように供給し、前記粉体供給デバイスからの前記添加物の供給が完了した後には前記タンク内に混合物が貯まるように供給し、
前記粉体供給デバイスは、前記分散装置から供給される前記混合物が前記タンクの底面を流れる位置に前記添加物を供給する
スラリー製造装置。
【請求項2】
前記粉体供給デバイスは、前記タンク内へのノズルの挿入部分の長さを可変とする、
請求項1記載のスラリー製造装置。
【請求項3】
さらに、前記添加物の供給が完了した後に、液面が生じた前記タンク内の前記混合物を攪拌する攪拌機を備える、
請求項2記載のスラリー製造装置。
【請求項4】
スラリー状若しくは液体状の処理原料と粉状の添加物との混合物を循環させながら分散させてスラリーを製造するスラリー製造方法であって、
タンク、分散装置、ポンプ、及びこれらを直列的に接続する配管に、前記処理原料又は前記混合物を循環させながら、前記タンク内の該処理原料又は混合物に前記添加物及び追加する処理原料を供給するとともに該混合物を分散する第1ステップと、
前記添加物の供給が完了した後に、前記タンク、分散装置、ポンプ及び配管に前記混合物を循環させながら、該混合物に前記処理原料を供給するとともに該混合物を分散する第2ステップとを備え、
前記第1ステップでは、前記分散装置は分散後の混合物を前記タンクの底面を流れるように供給し、前記粉体供給デバイスは、前記分散装置から供給される前記混合物が前記タンクの底面を流れる位置に前記添加物を供給し
前記第2ステップでは、前記分散装置は分散後の混合物を前記タンク内に混合物が貯まるように供給する、
スラリー製造方法。
【請求項5】
前記添加物を前記タンクに供給する粉体供給デバイスは、前記タンク内へのノズルの挿入部分の長さを可変とされ、
前記第2ステップでは、前記第1ステップよりも前記ノズルの挿入部分の長さを短くする、
請求項4記載のスラリー製造方法。
【請求項6】
前記第2ステップの前記処理原料の供給が完了した後に、前記タンク、分散装置、ポンプ及び配管に前記混合物を循環させながら、該混合物を分散する第3ステップを備える、
請求項5記載のスラリー製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリー状若しくは液体状の処理原料に粉状の添加物を添加した混合物内の物質を分散させてスラリーを製造するスラリー製造装置及びスラリー製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スラリー状若しくは液体状の混合物を循環させながら分散させるシステムとして、分散装置と、タンクと、ポンプと、配管とを備えたものが用いられている(例えば、特開2011−36862号公報参照)。
【0003】
このシステム等において、タンク内に液体状の処理原料を満たした状態で循環させ、タンク内の処理原料に粉状の添加物を徐々に投入し、スラリーを製造していた。しかし、粉状添加物が原料より軽くて(密度が小さく)浮く場合には、タンク内の液面や攪拌機に粉状添加物が滞留し、分散時間が長くなるおそれがあった。
【0004】
本発明の目的は、軽い粉状添加物を用いる場合に添加物の滞留を防止して、分散時間を短縮できるスラリー製造装置及びスラリー製造方法を提供することにある。
【発明の概要】
【0005】
本発明に係るスラリー製造装置は、スラリー状若しくは液体状の処理原料と粉状の添加物との混合物を循環させながら分散させてスラリーを製造するスラリー製造装置であって、処理原料又は前記混合物を貯留可能であるとともに該処理原料に混合する前記添加物が供給可能とされるタンクと、出口側が前記タンクに接続され、前記混合物を分散処理する分散装置と、前記混合物を循環させるポンプと、前記分散装置、前記タンク及び前記ポンプを直列的に接続する配管と、前記添加物を前記タンクに供給する粉体供給デバイスと、前記処理原料を前記タンクに供給する処理原料供給デバイスとを備え、前記分散装置は、前記粉体供給デバイスから前記添加物を供給している際には分散後の混合物を前記タンクの底面を流れるように供給し、前記粉体供給デバイスからの前記添加物の供給が完了した後には前記タンク内に混合物が貯まるように供給し、前記粉体供給デバイスは、前記分散装置から供給される前記混合物が前記タンクの底面を流れる位置に前記添加物を供給する
本発明に係るスラリー製造方法は、スラリー状若しくは液体状の処理原料と粉状の添加物との混合物を循環させながら分散させてスラリーを製造するスラリー製造方法であって、タンク、分散装置、ポンプ、及びこれらを直列的に接続する配管に、前記処理原料又は前記混合物を循環させながら、前記タンク内の該処理原料又は混合物に前記添加物及び追加する処理原料を供給するとともに該混合物を分散する第1ステップと、前記添加物の供給が完了した後に、前記タンク、分散装置、ポンプ及び配管に前記混合物を循環させながら、該混合物に前記処理原料を供給するとともに該混合物を分散する第2ステップとを備え、前記第1ステップでは、前記分散装置は分散後の混合物を前記タンクの底面を流れるように供給し、前記粉体供給デバイスは、前記分散装置から供給される前記混合物が前記タンクの底面を流れる位置に前記添加物を供給し、前記第2ステップでは、前記分散装置は分散後の混合物を前記タンク内に混合物が貯まるように供給する。


【0006】
本発明は、軽い粉状添加物を用いる場合にも添加物の滞留を防止して、分散時間を短縮してスラリーを製造することを実現する。
【0007】
この出願は、日本国で2012年7月25日に出願された特願2012−164745号に基づいており、その内容は本出願の内容として、その一部を形成する。
また、本発明は以下の詳細な説明により更に完全に理解できるであろう。しかしながら、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の望ましい実施の形態であり、説明の目的のためにのみ記載されているものである。この詳細な説明から、種々の変更、改変が、当業者にとって明らかだからである。
出願人は、記載された実施の形態のいずれをも公衆に献上する意図はなく、開示された改変、代替案のうち、特許請求の範囲内に文言上含まれないかもしれないものも、均等論下での発明の一部とする。
本明細書あるいは請求の範囲の記載において、名詞及び同様な指示語の使用は、特に指示されない限り、または文脈によって明瞭に否定されない限り、単数および複数の両方を含むものと解釈すべきである。本明細書中で提供されたいずれの例示または例示的な用語(例えば、「等」)の使用も、単に本発明を説明し易くするという意図であるに過ぎず、特に請求の範囲に記載しない限り本発明の範囲に制限を加えるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態のスラリー製造装置の概要図である。(a)は、該装置を用いた製造方法における粉状添加物供給中の状態を示す図である。(b)は、該製造方法における粉状添加物供給完了後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用したスラリー製造装置1について図面を参照して説明する。以下で説明する装置1は、スラリー状若しくは液体状の処理原料3に粉状の添加物4を添加した混合物5を循環させながら分散(「スラリー化」ともいう)させるものである。また、分散とは、該混合物5内の物質、典型的には添加物4、を分散させること、すなわち、該混合物5内の各物質が均一に存在するように混ぜることを意味する。
【0010】
スラリー製造装置1は、図1に示すように、タンク11と、分散装置12と、ポンプ13と、配管14と、粉体供給デバイス15と、処理原料供給デバイス16とを備える。スラリー製造装置1は、分散装置12を有する循環式分散システムとも言える。タンク11は、スラリー状若しくは液体状の処理原料又は混合物を貯留可能であるとともに該処理原料に混合する粉状の添加物が供給可能とされる。
【0011】
分散装置12は、出口側が配管14を介してタンク11に接続され、混合物を分散処理する。ポンプ13は、混合物を配管14を介してタンク11、分散装置12に循環させる。配管14は、分散装置12、タンク11及びポンプ13を直列的に接続する。
【0012】
粉体供給デバイス15は、タンク11に添加物4を供給する。処理原料供給デバイス16は、タンク11に循環される混合物に処理原料3を供給する。
【0013】
処理原料供給デバイス16は、粉体供給デバイス15から添加物を供給している際には、図1(a)に示すように、タンク11内に混合物5の液面が生じないように処理原料3を供給する。ここで、「液面が生じない」とは、タンク11の底の排出口11aが、処理原料3又は混合物5で満たされてタンク11内に貯まることがない程度の少ない量の混合物5が循環されている状態を意味する。すなわち、該「液面」は、後述の図1(b)の液面5aのような実質的に水平な液面を意味しており、「タンク11内に混合物5の液面が生じないように処理原料3を供給する」とは、このような「水平な液面」がタンク11内に生じない程度の少ない循環量で混合物5が循環されていることを意味している。よって、装置1は、タンク11内の混合物の液面に粉状添加物が滞留することがなく、スラリー製造に要する時間を短縮できる。
【0014】
粉体供給デバイス15は、タンク11の底面のうち分散装置12からの混合物5が流れる位置に添加物4を供給する。これにより、混合物5の流れに沿って粉状添加物4が排出口11aに導かれ、配管14を介して分散装置12に導かれ、分散される。分散装置12で分散された混合物は、タンク11に導かれる。
【0015】
処理原料供給デバイス16は、粉体供給デバイス15からの添加物の供給が完了した後には、図1(b)に示すように、タンク11内に混合物5の液面5aが生じるように処理原料を供給する。このように、粉状添加物4が既に処理原料3あるいは混合物5と分散されることにより滞留しない状態になってから、処理原料を追加することで、タンク11内の混合物の液面に粉状添加物が滞留することを防止でき、所望の混合比を実現できる。
【0016】
処理原料供給デバイス16は、例えば、ノズル16aと、処理原料貯蔵タンク16bと、このタンク16b内部の処理原料をノズル16aからタンク11に供給するポンプ16cとを有する。ポンプ16cは、タンク16bとノズル16aとを接続する配管16dの経路上に設けられる。ポンプ16cにより処理原料供給デバイス16からタンク11に供給される処理原料の量とタイミングは、制御部20により制御される。
【0017】
ところで、粉体供給デバイス15は、タンク11内への挿入部分の長さを可変としてもよい。具体的に、粉体供給デバイス15には、上下駆動部15aが設けられている。粉体供給デバイス15は、上下駆動部15aによりノズル15bを上下に駆動できる。粉体供給デバイス15は、図1(b)に示すような状態(第2ステップ)では、図1(a)に示す状態(第1ステップ)よりもノズル15bの挿入部分の長さを短くする。これにより、図1(a)に示す粉状添加物供給状態においては、その粉を撒き散らすことなく、タンク11の底面のうち分散装置12からの混合物が流れる位置に添加物を供給する。また、図1(b)に示す粉状添加物供給完了後の処理原料供給状態等においては、その混合物に粉体供給デバイス15のノズル15bの先端が液に浸かってしまうことを防止できる。ノズル15b先端が液に浸かると混合物がノズル15bに付着するという問題や、次回の粉体供給の際に粉体がノズルに15b付着するという問題がある。
【0018】
また、粉体供給デバイス15は、ノズル15b上に設けられ粉体添加物を貯蔵するホッパ15cを有する。ホッパ15cは、上下駆動部15aによりノズル15bとともに上下に移動されてもよい。ホッパ15c内の粉体添加物は、ノズル15b内のスクリューフィーダ等により所定の速度でタンク11内に供給される。粉体添加物の投入は、スクリューフィーダに限られるものではなく、例えば振動フィーダであってもよい。振動フィーダを用いる場合は、ホッパ15c内に必要量を投入する構成とすればよい。粉体供給デバイス15からタンク11に供給される粉体添加物の量とタイミングは、制御部20により制御される。上下駆動部15aにより駆動される粉体供給デバイス15の高さ方向の位置も、制御部20により制御される。
【0019】
また、スラリー製造装置1は、添加物の供給が完了した後に、液面が生じたタンク11内の混合物を攪拌する攪拌機17を備える。この攪拌機17には、モータ18と、上下駆動部17aが設けられている。攪拌機17では、上下駆動部17aにより羽根部分17bを上下に駆動できる。攪拌機17は、図1(a)に示す粉体添加物供給状態においては、ノズル15bより上側に羽根部分17bを退避させてもよい。退避させることで、粉体添加物4の供給の妨げになることを防止できる。攪拌機17は、図1(b)に示す液状等の原料供給状態やそれ以降の状態においては、液中に羽根部分17bが浸かるようにして、その攪拌機能を発揮する。上下駆動部17aにより駆動される羽根部分17bの高さ方向の位置は、制御部20により制御される。撹拌機17、具体的にはモータ18は、制御部20により制御される。
【0020】
スラリー製造装置1の配管14には、圧力センサ(圧力計)21と、流量センサ(流量計)22とが設けられる。圧力センサ21は、例えば、分散装置12の手前に設けられる。流量センサ22は、例えば、ポンプ13の出口側に設けられる。圧力センサ21及び流量センサ22の検知結果は、制御部20に送られる。
【0021】
分散装置12は、ローター26と、該ローター26に対向して配置される対向部材であるステータ27とを有する。ローター26及びステータ27の間に、混合物を遠心力によって外周方向に通過させることによって分散させる。分散後の混合物5は、配管14及び投入ノズル12aを介してタンク11に戻される。分散装置12には、ローター26及びステータ27間の隙間を調整する昇降機構28が設けられている。昇降機構28は、例えば、ローター26を上下に駆動することで、この隙間の大きさを調整できる。分散装置12は、具体的にはローター26の回転数は、制御部20に制御される。昇降機構28による隙間の大きさは、制御部20に制御される。
【0022】
尚、装置1に用いられる分散装置は、分散装置12に限られるものではない。例えばステータに換えてローターを用いてもよい。すなわち、互いに逆方向に回転する一対のローターを有する分散装置であってもよい。また、スタティックミキサー等を用いても良い。ここで、分散装置12等のローター型の分散装置を用いた場合には、ポンプ13の送液機能を補助するため望ましい。これは、分散装置12等のローター型の分散装置は、供給された混合物5を分散しながら遠心力により外側に排出するからである。これにより供給元の配管内の圧力を下げることとなり、この圧力低下によりポンプ13の送液機能を補助する。
【0023】
以上のように、スラリー製造装置1は、処理原料3(混合物5)の流れとともに粉体添加物4をポンプ13に導き、その混合物5を分散装置12に送ることで、スラリーを製造する装置である。また、粉体添加物4を投入完了するまでは循環可能な最小限の処理原料3を使用し、投入完了後に残りの処理原料3を投入する装置である。具体的に、粉体供給デバイス15及び処理原料供給デバイス16、具体的にはポンプ16cは、粉体添加物及び処理原料のタンク11への供給量を制御部20に制御されることで、タンク11内に混合物の液面が生じないようにして、粉体添加物の滞留を防止した適切な分散処理を実現する。
【0024】
尚、粉体添加物4の濃度が上昇するにつれてスラリー(混合物5)の粘度が上昇し、装置内部へのスラリー付着量が増加し、ポンプ13で循環されるスラリー量が減少する。このような場合に、タンク11の排出口11aが混合物5で満たされない程度に処理原料3を追加する。粉体添加物4の供給が完了するまで同様の処理を繰り返す。粉体添加物4の全部の供給が完了した後に、所定の処理原料3の残りの全量を供給して、分散処理を行うことでスラリーが製造される。
【0025】
また、スラリー製造装置1は、図1(a)の粉体供給段階において、循環可能な量を検知し、不足があれば処理原料を追加しながら粉体添加物を投入する。例えば、流量センサ22の検出結果に基づいて、制御部20は、処理原料供給デバイス16及び粉体供給デバイス15を制御して所定の処理原料3及び粉体添加物4をタンク11に供給する。尚、その他の情報に応じて、追加の処理原料3と粉体添加物4の投入速度を調整してもよい。この情報としては、流量のほかに、配管14内の圧力(圧力センサ21の検出結果)や、タンク11内の混合物5の残量を用いてもよい。尚、タンク11内の混合物5の残量は、レーザ等を利用した液面センサ等を設けることで検出してもよい。
【0026】
以上のように構成されたスラリー製造装置1を用いたスラリー製造方法について説明する。このスラリー製造方法は、処理原料と添加物との混合物を循環させながら分散させてスラリーを製造する。
【0027】
該方法は、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップとを備える。第1ステップでは、タンク11、分散装置12、ポンプ13、及びこれらを直列的に接続する配管14に、スラリー状若しくは液体状の処理原料3を供給し、処理原料3又は混合物5を循環させながら、タンク11内の該処理原料3又は混合物5に粉状の添加物4供給するとともに該混合物5を分散する。必要に応じて、処理原料3を追加供給してもよい。図1(a)は、第1ステップを示す。
【0028】
第2ステップでは、添加物4の供給が完了した後に、タンク11、分散装置12、ポンプ13及び配管14に混合物5を循環させながら、該混合物5に処理原料3を供給するとともに該混合物5を分散する。図1(b)は、第2ステップの状態を示す。
【0029】
第3ステップでは、第2ステップの処理原料3の供給が完了した後に、タンク11、分散装置12、ポンプ13及び配管14に混合物5を循環させながら、該混合物5を分散する。尚、第3ステップも図1(b)と同様にタンク11内に液面を有した状態である。
【0030】
上述の第1ステップでは、タンク11内に混合物5の液面が生じないようにされる。また、第1ステップにおいて、タンク11の底面のうち分散装置12からの混合物5が流れる位置に添加物が供給される。
【0031】
また、第1ステップでは、例えば、制御部20により各部が制御され、次のような手順が繰り返される。まず、ポンプ13が起動される(S1−1)。次に、タンク11の底の排出口11aが処理原料3で満たされてタンク11内に貯まることがない程度に処理原料3を投入する(S1−2)。次に、粉体添加物4が投入される(S1−3)。処理原料3と添加物4とが分散装置12で分散される。次に、未投入分の粉体添加物4が有るか否かを判定する(S1−4)。未投入分の粉体添加物4が有れば、S1−2に戻る。未投入分の粉体添加物4がなければ第2ステップに進む。第2ステップでは、処理原料3を所定の濃度になる量だけ投入する。すなわち、所定量の処理原料3の残りの全量を投入する。処理原料3の投入が完了すると第3ステップに進む。尚、上述のS1−2〜S1−4を繰り返す際に、S1−2では、循環可能な最小限の処理原料が足りていれば(液面が生じない程度に循環して存在すれば)投入せず、上述したように粘度の上昇により循環される混合物が減少していれば投入する。
【0032】
上述の第2ステップでは、タンク11内に混合物5の液面5aが生じるように処理原料3が供給される。すなわち、混合物5が排出口11aに満ち、タンク11内に貯まるまで、処理原料3を供給する。また、第2ステップでは、第1ステップよりも粉体供給デバイス15の挿入部分の長さを短くする。また、第2ステップでは、攪拌機17の羽根部分17bを下降させる。第2ステップ及び第3ステップでは、混合物5を循環させながら、攪拌機17で攪拌することで、粉体添加物が均一に分散されたスラリーが製造される。
【0033】
以上のようなスラリー製造装置1及びこれを用いたスラリー製造方法によれば、軽い粉状添加物を用いる場合にも滞留を防止して、分散時間を短縮してスラリーを製造することを実現する。
【0034】
以下、明細書及び図面で用いる主な符号を列挙する。
1 スラリー製造装置
3 スラリー状若しくは液体上の処理原料
4 粉状の添加物
5 混合物
11 タンク
12 分散装置
13 ポンプ
14 配管
15 粉体供給デバイス
15b 粉体供給デバイスのノズル
16 処理原料供給デバイス
図1