特許第6048537号(P6048537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

特許6048537フィルム、包装袋およびフィルムのヒートシール性付与方法
<>
  • 特許6048537-フィルム、包装袋およびフィルムのヒートシール性付与方法 図000003
  • 特許6048537-フィルム、包装袋およびフィルムのヒートシール性付与方法 図000004
  • 特許6048537-フィルム、包装袋およびフィルムのヒートシール性付与方法 図000005
  • 特許6048537-フィルム、包装袋およびフィルムのヒートシール性付与方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6048537
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】フィルム、包装袋およびフィルムのヒートシール性付与方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/00 20060101AFI20161212BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20161212BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20161212BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20161212BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20161212BHJP
   B65D 33/22 20060101ALI20161212BHJP
   B65D 65/38 20060101ALI20161212BHJP
   B29C 65/02 20060101ALI20161212BHJP
   B32B 38/18 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   C08J7/00 302
   C08J5/18CFD
   B32B27/36
   B32B27/16
   B65D30/02
   B65D33/22
   B65D65/38
   B29C65/02
   B32B38/18 E
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-118450(P2015-118450)
(22)【出願日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年4月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢島 俊輔
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−139900(JP,A)
【文献】 特開昭63−308042(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/001606(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C71/04
B32B1/00−43/00
B65D30/00−33/38
65/00−65/46
C08J7/00−7/02
7/12−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2軸延伸ポリエステルの層単体または前記2軸延伸ポリエステルの層を表面に含む積層体からなり、前記2軸延伸ポリエステルの層の少なくとも一部の領域にレーザー光を照射することによりヒートシール性を付与したフィルムであって、
前記少なくとも一部の領域に、前記フィルムのMD方向に対して5°以上85°以下の角度をなす複数の直線状の加工跡が形成された、フィルム。
【請求項2】
1以上の、請求項1に記載のフィルムを含み、前記フィルムの前記少なくとも一部の領域どうしヒートシールされている包装袋。
【請求項3】
2軸延伸ポリエステル単体または2軸延伸ポリエステルを表面に積層した積層体からなるフィルムの少なくとも一部の領域に、前記フィルムのMD方向に対して5°以上85°以下の角度をなす直線状の照射形状でレーザー光を照射してヒートシール性を付与する工程を含む、フィルムのヒートシール性付与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシール性が付与された2軸配向ポリエステルフィルム、これを用いた包装袋および2軸配向ポリエステルフィルムへのヒートシール性付与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム等の2軸配向ポリエステルフィルムは、強度、耐熱性、寸法安定性、耐薬品性、保香性等に優れることから、各種の包装用素材として有用である。そこで、このようなフィルムどうしをヒートシールして形成したフレキシブルパウチ等の包装袋が期待されている。
【0003】
しかしながら、配向性を有するフィルムは、ヒートシール性に乏しい。そこで例えば、特許文献1には、電磁波を2軸配向ポリエステルフィルムの表面に短パルス照射し、表面を改質することによりヒートシール性を付与する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平4−26339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示する短パルス照射方法は、2軸配向ポリエステルフィルムの内部配向性を損なわないようにするため、キセノンガスランプ等を用いて高出力の短パルスを発生させる必要がある。このような高出力な装置はエネルギー効率が低く、また、安全性の確保が困難である。このため、2軸配向ポリエステルフィルムにヒートシール性を付与する方法は実用化に向けての取り組みがなされていなかった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、高効率で安全性の高い方法によりヒートシール性を付与されたフィルムの実用化に向けた、より効果的、安定的にヒートシール性を付与する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一局面は、2軸延伸ポリエステルの層単体または2軸延伸ポリエステルの層を表面に含む積層体からなり、2軸延伸ポリエステルの層の少なくとも一部の領域にレーザー光を照射することによりヒートシール性を付与したフィルムであって、少なくとも一部の領域に、フィルムのMD方向に対して5°以上85°以下の角度をなす複数の直線状の加工跡が形成された、フィルムである。
【0008】
また、本発明の他の局面は、1以上の上述のフィルムを含み、フィルムの少なくとも一部の領域どうしヒートシールされている包装袋である。
【0009】
また、本発明の他の局面は、2軸延伸ポリエステル単体または2軸延伸ポリエステルを表面に積層した積層体からなるフィルムの少なくとも一部の領域に、フィルムのMD方向に対して5°以上85°以下の角度をなす直線状の照射形状でレーザー光を照射してヒートシール性を付与する工程を含む、フィルムのヒートシール性付与方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、高効率で安全性の高い方法により効果的、安定的にヒートシール性を付与されたフィルム、これを用いた包装袋およびフィルムのヒートシール性付与方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るフィルムの平面図および断面図
図2】本発明の一実施形態に係るフィルムのヒートシール性付与方法を示す平面図および断面図
図3】本発明の一実施形態に係る積層体フィルムの平面図および断面図
図4】本発明の一実施形態に係る包装袋の平面図および側面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本発明の実施形態に係るフィルム、これを用いた包装袋およびフィルムのヒートシール性付与方法を説明する。各実施形態間で同一又は対応する構成要素には同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0013】
(フィルム)
図1に、一実施形態に係るフィルム10の平面図およびそのA−A’線に沿った断面図を示す。フィルム10は長方形状の2軸配向ポリエステル層30単体からなる。フィルム10片面の周縁の領域には、レーザー光を照射して結晶度を低下させることによりヒートシール性の付与された加工跡60が複数形成され、シール部40を構成している。加工跡60は、図1に拡大して示すように、フィルム10のMD方向(フィルムの流れ方向;図の紙面上下方向)に対して角度αをなす直線状である。角度αは5°以上85°以下が好ましく、特にMD方向およびこれに直交するTD方向のいずれに対しても相等しい角度をなす45°が好ましい。
【0014】
(ヒートシール性付与方法)
図2に、実施形態に係るフィルム10のヒートシール性付与方法およびフィルム10のB−B’線に沿った断面図を示す。周縁の領域にシール部40を形成するために、レーザー光の照射形状を所定長さの直線状の照射パターンSとし、これを周縁の領域上を移動させながら照射する。照射パターンSの延伸方向はフィルム10のMD方向に対して上述の角度αをなす。照射パターンSの照射により領域上には、複数の加工跡60が形成される。レーザー光の照射は間欠的に行ってもよく、連続的に行ってもよい。連続的に行う場合であっても、レーザー光の出力等の各種特性の周期的な変化によって同様の加工跡60が形成されうる。レーザー光は、エネルギーが効率的に2軸配向ポリエステル層30に吸収されやすい赤外線波長を有する炭酸ガスレーザー光を用いることが好ましい。赤外線波長を有するレーザー光であれば、他のレーザー光を用いることもできる。
【0015】
加工跡60はレーザー光の照射により2軸配向ポリエステル層30の結晶化度が低下することにより形成され、結晶化度の低下によってヒートシール性が発現する。周縁の領域全体にレーザー光が照射されることにより、ヒートシール性の付与が完了してシール部40が形成される。加工跡60の形態はレーザー光の出力や照射パターンSのエネルギー密度、照射速度等に応じて様々であり、例えば、図1および図2の断面図に示すように、平坦さが失われ、凹部または凸部を有する微細構造が形成されてもよいし、白化して光の反射率が同様のパターンで変化してもよい。
【0016】
このように、レーザー光の照射によりヒートシール性を付与する方法は、高出力の電磁波を短パルスで照射してヒートシール性を付与する方法に比べて、エネルギー効率を高くすることができ、また、安全性の確保が可能である。
【0017】
また、上述の角度αを維持しながらレーザー光の照射パターンSを周縁領域上で移動させることによって、効率的に周縁領域全体を走査することができる。
【0018】
(積層体フィルム)
2軸配向ポリエステルを表面に含む積層体フィルムに、上述と同様にレーザー光を照射してヒートシール性を付与することもできる。図3に、積層体フィルム11の平面図およびそのC−C’線に沿った断面図を示す。積層体フィルム11は、2軸配向ポリエステル層31と、他の層50、32とを含む積層体である。積層体フィルム11の所定の領域21には、2軸配向ポリエステル層31にレーザー光を照射して結晶度を低下させることによりヒートシール性の付与されたシール部40が形成されている。他の層50、32は、例えば、それぞれアルミニウム層、2軸配向ポリエステル層を用いることができるが、これに限定されず、材質、層数は特に限定されない。
【0019】
(包装袋)
図4に、一実施形態に係る包装袋100の平面図、側面図を示す。包装袋100は2枚のフィルム10をシール部40の形成された面が向かい合うように重ねて、周縁部にヒートシール処理を行うことで収納部を形成して製造される四方シール袋である。このような包装袋は、通常、包装袋の各端縁および収納部の各端縁は、MD方向、TD方向のいずれかに平行となる。
【0020】
一般に、直線形状のヒートシール箇所は、直線形状の長さ方向に剥離を進行させる場合のシール強度の方が、長さ方向に直交する方向に剥離を進行させる場合のシール強度より小さい。そのため、仮に、直線状の加工跡60の延伸方向を、MD方向またはTD方向に平行にした場合、包装袋100の各端縁や、収納部の各端縁からのシール剥離強度に差が生じ、いずれかの端縁におけるシール強度が、隣接する端縁におけるシール強度より小さくなり、安定したシール強度が得られにくい。
【0021】
包装袋100は直線状の加工跡60の延伸方向をMD方向に対して5°以上85°以下の角度αをなすように形成しているため、MD方向とTD方向とのシール強度の差を小さくでき、均等かつ充分なシール強度を各方向に対して安定的に付与できる。
【0022】
包装袋の形状は四方シール袋に限定されず、収納部の外端縁または内端縁の少なくとも一部がMD方向、TD方向に平行であれば、任意の形状を採用できる。例えば、1枚のフィルムを2つ折りにして、合わせた周縁部をヒートシールして形成される三方シール袋や、2枚のフィルムの間に2つ折りにしたフィルムを挟み、周縁部をシールして形成される自立性を有するフレキシブル包装袋等が採用可能である。
【実施例】
【0023】
実施例1〜5および比較例1〜4に係る積層体フィルムおよびこれを用いた包装袋を作製して、それぞれのMD方向およびTD方向におけるシール強度を測定してシール強度の方向性を評価した。
【0024】
各積層体フィルムは、表面からポリエチレンテレフタレート(12μm)/アルミニウム(9μm)/ポリエチレンテレフタレート(12μm)の層構成を有する。
【0025】
各積層体フィルムに、最大出力250Wのパルスレーザー加工装置を用いて、出力30%、スキャンスピード30m/minの条件で、回折光学素子により14mm幅の直線形状のレーザー光を照射して、MD方向に対して各角度をなす直線状の加工跡を形成してシール部を設けた。
【0026】
レーザー加工を行った各積層体フィルムに140℃、0.2MPaの熱および荷重を2秒間加えてヒートシール処理を行った後、引張試験機でMD方向およびTD方向におけるシール強度を測定した。
【0027】
表1に加工跡の積層体フィルムのMD方向に対する角度(°)、MD方向およびTD方向におけるシール強度(N/15mm)、シール強度の安定性の評価結果を示す。評価結果には、MD方向とTD方向とにおけるシール強度の差がない場合には「◎」を記載し、30%未満である場合には「○」を記載し、30%以上である場合には「×」を記載した。
【0028】
【表1】
【0029】
実施例1〜5に係る積層体フィルムにより作成された包装袋はいずれもMD方向とTD方向とにおけるシール強度の差が30%未満であった。このことから、積層体フィルムのMD方向に対する直線状の加工跡の角度を5°以上85°以下とすることで、シール強度をMD方向およびTD方向に対して均等に付与できることが確認された。
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、高効率で安全性の高い方法により、MD方向とTD方向に対して充分均等にシール強度が付与されたフィルム、これを用いた包装袋およびフィルムのヒートシール性付与方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、包装袋等の製造に用いられるフィルムに有用である。
【符号の説明】
【0032】
10 フィルム
11 積層体フィルム
30、31、32 2軸配向ポリエステル層
40 シール部
50 アルミニウム層
60 加工跡
100、101、102 包装袋
S 照射パターン
【要約】
【課題】高効率で安全性の高い方法によりヒートシール性を付与されたフィルム、これを用いた包装袋およびフィルムのヒートシール性付与方法を提供することを目的とする。
【解決手段】2軸配向ポリエステルの層単体または2軸配向ポリエステルの層を表面に含む積層体からなり、2軸配向ポリエステルの層の少なくとも一部の領域にレーザー光を照射することによりヒートシール性を付与したフィルムであって、少なくとも一部の領域に、フィルムのMD方向に対して5°以上85°以下の角度をなす複数の直線状の加工跡が形成された、フィルムである。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4