特許第6048576号(P6048576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048576
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】油供給装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/30 20060101AFI20161212BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20161212BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20161212BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20161212BHJP
   B60L 11/14 20060101ALI20161212BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   B60W10/30 900
   B60W20/00
   B60K6/48ZHV
   B60K6/54
   B60L11/14
   F16H61/02
【請求項の数】14
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2015-508803(P2015-508803)
(86)(22)【出願日】2014年3月28日
(86)【国際出願番号】JP2014059333
(87)【国際公開番号】WO2014157689
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2015年7月31日
(31)【優先権主張番号】特願2013-74835(P2013-74835)
(32)【優先日】2013年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】石川 智己
(72)【発明者】
【氏名】榎本 和人
(72)【発明者】
【氏名】野田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】西尾 聡
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓司
【審査官】 山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−215246(JP,A)
【文献】 特開2012−096659(JP,A)
【文献】 特開2010−143264(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102009042933(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 − 20/50
B60K 6/20 − 6/547
B60L 11/14
F16H 61/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪駆動用の回転電機と、車輪に駆動連結される出力部材と、変速用係合装置を備えると共に前記入力部材の回転又は前記回転電機の回転を変速して前記出力部材に伝達する変速装置と、前記入力部材を前記変速装置から切り離す切離用係合装置とを備える車両用駆動装置に、油を供給する油供給装置であって、
前記入力部材に連動する第一連動部材又は前記回転電機に連動する第二連動部材により駆動される第一油圧ポンプと、
前記第一油圧ポンプの駆動力源とは異なる駆動力源により駆動される第二油圧ポンプと、
前記切離用係合装置及び前記変速用係合装置の少なくとも一方に対して潤滑のための油を供給する潤滑油路と、
前記切離用係合装置に対して係合の状態を制御するための油を供給する第一係合油路と、
前記変速用係合装置に対して係合の状態を制御するための油を供給する第二係合油路と、
前記第一油圧ポンプ及び前記第二油圧ポンプのそれぞれから吐出された油の各油路への供給状態を制御する供給状態制御部と、を備え、
前記第一係合油路及び前記第二係合油路の双方に対して前記第二油圧ポンプから吐出された油は供給されずに前記第一油圧ポンプから吐出された油が供給されると共に、前記潤滑油路に対して少なくとも前記第二油圧ポンプから吐出された油が供給される状態が第一供給状態であり、
前記第一係合油路に対して油が供給されず、前記第二係合油路と前記潤滑油路に対して前記第一油圧ポンプと前記第二油圧ポンプの内のいずれか一方から吐出された油が供給される状態が第二供給状態であり、
前記供給状態制御部は、前記切離用係合装置及び前記変速用係合装置の少なくとも一方を滑り係合状態に制御して前記入力部材の回転を前記出力部材に伝達する場合に、前記第一供給状態とし、前記切離用係合装置を解放状態に制御して前記回転電機の出力トルクを車輪に伝達させる場合に、前記第二供給状態とする油供給装置。
【請求項2】
内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪駆動用の回転電機と、車輪に駆動連結される出力部材と、変速用係合装置を備えると共に前記入力部材の回転を変速して前記出力部材に伝達する変速装置と、前記入力部材を前記変速装置から切り離す切離用係合装置とを備える車両用駆動装置に、油を供給する油供給装置であって、
前記入力部材に連動する第一連動部材又は前記回転電機に連動する第二連動部材により駆動される第一油圧ポンプと、
前記第一油圧ポンプの駆動力源とは異なる駆動力源により駆動される第二油圧ポンプと、
前記切離用係合装置及び前記変速用係合装置の少なくとも一方に対して潤滑のための油を供給する潤滑油路と、
前記切離用係合装置に対して係合の状態を制御するための油を供給する第一係合油路と、
前記変速用係合装置に対して係合の状態を制御するための油を供給する第二係合油路と、
前記第一油圧ポンプ及び前記第二油圧ポンプのそれぞれから吐出された油の各油路への供給状態を制御する供給状態制御部と、を備え、
前記第一係合油路及び前記第二係合油路の双方に対して前記第二油圧ポンプから吐出された油は供給されずに前記第一油圧ポンプから吐出された油が供給されると共に、前記潤滑油路に対して少なくとも前記第二油圧ポンプから吐出された油が供給される状態が第一供給状態であり、
記第一係合油路前記第二係合油路に対して油が供給されず、前記潤滑油路に対して前記第一油圧ポンプと前記第二油圧ポンプの内のいずれか一方から吐出された油が供給される状態が第二供給状態であり、
前記供給状態制御部は、前記切離用係合装置及び前記変速用係合装置の少なくとも一方を滑り係合状態に制御して前記入力部材の回転を前記出力部材に伝達する場合に、前記第一供給状態とし、前記切離用係合装置を解放状態に制御して前記回転電機の出力トルクを車輪に伝達させる場合に、前記第二供給状態とする油供給装置。
【請求項3】
前記供給状態制御部は、
前記第一油圧ポンプの吐出口の下流に設けられた第一逆止弁と、
前記第二油圧ポンプの吐出口の下流に設けられた第二逆止弁と、
前記第一逆止弁の下流の油路と前記第二逆止弁の下流の油路との双方に接続されていると共に、前記第一係合油路と前記第二係合油路との双方に接続されている合流油路と、
前記第二油圧ポンプの吐出口と前記第二逆止弁とを接続する接続油路から分岐した油路である分岐油路と、
前記分岐油路と前記潤滑油路との連通状態を制御する連通状態制御弁と、
前記連通状態制御弁の状態を制御する弁制御装置と、
を備える請求項1又は2に記載の油供給装置。
【請求項4】
前記供給状態制御部は、前記合流油路から分岐して前記潤滑油路に接続されている潤滑分岐油路を更に備え、
前記分岐油路は前記潤滑分岐油路を介することなく前記潤滑油路に接続されており、
前記連通状態制御弁は、前記分岐油路と前記潤滑油路との連通状態を制御する分岐制御弁部と、前記潤滑分岐油路と前記潤滑油路との連通状態を制御する潤滑制御弁部と、を備える請求項に記載の油供給装置。
【請求項5】
前記分岐制御弁部は、前記分岐油路と前記潤滑油路とが連通する状態と、前記分岐油路と前記潤滑油路とが非連通となる状態とを切り替える制御を行う請求項に記載の油供給装置。
【請求項6】
前記供給状態制御部は、前記合流油路から分岐して前記潤滑油路に接続されている潤滑分岐油路を更に備え、
前記分岐油路は前記潤滑分岐油路に接続されており、
前記連通状態制御弁は、前記分岐油路と前記潤滑分岐油路との連通状態を制御する分岐制御弁部を備える請求項に記載の油供給装置。
【請求項7】
前記連通状態制御弁は、更に、前記潤滑分岐油路と前記潤滑油路との連通状態を制御する潤滑制御弁部を備える請求項に記載の油供給装置。
【請求項8】
前記分岐制御弁部は、前記分岐油路と前記潤滑分岐油路とが連通する状態と、前記分岐油路と前記潤滑分岐油路とが非連通となる状態とを切り替える制御を行う請求項又はに記載の油供給装置。
【請求項9】
前記潤滑制御弁部は、前記潤滑分岐油路から前記潤滑油路へ流れる油の流量を、第一流量と、当該第一流量より少ない第二流量と、で切り替える制御を行う請求項、又はに記載の油供給装置。
【請求項10】
前記分岐油路は、前記第二逆止弁の下流の油路を介することなく前記潤滑油路に接続されている請求項に記載の油供給装置。
【請求項11】
前記連通状態制御弁は、前記分岐油路と前記潤滑油路とが連通する状態と、前記分岐油路と前記潤滑油路とが非連通となる状態とを切り替える制御を行う請求項10に記載の油供給装置。
【請求項12】
前記回転電機は、前記車両用駆動装置の動力伝達経路における前記入力部材と前記変速装置との間に駆動連結され、前記切離用係合装置は、前記動力伝達経路における前記入力部材と前記回転電機との間に設けられ、前記第一連動部材は、前記入力部材と常時連結された部材であり、前記第二連動部材は、前記回転電機と常時連結された部材である請求項1に記載の油供給装置。
【請求項13】
記回転電機は、前記変速装置を介することなく車輪に駆動連結され、前記第一連動部材は、前記入力部材と常時連結された部材であり、前記第二連動部材は、前記出力部材と常時連結された部材である請求項に記載の油供給装置。
【請求項14】
前記第一油圧ポンプは、前記第一連動部材と前記第二連動部材とのうちの回転速度の高い方の部材により駆動される請求項1から13のいずれか一項に記載の油供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪駆動用の回転電機と、車輪に駆動連結される出力部材と、変速用係合装置を備えると共に少なくとも入力部材の回転を変速して出力部材に伝達する変速装置と、入力部材を変速装置から切り離す切離用係合装置とを備える車両用駆動装置に、油を供給する油供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような車両用駆動装置においては、回転電機のトルクのみにより車両を走行させる電動走行モードを実行する際に、切離用係合装置を解放状態に制御することで、内燃機関を車輪から切り離して内燃機関の引き摺り損失に起因するエネルギ損失を抑制することができる。このような車両用駆動装置として、例えば、独国特許出願公開第102009042933号明細書(特許文献1)に記載されたものが知られている。
【0003】
ところで、特許文献1に記載の構成では、例えば切離用係合装置を滑り係合状態に制御した状態で内燃機関のトルクを車輪に伝達させて車両を走行させる場合に、車両用駆動装置が必要とする油量が多くなり、内燃機関又は回転電機により駆動される油圧ポンプは、この場合の油量に応じて設計される。電動走行モードにより車両を走行させる場合には、車両用駆動装置が必要とする油量は少なくなるが、特許文献1に記載の構成では、この場合でも上記のように設計された比較的大型の油圧ポンプを駆動する必要がある。そのため、車両用駆動装置が電動走行モードにおいて必要とする油量に応じて設計された油圧ポンプを駆動する場合に比べて、油圧ポンプを駆動するために大きなトルクが必要となり、エネルギ効率がその分だけ低下する。この点で、特許文献1の技術には改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102009042933号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、係合装置を滑り係合状態に制御した状態で内燃機関のトルクを車輪に伝達させる場合に車両用駆動装置に対して適切な量の油を供給することを、油圧ポンプの大型化を抑制しつつ実現することが可能な油供給装置が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る油供給装置の第一の特徴構成は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪駆動用の回転電機と、車輪に駆動連結される出力部材と、変速用係合装置を備えると共に前記入力部材の回転又は前記回転電機の回転を変速して前記出力部材に伝達する変速装置と、前記入力部材を前記変速装置から切り離す切離用係合装置とを備える車両用駆動装置に、油を供給する油供給装置であって
前記入力部材に連動する第一連動部材又は前記回転電機に連動する第二連動部材により駆動される第一油圧ポンプと、
前記第一油圧ポンプの駆動力源とは異なる駆動力源により駆動される第二油圧ポンプと、
前記切離用係合装置及び前記変速用係合装置の少なくとも一方に対して潤滑のための油を供給する潤滑油路と、
前記切離用係合装置に対して係合の状態を制御するための油を供給する第一係合油路と、
前記変速用係合装置に対して係合の状態を制御するための油を供給する第二係合油路と、
前記第一油圧ポンプ及び前記第二油圧ポンプのそれぞれから吐出された油の各油路への供給状態を制御する供給状態制御部と、を備え、
前記第一係合油路及び前記第二係合油路の双方に対して前記第二油圧ポンプから吐出された油は供給されずに前記第一油圧ポンプから吐出された油が供給されると共に、前記潤滑油路に対して少なくとも前記第二油圧ポンプから吐出された油が供給される状態が第一供給状態であり、
前記第一係合油路に対して油が供給されず、前記第二係合油路と前記潤滑油路に対して前記第一油圧ポンプと前記第二油圧ポンプの内のいずれか一方から吐出された油が供給される状態が第二供給状態であり、
前記供給状態制御部は、前記切離用係合装置及び前記変速用係合装置の少なくとも一方を滑り係合状態に制御して前記入力部材の回転を前記出力部材に伝達する場合に、前記第一供給状態とし、前記切離用係合装置を解放状態に制御して前記回転電機の出力トルクを車輪に伝達させる場合に、前記第二供給状態とする点にある。
【0007】
本発明に係る油供給装置の第二の特徴構成は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪駆動用の回転電機と、車輪に駆動連結される出力部材と、変速用係合装置を備えると共に前記入力部材の回転を変速して前記出力部材に伝達する変速装置と、前記入力部材を前記変速装置から切り離す切離用係合装置とを備える車両用駆動装置に、油を供給する油供給装置であって、
前記入力部材に連動する第一連動部材又は前記回転電機に連動する第二連動部材により駆動される第一油圧ポンプと、
前記第一油圧ポンプの駆動力源とは異なる駆動力源により駆動される第二油圧ポンプと、
前記切離用係合装置及び前記変速用係合装置の少なくとも一方に対して潤滑のための油を供給する潤滑油路と、
前記切離用係合装置に対して係合の状態を制御するための油を供給する第一係合油路と、
前記変速用係合装置に対して係合の状態を制御するための油を供給する第二係合油路と、
前記第一油圧ポンプ及び前記第二油圧ポンプのそれぞれから吐出された油の各油路への供給状態を制御する供給状態制御部と、を備え、
前記第一係合油路及び前記第二係合油路の双方に対して前記第二油圧ポンプから吐出された油は供給されずに前記第一油圧ポンプから吐出された油が供給されると共に、前記潤滑油路に対して少なくとも前記第二油圧ポンプから吐出された油が供給される状態が第一供給状態であり、
前記第一係合油路と前記第二係合油路に対して油が供給されず、前記潤滑油路に対して前記第一油圧ポンプと前記第二油圧ポンプの内のいずれか一方から吐出された油が供給される状態が第二供給状態であり、
前記供給状態制御部は、前記切離用係合装置及び前記変速用係合装置の少なくとも一方を滑り係合状態に制御して前記入力部材の回転を前記出力部材に伝達する場合に、前記第一供給状態とし、前記切離用係合装置を解放状態に制御して前記回転電機の出力トルクを車輪に伝達させる場合に、前記第二供給状態とする点にある。
【0008】
本願において、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等が含まれていてもよい。
また、本願において「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
また、本願において「連動」とは、2つの回転要素間で何らかの部材を介して駆動力が伝達され、一方の回転要素の回転に応じて他方の回転要素も回転する状態を指す。
【0009】
切離用係合装置及び変速用係合装置の少なくとも一方を滑り係合状態に制御して入力部材の回転を出力部材に伝達する場合には、比較的多量の油を潤滑油路に対して供給する必要がある。上記の特徴構成によれば、このような制御を実行する場合に、供給状態制御部により油の供給状態が第一供給状態に制御される。この第一供給状態では、第一係合油路及び第二係合油路の双方に対して第一油圧ポンプから吐出された油が供給されると共に、潤滑油路に対して少なくとも第二油圧ポンプから吐出された油が供給される。すなわち、第一係合油路及び第二係合油路の双方に対して供給する油を吐出する第一油圧ポンプとは別の第二油圧ポンプによって、潤滑油路に必要な油の少なくとも一部を供給することができるため、その分だけ第一油圧ポンプの小型化を図りつつ、潤滑油路に対して適切な量の油を供給することが可能となる。なお、第二油圧ポンプについては、第一供給状態において第一係合油路や第二係合油路に対して供給する油を吐出する必要がないため、その分だけ小型化を図ることができる。
更に、上記の特徴構成によれば、切離用係合装置を解放状態に制御して回転電機の出力トルクを出力部材に伝達させる場合には、供給状態制御部により油の供給状態が第二供給状態に制御される。この第二供給状態では、上記第一の特徴構成によれば、第一係合油路に対して油が供給されず、第二係合油路と潤滑油路に対して第一油圧ポンプと第二油圧ポンプの内のいずれか一方から吐出された油が供給される状となり上記第二の特徴構成によれば、第一係合油路第二係合油路に対して油が供給されず、潤滑油路に対して第一油圧ポンプと第二油圧ポンプの内のいずれか一方から吐出された油が供給される状態となる
以上のように、上記の特徴構成によれば、切離用係合装置及び変速用係合装置の少なくとも一方を滑り係合状態に制御した状態で内燃機関の出力トルクを車輪に伝達させる場合に車両用駆動装置に対して適切な量の油を供給することを、第一油圧ポンプ及び第二油圧ポンプのそれぞれの小型化を図りつつ実現することができる。この結果、切離用係合装置を解放状態に制御して回転電機の出力トルクを車輪に伝達させる場合(すなわち電動走行モードを実行する場合)に駆動される第一油圧ポンプが小型化する分だけ、電動走行モードの実行時のエネルギ効率の向上を図ることもできる。
【0010】
ここで、前記供給状態制御部は、前記第一油圧ポンプの吐出口の下流に設けられた第一逆止弁と、前記第二油圧ポンプの吐出口の下流に設けられた第二逆止弁と、前記第一逆止弁の下流の油路と前記第二逆止弁の下流の油路との双方に接続されていると共に、前記第一係合油路と前記第二係合油路との双方に接続されている合流油路と、前記第二油圧ポンプの吐出口と前記第二逆止弁とを接続する接続油路から分岐した油路である分岐油路と、前記分岐油路と前記潤滑油路との連通状態を制御する連通状態制御弁と、前記連通状態制御弁の状態を制御する弁制御装置と、を備える構成とすると好適である。
【0011】
この構成によれば、分岐油路と潤滑油路とが連通するように連通状態制御弁を制御することで、第二油圧ポンプから吐出された油を、第二逆止弁や合流油路の上流側部分を介することなく、潤滑油路に対して供給することができる。よって、第二油圧ポンプの吐出口から潤滑油路まで油を供給する際の圧力損失や油の漏れを抑制することができ、この結果、第二油圧ポンプの小型化を図ることが容易となる。また、上記の構成によれば、第一油圧ポンプの状態に関係なく、第二油圧ポンプによって切離用係合装置及び変速用係合装置の少なくとも一方に対して潤滑のための油を供給することができる。
【0012】
上記のように、前記供給状態制御部が、前記第一逆止弁と、前記第二逆止弁と、前記合流油路と、前記分岐油路と、前記連通状態制御弁と、前記弁制御装置と、を備える構成において、前記供給状態制御部は、前記合流油路から分岐して前記潤滑油路に接続されている潤滑分岐油路を更に備え、前記分岐油路は前記潤滑分岐油路を介することなく前記潤滑油路に接続されており、前記連通状態制御弁は、前記分岐油路と前記潤滑油路との連通状態を制御する分岐制御弁部と、前記潤滑分岐油路と前記潤滑油路との連通状態を制御する潤滑制御弁部と、を備える構成とすると好適である。
【0013】
この構成によれば、分岐油路が潤滑油路に連通するように分岐制御弁部を制御すると共に、潤滑分岐油路が潤滑油路に連通するように潤滑制御弁部を制御することで、第一油圧ポンプから吐出された油と第二油圧ポンプから吐出された油との双方を、潤滑油路に対して供給することができる。よって、潤滑油路に対して適切な量の油を供給することが容易となる。また、この構成によれば、分岐油路が、第一係合油路と第二係合油路との双方に接続される合流油路を介することなく、更には比較的高い油圧が供給される潤滑分岐油路も介することなく、潤滑油路に接続されているため、分岐油路から潤滑油路に油を供給する際に第二油圧ポンプに要求される吐出圧を低く抑えることが可能となる。この結果、第二油圧ポンプの小型化を図ることができ、或いは、第二油圧ポンプから多くの量の油を潤滑油路に供給することができる分だけ、第一油圧ポンプの小型化を図ることができる。
【0014】
上記のように、前記連通状態制御弁が前記分岐制御弁部を備える構成において、前記分岐制御弁部は、前記分岐油路と前記潤滑油路とが連通する状態と、前記分岐油路と前記潤滑油路とが非連通となる状態とを切り替える制御を行う構成とすると好適である。
【0015】
この構成によれば、第一油圧ポンプが停止している状態において、第二油圧ポンプから吐出された油を、第二逆止弁を介して合流油路に供給することが必要な場合に、分岐油路と潤滑油路とが非連通の状態となるように分岐制御弁部を制御することで、第二油圧ポンプから吐出された油を効率的に合流油路に供給することができる。
【0016】
上記のように、前記供給状態制御部が、前記第一逆止弁と、前記第二逆止弁と、前記合流油路と、前記分岐油路と、前記連通状態制御弁と、前記弁制御装置と、を備える構成において、前記供給状態制御部は、前記合流油路から分岐して前記潤滑油路に接続されている潤滑分岐油路を更に備え、前記分岐油路は前記潤滑分岐油路に接続されており、前記連通状態制御弁は、前記分岐油路と前記潤滑分岐油路との連通状態を制御する分岐制御弁部を備える構成とすると好適である。
【0017】
この構成によれば、分岐油路が潤滑分岐油路を介して潤滑油路に連通するように連通状態制御弁を制御することで、第一油圧ポンプから吐出された油と第二油圧ポンプから吐出された油との双方を、潤滑油路に対して供給することができる。よって、潤滑油路に対して適切な量の油を供給することが容易となる。また、この構成によれば、分岐油路が、第一係合油路と第二係合油路との双方に接続される合流油路を介することなく潤滑油路に接続されるため、分岐油路から潤滑油路に油を供給する際に第二油圧ポンプに要求される吐出圧を低く抑えることが可能となる。この結果、第二油圧ポンプの小型化を図ることができ、或いは、第二油圧ポンプから多くの量の油を潤滑油路に供給することができる分だけ、第一油圧ポンプの小型化を図ることができる。
【0018】
上記のように、前記連通状態制御弁が前記分岐制御弁部を備える構成において、前記連通状態制御弁は、更に、前記潤滑分岐油路と前記潤滑油路との連通状態を制御する潤滑制御弁部を備える構成とすると好適である。
【0019】
この構成によれば、潤滑油路に対して供給される油の流量を制御することが容易となる。よって、切離用係合装置及び変速用係合装置の少なくとも一方への供給の必要性に応じて、適切な量の油を潤滑油路に対して供給することができる。
【0020】
上記のように、前記連通状態制御弁が前記分岐制御弁部を備える構成において、前記分岐制御弁部は、前記分岐油路と前記潤滑分岐油路とが連通する状態と、前記分岐油路と前記潤滑分岐油路とが非連通となる状態とを切り替える制御を行う構成とすると好適である。
【0021】
この構成によれば、第一油圧ポンプが停止している状態において、第二油圧ポンプから吐出された油を、第二逆止弁を介して合流油路に供給することが必要な場合に、分岐油路と潤滑分岐油路とが非連通の状態となるように分岐制御弁部を制御することで、第二油圧ポンプから吐出された油を効率的に合流油路に供給することができる。
【0022】
上記のように、前記連通状態制御弁が前記潤滑制御弁部を備える構成において、前記潤滑制御弁部は、前記潤滑分岐油路から前記潤滑油路へ流れる油の流量を、第一流量と、当該第一流量より少ない第二流量と、で切り替える制御を行う構成とすると好適である。
【0023】
この構成によれば、比較的簡素な構成の潤滑制御弁部を用いて、潤滑油路に対して供給される油の流量を制御することができる。そして、切離用係合装置及び変速用係合装置の少なくとも一方への供給の必要性に応じて、適切な量の油を潤滑油路に対して供給することができる。
【0024】
上記のように、前記供給状態制御部が、前記第一逆止弁と、前記第二逆止弁と、前記合流油路と、前記分岐油路と、前記連通状態制御弁と、前記弁制御装置と、を備える構成において、前記分岐油路は、前記第二逆止弁の下流の油路を介することなく前記潤滑油路に接続されている構成としても好適である。
【0025】
この構成によれば、第二逆止弁の下流の油路を、潤滑油路から分離することができるため、連通状態制御弁の構成を簡略化できると共に、それぞれの油路における油圧の制御性を高めることが容易となる。
【0026】
上記のように、前記分岐油路が、前記第二逆止弁の下流の油路を介することなく前記潤滑油路に接続されている構成において、前記連通状態制御弁は、前記分岐油路と前記潤滑油路とが連通する状態と、前記分岐油路と前記潤滑油路とが非連通となる状態とを切り替える制御を行う構成とすると好適である。
【0027】
この構成によれば、分岐油路が潤滑油路に連通するように連通状態制御弁を制御することで、第二油圧ポンプから吐出された油を潤滑油路に対して供給することができる。また、第一油圧ポンプが停止している状態において、第二油圧ポンプから吐出された油を、第二逆止弁を介して合流油路に供給することが必要な場合に、分岐油路と潤滑油路とが非連通の状態となるように連通状態制御弁を制御することで、第二油圧ポンプから吐出された油を効率的に合流油路に供給することができる。
【0028】
ここで、車両用駆動装置が、
(1)前記回転電機は、前記車両用駆動装置の動力伝達経路における前記入力部材と前記変速装置との間に駆動連結され、前記切離用係合装置は、前記動力伝達経路における前記入力部材と前記回転電機との間に設けられ、前記第一連動部材は、前記入力部材と常時連結された部材であり、前記第二連動部材は、前記回転電機と常時連結された部材である構成、又は、
(2)前記回転電機は、前記変速装置を介することなく車輪に駆動連結され、前記第一連動部材は、前記入力部材と常時連結された部材であり、前記第二連動部材は、前記出力部材と常時連結された部材である構成であると好適である。
【0029】
これら(1)又は(2)の構成によれば、内燃機関が停止中であって回転電機の出力トルクにより車輪を駆動する、いわゆる電動走行モードでは、直接又は車輪や出力部材を介して第二連動部材に伝達される回転電機の出力トルクにより第一油圧ポンプを駆動することができる。従って、内燃機関が停止した電動走行モードにおいても、第一油圧ポンプを駆動して係合装置の係合に必要な油圧や変速装置の潤滑に必要な油圧等を供給することができる。従って、第二油圧ポンプによる油の吐出量を少なく抑えることが可能となり、第二油圧ポンプの小型化を図ることができ、ひいては油供給装置の小型化を図ることができる。
【0030】
また、前記第一油圧ポンプは、前記第一連動部材と前記第二連動部材とのうちの回転速度の高い方の部材により駆動される構成とすると好適である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第一の実施形態に係る車両用駆動装置の概略構成(第一構成)を示す模式図である。
図2】本発明の第一の実施形態に係る油供給装置の概略構成を示す模式図である。
図3】第一油圧ポンプ及び第二油圧ポンプの油温と供給流量との関係の一例を示すグラフである。
図4】本発明の第一の実施形態に係る油供給装置の具体例の模式図である。
図5】本発明の第二の実施形態に係る油供給装置の概略構成を示す模式図である。
図6】本発明の第三の実施形態に係る油供給装置の具体例の模式図である。
図7】本発明の別の実施形態に係る車両用駆動装置の概略構成(第二構成)を示す模式図である。
図8】本発明の別の実施形態に係る車両用駆動装置の概略構成(第三構成)を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
1.第一の実施形態
本発明に係る油供給装置の第一の実施形態について、図1図4を参照して説明する。
【0033】
1−1.車両用駆動装置の全体構成
初めに、本実施形態に係る油供給装置10の油の供給対象である車両用駆動装置1の構成について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る車両用駆動装置1は、内燃機関Eに駆動連結される入力軸Iと、車輪Wに駆動連結される出力軸Oと、切離用係合装置C0と、車輪駆動用の回転電機MGと、変速装置TMと、ギヤ機構Cと、差動歯車装置DFとを備えている。切離用係合装置C0、回転電機MG、変速装置TM、ギヤ機構C、及び差動歯車装置DFは、入力軸Iと出力軸Oとを結ぶ動力伝達経路に設けられており、車両の動力伝達機構を構成する。また、これらは、入力軸Iの側から記載の順に設けられている。すなわち、入力軸Iと出力軸Oとを結ぶ動力伝達経路に、入力軸Iの側から順に、切離用係合装置C0、回転電機MG、及び変速装置TMが設けられている。本実施形態では、入力軸Iが本発明における「入力部材」に相当し、出力軸Oが本発明における「出力部材」に相当する。
【0034】
内燃機関Eは、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等)である。本実施形態では、入力軸Iが、内燃機関Eの出力軸(クランクシャフト等)と一体回転するように駆動連結されている。入力軸Iが、ダンパ等を介して内燃機関Eの出力軸に駆動連結された構成とすることも可能である。回転電機MGは、ケース(図示せず)に固定されたステータStと、ステータStに対して回転可能に支持されたロータRoとを有し、本実施形態では、ロータRoは、ステータStの径方向内側に配置されている。本実施形態では、回転電機MGには、第四潤滑油路64及び第五潤滑油路65を介して冷却のための油が供給される。具体的には、第四潤滑油路64を介して供給された油は、回転電機MGに対して上側から重力を利用して供給され、当該油により例えばステータStのコイルエンド部等が冷却される。また、第五潤滑油路65を介して供給された油は、回転電機MGに対して径方向内側(軸心側)から遠心力を利用して供給され、当該油により例えばロータRoに備えられた永久磁石やステータStのコイルエンド部等が冷却される。本実施形態では、回転電機MGのロータRoは、ロータ支持部材16を介して中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている。
【0035】
切離用係合装置C0は、入力軸Iを変速装置TMから切り離すための係合装置である。本実施形態では、入力軸Iと変速装置TMとの間の動力伝達経路に回転電機MGが設けられ、切離用係合装置C0は、入力軸Iと回転電機MGとの間の動力伝達経路に設けられている。従って、ここでは、切離用係合装置C0は、入力軸Iを回転電機MG及び変速装置TMから切り離すための係合装置となっている。具体的には、切離用係合装置C0は、入力軸Iに駆動連結された入力側係合部材と、回転電機MGのロータRoに駆動連結された出力側係合部材とを有する。切離用係合装置C0が係合した状態では、内燃機関Eと回転電機MG及び中間軸Mとの間での連結が維持される状態となり、切離用係合装置C0が解放した状態(解放状態)では、内燃機関Eと回転電機MG及び中間軸Mとの間での連結が解除された状態となる。
【0036】
ここで、係合装置について「係合した状態」とは、係合装置に伝達トルク容量が生じている状態、すなわち、係合装置の伝達トルク容量が零より大きい状態である。「係合した状態」には、係合装置の係合部材間に回転速度差がない「直結係合状態」と、係合装置の係合部材間に回転速度差がある「滑り係合状態」とが含まれる。また、係合装置について「解放状態」とは、係合装置に伝達トルク容量が生じていない状態、すなわち、係合装置の伝達トルク容量が零の状態である。なお、係合装置が摩擦係合装置である場合には、制御装置により伝達トルク容量を生じさせる指令が出されていないでも、係合部材(摩擦部材)同士の引き摺りによって伝達トルク容量が生じる場合がある。本明細書では、伝達トルク容量を生じさせる指令が出されていない場合に当該引き摺りによって伝達トルク容量が生じている状態も、「解放状態」に含む。
【0037】
切離用係合装置C0は、供給される油圧に応じて動作する油圧サーボ機構を備えた油圧駆動式の係合装置である。本実施形態では、切離用係合装置C0は、互いに係合する係合部材間に発生する摩擦力によりトルクの伝達を行う摩擦係合装置であり、具体的には、湿式多板クラッチ機構を備えた湿式の摩擦係合装置である。図示は省略するが、切離用係合装置C0は、係合の状態を制御するための油が供給される作動油圧室を備えている。作動油圧室には、第一係合油路51を介して油が供給される。作動油圧室の油圧を制御して、係合部材(摩擦部材)を押圧するピストンを摺動させることで、切離用係合装置C0の係合の状態が制御される。
【0038】
また、切離用係合装置C0には、第一潤滑油路61を介して潤滑のための油が供給される。第一潤滑油路61を介して供給された油は、切離用係合装置C0の係合部材に供給され、係合部材の表面を流れる油により係合部材が潤滑されると共に、当該油により係合部材が冷却される。本実施形態では、第一潤滑油路61の下流側に接続される油路は、切離用係合装置C0の係合部材に対して径方向内側(軸心側)から遠心力を利用して油を供給するように形成されている。そして、係合部材を潤滑した後の油は、例えば排出孔や排出油路等を介して切離用係合装置C0の外部に排出され、油貯留部(図示せず)へ戻される。油貯留部は、例えばオイルパン等により構成される。
【0039】
変速装置TMは、変速用係合装置C1を備えると共に、少なくとも入力軸Iの回転を変速して出力軸Oに伝達する装置である。本実施形態では、変速装置TMは、変速比を段階的に或いは無段階に変更可能な機構(例えば自動有段変速機構や自動無段変速機構等)で構成され、中間軸M(変速入力軸)の回転速度を現時点の変速比で変速して、ギヤ機構Cへ伝達する。すなわち、変速装置TMは、入力軸I又は回転電機MGの回転を変速して出力軸Oに伝達する。本実施形態では、変速装置TMは、複数の変速段を形成するために、一又は二以上の遊星歯車機構等の歯車機構と、この歯車機構の回転要素の係合又は解放を行い変速段を切り替えるための変速用係合装置C1と、を備えている。変速装置TMは複数の変速用係合装置C1を備え、当該複数の変速用係合装置C1のそれぞれの係合の状態を制御することにより、複数の変速段が切り替えられる。なお、図1では、複数の変速用係合装置C1のうちの1つのみを示している。変速装置TMには、第三潤滑油路63を介して潤滑のための油が供給される。第三潤滑油路63を介して供給された油は、変速装置TMが備える歯車機構や軸受等の潤滑及び冷却に用いられる。
【0040】
変速用係合装置C1は、油圧駆動式の係合装置であり、本実施形態では、摩擦係合装置である。変速用係合装置C1は、例えば、湿式多板クラッチ機構を備えた湿式の摩擦係合装置とされる。図示は省略するが、変速用係合装置C1は、係合の状態を制御するための油が供給される作動油圧室を備え、当該作動油圧室には、第二係合油路52を介して油が供給される。作動油圧室の油圧を制御することで、変速用係合装置C1の係合の状態が制御される。
【0041】
ギヤ機構C(本例ではカウンタギヤ機構)は、差動歯車装置(出力用差動歯車装置)DFを介して左右2つの出力軸Oに駆動連結されており、変速装置TMの側からギヤ機構Cに伝達された回転及びトルクは、差動歯車装置DFを介して左右2つの出力軸O(すなわち、左右2つの車輪W)に分配されて伝達される。これにより、車両用駆動装置1は、内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方のトルクを車輪Wに伝達させて車両を走行させることができる。すなわち、この車両用駆動装置1は、ハイブリッド車両用の駆動装置として構成され、具体的には、1モータパラレル方式のハイブリッド駆動装置として構成されている。
【0042】
1−2.油供給装置の構成
次に、本発明の要部である油供給装置の構成について説明する。油供給装置10は、車両用駆動装置1に油を供給する装置である。図2に示すように、油供給装置10は、第一油圧ポンプ21と、第二油圧ポンプ22と、第一潤滑油路61と、第一係合油路51と、第二係合油路52と、第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22のそれぞれから吐出された油の各油路への供給状態を制御する供給状態制御部13とを備えている。本実施形態では、油供給装置10は、更に、図1に示すように、変速装置TMに対して潤滑のための油を供給する第三潤滑油路63と、回転電機MGに対して冷却のための油を供給する第四潤滑油路64及び第五潤滑油路65とを備えるが、図2では、簡素化のため、これらの第三潤滑油路63、第四潤滑油路64、及び第五潤滑油路65については、図示を省略している。
【0043】
第一油圧ポンプ21は、車輪Wの駆動力としての内燃機関E又は回転電機MGにより駆動される油圧ポンプ(機械式ポンプ)である。第一油圧ポンプ21は、入力軸Iに連動する第一連動部材17及び回転電機MGに連動する第二連動部材18のうちの回転速度の高い方の部材により駆動されるように構成されている。本実施形態では、第一連動部材17は、入力軸Iと常時連結された部材であり、ここでは入力軸Iそのものが該当する。また、本実施形態では、第二連動部材18は、回転電機MGと常時連結された部材であり、ここではロータ支持部材16が該当する。図1に示すように、第一油圧ポンプ21を駆動する駆動部材2は、第一ワンウェイクラッチ11を介して入力軸I(第一連動部材17)に駆動連結されていると共に、第二ワンウェイクラッチ12を介してロータ支持部材16(第二連動部材18)に駆動連結されている。そして、駆動部材2に対する入力軸Iの相対回転の規制方向と、駆動部材2に対するロータ支持部材16の相対回転の規制方向とが互いに同一方向となるように、第一ワンウェイクラッチ11及び第二ワンウェイクラッチ12が構成されている。よって、第一油圧ポンプ21は、入力軸Iとロータ支持部材16とのうちの規制方向側への回転速度の高い方の部材により駆動される。すなわち、第一油圧ポンプ21は、内燃機関Eから入力軸Iを介して第一ワンウェイクラッチ11に伝達される回転と、回転電機MGからロータ支持部材16を介して第二ワンウェイクラッチ12に伝達される回転とのうちの、回転速度の高い方により駆動される。なお、ここでの回転速度の高低の比較は、同一部材に伝達された場合の回転速度(換算回転速度)により行う。すなわち、第一油圧ポンプ21は、入力軸I及び回転電機MGのうちの、同一部材(ここでは第一ワンウェイクラッチ11及び第二ワンウェイクラッチ12の双方に駆動連結された駆動部材2)に伝達された場合の回転速度(換算回転速度)の高い部材により駆動される。図1に示す例では、第一油圧ポンプ21は、入力軸Iや回転電機MGとは別軸上に配置されており、第一油圧ポンプ21の駆動軸21bは、スプロケット及びチェーンを介して駆動部材2と連動して回転するように駆動連結されている。第一油圧ポンプ21が入力軸Iや回転電機MGと同軸上に配置された構成とすることも可能である。
【0044】
第二油圧ポンプ22は、第一油圧ポンプ21の駆動力源とは異なる駆動力源により駆動される油圧ポンプである。本実施形態では、第二油圧ポンプ22は、専用の駆動力源により駆動される。ここで、専用の駆動力源とは、第二油圧ポンプ22の駆動専用に設けられる駆動力源である。本実施形態では、図1に示すように、第二油圧ポンプ22は、専用の駆動力源としての回転電機(電動モータ23)により駆動される電動ポンプである。図示は省略するが、第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22のそれぞれは、油貯留部(例えばオイルパン等)にストレーナを介して接続された吸入口を備え、油貯留部に貯留された油を吸入口から吸引して油圧を発生させる。第一油圧ポンプ21や第二油圧ポンプ22として、例えば、内接歯車ポンプ、外接歯車ポンプ、或いはベーンポンプ等を用いることができる。
【0045】
第一潤滑油路61は、切離用係合装置C0に対して潤滑のための油を供給する油路である。上述したように、本実施形態では、第一潤滑油路61の下流側に接続される油路は、切離用係合装置C0の係合部材に対して径方向内側(軸心側)から油を供給するように形成されている。後述するように、第一潤滑油路61には、供給状態制御部13が実現する供給状態に応じて、第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22の内の一方又は双方から吐出された油が供給される。本実施形態では、第一潤滑油路61が本発明における「潤滑油路」に相当する。
【0046】
第一係合油路51は、切離用係合装置C0に対して係合の状態を制御するための油を供給する油路である。この第一係合油路51は、上流側の合流油路43に対して第一供給制御弁55を介して接続されている。第一係合油路51の下流側に接続される油路は、切離用係合装置C0の作動油圧室に接続されている。ここで、第一供給制御弁55は、上流側からの油圧(本実施形態ではライン圧)を調圧して作動油圧室へ供給する油圧を制御する調圧弁(例えばリニアソレノイドバルブ)であり、後述する弁制御装置14によって第一供給制御弁55の出力油圧が制御されることにより、第一係合油路51に供給される油圧が制御され、切離用係合装置C0の係合の状態が制御される。例えば、回転電機MGのトルクのみによって車両を走行させる電動走行モードの実行中は、切離用係合装置C0は基本的に解放状態に制御される。内燃機関E及び回転電機MGの双方のトルクによって車両を走行させるハイブリッド走行モードの実行中は、切離用係合装置C0は基本的に直結係合状態に制御される。また、例えば、坂道等において内燃機関Eのトルクを車輪Wに伝達させた状態で車両を停止させておく場合や、内燃機関Eのトルクのみによって車両を発進させる場合には、切離用係合装置C0及び変速用係合装置C1の少なくとも一方を滑り係合状態に制御する必要がある。本実施形態では、このような場合に、少なくとも切離用係合装置C0(基本的に切離用係合装置C0のみ)を滑り係合状態に制御するように構成されている。
【0047】
第二係合油路52は、変速装置TMが備える複数の変速用係合装置C1のそれぞれに対して係合の状態を制御するための油を供給する油路である。この第二係合油路52は、上流側の合流油路43に対して第二供給制御弁56を介して接続されている。第二係合油路52の下流側に接続される油路は、変速用係合装置C1の作動油圧室に接続されている。上述したように、変速装置TMは複数の変速用係合装置C1を備えており、油供給装置10は、変速用係合装置C1と同じ数の第二係合油路52を備えている。なお、図2では、複数の変速用係合装置C1のうちの1つのみを代表的に示すと共に、当該一つの変速用係合装置C1に接続される一つの第二係合油路52のみを示している。ここで、第二供給制御弁56は、上流側からの油圧(本実施形態ではライン圧)を調圧して作動油圧室へ供給する油圧を制御する調圧弁(例えばリニアソレノイドバルブ)であり、後述する弁制御装置14によって第二供給制御弁56の出力油圧が制御されることにより、第二係合油路52に供給される油圧が制御され、変速用係合装置C1の係合の状態が制御される。
【0048】
供給状態制御部13は、上述した第一供給制御弁55及び第二供給制御弁56に加えて、図2に示すように、第一逆止弁31と、第二逆止弁32と、合流油路43と、調圧装置80と、分岐油路45と、連通状態制御弁83と、弁制御装置14とを備えている。本実施形態では、供給状態制御部13は、更に、潤滑分岐油路53を備えている。
【0049】
第一逆止弁31は、第一油圧ポンプ21の吐出口である第一吐出口21aの下流に設けられ、第一油圧ポンプ21から吐出される油の流路である第一吐出油路41において、上流側へ向かう油の流通を規制する。すなわち、第一逆止弁31は、第一吐出油路41における油の逆流を規制(実質的に防止)する。第二逆止弁32は、第二油圧ポンプ22の吐出口である第二吐出口22aの下流に設けられ、第二油圧ポンプ22から吐出される油の流路である第二吐出油路42において、上流側へ向かう油の流通を規制する。すなわち、第二逆止弁32は、第二吐出油路42における油の逆流を規制(実質的に防止)する。
【0050】
合流油路43は、第一逆止弁31の下流の油路と第二逆止弁32の下流の油路との双方に接続されると共に、第一供給制御弁55を介して第一係合油路51に接続され、第二供給制御弁56を介して第二係合油路52に接続される油路である。合流油路43は、第一吐出油路41と第二吐出油路42とが合流して形成されており、第一吐出油路41と第二吐出油路42とは、合流油路43の上流側に対して互いに並列に接続されている。また、合流油路43の下流側に対して、第一係合油路51と第二係合油路52とが互いに並列に接続されている。
【0051】
潤滑分岐油路53は、合流油路43から分岐部53aにおいて分岐して、第一潤滑油路61に接続される油路である。そして、第二吐出口22aと第二逆止弁32とを接続する接続油路44(言い換えれば、第二吐出油路42における第二逆止弁32より上流側の部分)から分岐する油路である分岐油路45が、潤滑分岐油路53に接続されている。すなわち、分岐油路45は、合流油路43を経由せずに(すなわち、合流油路43をバイパスして)潤滑分岐油路53に連通するように構成されている。なお、分岐油路45は、潤滑分岐油路53における第一潤滑油路61との接続部よりも上流側の接続部45bにおいて、潤滑分岐油路53に接続されている。このような分岐油路45を設けることで、後述するように、第二油圧ポンプ22が吐出した油を、合流油路43を介することなく、第一潤滑油路61に供給することが可能となっている。
【0052】
調圧装置80は、合流油路43における少なくとも第一係合油路51及び第二係合油路52の上流側部分の油圧を調整する装置である。具体的には、調圧装置80は、合流油路43の上記部分の油圧を、ライン圧に制御する。そして、第一係合油路51及び第二係合油路52に対して、調圧装置80により調圧された油圧(すなわち、ライン圧)が供給される。図2に示す例では、調圧装置80により調圧された油圧が潤滑分岐油路53に供給される場合を例として示しているが、後述する図4に示す具体例のように、調圧装置80とは別に、潤滑分岐油路53における少なくとも分岐油路45の接続部45bを含む部分の油圧を調整する調圧装置(図4に示す例では第二調圧弁82)を設けても良い。
【0053】
連通状態制御弁83は、分岐油路45と第一潤滑油路61との連通状態を制御する弁である。連通状態制御弁83の状態は、弁制御装置14により制御される。弁制御装置14は、連通状態制御弁83の状態に加えて、第一係合油路51の上流に設けられた第一供給制御弁55の状態や、第二係合油路52の上流に設けられた第二供給制御弁56の状態も制御する。
【0054】
弁制御装置14は、CPU等の演算処理装置を中核部材として備えると共に、RAMやROM等の記憶装置等を有して構成される。そして、ROM等に記憶されたソフトウェア(プログラム)又は別途設けられた演算回路等のハードウェア、或いはそれらの両方により、弁制御装置14が実行する各機能が実現される。詳細は省略するが、弁制御装置14は、車両全体を統合して制御する車両制御ユニット(図示せず)との間で、互いに通信を行うように構成されており、弁制御装置14と車両制御ユニットとは、各種情報を共有すると共に協調制御を行うように構成されている。この車両制御ユニットは、弁制御装置14の他にも、回転電機MGの動作制御を行う回転電機制御装置や内燃機関Eの動作制御を行う内燃機関制御装置との間でも互いに通信を行うように構成されており、更に、車両に備えられた各種センサ(例えば、アクセル開度センサ、車速センサ、油温センサ等)による検出結果の情報を取得可能に構成されている。また、弁制御装置14は、直接或いは車両制御ユニットを介して、第二油圧ポンプ22の駆動力源である電動モータ23の動作制御を実行可能に構成されている。そして、弁制御装置14は、車両制御ユニットにより制御される車両用駆動装置1の制御状態に応じて、各弁の状態を制御すると共に、第二油圧ポンプ22の動作状態(例えば、作動電圧等)を制御する。
【0055】
本実施形態では、分岐油路45は、潤滑分岐油路53の接続部45bより下流側の部分を介して第一潤滑油路61に接続されているため、分岐油路45と第一潤滑油路61とが連通した状態は、分岐油路45と潤滑分岐油路53とを連通した状態に制御すると共に、潤滑分岐油路53と第一潤滑油路61とを連通した状態に制御することで実現される。このような連通状態の制御を可能とすべく、連通状態制御弁83は、図2に示すように、分岐油路45と潤滑分岐油路53との連通状態を制御する分岐制御弁部84と、潤滑分岐油路53と第一潤滑油路61との連通状態を制御する潤滑制御弁部85とを備えている。図2に示す例では、分岐制御弁部84と潤滑制御弁部85とが、互いに独立の弁として構成されている。
【0056】
分岐制御弁部84は、分岐油路45と潤滑分岐油路53とが連通する状態と、分岐油路45と潤滑分岐油路53とが非連通となる状態とを切り替える制御を行う。分岐制御弁部84は、弁制御装置14からの制御信号、或いは弁制御装置14に制御される他の弁(図示せず)からの信号油圧により制御される切換弁である。図2に示す例では、分岐制御弁部84は、分岐油路45に設けられている。分岐制御弁部84は、分岐油路45における分岐制御弁部84より上流側の部分に接続された入力ポート84aと、分岐油路45における分岐制御弁部84より下流側の部分に接続された出力ポート84bと、これらのポートが形成されたスリーブの内部を摺動する弁体(スプール)とを有する。弁制御装置14によって制御される弁体の位置に応じて、図2において実線で示す入力ポート84aと出力ポート84bとが連通する状態と、図2において破線で示す入力ポート84aと出力ポート84bとが非連通となる状態とが切り替えられる。入力ポート84aと出力ポート84bとが連通する状態では、分岐油路45と潤滑分岐油路53とが連通する状態となり、入力ポート84aと出力ポート84bとが非連通となる状態では、分岐油路45と潤滑分岐油路53とが非連通の状態となる。
【0057】
潤滑制御弁部85は、潤滑分岐油路53から第一潤滑油路61へ流れる油の流量を、第一流量と、当該第一流量より少ない第二流量と、で切り替える制御を行う。潤滑制御弁部85も、分岐制御弁部84と同様、弁制御装置14からの制御信号、或いは弁制御装置14に制御される他の弁(図示せず)からの信号油圧により制御される切換弁である。図2に示す例では、潤滑制御弁部85は、潤滑分岐油路53と第一潤滑油路61との接続部に設けられている。第二流量は、例えば、第一流量の10分の1の流量或いは20分の1の流量に設定される。また、第二流量を零に設定することも可能であり、この場合、潤滑制御弁部85は、潤滑分岐油路53と第一潤滑油路61とが連通する状態と、潤滑分岐油路53と第一潤滑油路61とが非連通となる状態とを切り替える制御を行うことになる。図2に示す例では、この後者の構成となっている。
【0058】
具体的には、図2に示す例では、潤滑制御弁部85は、潤滑分岐油路53に接続された入力ポート85aと、第一潤滑油路61に接続された出力ポート85bと、これらのポートが形成されたスリーブの内部を摺動する弁体(スプール)とを有する。弁制御装置14によって制御される弁体の位置に応じて、図2において実線で示す入力ポート85aと出力ポート85bとが連通する状態と、図2において破線で示す入力ポート85aと出力ポート85bとが非連通となる状態とが切り替えられる。入力ポート85aと出力ポート85bとが連通する状態では、潤滑分岐油路53と第一潤滑油路61とが連通する状態(言い換えれば、潤滑分岐油路53から第一潤滑油路61へ流れる油の流量が第一流量である状態)となり、入力ポート85aと出力ポート85bとが非連通となる状態では、潤滑分岐油路53と第一潤滑油路61とが非連通の状態(言い換えれば、潤滑分岐油路53から第一潤滑油路61へ流れる油の流量が第二流量である状態)となる。
【0059】
そして、弁制御装置14は、潤滑制御弁部85の状態を、切離用係合装置C0の制御状態に応じて制御する。本実施形態では、弁制御装置14は、切離用係合装置C0が滑り係合状態に制御される場合に、潤滑制御弁部85の状態を制御して、潤滑分岐油路53から第一潤滑油路61へ流れる油の流量が第一流量である状態に切り替える。これにより、切離用係合装置C0の発熱量が大きい場合には、潤滑分岐油路53から第一潤滑油路61に対して多くの油を供給して、切離用係合装置C0を適切に冷却することができる。なお、切離用係合装置C0が滑り係合状態に制御される場合には、内燃機関E及び回転電機MGの少なくとも一方が回転しているため、第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22のうちの少なくとも第一油圧ポンプ21が駆動される。そのため、第一潤滑油路61には、合流油路43及び潤滑分岐油路53を介して、第一油圧ポンプ21から吐出された油が供給される。また、第一油圧ポンプ21から吐出された油は、合流油路43を介して第一供給制御弁55及び第二供給制御弁56に対しても供給される。このとき、変速用係合装置C1は直結係合状態又は滑り係合状態に制御される。従って、第一供給制御弁55又は第二供給制御弁56を介して第一係合油路51及び第二係合油路52の双方に対して第一油圧ポンプ21から吐出された油が供給される。
【0060】
一方、弁制御装置14は、切離用係合装置C0が直結係合状態或いは解放状態に制御される場合に、潤滑制御弁部85の状態を制御して、潤滑分岐油路53から第一潤滑油路61へ流れる油の流量が第二流量(図2に示す例では零)である状態に切り替える。これにより、切離用係合装置C0の発熱量が小さい場合には、潤滑分岐油路53から第一潤滑油路61に対して供給する油の量を減らし、或いは零にすることで、切離用係合装置C0での油の撹拌抵抗により発生する引き摺りトルクを抑制することができる。また、第一油圧ポンプ21から吐出された油は、合流油路43を介して第一供給制御弁55及び第二供給制御弁56に対しても供給される。このとき、変速用係合装置C1は直結係合状態又は滑り係合状態に制御される。従って、切離用係合装置C0が解放状態に制御される場合には、第二供給制御弁56を介して第二係合油路52のみに対して第一油圧ポンプ21から吐出された油が供給され、切離用係合装置C0が直結係合状態に制御される場合には、第一供給制御弁55又は第二供給制御弁56を介して第一係合油路51及び第二係合油路52の双方に対して第一油圧ポンプ21から吐出された油が供給される。
【0061】
また、弁制御装置14は、分岐制御弁部84の状態を、切離用係合装置C0の制御状態に応じて制御する。本実施形態では、弁制御装置14は、切離用係合装置C0が滑り係合状態に制御される場合に、分岐制御弁部84の状態を制御して、分岐油路45と潤滑分岐油路53とが連通する状態に切り替える。この際、第二油圧ポンプ22も駆動され、第一潤滑油路61に対して、分岐油路45及び潤滑分岐油路53を介して、第二油圧ポンプ22から吐出された油が供給される。よって、切離用係合装置C0の発熱量が大きい場合に、第一油圧ポンプ21から吐出された油に加えて第二油圧ポンプ22から吐出された油を第一潤滑油路61に供給することができる。これにより、切離用係合装置C0の冷却性能を適切に確保しつつ、第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22のそれぞれの小型化を図ることが可能となっている。
【0062】
一方、弁制御装置14は、切離用係合装置C0が直結係合状態或いは解放状態に制御される場合に、分岐制御弁部84の状態を制御して、分岐油路45と潤滑分岐油路53とが非連通となる状態に切り替える。この際、第二油圧ポンプ22は基本的に停止される。なお、分岐油路45に別の油路(後述する図4に示す具体例では第四潤滑油路64)が接続されている場合には、第二油圧ポンプ22を駆動させて、第二油圧ポンプ22から吐出された油が、潤滑分岐油路53には供給されずに当該別の油路に供給される状態とすることもできる。
【0063】
以上のように、切離用係合装置C0が滑り係合状態に制御される場合には、弁制御装置14の制御により、第一係合油路51及び第二係合油路52の双方に対して第一油圧ポンプ21から吐出された油が供給されると共に、第一潤滑油路61に対して第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22の内の少なくとも第二油圧ポンプ22から吐出された油が供給される状態(第一供給状態)が実現される。なお、本実施形態では、第一供給状態において、第一潤滑油路61に対して第一油圧ポンプ21から吐出された油及び第二油圧ポンプ22から吐出された油の双方が供給される。そして、上述したように、本実施形態では、内燃機関Eのトルクのみによって車両を発進させる場合に、切離用係合装置C0を滑り係合状態に制御するように構成されている。この際、入力軸Iの回転が出力軸Oに伝達される。すなわち、弁制御装置14を有する供給状態制御部13は、内燃機関Eの回転運転中に切離用係合装置C0を滑り係合状態に制御する場合に、言い換えれば、切離用係合装置C0を滑り係合状態に制御して入力軸Iの回転を出力軸Oに伝達する場合に、第一供給状態とするように構成されている。
【0064】
ところで、一般的に、油温が高くなるに従って油の粘度が低下し、ポンプの内部、弁の内部、或いは油路の接続部等において油が漏れやすくなる。そのため、図3に模式的に示すように、第一油圧ポンプ21から車両用駆動装置1に供給することができる油の供給流量は、油温が高くなるに従って低下する傾向がある。これに対して、本実施形態では、第二油圧ポンプ22は、電動モータ23により駆動される電動ポンプである。そして、本実施形態では、電動モータ23として、回転電機MGより小型の回転電機を用いている。そのため、電動モータ23は、回転電機MG又は内燃機関Eに比べて長時間連続して出力可能なトルクの最大値が小さい。すなわち、電動モータ23は、回転電機MG及び内燃機関Eより出力可能トルクが低いが最高回転速度が高い高回転低トルク型の回転電機である。従って、第二油圧ポンプ22は、第一油圧ポンプ21に比べて、吐出圧が低いが供給流量を多く確保しやすい特性を有している。そのため、第二油圧ポンプ22については、油温が高く油の粘度が低下した状態でも、ポンプロータの回転速度を高くして供給流量を確保しやすく、一方、油温が低く油の粘度が高い状態では、ポンプロータの駆動トルクの不足により供給流量を確保することが困難となる。すなわち、図3に模式的に示すように、第二油圧ポンプ22から車両用駆動装置1に供給することができる油の供給流量は、油温が低くなるに従って低下する傾向がある。このような傾向に鑑みて、切離用係合装置C0が滑り係合状態に制御される場合には、基本的に分岐制御弁部84の状態を分岐油路45と潤滑分岐油路53とが連通する状態に切り替えるものの、油温が予め定められた閾値より低くなった場合には、分岐制御弁部84の状態を分岐油路45と潤滑分岐油路53とが非連通となる状態に切り替え、第二油圧ポンプ22を停止させる構成とすることもできる。
【0065】
第一油圧ポンプ21の吐出容量は、第二油圧ポンプ22の吐出容量よりも高く設定されている。そのため、第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22の双方が駆動されている場合には、第二逆止弁32は基本的に閉状態となり、第二油圧ポンプ22から吐出された油は、合流油路43には供給されず、基本的に分岐油路45にのみ供給される。すなわち、第一油圧ポンプ21が駆動している場合には、第二油圧ポンプ22の動作状態によらず、第一係合油路51及び第二係合油路52の双方に対して第一油圧ポンプ21から吐出された油が供給される。そして、例えば、切離用係合装置C0を解放状態に制御して回転電機MGのトルクを出力軸Oに伝達させる場合(すなわち、電動走行モードを実行する場合)には、第一油圧ポンプ21が回転電機MGにより駆動される。これにより、第二逆止弁32が閉状態となる。また、供給状態制御部13は、切離用係合装置C0を解放状態に制御して回転電機MGの出力トルクを出力軸Oに伝達させるために、第一供給制御弁55により第一係合油路51に油が供給されない状態とすると共に、第二供給制御弁56により第二係合油路52に対して第一油圧ポンプ21から吐出された油が供給される状態とする。すなわち、本実施形態では、供給状態制御部13は、切離用係合装置C0を解放状態に制御して回転電機MGのトルクを出力軸Oに伝達させる場合には、第二係合油路52に対して第一油圧ポンプ21から吐出された油が供給されると共に、第一係合油路51に対して油が供給されない状態(第二供給状態)とするように構成されている。
【0066】
ところで、内燃機関E及び回転電機MGの双方が回転していない状態では、第一油圧ポンプ21は駆動されないため、この状態で車両用駆動装置1に油を供給するためには、第二油圧ポンプ22を駆動する必要がある。このように、第一油圧ポンプ21が駆動されていない状態で第二油圧ポンプ22を駆動する場合には、弁制御装置14は、切離用係合装置C0の制御状態によらずに、分岐制御弁部84の状態を制御して、分岐油路45と潤滑分岐油路53とが非連通となる状態に切り替える。この場合、第一係合油路51及び第二係合油路52の双方に対して、合流油路43と第一供給制御弁55又は第二供給制御弁56とを介して第二油圧ポンプ22から吐出された油を供給することができる。従って、例えば、電動走行モードで車両を発進させる場合には、第一油圧ポンプ21の吐出圧がある程度高くなるまでの間は、第二油圧ポンプ22を作動させると共に分岐制御弁部84の状態を分岐油路45と潤滑分岐油路53とが非連通となる状態に切り替え、第二係合油路52に対して第二油圧ポンプ22から吐出された油を供給する。このとき第二油圧ポンプ22からの油圧により第一逆止弁31は閉状態となる。その後、回転電機MGの回転速度が上昇することに伴って、第一油圧ポンプ21の吐出圧が第二油圧ポンプ22の吐出圧より高くなると、第一逆止弁31が開状態、第二逆止弁32が閉状態となり、上述したような第二供給状態となる。
【0067】
1−3.油供給装置の具体例
次に、上記のような構成を備える油供給装置10の具体例について、図4を参照して説明する。図4に示すように、本具体例では、連通状態制御弁83が、分岐制御弁部84と潤滑制御弁部85とを一体的に備えた1つの切換弁とされている。そして、供給状態制御部13は、弁制御装置14により制御される制御弁89(図4の例ではソレノイドバルブ)を備え、連通状態制御弁83の状態は、制御弁89から入力される信号油圧に応じて切り替えられる。
【0068】
具体的には、連通状態制御弁83は、分岐油路45における連通状態制御弁83より上流側の部分に接続された第一入力ポート83aと、潤滑分岐油路53に接続された第二入力ポート83b及び第三入力ポート83cと、分岐油路45における連通状態制御弁83より下流側の部分に接続された第一出力ポート83dと、第五潤滑油路65に接続された第二出力ポート83eと、第一潤滑油路61に接続された第三出力ポート83fと、これらのポートが形成されたスリーブの内部を摺動する弁体(スプール)とを有する。そして、制御弁89によって制御される弁体の位置に応じて、図4に実線で示す第一入力ポート83aと第一出力ポート83dとが連通すると共に第二入力ポート83bと第三出力ポート83fとが連通する第一切替状態と、図4に破線で示す第二入力ポート83bと第二出力ポート83eとが連通すると共に第三入力ポート83cと第三出力ポート83fとが連通する第二切替状態とが切り替えられる。
【0069】
第一切替状態は、図2において分岐制御弁部84及び潤滑制御弁部85のそれぞれを実線で示す状態に切り替えた状態に相当し、分岐油路45と潤滑分岐油路53とが連通する状態となると共に、潤滑分岐油路53から第一潤滑油路61へ流れる油の流量が第一流量である状態となる。一方、第二切替状態は、図2において分岐制御弁部84及び潤滑制御弁部85のそれぞれを破線で示す状態に切り替えた状態に相当し、分岐油路45と潤滑分岐油路53とが非連通の状態となると共に、潤滑分岐油路53から第一潤滑油路61へ流れる油の流量が第二流量である状態となる。なお、本具体例では、第二流量は零より大きな値に設定される。具体的には、潤滑分岐油路53における第二入力ポート83bとの接続部分に第一オリフィス91を設け、潤滑分岐油路53における第三入力ポート83cとの接続部分に第一オリフィス91よりも径(油路径)の小さい第二オリフィス92を設けることにより、第二流量を第一流量よりも小さい値に設定している。
【0070】
また、本具体例では、第二切替状態において第二入力ポート83bと第二出力ポート83eとが連通するため、第五潤滑油路65に対して潤滑分岐油路53から油が供給される。この際の油の供給流量を設定するための第三オリフィス93が、第五潤滑油路65における第二出力ポート83eとの接続部分に設けられている。
【0071】
弁制御装置14による連通状態制御弁83の状態の制御については、図2の場合と同様であるため省略するが、本具体例では、分岐制御弁部84の状態と潤滑制御弁部85の状態とが連動して切り替えられる。そして、本具体例では、図2の場合とは異なり、切離用係合装置C0が直結係合状態或いは解放状態に制御されている場合(すなわち、第二切替状態に切り替えられている場合)であっても、第一油圧ポンプ21又は第二油圧ポンプ22から吐出された油が第一潤滑油路61に供給される。また、本具体例では、分岐油路45に、上流側へ向かう油の流通を規制する第三逆止弁33が設けられていると共に、分岐油路45には第四潤滑油路64が接続されている。そのため、連通状態制御弁83の状態によらず、第二油圧ポンプ22を駆動することで、第四潤滑油路64に対して油を供給することが可能となっており、回転電機MGに油を供給することが可能となっている。
【0072】
なお、本具体例では、調圧装置80として第一調圧弁81が設けられている。具体的には、第一調圧弁81は、合流油路43の油圧をライン圧に調圧する弁であり、潤滑分岐油路53における分岐部53aと接続部45bとの間に設けられている。また、本具体例では、第一調圧弁81からの余剰油の油圧をライン圧よりも低い設定油圧に調圧する第二調圧弁82が設けられている。第二調圧弁82は、潤滑分岐油路53の第一調圧弁81より下流側部分の油圧を上記設定油圧に調圧する弁であり、本具体例では、第二調圧弁82からの余剰油がクーラーを介して第三潤滑油路63に供給されるように構成されている。また、本具体例では、第一調圧弁81や第二調圧弁82は、調圧に伴うドレン油をサクション油路へ排出するように構成されている。サクション油路は、油を、第一油圧ポンプ21や第二油圧ポンプ22の吸入油路におけるストレーナより下流側に戻す油路である。
【0073】
以上のような構成を備えるため、本具体例では、分岐油路45が、潤滑分岐油路53における第二調圧弁82による調圧対象部分に接続される。よって、分岐油路45が、第一調圧弁81による調圧対象部分に接続される場合に比べて、第二油圧ポンプ22から吐出された油を分岐油路45を介して潤滑分岐油路53に供給する際に第二油圧ポンプ22に要求される吐出圧を低く抑えることができる。この結果、連通状態制御弁83を第一切替状態に切り替えて第一油圧ポンプ21から吐出された油と第二油圧ポンプ22から吐出された油との双方を第一潤滑油路61に供給する際に、第二油圧ポンプ22から多くの油を供給することが容易となっている。
【0074】
2.第二の実施形態
本発明に係る油供給装置の第二の実施形態について、図5を参照して説明する。本実施形態では、供給状態制御部13が潤滑分岐油路53を備えない点で、上記第一の実施形態とは異なる。以下では、上記第一の実施形態との相違点を中心に説明し、特に明記しない点については上記第一の実施形態と同様とする。
【0075】
図5に示すように、本実施形態では、分岐油路45が、第二逆止弁32の下流の油路(例えば合流油路43)を介することなく、第一潤滑油路61に接続されている。そして、本実施形態では、連通状態制御弁83は、分岐油路45と第一潤滑油路61とが連通する状態と、分岐油路45と第一潤滑油路61とが非連通となる状態とを切り替える制御を行う。具体的には、連通状態制御弁83は、分岐油路45と第一潤滑油路61との接続部に設けられている。連通状態制御弁83は、分岐油路45に接続された入力ポート83gと、第一潤滑油路61に接続された出力ポート83hと、これらのポートが形成されたスリーブの内部を摺動する弁体(スプール)とを有する。弁制御装置14によって制御される弁体の位置に応じて、図5において実線で示す入力ポート83gと出力ポート83hとが連通する状態と、図5において破線で示す入力ポート83gと出力ポート83hとが非連通となる状態とが切り替えられる。入力ポート83gと出力ポート83hとが連通する状態では、分岐油路45と第一潤滑油路61とが連通する状態となり、入力ポート83gと出力ポート83hとが非連通となる状態では、分岐油路45と第一潤滑油路61とが非連通の状態となる。
【0076】
弁制御装置14は、切離用係合装置C0が滑り係合状態に制御される場合に、連通状態制御弁83の状態を制御して、分岐油路45と第一潤滑油路61とが連通する状態に切り替える。この際、第二油圧ポンプ22も駆動され、第一潤滑油路61に対して、分岐油路45を介して、第二油圧ポンプ22から吐出された油が供給される。この際、上記第一の実施形態とは異なり、第一油圧ポンプ21から吐出された油は第一潤滑油路61には供給されない。すなわち、本実施形態では、第一供給状態において、第一潤滑油路61に対して、第一油圧ポンプ21から吐出された油及び第二油圧ポンプ22から吐出された油の内の、第二油圧ポンプ22から吐出された油のみが供給される。なお、図示は省略するが、第一潤滑油路61に、例えば、下流側へ流れる油の流量を、第一流量と、当該第一流量より少ない第二流量と、で切り替える制御を行う切換弁を設けることもできる。
【0077】
一方、弁制御装置14は、切離用係合装置C0が直結係合状態或いは解放状態に制御される場合に、連通状態制御弁83の状態を制御して、分岐油路45と第一潤滑油路61とが非連通の状態に切り替える。この際、第二油圧ポンプ22は基本的に停止される。また、弁制御装置14は、第一油圧ポンプ21が駆動されていない状態で第二油圧ポンプ22を駆動する場合に、基本的に、連通状態制御弁83の状態を制御して、分岐油路45と第一潤滑油路61とが非連通となる状態に切り替える。この場合、第二油圧ポンプ22から吐出された油は、第一潤滑油路61には供給されず、合流油路43と第一供給制御弁55又は第二供給制御弁56とを介して第一係合油路51及び第二係合油路52の双方に対して供給される。
【0078】
3.第三の実施形態
本発明に係る油供給装置の第三の実施形態について、図6を参照して説明する。上記第一及び第二の実施形態では基本的に切離用係合装置C0のみを滑り係合状態とすることを想定していたが、本実施形態では、車両用駆動装置1が、状況に応じて、切離用係合装置C0及び変速用係合装置C1の一方又は双方を滑り係合状態に制御して入力軸Iの回転を出力軸Oに伝達することができるように構成されている。そのため、本実施形態に係る油供給装置10は、切離用係合装置C0と変速用係合装置C1との双方に対して十分な量の潤滑油を供給することができるように構成されている。また、上記第一の実施形態では分岐油路45が潤滑分岐油路53を介して第一潤滑油路61に接続された構成となっていたが、本実施形態では、分岐油路45が潤滑分岐油路53を介することなく直接第一潤滑油路61及び第二潤滑油路62に接続された構成となっている。以下では、上述した第一の実施形態に係る図4に示す具体例との相違点を中心に説明し、特に明記しない点については上記第一の実施形態と同様とする。
【0079】
図6に示すように、本実施形態では、油供給装置10は、切離用係合装置C0に対して潤滑のための油を供給する第一潤滑油路61に加えて、変速用係合装置C1に対して潤滑のための油を供給する第二潤滑油路62を備えている。それに伴い、供給状態制御部13は、第一潤滑油路61への油の供給を制御する第一連通状態制御弁86と、第二潤滑油路62への油の供給を制御する第二連通状態制御弁94とを備えている。本実施形態では、第一潤滑油路61及び第二潤滑油路62の双方が本発明における「潤滑油路」に相当し、第一連通状態制御弁86及び第二連通状態制御弁94の双方が本発明における「連通状態制御弁」に相当する。
【0080】
本実施形態では、潤滑分岐油路53は、合流油路43から分岐部53aにおいて分岐した後、第一潤滑油路61及び第二潤滑油路62にそれぞれ接続される。すなわち、潤滑分岐油路53は、その下流側において、第一連通状態制御弁86を介して第一潤滑油路61に接続される油路と、第二連通状態制御弁94を介して第二潤滑油路62に接続される油路とに並列に分岐する。同様に、分岐油路45も、接続油路44から分岐した後、第一潤滑油路61及び第二潤滑油路62にそれぞれ接続される。すなわち、分岐油路45は、その下流側において、第一連通状態制御弁86を介して第一潤滑油路61に接続される油路と、第二連通状態制御弁94を介して第二潤滑油路62に接続される油路とに並列に分岐する。本実施形態では、分岐油路45は、接続油路44から分岐した後、潤滑分岐油路53を介することなく、第一潤滑油路61及び第二潤滑油路62にそれぞれ接続される。弁制御装置14は、第一連通状態制御弁86、第二連通状態制御弁94、第一供給制御弁55、第二供給制御弁56の状態を制御する。
【0081】
第一連通状態制御弁86は、切離用係合装置C0の潤滑用の油路である第一潤滑油路61への油の供給状態を制御する弁である。第一連通状態制御弁86は、分岐油路45と第一潤滑油路61との連通状態を制御する分岐制御弁部87と、潤滑分岐油路53と第一潤滑油路61との連通状態を制御する潤滑制御弁部88とを備えている。図6に示す例では、第一連通状態制御弁86は、分岐制御弁部87と潤滑制御弁部88とを一体的に備えた1つの切換弁とされている。分岐制御弁部87は、分岐油路45と第一潤滑油路61とが連通する状態と、分岐油路45と第一潤滑油路61とが非連通となる状態とを切り替える制御を行う。潤滑制御弁部88は、潤滑分岐油路53から第一潤滑油路61へ流れる油の流量を、第一流量と、当該第一流量より少ない第二流量と、で切り替える制御を行う。第一連通状態制御弁86の状態は、弁制御装置14により制御される制御弁89から入力される信号油圧に応じて切り替えられる。
【0082】
具体的には、第一連通状態制御弁86は、分岐油路45における第一連通状態制御弁86より上流側の部分に接続された第一入力ポート86aと、潤滑分岐油路53に接続された第二入力ポート86b及び第三入力ポート86cと、第一潤滑油路61に接続された第一出力ポート86dと、第五潤滑油路65に接続された第二出力ポート86eと、第一潤滑油路61に接続された第三出力ポート86fと、これらのポートが形成されたスリーブの内部を摺動する弁体(スプール)とを有する。そして、制御弁89によって制御される弁体の位置に応じて、図6に実線で示す第一入力ポート86aと第一出力ポート86dとが連通すると共に第二入力ポート86bと第三出力ポート86fとが連通する第一切替状態と、図6に破線で示す第二入力ポート86bと第二出力ポート86eとが連通すると共に第三入力ポート86cと第三出力ポート86fとが連通する第二切替状態とが切り替えられる。
【0083】
第一切替状態では、分岐油路45と第一潤滑油路61とが連通する状態となると共に、潤滑分岐油路53から第一潤滑油路61へ流れる油の流量が第一流量である状態となる。一方、第二切替状態では、分岐油路45と第一潤滑油路61とが非連通の状態となると共に、潤滑分岐油路53から第一潤滑油路61へ流れる油の流量が第二流量である状態となる。図4に示す例と同様、第二オリフィス92の径(油路径)を第一オリフィス91よりも小さく設定することにより、第二流量は第一流量よりも小さい値に設定されている。
【0084】
第二連通状態制御弁94は、変速用係合装置C1の潤滑用の油路である第二潤滑油路62への油の供給状態を制御する弁である。第二連通状態制御弁94は、分岐油路45と第二潤滑油路62との連通状態を制御する分岐制御弁部95と、潤滑分岐油路53と第二潤滑油路62との連通状態を制御する潤滑制御弁部96とを備えている。図6に示す例では、第二連通状態制御弁94は、分岐制御弁部95と潤滑制御弁部96とを一体的に備えた1つの切換弁とされている。分岐制御弁部95は、分岐油路45と第二潤滑油路62とが連通する状態と、分岐油路45と第二潤滑油路62とが非連通となる状態とを切り替える制御を行う。潤滑制御弁部96は、潤滑分岐油路53から第二潤滑油路62へ流れる油の流量を、第一流量と、当該第一流量より少ない第二流量と、で切り替える制御を行う。第二連通状態制御弁94の状態は、弁制御装置14により制御される制御弁90から入力される信号油圧に応じて切り替えられる。
【0085】
具体的には、第二連通状態制御弁94は、分岐油路45における第二連通状態制御弁94より上流側の部分に接続された第一入力ポート94aと、潤滑分岐油路53に接続された第二入力ポート94b及び第三入力ポート94cと、第二潤滑油路62に接続された第一出力ポート94dと、第二潤滑油路62に接続された第二出力ポート94fと、これらのポートが形成されたスリーブの内部を摺動する弁体(スプール)とを有する。そして、制御弁90によって制御される弁体の位置に応じて、図6に実線で示す第一入力ポート94aと第一出力ポート94dとが連通すると共に第二入力ポート94bと第二出力ポート94fとが連通する第一切替状態と、図6に破線で示す第三入力ポート94cと第二出力ポート94fとが連通する第二切替状態とが切り替えられる。
【0086】
第一切替状態では、分岐油路45と第二潤滑油路62とが連通する状態となると共に、潤滑分岐油路53から第二潤滑油路62へ流れる油の流量が第一流量である状態となる。一方、第二切替状態では、分岐油路45と第二潤滑油路62とが非連通の状態となると共に、潤滑分岐油路53から第二潤滑油路62へ流れる油の流量が第二流量である状態となる。第一連通状態制御弁86と同様、第二連通状態制御弁94でも、第二オリフィス98の径(油路径)を第一オリフィス97よりも小さく設定することにより、第二流量は第一流量よりも小さい値に設定されている。
【0087】
そして、弁制御装置14は、第一連通状態制御弁86及び第二連通状態制御弁94の状態を、切離用係合装置C0及び変速用係合装置C1のそれぞれの制御状態に応じて制御する。
【0088】
本実施形態では、弁制御装置14は、切離用係合装置C0が滑り係合状態に制御される場合に、第一連通状態制御弁86を、図6に実線で示す第一切替状態に切り替える。これにより、第一連通状態制御弁86の潤滑制御弁部88は、潤滑分岐油路53から第一潤滑油路61へ流れる油の流量が第一流量となる状態に切り替わる。従って、切離用係合装置C0の発熱量が大きい場合には、潤滑分岐油路53から第一潤滑油路61に対して多くの油を供給して、切離用係合装置C0を適切に冷却することができる。なお、切離用係合装置C0が滑り係合状態に制御される場合には、内燃機関E及び回転電機MGの少なくとも一方が回転しているため、第一油圧ポンプ21が駆動される。そのため、第一潤滑油路61には、合流油路43及び潤滑分岐油路53を介して、第一油圧ポンプ21から吐出された油が供給される。
【0089】
また、本実施形態では、第一連通状態制御弁86を第一切替状態とすることにより、分岐制御弁部87が、分岐油路45と第一潤滑油路61とを連通する状態となる。この際、第二油圧ポンプ22も駆動され、第一潤滑油路61に対して、分岐油路45を介して、第二油圧ポンプ22から吐出された油が供給される。よって、切離用係合装置C0の発熱量が大きい場合に、第一油圧ポンプ21から吐出された油に加えて第二油圧ポンプ22から吐出された油を第一潤滑油路61に供給することができる。これにより、切離用係合装置C0の冷却性能を適切に確保しつつ、第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22のそれぞれの小型化を図ることが可能となっている。
【0090】
一方、弁制御装置14は、切離用係合装置C0が直結係合状態或いは解放状態に制御される場合に、第一連通状態制御弁86を、図6に破線で示す第二切替状態に切り替える。これにより、第一連通状態制御弁86の潤滑制御弁部88は、潤滑分岐油路53から第一潤滑油路61へ流れる油の流量が第二流量となる状態に切り替わる。従って、切離用係合装置C0の発熱量が小さい場合には、潤滑分岐油路53から第一潤滑油路61に対して供給する油の量を減らすことで、切離用係合装置C0での油の撹拌抵抗により発生する引き摺りトルクを抑制することができる。また、本実施形態では、第一連通状態制御弁86を第二切替状態とすることにより、分岐制御弁部87が、分岐油路45と第一潤滑油路61とを非連通とする状態となる。この状態では、第二油圧ポンプ22から吐出された油は、第二連通状態制御弁94の状態に応じて第二潤滑油路62に供給されると共に、第四潤滑油路64を介して回転電機MGに供給される。
【0091】
第一連通状態制御弁86及び切離用係合装置C0の場合と同様に、弁制御装置14は、変速用係合装置C1が滑り係合状態に制御される場合に、第二連通状態制御弁94を、図6に実線で示す第一切替状態に切り替える。これにより、第二連通状態制御弁94の潤滑制御弁部96は、潤滑分岐油路53から第二潤滑油路62へ流れる油の流量が第一流量となる状態に切り替わる。従って、変速用係合装置C1の発熱量が大きい場合には、潤滑分岐油路53から第二潤滑油路62に対して多くの油を供給して、変速用係合装置C1を適切に冷却することができる。なお、変速用係合装置C1が滑り係合状態に制御される場合には、内燃機関E及び回転電機MGの少なくとも一方が回転しているため、第一油圧ポンプ21が駆動される。そのため、第二潤滑油路62には、合流油路43及び潤滑分岐油路53を介して、第一油圧ポンプ21から吐出された油が供給される。
【0092】
また、本実施形態では、第二連通状態制御弁94を第一切替状態とすることにより、分岐制御弁部95が、分岐油路45と第二潤滑油路62とを連通する状態となる。この際、第二油圧ポンプ22も駆動され、第二潤滑油路62に対して、分岐油路45を介して、第二油圧ポンプ22から吐出された油が供給される。よって、変速用係合装置C1の発熱量が大きい場合に、第一油圧ポンプ21から吐出された油に加えて第二油圧ポンプ22から吐出された油を第二潤滑油路62に供給することができる。これにより、変速用係合装置C1の冷却性能を適切に確保しつつ、第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22のそれぞれの小型化を図ることが可能となっている。
【0093】
一方、弁制御装置14は、変速用係合装置C1が直結係合状態或いは解放状態に制御される場合に、第二連通状態制御弁94を、図6に破線で示す第二切替状態に切り替える。これにより、第二連通状態制御弁94の潤滑制御弁部96は、潤滑分岐油路53から第二潤滑油路62へ流れる油の流量が第二流量となる状態に切り替わる。従って、変速用係合装置C1の発熱量が小さい場合には、潤滑分岐油路53から第二潤滑油路62に対して供給する油の量を減らすことで、変速用係合装置C1での油の撹拌抵抗により発生する引き摺りトルクを抑制することができる。また、本実施形態では、第二連通状態制御弁94を第二切替状態とすることにより、分岐制御弁部95が、分岐油路45と第二潤滑油路62とを非連通とする状態となる。この状態では、第二油圧ポンプ22から吐出された油は、第一連通状態制御弁86の状態に応じて第一潤滑油路61に供給されると共に、第四潤滑油路64を介して回転電機MGに供給される。
【0094】
また、第一油圧ポンプ21から吐出された油は、合流油路43を介して第一供給制御弁55及び第二供給制御弁56に対しても供給される。そして、切離用係合装置C0が滑り係合状態又は直結係合状態に制御され、変速用係合装置C1が直結係合状態又は滑り係合状態に制御される場合には、第一供給制御弁55又は第二供給制御弁56を介して第一係合油路51及び第二係合油路52の双方に対して第一油圧ポンプ21から吐出された油が供給される。切離用係合装置C0が解放状態に制御され、変速用係合装置C1が直結係合状態又は滑り係合状態に制御される場合には、第二供給制御弁56を介して第二係合油路52のみに対して第一油圧ポンプ21から吐出された油が供給される。
【0095】
以上のように、切離用係合装置C0及び変速用係合装置C1の少なくとも一方が滑り係合状態に制御される場合には、弁制御装置14の制御により、第一係合油路51及び第二係合油路52の双方に対して第一油圧ポンプ21から吐出された油が供給される。またこのように切離用係合装置C0及び変速用係合装置C1の少なくとも一方が滑り係合状態に制御される場合には、第一潤滑油路61及び第二潤滑油路62の内の滑り係合状態に制御される係合装置に対応する油路に対して少なくとも第二油圧ポンプ22(ここでは第一油圧ポンプ21及び第二油圧ポンプ22の双方)から吐出された油が供給される状態(第一供給状態)が実現される。なお、本実施形態では、内燃機関Eのトルクを用いて車両を発進させる場合に、切離用係合装置C0及び変速用係合装置C1の少なくとも一方を滑り係合状態に制御するように構成されている。この際、入力軸Iの回転が出力軸Oに伝達される。すなわち、弁制御装置14を有する供給状態制御部13は、内燃機関Eの回転運転中に切離用係合装置C0及び変速用係合装置C1の少なくとも一方を滑り係合状態に制御する場合に、言い換えれば、切離用係合装置C0及び変速用係合装置C1の少なくとも一方を滑り係合状態に制御して入力軸Iの回転を出力軸Oに伝達する場合に、第一供給状態とするように構成されている。
【0096】
上記のとおり、第一油圧ポンプ21の吐出容量は、第二油圧ポンプ22の吐出容量よりも高く設定されているため、第一油圧ポンプ21が駆動されている場合には、第二逆止弁32は基本的に閉状態となる。すなわち、第一油圧ポンプ21が駆動している場合には、第二油圧ポンプ22の動作状態によらず、第一供給制御弁55及び第二供給制御弁56の双方に対して第一油圧ポンプ21から吐出された油が供給される。そして、例えば、切離用係合装置C0を解放状態に制御して回転電機MGのトルクを出力軸Oに伝達させる場合(すなわち、電動走行モードを実行する場合)には、第一油圧ポンプ21が回転電機MGにより駆動される。これにより、第二逆止弁32が閉状態となる。また、供給状態制御部13は、切離用係合装置C0を解放状態に制御すると共に変速用係合装置C1を直結係合状態に制御して回転電機MGの出力トルクを出力軸Oに伝達させるために、第一供給制御弁55により第一係合油路51に油が供給されない状態とすると共に、第二供給制御弁56により第二係合油路52に対して第一油圧ポンプ21から吐出された油が供給される状態とする。すなわち、本実施形態では、供給状態制御部13は、切離用係合装置C0を解放状態に制御して回転電機MGのトルクを出力軸Oに伝達させる場合には、第二係合油路52に対して第一油圧ポンプ21から吐出された油が供給されると共に、第一係合油路51に対して油が供給されない状態(第二供給状態)とするように構成されている。
【0097】
本実施形態の構成では、切離用係合装置C0及び変速用係合装置C1の一方又は双方が滑り係合状態に制御される場合には、当該滑り係合状態に制御される係合装置に対して第一油圧ポンプから吐出された油と第二油圧ポンプから吐出された油との双方を供給することができる。従って、滑り係合状態に制御されて発熱量が大きくなる係合装置を適切に潤滑及び冷却することできる。一方、切離用係合装置C0及び変速用係合装置C1の一方又は双方が、滑り係合状態以外の状態、すなわち解放状態又は直結係合状態に制御される場合には、そのような係合装置に対して供給する油の量を少なく抑えることができる。従って、発熱量が小さい係合装置に多量の油が供給されることを抑制し、当該係合装置での油の撹拌抵抗により発生する引き摺りトルクを抑制することができる。
【0098】
また、本実施形態の構成では、上記第一の実施形態とは異なり、分岐油路45は、接続油路44から分岐した後、潤滑分岐油路53を介することなく、第一潤滑油路61及び第二潤滑油路62にそれぞれ接続される。すなわち、分岐油路45は、第一連通状態制御弁86が第一切替状態である場合には直接第一潤滑油路61に連通し、第二連通状態制御弁94が第一切替状態である場合には直接第二潤滑油路62に連通する。一方、上記第一の実施形態のように分岐油路45が潤滑分岐油路53に接続される構成では、第二油圧ポンプ22から吐出された油を潤滑分岐油路53に供給するためには、第二油圧ポンプ22により潤滑分岐油路53内の油圧(ここでは第二調圧弁82による設定油圧)以上の油圧を発生させる必要がある。本実施形態の構成によれば、潤滑分岐油路53を介さず、オリフィス91、97の下流の第一潤滑油路61又は第二潤滑油路62に分岐油路45を接続させているので、上記第一の実施形態の構成に比べて、第二油圧ポンプ22に要求される吐出圧を更に低くすることが可能となっている。この結果、本実施形態の構成は、上述したように第一油圧ポンプ21に比べて吐出圧が低いが供給流量を多く確保しやすいという第二油圧ポンプ22の特性を、より一層生かすことができる構成となっている。
【0099】
4.車両用駆動装置の別実施形態
次に、本発明に係る油供給装置10が適用される車両用駆動装置1の別の実施形態の構成について図7及び図8に基づいて説明する。ここでは、上述した図1に示す車両用駆動装置1の構成を第一構成とし、図7に示しているのが第二構成とし、図8に示しているのが第三構成とする。
【0100】
まず、図7の第二構成について説明する。この車両用駆動装置1は、上記第一構成とは異なり、車輪駆動用の回転電機MGが、内燃機関E及び変速装置TMが駆動連結された第一車輪W1とは別の第二車輪W2に駆動連結された構成となっている。例えば、内燃機関Eが変速装置TMを介して車両の前後一方の車輪である第一車輪W1(例えば後輪)を駆動し、回転電機MGが変速装置TMを介することなく車両の前後他方の車輪である第二車輪W2(例えば前輪)を駆動する構成とされる。この第二構成でも、車両用駆動装置1は、内燃機関Eに駆動連結される入力軸Iと、車輪駆動用の回転電機MGと、第一車輪W1に駆動連結される出力軸Oと、変速用係合装置C1を備えると共に入力軸Iの回転を変速して出力軸Oに伝達する変速装置TMと、入力軸Iを変速装置TMから切り離す切離用係合装置C0とを備えている。より具体的には、この車両用駆動装置1は、入力軸Iから第一車輪W1までの動力伝達経路に沿って入力軸I側から、切離用係合装置C0、変速用係合装置C1を備えた変速装置TM、出力軸O、第一差動歯車装置DF1、第一車輪W1の順に駆動連結されている。また、回転電機MGは、第二差動歯車装置DF2を介して第二車輪W2に駆動連結されている。本実施形態でも、入力軸Iが本発明における「入力部材」に相当し、出力軸Oが本発明における「出力部材」に相当する。
【0101】
また、第一油圧ポンプ21は、入力軸Iに連動する第一連動部材17及び回転電機MGに連動する第二連動部材18のうちの回転速度の高い方の部材により駆動されるように構成されている。この第二構成では、第一連動部材17は、入力軸Iと常時連結された部材であり、第二連動部材18は、出力軸Oと常時連結された部材である。具体的には、この第二構成では、第一油圧ポンプ21の駆動軸が駆動部材2と一体回転するように連結されている。そして、駆動部材2が、第一ワンウェイクラッチ11を介して入力駆動部材25に駆動連結されていると共に、第二ワンウェイクラッチ12を介して出力駆動部材26に駆動連結されている。これにより、第一油圧ポンプ21は、入力駆動部材25と出力駆動部材26とのうちの回転速度の高い方の部材により駆動される。入力駆動部材25は、スプロケット及びチェーンを介して入力軸Iと連動して回転するように常時連結されている。出力駆動部材26は、スプロケット及びチェーンを介して出力軸Oと連動して回転するように常時連結されている。そして、例えば、切離用係合装置C0を解放状態とし、回転電機MGのトルクを第二車輪W2に伝達して車両を走行させている状況では、第二車輪W2に伝達された回転電機MGのトルク及び回転は、車両が走行している道路面を介して第一車輪W1に伝達され、車両の走行速度に応じた回転速度で出力軸Oを回転させる。従って、出力駆動部材26は、出力軸O、第一車輪W1、車両が走行中の道路面、及び第二車輪W2を介して、回転電機MGに連動する。よって、この第二構成では、入力駆動部材25が本発明における「第一連動部材17」に相当し、出力駆動部材26が本発明における「第二連動部材18」に相当する。なお、図7では、第一油圧ポンプ21は、入力軸Iや回転電機MGとは別軸上に配置されているが、第一油圧ポンプ21が入力軸Iや回転電機MGと同軸上に配置された構成としてもよい。この第二構成においても、第二油圧ポンプ22は、第一油圧ポンプ21の駆動力源とは異なる駆動力源により駆動される油圧ポンプであり、具体的には、専用の駆動力源としての回転電機(電動モータ23)により駆動される電動ポンプである。
【0102】
次に、図8の第三構成について説明する。この車両用駆動装置1は、上記第一構成とは異なり、車輪駆動用の回転電機MGが、動力伝達経路における変速装置TMと車輪Wとの間に駆動連結された構成となっている。この第三構成でも、車両用駆動装置1は、内燃機関Eに駆動連結される入力軸Iと、車輪駆動用の回転電機MGと、第一車輪W1に駆動連結される出力軸Oと、変速用係合装置C1を備えると共に入力軸Iの回転を変速して出力軸Oに伝達する変速装置TMと、入力軸Iを変速装置TMから切り離す切離用係合装置C0とを備えている。より具体的には、この車両用駆動装置1は、入力軸Iから車輪Wまでの動力伝達経路に沿って入力軸I側から、切離用係合装置C0、変速用係合装置C1を備えた変速装置TM、回転電機MG及び出力軸O、差動歯車装置DF、車輪Wの順に駆動連結されている。なお、回転電機MGは、ロータが出力軸Oと一体的に回転するように連結されている。本実施形態でも、入力軸Iが本発明における「入力部材」に相当し、出力軸Oが本発明における「出力部材」に相当する。
【0103】
また、第一油圧ポンプ21は、入力軸Iに連動する第一連動部材17及び回転電機MGに連動する第二連動部材18のうちの回転速度の高い方の部材により駆動されるように構成されている。この第三構成では、上記第二構成と同様、第一連動部材17は、入力軸Iと常時連結された部材であり、第二連動部材18は、出力軸Oと常時連結された部材である。すなわち、この第三構成でも、入力駆動部材25は、スプロケット及びチェーンを介して入力軸Iと連動して回転するように常時連結されている。出力駆動部材26は、スプロケット及びチェーンを介して出力軸Oと連動して回転するように常時連結されている。また、第一油圧ポンプ21の駆動軸と一体回転する駆動部材2が、第一ワンウェイクラッチ11を介して入力駆動部材25に駆動連結されていると共に、第二ワンウェイクラッチ12を介して出力駆動部材26に駆動連結されている。これにより、第一油圧ポンプ21は、入力駆動部材25と出力駆動部材26とのうちの回転速度の高い方の部材により駆動される。なお、上記第一構成及び第二構成では、第一ワンウェイクラッチ11と第二ワンウェイクラッチ12とが径方向に見て重なる位置関係で配置されていたが、第三構成では、これらが軸方向に並べて配置されている。この第三構成では、例えば、切離用係合装置C0を解放状態とし、回転電機MGのトルクを車輪Wに伝達して車両を走行させている状況では、回転電機MGのトルク及び回転は、それと一体回転する出力軸Oに伝達される。従って、出力駆動部材26は、出力軸Oとスプロケット及びチェーンとを介して回転電機MGに連動する。よって、この第三構成では、入力駆動部材25が本発明における「第一連動部材17」に相当し、出力駆動部材26が本発明における「第二連動部材18」に相当する。なお、図8では、第一油圧ポンプ21は、入力軸Iや回転電機MGとは別軸上に配置されているが、第一油圧ポンプ21が入力軸Iや回転電機MGと同軸上に配置された構成としてもよい。この第三構成においても、第二油圧ポンプ22は、第一油圧ポンプ21の駆動力源とは異なる駆動力源により駆動される油圧ポンプであり、具体的には、専用の駆動力源としての回転電機(電動モータ23)により駆動される電動ポンプである。
【0104】
これらの第二構成(図7)及び第三構成(図8)では、回転電機MGが変速装置TMを介することなく車輪W(第二車輪W2)に駆動連結されている。そのため、内燃機関が停止中であって切離用係合装置C0を解放状態に制御し、回転電機MGの出力トルクにより車輪を駆動する、いわゆる電動走行モードにおいて、回転電機MGの出力トルクを車輪に伝達するために変速装置TMが駆動力を伝達する必要がない。そのため、これらの構成では、動走行モードにおいて、切離用係合装置C0は解放状態とされると共に、変速装置TMは変速段を形成しないニュートラル状態とされるので変速用係合装置C1も解放状態とされる。そのため、切離用係合装置C0に対して係合の状態を制御するための油を供給する第一係合油路51、及び変速用係合装置C1に対して係合の状態を制御するための油を供給する第二係合油路52のいずれにも、油圧を供給する必要がない。従って、これらの第二構成及び第三構成では、上記第一構成とは異なり、第一係合油路51及び第二係合油路52の双方に対して油が供給されない状態が第二供給状態である。これらの制御は、上述した第一供給制御弁55及び第二供給制御弁56により行われる。なお、第一供給状態において、第一係合油路51及び第二係合油路52の双方に対して第一油圧ポンプ21から吐出された油が供給されると共に、第一潤滑油路61及び第二潤滑油路62の内の滑り係合状態に制御される係合装置に対応する油路に対して少なくとも第二油圧ポンプ22から吐出された油が供給される状態とすることは、上記第一から第三の実施形態と同様である。
【0105】
5.その他の実施形態
最後に、本発明に係るその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0106】
(1)上記第一の実施形態では、分岐油路45が潤滑分岐油路53に接続される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、分岐油路45が、潤滑分岐油路53を介することなく第一潤滑油路61に接続された構成とすることも可能である。この場合、分岐制御弁部84は、分岐油路45と第一潤滑油路61との連通状態を制御するように構成される。
【0107】
(2)上記第一の実施形態に係る図4に示す具体例では、連通状態制御弁83が、潤滑分岐油路53に接続される入力ポートを2つ備え、第一潤滑油路61に接続される出力ポートを1つ備える構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、連通状態制御弁83が、潤滑分岐油路53に接続される入力ポートを1つ備えると共に、第一潤滑油路61に接続される出力ポートを2つ備える構成として、第一切替状態と第二切替状態とで当該1つの入力ポートに連通する出力ポートが、2つの出力ポートの間で切り替えられる構成とすることもできる。この場合において、各出力ポートから第一潤滑油路61に供給される流量を、図4に示す例と同様にオリフィスによって互いに異なる量に設定することができる。
【0108】
(3)上記の各実施形態では、油供給装置10が、第四潤滑油路64及び第五潤滑油路65の双方を備える構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、油供給装置10が、第四潤滑油路64及び第五潤滑油路65の一方又は双方を備えない構成とすることもできる。
【0109】
(4)上記第一の実施形態(図2及び図4の例)及び第二の実施形態(図5の例)では、いずれも、基本的に切離用係合装置C0のみを滑り係合状態とすることを想定し、切離用係合装置C0のみについて潤滑油路(第一潤滑油路61)を備える構成について説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、上記第一の実施形態及び第二の実施形態の構成において、切離用係合装置C0に代えて、基本的に変速用係合装置C1をのみを滑り係合状態とし、変速用係合装置C1のみについて潤滑油路を備える構成としても好適である。
【0110】
(5)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載されていない構成に関しては、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、回転電機と、車輪に駆動連結される出力部材と、入力部材又は回転電機の回転を変速して出力部材に伝達する変速装置と、入力部材を回転電機及び変速装置から切り離す切離用係合装置とを備える車両用駆動装置に、油を供給する油供給装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0112】
1:車両用駆動装置
10:油供給装置
13:供給状態制御部
14:弁制御装置
16:ロータ支持部材
17:第一連動部材
18:第二連動部材
21:第一油圧ポンプ
21a:第一吐出口(吐出口)
22:第二油圧ポンプ
22a:第二吐出口(吐出口)
23:電動モータ(専用の駆動力源)
31:第一逆止弁
32:第二逆止弁
43:合流油路
44:接続油路
45:分岐油路
51:第一係合油路
52:第二係合油路
53:潤滑分岐油路
61:第一潤滑油路(潤滑油路)
62:第二潤滑油路(潤滑油路)
80:調圧装置
81:第一調圧弁(調圧装置)
83:連通状態制御弁
84:分岐制御弁部
85:潤滑制御弁部
86:第一連通状態制御弁(連通状態制御弁)
94:第二連通状態制御弁(連通状態制御弁)
C0:切離用係合装置
C1:変速用係合装置
E:内燃機関
I:入力軸(入力部材)
MG:回転電機
O:出力軸(出力部材)
TM:変速装置
W:車輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8