(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記排気ガス再循環通路との接続部よりも上流側において前記コンプレッサ上流通路に配置され、前記コンプレッサ上流通路を流れる空気の流量を計測するためのエアフローメータを更に備え、
前記バイパス通路は、前記排気ガス再循環バルブよりも前記コンプレッサ上流通路に近い側において前記排気ガス再循環通路に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の過給機付き内燃機関。
【発明の概要】
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、バイパスバルブの開弁時にコンプレッサに吸入されるガス中の再循環排気ガス濃度が高くなるのを防止することのできる過給機付き内燃機関を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、過給機付き内燃機関であって、コンプレッサと、排気ガス再循環通路と、排気ガス再循環バルブと、バイパス通路と、バイパスバルブとを備えている。
コンプレッサは、燃焼室に吸入される空気が流れる吸気通路に配置され、吸入空気を過給するために備えられている。排気ガス再循環通路は、前記燃焼室から排出される排気ガスが流れる排気通路と前記コンプレッサよりも上流側の前記吸気通路であるコンプレッサ上流通路とを接続する。排気ガス再循環バルブは、当該排気ガス再循環通路を開閉するために備えられている。バイパス通路は、前記コンプレッサにより過給されたガスを、前記コンプレッサよりも下流側の前記吸気通路であるコンプレッサ下流通路の外に逃がすために備えられている。バイパスバルブは、前記コンプレッサにより過給されたガスを前記コンプレッサ下流通路の外に逃がすときに開いて前記バイパス通路を開放させる。本発明におけるバイパス通路は、前記コンプレッサ下流通路と、前記排気ガス再循環通
路とを接続するものである。
【0008】
本発明によれば、過給ガスをコンプレッサ下流通路の外に逃がすためにバイパスバルブが開かれたときに、高圧の過給ガスが排気ガス再循環通
路に導入される。その結果、高圧の過給ガスが排気ガス再循環通路に導入される場合には、排気ガス再循環バルブが開いているときであっても、高圧の過給ガスによって排気通路側からの新たな再循環排気ガスの流入が抑制される。このため、バイパスバルブの開弁時にコンプレッサに吸入されるガス中の再循環排気ガス濃度が高くなるのを防止することができる
。
【0009】
また、本発明は、前記排気ガス再循環通路との接続部よりも上流側において前記コンプレッサ上流通路に配置され、前記コンプレッサ上流通路を流れる空気の流量を計測するためのエアフローメータを更に備えるものであってもよい。更に、本発明における前記バイパス通路は、前記排気ガス再循環バルブよりも前記コンプレッサ上流通路に近い側において前記排気ガス再循環通路に接続されたものであってもよい。
このように、排気ガス再循環バルブよりもコンプレッサ上流通路に近い側において排気ガス再循環通路にバイパス通路を接続したことにより、上記の位置に配置されたエアフローメータによって計測されない空気量がバイパス通路の開弁時に発生するのを防止することができる。
【0010】
また、本発明は、前記排気通路に配置され、排気ガスを浄化するための触媒を更に備えるものであってもよい。更に本発明における前記排気ガス再循環通路は、前記触媒よりも下流側において前記排気通路に接続されたものであってもよい。
これにより、バイパス通路から排気ガス再循環通路もしくは排気通路に導入されるガス中の再循環排気ガスは、既に上記触媒を通過した後のガスとなる。したがって、バイパス通路からの過給ガスがコンプレッサ上流通路に還流されずに排気通路から大気中に放出される場合であっても、排気エミッションが悪化しないようにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
先ず、
図1〜
図3を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1の内燃機関10のシステム構成を説明するための図である。
図1に示すシステムは、内燃機関10を備えている。内燃機関10は、車両に搭載され、その動力源とされるものである。本実施形態の内燃機関10は、一例として直列4気筒型のものを表しているが、本発明における内燃機関の気筒数および気筒配置はこれに限定されるものではない。内燃機関10は、燃焼室(図示省略)に吸入される空気が流れる吸気通路12と、燃焼室から排出されるガスが流れる排気通路14とを備えている。
【0013】
吸気通路12の入口近傍には、エアクリーナ16が設けられている。エアクリーナ16の下流には、吸気通路12に吸入される空気の流量を計測するためのエアフローメータ18が設けられている。エアフローメータ18の下流には、ターボ過給機20のコンプレッサ20aが配置されている。ターボ過給機20は、コンプレッサ20aと一体的に連結され排気ガスの排気エネルギによって作動するタービン20bを備えている。コンプレッサ20aは、タービン20bに入力される排気ガスの排気エネルギによって回転駆動される。
【0014】
更に、コンプレッサ20aよりも下流側の吸気通路12(以下、「コンプレッサ下流通路12b」と略する場合がある)には、コンプレッサ20aにより圧縮された空気を冷却するためのインタークーラー22が配置されている。更に、インタークーラー22の下流には、吸気通路12を流れる空気量を調整するためのスロットルバルブ24が配置されている。スロットルバルブ24の下流には、サージタンク26が配置されている。
【0015】
ターボ過給機20のタービン20bは、排気通路14の途中に配置されている。タービン20bよりも下流側の排気通路14には、排気ガスを浄化するための排気浄化装置として、上流側から順に、三元触媒である上流触媒28および下流触媒30がそれぞれ配置されている。
【0016】
また、
図1に示すシステムは、低圧排気ガス再循環通路(LPL(Low Pressure Loop))として機能する排気ガス再循環通路(EGR通路)32を備えている。EGR通路32は、タービン20bよりも下流側(本実施形態では、更に上流触媒28よりも下流側)の排気通路14とコンプレッサ20aよりも上流側の吸気通路12(以下、「コンプレッサ上流通路12a」と略する場合がある)とを接続するように構成されている。このEGR通路32の途中には、EGR通路32を通ってコンプレッサ上流通路12aに再循環排気ガス(EGRガス)を導入する際のEGRガス流れの上流側(すなわち、排気通路14に近い側)から順に、排気ガス再循環クーラー(EGRクーラー)34および排気ガス再循環バルブ(EGRバルブ)36がそれぞれ配置されている。尚、本実施形態の内燃機関10では、EGRバルブ36は、EGR通路32の途中の部位に限らず、EGR通路32における排気通路14側の端部に配置されていてもよい。
【0017】
EGRクーラー34は、EGR通路32に導入された排気ガス(EGRガス)を冷却するために備えられている。EGRバルブ36は、EGR通路32を開閉するためのバルブであり、より具体的には、EGR通路32の流路断面積を変更することによってEGR通路32を介してコンプレッサ上流通路12aに導入されるEGRガスの流量を調整するためのバルブである。以上のようなLPL(EGR通路32)を利用することで、コンプレッサ下流通路にEGR通路を接続する構成を用いる場合とは異なり、内燃機関10の過給領域においても、EGRガスを導入することができる。
【0018】
更に、
図1に示すシステムは、コンプレッサ20aにより過給された吸気をコンプレッサ上流通路12aに戻すための吸気バイパス通路38を備えている。吸気バイパス通路38の一端は、コンプレッサ20aとインタークーラー22との間の部位においてコンプレッサ下流通路12bに接続されている。
【0019】
本実施形態の吸気バイパス通路38は、その他端がEGRバルブ36よりもコンプレッサ上流通路12aに近い側においてEGR通路32に接続されているという点に特徴を有している。このように、本実施形態における吸気バイパス通路38の出口の接続対象範囲としては、
図1中にハッチングを付して示すように、EGRガス導入時のガス流れに関して、EGRバルブ36よりも下流側であって、EGRガスと新気との合流部(EGR通路32の吸気側端部)よりも上流側となる部位が該当する。
【0020】
吸気バイパス通路38の途中には、吸気バイパス通路38を開閉するための吸気バイパスバルブ(ABV)40が配置されている。ABV40は、コンプレッサ20aにより過給されたガス(吸気)を、吸気バイパス通路38を介してコンプレッサ下流通路12bの外に逃がすときに開いて吸気バイパス通路38を開放させるものである。更に付け加えると、ABV40は、例えば過給運転状態から減速運転状態に移行したときのように、吸気バイパス通路38の入口となるコンプレッサ下流通路12b側の圧力が、吸気バイパス通路38の出口となるEGR通路32側の圧力よりも高いことで、吸気バイパス通路38の開放に伴ってコンプレッサ下流通路12bからEGR通路32へのガス流れが生じるときに開かれる。尚、ABV40は、吸気バイパス通路38の何れかの端部に配置されていてもよい。
【0021】
本実施形態のシステムは、更に、ECU(Electronic Control Unit)50を備えている。ECU50の入力部には、上述したエアフローメータ18等の内燃機関10の運転状態を検出するための各種のセンサが接続されている。また、ECU50の出力部には、上述したスロットルバルブ24、EGRバルブ36およびABV40とともに、図示省略する燃料噴射弁等の内燃機関10の運転を制御するための各種のアクチュエータが接続されている。ECU50は、上記各種のセンサ出力と所定のプログラムとに基づいて上記各種のアクチュエータを駆動することにより、内燃機関10の運転を制御するものである。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態1の構成との対比のために参照する図であり、一般的な接続構成を有する吸気バイパス通路を表したものである。
図2に示すように、一般的に、吸気バイパス通路はコンプレッサ下流通路とコンプレッサ上流通路とを接続する。また、LPLとして機能するEGR通路を備えている場合には、既述したように、過給領域であってもEGRガスを導入することができる。
図2に示す構成では、EGR通路を介してコンプレッサ上流通路にEGRガスを導入している状況下においてABVを開く所定条件が成立してABVが開かれると、EGRガスを含んだ空気(新気+EGRガス)が吸気バイパス通路を介してコンプレッサ上流通路に還流されることになる。
【0023】
EGRバルブは、基本的には、ABVが開くのに合わせて閉じられる。しかしながら、EGRバルブの応答遅れなどの要因によって、上記のような状況下においてABVが開いた後においてもEGRバルブが開いている状態であると、コンプレッサ上流通路へのEGRガスの導入が継続されることになる。その結果、コンプレッサに再吸入されるガスは、既にEGRガスが混合した空気に対して還流後にEGRガスが更に追加されたものとなる。したがって、上記の状況下においては、ABVが開いたときにEGRバルブを応答性良く同時期に閉じることができないと、想定したものよりも高い濃度のEGRガスを含む吸気が筒内に導入されることになってしまう。その結果、トルク変動もしくは失火が生じてしまうことが懸念される。また、上述したABV作動時(開弁時)のEGRガスの濃縮を回避するためには、EGRバルブの応答性をABVのそれと同等以上とすることが必要であるが、高応答化には高コストが要求される。
【0024】
図3は、本発明の実施の形態1の構成におけるABV40の作動前後のガス流れを説明するための図である。尚、
図3は、過給領域においてEGR通路32を利用してEGRガスの導入が行われる状況であるとする。
【0025】
図3(A)は、ABV40の作動前の状態(閉弁状態)に対応している。この状態では、
図3(A)中に示す部位Aの圧力が部位Bの圧力よりも高いため、その差圧によりEGRガスがコンプレッサ上流通路12aに向けて流れる。また、部位Cと部位Dの圧力はほぼ同じであるが、コンプレッサ上流通路12aにおけるガスの流れ方向は部位Cから部位Dに向かう方向である。その結果、コンプレッサ上流通路12aとEGR通路32との接続部よりも下流側の吸気通路12を流れるガスは、
図3(A)に示すようにEGRガスを含む新気となる。
【0026】
一方、
図3(B)は、ABV40の作動後の状態(開弁状態)に対応している。既述したように、ABV40は過給圧が高いときに開くため、
図3(B)に示す状態では、吸気バイパス通路38から高圧のガスが供給される部位Bの圧力の方が、部位Aの圧力よりも高くなる。このため、この状態では、排気通路14側からのEGRガスの流れは生じない。すなわち、吸気バイパス通路38からの高圧の還流ガスによって、通常のEGRガスの流れが遮られる形となる。また、部位Aの圧力は、部位C、Dの圧力よりも高い。このため、吸気バイパス通路38からの還流ガスは、
図3(B)に示すように、部位Bから部位C、Dに向かう方向に流れる。更に、上述したように、コンプレッサ上流通路12aには、部位Cから部位Dに向かうガス流れがある。したがって、EGR通路32からコンプレッサ上流通路12aに導入された後の上記還流ガスは、
図3(C)に示すようにコンプレッサ20aに向けて流れるようになる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態の内燃機関10では、コンプレッサ20aの下流側を流れる過給空気をコンプレッサ下流通路12bの外に逃がす(本実施形態では、コンプレッサ20aの上流に還流させる)ための吸気バイパス通路38が、EGRバルブ36よりもコンプレッサ上流通路12aに近い側の部位(以下、「EGRバルブ下流部」と略する場合がある)においてEGR通路32に接続されている。これにより、ABV40の開弁時に高圧の還流ガスがEGRバルブ下流部に戻されるので、通常のEGRガスの導入時に対してEGRバルブ36の前後差圧が逆転する。その結果、ABV40の開弁後(直後)にEGRバルブ36が開いている場合であっても、新たなEGRガスがEGR通路32からコンプレッサ上流通路12aに導入されないようにすることができる。これにより、ABV40の作動(開弁)に伴ってコンプレッサ20aの上流に還流するガス中のEGRガスの濃度が高くなるのを防止することができる。このため、そのようなEGRガスの濃縮化に伴ってトルク変動もしくは失火が生ずるのを回避することができる。
【0028】
更に付け加えると、本実施形態の内燃機関10では、EGR通路32に対する吸気バイパス通路38の接続位置を、EGRバルブ36よりも排気通路14に近い側(EGRガス流れの上流側)ではなく、EGRバルブ36よりも吸気通路12に近い側(EGRガス流れの下流側)としたことにより、次のような効果を奏することができる。すなわち、仮にEGR通路に対する吸気バイパス通路の接続位置を、EGRバルブに対して排気通路に近い側とした場合には、ABVの開弁中にEGRバルブが閉じた後は、吸気バイパス通路からの還流ガス(EGRガスを含む新気)がEGR通路を介して(逆流して)排気通路に排出されてしまう。その結果、エアフローメータを通過した新気の全量が燃焼室に吸入されないことになる。このことは、エアフローメータにより計測される空気量を利用して制御される空燃比にずれを生じさせてしまい、排気エミッションを悪化させる要因となる。また、本実施形態の内燃機関10がそうであるように、排気通路とEGR通路との接続部よりも下流側に触媒(内燃機関10では下流触媒30がそれに相当)を備えている場合には、EGR通路を介して排気通路に排出された上記還流ガス中の新気によって、触媒の雰囲気をリーンにしてしまう。このことも、排気エミッションを悪化させる要因となる。
【0029】
これに対し、EGR通路32に対する吸気バイパス通路38の接続位置をEGRバルブ36よりも吸気通路12に近い側とした本実施形態の内燃機関10によれば、ABV40が開き、かつ、EGRバルブ36が閉じている状況下において、エアフローメータ18を通過した新気の一部が燃焼室に吸入されなくなるのを防止することができる。また、上記状況下において、EGR通路32を介して排気通路14に上記還流ガスが流れるのを防止することができるので、当該還流ガスによる下流触媒30の雰囲気のリーン化を防止することができる。
【0030】
ところで、上述した実施の形態1においては、EGR通路32が、上流触媒28と下流触媒30との間の部位において排気通路14に接続された構成を例に挙げて説明を行った。しかしながら、本実施形態の吸気バイパス通路38のようにEGR通路32のEGRバルブ下流部に吸気バイパス通路38の出口が接続される場合には、吸気バイパス通路38からの還流ガスが排気通路14側に流れることはないため、EGR通路32における排気通路14との接続部は、上記構成に限らず、排気通路14上の他の任意の部位であってもよい。
【0031】
尚、上述した実施の形態1においては、吸気バイパス通路38が本発明における「バイパス通路」に、ABV40が本発明における「バイパスバルブ」に、それぞれ相当している。
【0032】
実施の形態2.
次に、
図4および
図5を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。
図4は、本発明の実施の形態2の内燃機関60のシステム構成を説明するための図である。尚、
図4において、上記
図1に示す構成要素と同一の要素については、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
【0033】
図4に示す内燃機関60が備えるEGR通路62は、下流触媒30よりも下流側の排気通路14とコンプレッサ上流通路12aとを接続する通路として構成されている。ここでは、下流触媒30は、排気通路14に配置された触媒の中で最も下流側に配置された触媒であるものとする。尚、本実施形態の内燃機関60では、EGRバルブ36は、EGR通路62の途中の部位に限らず、EGR通路62における吸気通路12側の端部に配置されていてもよい。
【0034】
また、本実施形態の吸気バイパス通路64は、EGRバルブ36よりも排気通路14に近い側(より具体的には、EGRバルブ36とEGRクーラー34との間の部位)においてEGR通路62に接続されている。ABV40は、吸気バイパス通路64の途中に配置されている。更に、本実施形態では、吸入空気量を取得(算出)するために、エアフローメータ18に代え、吸気圧力センサ66を備えている。吸気圧力センサ66は、スロットルバルブ24の下流圧力を検出するために、サージタンク26に取り付けられている。吸気圧力センサ66は、ECU70に接続されている。
【0035】
図5は、本発明の実施の形態2の構成におけるABV40の作動前後のガス流れを説明するための図である。尚、
図5は、過給領域においてEGR通路32を利用してEGRガスの導入が行われる状況であるとする。
【0036】
図5(A)は、ABV40の作動前の状態(閉弁状態)に対応している。この状態では、
図3(A)を参照して既述した状態と同様であり、
図5(A)中に示す部位Aの圧力が部位Bの圧力よりも高いため、その差圧によりEGRガスがコンプレッサ上流通路12aに向けて流れる。また、部位Cと部位Dの圧力はほぼ同じであるが、コンプレッサ上流通路12aにおけるガスの流れ方向は部位Cから部位Dに向かう方向である。その結果、コンプレッサ上流通路12aとEGR通路62との接続部よりも下流側の吸気通路12を流れるガスは、
図5(A)に示すようにEGRガスを含む新気となる。
【0037】
一方、
図5(B)は、ABV40の作動後の状態(開弁状態)であって、EGRバルブ36が閉じる前の状態に対応している。既述したように、ABV40は過給圧が高いときに開くため、この状態では、吸気バイパス通路38から高圧のガスが供給される部位Aの圧力の方が、部位Bの圧力よりも高くなる。また、コンプレッサ上流通路12aに連通する部位Bの圧力は、排気通路14に連通する部位Eの圧力よりも低い。このため、吸気バイパス通路64からEGR通路62に導入された還流ガスは、
図5(B)に示すように、部位Aから部位Bに向かう方向に流れる。この状態では、部位Aの圧力は部位Eの圧力よりも高いため、吸気バイパス通路38からの高圧の還流ガスによって通常のEGRガスの流れが遮られる形となり、排気通路14側からのEGRガスの流れは生じない。更に、コンプレッサ上流通路12a内には、部位Cから部位Dに向かう方向のガス流れがある。したがって、EGR通路62からコンプレッサ上流通路12aに導入された後の上記還流ガスは、
図5(B)に示すようにコンプレッサ20aに向けて流れるようになる。
【0038】
図5(C)は、
図5(B)に示す状態となった後に、EGRバルブ36が閉じ、かつ、吸気バイパス通路64からの還流ガスが未だ存在している状態に対応している。この状態では、EGRバルブ36が閉じているため、吸気バイパス通路64からEGR通路62に導入されたガスは、
図5(C)に示すように、EGR通路62を通って(逆流して)排気通路14に排出されるようになる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の内燃機関60の構成においても、吸気バイパス通路64をEGR通路62(コンプレッサ上流通路12aを流れる新気とEGRガスとの合流部よりもEGRガスの流れの上流側の部位)に接続している。このため、ABV40の開弁後(直後)にEGRバルブ36が開いている場合であっても、新たなEGRガスがEGR通路62からコンプレッサ上流通路12aに導入されないようにすることができる。したがって、このような接続構成によっても、ABV40の作動(開弁)に伴ってコンプレッサ20aの上流に還流するガス中のEGRガスの濃度が高くなるのを防止することができる。
【0040】
また、本実施形態の内燃機関60では、吸気圧力センサ66を利用して吸入空気量を算出するようにしている。このため、
図5(C)に示すように吸気バイパス通路64からEGR通路62に導入されたガス(新気を含む)がコンプレッサ20aに再吸入されずに排気通路14に排出される場合であっても、内燃機関60の制御に用いる空燃比にずれが生じないようにすることができる。更に、EGR通路62は、下流触媒30よりも下流側の排気通路14と接続されている。このため、
図5(C)に示すように吸気バイパス通路64からガス(新気を含む)がEGR通路62に導入された場合であっても、下流触媒30(の浄化ウィンドウ)が影響を受けるのを回避することができる。このように、本実施形態の構成によれば、実施の形態1の構成と比べて、吸入空気量の取得および触媒状態への影響なしに、吸気バイパス通路64の接続位置の自由度を高めることができる。
【0041】
ところで、上述した実施の形態2においては、EGRバルブ36よりも排気通路14に近い側(より具体的には、EGRバルブ36とEGRクーラー34との間の部位)においてEGR通路62に接続された吸気バイパス通路64を例に挙げて説明を行った。しかしながら、本実施形態の内燃機関60における吸気バイパス通路64の出口の接続対象範囲は、上記の部位に限らず、
図4中にハッチングを付して示された部位であればよい。すなわち、吸気バイパス通路64の出口の接続位置は、EGR通路62上の他の任意の部位であってもよく、或いは、以下に説明するように排気通路14であってもよい。
【0042】
吸気バイパス通路64の出口の接続位置は、EGR通路62に代え、例えば、EGR通路62との接続部よりも上流側の排気通路14であってもよい。この構成の場合には、ABV40の開弁に伴ってガス(EGRガスを含む過給空気)が、EGR通路62との接続部よりも上流側の排気通路14に吸気バイパス通路64を介して導入される。このガスは、排気通路14を流れる排気ガスと混合する。そして、この混合ガスは、EGRバルブ36が開いている場合であれば、上記ガスの一部がEGR通路62を介してコンプレッサ上流通路12aに導入される。このようにしてEGR通路62からコンプレッサ上流通路12aに導入される混合ガスは、吸気バイパス通路64からの還流ガスが存在しない場合(通常のEGRガス(EGR率100%のガス)の導入が行われる場合)と比べ、還流ガス中に含まれる新気の存在によって、EGR率の低いガスとなる。したがって、ABV40の開弁後にこのような混合ガスがコンプレッサ上流通路12aに導入されて新気と混合したとしても、コンプレッサ20aに吸入されるガス中のEGRガス濃度が、通常のEGRガスの導入時と比べて高くなることはない。つまり、このような構成が採用されている場合であっても、ABV40の作動(開弁)に伴ってコンプレッサ20aの上流に還流するガス中のEGRガスの濃度が高くなるのを防止することができる。
【0043】
また、吸気バイパス通路64の出口の接続位置は、EGR通路62に代え、例えば、EGR通路62との接続部よりも下流側の排気通路14であってもよい。この構成の場合には、ABV40の開弁に伴ってガス(EGRガスを含む過給空気)が、吸気バイパス通路64、次いで、EGR通路62との接続部よりも下流側の排気通路14を通って大気中に放出される。このように、この場合には、吸気バイパス通路64からのガスがコンプレッサ20aの上流に還流すること自体がないため、このガスの存在によってコンプレッサ20aに吸入されるガス中のEGRガスの濃度が高くなることはない。つまり、このような構成が採用されている場合であっても、ABV40の作動(開弁)に伴ってコンプレッサ20aに吸入されるガス中のEGRガスの濃度が高くなるのを防止することができる。
【0044】
また、
図4に示す内燃機関60では、下流触媒30よりも下流側の排気通路14においてEGR通路62が接続されている。このため、上記のように吸気バイパス通路64の出口を排気通路14に接続する構成を採用したとしても、吸気バイパス通路64から排気通路14に導入されるガス中のEGRガスは、既に下流触媒30等を通過した後のガスであるため、排気エミッションが悪化することもない。
【0045】
尚、上述した実施の形態2においては、吸気バイパス通路64が本発明における「バイパス通路」に、ABV40が本発明における「バイパスバルブ」に、下流触媒30が本発明における「触媒」に、それぞれ相当している。
【0046】
ところで、上述した実施の形態1および2においては、吸入空気を過給するためのコンプレッサとして、排気エネルギを駆動力として利用するターボ過給機20のコンプレッサ20aを例に挙げて説明を行った。しかしながら、本発明におけるコンプレッサは、ターボ過給機が備えるものに限定されない。すなわち、本発明におけるコンプレッサは、例えば、内燃機関のクランク軸からの動力を利用して駆動されるものであってもよく、或いは、電動モータを利用して駆動されるものであってもよい。