(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
個々のリンクIDに対応して、該リンクIDによって特定される1セットの前記音設定情報における前記1又は複数の音設定パラメータを記憶するリンク情報メモリ、を更に具備し、
前記プロセッサは、前記リンクIDに基づいて前記リンク情報メモリを参照することにより、共通のリンクIDを持つ複数セットの前記音設定情報の間で、前記音設定パラメータの設定状態を一致させるように構成されている、請求項1乃至4のいずれかの装置。
複数セットの音設定情報を記憶する記憶装置を利用して、音設定情報を設定するための方法であって、前記記憶装置に記憶される前記音設定情報の各セットは、1又は複数の音設定パラメータを含み、
前記記憶装置内に、更に、前記音設定情報の各セット毎に、該セットに対応付けて設定されたリンクを特定するリンクIDを記憶するステップと、
プロセッサにより、前記リンクIDに基づき、共通のリンクIDを持つ複数セットの前記音設定情報の間で、前記音設定パラメータの設定状態を一致させるステップと
からなる方法。
複数セットの音設定情報を記憶する記憶装置を利用して、音設定情報を設定するための方法を実行するためにプロセッサにより実行可能な命令群を内容としている非一過性のコンピュータ読取可能な記憶媒体であって、前記記憶装置に記憶される前記音設定情報の各セットは、1又は複数の音設定パラメータを含み、前記方法は、
前記記憶装置内に、更に、前記音設定情報の各セット毎に、該セットに対応付けて設定されたリンクを特定するリンクIDを記憶するステップと、
プロセッサにより、前記リンクIDに基づき、共通のリンクIDを持つ複数セットの前記音設定情報の間で、前記音設定パラメータの設定状態を一致させるステップと
からなる非一過性のコンピュータ読取可能な記憶媒体。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(1)装置構成
図1Aは本発明の一実施形態にかかる音設定情報を設定するための装置のブロック図である。この実施例において、本発明に係る音設定情報を設定するための装置は、電子楽器10の構成要素の一部に組み込まれており、
図1Aは該電子楽器10の主要構成を略示している。
図1Aに示す電子楽器10は、演奏操作子(例えば鍵盤)50を操作することによって演奏を行うことが可能な電子楽器であり、CPU20と不揮発性メモリ30とRAM40と演奏操作子50と入出力部60と音生成出力部70とを備える。演奏操作子50は、鍵等の操作子であり利用者が演奏操作子50を操作することによって出力すべき音を指定する。入出力部60は、利用者からの指示等を入力する入力部と利用者に各種の情報(画像情報や音声情報)を出力する出力部とを含んでいる。一例として、入出力部60として、タッチパネル(入力部)を備えたディスプレイ(出力部)を想定する。
【0026】
音生成出力部70は、演奏操作子50の操作に応じた楽音を生成し音響的に出力するための回路およびスピーカーを備える。CPU20は、RAM40を一時記憶領域として利用して不揮発性メモリ30に記録されたプログラムを実行可能であり、CPU20は、当該プログラムの一つを実行することにより、演奏操作子50の操作内容を特定し、予め用意された音設定情報に基づいて演奏中の楽音を発生するために使用する音源(音色)および発生又は制御態様を特定する。そして、CPU20は、音設定情報によって特定された音源および発生又は制御態様で演奏操作子50の操作に応じた音を発生出力する指示を音生成出力部70に対して与える。これに応じて、音生成出力部70は、指示された音の楽音信号を生成し、増幅してスピーカーから出力する。
【0027】
なお、本実施形態においては、このような演奏における音設定を実現するために、不揮発性メモリ30は、音設定情報メモリ(レジストレーションメモリ)30aとリンク情報メモリ30bとボイス情報メモリ30cとを含んでいる。本実施形態における電子楽器10では、手動演奏パート(例えば右手用鍵盤領域、左手用鍵盤領域、足鍵盤領域等の演奏操作子(鍵盤)50の配置)及び自動伴奏用の演奏パートなどの音楽的ファクターに応じて定義されたm個の演奏パート(mは2以上の数)のそれぞれに関して音設定を行うことができるように構成されている。さらに、本実施形態においては、m個の演奏パートの音設定情報を1組のレジストレーションデータとし、n組(nは1又は複数)のレジストレーションデータを登録可能である。なお、ここでは、m個の演奏パートの音設定情報からなる1組のレジストレーションデータを単にレジストレーション又はレジストとも呼ぶ。
【0028】
図2Aは、音設定情報メモリ(又はレジストレーションメモリ)30aの構造を示す模式図である。音設定情報メモリ30aは、複数セットの音設定情報を記憶するものであり、該音設定情報の各セットは、1又は複数の音設定パラメータを含む。この実施例では、音設定情報メモリ30aは、複数組のレジストレーションデータを記憶するレジストレーションメモリとして機能している。
図2Aに示す例では、1セットの音設定情報(例えば図中のPR
11)は、1演奏パート(例えば図中のパート1)分の複数の音設定パラメータ(例えば図中のV
1、A
11〜N
11)を含んでいる。1組のレジストレーションデータ(例えば図中のレジスト1)は、複数の演奏パート1〜mのそれぞれに対応してこのような1セットの音設定情報(例えば図中のPR
11〜PR
m1)を有している。つまり、1組のレジストレーションデータ(例えば図中のレジスト1)は、複数演奏パート1〜mに対応する複数セットの音設定情報(例えば図中のPR
11〜PR
m1)の集合である。音設定情報メモリ(レジストレーションメモリ)30aは、このようなレジストレーションデータを複数組(レジスト1〜n)記憶している。なお、
図2Aにおいては、便宜上、1セットの音設定情報を示す符号として「PR」を使用し、それに付加された2桁のサフィックスの最初の桁によってパートを区別し、2番目の桁によってレジストを区別している。従って、例えば「PR
mn」は、或る1つのレジストn内の或る1つのパートmについての1セットの音設定情報を示す。以下、1セット(1パート)の音設定情報を一般化して示す符号として、2桁のサフィックスを省略した「PR」を使用するものとする。
【0029】
本実施形態において、1セット(1パート)の音設定情報PRを構成する複数の音設定パラメータは、音源波形を示す情報(ボイスID)と音の発生又は制御態様を示す複数種のコンディション情報とによって構成されている。音源波形を示す情報(ボイス情報ともいう)は、音源波形データそのものではなく、音源波形の所在場所を特定するボイスID(識別情報)からなっている。種々の音源波形データそのもの(実体)は、不揮発性メモリ30内の一領域であるボイス情報メモリ30c内に記録されており、ボイスIDによって該ボイス情報メモリ30c内の音源波形の所在場所(アドレス)が特定される。
図2Aにおいて、便宜上、ボイスIDの値を示す符号として「V」を使用し、それに付加された1桁のサフィックスによってID値の相違を示している。例えば、値V
1からなるボイスIDは、値V
4からなるボイスIDとは異なる音源波形を特定するが、異なる演奏パートで同じ値V
1からなるボイスIDが設定されているならば、それら異なる演奏パートにおいては同じ音源波形(音色)が特定される(使用される)。
【0030】
コンディション情報は音の発生又は制御態様を規定し得る複数種のパラメータ(A〜N)によって構成され、各種パラメータA〜Nのそれぞれに対応した実体的な値からなる。ここで、パラメータA〜Nは音の発生又は制御態様を設定若しくは変化させるパラメータであり、例えば、ビブラート、リバーブ、パン等の各種効果や音量等を設定・制御するためのパラメータであり、その値によってビブラート等の各種効果の程度や音の大きさ等が設定される。
図2Aにおいて、便宜上、コンディション情報を構成する各パラメータの種別を区別する符号として「A」〜「N」を使用し、それに付加された2桁のサフィックスによってそれぞれ同種のパラメータにおける実体的な値の相違を示している。例えば、或るタイプのパラメータAにおいて、符号A
11で示されたパラメータ値は、パート及び/又はレジストが異なっていても同じ値であることを示す。
【0031】
なお、ボイスIDによって特定される音源波形を示す情報(ボイス情報)は、各種の音源(音色)に対応する音を再現するための波形情報である。一方、コンディション情報は各種パラメータの実体的な値を示す情報である。従って、ボイス情報とコンディション情報とを比較すると、波形情報であるボイス情報は、パラメータの数値情報であるコンディション情報と比較して容量が大きい。そこで、本実施形態においては、音設定情報メモリ30aの記録領域には、音源波形を示す情報(ボイス情報)の実体を含めずに、音源波形を示す情報(ボイス情報)を参照するためのボイスIDを含むように構成している。
【0032】
音源波形を示す情報(ボイス情報)の実体的データは、ボイス情報メモリ30c内に記憶されている。
図2Cは、ボイス情報メモリ30cの構造を模式的に示しており、種々のボイスIDの値V
1〜V
yとそれに対応するボイス情報の実体的データとの対応づけを示している。
図2Cにおいて、「アドレス」欄は、各種ボイス情報の実体的データを記憶している記憶場所のアドレスを示しており、このアドレスが各種ボイスIDの値V
1〜V
yに対応付けられている。各アドレス欄に対応して記された「プリセットボイス1」、「プリセットボイス2」等の表示は、該アドレスに記憶されているボイス情報の実体的データの名称を示しており、これらの名称が付けられたボイス情報の実体的データ(例えば波形データ)が該名称を示す名称データと共に記憶されている。なお、本実施形態においては、予め定義されたボイス情報と利用者が定義したボイス情報とを利用可能であり、前者を「プリセットボイス」と称し、後者を「ユーザーボイス」と称する。
【0033】
本実施例においては、
図2Aに示すように、音設定情報メモリ30aにおいて、音設定情報PRの各セット毎に、該セットに対応付けて設定されたリンクを特定するリンクID(識別情報)をそれぞれ記憶している。ここで、本実施例で提案する「リンク」とは、共通(同一)のリンクIDが付された音設定情報PRの複数セット間で、それらの音設定パラメータ(ボイスID及びコンディション情報)の設定状態を共通にする(一致させる若しくは連動させる)概念である。従って、リンクIDの数に応じて複数の異なる「リンク」が存在し得る。また、追って述べるように、リンクの設定は任意に変更若しくは新設又は解除することができ。
図2Aにおいて、便宜上、リンクIDを示す符号として「L」を使用し、それに付加された1桁のサフィックスによってそれぞれのリンクIDの値の相違を示している。従って、同じ値のリンクID(例えばL
1)を持つ複数セットの音設定情報PR(例えばPR
11,PR
m1,PR
12)には共通のリンクが設定されており、それらの音設定パラメータ(ボイスID及びコンディション情報)の設定状態は共通となっている。
【0034】
一実施例として、個々のリンクIDによって特定される個別の各リンク毎に、当該リンクにおける音設定パラメータ(ボイスID及びコンディション情報)の設定状態を即座に参照できるようにするために、リンク情報メモリ30bが設けられている。
図2Bは、リンク情報メモリ30bの構造を示す図であり、該リンク情報メモリ30bにおいては、種々のリンクIDの値L
1,L
2,・・・に対応付けて、1セットの音設定情報における前記音設定パラメータ(ボイスID及びコンディション情報)の設定状態(値)、及び当該リンクに付けられた名称を示すデータ、がそれぞれ記憶される。
図2Bにおいて、「アドレス」欄は、リンクIDによって特定される1セットの音設定パラメータ(ボイスID及びコンディション情報)を記憶している記憶場所のアドレスを示しており、このアドレスがリンクIDの値L
1,L
2,・・・に対応付けられている。リンク情報メモリ30bにおいては、種々のリンクIDの各値L
1,L
2,・・・に対応付けて記憶される1セットの音設定情報における前記音設定パラメータ(ボイスID及びコンディション情報)の設定状態(値)は、当該リンクIDと同じ値のリンクIDを持つ音設定情報メモリ30a内の1セットの音設定情報における前記音設定パラメータ(ボイスID及びコンディション情報)の設定状態(値)と同じである。なお、リンク名称はリンク情報メモリ30bと別の記録領域において(例えばテーブルなどで)管理されていてもよい。
【0035】
本実施形態において、利用者は、演奏中の任意のタイミングにおいて入出力部60を操作することによってn組のレジストデータのいずれか1組を利用するための指示を行うことが可能である。当該指示に応じて、音設定情報メモリ(レジストメモリ)30aから該指示された1組のレジストデータが読み出され、電子楽器10において以後の楽音演奏のために利用されるように設定される。すなわち、当該指示が行われた後に演奏操作子50が操作されると、CPU20は、操作された演奏操作子50のパートに対応する1セットの音設定情報を該指示された1組のレジストデータの中から取得し、当該1セットの音設定情報が示す音で演奏操作子50の操作に応じた音を生成するよう音生成出力部70に指示する。
【0036】
このような構成において、CPU20が図示しない音設定情報設定/編集プログラムを実行すると、電子楽器10は音設定情報設定/編集装置として機能する。具体的には、音設定情報設定/編集プログラムは、リンク設定部と、音設定情報編集部と、編集内容反映部とを備えている。CPU20は、音設定情報編集部により、音設定情報PRを編集する機能を実行する。すなわち、CPU20は、入出力部60においてレジストの選択画面を表示してレジストの選択を受け付け、利用者が入出力部60によって1組のレジストを選択すると、選択された1組のレジストの複数セット(パート)の音設定情報PRを編集対象として特定する。編集対象のレジストが特定されると、CPU20は、選択されたレジストの全パートについての音設定情報PRを不揮発性メモリ30内の音設定情報メモリ30aから取得し、RAM40のカレントメモリ領域40aに記録する。なお、カレントメモリ領域40aは、編集内容を逐次反映させた状態で音設定情報PRを保持するためにRAM40に確保された記録領域である。以下、カレントメモリ領域40aをカレント領域40aと略称する。
【0037】
さらに、CPU20は、入出力部60においてパートの選択画面を表示してパートの選択を受け付け、利用者が入出力部60によって1パートを選択すると、カレント領域40aにバッファ記憶された1組のレジストデータの中の該選択された1パートの音設定情報PRを編集対象として特定する。次に、CPU20は、編集対象パートの音設定情報PRを編集するための編集画面(ユーザインターフェース:UI画面)を入出力部60に表示し、入出力部60に対する利用者の操作を受け付け、該受け付けた操作に応じた編集処理を行う。すなわち、編集画面に対する編集操作が行われた場合、CPU20は、カレント領域40aに記録された該編集対象パートの音設定情報PR(音設定パラメータ)を該編集操作に従い修正する。
【0038】
図1B〜
図1Eは、編集画面の例を示す図である。これらの編集画面は、1つの編集対象パートが特定された状態で表示される画面であり、
図1B〜
図1Eは、或る1組のレジストデータ中のパート1を編集対象として選択した場合に表示される画面を例示している。例えば、レジスト1のパート1の音設定情報PRが編集対象であると仮定して以下説明を行う。
【0039】
図1Bおよび
図1Dは現在の編集対象パートに対して割り当てるボイス(音色)を選択するための編集画面(ボイス選択用のUI画面つまりボイス選択画面)を例示している。ボイス(音色)の選択手法としては、従来より知られているように、複数のプリセットボイス及びユーザーボイスの中から所望の1ボイスを選択するやり方がある。これは、所望のボイス(音色)を直接的に選択するやり方である。更に、本実施例では、既存の1又は複数のリンクの中から所望の1リンクを選択することにより、間接的にボイス(音色)を選択することができる。つまり、その場合は、選択した1リンクに係る1セットの音設定情報内のボイスIDによって特定されているボイス(音色)が間接的に選択されることになる。すなわち、
図1Bおよび
図1Dに示すボイス選択画面においては、プリセットボイス、ユーザーボイス、既存のリンクのいずれかのタイプを選択するためのボタンB
1〜B
3が表示され、いずれかのボタンが選択されると、CPU20は、選択されたボタンに対応する選択肢を特定し入出力部60を制御して表示領域Rに選択肢を表示する。
【0040】
例えば、プリセットボイスを選択するためのボタンB
1が選択された場合、CPU20は、不揮発性メモリ30内のボイス情報メモリ30cを参照し、プリセットボイスとして記録されている全てのボイス情報を特定し、それらの名称データを読み出す。そして、CPU20は、それらの全てのプリセットボイスの名称を、
図1Bに示すプリセットボイス1、プリセットボイス2等と表示されているように、選択肢として表示領域Rに表示する。ユーザーボイスを選択するためのボタンB
2が選択された場合、CPU20は、不揮発性メモリ30内のボイス情報メモリ30cを参照し、ユーザーボイスとして記録されている全てのボイス情報を特定し、それらの名称データを読み出し、それらの名称(ユーザーボイス1、ユーザーボイス2等)を選択肢として表示領域Rに表示する。プリセットボイスの選択肢とユーザーボイスの選択肢は音源を指定するための選択肢であるため、音源選択肢である。
【0041】
既存のリンクのいずれかを選択するためのボタンB
3が選択された場合、CPU20は、不揮発性メモリ30内のリンク情報メモリ30bを参照し、リンク情報メモリ30b内に登録されている全てのリンク(つまり既存のリンク)の名称データを読み出す。そして、CPU20は、それらの全ての既存のリンク名称を、
図1Dにリンク音1、リンク音2等と示されているように、選択肢として表示領域Rに表示する。これらの選択肢は既存のリンクを選択するための選択肢である。なお、
図1B、
図1Dにおいて、白抜きで描かれた矩形は選択されたボタンや選択肢を示し、ハッチを付して描かれた矩形は選択されていないボタンや選択肢を示している。例えば、まだ何もボイス又はリンクが選択されていない場合は、表示領域R内の全ての選択肢がハッチングを付して描かれた矩形からなる。その状態で何らかのボイス又はリンクの選択肢が選択されると、選択された選択肢が白抜きで描かれた矩形に変わる。何からのボイス又はリンクが選択されている状態で、別のボイス又はリンクの選択肢が選択されると、最新の選択された選択肢が白抜きで描かれた矩形に切り替わり、それまで選択されていた選択肢はハッチングを付して描かれた矩形に切り替わる。
【0042】
図1Bに示すようにプリセットボイス1が新たに選択されると、CPU20は、カレント領域40aに記憶する当該編集対象パートについての1セットの音設定情報PRにおけるボイスIDの値として、プリセットボイス1を示す値V
1を書き込む。このようにして、現在の編集対象パートについてのボイス(音色)の選択若しくは編集が行われる。現在の編集対象パートについて、新たなボイス(音色)が選択された場合、、CPU20は、カレント領域40aに記憶する当該編集対象パートについてのコンディション情報として、所定のデフォルトのパラメータ値(複数)を書き込む。なお、後述するように、当該編集対象パートについてのコンディション情報をデフォルトのパラメータ値(複数)で更新することなく、それまで保持されていた何らかの値(複数)がそのまま保持されるようにしてもよい。引き続いて、これらのコンディション情報を適宜編集することができる。
【0043】
コンディション情報の編集指示が行われると、CPU20は入出力部60を制御して、パラメータ値を編集可能に表示する。
図1Cは、パラメータ値が編集可能に表示された編集画面の例を示している。
図1Cにおいては、コンディション情報中のパラメータ種別A〜Nが編集対象であることが文字等で示されるとともに、各文字の下方に、パラメータ値を変更するためにユーザにより操作可能なスライダバーSba、Sbnの画像が示されている。当該スライダバーSba、Sbnは、ユーザのタッチ操作によりスライドノブDa、Dnを上下に移動させることによってパラメータ値を変化させることが可能であり、スライダバーSba、Sbnの上下方向の長さで示される値域の中から所望の値を選択することが可能である。すなわち、下端からスライドノブDa、Dnまでのハッチを付した部位がパラメータ値を示すようなUIが構成されている。CPU20は、入出力部60からの信号に基づいて当該スライドノブDa、Dnに対する操作を受け付けてパラメータ値の編集結果を受け付ける。なお、
図1Cにおいては、編集対象パートであるレジスト1のパート1において、音源がプリセットボイス1に設定されていることが文字で示されている。また、ここでは、簡単のために、パラメータAおよびNのみについて実例を表示している。
【0044】
本実施形態においては、以上のような編集を実施可能な構成において、音設定情報を設定/編集するための編集プログラムがリンク設定部および編集内容反映部による処理をCPU20に実行させることにより、複数の音設定情報を簡単に一括編集することができるように構成されている。本実施形態において利用者は、コンディション情報の編集過程でリンクの設定を指示することによって編集中の音設定情報PRに対して新規にリンクを設定可能である。また、利用者は、設定済みの既存のリンクの選択肢を選択することによって、編集中の音設定情報PRを既存のリンクのいずれかに組み込むようにリンク設定することが可能である。
【0045】
具体的には、コンディション情報の編集画面には、
図1C、
図1Eに示すように、リンクの設定を有効にするためのオンボタンBsとリンクの設定を解除するためのオフボタンBcとが設けられている。なお、
図1C、
図1Eにおいては、ボタンBs、Bcが選択されている状態を白抜きで示し、選択されていない状態をハッチによって示している。
図1Cに示すようにボタンBsが選択されていない(リンクオフ)状態で当該オンボタンBsが選択されると、CPU20は、新たなリンクを設定するための新規リンク作成指示を受け付ける。この場合、CPU20は、リンク情報メモリ30bを参照し、リンク情報メモリ30bの記録領域から空き領域を選択し、当該空き領域にカレント領域40aのボイスIDおよびコンディション情報を記録する。すなわち、編集中の音設定情報PRと同一の1セットの音設定情報を不揮発性メモリ30のリンク情報メモリ30bに記録する。この際、CPU20は、リンク情報メモリ30b内に新たに記録された1セットの音設定情報に対して新たなリンクID及びリンク名称を自動的に付与し、該1セットの音設定情報に対応付けて記録する。そして、新たなリンクに対して自動的に付与されたリンクIDは、当該新たなリンクに係る1セットの音設定情報のリンク情報メモリ30b内の記録位置を示すアドレスと関連付けられ、該リンクIDにより該リンク情報メモリ30b内のリンク情報(リンク設定された1セットの音設定情報)を参照(アクセス)できるようになる。なお、利用者が入出力部60を操作することによって所望のリンク名称を入力できるようにしてもよい。
【0046】
さらに、CPU20は、前記新たなリンクに対して自動的に付与された前記リンクIDを、カレント領域40aにおいて、現在編集中の1セットの音設定情報PRに対応づけて記憶する。こうして、編集対象パートの1セットの音設定情報PRに対して新たなリンクが設定される。編集対象パートの音設定情報PRに対して適宜編集を続行した後、編集が終了されると、カレント領域40aに記録されている1セットの音設定情報PRによって、リンクIDの示すリンク情報メモリ30b内のアドレスに記録されている1セットの音設定情報PRが更新される。なお、
図1Cに示すようにリンクオフが維持されたままであると、カレント領域40aに記録されている編集対象パートの1セットの音設定情報PRに対応するリンクIDはOFF(リンクが設定されていないことを示す)である。例えば、
図2Aにおいて「リンクID:OFF」と記されているパートは、リンクが設定されていないことを示している。
【0047】
一方、編集対象パートの1セットの音設定情報PRを既存のリンクに組み込む操作は
図1Dに示す編集画面で行われる。例えば、
図1Dに示す編集画面において、
図1Dに示すようにリンク音1が選択されると、CPU20は、リンク音1のリンクIDを特定し、該リンクIDによってリンク情報メモリ30bを参照して、該選択されたリンク音1のリンクIDに対応する1セットの音設定情報PRをリンク情報メモリ30bから取り出し、カレント領域40aの編集対象パートの1セットの音設定情報PRとして書き込む。リンク音1は、
図2Bの例において値L
1のリンクIDに対応するアドレスに記録されたリンク情報からなっている。従って、この例では、値V
1からなるボイスIDと、パラメータA
11〜N
11からなるコンディション情報とを含む1セットの音設定情報PRがカレント領域40aの編集対象パートに書き込まれる。
【0048】
さらに、CPUは、カレント領域40aの編集対象パートの1セットの音設定情報PRに該選択されたリンク音1のリンクID(L
1)を対応づける。このように、リンクが設定された状態でコンディション情報の編集指示が行われると、
図1Eの編集画面において
図1Cと同様にコンディション情報を編集することができる。追って詳しく述べるように、
図1Eの編集画面においてコンディション情報が編集されると、カレント領域40aの編集対象パートの1セットの音設定情報PRが編集されるだけでなく、それにリンクしている他の1又は複数セットの音設定情報PRにおいても、遅かれ早かれ、同じ編集内容が反映されるようになる。なお、以上の編集画面においては、図示しない切り替えボタンで編集画面を切り替えたり、編集終了ボタンで編集終了したりすることが可能である。
【0049】
本実施形態においてCPU20は、
図1B〜
図1Eの編集画面で編集終了の指示が行われた場合に、カレント領域40aに記憶されている1組のレジストデータ(複数セットの音設定情報PR)を、不揮発性メモリ30の音設定情報メモリ30aに記録する。なお、CPU20は、リンクが設定されている1セットの音設定情報PRが編集された場合、それにリンクしている他の1又は複数セットの音設定情報PRにおいても、同じ編集内容が反映されるように、適切なタイミングでリンク反映処理を行う。例えば、或るリンクが設定されている1セットの音設定情報PRの編集を終了したときに、該リンクのリンクIDと共通のリンクIDを持つ全てのパートを音設定情報メモリ30a内の全てのレジストデータの中からサーチし(但し今編集終了したばかりのパートはサーチ対象から除外してもよい)、サーチした該共通のリンクIDを持つ音設定情報メモリ30a内の全ての音設定情報PRの各セットの記録を、リンク情報メモリ30bに記憶されている当該リンクIDに係る1セットの音設定情報PRにおける音設定パラメータの設定状態に一致するように、記憶更新するようにしてよい。これにより、編集終了とほぼ同時に、編集された1セットの音設定情報PRに対応付けられたリンクIDと共通のリンクIDを持つ1又は複数セットの音設定情報PRの間で、音設定パラメータの設定状態が一致するように、リンク反映処理がなされる。
【0050】
別の例として、上述のような編集終了直後のリンク反映処理に代えて、編集終了後から編集済の音設定情報を楽音再生のために利用する直前までの間の適宜のタイミングで、必要なリンク反映処理を行うようにしてもよい。例えば、楽音再生に利用するために所望のレジストデータを選択し、カレント領域40aに書き込むときに、該選択されたレジストデータに含まれる複数パートのうちいずれか1又は複数のパートの音設定情報PRが有効なリンクID(リンクオフ以外のリンクID)を持っているならば、それらの有効なリンクIDに対応する1又は複数のリンクに対応する1又は複数セットの音設定情報PRをリンク情報メモリ30bから読み出し、読み出した音設定情報PRによって、対応するリンクIDを持つ音設定情報メモリ30a内の該レジストデータ内の各セットの音設定情報PRの記録を更新するようにしてもよい。なお、カレント領域40aには、このようなリンク反映処理を行った後のレジストデータを書き込む。これにより、編集済の音設定情報を楽音再生のために利用する直前までの間の適宜のタイミングで、編集された1セットの音設定情報PRに対応付けられたリンクIDと共通のリンクIDを持つ1又は複数セットの音設定情報PRの間で、音設定パラメータの設定状態が一致するように、リンク反映処理がなされる。
【0051】
別の例として、楽音再生に利用するために所望の1組のレジストデータを選択し、カレント領域40aに書き込むときに、該1組のレジストデータを音設定情報メモリ30aから取り出して、該カレント領域40aに一旦書き込み、それから、該選択されたレジストデータに含まれる複数パートのうちいずれか1又は複数のパートの音設定情報PRが有効なリンクID(リンクオフ以外のリンクID)を持っているならば、それらの有効なリンクIDに対応する1又は複数のリンクに対応する1又は複数セットの音設定情報PRをリンク情報メモリ30bから読み出し、読み出した音設定情報PRによって、対応するリンクIDを持つカレント領域40a内の各セットの音設定情報PRの内容を更新するようにしてもよい。これによっても、編集済の音設定情報を楽音再生のために利用する直前までの間の適宜のタイミングで、編集された1セットの音設定情報PRに対応付けられたリンクIDと共通のリンクIDを持つ1又は複数セットの音設定情報PRの間で、音設定パラメータの設定状態が一致するように、リンク反映処理がなされる。
【0052】
以上の構成によれば、複数セットの音設定情報PR間で共通のリンクが設定されている場合、共通のリンクが設定された複数セットの音設定情報30aのいずれか1セットが編集されれば、リンクが設定された他セットの音設定情報PRに同じ編集内容が反映される。従って、共通のリンクIDを介して一旦リンクが設定されると、或る1セットの音設定情報PRに対する編集を、リンクしている他のセットの音設定情報PRに自動的に反映することができる。また、1セット毎の音設定情報PRにリンクが設定されるため、リンクを反映する際には、コンディション情報のパラメータA〜Nのいずれが編集され、いずれが編集されていないのかを考慮することなく、少なくとも1個のパラメータが編集されているのであれば、その編集内容がリンクしている他のセットの音設定情報PRに反映される。このため、同じセットの音設定情報PRの修正を繰り返す場合であっても、該修正したセットの音設定情報にリンクしている他のセットの音設定情報についても簡単に一括修正を行うことが可能である。また、従来のように修正の繰り返しに際して一括編集対象とする演奏パートやレジストデータを選択し忘れるミスが発生し得ないため、正常に編集作業を完了することが容易になる。
【0053】
(2)編集処理:
(2−1)ボイス選択/リンク設定処理:
次に、編集プログラムが実行する編集処理を詳細に説明する。まず、ボイス選択/リンク設定処理を説明する。ボイス選択/リンク設定処理は、編集対象のレジストおよびパートが特定された状態でCPU20によって実行される。編集対象とされた1組のレジストデータに含まれる複数セットの音設定情報PRがカレント領域40aに記録され、かつ、
図1Bや
図1Dに示すような1つの編集対象パートの編集画面(表示領域R上の選択肢を含む)が入出力部60に表示された状態で、CPU20が
図3に示すボイス選択/リンク設定処理を実行する。
【0054】
ボイス選択/リンク設定処理において、CPU20は、利用者が行った操作が選択肢の選択操作であるか否かを判定する(ステップS100)。すなわち、CPU20は、利用者が入出力部60にて行った操作が、表示領域Rに表示された音源選択肢またはリンク選択肢の選択操作であったか否かを判定する。ステップS100において、利用者が行った操作が選択肢の選択操作であると判定されない場合、操作に応じた処理を行う(ステップS105)。ステップS105において対象とする操作は、選択肢の選択操作以外の操作であれば良く、例えば、ボタンB
1〜B
3の操作に応じてハイライト表示とグレーアウト表示を切り替えるとともに表示領域R上の選択肢を切り替える処理、コンディション情報の編集画面への切り替え処理、編集終了の指示を受け付ける処理等が含まれる。
【0055】
一方、ステップS100において、利用者が行った操作が選択肢の選択操作であると判定された場合、CPU20は、選択された選択肢が、既存のリンクを選択してリンクを設定することを指示するリンク設定指示を行うためのリンク選択肢であったか否かを判定する(ステップS110)。選択された選択肢がリンク設定指示を行うためのリンク選択肢であったと、ステップS110において判定されない場合、選択された選択肢は音源選択肢であるため、CPU20は、選択肢によって指示されたボイスのボイスIDをカレント領域40aの編集対象のパートのボイスIDとして記録する(ステップS115)。
【0056】
次に、CPU20は、コンディション情報の各パラメータA〜Nの所定のデフォルト値を、カレント領域40aの編集対象パートのコンディション情報として記録する(ステップS120)。この結果、編集対象パートの1セットの音設定情報PRのコンディション情報の現在値が、所定のデフォルト値に設定される。次に、CPUは、指示された選択肢をハイライト表示する(ステップS125)。すなわち、CPU20は、入出力部60を制御し、ステップS110にて選択されたと判定された選択肢をハイライト表示させ、他の選択肢をグレーアウト表示させる。これにより、
図1Bに示すように、選択されたボイスの名称が明示される。
【0057】
一方、選択された選択肢がリンク設定指示を行うための選択肢であったと、ステップS110において判定された場合、CPU20は、選択肢によって選択された既存のリンクのリンクIDを、カレント領域40a内の当該編集対象パートのリンクIDとして記録する(ステップS130)。これにより、カレント領域40aにおける現在の編集対象パートに係る1セットの音設定情報PRに対応付けてリンクIDが記憶される。また、CPU20は、該リンクIDによってリンク情報メモリ30bを参照し、該選択されたリンク選択肢に係る既存のリンクの音設定情報PRが記録されているアドレスを特定し、該既存のリンクの音設定情報PRをカレント領域40aに呼び出すことができる。こうして、編集対象パートの1セットの音設定情報PRが既存のリンクに組み入れられた状態となる。
【0058】
次に、CPU20は、リンクIDが示すボイスIDをカレント領域40aの編集対象のパートのボイスIDとして記録する(ステップS135)。すなわち、CPU20は、前記選択されたリンク選択肢に係る既存のリンクのリンクIDが示すリンク情報メモリ30bのアドレスから、当該選択された既存のリンクのボイスIDを取得し、編集対象パートのボイスIDとしてカレント領域40aに記録する。
【0059】
次に、CPU20は、リンクIDが示すコンディション情報をカレント領域40aの編集対象パートのコンディション情報として記録する(ステップS140)。すなわち、CPU20は、前記選択されたリンク選択肢に係る既存のリンクのリンクIDが示すリンク情報メモリ30bのアドレスから、当該選択された既存のリンクのコンディション情報を取得し、取得したコンディション情報で、カレント領域40aに記録された編集対象パートの1セットの音設定情報PR内のコンディション情報を更新する。この結果、編集対象パートの音設定情報PRのボイスおよびコンディション情報の現在値が当該選択された既存のリンクに同期化された状態となる。次に、CPU20は、指示された選択肢をハイライト表示する(ステップS145)。これにより、
図1Dに示すように、選択されたリンクの名称が明示される。このように、CPU20は、前記選択された1セットの前記音設定情報における前記音設定パラメータの設定状態を、前記選択されたリンクのリンクIDと共通のリンクIDを持つ他のセットの前記音設定情報における前記音設定パラメータに一致させるように構成されている。
【0060】
以上のように、本実施形態においては、
図1B、
図1Dに示す編集画面で音源選択肢が選択された場合、編集対象パートのボイスが指定通りに設定され、かつ、そのコンディション情報はデフォルト値に設定される。一方、リンク選択肢が選択された場合、編集対象パートのボイスとコンディション情報とリンクIDが、該選択された既存のリンクによって指定された通りに設定される。従って、ボイス選択肢とリンク選択肢とでは、選択対象が異なるが、本実施形態において、両選択肢は同一レイアウトの表示領域Rに表示され(
図1B、
図1D)、同様の操作で選択され、両選択肢が選択された後に表示されるコンディション情報の編集画面も同一である(
図1C、
図1E)。このため、利用者は、両選択肢による選択内容の差異を意識することなく編集を行うことができる。すなわち、CPU20は、1セットの前記音設定情報の編集のために、定義済の複数のボイスのいずれかを選択することと、設定済の複数のリンクのいずれかを選択することを、1つのユーザインターフェース画面で行えるように前記表示器において該1つのユーザインターフェース画面を提示し(
図1B,1D)、前記定義済の複数のボイスのいずれかが選択されたときに、該選択されたボイスを制御するための前記音設定パラメータを表示して、該表示された音設定パラメータをユーザ操作に応じて編集しうるようにし(
図1C)、前記設定済の複数のリンクのいずれかが選択されたときに、該選択されたリンクに対応する1セットの前記音設定情報に含まれる前記1又は複数の音設定パラメータを表示して、該表示された音設定パラメータのいずれかをユーザ操作に応じて編集しうるようにする(
図1E)、ように構成されている。
【0061】
(2−2)コンディション編集処理:
図1Bに示す編集画面でボイスが選択された後、または、
図1Dに示す編集画面で設定済のリンクが選択された後、コンディション情報の編集指示が行われると、ステップS105においてコンディション情報の編集画面への切り替え処理が行われる。この場合、CPU20は、
図4に示すコンディション編集処理を実行する。コンディション編集処理において、CPU20は、現在の編集対象パートの音設定情報PRにおいてリンク設定済であるか否かを判定する(ステップS200)。すなわち、CPU20は、編集対象パートの1セットの音設定情報PRにリンクIDが対応づけられている場合には、リンク設定済であると判定する。
【0062】
ステップS200において、編集対象パートの音設定情報PRにリンクIDが対応づけられていると判定されない場合、CPU20は、入出力部60からの信号に基づいて
図1Cに示すスライドノブDa、Dnに対する操作が行われたか否かを判定することにより、コンディション情報が変更されたか否かを判定する(ステップS205)。
【0063】
ステップS205において、コンディション情報が変更されたと判定された場合、CPU20は、カレント領域40aの編集対象パートのコンディション情報を修正する(ステップS210)。すなわち、CPU20は、スライドノブDa、Dnに対する操作量に基づいて、コンディション情報の各パラメータA〜Nの編集後のパラメータ値を特定し、特定されたパラメータ値でカレント領域40aの編集対象パートのコンディション情報を修正する。ステップS205において、コンディション情報が変更されたと判定されない場合、CPU20は、ステップS210をスキップする。
【0064】
次に、CPU20は、新たなリンクを設定する指示がされたか否かを判定する(ステップS215)。すなわち、CPU20は、
図1Cに示すオンボタンBsが選択された場合に新たなリンクを設定する指示がされたと判定する。ステップS215において、新たなリンクの設定が指示されたと判定された場合、CPU20は、不揮発性メモリ30内のリンク情報メモリ30bの記録領域から空き領域を特定し、空き領域の先頭アドレスに対して、カレント領域40aに記録されている現在の編集対象パートの1セットの音設定情報PR(編集中の現在値)を送り、記憶させる(ステップS220)。
【0065】
次に、CPU20は、新たなリンクのリンクIDを決定し、カレント領域40aの編集対象パートの1セットの音設定情報PRに対応付けて該リンクIDを記録する(ステップS225)。例えば、CPU20は、前記ステップS220において前記1セットの音設定情報PR(編集中の現在値)を記録した領域の先頭アドレスをリンクIDとして決定し、当該リンクIDをカレント領域40aの編集対象パートの1セットの音設定情報PRに対応づけて記録する。以上の処理の結果、編集対象パートの1セットの音設定情報PRに対応づけて新たなリンクが設定され、該新たなリンクに係る1セットの音設定情報PR(ボイスIDおよびコンディション情報)がリンク情報メモリ30bに記録される。なお、この場合、CPU20は、入出力部60を制御し、新たなリンクが設定されたこと(例えば、リンクの名称を示す案内)を編集画面に表示する(ステップS230)。また、ステップS215において、新たなリンクの設定が指示されたと判定されない場合、CPU20は、ステップS220〜S230をスキップする。このような新たなリンクが設定された直後においては、該新たなリンクにリンクする他のパートは存在していない。しかし、その後、前記
図1Dに示されたような既存のリンクの選択に応じて、複数のパート(複数セットの音設定情報PR)が該リンクと共通のリンクIDを持つようになるであろう。
【0066】
一方、ステップS200において、編集対象パートの音設定情報PRにリンクIDが既に対応づけられていると判定された場合、CPU20は、コンディション情報が変更されたか否かを判定し(ステップS240)、コンディション情報が変更されたと判定された場合、カレント領域40aの編集対象パートのコンディション情報を修正する(ステップS245)。なお、ステップS240およびS245はステップS205およびステップS210と同様の処理である。ただし、ステップS240において、コンディション情報が変更されたと判定されない場合、CPU20は、ステップS245とS250をスキップする。
【0067】
ステップS245において、カレント領域40aの編集対象パートのコンディション情報が修正されると、CPU20は、カレント領域40a内において該編集対象パートと共通のリンクが設定されている全てのパートのボイスおよびコンディション情報を、該編集対象パートのボイスおよびコンディション情報と共通の設定状態となるように、修正する(ステップS250)(つまりリンク反映処理を行う)。すなわち、カレント領域40aには、編集対象のレジストの全パート(パート1〜パートm)の音設定情報PRが記録されており、特定のパートが編集対象パート(
図1B〜
図1Eではパート1)である場合に、編集対象パート以外のパートに編集対象パートと同一のリンクが設定されている場合もあり得る。本実施形態においては、この場合、編集対象パートと同一のリンクが設定されている他のパートの音設定情報PRについては編集対象パートを編集している過程で修正する(つまりリンク反映処理を行う)。このため、CPU20は、編集対象パートと同一のリンクIDのパートがカレント領域40aに存在するか否か判定し、存在する場合に、編集対象パートの音設定情報PRと同一のボイスおよびコンディション情報となるようにカレント領域40aの記録内容を修正する。
【0068】
例えば、
図2Aに示す例において、レジスト1のパート1が編集対象パートである場合、パートmにもパート1と共通のリンクID(L1)が対応づけられている。この場合、パート1のコンディション情報が修正されるとパートmのコンディション情報も連動して修正される。すなわち、同一レジスト内の複数パートは同時に使用されるため、本実施形態においては、編集対象パートの編集過程で編集が反映される構成とすることで、リアルタイムに編集対象パートのコンディション情報を他のパートへ反映させる。
【0069】
次に、CPU20は、リンクの設定が解除されたか否かを判定する(ステップS255)。すなわち、CPU20は、
図1Dに示すオフボタンBcが選択された場合に、編集対象パートに設定されたリンクの設定が解除されたと判定する。ステップS255において、リンクの設定が解除されたと判定された場合、CPU20は、カレント領域40aの編集対象パートの音設定情報PRに対応付けられたリンクIDをオフに設定する(ステップS260)。すなわち、CPU20は、カレント領域40aの編集対象パートの音設定情報PRのリンクIDを削除する。以上のように、本実施形態においては、編集対象パートの音設定情報PRに対応づけられたリンクIDを削除するのみでリンクを解除する(リンクから離脱する)ことができるため、解除されたリンクIDと同じリンクIDを持つ他のパートにおけるリンク設定に影響を与えず、また、リンク情報メモリ30bにおける当該解除されたリンクIDに係るリンク情報の記憶にも影響を与えることなく、容易にリンク設定を解除することができる。なお、ステップS255において、リンクの設定が解除されたと判定されない場合、CPU20は、ステップS260をスキップする。
【0070】
(3)編集内容反映処理:
編集処理によりカレント領域の1セットの音設定情報PRが編集され、該編集された1セットの音設定情報PRにリンクIDが対応付けられている場合、その編集内容によってリンク情報メモリ30bにおける対応するリンクIDに係る1セットの音設定情報PRの記憶が更新される。さらに、前述のように、編集終了直後、若しくは編集終了後から編集済の音設定情報を楽音再生のために利用する直前までの間の適宜のタイミングで、リンク情報メモリ30bが適宜参照されることにより、遅かれ早かれ、音設定情報メモリ30a内において、該編集されたリンクIDと共通のリンクIDを持つ他の1又は複数セットの音設定情報PRに対して、該編集内容が反映される。
【0071】
(3−1)リンク情報メモリ30bの更新:
カレント領域40aの編集対象パートの1セットの音設定情報PRに対する編集を終了させる終了指示が行われると、該編集された1セットの音設定情報PRにリンクIDが対応付けられている場合、カレント領域40aに記録されている該1セットの音設定情報PRの内容は、該リンクIDが示す不揮発性メモリ30のリンク情報メモリ30b内のアドレスに記録され、リンク情報として利用されるようになる。そして、このようにリンク情報が不揮発性メモリ30のリンク情報メモリ30bに記録された状態においては、同じリンクIDが設定された音設定情報PRの全てのセットに対してリンク情報メモリ30bにおける同じリンクIDの音設定情報PRの内容を反映することが可能になる。
【0072】
(3−2)リンクが設定された音設定情報PRへの反映:
編集対象でなかったレジスト内に、同じリンクが設定されている音設定情報PRが存在する場合、該音設定情報PRを演奏に利用する以前の任意のタイミングでリンク情報メモリ30bに記憶している当該リンクの音設定情報PRの内容を、音設定情報メモリ30a内の音設定情報PRに反映すればよい。例えば、あるレジストが演奏に利用される場合や編集対象とされる場合において、CPU20が当該レジスト内に何らかのリンクIDが対応づけられた音設定情報PRが存在するか否か判定し、存在する場合に当該リンクIDが示すリンク情報(音設定情報PR)をリンク情報メモリ30bから取得し、音設定情報メモリ30aにおける当該レジスト内の該リンクIDに対応付けられたパートの音設定情報PRの記憶を更新するとする構成を採用可能である。すなわち、演奏に利用したい(または編集対象としたい)或る1組のレジストデータをカレント領域40aに読み出す際に、音設定情報メモリ30aにおける当該1組のレジストデータ内のリンクIDに対応付けられた全てのパートの音設定情報PRをリンク情報メモリ30bの内容を利用して更新し、更新した後の1組のレジストデータを音設定情報メモリ30aから取り出してカレント領域40aに書き込む。あるいは、この変形として、演奏に利用したい(または編集対象としたい)或る1組のレジストデータをカレント領域40aに読み出す際に、該1組のレジストデータを音設定情報メモリ30aから取り出してカレント領域40aに書き込み、その後、該カレント領域40aに書き込んだ1組のレジストデータのうち、リンクIDに対応付けられた全てのパートの音設定情報PRをリンク情報メモリ30bの内容を利用して更新するようにしてもよい。後者の場合は、音設定情報メモリ30a内のレジストデータはリンク情報メモリ30bの内容によって更新されないが、該レジストデータを使用するためにカレント領域40aに書き込んだときにリンクのために必要な更新がリンク情報メモリ30bの内容を参照してによってカレント領域40aに対してなされるので、問題ない。このように、CPU20は、リンクIDに基づいて前記リンク情報メモリ30bを参照することにより、共通のリンクIDを持つ複数セットの音設定情報PRの間で、音設定パラメータの設定状態を一致させるように構成されている。
【0073】
むろん、編集対象の編集終了の際に、音設定情報メモリ30a内の全てのレジスト内からリンクが設定された音設定情報PRを検索して、検索された音設定情報PRの全てに対して編集内容が反映されるように構成しても良い。なお、このような構成とすれば、音設定情報メモリ30aの汎用性を高めることができる。例えば、当該音設定情報メモリ30aの記録内容を着脱可能な記録媒体にコピーして取り出し、リンク設定機能がない電子楽器で利用する場合であっても、同じリンクIDが設定された音設定情報PRの全てが同一の内容に設定された状態で利用可能である。むろん、カレント領域40aの音設定情報PRの編集内容を不揮発性メモリ30の音設定情報メモリ30aに反映するタイミングとしても、種々のタイミングを想定可能であり、或るリンクIDが対応付けられている1つの編集対象パートで編集が行われる度に、その編集内容を、不揮発性メモリ30の音設定情報メモリ30a内の同じリンクIDが対応付けられている他のレジストの1又は複数のパートの音設定情報PRとして記憶する(反映する)ようにした構成等を採用可能である。この場合、カレント領域40aで編集されたリンクIDに対応付けられた音設定情報PRを記憶するためにリンク情報メモリ30bを設ける必要はない。同じリンクが設定された複数セットの音設定情報PRを判定する仕組み、例えば、音設定情報メモリ30aから同じリンクIDを持つ音設定情報PRをサーチする、あるいは別途設けられたリスト又はテーブル等を参照して同じリンクIDを持つ音設定情報PRをサーチする、等の仕組みがあれば、専用のリンク情報メモリ30bを設ける必要がない。若しくは、音設定情報メモリ30a内に記録された適宜のパートの記憶内容(音設定情報PR及びリンクID)を利用して、リンク情報メモリ30bと等価的な機能を実現することができる。
【0074】
リンク情報メモリ30bを設けない場合、1組のレジストデータに関する或るリンクIDが対応付けられている1つの編集対象パートの編集が終了した時点では、その編集内容を、音設定情報メモリ30a内の当該1組のレジストデータ内の当該パートの1セットの音設定情報PRに対してのみ反映する(記録)する構成としてもよい。その場合、該記録した(最新の)1セットの音設定情報PRを記録している音設定情報メモリ30a内のアドレスを当該リンクIDと共に別途記憶しておき、その後の適宜のタイミングで、該記憶したアドレスとリンクIDとに基づき、同じリンクIDが対応付けられている音設定情報メモリ30a内の他の1又は複数のパートの音設定情報PRを、前記記録した最新の1セットの音設定情報PRで、更新し(反映し)てから利用するようにしてもよい。
【0075】
(4)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、音設定情報の編集に限らない任意のユーザー操作の過程においてリンクの設定や解除を実行可能に構成しても良い。また、電子楽器10の構成としても、上述の構成に限定されず、着脱可能な記録媒体に記録された音設定情報PR等を取得し編集する構成であっても良いし、通信I/Fを介して他の装置から音設定情報PR等を取得し編集する構成であっても良い。さらに、不揮発性メモリ30は、各種の情報を保持することができる記録媒体であれば良く、フラッシュメモリ等によって構成可能であるが、他のメモリが利用されても良いし、記録媒体がハードディスクドライブなどの他の媒体で構成されても良い。
【0076】
さらに、
図1Cや
図1Dにおいて表示されるコンディション情報の初期値はデフォルト値に限定されない。例えば、編集対象パートの音設定情報PRとして既にパラメータ値が設定されている場合には当該パラメータ値を初期値としても良いし、前回の編集画面で表示されていたパラメータ値を初期値としても良い。さらに、音設定情報に対応づけられるリンクIDは、少なくとも複数の音設定情報の間に共通のリンクが設定されていることを示し他のリンクと区別しうる情報であれば良く、識別子としての符号化形式及び記録形式などの面で各種の変形があり得る。
【0077】
例えば、音設定情報メモリ(レジストメモリ)30a内に記録された音設定情報PRの各セットに対応するリンクIDは、音設定情報PRと一緒に音設定情報メモリ(レジストメモリ)30a内に記憶されていなくてもよい。別途に設けたテーブル又はリスト内において、各リンクIDと音設定情報PRの各セットとの対応付けを記憶する構成であってもよい。また、リンクIDとして付与する識別子は、上述したようなリンク情報メモリ30bのアドレスを示す情報に限らず、異なるリンクを区別しうるユニークな情報であれば、どのようなものであってもよい。
【0078】
さらに、同一レジスト内での編集内容の反映方法は上述のステップS250における処理に限定されない。例えば、ステップS250の処理に代えて、編集対象パートのコンディション情報の修正に応じて、そのパートのリンクIDが示すリンク情報30bの内容が同時に修正されるようにしてもよい。この場合、リンク情報30bのコンディション情報をカレント領域40aの各パートに読み出すことで、同一レジスト内でリンクが設定された音設定情報PRに編集内容を反映できる。
【0079】
上記実施例においては、1つのリンクIDを対応付ける1セットの音設定情報を、1つの演奏パートのための音設定情報の集合全部としているが、これに限らない。例えば、1つの演奏パートのための音設定情報を複数の部分集合に分け、各部分集合に含まれる1又は複数の音設定パラメータを1セットの音設定情報に対して、1つのリンクIDを対応付けるようにしてもよい。このようにすれば、1つの演奏パートのための音設定情報の全部ではなく、一部を対象として、本発明に従うリンクの設定を行うことができる。