特許第6048595号(P6048595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048595
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】発電装置の自立運転方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/04 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
   H02P9/04 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-555319(P2015-555319)
(86)(22)【出願日】2015年7月27日
(86)【国際出願番号】JP2015071179
(87)【国際公開番号】WO2016017559
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2015年11月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-152468(P2014-152468)
(32)【優先日】2014年7月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(72)【発明者】
【氏名】増子 利健
【審査官】 上野 力
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−053072(JP,A)
【文献】 特開2014−110658(JP,A)
【文献】 特開2012−100478(JP,A)
【文献】 特開2008−278725(JP,A)
【文献】 特開2008−075521(JP,A)
【文献】 特開2014−090549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー源に連結された永久磁石発電機と、
順・逆変換機能を有する第1、第2の変換器と、
第1、第2の変換器間の直流リンク部に接続された平滑コンデンサと、
第1、第2の変換器に対して制御指令を出力する制御部と、を備えた発電装置の自立運転方法であって、
前記発電装置の自立運転時に、
前記エネルギー源の効率特性曲線による定格速度から最高速度の速度範囲で、効率特性曲線に沿って前記発電装置を運転することを特徴とした発電装置の自立運転方法。
【請求項2】
発電装置に接続された負荷の接続・離脱を行うことを特徴とする請求項1記載の発電装置の自立運転方法。
【請求項3】
前記エネルギー源を水車とし、
自立運転時における前記制御部による運転準備指令の出力時に水車の入口弁に開度指令を出力し、前記第1の変換器をコンバータ機能として運転し、
前記直流リンク部の電圧確立時に前記第2の変換器をインバータ機能として運転し、運転準備完了時に負荷を接続することを特徴とした請求項2記載の発電装置の自立運転方法。
【請求項4】
水車の入口弁開度に応じた前記効率特性曲線を用いることを特徴とした請求項3項に記載の発電装置の自立運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置の自立運転方法に係わり、特に永久磁石発電機を用いた発電装置による自立運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中小の発電装置として永久磁石発電機を用い、そのエネルギー源として風車や水車を用いた発電装置が注目されている。図7は永久磁石発電機を用いた水車発電装置の単結線図を示したもので、この水車発電装置は連系変圧器5を介して電力系統6に連系される。図7で、1は水車、2はフライホイール、3は永久磁石発電機で、これらは軸受け4を介して連結されている。
【0003】
10はコンバータ盤を示し、このコンバータ盤には第1の変換器(インバータ)11、第2の変換器(コンバータ)12、回生制動用のブレーキ回路13、平滑コンデンサ14、フィルタ部15、電磁開閉器16,17および遮断器18などの各部品が装備されている。20は発電機盤を示し、電力系統6との連系制御を行う遮断器21を有している。30はダミー抵抗装置を示し、抵抗値の異なる複数の抵抗33がそれぞれ遮断器31、電磁開閉器32を介して接続されている。
【0004】
40は上位の制御部を示し、この制御部40はエンコーダにより検出された永久磁石発電機3の回転信号をコンバータ盤10を介して入力する。また、コンバータ盤10に対しては速度指令を出力し、水車の入口弁1aに対して開度指令を出力し、ダミー抵抗装置30に対しては投入指令を出力するなどの制御指令を発する。なお、図1に示すような永久磁石発電機を用いた発電装置は、例えば、特許文献1などによって公知となっている。
【0005】
図7に示す発電装置を電力系統6に連系する場合、発電機盤20から連系・運転指令を出力することで遮断器21が投入され、次いでコンバータ盤10において遮断器18、電磁開閉器17を投入することで電力系統6からの交流は、コンバータ12により直流に変換されて平滑コンデンサ14を充電する。平滑コンデンサ14が初期充電されて運転準備が完了した時点で電磁開閉器16に対する投入指令を出力する。また、制御部40はインバータ11に対し速度指令、力率指令を出力してインバータ11を動作させ、永久磁石発電機3を図8で示す点線を付した連系運転範囲で制御する。
【0006】
図8は縦軸に永久磁石発電機の軸入力、横軸に回転数を採ったもので、定格容量f0としたとき、定格速度n0を中心としたその前後n1,n2が永久磁石発電機の運転範囲となって連系運転されている。
【0007】
連系運転中に、系統連系に異常が発生した場合、コンバータ12の運転を中止し、回生制御用のブレーキ回路13のスイッチング素子19をオンすることで回生用抵抗19’に電流を流してエネルギーを消費する。
【0008】
中小規模の発電装置を電力系統に連系運用する場合、連系先である電力系統に何等かの異常が発生したときには系統連系ができない場合が生じる。風力発電の場合には十分な風量があり、また、水力発電の場合には十分な水量があり、両者とも発電可能なエネルギーが十分あっても、自立運転機能が備わっていない場合には連系する発電装置も停止せざるを得ない。勿論、発電装置にダミー抵抗装置や、電動サーボらよる高速ガイドベーン制御装置を別途付加すれば自立運転は可能となるが、その際は、固有の運転機能を追加する必要があり、設置場所やコスト面で不利になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4003414
【発明の概要】
【0010】
本発明が目的とするところは、従来必要であった自立運転のための装置を付加することなく風力や水車効率特性を利用した発電装置の自立運転方法を提供することにある。
【0011】
本発明は、エネルギー源に連結された永久磁石発電機と、順・逆変換機能を有する第1、第2の変換器と、第1、第2の変換器間の直流リンク部に接続された平滑コンデンサと、第1、第2の変換器に対して制御指令を出力する制御部と、を備えた発電装置の自立運転方法であって、前記発電装置の自立運転時に、前記エネルギー源の効率特性曲線による定格速度から最高速度の速度範囲で、効率特性曲線に沿って前記発電装置を運転することを特徴とする。
【0012】
また、その一態様として、発電装置に接続された負荷の接続・離脱を行うことを特徴とする。
【0013】
また、その一態様として、前記エネルギー源を水車とし、自立運転時における前記制御部による運転準備指令の出力時に水車の入口弁に開度指令を出力し、前記第1の変換器をコンバータ機能として運転し、前記直流リンク部の電圧確立時に前記第2の変換器をインバータ機能として運転し、運転準備完了時に負荷を接続することを特徴とする。
【0014】
また、その一態様として、水車の入口弁開度に応じた前記効率特性曲線を用いることを特徴とする。
【0015】
以上のとおり、本発明によれば、発電装置が電力系統から解列した場合でも、効率特性曲線の定格速度以上の速度範囲で、負荷に見合ったエネルギーバランスで発電装置を自立運転するものである。これによって、発電装置が系統連系できないときでも、ダミー抵抗装置や電動サーボによる高速ガイドベーン制御装置などの単独運転用の機器を別途用意することなく、自立制御が可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態を示す発電装置の電力系統への連系状態図。
図2】説明のための発電装置の自立運転範囲図。
図3】自立運転時の状態説明図。
図4】自立運転時の運転手順概要図。
図5】自立運転時の運転手順概要図。
図6】自立運転時の運転手順概要図。
図7】従来の発電装置の電力系統への連系状態図。
図8】永久磁石発電機の電力系統連系時の運転範囲図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本実施形態1における発電装置を示す概略図である。従来の発電装置を示す図7とは、ダミーロード装置を省略している点が異なっている。その他の点は図7と同様であるため説明を省略する。
【0018】
図2は、水車の効率特性曲線(以下Cp特性曲線という)を示したものである。永久磁石発電機の定格容量f0、定格速度n0としたとき、水車1の入口弁1aの開度に応じて軸入力が線D〜線Aへと上昇し、系統連系時には定格速度n0付近で運転されている。
【0019】
本発明は、系統連系できない場合、永久磁石発電機の定格容量よりも小さい負荷容量に対して自立運転を行うもので、自立運転時には図3で示すように例えば線Aの開度100%のCp特性曲線を使用し、且つ定格速度n0以上の範囲を可変速範囲として使用する。以下、図4〜6に基づいて自立運転方法について説明する。なお、図4〜6では動作状態となった部品に対し斜線を付して表示する。
【0020】
図4(1)〜図6(3)が、図1の発電装置による自立運転時の運転手順を示す概要である。図4(1)において、発電装置の初期状態時にコンバータ盤10に直流の制御電源を接続する。この時点では水車1の入口弁1aは閉じられた状態となっている。図4(2)で、上位の制御部40から入口弁1aに対する開度指令と電磁開閉器16の投入、及び第1の変換器(インバータ)11の運転準備指令が出力される。これにより水車1は回転を開始して永久磁石発電機3は発電を開始し電圧を発生する。また、第1の変換器(インバータ)11により平滑コンデンサ14への初期充電が開始される。
【0021】
図4(3)では、更に入口弁1aの開度が進行することで流量が増加し、水車1は無拘束速度(定格速度n0以上)へ加速される。これに伴い平滑コンデンサ14への充電も進み直流リンク部の電圧が確立した時点で電磁開閉器17、遮断器18が投入さる。
【0022】
図5(1)では、入口弁1aの開度100%で水車は無拘束速度となり、第2の変換器(コンバータ)12に対して出力電圧の設定、出力周波数の設定を行い、この第2の変換器12をインバータ動作である自動電圧・自動周波数制御機能にすることで運転準備完了となる。この運転準備完了時点では無負荷状態であることから、水車速度は図3で示す最高回転数nmで回転している。なお、図3で四角枠内の数字は、図4〜6の図番号と対応させている。
【0023】
図5(2)では上位の制御部40から遮断器CB1に対し、発電所構内の負荷投入指令が出されて自立運転が開始される。負荷が投入されると負荷電流が流れ、直流リンク部の電圧が低下するが、第1の変換器(インバータ)11が直流リンク部の電圧を一定に制御(AVR)することで、不足するエネルギーは回転体である水車1−フライホイール2−永久磁石発電機3の回転エネルギーで補充され、永久磁石発電機3および水車速度が減速する。これにより、回転数はCp特性曲線に沿って減少して最高回転数nmから負荷に見合ったnm-1の回転数で運転される。
【0024】
図5(3)で、負荷の追加投入指令が出されて遮断器CB2がオンになると、水車速度は投入された負荷量に応じて更に回転数は低下し、nm-2の回転数で運転される。負荷量の投入可能範囲は、定格速度n0から最高速度nmの速度範囲内で行われる。
【0025】
なお、自立運転時における水車1の回転速度は定格速度n0以上でなければならない。理由としては定格速度n0以下で運転すると、過負荷により回転速度が低下してしまい最終的に停止してしまうからである。
【0026】
次に、図6に基づいて発電装置の停止手順を説明する。回転速度nm-2で負荷の一部を開放する場合には、図6(1)で示すように遮断器CB2をオフにすることで回転数はCp特性曲線に沿って上昇する。そして、nm-1の回転数で負荷と発電量のエネルギーバランスが成立して回転速度の上昇がとまり、nm-1の回転速度で運転が継続される。
【0027】
更に、全部の負荷を開放する図6(2)の状態では無負荷状態となってnmの回転数となる。図6(3)で第2の変換器12に対し停止命令が出力されて運転を停止する。その後、発電装置の停止命令が出されて第1の変換器11も停止し、水車の入口弁1aに対して減速指令が出されて入口弁1aは全閉となり水車は停止する。
【0028】
以上本発明によれば、発電装置が電力系統から解列した場合でも、Cp特性曲線の定格速度以上の速度範囲で、負荷に見合ったエネルギーバランスが成立する速度で運転することにより発電装置を自立運転するものである。これによって、発電装置が系統連系できないとき、ダミー抵抗装置や電動サーボによる高速ガイドベーン制御装置などの単独運転用の機器を別途用意することなく、連系運転用の機器でソフト的に自立機能を持たせるだけで自立運転制御が可能となるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8