(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平面視して前記圧電素子の中心部に前記受信用領域が設けられており、前記受信用領域を囲むように、前記受信用領域よりも径方向の外側である周辺部に、前記送信用領域が設けられている、
請求項3に記載の超音波センサ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に基づいた実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。個数および量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数および量などに限定されない。同一の部品および相当部品には同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0025】
[実施の形態1]
図1〜
図10を参照して、実施の形態1における超音波センサ100について説明する。
図1は、超音波センサ100を備えたセンサ装置1の機能ブロックを示す図である。センサ装置1は、超音波センサ100に加えて、マイコン101、メモリ102、検出回路103、信号生成回路104、電源105、および受信アンプ106を備える。詳細は後述されるが、超音波センサ100は、圧電素子50を備えており、この圧電素子50は電極10,20,30からなる3端子構造を有している。
【0026】
マイコン101は、メモリ102に格納されているデータを読み出して、超音波センサ100の駆動に適した制御信号を信号生成回路104に出力する。電源105は、たとえば12Vの直流電圧を信号生成回路104に出力する。信号生成回路104は、マイコン101から出力された制御信号に基づいて直流電圧から交流電圧を生成する。交流電圧は、必要に応じて増幅回路(図示せず)により昇圧された状態で超音波センサ100に供給される。超音波センサ100が駆動され、超音波センサ100から気中などに向けて超音波が送信(送波)される。
【0027】
超音波センサ100には、図示しない抵抗およびコンデンサなどが並列接続されている。超音波センサ100が物標からの反射波を受信した際、超音波センサ100にて発生した受波信号は電圧値として受信アンプ106に送られ、検出回路103を通してマイコン101に入力される。マイコン101により、物標の有無や移動に関する情報を把握することが可能となる。超音波センサ100は、たとえば車などに搭載され、以上のようなセンサ装置1として機能を発揮することができる。
【0028】
(超音波センサ100)
図2は、超音波センサ100を示す断面図である。
図2に示すように、超音波センサ100は、圧電素子50、ケース60、吸音材63、接着剤64、接合剤65、シリコーン71,72、およびFPC80(Flexible Printed Circuits)を備える。ケース60は、有底筒状の形状を有する。ケース60は、たとえば、高い弾性を有し且つ軽量なアルミニウムからなる。ケース60は、このようなアルミニウムをたとえば鍛造または切削加工をすることによって作製される。
【0029】
ケース60は、円盤状の底部62と、底部62の周縁に沿って設けられた円筒状の筒状部61とを含む。底部62は、内面62Sおよび外面62Tを有する。圧電素子50は、たとえばチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスからなる。圧電素子50は、底部62の内面62S上に配置され、接着剤64を用いて内面62Sに接合される。超音波センサ100が駆動している際には、圧電素子50は、底部62とともにベンディング振動する。シリコーン71,72は、ケース60の内部空間を埋め尽くすように設けられる。吸音材63は、高い弾性を有する成形体からなり、シリコーン71とシリコーン72との間に設けられる。吸音材63は、圧電素子50に間隔を空けて対向している。
【0030】
圧電素子50は、図示しない3つの電極(
図1における電極10〜30に相当する部位。詳細は後述する)を有している。FPC80は、接合剤65を介してこれらの電極に電気的に接合される。接合剤65としては、たとえば金属が添加された樹脂材料が用いられる。FPC80のうちの圧電素子50に接合された部分とは反対側の部分は、ケース60の外に取り出され、信号生成回路104(
図1)および受信アンプ106(
図1)などに電気的に接続されている。
【0031】
(圧電素子50)
図3は、圧電素子50およびFPC80を示す平面図である。
図4は、圧電素子50(FPC80を取り外した状態)を示す平面図である。
図5は、圧電素子50を示す斜視図である。
図6は、圧電素子50およびその内部構造を示す斜視図である。
図7は、圧電素子50に備えられる電極10,20,30を示す斜視図である。
図8は、
図4中のVIII−VIII線に沿った矢視断面図である。
図9は、
図4中のIX−IX線に沿った矢視断面図である。
図10は、
図4中のX−X線に沿った矢視断面図である。
【0032】
図3〜
図10においては、説明上の便宜のため矢印X,Y,Zを示している。矢印X,Y,Zは、互いに直交する関係を有する。以下、圧電素子50の各構成について矢印X,Y,Zを参照しつつ説明する場合があるが、各構成の配置関係(直交および平行に関する特徴)は、必ずしも矢印X,Y,Zに示す配置関係に限定されるものではない。
【0033】
図3〜
図10に示すように、圧電素子50は、圧電体層40、電極10(
図7)、電極20(
図7)および電極30(
図7)を含む。圧電体層40の外形形状は略直方体であり(
図5,
図6参照)、圧電体層40は、上面41、側面42〜45、および下面46を有している。
【0034】
上面41は、圧電体層40のうちの矢印Z方向の側に位置する表面であり、下面46は、圧電体層40のうちの矢印Z方向とは反対方向の側に位置する表面である。側面42,44は、圧電体層40のうちの矢印X方向に対して直交する表面であり、互いに対向する位置関係を有している。側面43,45は、圧電体層40のうちの矢印Y方向に対して直交する表面であり、互いに対向する位置関係を有している。
【0035】
(電極10(受信用電極))
電極10は、円盤部11および延出部12を含み、全体として板状の形状を有している(
図7参照)。延出部12は、外形が矩形状であり、円盤部11の外縁から外方に向かって延出する形状を有する。電極10は、円盤部11が圧電体層40の上面41の丁度中央に位置するように上面41上に配置される。延出部12は、円盤部11が位置している側から圧電体層40の側面42が位置している側に向かって(矢印Xとは反対方向に向かって)延びるように配置される。
【0036】
図3に示すように、FPC80の先端部80TはT字形状を有する。FPC80に設けられた配線パターン81と電極10の延出部12との間の部分(接続箇所10C)において、電極10とFPC80(配線パターン81)とは電気的に接続される(
図4,
図5も参照)。電極10は、本実施の形態では「受信用電極」として機能する。
【0037】
(電極20(送信用電極))
電極20は、側壁部21、上面部22、および中間部23,24を含む(
図7参照)。側壁部21、上面部22、および中間部23,24は、いずれも板状の形状を有している。側壁部21は、圧電体層40の側面42(
図5)に対向し、側面42に接するように配置される。側壁部21は、圧電体層40の側面42の全部を覆う表面形状を有している(
図3,
図4,
図9,
図10参照)。
【0038】
上面部22は、側壁部21の矢印Z方向の側(および矢印Yとは反対方向の側)の端部に連設され、圧電体層40の上面41上に配置される。矢印Y方向における寸法を「幅」とすると、上面部22は側壁部21よりも幅が狭い。上面部22の矢印Yとは反対方向の端部は、圧電体層40の側面43と面一の関係を有している。
【0039】
上面部22および中間部23,24は、平行な位置関係を有し、中間部23,24は、上面部22よりも矢印Zとは反対方向の側に位置する。中間部23は、上面部22と中間部24との間に位置する。中間部23と中間部24とは間隔を空けて対向している。中間部23,24は、電極20のうちの圧電体層40の内部に配置される部位であり、圧電素子50が完成した状態ではこれらは視認されない(
図5参照)。詳細は後述されるが、中間部23と中間部24との間には、電極30の中間部33が配置される(
図8〜
図10等参照)。
【0040】
中間部23,24の内側には、円形形状を有するくり抜き部23H,24H(
図7)がそれぞれ設けられる。くり抜き部23H,24Hの大きさ(外径)は、電極10の円盤部11の大きさ(外径)よりも大きい。くり抜き部23H,24Hの位置は、電極10の円盤部11の位置に対応している。くり抜き部23H,24Hは、電極10の円盤部11を矢印Zとは反対方向に投影した場合に、円盤部11の投影像に重ならない位置に配置されている(
図8,
図10参照)。
【0041】
中間部23,24の内側には、切り欠き部23T,24Tもそれぞれ設けられる。切り欠き部23T,24Tは、くり抜き部23H,24Hが位置している側から圧電体層40の側面42が位置している側に向かって(矢印Xとは反対方向に向かって)延びるように配置される。切り欠き部23T,24Tの位置は、電極10の延出部12の位置に対応している。
図7および
図9に示すように、中間部23,24の矢印Xとは反対方向における端部は、側壁部21に接続している。一方で、中間部23,24の矢印X方向における端部は、後述する電極30の側壁部31に接続しておらず、側壁部31から離れている。
【0042】
図3に示すように、FPC80に設けられた配線パターン82と電極20の上面部22との間の部分(接続箇所20C)において、電極20とFPC80(配線パターン82)とは電気的に接続される(
図4,
図5も参照)。電極20は、本実施の形態では「送信用電極」として機能する。
【0043】
(電極30(特定の電極,共通電極))
特定の電極としての電極30は、側壁部31、上面部32、中間部33および下面部34を含む(
図7参照)。側壁部31、上面部32、中間部33および下面部34は、いずれも板状の形状を有している。側壁部31は、圧電体層40の側面44(
図5)に対向し、側面44に接するように配置される。側壁部31は、圧電体層40の側面44の全部を覆う表面形状を有している(
図3,
図4,
図9,
図10参照)。下面部34は、圧電体層40の下面46に対向し、下面46に接するように配置される。下面部34は、圧電体層40の下面46の全部を覆う表面形状を有している。
【0044】
上面部32は、側壁部31の矢印Z方向の側の端部に連設され、圧電体層40の上面41上に配置される。矢印Y方向における寸法を「幅」とすると、上面部32の幅は、圧電体層40の上面41の幅に等しい。上面部32の矢印Y方向における両端部は、圧電体層40の側面43,45とそれぞれ面一の関係を有している。
【0045】
上面部32、中間部33および下面部34は、平行な位置関係を有し、中間部33および下面部34は、上面部32よりも矢印Zとは反対方向の側に位置する。中間部33は、上面部32と下面部34との間に位置する。中間部33は、電極30のうちの圧電体層40の内部に配置される部位であり、圧電素子50が完成した状態では中間部33は視認されない(
図5参照)。
【0046】
上面部32および中間部33の内側には、円形形状を有するくり抜き部32H,33H(
図7)がそれぞれ設けられる。くり抜き部32H,33Hの大きさ(外径)は、電極10の円盤部11の大きさ(外径)よりも大きい。くり抜き部32H,33Hの位置は、電極10の円盤部11の位置に対応している。くり抜き部32Hの内側に、電極10の円盤部11が配置される(
図5参照)。くり抜き部33Hは、電極10の円盤部11を矢印Zとは反対方向に投影した場合に、円盤部11の投影像に重ならない位置に配置されている(
図8,
図10参照)。
【0047】
上面部32および中間部33の内側には、切り欠き部32T,33Tもそれぞれ設けられる。切り欠き部32T,33Tは、くり抜き部32H,33Hが位置している側から圧電体層40の側面42が位置している側に向かって(矢印Xとは反対方向に向かって)延びるように配置される。切り欠き部32T,33Tの位置は、電極10の延出部12の位置に対応している。切り欠き部32Tの内側に、電極10の延出部12が配置される(
図5参照)。上面部32のうちの矢印Yとは反対方向における部分には、後退部32Fが設けられる。後退部32Fは、電極20の上面部22の配置を許容するための部位である。
【0048】
図7および
図9に示すように、上面部32、中間部33および下面部34の矢印X方向における端部は、側壁部31に接続している。一方で、上面部32、中間部33および下面部34の矢印Xとは反対方向における端部は、電極20の側壁部21に接続しておらず、側壁部21から離れている。
【0049】
図3に示すように、FPC80に設けられた配線パターン83と電極30の上面部32との間の部分(接続箇所30C)において、電極30とFPC80(配線パターン83)とは電気的に接続される(
図4,
図5も参照)。電極30は、本実施の形態では「共通電極」として機能する。
【0050】
以上のように構成される電極10,20,30のうち、圧電体層40の表面を覆うように設けられる部分(電極10、電極20の側壁部21および上面部22、ならびに、電極30の側壁部31、上面部32および下面部34)は、たとえば、Agを圧電体層40の表面にスパッタリング処理を行なうことで形成される。スパッタリングに限られず、圧電体層40の表面を覆うように設けられる部分は、
Ag厚膜をペーストすることで形成されていてもよい。さらに、Agの下地層として、モネル(Cu−Ni)が設けられていてもよい。
【0051】
(送信用領域および受信用領域)
図8〜
図10を参照して、本実施の形態における圧電体層40の内部には、送信用領域40Nおよび受信用領域40Mが形成される。送信用領域40Nは、第1単位圧電体層N1〜N4からなる4層構造を有している。
図8〜
図10中の白色矢印は、各圧電体層の分極方向を示している。
【0052】
第1単位圧電体層N1〜N4は、短冊形状を有する薄肉の圧電セラミックよりなる4層の圧電体層の間に、電極20の中間部23、電極30の中間部33、および電極20の中間部24を介在させてこれらを積層し、一体に焼成することにより作製される。第1単位圧電体層N1〜N4は、ケース60の底部62から遠ざかる方向に積層され、電極20および電極30によって電気的に並列接続される。
【0053】
受信用領域40Mは、第2単位圧電体層M1の1層構造を有している。第2単位圧電体層M1は、短冊形状を有する薄肉の圧電セラミックよりなる4層の圧電体層の間に、電極を介在させないでこれらを積層し、一体に焼成することにより作製される。
【0054】
電極30の下面部34は、送信用領域40Nおよび受信用領域40Mの双方に及んで広がる形状を有している。電極20の上面部22は、第1単位圧電体層N1〜N4を含む送信用領域40Nを間に挟んで電極30の下面部34に対向している。電極10の円盤部11は、第2単位圧電体層M1を含む受信用領域40Mを間に挟んで電極30の下面部34に対向している。すなわち、圧電体層40のうち、電極20の上面部22と電極30の下面部34との間に位置する領域、および、電極30の上面部32と電極30の下面部34との間に位置する領域が、送信用領域40Nとして機能する。一方で、圧電体層40のうち、電極10の円盤部11と電極30の下面部34との間に位置する領域が受信用領域40Mとして機能する。
【0055】
図8および
図10に示すように、本実施の形態においては、送信用領域40Nと受信用領域40Mとは、ケース60の底部62の内面62Sの表面方向(X−Y面方向)において互いに隣り合う位置に形成されている。より具体的には、平面視して(ケース60の底部62の内面62Sに垂直な方向から圧電体層40を見て)圧電体層40の中心部に受信用領域40Mが設けられている。
図8では、送信用領域40Nが複数図示されているが、これらは連なっており、受信用領域40Mを囲むように、受信用領域40Mよりも径方向の外側である周辺部に、送信用領域40Nが設けられている。
【0056】
(作用および効果)
冒頭で述べたとおり、従来の超音波センサにおいては、圧電素子の積層数が多ければ多いほど、送波の際の音圧が上がるが、受波の際の感度が下がるという特性が示される。これは、従来の積層型の圧電素子においては、圧電素子の送波に供される部分と受波に供される部分とが同一の部位内に形成されているからである。
【0057】
本実施の形態においては、圧電素子50の送波に供される部分(送信用領域40N)と受波に供される部分(受信用領域40M)とが、同一の部位内に形成されてはいない。送波の際の音圧を上げるために圧電素子50の送波に供される部分(送信用領域40N)の積層数を4層構造としているが、受波に供される部分(受信用領域40M)は1層構造のままである。本実施の形態の超音波センサ100においては、受波の際の感度が低下することが、従来の構成に比べて抑制されている。したがって、本実施の形態の超音波センサ100は、送信時における音圧および受信時における感度の双方をそれぞれ独立して調整することが可能な構造を備えていると言える。
【0058】
本実施の形態では、送信用領域40Nに4層構造が採用されており、受信用領域40Mに1層構造が採用されている。すなわち、第1単位圧電体層の層数は、第2単位圧電体層の層数以上である。したがって、送信用領域40Nのインピーダンスは、受信用領域40M
のインピーダンスよりも低い値(異なる値)である。したがって、超音波センサ100の圧電素子50においては、音圧および感度の調整がそれぞれ最適化されており、高い精度でセンシングを行うことが可能となっていると言える。以下、本実施の形態における作用および効果についてより詳細に説明する。
【0059】
上述の実施の形態1における超音波センサ100は、外部ノイズが無視できる環境で、かつ、受信アンプなどの回路ノイズ(内部ノイズ)が支配的である場合に、特に有効に使用できるものである。具体的には、超音波センサによって検知可能な距離および精度は、SNR(信号対ノイズ比)に依存する。このSNRを上げるための方法は、主として、送信時の音圧を上げること、受信時の電圧感度を上げること、および受信時に受けるノイズの影響を下げることの3つが挙げられる。
【0060】
送信時の音圧を上げるためには、圧電素子を大きくしたり、圧電素子の圧電定数(d定数)を大きくしたり、圧電素子の積層数を増やしたりするといった手法が挙げられる。これらの手法を採用することは、いずれも圧電素子のインピーダンスが低くなる方向に作用するため、同じ電圧でもより大きな消費電力が必要になる。
【0061】
受信時の電圧感度を上げるためには、圧電素子を厚くしたり、圧電素子を小さくしたり、圧電素子の積層数を減らしたりといった手法が挙げられる。これらの手法を採用することは、いずれも圧電素子のインピーダンスが高くなる方向に作用する。受信時に受けるノイズの影響を下げるためには、圧電素子のインピーダンスを小さくし、かつ、受信アンプなどを含む回路ノイズ(内部ノイズ)を下げる必要がある。
【0062】
単一の圧電層からなる単板型の圧電素子と、特開2002−204497号公報(特許文献1)に開示された積層型の圧電素子とを比較すると、送信時の音圧に関しては、単板型の圧電素子の方が、積層型の圧電素子に比べて小さくなる。これは、同じ電圧をかけたときに、単板型の圧電素子に比べて積層型の圧電素子の方が、素子にかかる電界強度が大きくなり、発生するひずみも大きくなるためである。
【0063】
受信時の電圧感度に関しては、単板型の圧電素子の方が、積層型の圧電素子に比べて大きくなる。同じ音圧が入力された時の素子のひずみは、単板型の圧電素子と積層型の圧電素子とでおよそ同じになり、圧電素子が発生する総電荷もおよそ同じになる。一方で、単板型の圧電素子と積層型の圧電素子とでは、静電容量が単板型の圧電素子の方が小さくなる。したがって、電圧=電荷/静電容量の関係から、発生電圧は、単板型の圧電素子の方
が積層型の圧電素子に比べて大きくなる。したがって受信時の電圧感度に関しては、単板型の圧電素子の方が、積層型の圧電素子に比べて大きくなる。
【0064】
受信時に受けるノイズの影響に関しては、外部からのノイズが支配的である場合には、若しくは、受信アンプ等の回路ノイズ(内部ノイズ)が十分小さい場合には、単板型の圧電素子の方が、積層型の圧電素子に比べて大きくなる(単板型の圧電素子の方がノイズに対して弱い)。外部から回路に侵入してくるノイズのほとんどは、回路のインピーダンスが低いほど影響が小さくなるため、インピーダンスの低い積層素子の方が外部からのノイズの影響は小さくできる。
【0065】
一方で、外部からのノイズを無視できる環境では(外部からのノイズが支配的でない場合には)、回路内部で発生するノイズが問題になる。回路ノイズ(内部ノイズ)の主なものは、受信アンプの電圧ノイズや、回路中の抵抗成分から出る熱に起因したノイズなどである。センサと回路とのマッチングの都合上、センサのインピーダンスが低いほど回路中の抵抗成分も小さくなり、熱に起因したノイズも小さくできる。ただし、熱に起因したノイズが受信アンプの電圧ノイズよりも小さい場合には、熱に起因したノイズを下げてもトータルのノイズは下がらないものとなる。したがって、回路ノイズが十分に低い場合には、積層型の圧電素子は単板型の圧電素子に比べて電圧感度が低くなる分、音圧が高くなり、ノイズも低いためSNRとしては高くなるものとなる。
【0066】
しかし、上述のように、外部ノイズが無視できる環境で、かつ、受信アンプの電圧ノイズが十分に低くない場合(受信アンプなどの回路ノイズが支配的である場合)には、積層型の圧電素子を採用してインピーダンスを低くしたとしても、ノイズを下げることができないため、音圧の向上と感度の低下との効果が互いに相殺してしまい、積層型の圧電素子を採用したとしても性能を十分に向上させることが難しい場合がある。
【0067】
一方で、実際の超音波センサ100が搭載される実情に鑑みると、回路周りに設けられるシールド(静電遮蔽)が十分に確保されるような場合では、外部ノイズをほとんど無視できるレベルに小さくできる。また、受信アンプのノイズを十分に下げるには、より低ノイズのアンプを使うことになるが、製造費用が高くなるという問題があり、採用は容易ではない。したがって、上述の実施の形態1における超音波センサ100は、外部ノイズが無視できる環境で、かつ、受信アンプなどの回路ノイズ(内部ノイズ)が支配的である場合に、特に高精度のセンシングが可能となり、安価に実施できるものとなり、有効に使用できるものであるといえる。
【0068】
本実施の形態においては、第1単位圧電体層の層数が、第2単位圧電体層の層数以上である。この構成に限られず、送信用電極(電極20)と共通電極(電極30)との間のインピーダンスが、受信用電極(電極10)と共通電極(電極30)との間のインピーダンスよりも低い値であれば、第2単位圧電体層の層数は、第1単位圧電体層の層数以上であってもよい。
【0069】
[実施の形態2]
図11を参照して、本実施の形態における超音波センサに備えられる圧電素子50Aについて説明する。
図11は、圧電素子50Aを示す断面図であり、実施の形態1における
図8に対応している。
【0070】
圧電素子50Aにおいては、送信用領域40Nが5つの第1単位圧電体層N1〜N5からなる5層構造を有している。送信用領域40Nに関する電極構造としては、
図11紙面の上から順に、電極20の上面部22、電極30の上面部32、電極20の中間部23、電極30の中間部33、電極20の中間部24、および電極30の下面部34の順に配置されている。当該構成によっても、上述の実施の形態1と同様の作用および効果が得られる。
【0071】
なお、上述の実施の形態では、送信用領域40Nは4つないし5つの第1単位圧電体層からなる層構造を有しているとしたが、これに限られるものではない。たとえば、送信用領域40Nが、2つ、3つ、ないし6つ以上の第1単位圧電体層からなる層構造を有していてもよい。
【0072】
[実施の形態3]
図12を参照して、本実施の形態における超音波センサに備えられる圧電素子50Bについて説明する。
図12は、圧電素子50Bを示す断面図であり、実施の形態1における
図8に対応している。
【0073】
圧電素子50Bにおいては、受信用領域40Mが2つの第2単位圧電体層M1,M2からなる2層構造を有している。受信用領域40Mに関する電極構造としては、
図12紙面の上から順に、電極30の上面部32M、電極10の円盤部11、および電極30の下面部34の順に配置されている。当該構成によっても、上述の実施の形態1と同様の作用および効果が得られる。
【0074】
[実施の形態4]
図13および
図14を参照して、本実施の形態における超音波センサに備えられる圧電素子50Cについて説明する。
図13は、圧電素子50Cの分解した状態を示す斜視図である。
図14は、
図13中のXIV−XIV線に沿った矢視断面図であり、圧電素子50Cの組み立てられた状態の断面図が示されている(実施の形態1における
図8に対応する図である)。
【0075】
圧電素子50Cにおいては、圧電体層40は直方体状の形状を有する。電極10,30は、外形が矩形状の平板形状を有する。電極20は、延出部22a,22cおよびこれらを接続する接続部22bを有する。電極10は、延出部22aと延出部22cとの間に配置される。
図14に示すように、送信用領域40Nは、1つの第1単位圧電体
層からなる1層構造を有し、受信用領域40Mも、1つの第2単位圧電体層M1からなる1層構造を有している。
【0076】
本実施の形態においては、送信用領域40Nのうちのケース60の底部62の内面62Sに接合される側の面の表面積(総面積)RNは、受信用領域40Mのうちのケース60の底部62の内面62Sに接合される側の面の表面積(総面積)RM以上(具体的には、よりも大きい)である。当該構成によっても、電極20(延出部22a,22c)と電極30のとの間(送信用領域40N)のインピーダンスは、電極10と電極30との間(受信用領域40M)との間のインピーダンスよりも低い値(異なる値)となり、上述の実施の形態1と同様の作用および効果が得られる。圧電素子50Cを備えた本実施の形態の超音波センサは、送信時における音圧および受信時における感度の双方をそれぞれ独立して調整することが可能であり、これらの最適化を図ることができると言える。
【0077】
[実施の形態5]
図15および
図16を参照して、本実施の形態における超音波センサに備えられる圧電素子50Dについて説明する。
図15は、圧電素子50Dの分解した状態を示す斜視図である。
図16は、
図15中のXVI−XVI線に沿った矢視断面図であり、圧電素子50Dの組み立てられた状態の断面図が示されている(実施の形態1における
図8に対応する図である)。
【0078】
圧電素子50Dにおいても、実施の形態4と同様に、電極10,30は、外形が矩形状の平板形状を有する。電極20は、延出部22a,22cおよびこれらを接続する接続部22bを有する。電極10は、延出部22aと延出部22cとの間に配置される。圧電体層40については、上面41a,41cと、上面41a,41cよりも圧電体層40の厚さが厚い上面41bとが形成されている。
図16に示すように、送信用領域40Nは、1つの第1単位圧電体
層からなる1層構造を有し、受信用領域40Mも、1つの第2単位圧電体層M1からなる1層構造を有している。なお、送信用領域40Nのうちのケース60の底部62の内面62Sに接合される側の面の表面積(総面積)は、受信用領域40Mのうちのケース60の底部62の内面62Sに接合される側の面の表面積(総面積)と略同一である。
【0079】
本実施の形態においては、ケース60の底部62に対して直交する方向における送信用領域40Nの厚さTNは、同方向における受信用領域40Mの厚さTM以下である。当該構成によっても、電極20(延出部22a,22c)と電極30のとの間(送信用領域40N)のインピーダンスは、電極10と電極30との間(受信用領域40M)との間のインピーダンスよりも低い値(異なる値)となり、上述の実施の形態1と同様の作用および効果が得られる。圧電素子50Dを備えた本実施の形態の超音波センサも、送信時における音圧および受信時における感度の双方をそれぞれ独立して調整することが可能であり、これらの最適化を図ることができると言える。
【0080】
[実施の形態6]
図17を参照して、本実施の形態における超音波センサに備えられる圧電素子50Eについて説明する。
図17は、圧電素子50Eを示す断面図であり、実施の形態1における
図8に対応している。本実施の形態においては、送信用領域40Nと受信用領域40Mとの関係が、実施の形態1と正反対になっている。
【0081】
送信用領域40Nは、1つの第1単位圧電体層N1からなる1層構造を有し、受信用領域40Mは、4つの第2単位圧電体層M1〜M4からなる4層構造を有している。受信用領域40Mに関する電極構造としては、
図17紙面の上から順に、電極30の上面部32、電極10の中間部13、電極30の中間部33、電極10の中間部14、および電極30の下面部34の順に配置されている。当該構成によっても、送信時における音圧および受信時における感度の双方をそれぞれ独立して調整することが可能であると言える。
【0082】
[実施の形態7]
図18を参照して、本実施の形態における超音波センサに備えられる圧電素子50Fについて説明する。
図18は、圧電素子50Fを示す断面図であり、実施の形態3における
図12に対応している。本実施の形態においては、送信用領域40Nと受信用領域40Mとの関係が、実施の形態3と正反対になっている。
【0083】
送信用領域40Nは、2つの第1単位圧電体層N1,N2からなる2層構造を有し、受信用領域40Mは、4つの第2単位圧電体層M1〜M4からなる4層構造を有している。当該構成によっても、送信時における音圧および受信時における感度の双方をそれぞれ独立して調整することが可能であると言える。
【0084】
[実施の形態8]
図19を参照して、本実施の形態における超音波センサに備えられる圧電素子50Gについて説明する。
図19は、圧電素子50Gを示す断面図であり、実施の形態3における
図12に対応している。本実施の形態においては、圧電体層40の内部に、送信用領域40N、受信用領域40M、および分離領域40Vが形成されており、電極30の一部(具体的には、電極30の中間部33の一部)が、分離領域40Vの中に及ぶように設けられている。分離領域40Vとは、圧電体層40のうち、送信用領域40Nと受信用領域40Mとの間に位置する部分(絶縁性を有する領域)である。当該構成によっても、上述の実施の形態1と同様の作用および効果が得られる。
【0085】
[実施の形態9]
図20を参照して、本実施の形態における超音波センサに備えられる圧電素子50Hについて説明する。
図20は、圧電素子50Hを示す断面図であり、実施の形態3における
図12に対応している。本実施の形態においては、圧電体層40の内部に、送信用領域40N、受信用領域40M、および分離領域40Vが形成されており、電極10の一部が分離領域40Vの中に及ぶように設けられている。当該構成によっても、上述の実施の形態1と同様の作用および効果が得られる。
【0086】
[実施の形態10]
図21を参照して、本実施の形態における超音波センサに備えられる圧電素子50Iについて説明する。
図21は、圧電素子50Iを示す断面図であり、実施の形態3における
図12に対応している。本実施の形態においては、圧電体層40の内部に、送信用領域40N、受信用領域40M、および分離領域40Vが形成されており、電極20の一部(具体的には、電極20の中間部23の一部および中間部24の一部)が分離領域40Vの中に及ぶように設けられている。当該構成によっても、上述の実施の形態1と同様の作用および効果が得られる。
【0087】
[実施の形態11]
図22を参照して、本実施の形態における超音波センサに備えられる圧電素子について説明する。
図22は、本実施の形態における圧電素子に備えられる電極10,20,30を示す斜視図であり、実施の形態1における
図7に対応している。
【0088】
本実施の形態においては、電極10は、円盤部11を含み、延出部12を含まない。電極10は、全体として円盤状の形状を有している。また、電極20の中間部23,24および電極30の中間部33、すなわち、電極20のうちの第1単位圧電体層に挟まれていない部分の電極と、電極30のうちの第2単位圧電体層に挟まれていない部分の電極(以下、これらを総称して内部電極ともいう)とが、環状の形状を有している。
【0089】
当該構成によっても、上述の実施の形態1と同様の作用および効果が得られる。また、当該構成によれば、電極20の中間部23,24および電極30の中間部33が環状であるので、ケース60(
図2参照)の外部から衝撃が加わり、電極20の中間部23,24または電極30の中間部33の一部に亀裂が生じたとしても、駆動に寄与する電極の範囲の減少を防止できる。したがって、耐チッピング性能を向上させることができる。なお、中間部23,24,33の3つすべてを環状に構成する場合に限られず、中間部23,24,33のうちのいずれか1つ、または2つのみを環状に構成しても構わない。
【0090】
[実施の形態12]
図23を参照して、本実施の形態における超音波センサに備えられる圧電素子50Kについて説明する。
図23は、圧電素子50Kの断面図であり、実施の形態1における
図9に対応している。圧電素子50Kにおいては、圧電体層40の上面41に、電極20の上面部22および電極30の上面部32が形成されており、上面部22および上面部32の間に電極10が設けられている。電極20,30は、複数の中間部23,33を有しており、複数の中間部23,33は、圧電体層40の厚さ方向において交互に並んでいる。
【0091】
本実施の形態においては、受信用領域40Mは、電極10と、電極30のうちの最上段に位置する中間部33との間に形成される。送信用領域40Nは、電極20と電極30とが対向している部分に形成される。本実施の形態においては、受信用領域40Mおよび送信用領域40Nは、ケース60の底部62の内面62Sに垂直な方向において互いに隣り合う位置に形成されている。
【0092】
当該構成によっても、上述の実施の形態1と同様の作用および効果が得られる。また、当該構成によれば、受信用領域40Mおよび送信用領域40Nがケース60の底部62の内面62Sの表面方向において互いに隣り合う位置に形成されている場合に比べて、体積あたりの送信に使用する領域が増えるため、音圧を向上させることができる。
【0093】
[実施の形態13]
図24〜
図26を参照して、本実施の形態における超音波センサ200について説明する。
図24は、超音波センサ200を備えたセンサ装置1Lの機能ブロックを示す図であり、実施の形態1における
図1に対応している。センサ装置1Lは、超音波センサ200に加えて、マイコン101、メモリ102、検出回路103、信号生成回路104、電源105、および受信アンプ106を備える。詳細は後述されるが、超音波センサ200は、圧電素子50Lを備えており、この圧電素子50Lは電極10,20,30,90からなる4端子構造を有している。電極20,30は、信号生成回路104に接続されている。電極10は、受信アンプ106に接続されており、電極90は、接地されている。
【0094】
(圧電素子50L)
図25および
図26を参照して、超音波センサ200に備えられる圧電素子50Lについて説明する。
図25は、圧電素子50Lを示す斜視図であり、実施の形態1における
図5に対応している。
図26は、
図25中のXXVI−XXVI線に沿った矢視断面図であり、実施の形態1における
図9に対応している。
【0095】
本実施の形態における圧電素子50Lは、上述の実施の形態1における圧電素子50と同様にして、ケース60(
図2参照)に組み込まれる。具体的には、本実施の形態における超音波センサ200は、底部62を有するケース60(
図2)と、底部62の内面62Sに接合され、底部62とともにベンディング振動する圧電素子50Lとを備える。
【0096】
図24〜
図26に示すように、圧電素子50Lは、圧電体層40、電極10,20,30、および特定の電極としての電極90(接地電極)を有している。圧電体層40は、上述の実施の形態1の場合と同様に、直方体状の形状を有する。
図26においては、上面41、側面42および側面44が描かれている。
【0097】
電極10(受信用電極)は、圧電体層40の上面41上に形成される。本実施の形態の電極10は、円盤部11から構成され、延出部12(
図7参照)を有していない。
【0098】
電極20(送信用電極)は、側壁部21、上面部22および複数の中間部23(
図26)を含む。側壁部21は、圧電体層40の側面42に対向し、側面42に接している。上面部22は、側壁部21の矢印Z方向の側の端部に連設され、圧電体層40の上面41上に配置される。複数の中間部23は、電極20のうちの圧電体層40の内部に配置される部位(内部電極)であり、圧電素子50Lが完成した状態ではこれらは視認されない。複数の中間部23の間には、電極30の中間部33が配置される。
【0099】
本実施の形態では、電極30も送信用電極として機能する。電極30は、側壁部31、上面部32および複数の中間部33(
図26)を含む。側壁部31は、圧電体層40の側面44に対向し、側面44に接している。上面部32は、側壁部31の矢印Z方向の側の端部に連設され、圧電体層40の上面41上に配置される。複数の中間部33は、電極30のうちの圧電体層40の内部に配置される部位(内部電極)であり、圧電素子50Lが完成した状態ではこれらは視認されない。複数の中間部33の間には、電極20の中間部23が配置される。
【0100】
上述のとおり、電極90(接地電極)は、GND電位に接地される。本実施の形態の電極90は、上面部91、側壁部92、および下面部93を含む。側壁部92は、圧電体層40の側面42に対向し、側面42に接している。上面部91は、側壁部92の矢印Z方向の側の端部に連設され、圧電体層40の上面41上に配置される。下面部93は、側壁部92の矢印Zとは反対側の端部に連設され、圧電体層40の下面46上に配置される。
【0101】
(送信用領域および受信用領域)
図26を参照して、圧電体層40の内部には、送信用領域40N、受信用領域40M、および分離領域40Vが形成される。送信用領域40Nを構成する1または複数の単位圧電体層と、受信用領域40Mを構成する1または複数の単位圧電体層とは、層数が互いに異なるように構成される。本実施の形態では、送信用領域40Nは、第1単位圧電体層N1〜N8からなる8層構造を有している。一方で、受信用領域40Mは、第2単位圧電体層M1の1層構造を有している。
【0102】
第1単位圧電体層N1〜N8は、ケース60(
図2)の底部62から遠ざかる方向に積層される。第1単位圧電体層N1〜N8は、電極20(送信用電極)の上面部22および中間部23、ならびに、電極30(送信用電極)の上面部32および中間部33によって、電気的に並列接続される。
【0103】
電極90(接地電極)は、分離領域40Vを隔てて隣り合う送信用領域40Nおよび受信用領域40Mの双方に及んで広がる形状を有している。電極20の上面部22は、第1単位圧電体層N1〜N8を含む送信用領域40Nを間に挟んで、電極90の下面部93に対向している。電極10は、第2単位圧電体層M1を含む受信用領域40Mを間に挟んで、電極90の下面部93に対向している。なお、電極90は、圧電体層40を介して少なくとも受信用領域40Mに対向していれば、上面部91および側壁部92を備えていなくても構わない。
【0104】
本実施の形態においては、圧電体層40のうち、電極20の上面部22と圧電体層N7,N8に挟まれる電極20(中間部23)との間に位置する領域、電極20の中間部23と電極30の上面部32との間に位置する領域、および、電極30の上面部32と圧電体層N7,N8に挟まれる電極20(中間部23)との間に位置する領域が、送信用領域40Nとして機能する。電極10と電極90の下面部93との間に位置する領域が、受信用領域40Mとして機能する。
【0105】
送信用領域40Nと受信用領域40Mとは、ケース60の底部62の内面62Sの表面方向(X−Y面方向)において、分離領域40V(絶縁領域)を介して互いに隣り合う位置に形成されている。具体的には、圧電体層40の中心部に受信用領域40Mが設けられている。
図26では、送信用領域40Nが複数図示されているが、これらは連なっており、受信用領域40Mを囲むように、受信用領域40Mよりも径方向の外側である周辺部に、送信用領域40Nが設けられている。
【0106】
当該構成によっても、上述の実施の形態1と同様の作用および効果が得られる。また、電極90が電極30と分離されており、電極90が接地されているので、ケース60から静電気が進入した場合であっても、電荷がすみやかにGND電位に落ちるため、信号生成回路104や受信アンプ106が破壊されることを防止できる。また、ケース60が安定してGND電位となるため、電磁ノイズを抑制することが可能となる。
【0107】
[他の実施の形態]
上述の各実施の形態においては、圧電素子はチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスからなっているが、これに限られるものではない。たとえば、圧電素子は、ニオブ酸カリウムナトリウム系やアルカリニオブ酸系セラミックス等の非鉛系圧電セラミックスの圧電材料などからなっていてもよい。上述の各実施の形態においては、シリコーン71,72、は、シリコーン樹脂からなっているが、これに限るものではない。樹脂からなるものであれば、例えば、ウレタン樹脂やシリコーン発泡樹脂からなっていてもよい。上述の各実施の形態においては、圧電素子の外形は直方体であるが、これに限るものではない。例えば、圧電素子の外形が円筒形状であったとしても、実施の形態1と同様の作用および効果が得られる。
【0108】
以上、本発明に基づいた各実施の形態について説明したが、上記の開示内容はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。