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特許6048637アクティブソーナー装置およびその信号処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048637
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】アクティブソーナー装置およびその信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/526 20060101AFI20161212BHJP
   G01S 15/10 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   G01S7/526 J
   G01S15/10
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-35343(P2012-35343)
(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公開番号】特開2013-170939(P2013-170939A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2015年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】坂本 和崇
【審査官】 請園 信博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−147096(JP,A)
【文献】 特開平10−332818(JP,A)
【文献】 特開2008−232861(JP,A)
【文献】 実開昭61−091178(JP,U)
【文献】 特開平05−232240(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0126434(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 − 1/82
3/80 − 3/86
5/18 − 5/30
7/00 − 7/42
7/52 − 7/64
13/00 − 13/95
15/00 − 15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を音波に変換して発信する送波器と、目標物からの反射音波を含む水中音響信号を受波して、受信信号に変換する受波器と、前記受信信号を対象とし、前記送信信号をレプリカ信号としてレプリカ相関処理を行い、レプリカ相関処理結果を出力するレプリカ相関処理部と、前記レプリカ相関処理結果から目標反響音の信号S/N比を算出する信号S/N比算出部と、から構成されるアクティブソーナー装置において、前記信号S/N比算出部は、
受信チャネル(受信方位)ごとの前記レプリカ相関処理結果に対し、時刻tのデータで時刻t+Δt(Δt:時間分解能)のデータを割り算して得られる信号レベルの増減比を算出して、該信号レベルの増減比を微分データとして出力する微分処理部と、
前記微分データに対し、1.0未満の値を強制的に1.0とし、前記信号レベルが増加する方向の正の変化量のみを抽出して、抽出処理後データを出力する抽出処理部と、
前記抽出処理後データに対し、1を超える区間のみを区間毎に積算することによって、ワンクロス積分値を算出して、該ワンクロス積分値を表わす積分データを出力するワンクロス積分処理部と、
前記積分データから目標エコーの前記信号S/N比を算出するS/N比算出処理部と、
を有することを特徴とするアクティブソーナー装置。
【請求項2】
前記S/N比算出処理部は、前記積分データに対し、デシベル値(=20log(積分値))を算出することで特定方位(受信チャネル)の時間軸方向における前記信号S/N比を算出することを特徴とする、請求項に記載のアクティブソーナー装置。
【請求項3】
送信信号のレプリカ信号と受信信号との間のレプリカ相関処理によって得られたレプリカ相関処理結果から信号S/N比を算出する信号処理方法であって、
受信チャネル(受信方位)ごとの前記レプリカ相関処理結果に対し、時刻tのデータで時刻t+Δt(Δt:時間分解能)のデータを割り算して得られる信号レベルの増減比を算出して、該信号レベルの増減比を微分データとして出力する微分処理ステップと、
前記微分データに対し、1.0未満の値を強制的に1.0とし、前記信号レベルが増加する方向の正の変化量のみを抽出して、抽出処理後データを出力する抽出処理ステップと、
前記抽出処理後データに対し、1を超える区間のみを区間毎に積算することによって、ワンクロス積分値を算出して、該ワンクロス積分値を表わす積分データを出力するワンクロス積分処理ステップと、
前記積分データから目標エコーの前記信号S/N比を算出するS/N比算出処理ステップと、
を含むことを特徴とする信号処理方法。
【請求項4】
前記S/N比算出処理ステップは、前記積分データに対し、デシベル値(=20log(積分値))を算出することで特定方位(受信チャネル)の時間軸方向における前記信号S/N比を算出することを特徴とする、請求項に記載の信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブソーナー装置およびその信号処理方法に関し、特に相関処理結果から目標反響音の信号S/N比を算出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この技術分野において周知のように、ソーナー装置とは、水中音波を用いて、海中の物体に関する情報を得るための装置をいう。ソーナー装置は、アクティブソーナー装置とパッシブソーナー装置とに大別される。
【0003】
アクティブソーナー装置の原理はやまびこと同じである。すなわち、アクティブソーナー装置は、自分から音を出し、その音が目標物で反射して戻って来て、その反射音が聞こえるまでの時間差から、当該装置と目標物との間の距離を知るのが原理である。換言すれば、アクティブソーナー装置は、装置によって放射された音波が、ある離れた物体によって受ける影響を評価し、その物体に関する情報を得るための装置をいう。
【0004】
より詳細には、アクティブソーナー装置の基本的な原理としては、複数のアレイを配置し、整相処理によって特定の方位に送波および受波指向性を持たせたうえで、自ら音波を発生して送波し、受信した信号を信号処理し、受信信号に含まれる目標物からの反響音(エコー)を検出し、それに基づいて当該目標物の方位と距離とを特定する。
【0005】
従来のアクティブソーナー装置では、受信信号からエコー信号を検出する方法として、レプリカ相関処理が用いられている。ここで、「レプリカ相関」とは、自らが送波した信号の標本となる信号(レプリカ信号)と受信した信号との間の相関度を計算する信号処理方式であり、相互相関処理とも呼ばれる。このとき、受信信号に対して時間をずらしながらレプリカ相関を繰り返すと、レプリカ信号と受信信号がもっとも類似した時刻、すなわちエコーを受信した時刻で相互相関処理結果が最大値となる。アクティブソーナー装置では、この相互相関処理により、エコー信号の検出を行う。
【0006】
従来から、種々のアクティブソーナー装置が提案されている。例えば、特開2008−232861号公報(特許文献1)は、ドップラーシフトに対応するために、エコー信号が検出された時刻部分だけを切り出してレプリカ相関処理を行って、信号処理区間以外の雑音の影響を除くようにした、アクティブソーナー装置を開示している。
【0007】
ところで、背景雑音レベルはランダムな雑音によって常に変化している。また、自らが送信した音が、海底反射によって強い残響となることもあり、実海面においては、予測不可能な時刻に強い信号が発生する。その結果、その時刻においても相互相関処理の結果は相対的に大きな値となる。そのため単純な固定値による閾値設定を行うことによってエコー信号検出を行うことは困難である。そのため、いかなる処理系であろうとも、背景雑音との差分、S/N比(Signal/Noise比)を抽出する処理が必須となる。
【0008】
一般的には、現在取得しているデータから移動平均等の統計処理によって背景雑音レベルを推定し、その値で正規化するAGC(automatic gain control)処理が良く知られている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。但し、特許文献2および特許文献3では、レプリカ相関処理を行っていない。
【0009】
従来手法では、送波信号(レプリカ信号)と受信信号との間の相互相関処理結果に対し、PDAGC(post detection automatic gain control)処理が用いられてきた。これは、相互相関処理結果に対し、過去N点のデータの平均値を背景雑音レベルの推定値とし、その値で正規化することによりS/N比を算出する手法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−232861号公報
【特許文献2】特許第2995374号公報
【特許文献3】特許第4738082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、統計処理によって背景雑音レベルを推定する方法では、常に過去のデータに依存することとなる。そのため、突発的に強い信号や異常値が混入した場合、正常にエコー信号の検出が出来なくなる問題がある。
【0012】
詳述すると、実海面においては、自らが送信した音による残響や突発的な背景雑音レベルの変化により、予測不可能な時刻に強い信号が発生する。そのため従来のPDAGC手法である過去N点のデータの平均値を背景雑音レベルの推定値とする方法では、信号レベルの高い時刻付近では必然的に推定雑音レベルも高くなるため、信号S/N比が検出されないブラインドゾーンが発生してしまう問題点がある(図4参照)。
【0013】
[発明の目的]
本発明の目的は、アクティブソーナー信号処理における信号S/N算出処理において、信号S/N比が検出されないブラインドゾーン問題を解決し、安定した信号S/N検出精度を保つことにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の信号処理方法は、送信信号のレプリカ信号と受信信号との間のレプリカ相関処理によって得られたレプリカ相関処理結果から信号S/N比を算出する信号処理方法であって、受信チャネル(受信方位)ごとのレプリカ相関処理結果に対し、時刻tのデータで時刻t+Δt(Δt:時間分解能)のデータを割り算して得られる信号レベルの増減比を算出して、信号レベルの増減比を微分データとして出力する微分処理ステップと、微分データに対し、1.0未満の値を強制的に1.0とし、信号レベルが増加する方向の正の変化量のみを抽出して、抽出処理後データを出力する抽出処理ステップと、抽出処理後データに対し、1を超える区間のみを区間毎に積算することによって、ワンクロス積分値を算出して、そのワンクロス積分値を表わす積分データを出力するワンクロス積分処理ステップと、積分データから目標エコーの信号S/N比を算出するS/N比算出処理ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、突発的な強い信号が原因となるブラインドゾーンが発生しない、信号S/N比を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態に係るアクティブソーナー装置内のアクティブソーナー信号処理部(信号S/N比算出部)の全体構成を示すブロック図である。
図2】本発明の有効性を示すための、入力データ(相関処理結果)の実例を示す図である。
図3図2中の入力データ(相関処理結果)の実例のうちエコー部分の拡大図である。
図4】従来手法を用いた場合の問題点を示した実例を示す図である。
図5図2で示した入力データ(相関処理結果)に対して微分処理部によって微分処理を行って得られる微分データ(微分処理結果)の実例を示す図である。
図6図5で示した入力データ(微分処理結果)に対して抽出処理部によって抽出処理を行って得られる抽出処理後データ(抽出処理結果)の実例を示す図である。
図7図6で示した入力データ(抽出処理結果)に対してワンクロス積分処理部によってワンクロス積分処理を行って得られる積分データ(ワンクロス積分処理結果)の実例を示す図である。
図8図7で示した入力データ(ワンクロス積分処理結果)に対してS/N比算出処理部によってS/N比算出処理を行って得られる信号S/N比データ(信号S/N比算出処理結果)の実例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図示はしないが、本発明の実施形態が適用されるアクティブソーナー装置は、送信信号を音波に変換して発信する送波器と、目標物からの反射音波を含む水中音響信号を受波して、受信信号に変換する受波器と、受信信号を対象とし、送信信号をレプリカ信号としてレプリカ相関処理を行い、レプリカ相関処理結果を出力するレプリカ相関処理部と、レプリカ相関処理結果から目標反響音の信号S/N比を算出する信号S/N比算出部と、から構成される。
【0019】
本発明は、アクティブソーナー装置内の信号S/N比算出部の改良に関する。信号S/N比算出部は、アクティブソーナー信号処理部と呼ばれる。
【0020】
[構成の説明]
図1は、本発明の一実施形態に係るアクティブソーナー信号処理部の全体構成を示すブロック図である。
【0021】
本発明の実施形態に係るアクティブソーナー信号処理部は、微分処理部1と、抽出処理部2と、ワンクロス積分処理部と、S/N比算出処理部4とから構成される。
【0022】
微分処理部1は、レプリカ相関処理結果の信号レベルの増減比を算出して、微分データを出力する。詳述すると、微分処理部1は、アクティブソーナー装置で受信した、ある特定方位(受信チャネル)のデータのレプリカ相関処理結果に対し、時刻tと時刻t+Δtの信号増減比を算出して、その信号増減比を表わす微分データを出力する。
【0023】
抽出処理部2は、微分データから正の変化量のみを抽出して、抽出処理後データを出力する。詳述すると、抽出処理部2は、微分データに対し、1.0未満の値を強制的に1.0とし、正の変化量のみを抽出する。
【0024】
ワンクロス積分処理部3は、抽出処理後データからそのワンクロス積分値を算出し、そのワンクロス積分値を表わす積分データを出力する。すなわち、ワンクロス積分処理部3は、抽出処理後データに対し、1を超える区間毎に積算することによって、ワンクロス積分値を算出する。
【0025】
S/N比算出処理部4は、積分データから目標エコーの信号S/N比を算出する。詳述すると、S/N比算出処理部4は、積分データに対し、デシベル値(=20log(積分値))を算出することで特定方位(受信チャネル)の時間軸方向における信号S/N比を算出する。
【0026】
[動作の説明]
次に、図1に示したアクティブソーナー信号処理部の動作について説明する。
【0027】
微分処理部1は、下記数1により、時間軸方向の信号増減比を算出して、微分データを出力する。
【0028】
【数1】
ここで、t:時刻 Δt:時間分解能である。
【0029】
抽出処理部2は、微分データに対して、下記数2に従って、1.0未満の値を強制的に1.0とし、正の変化量のみを抽出する。
【0030】
【数2】
【0031】
ワンクロス積分処理部3は、下記数3により、信号増加比が1.0を超える区間ごとに積算を行い、合計増加比(ワンクロス積分値)を算出する。
【0032】
【数3】
【0033】
S/N比算出処理部4は、下記数4によりデシベル値(=20log(積分値))を算出することで時間軸方向における信号S/N比を算出する。
【0034】
【数4】
【実施例1】
【0035】
次に、図1に示したアクティブソーナー信号処理部の実施例について説明する。
【0036】
ある特定の方位(受信チャネル)において、送信信号(レプリカ信号)と受信信号との間のレプリカ相関処理結果が、距離0[yd]〜25000[yd]まで入力されたとする。
【0037】
図2は、そのレプリカ相関処理結果(入力データ)を示す図である。図2において、横軸は距離[yd]を示し、縦軸は電圧[V]を示す。
【0038】
図3は、図2のエコー部分を拡大して示す図である。図3では、図2の距離1500[yd]〜25000[yd]の部分を拡大している。図3から、2つのエコー信号である、エコー1とエコー2とが存在することが分かる。エコー1は、約2000[yd]に存在し、エコー2は、約2400[yd]に存在している。
【0039】
微分処理部1にて前述の数1により、信号増加比を算出する。
【0040】
図5は、微分処理部1によって得られる微分データ(部分処理結果)を示す図である。図5において、横軸は距離[yd]を示し、縦軸は信号増加比を示す。
【0041】
抽出処理部2にて前述の数2により、正の変化量のみを抽出する。
【0042】
図6は、抽出処理部2によって得られる抽出処理後データ(抽出処理結果)を示す図である。図6において、横軸は距離[yd]を示し、縦軸は信号増加比を示す。
【0043】
ワンクロス積分処理部3にて前述の数3により、信号増加比が1.0を超える区間ごとに積算を行い、合計増加比を算出する。
【0044】
図7は、ワンクロス積分処理部3によって得られる積分データ(ワンクロス積分処理結果)を示す図である。図7において、横軸は距離[yd]を示し、縦軸は合計信号増加比を示す。
【0045】
S/N比算出処理部4では、前述の数4によりデシベル値を算出する。
【0046】
図8は、S/N比算出処理部4によって得られる信号S/N比算出処理結果を示す図である。図8において、横軸は距離[yd]を示し、縦軸は信号S/N比[dB]を示す。図8から、約2000[yd]にエコー1が存在し、約2400[yd]にエコー2に存在することが分かる。また、図8から、本実施例においては、1dB程度のエコーであっても算出可能である。
【0047】
本実施形態(実施例)の効果について説明する。
【0048】
本実施形態(実施例)を用いてS/N比算出処理を行うことによって、突発的な強い信号が原因となるブラインドゾーンが発生せず、1dB程度の信号S/N比であっても検出することが可能となる。その理由は、本実施形態(実施例)における処理において、入力データから背景雑音レベル等を推定する処理ではなく、微分処理によって時間軸方向の信号増減比を直接算出し、抽出処理によって正の変化量のみを抽出し、ワンクロス積分処理によって合計増加比の算出を行い、S/N比算出処理によって合計増加比に対してデシベル換算を行い、時間軸方向の信号S/N比を算出しているからである。すなわち、入力データにおける信号レベルの増加比を、雑音レベル等を推定することなく直接算出することを可能にしたからである。
【0049】
尚、図1に示したアクティブソーナー信号処理部(信号S/N比算出部)は、コンピュータによって実現され得る。コンピュータは、周知のように、中央処理装置(CPU)と、データを格納するRAMなどの記憶装置と、プログラムを格納するプログラム用メモリ(ROM)とを備える。そして、プログラム用メモリ(ROM)に格納されたプログラムを読み出すことにより、CPUは、微分処理部1、抽出処理部2、ワンクロス積分処理部3、およびS/N比算出処理部4の機能を実現する。
【0050】
以上、実施形態(実施例)を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態(実施例)に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0051】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限定されない。
【0052】
(付記1) 送信信号を音波に変換して発信する送波器と、目標物からの反射音波を含む水中音響信号を受波して、受信信号に変換する受波器と、前記受信信号を対象とし、前記送信信号をレプリカ信号としてレプリカ相関処理を行い、レプリカ相関処理結果を出力するレプリカ相関処理部と、前記レプリカ相関処理結果から目標反響音の信号S/N比を算出する信号S/N比算出部と、から構成されるアクティブソーナー装置において、前記信号S/N比算出部は、
前記レプリカ相関処理結果の信号レベルの増減比を算出して、微分データを出力する微分処理部と、
前記微分データから正の変化量のみを抽出して、抽出処理後データを出力する抽出処理部と、
前記抽出処理後データからワンクロス積分値を算出して、該ワンクロス積分値を表わす積分データを出力するワンクロス積分処理部と、
前記積分データから目標エコーの前記信号S/N比を算出するS/N比算出処理部と、
を有することを特徴とするアクティブソーナー装置。
【0053】
(付記2) 前記微分処理部は、受信チャネル(受信方位)ごとの前記レプリカ相関処理結果に対し、時刻tと時刻t+Δt(Δt:時間分解能)のデータに対して、その増減比を算出することを特徴とする、付記1に記載のアクティブソーナー装置。
【0054】
(付記3) 前記抽出処理部は、前記微分データに対し、1.0未満の値を強制的に1.0とし、正の変化量のみを抽出することを特徴とする、付記1又は2に記載のアクティブソーナー装置。
【0055】
(付記4) 前記ワンクロス積分処理部は、前記抽出処理後データに対し、1を超える区間のみを区間毎に積算することによって、前記ワンクロス積分値を算出することを特徴とする、付記1乃至3のいずれか1項に記載のアクティブソーナー装置。
【0056】
(付記5) 前記S/N比算出処理部は、前記積分データに対し、デシベル値(=20log(積分値))を算出することで特定方位(受信チャネル)の時間軸方向における前記信号S/N比を算出することを特徴とする、付記1乃至4のいずれか1項に記載のアクティブソーナー装置。
【0057】
(付記6) 送信信号のレプリカ信号と受信信号との間のレプリカ相関処理によって得られたレプリカ相関処理結果から信号S/N比を算出する信号処理方法であって、
前記レプリカ相関処理結果の信号レベルの増減比を算出して、微分データを出力する微分処理ステップと、
前記微分データから正の変化量のみを抽出して、抽出処理後データを出力するする抽出処理ステップと、
前記抽出処理後データからそのワンクロス積分値を算出して、該ワンクロス積分値を表わす積分データを出力するワンクロス積分処理ステップと、
前記積分データから目標エコーの前記信号S/N比を算出するS/N比算出処理ステップと、
を含むことを特徴とする信号処理方法。
【0058】
(付記7) 前記微分処理ステップは、受信チャネル(受信方位)ごとの前記レプリカ相関処理結果に対し、時刻tと時刻t+Δt(Δt:時間分解能)のデータに対して、その増減比を算出することを特徴とする、付記6に記載の信号処理方法。
【0059】
(付記8) 前記抽出処理ステップは、前記微分データに対し、1.0未満の値を強制的に1.0とし、正の変化量のみを抽出することを特徴とする、付記6又は7に記載の信号処理方法。
【0060】
(付記9) 前記ワンクロス積分処理ステップは、前記抽出処理後データに対し、1を超える区間のみを区間毎に積算することによって、前記ワンクロス積分値を算出することを特徴とする、付記6乃至8のいずれか1項に記載の信号処理方法。
【0061】
(付記10) 前記S/N比算出処理ステップは、前記積分データに対し、デシベル値(=20log(積分値))を算出することで特定方位(受信チャネル)の時間軸方向における前記信号S/N比を算出することを特徴とする、付記6乃至9にいずれか1項に記載の信号処理方法。
【0062】
(付記11) コンピュータに、送信信号のレプリカ信号と受信信号との間のレプリカ相関処理によって得られたレプリカ相関処理結果から信号S/N比を算出させる信号処理プログラムであって、前記コンピュータに、
前記レプリカ相関処理結果の信号レベルの増減比を算出して、微分データを出力する微分処理と、
前記微分データから正の変化量のみを抽出して、抽出処理後データを出力するする抽出処理と、
前記抽出処理後データからそのワンクロス積分値を算出して、該ワンクロス積分値を表わす積分データを出力するワンクロス積分処理と、
前記積分データから目標エコーの前記信号S/N比を算出するS/N比算出処理と、
を実行させるための信号処理プログラム。
【0063】
(付記12) 前記微分処理は、前記コンピュータに、受信チャネル(受信方位)ごとの前記レプリカ相関処理結果に対し、時刻tと時刻t+Δt(Δt:時間分解能)のデータに対して、その増減比を算出させることを特徴とする、付記11に記載の信号処理プログラム。
【0064】
(付記13) 前記抽出処理は、前記コンピュータに、前記微分データに対し、1.0未満の値を強制的に1.0とし、正の変化量のみを抽出させることを特徴とする、付記11又は12に記載の信号処理プログラム。
【0065】
(付記14) 前記ワンクロス積分処理は、前記コンピュータに、前記抽出処理後データに対し、1を超える区間のみを区間毎に積算することによって、前記ワンクロス積分値を算出させることを特徴とする、付記11乃至13のいずれか1項に記載の信号処理プログラム。
【0066】
(付記15) 前記S/N比算出処理は、前記コンピュータに、前記積分データに対し、デシベル値(=20log(積分値))を算出することで特定方位(受信チャネル)の時間軸方向における前記信号S/N比を算出させることを特徴とする、付記11乃至14にいずれか1項に記載の信号処理プログラム。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、アクティブソーナー装置に関する信号処理機能にて利用できる可能性を有する。
【符号の説明】
【0068】
1 微分処理部
2 抽出処理部
3 ワンクロス積分処理部
4 S/N比算出処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8