【実施例1】
【0035】
次に、
図1に示したアクティブソーナー信号処理部の実施例について説明する。
【0036】
ある特定の方位(受信チャネル)において、送信信号(レプリカ信号)と受信信号との間のレプリカ相関処理結果が、距離0[yd]〜25000[yd]まで入力されたとする。
【0037】
図2は、そのレプリカ相関処理結果(入力データ)を示す図である。
図2において、横軸は距離[yd]を示し、縦軸は電圧[V]を示す。
【0038】
図3は、
図2のエコー部分を拡大して示す図である。
図3では、
図2の距離1500[yd]〜25000[yd]の部分を拡大している。
図3から、2つのエコー信号である、エコー1とエコー2とが存在することが分かる。エコー1は、約2000[yd]に存在し、エコー2は、約2400[yd]に存在している。
【0039】
微分処理部1にて前述の数1により、信号増加比を算出する。
【0040】
図5は、微分処理部1によって得られる微分データ(部分処理結果)を示す図である。
図5において、横軸は距離[yd]を示し、縦軸は信号増加比を示す。
【0041】
抽出処理部2にて前述の数2により、正の変化量のみを抽出する。
【0042】
図6は、抽出処理部2によって得られる抽出処理後データ(抽出処理結果)を示す図である。
図6において、横軸は距離[yd]を示し、縦軸は信号増加比を示す。
【0043】
ワンクロス積分処理部3にて前述の数3により、信号増加比が1.0を超える区間ごとに積算を行い、合計増加比を算出する。
【0044】
図7は、ワンクロス積分処理部3によって得られる積分データ(ワンクロス積分処理結果)を示す図である。
図7において、横軸は距離[yd]を示し、縦軸は合計信号増加比を示す。
【0045】
S/N比算出処理部4では、前述の数4によりデシベル値を算出する。
【0046】
図8は、S/N比算出処理部4によって得られる信号S/N比算出処理結果を示す図である。
図8において、横軸は距離[yd]を示し、縦軸は信号S/N比[dB]を示す。
図8から、約2000[yd]にエコー1が存在し、約2400[yd]にエコー2に存在することが分かる。また、
図8から、本実施例においては、1dB程度のエコーであっても算出可能である。
【0047】
本実施形態(実施例)の効果について説明する。
【0048】
本実施形態(実施例)を用いてS/N比算出処理を行うことによって、突発的な強い信号が原因となるブラインドゾーンが発生せず、1dB程度の信号S/N比であっても検出することが可能となる。その理由は、本実施形態(実施例)における処理において、入力データから背景雑音レベル等を推定する処理ではなく、微分処理によって時間軸方向の信号増減比を直接算出し、抽出処理によって正の変化量のみを抽出し、ワンクロス積分処理によって合計増加比の算出を行い、S/N比算出処理によって合計増加比に対してデシベル換算を行い、時間軸方向の信号S/N比を算出しているからである。すなわち、入力データにおける信号レベルの増加比を、雑音レベル等を推定することなく直接算出することを可能にしたからである。
【0049】
尚、
図1に示したアクティブソーナー信号処理部(信号S/N比算出部)は、コンピュータによって実現され得る。コンピュータは、周知のように、中央処理装置(CPU)と、データを格納するRAMなどの記憶装置と、プログラムを格納するプログラム用メモリ(ROM)とを備える。そして、プログラム用メモリ(ROM)に格納されたプログラムを読み出すことにより、CPUは、微分処理部1、抽出処理部2、ワンクロス積分処理部3、およびS/N比算出処理部4の機能を実現する。
【0050】
以上、実施形態(実施例)を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態(実施例)に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0051】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限定されない。
【0052】
(付記1) 送信信号を音波に変換して発信する送波器と、目標物からの反射音波を含む水中音響信号を受波して、受信信号に変換する受波器と、前記受信信号を対象とし、前記送信信号をレプリカ信号としてレプリカ相関処理を行い、レプリカ相関処理結果を出力するレプリカ相関処理部と、前記レプリカ相関処理結果から目標反響音の信号S/N比を算出する信号S/N比算出部と、から構成されるアクティブソーナー装置において、前記信号S/N比算出部は、
前記レプリカ相関処理結果の信号レベルの増減比を算出して、微分データを出力する微分処理部と、
前記微分データから正の変化量のみを抽出して、抽出処理後データを出力する抽出処理部と、
前記抽出処理後データからワンクロス積分値を算出して、該ワンクロス積分値を表わす積分データを出力するワンクロス積分処理部と、
前記積分データから目標エコーの前記信号S/N比を算出するS/N比算出処理部と、
を有することを特徴とするアクティブソーナー装置。
【0053】
(付記2) 前記微分処理部は、受信チャネル(受信方位)ごとの前記レプリカ相関処理結果に対し、時刻tと時刻t+Δt(Δt:時間分解能)のデータに対して、その増減比を算出することを特徴とする、付記1に記載のアクティブソーナー装置。
【0054】
(付記3) 前記抽出処理部は、前記微分データに対し、1.0未満の値を強制的に1.0とし、正の変化量のみを抽出することを特徴とする、付記1又は2に記載のアクティブソーナー装置。
【0055】
(付記4) 前記ワンクロス積分処理部は、前記抽出処理後データに対し、1を超える区間のみを区間毎に積算することによって、前記ワンクロス積分値を算出することを特徴とする、付記1乃至3のいずれか1項に記載のアクティブソーナー装置。
【0056】
(付記5) 前記S/N比算出処理部は、前記積分データに対し、デシベル値(=20log(積分値))を算出することで特定方位(受信チャネル)の時間軸方向における前記信号S/N比を算出することを特徴とする、付記1乃至4のいずれか1項に記載のアクティブソーナー装置。
【0057】
(付記6) 送信信号のレプリカ信号と受信信号との間のレプリカ相関処理によって得られたレプリカ相関処理結果から信号S/N比を算出する信号処理方法であって、
前記レプリカ相関処理結果の信号レベルの増減比を算出して、微分データを出力する微分処理ステップと、
前記微分データから正の変化量のみを抽出して、抽出処理後データを出力するする抽出処理ステップと、
前記抽出処理後データからそのワンクロス積分値を算出して、該ワンクロス積分値を表わす積分データを出力するワンクロス積分処理ステップと、
前記積分データから目標エコーの前記信号S/N比を算出するS/N比算出処理ステップと、
を含むことを特徴とする信号処理方法。
【0058】
(付記7) 前記微分処理ステップは、受信チャネル(受信方位)ごとの前記レプリカ相関処理結果に対し、時刻tと時刻t+Δt(Δt:時間分解能)のデータに対して、その増減比を算出することを特徴とする、付記6に記載の信号処理方法。
【0059】
(付記8) 前記抽出処理ステップは、前記微分データに対し、1.0未満の値を強制的に1.0とし、正の変化量のみを抽出することを特徴とする、付記6又は7に記載の信号処理方法。
【0060】
(付記9) 前記ワンクロス積分処理ステップは、前記抽出処理後データに対し、1を超える区間のみを区間毎に積算することによって、前記ワンクロス積分値を算出することを特徴とする、付記6乃至8のいずれか1項に記載の信号処理方法。
【0061】
(付記10) 前記S/N比算出処理ステップは、前記積分データに対し、デシベル値(=20log(積分値))を算出することで特定方位(受信チャネル)の時間軸方向における前記信号S/N比を算出することを特徴とする、付記6乃至9にいずれか1項に記載の信号処理方法。
【0062】
(付記11) コンピュータに、送信信号のレプリカ信号と受信信号との間のレプリカ相関処理によって得られたレプリカ相関処理結果から信号S/N比を算出させる信号処理プログラムであって、前記コンピュータに、
前記レプリカ相関処理結果の信号レベルの増減比を算出して、微分データを出力する微分処理と、
前記微分データから正の変化量のみを抽出して、抽出処理後データを出力するする抽出処理と、
前記抽出処理後データからそのワンクロス積分値を算出して、該ワンクロス積分値を表わす積分データを出力するワンクロス積分処理と、
前記積分データから目標エコーの前記信号S/N比を算出するS/N比算出処理と、
を実行させるための信号処理プログラム。
【0063】
(付記12) 前記微分処理は、前記コンピュータに、受信チャネル(受信方位)ごとの前記レプリカ相関処理結果に対し、時刻tと時刻t+Δt(Δt:時間分解能)のデータに対して、その増減比を算出させることを特徴とする、付記11に記載の信号処理プログラム。
【0064】
(付記13) 前記抽出処理は、前記コンピュータに、前記微分データに対し、1.0未満の値を強制的に1.0とし、正の変化量のみを抽出させることを特徴とする、付記11又は12に記載の信号処理プログラム。
【0065】
(付記14) 前記ワンクロス積分処理は、前記コンピュータに、前記抽出処理後データに対し、1を超える区間のみを区間毎に積算することによって、前記ワンクロス積分値を算出させることを特徴とする、付記11乃至13のいずれか1項に記載の信号処理プログラム。
【0066】
(付記15) 前記S/N比算出処理は、前記コンピュータに、前記積分データに対し、デシベル値(=20log(積分値))を算出することで特定方位(受信チャネル)の時間軸方向における前記信号S/N比を算出させることを特徴とする、付記11乃至14にいずれか1項に記載の信号処理プログラム。