【0016】
本発明では、スイッチ電極の間隔が広い静電容量結合式静電センサーでもスイッチ電極
を互いに平行に設け、平行に設けたスイッチ電極の一方をスイッチ駆動電極とし、もう一
方をスイッチ受信電極と称す。それぞれの電極群に、sin信号を印加したスイッチ駆動
電極群のスイッチ駆動電極とその接続をする駆動導通部材と、電流・電圧変換回路と、そ
れを経由して
スイッチ受信電極群のスイッチ受信電極とその接続をする受信導通部材を接
続し、発振器で生成する信号を同期発信回路によって、sin信号と90度位相の違うc
os信号の2つを発振し、sin信号の一つは増幅回路と切替回路経由でスイッチ駆動電
極をドライブし、スイッチ受信電極と切替回路を介して、電流・電圧変換回路の抵抗Rに
接続する。これらの配線をしているスイッチ駆動電極群のスイッチ駆動電極と、スイッチ
受信電極群のスイッチ受信電極間で、コンデンサを形成し、1つのタッチスイッチを構成
する。この際、切替回路で接続していないスイッチ駆動電極群のスイッチ駆動電極とスイ
ッチ受信電極群のスイッチ受信電極は、このタッチスイッチを構成しているスイッチ電極
から離れた位置に配置していれば、未接続の状態でも良い。ただし、近傍ならば、未接続
のスイッチ電極が外乱からのノイズを受けて、タッチスイッチを構成しているスイッチ電
極と干渉する可能性があり、そのため、未接続のスイッチ電極群を一定電圧、例えば中間
電位またはグランドに接続することが望ましい。
sin信号の一つは、掛算回路に接続される。また、cos信号はもう一つの掛算回路に
接続される。電流・電圧変換回路の出力は、増幅回路とバンドパス・フィルタ回路を介し
て、それぞれ2つの掛算回路に接続し、それぞれsin信号およびcos信号と掛けられ
る。真の電流値のAC信号だけが、DC信号を含む2倍のAC周波数になり、ローパス・
フィルタ回路を通過することで完全なDC信号になる。
スイッチ電極群へ混入されるsin信号とcos信号の周波数以外のノイズは、全てsi
n信号・cos信号との掛算により、sin信号・cos信号の周波数より高い周波数の
AC信号になり、sin信号・cos信号の周波数より十分低いローパス・フィルタ回路
を通すことで消去することができる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0020】
図1に、実施例1の電極構造図を示す。
タッチスイッチの電極はスイッチ駆動電極1と、スイッチ受信電極2で、平行な直線で形成される。その長さsは同一あり、その太さtは基板上の銅パターンであれば0.3mm〜1mm、フィルムまたはガラス上の銀ペーストまたはITO等であれば0.5mm〜1mmが望ましい最少寸法であり最大寸法でもある。余分に太くてもノイズの増大と使用面積が大きくなるだけでメリットはない。スイッチ駆動電極1は駆動導通部材3により切替回路13に接続される。スイッチ受信電極2は受信導通部材4により切替回路13に接続される。スイッチ電極の長さsと間隔dは、指の大きさ等から5mm以上が望ましい。最大値は、入力装置全体の耐ノイズ性能と入力に使用する指と本数、手の大きさ等で決まり、入力する指の本数が複数であったり、手での入力であれば長さsと間隔dはより大きくできる。駆動導電部材3は、スイッチ駆動電極1およびスイッチ受信電極2、各々の電極の中心から引き出される。
図2に電極の配置図を示す。
図2−1は厚さ1〜5mmのアクリル板5の下に、一枚の基板6があり、その基板上には左側にスイッチ駆動電極1と接続される駆動導通部材3があり、右側にスイッチ受信電極2と接続される受信導通部材4がある。
図2−2は、
図2−1の裏表を逆にしたものである。厚さ1〜5mmのアクリル板5の上に、一枚の基板6があり、その基板6上には、左側にスイッチ駆動電極1と接続される駆動導通部材3があり、右側にスイッチ受信電極2と接続される受信導通部材4がある。
図2−3は、厚さ1〜5mmのアクリル板5の下に、2枚の基板6があり、その基板6上には左側基板6にスイッチ駆動電極1と接続される駆動導通部材3があり、右側基板6にスイッチ受信電極2と接続される受信導通部材4がある。左側基板6と右側基板6の間には何もない。すなわち、左側基板6と右側基板6の間が中空の構造になっている。さらに、アクリル板5も、左側基板6と右側基板6の間と同様に中空にしてもよい。
図2−4は、
図2−3の裏表を逆にしたものである。厚さ1〜5mmのアクリル板5の上に、2枚の基板6があり、その基板6上には左側基板6にスイッチ駆動電極1と接続される駆動導通部材3があり、右側基板6にスイッチ受信電極2と接続される受信導通部材4がある。左側基板6と右側基板6の間には何もない。すなわち、左側基板6と右側基板6の間が中空の構造になっている。さらに、アクリル板5も、左側基板6と右側基板6の間と同様に中空にしてもよい。
【0021】
図3に指と、容量性電界と電極構造図を示す。
厚さ1〜5mmのアクリル板等の下に指数本が十分に入る間隔で2つの電極があり、片方がスイッチ駆動電極であり、もう一方がスイッチ受信電極である。二つの電極の間には容量性電界が発生し、複数本の曲線で表す。
図3−1から
図3−3は上方から下方に指が下りてきた場合に容量性電界が遮断される様子を表している。
十分に上方に指があると、
図3−1に表すように容量性電界はなんら影響を受けない。
中央に指が下りてくると、
図3−2に示すように容量性電界が指により遮断され始める。
下方に指が下りてくると、
図3−3に示すようにアクリル板上の容量性電界が指により十分に遮断される。
また
図3−4のように、指が電極間の左隅にある場合と、指が
図3−5ように中央にある場合と、指が
図3−6のように右隅にある場合とで遮断される容量性電界量に差はない。
図4に垂直方向から見た容量性電界図を示す。
スイッチ駆動電極1と、スイッチ受信電極2との間および周辺で容量性電界が発生する。特に多くの容量性電界7は電極間に多くあり、両電極の側面から両電極外部に出る容量性電界は少ないことを示している。しかし、電極に近接して指等が置かれることで容量性電界は遮断される。
図5に複数の容量性電界が干渉する図を示す。
図5−1は二つのタッチスイッチの容量性電界が干渉し、入力範囲が一部重複することを示している。
図5−2は、個々のスイッチ電極の組を中性電位またはグランド等でガードしている場合に、容量性電界が干渉しないで、入力範囲が重複しないことを示している。
【0022】
図6に、実施例1の入力装置であるタッチスイッチのオン/オフを計測する場合の構成図を示す。まず、制御装置24は、プログラムと定数(例えば閾値)を内蔵するROMとワーキングメモリを内蔵する。発振器9からの信号をsin信号、cos信号に変換するsin信号同期発信回路10、cos信号同期発信回路11に信号を出力する。sin信号を受け増幅し、スイッチ駆動電極に供給する増幅回路12、スイッチ電極群14のスイッチ駆動電極1を選択する切替回路13を制御する切替制御回路23と、スイッチ受信電極からのsin信号を受信するスイッチ電極群14のスイッチ受信電極2を選択する切替回路13を制御する切替制御回路23と、バンドパス・フィルタ回路18よりsin信号の周波数帯域に対応した発信器9からの信号からsin信号同期発振回路のsin信号とcos信号同期発振回路のcos信号を掛算回路19に入力する。ローパス・フィルタ21を介した信号をデジタルデータに変換するA/D変換回路22と、同期発信回路10、11からのcos信号とバンドパス・フィルタ回路18を介したsin信号とを掛算し、ローパス・フィルタ21を介した信号をデジタルデータに変換するA/D変換回路22と、2つのA/D変換のデジタルデータを演算して、タッチスイッチのオンまたはオフ情報を各タッチスイッチのI/Oとして出力する外部I/F25とから構成している。
ここで、本実施例ではタッチスイッチの数を4個設けたものを例に説明する。タッチスイッチは、コンデンサを形成するスイッチ電極15のスイッチ電極SW1の、スイッチ駆動電極1とスイッチ受信電極2との対より構成し、同様に、タッチスイッチSW2はスイッチ駆動電極1とスイッチ受信電極2との対より構成し、タッチスイッチSW3は、スイッチ駆動電極1とスイッチ受信電極2との対より構成し、タッチスイッチSW4は、スイッチ駆動電極1とスイッチ受信電極2との対から構成している。
【0023】
制御装置24のCPUによって発振器9から出力する発振周波数を設定し、発振器から
出力する信号を2つの同期発信回路10,11より、sin信号とcos信号を90度の
位相差に変換して出力する。そして、sin信号は増幅回路12により、タッチスイッチ
SW1〜4の4個のスイッチ電極群14のスイッチ電極SW1〜4をドライブする線を選
択し、切替回路13にて接続する。制御装置24より切替制御回路23を制御して選択し
たスイッチ電極群14のスイッチSW1〜4の何れかを介し増幅回路12で増幅したsi
n信号の電圧により、切替回路13で選択したスイッチ駆動電極SW1〜4に対となる
ス
イッチ電極群14のスイッチ受信電極2を通じ、電流・電圧変換回路16により抵抗Rを流れる電流は電圧に変換され増幅回路17へ伝達される。
このとき、接続しないスイッチ電極は、制御装置24からの指示により切替制御回路23
により、切替回路13を制御して、未接続にする。またタッチスイッチSW1〜4のスイ
ッチ電極を介した電流i1〜i4は、抵抗Rを通過することで電圧E1〜E4に変換し、
増幅回路17で増幅する。そして、切替制御回路23を制御して発振器9より出力する信
号によって、生成するsin信号の帯域に対応するバンドパス・フィルタ回路18のバン
ドパス・フィルタを通過し、sin信号の周波数で通過帯域以外の周波数をカットする。
バンドパス・フィルタ回路18のバンドパス・フィルタにより切替回路13を介して出力
する周波数は、それぞれ2つの掛算回路19のY側に入力する。2つの掛算回路19のX
側にはsin信号、cos信号を入力する。それぞれの掛算回路19の通過によって、掛
算回路19のそれぞれの結果は増幅回路20によって増幅され、非常に低い周波数帯域を
通過させるローパス・フィルタ21において、ノイズ信号が消され、DC信号が取り出さ
れる。そして、それぞれのDC信号はA/D変換器22でデジタルデータに変換し、制御
装置24に入力する。制御装置24は、タッチスイッチSW1から、タッチスイッチSW
2、タッチスイッチSW3、タッチスイッチSW4の順番に、切替制御回路23で切替回
路13を逐次制御して、デジタルデータを得る。
装置24に入力する。制御装置24は、タッチスイッチSW1から、タッチスイッチSW
2、タッチスイッチSW3、タッチスイッチSW4の順番に、切替制御回路23で切替回
路13を逐次制御して、デジタルデータを得る。
【0024】
図7に、実施例1のタッチスイッチのオン/オフを計測する場合の掛算回路19の波形図を示す。掛算回路19のX入力には、sin信号10あるいはcos信号11を入力する。抵抗Rの片側はグランドに接続する。反対側は
図6に示すように、増幅回路17、バンドパス・フィルタ回路18を通過したsin信号が切替回路13を介してタッチスイッチを構成するスイッチ受信電極2に接続する。
例えば、人間の指等が、接続しているスイッチ電極群14のタッチスイッチSW1に近づくと、スイッチ受信電極2に流れる電流i1は、指等によりスイッチ駆動電極1からスイッチ受信電極2への容量性電界が遮蔽され、人に電流が流れて変化し、抵抗Rの両端に電位差E1に変化が発生する。これを掛算回路19のYに入力することでXとYの入力信号は、掛算され真の電流値のAC信号だけがDC信号を含む2倍のAC周波数になり、次のローパス・フィルタ21を通すことでDC信号になる。タッチスイッチSW1を構成する電極に他の周波数成分であるノイズが混入しても、ノイズの周波数は全てsin信号・cos信号との掛算によりsin信号・cos信号の周波数より高い周波数のAC信号になりsin信号・cos信号の周波数より十分低いローパス・フィルタ21を通すことでなくすことができる。このようにして、人間の指等が、タッチスイッチに近づいていることを把握することができる。
【0025】
図8に、本発明の入力信号レベルと位相差図を示す。
図7の掛算回路19でsin信号
と掛算された入力信号はsinによる検出信号になり、cos信号と掛算された入力信号
はcosによる検出信号になる。ここで、電源投入時等の初期化の状態で、タッチスイッ
チSW1〜4を構成するスイッチ電極群14のスイッチ駆動電極1と、対になる
スイッチ
受信電極2のタッチスイッチに指および手等が接しいていない状態での、sin信号と
の掛算による検出信号Xとcos信号との掛算による検出信号YとからA/D変換器22
を介して計測し、計測した値をベクトル値とし、特に、電源投入時等でのベクトル値をオ
フセット値と呼ぶ。そして、そのオフセット値のsin信号側をXoffset値、co
s信号側をYoffset値とする。そして、計測を行うときには、そのときのsin信
号との掛算による検出信号Xとcos信号との掛算による検出信号Yとから入力信号のベ
クトル値とオフセット値の差分、式ルート((X-Xoffset)の二乗+(Y-Yof
fset)の二乗)を計算する。また、位相差は式アークタンジェント((X-Xoff
set)/(Y-Yoffset))から求められる。
入力信号のベクトル値、位相差を求め利用することは、精度が要求される位置座標検出等
にはとても有効な手段である。
【0026】
図9に指とスイッチ電極との関係を示す。
図9−1は指がタッチスイッチを構成する電極より遠く離れている場合である。人間の指26が、タッチスイッチを構成するスイッチ駆動電極1とスイッチ受信電極2の間隔よりも遠く離れていても、指26とスイッチ駆動電極1の間には静電容量は発生する。しかし、静電容量が非常に小さいため、電流Δiがスイッチ駆動電極1から指を介して大地にほとんど流れないために供給しているsin信号の電流iは、そのままスイッチ受信電極2に伝わる。信号の電圧レベルは同じ程度のため、その後のsin信号、cos信号との掛算回路19を通った信号は変化しない。
【0027】
図9−2は指が、タッチスイッチを構成するスイッチ電極に近づく、または接触した場合である。人間の指とタッチスイッチを構成するスイッチ駆動電極1と指26の間に静電容量が発生し、電流Δiが指を介して大地に流れだし、電流Δiを失うため、スイッチ受信電極2ではsin信号の電圧は、小さくなる。その後のsin信号、cos信号との掛算回路19を通った信号は小さくなる。
【0028】
人間の指が、タッチスイッチを構成するスイッチ電極群14のスイッチ電極SW1〜4に指がふれていない時の電流i1〜4を前もって測定し、指がふれたときの電流Δi1〜4をタッチスイッチ1〜4がオン状態となる閾値とすることで、タッチスイッチとして動作する。
【0029】
図10にsin信号掛算波形図を示す。a・sinαとb・sinαを掛けると式は、 (a・sinα)・(b・sinα)=(a・b/2)−(a・b・cos2α)/2となり、a・b/2だけ加えられたところに2倍の周波数の半分になったcos信号がある。この演算結果が十分低いローパス・フィルタ21を通過するとcos信号分が0となり、a・b/2の定数のみになる。この式によりa・sinαの周波数以外のノイズ周波数が混入してもノイズ周波数をカットし、ノイズ周波数による影響はなくなる。