特許第6048641号(P6048641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048641
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】静電容量結合方式静電センサー
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/00 20060101AFI20161212BHJP
   H03K 17/955 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   G01B7/00 101C
   H03K17/955 G
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-166466(P2012-166466)
(22)【出願日】2012年7月27日
(65)【公開番号】特開2014-25811(P2014-25811A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 利宏
(72)【発明者】
【氏名】池田 憲正
(72)【発明者】
【氏名】門井 英夫
【審査官】 ▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−525323(JP,A)
【文献】 特開2009−192306(JP,A)
【文献】 特表2000−509497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00−7/34
G06F 3/033−3/039
H01H 36/00−36/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体に導電性材料からなる複数のスイッチ電極を配置し、該複数のスイッチ電極を互いに平行に設け、それぞれ平行に設けたスイッチ電極の一方をスイッチ駆動電極、もう一方をスイッチ受信電極とし、前記それぞれのスイッチ電極は導通部材を接続したタッチスイッチであり、前記導通部材に接続する複数のスイッチ電極の前記スイッチ駆動電極と、スイッチ受信電極との間の静電容量変化を計測する為に、信号を生成する発振器と、前記信号を同期がとられたsin信号と、cos信号に変換する同期発信回路と、前記sin信号を印加したスイッチ駆動電極をドライブするために、当該スイッチ駆動電極に接続される配線と、他のスイッチ受信電極に接続される配線を切り替える切替回路と、前記複数のスイッチ電極のスイッチ駆動電極と、スイッチ受信電極とに接続された、前記導電部材との間に流れる電流を電圧に変換する電流・電圧回路と、前記電流・電圧変換回路により、電流・電圧変換された前記電圧信号と、前記同期がとられたsin信号及びcos信号とを掛け算する掛け算回路と、該掛け算回路により得られたsin信号及びcos信号のDC信号を含む2倍のAC周波数を安定化したDC信号に変換するローパス・フィルタ回路と、前記変換されたDC電圧を計測するA/D変換器と、該A/D変換器により変換されたDC電圧を演算し、しきい値とを比較しスイッチのON、OFFを判断する制御装置とを備える静電容量結合方式静電センサー。
【請求項2】
請求項1記載の静電容量結合方式静電センサーにおいて、スイッチ駆動電極とスイッチ受信電極の間が中空であることを特徴とする静電容量結合方式静電センサー。
【請求項3】
請求項1記載の静電容量結合方式静電センサーにおいて、スイッチ駆動電極およびスイッチ受信電極に至る駆動導通部材がスイッチ駆動電極および受信導通部材がスイッチ受信電極の中心から引出されることを特徴とする静電容量結合方式静電センサー。
【請求項4】
請求項1記載の静電容量結合方式静電センサーにおいて、スイッチ駆動電極およびスイッチ受信電極の電極周辺を中間電位またはグランドで囲むことを特徴とする静電容量結合方式静電センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力方式に静電容量結合方式を利用した入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
静電容量結合方式を利用した入力装置として、従来から、静電容量結合方式タッチスイッチが知られている。前記タッチスイッチは、パネルスイッチと制御基板から構成される。パネルスイッチは、絶縁体となるPETフィルムの表面にスイッチ電極として銀ペースト、またはITO(酸化インジウムスズ)等を印刷した電極シートを、アクリルやガラス及び樹脂等の絶縁体となる絶縁基材に、接着剤(両面テープ等)で貼り合わせたもので構成される。スイッチ電極に指または手が近づくと、スイッチ電極と指または手との間に平行板コンデンサが形成され、静電容量が発生する。この静電容量の変化をコンデンサCと抵抗Rとで形成するC/F変換回路(静電容量Cを周波数Fに変換する回路)で周波数に変換し、その周波数をインプットキャプチャ機能(周波数の数を数える機能)でデジタルデータに置き換え、演算処理によりタッチスイッチのオン/オフ状態を判断する。スイッチ電極が複数個の場合、スイッチ電極の選択は、個々のスイッチ電極分設けた切換回路により行う(特許文献1参照)。
【0003】
静電容量結合方式を利用したタッチスイッチは、スイッチ電極を指または手が触れることのできる領域をタッチスイッチとし、指または手がそのスイッチ電極に近づいたことを検出するものであり、タッチスイッチのオン/オフを検出するデジタル入力装置である。
スイッチ電極は、電気的に導通する導電性材料をPETフィルム表面に、スクリーン印刷方式により印刷して、タッチスイッチを形成している。スクリーン印刷は、オープニングと呼ばれる糸と糸の間の空間(スクリーン版)からスキージ(ゴムのヘラ、または金属のヘラ)を使ってインキを押し出し、画像パターンを形成する印刷法であり、古くから捺染や印染などの伝統工芸として日本に根付いている工法である。また、できあがった画像パターンの厚みは、使用したスクリーン版の厚みである。現在、スクリーン印刷は、エレクトロニクス分野ではなくてはならない工法として確立しており、プリント配線板や電子部品、フラットパネルディスプレイ、自動車メーターなどを製造する工程には、必ずスクリーン印刷法が用いられていることが知られている。
【0004】
スイッチ電極は、スクリーン印刷方式により絶縁体となるPETフィルムの表面に導電性材料である銀ペースト(物質は銀)インク、ITO(酸化インジウム)(物質は錫)インクを用いて印刷することでタッチスイッチを形成している。スイッチ電極を形成するためのスクリーン版の厚さは10〜30μmの版を使用している。また、導電性材料である銀ペーストインク、ITO(酸化インジウムスズ)インクの抵抗率値は高く、数Ω〜数kΩ/ cm2の面積抵抗を持っている。
スクリーン印刷方式で印刷されたスイッチ電極は、スキージの移動速度で決まる印刷速度、インクの粘度、印刷環境による版の伸び、縮みにより、印刷毎にスイッチ電極の大きさ、厚みが数mm単位、および数μm単位で違い、大きさ、厚みのばらつきを0にすることは難しいとされている。そのため、印刷毎のスイッチ電極の抵抗値は一定にならず、印刷毎の抵抗値のばらつきを0Ωに抑えることは難しいとされている。
【0005】
PETフィルム上に、スイッチ電極を形成したスイッチを、タッチスイッチの入力領域として使用したときの周波数は、前記コンデンサCと抵抗Rによりt=0.7×C×Rで表せる。スイッチ電極はΔRの抵抗値を持つ。スイッチ電極の周波数は、抵抗Rにスイッチ電極の抵抗値ΔRが足された周波数として生成される。周波数tはt=0.7×C×(R+ΔR)で表せる。
【0006】
スイッチ電極が、4個の場合の周波数を求めてみる。スイッチ電極のタッチスイッチをSW1からSW4としたときの抵抗値はSW1(抵抗値:ΔR1)、SW2(抵抗値:Δ2)、SW3(抵抗値:Δ3),SW4(抵抗値:Δ4)で表せる。各スイッチ電極の周波数は
SW1の周波数t=0.7×C×(R+ΔR1)
SW2の周波数t=0.7×C×(R+ΔR2)
SW3の周波数t=0.7×C×(R+ΔR3)
SW4の周波数t=0.7×C×(R+ΔR4)
で表せる。
また、前記スクリーン印刷での印刷毎に数Ω〜数10Ω単位での抵抗値のばらつきがある。ばらつきの抵抗値をΔrとしたときの印刷毎の各周波数は
SW1の周波数t=0.7×C×(R+Δ1+Δr)
SW2の周波数t=0.7×C×(R+Δ2+Δr)
SW3の周波数t=0.7×C×(R+Δ3+Δr)
SW4の周波数t=0.7×C×(R+Δ4+Δr)
で表せる。
また、近年デジタル技術を利用した電子回路が広く用いられるようになり、デジタル信号の低域から高域までの周波数による電波障害が起こりやすい状況になっている。
たとえば、テレビ等の電化製品の側にラジオ受信機を持っていくと、ザーとかブーといったノイズ雑音が入る。これはラジオ受信機が電化製品から発生している電波ノイズを拾ってしまうことでおきる。
また、ラジオ受信機にAC電源を供給して使う場合、家庭用電源の配線によっては、AC電源ラインにノイズが混入し、電源ノイズとして拾ってしまうこともある。同じAC電源コンセントにテレビ等の電化製品とラジオ受信機をつなげて使用したとき、つなげた電化製品から発生した電源ノイズをラジオ受信機が拾ってしまいノイズが入る。
生活環境下での前記ノイズ混入に対する対策は、機器にノイズを混入させない様な対策、またはノイズを受けても障害を発生しないように、ノイズ耐性を向上させる対策がある。しかし、生活環境下で、どの様なノイズが混入されるかわからないために、ノイズ防御対策が難しくなっているのが現状である。
前記静電容量の変化をC/F変換回路で周波数に変換する方式は、静電容量の変化をC
/F変換回路で周波数(t=0.7×C×(R+ΔR))に変換し、その周波数の変化をインプットキャプチャ機能でデジタルデータに置き換えている。この方式は周波数を用いて動作させていることで、生活環境下で発生するノイズである周波数の混入による影響は、避けられないのが現状である。
【0007】
また前記、静電容量の変化をC/F変換回路を用いて周波数に変換する方式で、PETフィルムにスイッチ電極を印刷したスイッチを、タッチスイッチとして使用したときに生成される周波数は、スイッチ電極の形状により変わることがわかる。
これに対して、文献2、文献3では、生活環境下で発生するノイズの周波数と、検出する信号の周波数との区別ができないような状況でのノイズの影響を避ける静電容量型のセンサーが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−084982号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0257890号
【特許文献3】特開2011−008725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、静電容量の変化をC/F変換回路で、周波数に変換する方式のスイッチ電極に、スイッチ電極で得られる周波数と、同じまたは近い周波数である電波ノイズまたは供給電源より同じ、または近い周波数である電源ノイズが混入されると、C/F回路で生成される周波数と、ノイズの周波数とが互いに周波数との同期または干渉が起こり、スイッチ電極に指または人が近づいても静電容量は変化しない状態となり、入力できない等の誤動作を生じてしまう。
スイッチ電極の大きさの違いにより生成される周波数が変わるため、大きさの違うスイッチ電極が増える程、生成される周波数の種類が多くなる。そのため生成される周波数と同じまたは近い周波数である電波ノイズまたは電源ノイズによる誤動作するタッチスイッチが増えてしまう。静電容量の変化をC/F変換回路で周波数に変換する方式では、ノイズの周波数に対し、±数10KHzの周波数が離れていないと、ノイズより逃げられなく、ノイズによる誤動作の範囲が大きくなり、ノイズの対処が非常に困難である。
【0010】
また、静電容量の変化を、C/F変換回路を用いて、周波数をインプットキャプチャ機能(周波数の数を数える機能)でデジタルデータに置き換え、演算処理によりタッチスイッチのオン/オフ状態を判断している。周波数がインプットキャプチャ機能で周波数の数を数えていることで、スイッチ電極ごとに周波数の数が変わり、動作速度を一定かつ、速度を上げることが非常に困難である。
【0011】
また、特許文献2では、少なくとも1つの検出電極と、少なくとも1つの駆動電極の交点の静電容量を3つの異なる信号の周波数で計測し、3つの計測した値から、平均化、または、多数決、または、中央値から、その交点の真の静電容量と決めていた。
しかしながら、2種類のノイズが、計測している3つの周波数のうち、2つと同じ周波数の場合では、真の静電容量が決められないという不具合が発生する恐れがある。さらに、同じ周波数を使用している機種が近傍に接していた場合には、お互いの周波数の干渉により不具合が発生する恐れがある。
【0012】
同様に、特許文献3では、1つのセンサーに対して、3つ以上の検出信号の周波数を用いて、多数決で真の静電容量を決めていた。3つ以上の検出信号の周波数をN個の周波数とした場合、ノイズが、N/2以下の種類の検出信号と同じ周波数のとき、特許文献2では、真の静電容量が決められないという不具合が発生する恐れがある。
同様に、少なくとも1つの検出電極と、少なくとも1つの駆動電極の交点の静電容量を検出する方法では、その検出電極と駆動電極の間隔をできる限り小さくすることを推奨しており、間隔として0.5mm〜1mm以下が望ましい。また、容量性電界を遮蔽する指の大きさで遮蔽量が決まるので、電極の大きさは5mm×5mm〜12mm×12mmの中に検出電極と駆動電極がおさまることを推奨している。間隔が狭いことで容量性電界の垂直方向への拡散が減り、指が近づいてきた時に急激に遮断量が増加する。また、間隔が狭いことで容量性電界も大きくノイズの影響を受けにくくしている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、絶縁体に導電性材料からなる複数のスイッチ電極を配置し、該複数のスイッチ電極を互いに平行に設け、それぞれ平行に設けたスイッチ電極の一方をスイッチ駆動電極、もう一方をスイッチ受信電極とし、前記それぞれのスイッチ電極は導通部材を接続したタッチスイッチであり、前記導通部材に接続する複数のスイッチ電極の前記スイッチ駆動電極と、スイッチ受信電極との間の静電容量変化を計測する為に、信号を生成する発振器と、前記信号を同期がとられたsin信号と、cos信号に変換する同期発信回路と、前記sin信号を印加したスイッチ駆動電極をドライブするために、当該スイッチ駆動電極に接続される配線と、他のスイッチ受信電極に接続される配線を切り替える切替回路と、前記複数のスイッチ電極のスイッチ駆動電極と、スイッチ受信電極とに接続された、前記導電部材との間に流れる電流を電圧に変換する電流・電圧回路と、前記電流・電圧変換回路により、電流・電圧変換された前記電圧信号と、前記同期がとられたsin信号及びcos信号とを掛け算する掛け算回路と、該掛け算回路により得られたsin信号及びcos信号のDC信号を含む2倍のAC周波数を安定化したDC信号に変換するローパス・フィルタ回路と、前記変換されたDC電圧を計測するA/D変換器と、該A/D変換器により変換されたDC電圧を演算し、しきい値とを比較しスイッチのON、OFFを判断する制御装置とを備えることを第1の要旨とし、上記の静電容量結合方式静電センサーにおいて、スイッチ電極間の間が中空であることを第2の要旨とし、上記の静電容量結合方式静電センサーにおいて、スイッチ電極に至る配線がスイッチ電極それぞれの中心から引出されることを第3の要旨とし、上記の静電容量結合方式静電センサーにおいて、スイッチ電極周辺を中間電位またはグランドで囲むことを第4の要旨とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、スイッチ電極の間隔が広い静電容量結合式静電センサーでもスイッチ電極を互いに平行に設けることにより、sin信号と90度位相の違うcos信号の2つを電流・電圧変換回路の出力に掛算回路で掛けることにより、真の電流値のAC信号だけが、DC信号を含む2倍のAC周波数になり、ローパス・フィルタを通すことでDC信号になる。スイッチ電極が接続されても、全てsin信号の周波数より高い周波数となり、高い周波数のAC信号のままローパス・フィルタを通すことで、ノイズをなくすことができる。そのため、sin信号の周波数以外のノイズ周波数がスイッチ電極に混入されても正確にスイッチ電極と指および手との間に静電容量が発生し、タッチスイッチのオン/オフの状態を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】電極構造図。
図2】電極配置図。
図3】指と容量静電界と電極構造図。
図4】垂直方向から見た容量性電界図。
図5】複数の容量性電界干渉図。
図6】入力装置構成図。
図7】掛算回路波形図。
図8】入力信号レベルと位相差図。
図9】指とスイッチ電極との関係図。
図10】サイン信号掛算波形図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明では、スイッチ電極の間隔が広い静電容量結合式静電センサーでもスイッチ電極
を互いに平行に設け、平行に設けたスイッチ電極の一方をスイッチ駆動電極とし、もう一
方をスイッチ受信電極と称す。それぞれの電極群に、sin信号を印加したスイッチ駆動
電極群のスイッチ駆動電極とその接続をする駆動導通部材と、電流・電圧変換回路と、そ
れを経由してスイッチ受信電極群のスイッチ受信電極とその接続をする受信導通部材を接
続し、発振器で生成する信号を同期発信回路によって、sin信号と90度位相の違うc
os信号の2つを発振し、sin信号の一つは増幅回路と切替回路経由でスイッチ駆動電
極をドライブし、スイッチ受信電極と切替回路を介して、電流・電圧変換回路の抵抗Rに
接続する。これらの配線をしているスイッチ駆動電極群のスイッチ駆動電極と、スイッチ
受信電極群のスイッチ受信電極間で、コンデンサを形成し、1つのタッチスイッチを構成
する。この際、切替回路で接続していないスイッチ駆動電極群のスイッチ駆動電極とスイ
ッチ受信電極群のスイッチ受信電極は、このタッチスイッチを構成しているスイッチ電極
から離れた位置に配置していれば、未接続の状態でも良い。ただし、近傍ならば、未接続
のスイッチ電極が外乱からのノイズを受けて、タッチスイッチを構成しているスイッチ電
極と干渉する可能性があり、そのため、未接続のスイッチ電極群を一定電圧、例えば中間
電位またはグランドに接続することが望ましい。
sin信号の一つは、掛算回路に接続される。また、cos信号はもう一つの掛算回路に
接続される。電流・電圧変換回路の出力は、増幅回路とバンドパス・フィルタ回路を介し
て、それぞれ2つの掛算回路に接続し、それぞれsin信号およびcos信号と掛けられ
る。真の電流値のAC信号だけが、DC信号を含む2倍のAC周波数になり、ローパス・
フィルタ回路を通過することで完全なDC信号になる。
スイッチ電極群へ混入されるsin信号とcos信号の周波数以外のノイズは、全てsi
n信号・cos信号との掛算により、sin信号・cos信号の周波数より高い周波数の
AC信号になり、sin信号・cos信号の周波数より十分低いローパス・フィルタ回路
を通すことで消去することができる。
【0017】
また、発振器で生成する信号の周波数を制御することで、発振器からの信号を同期発信回路によりsin信号、cos信号に変換し、sin信号、cos信号の周波数の設定を行うことができる。そして、バンドパス・フィルタを設けて、使用するsin信号の周波数帯域の高調波成分と低周波成分のノイズをとることができるため、sin信号の周波数に対応したバンドパス・フィルタを使用することが望ましい。
ここで、電源投入時等の初期化の状態では、sin信号のドライブと電流・電圧変換回路の抵抗Rに接続する個々のスイッチ電極に、指および手等が接していない状態での、sin信号との掛算による検出信号Xと、cos信号との掛算による検出信号Yより、入力信号のベクトル値を制御装置に保存する。このときのベクトル値を、オフセット値と呼び、sin信号側をXoffset値、cos信号側をYoffset値と呼ぶことにする。
そして、指および手とスイッチ電極の状態を計測する場合、sin信号のドライブと、電流・電圧変換回路の抵抗Rに接続したスイッチ電極との間の静電容量を計測し、そのときのsin信号との掛算による検出信号Xとcos信号との掛算による検出信号Yとから入力信号のベクトル値とオフセット値の差分、式ルート((X-Xoffset)の二乗+(Y-Yoffset)の二乗)を計算する。
この計算した値が、閾値以上の場合は、スイッチ電極の近傍に、指および手が接しているとして、オンと判断し、閾値以下の場合は、スイッチ電極から指および手が離れているとして、オフと判断する。さらに、もう一つ閾値を設けることにより、計算前のスイッチ電極のオンまたはオフの状態に対応した2つの閾値の使用ができ、計算した値に対してスイッチ電極のオンとオフにヒステリシスの制御を行うこともできる。
同様にして、他のスイッチ電極も行う。
【0018】
ここで、スイッチ電極へ混入するsin信号と同じ周波数のノイズを計測する場合には、ドライブする配線の全てを未接続または一定電圧、例えば中間電位やグランドにした状態での、オフセット値はスイッチ駆動電極側からの信号がないため、オフセット値を0とする。そして、計測時は、sin信号との掛算による検出信号Xとcos信号との掛算による検出信号Yから入力信号のベクトル値を式ルート(Xの二乗+Yの二乗)にし、この値が、ノイズの混入の有無を判断する値以上のときには、ノイズの混入があると判断して、発振器からの信号の周波数を変更する。
そして、初期化時に、スイッチ電極をドライブするsin信号と、同じ周波数のノイズがないかを前述のようにして、ノイズの混入の有無を判断する。ノイズ混入の場合には、発振器で生成する信号周波数を変更し、発振器からの信号を同期発信回路によりsin信号、cos信号に変換して、sin信号、cos信号の周波数を変更し、再度、ノイズの混入の有無を判断する。ノイズがないと判断した場合は、スイッチ電極の計測を行い、タッチスイッチのオン/オフを行う。
【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0020】
図1に、実施例1の電極構造図を示す。
タッチスイッチの電極はスイッチ駆動電極1と、スイッチ受信電極2で、平行な直線で形成される。その長さsは同一あり、その太さtは基板上の銅パターンであれば0.3mm〜1mm、フィルムまたはガラス上の銀ペーストまたはITO等であれば0.5mm〜1mmが望ましい最少寸法であり最大寸法でもある。余分に太くてもノイズの増大と使用面積が大きくなるだけでメリットはない。スイッチ駆動電極1は駆動導通部材3により切替回路13に接続される。スイッチ受信電極2は受信導通部材4により切替回路13に接続される。スイッチ電極の長さsと間隔dは、指の大きさ等から5mm以上が望ましい。最大値は、入力装置全体の耐ノイズ性能と入力に使用する指と本数、手の大きさ等で決まり、入力する指の本数が複数であったり、手での入力であれば長さsと間隔dはより大きくできる。駆動導電部材3は、スイッチ駆動電極1およびスイッチ受信電極2、各々の電極の中心から引き出される。
図2に電極の配置図を示す。
図2−1は厚さ1〜5mmのアクリル板5の下に、一枚の基板6があり、その基板上には左側にスイッチ駆動電極1と接続される駆動導通部材3があり、右側にスイッチ受信電極2と接続される受信導通部材4がある。
図2−2は、図2−1の裏表を逆にしたものである。厚さ1〜5mmのアクリル板5の上に、一枚の基板6があり、その基板6上には、左側にスイッチ駆動電極1と接続される駆動導通部材3があり、右側にスイッチ受信電極2と接続される受信導通部材4がある。
図2−3は、厚さ1〜5mmのアクリル板5の下に、2枚の基板6があり、その基板6上には左側基板6にスイッチ駆動電極1と接続される駆動導通部材3があり、右側基板6にスイッチ受信電極2と接続される受信導通部材4がある。左側基板6と右側基板6の間には何もない。すなわち、左側基板6と右側基板6の間が中空の構造になっている。さらに、アクリル板5も、左側基板6と右側基板6の間と同様に中空にしてもよい。
図2−4は、図2−3の裏表を逆にしたものである。厚さ1〜5mmのアクリル板5の上に、2枚の基板6があり、その基板6上には左側基板6にスイッチ駆動電極1と接続される駆動導通部材3があり、右側基板6にスイッチ受信電極2と接続される受信導通部材4がある。左側基板6と右側基板6の間には何もない。すなわち、左側基板6と右側基板6の間が中空の構造になっている。さらに、アクリル板5も、左側基板6と右側基板6の間と同様に中空にしてもよい。
【0021】
図3に指と、容量性電界と電極構造図を示す。
厚さ1〜5mmのアクリル板等の下に指数本が十分に入る間隔で2つの電極があり、片方がスイッチ駆動電極であり、もう一方がスイッチ受信電極である。二つの電極の間には容量性電界が発生し、複数本の曲線で表す。図3−1から図3−3は上方から下方に指が下りてきた場合に容量性電界が遮断される様子を表している。
十分に上方に指があると、図3−1に表すように容量性電界はなんら影響を受けない。
中央に指が下りてくると、図3−2に示すように容量性電界が指により遮断され始める。
下方に指が下りてくると、図3−3に示すようにアクリル板上の容量性電界が指により十分に遮断される。
また図3−4のように、指が電極間の左隅にある場合と、指が図3−5ように中央にある場合と、指が図3−6のように右隅にある場合とで遮断される容量性電界量に差はない。
図4に垂直方向から見た容量性電界図を示す。
スイッチ駆動電極1と、スイッチ受信電極2との間および周辺で容量性電界が発生する。特に多くの容量性電界7は電極間に多くあり、両電極の側面から両電極外部に出る容量性電界は少ないことを示している。しかし、電極に近接して指等が置かれることで容量性電界は遮断される。
図5に複数の容量性電界が干渉する図を示す。
図5−1は二つのタッチスイッチの容量性電界が干渉し、入力範囲が一部重複することを示している。
図5−2は、個々のスイッチ電極の組を中性電位またはグランド等でガードしている場合に、容量性電界が干渉しないで、入力範囲が重複しないことを示している。
【0022】
図6に、実施例1の入力装置であるタッチスイッチのオン/オフを計測する場合の構成図を示す。まず、制御装置24は、プログラムと定数(例えば閾値)を内蔵するROMとワーキングメモリを内蔵する。発振器9からの信号をsin信号、cos信号に変換するsin信号同期発信回路10、cos信号同期発信回路11に信号を出力する。sin信号を受け増幅し、スイッチ駆動電極に供給する増幅回路12、スイッチ電極群14のスイッチ駆動電極1を選択する切替回路13を制御する切替制御回路23と、スイッチ受信電極からのsin信号を受信するスイッチ電極群14のスイッチ受信電極2を選択する切替回路13を制御する切替制御回路23と、バンドパス・フィルタ回路18よりsin信号の周波数帯域に対応した発信器9からの信号からsin信号同期発振回路のsin信号とcos信号同期発振回路のcos信号を掛算回路19に入力する。ローパス・フィルタ21を介した信号をデジタルデータに変換するA/D変換回路22と、同期発信回路10、11からのcos信号とバンドパス・フィルタ回路18を介したsin信号とを掛算し、ローパス・フィルタ21を介した信号をデジタルデータに変換するA/D変換回路22と、2つのA/D変換のデジタルデータを演算して、タッチスイッチのオンまたはオフ情報を各タッチスイッチのI/Oとして出力する外部I/F25とから構成している。
ここで、本実施例ではタッチスイッチの数を4個設けたものを例に説明する。タッチスイッチは、コンデンサを形成するスイッチ電極15のスイッチ電極SW1の、スイッチ駆動電極1とスイッチ受信電極2との対より構成し、同様に、タッチスイッチSW2はスイッチ駆動電極1とスイッチ受信電極2との対より構成し、タッチスイッチSW3は、スイッチ駆動電極1とスイッチ受信電極2との対より構成し、タッチスイッチSW4は、スイッチ駆動電極1とスイッチ受信電極2との対から構成している。
【0023】
制御装置24のCPUによって発振器9から出力する発振周波数を設定し、発振器から
出力する信号を2つの同期発信回路10,11より、sin信号とcos信号を90度の
位相差に変換して出力する。そして、sin信号は増幅回路12により、タッチスイッチ
SW1〜4の4個のスイッチ電極群14のスイッチ電極SW1〜4をドライブする線を選
択し、切替回路13にて接続する。制御装置24より切替制御回路23を制御して選択し
たスイッチ電極群14のスイッチSW1〜4の何れかを介し増幅回路12で増幅したsi
n信号の電圧により、切替回路13で選択したスイッチ駆動電極SW1〜4に対となる
イッチ電極群14のスイッチ受信電極2を通じ、電流・電圧変換回路16により抵抗Rを流れる電流は電圧に変換され増幅回路17へ伝達される。
このとき、接続しないスイッチ電極は、制御装置24からの指示により切替制御回路23
により、切替回路13を制御して、未接続にする。またタッチスイッチSW1〜4のスイ
ッチ電極を介した電流i1〜i4は、抵抗Rを通過することで電圧E1〜E4に変換し、
増幅回路17で増幅する。そして、切替制御回路23を制御して発振器9より出力する信
号によって、生成するsin信号の帯域に対応するバンドパス・フィルタ回路18のバン
ドパス・フィルタを通過し、sin信号の周波数で通過帯域以外の周波数をカットする。
バンドパス・フィルタ回路18のバンドパス・フィルタにより切替回路13を介して出力
する周波数は、それぞれ2つの掛算回路19のY側に入力する。2つの掛算回路19のX
側にはsin信号、cos信号を入力する。それぞれの掛算回路19の通過によって、掛
算回路19のそれぞれの結果は増幅回路20によって増幅され、非常に低い周波数帯域を
通過させるローパス・フィルタ21において、ノイズ信号が消され、DC信号が取り出さ
れる。そして、それぞれのDC信号はA/D変換器22でデジタルデータに変換し、制御
装置24に入力する。制御装置24は、タッチスイッチSW1から、タッチスイッチSW
2、タッチスイッチSW3、タッチスイッチSW4の順番に、切替制御回路23で切替回
路13を逐次制御して、デジタルデータを得る。
装置24に入力する。制御装置24は、タッチスイッチSW1から、タッチスイッチSW
2、タッチスイッチSW3、タッチスイッチSW4の順番に、切替制御回路23で切替回
路13を逐次制御して、デジタルデータを得る。
【0024】
図7に、実施例1のタッチスイッチのオン/オフを計測する場合の掛算回路19の波形図を示す。掛算回路19のX入力には、sin信号10あるいはcos信号11を入力する。抵抗Rの片側はグランドに接続する。反対側は図6に示すように、増幅回路17、バンドパス・フィルタ回路18を通過したsin信号が切替回路13を介してタッチスイッチを構成するスイッチ受信電極2に接続する。
例えば、人間の指等が、接続しているスイッチ電極群14のタッチスイッチSW1に近づくと、スイッチ受信電極2に流れる電流i1は、指等によりスイッチ駆動電極1からスイッチ受信電極2への容量性電界が遮蔽され、人に電流が流れて変化し、抵抗Rの両端に電位差E1に変化が発生する。これを掛算回路19のYに入力することでXとYの入力信号は、掛算され真の電流値のAC信号だけがDC信号を含む2倍のAC周波数になり、次のローパス・フィルタ21を通すことでDC信号になる。タッチスイッチSW1を構成する電極に他の周波数成分であるノイズが混入しても、ノイズの周波数は全てsin信号・cos信号との掛算によりsin信号・cos信号の周波数より高い周波数のAC信号になりsin信号・cos信号の周波数より十分低いローパス・フィルタ21を通すことでなくすことができる。このようにして、人間の指等が、タッチスイッチに近づいていることを把握することができる。
【0025】
図8に、本発明の入力信号レベルと位相差図を示す。図7の掛算回路19でsin信号
と掛算された入力信号はsinによる検出信号になり、cos信号と掛算された入力信号
はcosによる検出信号になる。ここで、電源投入時等の初期化の状態で、タッチスイッ
チSW1〜4を構成するスイッチ電極群14のスイッチ駆動電極1と、対になるスイッチ
受信電極2のタッチスイッチに指および手等が接しいていない状態での、sin信号と
の掛算による検出信号Xとcos信号との掛算による検出信号YとからA/D変換器22
を介して計測し、計測した値をベクトル値とし、特に、電源投入時等でのベクトル値をオ
フセット値と呼ぶ。そして、そのオフセット値のsin信号側をXoffset値、co
s信号側をYoffset値とする。そして、計測を行うときには、そのときのsin信
号との掛算による検出信号Xとcos信号との掛算による検出信号Yとから入力信号のベ
クトル値とオフセット値の差分、式ルート((X-Xoffset)の二乗+(Y-Yof
fset)の二乗)を計算する。また、位相差は式アークタンジェント((X-Xoff
set)/(Y-Yoffset))から求められる。
入力信号のベクトル値、位相差を求め利用することは、精度が要求される位置座標検出等
にはとても有効な手段である。
【0026】
図9に指とスイッチ電極との関係を示す。
図9−1は指がタッチスイッチを構成する電極より遠く離れている場合である。人間の指26が、タッチスイッチを構成するスイッチ駆動電極1とスイッチ受信電極2の間隔よりも遠く離れていても、指26とスイッチ駆動電極1の間には静電容量は発生する。しかし、静電容量が非常に小さいため、電流Δiがスイッチ駆動電極1から指を介して大地にほとんど流れないために供給しているsin信号の電流iは、そのままスイッチ受信電極2に伝わる。信号の電圧レベルは同じ程度のため、その後のsin信号、cos信号との掛算回路19を通った信号は変化しない。
【0027】
図9−2は指が、タッチスイッチを構成するスイッチ電極に近づく、または接触した場合である。人間の指とタッチスイッチを構成するスイッチ駆動電極1と指26の間に静電容量が発生し、電流Δiが指を介して大地に流れだし、電流Δiを失うため、スイッチ受信電極2ではsin信号の電圧は、小さくなる。その後のsin信号、cos信号との掛算回路19を通った信号は小さくなる。
【0028】
人間の指が、タッチスイッチを構成するスイッチ電極群14のスイッチ電極SW1〜4に指がふれていない時の電流i1〜4を前もって測定し、指がふれたときの電流Δi1〜4をタッチスイッチ1〜4がオン状態となる閾値とすることで、タッチスイッチとして動作する。
【0029】
図10にsin信号掛算波形図を示す。a・sinαとb・sinαを掛けると式は、 (a・sinα)・(b・sinα)=(a・b/2)−(a・b・cos2α)/2となり、a・b/2だけ加えられたところに2倍の周波数の半分になったcos信号がある。この演算結果が十分低いローパス・フィルタ21を通過するとcos信号分が0となり、a・b/2の定数のみになる。この式によりa・sinαの周波数以外のノイズ周波数が混入してもノイズ周波数をカットし、ノイズ周波数による影響はなくなる。
【符号の説明】
【0030】
1 スイッチ駆動電極
2 スイッチ受信電極
3 駆動導通部材
4 受信導通部材
5 アクリル板
6 基板
7 容量性電界
8 ガード電極
9 発振器
10 sin信号同期発振回路
11 cos信号同期発信回路
12 増幅回路
13 切替回路
14 スイッチ電極群
15 スイッチ電極
16 電流・電圧変換回路
17 増幅回路
18 バンドパス・フィルタ回路
19 掛算回路
20 増幅回路
21 ローパス・フィルタ回路
22 A/D変換器
23 切替制御回路
24 制御装置
25 外部I/F
26 指
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10