(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来の構成では、例えば機器類のメンテナンスのために上記バルブを閉じたときに、外部環境から経路内への熱侵入を液体冷媒の流通によって処理できなくなり、経路中の液体冷媒がガス化して経路中にガス溜まりが生じる場合がある。経路中にガス溜まりが生じると、液体冷媒の流通を再開したときに、液体冷媒が流れ難く、冷却対象を適切に冷却できなくなる恐れがある。
【0005】
冷却システムに用いられるバルブは、断熱構造を有する弁箱、弁箱の内部で液体冷媒の経路を開閉する弁体、弁体を動かす弁棒、および弁棒を操作するハンドルなどの操作部を備える。これら構成部材のうち、弁棒は、通常弁箱を貫通して常温側に引き出されているため、この弁棒を介して弁箱内への熱侵入がある。ここで、バルブを開けているとき(即ち、弁体を開けているとき)は、弁箱内で液体冷媒が流通しているため、弁棒を介した侵入熱は液体冷媒の流通によって処理される。ところがバルブ(弁体)を閉じると、バルブの位置での液体冷媒の流通が止まるため、弁棒を介した侵入熱により弁箱内の温度が上昇する。この温度上昇は、弁箱内の液体冷媒をガス化させ、液体冷媒の経路内にガス溜まりが形成される一因となる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、冷却システムに備わるバルブの一部を閉じて、冷却システムにおける液体冷媒の流通を一部停止しても、液体冷媒の経路内にガス溜まりが形成され難い冷却システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、冷却システムに備わる複数のバルブのうち、所定のバルブについて、バルブを構成する部材のうちの少なくとも弁箱と弁体を極低温に維持することで上記目的を達成する。
【0008】
本発明の冷却システムは、液体冷媒によって冷却対象を極低温に冷却する冷却システムであって、外部環境から内部を断熱し、その内部が極低温とされる第1カバー部材と、第1カバー部材の内部に収納される弁箱と弁体を有し、液体冷媒の経路の途中に設けられる被冷却バルブと、を備える。
【0009】
本発明の冷却システムにおける被冷却バルブの弁箱と弁体は、弁箱内の液体冷媒の流通・非流通に関わらず第1カバー部材の内部で極低温に維持される。そのため、弁箱内の液体冷媒の流通が止まっていても、被冷却バルブの弁棒や操作部を介した被冷却バルブの温度上昇が抑制される。その結果、被冷却バルブを介した液体冷媒の経路中への熱侵入を効果的に抑制でき、当該経路中にガス溜まりが発生する可能性を低減する、あるいは発生するガス溜まりの規模を従来構成よりも小さくすることができる。
【0010】
また、冷却システムに備わる一部のバルブを被冷却バルブとして第1カバー部材の内部に収納することで、冷却システムにおける液体冷媒の経路を構成する配管の一部を被冷却バルブと共に第1カバー部材に収納することができる。その結果、外部環境に露出する配管の割合を従来構成よりも小さくすることができ、配管を介した熱侵入量を従来構成よりも低減することができる。
【0011】
さらに、バルブを被冷却バルブとすることで、被冷却バルブの使用時における温度変化が小さくなるため、被冷却バルブの信頼性の向上が図れる。
【0012】
本発明の冷却システムとして、液体冷媒の温度変化に伴う液体冷媒の体積変化を吸収する内部空間を有するリザーバタンクを備え、このリザーバタンクが上記第1カバー部材を兼ねる形態を挙げることができる。
【0013】
リザーバタンクを有する冷却システムにおいてリザーバタンクに第1カバー部材を兼ねさせることで、冷却システムの構成をシンプルにすることができる。ここで、冷却システムに複数の被冷却バルブを設ける場合、一部の被冷却バルブをリザーバタンク内に収納し、残りの被冷却バルブについてはリザーバタンクと別に用意した第1カバー部材に収納する、といった構成を採用しても良い。どの被冷却バルブをリザーバタンクに収納するかは、冷却システムにおけるバルブの配置によって決定すれば良い。例えば、冷却システムの設計時に、リザーバタンクの近くに配置される予定のバルブがあれば、そのバルブを被冷却バルブとしてリザーバタンクに収納する。これに対して、リザーバタンクから遠い位置に配置される予定のバルブについては、わざわざ配管をリザーバタンクの近くまで取り回してリザーバタンクに収納するといったことはせず、当初の予定の位置でリザーバタンクとは別に用意した第1カバー部材に収納すれば良い。
【0014】
本発明の冷却システムとして、第1カバー部材の外側に着脱自在に取り付けられる第2カバー部材を備え、第1カバー部材と前記第2カバー部材とで囲まれることで外部環境から断熱された閉鎖空間に、冷却システムの運転に関わる機器類の少なくとも一部分が配置される形態を挙げることができる。その場合、閉鎖空間の温度を、常温から極低温の範囲で変更可能に構成する。
【0015】
上記構成における第2カバー部材の形状は特に限定されず、例えば箱状や板状とすることができる。また、機器類としては、主要な物として送液ポンプや冷凍機などを、補助的な物としては流量計や温度計、フィルタ、リザーバタンクに液体冷媒を継ぎ足すサブタンクなどを挙げることができる。
【0016】
従来構成では、機器類全体が外部環境に露出された状態にあるため、その機器類における液体冷媒の流通を止めた場合、その機器類を介した熱侵入によって液体冷媒の経路内にガス溜まりが生じる恐れがある。これに対して、上記構成に示すように、機器類における熱侵入の経路となり得る部分(即ち、液体冷媒の経路の一部を構成する部分)を上記閉鎖空間に配置し、当該閉鎖空間の温度を極低温に維持することで、機器類における液体冷媒の流通を止めても、機器類の温度上昇、および機器類の温度上昇に伴う液体冷媒の経路内でのガスの発生を抑制できる。このようにガスの発生を抑制できれば、ガス溜まりの発生を抑制できるし、仮にガス溜まりの発生が抑制できなくてもそのガス溜まりの規模を従来よりも小さくすることができる。その結果、機器類における液体冷媒の流通を一旦停止し、再開する際、冷却システムを安定的に運転できる状態まで復帰させるのに要する時間を従来よりも短くできる。
【0017】
また、上記構成に示すように、閉鎖空間内の温度を常温から極低温の範囲で変更可能にすることで、機器類を冷却システムから取り外してメンテナンスすることを容易にできる。機器類を取り外す場合、まず機器類に繋がる配管のバルブを閉じ、次いで閉鎖空間を常温に戻して機器類の取り外しを常温で安全に行なえるようにする。そして、取り外した機器類のメンテナンスが終了したら、機器類を冷却システムに取り付け、再び閉鎖空間を極低温にする。閉鎖空間内の機器類が十分に冷却されれば、機器類を直ちに復帰させても良いし、機器類の復帰を後にするのであればそのまま機器類を極低温に維持した状態で休止させておけば良い。この一連のメンテナンスの間、冷却システムにおけるメンテナンス中の機器類を除く部分は滞りなく運転されており、機器類のメンテナンス作業が冷却システムの運転に悪影響を及ぼすことはなく、従って機器類のメンテナンスを容易にできる。
【0018】
閉鎖空間を備える本発明の冷却システムとして、閉鎖空間に液体状または気体状の冷媒を導入する導入管と、閉鎖空間から液体状または気体状の冷媒を排出する排出管と、を備える形態を挙げることができる。その場合、導入管を介した冷媒の導入、および排出管を介した冷媒の排出を制御することで、閉鎖空間の温度を制御する。
【0019】
閉鎖空間の温度を制御する構成として、導入管と排出管を用いた構成は簡素で、比較的構築が容易であるため、好ましい。この構成の場合、例えば、導入管から閉鎖空間内に液体状の冷媒を導入して閉鎖空間内を液体状の冷媒で満たし、閉鎖空間内でガス化した冷媒を排出管から排出することで、閉鎖空間内を極低温に維持すれば良い。その際、ガス化した分を考慮して導入管から適宜液体状の冷媒を補充すると良い。もちろん、導入管から排出管に向かって液体状の冷媒を流してもかまわない。その他、気体状の冷媒を導入管から排出管に向かって流し続けることで、閉鎖空間内を極低温に維持しても良い。いずれの態様であっても、閉鎖空間内を常温にするには、導入管からの冷媒の導入を停止し、その代わりに常温のガスなどを閉鎖空間内に導入すれば良く、簡単に閉鎖空間内の温度を変化させることができる。
【0020】
なお、閉鎖空間を極低温にする冷媒は、冷却システムにおいて冷却対象を冷却する液体冷媒と別に用意した冷媒であっても良いし、冷却対象を冷却する液体冷媒を利用しても良い。後者の場合、液体冷媒の経路に対して導入管と排出管とを接続すれば良い。
【0021】
導入管を備える本発明の冷却システムとして、導入管は、第1カバー部材の内部と閉鎖空間とを連通させる連通管であり、その連通管に連通管バルブを設けた形態を挙げることができる。
【0022】
連通管と連通管バルブを設けることで、第1カバー部材の内部に充填される液体冷媒を閉鎖空間に導入することができ、その導入した液体冷媒によって閉鎖空間内の温度を極低温にすることができる。閉鎖空間を常温にする際は、連通管バルブを閉じて、排出管から閉鎖空間内の冷媒を抜けば良い。なお、閉鎖空間の温度を常温にするにあたり、導入管から常温の気体を導入しても良く、そうすることで閉鎖空間の温度を速やかに常温にすることができる。
【0023】
閉鎖空間を備える本発明の冷却システムとして、第1カバー部材の断熱構造は、第2カバー部材に覆われる第1断熱部と、この第1断熱部と仕切り部を介して区切られた第2断熱部と、を備える形態を挙げることができる。その場合、第1断熱部の断熱性能を変更可能に構成し、その第1断熱部の断熱性能を変化させ、第1カバー部材の極低温の内部と閉鎖空間との間の熱交換量を変化させることで、閉鎖空間の温度を制御する。
【0024】
第1カバー部材に第1断熱部と第2断熱部を形成する構成も、導入管および排出管を設けた構成と同様に、閉鎖空間の温度を制御する構成の一つであり、導入管および排出管を備える構成とほぼ同じ効果を得ることができる。具体的には、閉鎖空間内を極低温にする場合、第1カバー部材の第1断熱部の断熱性能を低下させ、第1カバー部材内の液体冷媒の影響により閉鎖空間を冷却状態にする。その際、閉鎖空間を形作る第2カバー部材は高い断熱性能を備えているため、閉鎖空間の低温状態は維持される。一方、閉鎖空間内を常温にする場合、第1断熱部の断熱性能を上昇させて、第1カバー部材の極低温の内部と閉鎖空間との熱交換量を低下させると良い。もちろん、この第1カバー部材に第1断熱部と第2断熱部を形成する構成と、導入管および排出管を設けた構成と、を併用しても構わない。
【0025】
ここで、第1断熱部の断熱性能を変更可能にするには、例えば、第1断熱部に形成される内部空間に連通する真空ポートを設ければ良い。この真空ポートを用いて内部空間を真空引きすれば、第1断熱部の断熱性能を上昇させることができる。逆に真空ポートを用いて内部空間内に常温の窒素ガスなどを導入すれば、第1断熱部の断熱性能を低下させることができる。
【0026】
閉鎖空間を有する本発明の冷却システムとして、第2カバー部材の断熱構造は、その全領域にわたって形成される第3断熱部を備える形態を挙げることができる。その場合、第3断熱部の断熱性能を変更可能に構成し、第3断熱部の断熱性能を変化させ、外部環境から閉鎖空間への侵入熱量を変化させることで、閉鎖空間の温度を制御する。
【0027】
第2カバー部材の第3断熱部の断熱性能を変更可能に構成すれば、閉鎖空間を極低温から常温にすることが容易になる。第3断熱部の断熱性能を低下させることで、閉鎖空間内への熱侵入が促進され、閉鎖空間の温度が速やかに常温になるからである。言うまでもないが、閉鎖空間を極低温に維持するときは、第2カバー部材の第3断熱部の断熱性能は高くしておく。
【0028】
閉鎖空間を有する本発明の冷却システムとして、閉鎖空間を複数備え、機器類が各閉鎖空間に分散して配置されている形態を挙げることができる。
【0029】
上記構成とすることで、冷却システムの運転に関わる各機器類を個別にメンテナンスすることができる。例えば、リザーバタンクの外部に複数の送液ポンプを設置し、各ポンプから同タンクの内部に複数の配管を延ばし、同タンク内部で複数の配管を一つに集合させ、さらにその一つに集合した配管をリザーバタンクの外部の冷却対象に延ばした構成がある(第六実施形態の
図7を参照)。そうすることで、一部の送液ポンプに故障が生じても冷却対象への液体冷媒の送り出しが止まることがないようにできる。この構成において、各送液ポンプの冷媒接触部が個別の閉鎖空間に収納されていれば、故障した送液ポンプのみをメンテナンスし、残りの健全な送液ポンプは運転を継続する、といったことが可能になる。また、各送液ポンプの冷媒接触部が個別の閉鎖空間に収納されていれば、複数の送液ポンプをローテーションして運転することができるし、メンテナンスもローテーションで行なうことができる。
【0030】
本発明の冷却システムとして、液体冷媒が液体窒素である形態を挙げることができる。
【0031】
液体冷媒を液体窒素とすることで、仮に冷却システムの外部に液体冷媒が漏れて蒸発しても、比較的安全である。また、液体窒素は安価で容易に入手可能であるため、液体冷媒として液体窒素を利用することで、冷却システムの運転コストを低く抑えることができる。
【0032】
本発明の冷却システムとして、液体冷媒で冷却する冷却対象が、超電導ケーブルのケーブルコアである形態を挙げることができる。
【0033】
本発明の冷却システムにより超電導ケーブルのケーブルコアを冷却すれば、超電導ケーブルを用いた電力線路を安定して運転することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の冷却システムによれば、冷却システムにおける液体冷媒の流通を一部停止しても、液体冷媒の経路内にガス溜まりが形成され難い。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面で同一の符号を付しているものは同一物である。
【0037】
<第一実施形態>
[全体構成]
図1は、冷却対象として超電導ケーブルのケーブルコアを採用した本発明の冷却システムの概略基本構成図である。
図1(A)は、冷却対象を冷却する液体冷媒の循環ルートと、液体冷媒自体を冷却する液体冷媒の循環ルートと、を別系統とした間接冷却タイプの冷却システム1である。一方、
図1(B)は、冷却対象を冷却する液体冷媒の循環ルートの途中で液体冷媒を冷却する直接冷却タイプの冷却システム2である。以下、
図1(A)の間接冷却タイプの冷却システム1を例にして説明する。なお、
図1の構成はあくまで例示の一つに過ぎない。
【0038】
図1(A)に例示する冷却システム1は、リザーバタンク10と、冷凍機30と、送液ポンプ41,42と、これらの機器類を繋ぐ複数の配管と、を備える。そして、これら機器類および配管によって液体冷媒の経路20が形成されており、その経路20の途中に配置される超電導ケーブル50のケーブルコア51を極低温に冷却する。この本発明の冷却システム1の最も特徴とするところは、液体冷媒の経路20を構成する配管に設けられる複数のバルブのうち、一部のバルブ91a,91bの弁箱と弁体が、リザーバタンク(第1カバー部材C1)10の内部に配置され、極低温に維持されていることにある。なお、
図1では、複数あるバルブのうちでリザーバタンク10の内部に配置される被冷却バルブ91a,91bだけを示している。被冷却バルブ91a,91bの具体的な配置については、冷却システム1に備わる各構成を簡単に説明した後、項目を設けて改めて説明する。
【0039】
[リザーバタンク]
リザーバタンク10は、経路20内の液体冷媒の温度変化に伴う液体冷媒の体積変化を吸収する内部空間を有すると共に、冷却対象の冷却に要求される液体冷媒を収納するなどの目的に使用する部材である。経路20内の液体冷媒には液体窒素(沸点;約77K)や、液体空気(沸点;約83K)、液体酸素(沸点;約90K)、液体水素(沸点;約20.6K)、液体ヘリウム(沸点;約4.2K)などを利用することができる。ケーブルコア51に備わる超電導導体が、例えばBi2223系や、RE123系(RE:希土類元素、例えばY、Ho、Nd、Sm、Gdなど)などの高温超電導材料の場合、約85K以下の沸点をもつ液体冷媒が好ましく、安全性、入手の容易さ、絶縁性、コストを考慮して、液体窒素が最も好ましい。
【0040】
リザーバタンク10は、その内部に貯留する液体冷媒への侵入熱を小さくするための断熱構造を備える。断熱構造としては、液体冷媒を実際に貯留する冷媒槽と、その冷媒槽の外周を覆う真空槽と、を備え、両槽の間を真空引きした二重断熱構造を利用することが好ましい(後述する
図2とその説明を参照)。
【0041】
[経路]
間接冷却タイプの本実施形態の冷却システム1における液体冷媒の経路20は、超電導ケーブル50を冷却するための第1循環路21と、液体冷媒を冷凍機30(後述する)で冷却するための第2循環路22と、を備える。なお、経路20は液体冷媒が循環しない非循環路(図示せず)を備えていても良い。そのような非循環路として、例えば液体冷媒をリザーバタンクに継ぎ足すための配管などが挙げられる。この配管には常時は液体冷媒が流されない。
【0042】
上記第1循環路21は、第1往路配管21Gと、超電導ケーブル50の断熱管52と、第1復路配管21Rと、を備え、これら21G,52,21Rはいずれも全長にわたって断熱構造を有する(なお、例外的に、第1往路配管21Gのうち、リザーバタンク10に収納される部分については断熱構造でなくても良い)。第1往路配管21Gは、その一端がリザーバタンク10に繋がり、他端が超電導ケーブル50の紙面左側の端末部55に繋がっている。また、第1復路配管21Rは、その一端が超電導ケーブル50の紙面右側の端末部55に繋がり、他端がリザーバタンク10に繋がっている。第1往路配管21Gの途中には、リザーバタンク10からケーブルコア51に向かって液体冷媒を送り出す送液ポンプ41が設けられている。リザーバタンク10から第1往路配管21Gに送り出された液体冷媒は、第1往路配管21Gを通って紙面左側の端末部55の位置で超電導ケーブル50の断熱管52内に流れ込み、断熱管52の内部に収納されるケーブルコア51を冷却する。ケーブルコア51を冷却した液体冷媒は、紙面右側の端末部55の位置で第1復路配管21Rに流れ込み、リザーバタンク10に戻る。
【0043】
一方、第2循環路22は、リザーバタンク10と冷凍機30との間に形成される第2往路配管22Gと第2復路配管22Rとを備え、これら22G,22Rはいずれも断熱構造を有する。第2往路配管22Gの途中には、リザーバタンク10から冷凍機30に液体冷媒を送り出す送液ポンプ42が設けられている。従って、リザーバタンク10から第2往路配管22Gを通って冷凍機30に液体冷媒が送り出され、冷凍機30で冷却された液体冷媒が第2復路配管22Rを通ってリザーバタンク10に戻る液体冷媒の循環ルートが形成される。
【0044】
[冷凍機]
冷凍機30は、特に限定されず、市販のものを利用することができる。例えば、断熱圧縮などを利用して冷媒を冷却する冷凍機30を利用することができる。冷凍機30は、冷却システム1の運転に関わる機器類の一つであり、冷却システム1における液体冷媒の経路20の一部を構成する。また、冷凍機30に備わるコールドヘッドは、経路20内の液体冷媒に接触する。
【0045】
[送液ポンプ]
送液ポンプ41,42は、特に限定されず、極低温用のものを利用することができる。これら送液ポンプ41,42も冷凍機30と同様に冷却システム1の運転に関わる機器類の一つであり、冷却システム1における液体冷媒の経路20の一部を構成する。
【0046】
[バルブ]
冷却システム1に備わるバルブ(被冷却バルブ91a,91bを含む)は、特に限定されず、極低温用のものを利用することができる。例えば、グローブバルブ、ボールバルブ、ゲートバルブ、バタフライバルブなどを被冷却バルブ91a,91bとして利用することが期待できる。いずれのバルブも、断熱構造を有する弁箱、弁箱の内部で液体冷媒の経路20を開閉する弁体、弁体を動かす弁棒、および弁棒を操作する操作部を備えている。ここで、本発明における『被冷却バルブがリザーバタンク(第1カバー部材)の内部に収納される』とは、『少なくとも被冷却バルブの弁箱と弁体がリザーバタンクの内部に収納される』ことである。
図1を含む本明細書の全ての図面において、被冷却バルブ91a,91b(後述する被冷却バルブ92a,92b,92c,95も同様)を簡素化してリザーバタンク10の内部に図示しているが、実際には被冷却バルブ91a,91bの弁棒はリザーバタンク10を貫通しており、弁棒の操作部はリザーバタンク10の外側に配置されている。なお、例えば、電動バルブのように遠隔操作が可能なバルブの場合、操作部をリザーバタンク10の内側(例えば、断熱部内)に設けることもできる。また、バルブを操作する場合にのみ弁棒を装着する構造などを採用することもできる。いずれの構成も、侵入熱の低減に有効である。
【0047】
[その他]
その他、図示しないが、冷却システム1の液体冷媒の経路20の途中には、液体冷媒の流量を監視する流量計や、液体冷媒を濾過するフィルタなどが設けられている。これら流量計やフィルタも、冷却システム1の運転に関わる機器類の一つである。
【0048】
[被冷却バルブの具体的な配置状態]
図1を用いて説明した基本構成を備える冷却システム1における被冷却バルブ91a,91bの具体的な配置を
図2に基づいて説明する。
図2は、冷却システムにおけるリザーバタンク10近傍の部分のみを示す部分拡大図である(後述する
図3〜7も同様)。また、
図2では、リザーバタンク10に液体冷媒を戻す第1復路配管21R(
図1参照)の図示は省略している(後述する
図3〜6も同様)。
【0049】
図2に示すリザーバタンク10は、冷媒槽と真空槽との間に形成される真空断熱層を備えている(本例では単一の真空断熱層)。その冷媒槽の内部に貯留される液体冷媒の中に、第1往路配管21Gを構成する吸入配管21Gaの一部と送出配管21Gbの一部が配置されている。吸入配管21Gaは、リザーバタンク10の内部から送液ポンプ41の本体部41p(液体冷媒を送り出す部分)に繋がる配管であり、その途中にはバルブ91aが設けられている。また、送出配管21Gbは、送液ポンプ41の本体部41pから超電導ケーブル50に繋がる配管であり、やはりその途中にはバルブ91bが設けられている。これら配管21Ga,21Gbに設けられるバルブ91a,91bは被冷却バルブとして液体冷媒中に配置されている。一方、送液ポンプ41の本体部41pと動力部41m(本体部41pを動作させるモータなど)は共にリザーバタンク10の外側に配置されている。
【0050】
上記構成によれば、バルブ91a,91bをリザーバタンク10の内部に配置することで、バルブ91a,91b全体が液体冷媒で常に冷却された状態となり、仮にバルブ91a,91bを閉めたとしても、バルブ91a,91bの温度が極低温に維持される。そのため、バルブ91a,91bを閉めていても、バルブ91a,91bを介した経路20内への熱侵入を抑制することができ、当該経路20内にガス溜まりが生成されることを抑制することができる。
【0051】
また、上記構成によれば、バルブ91a,91bをリザーバタンク10の内部に配置することで、送液ポンプ41がリザーバタンク10の近傍に寄せられ、外観上、送液ポンプ41とリザーバタンク10とはバルブを有さない配管のみで接続された状態になる。その結果、
図1に示す冷却システム1の経路20の全長が従来よりも短くなり、外部環境からの熱侵入の総量を従来よりも低減できる。しかも、吸入配管21Gaと送出配管21Gbの一部がリザーバタンク10の内部に配置されることで、その分だけ経路に占める外部環境に露出する部分が短く、外部環境からの熱侵入を効果的に低減できる。
【0052】
さらに、上記構成によれば、バルブ91a,91bが閉じているときも空いているときも常に液体冷媒で極低温に維持されるため、バルブ91a,91bの信頼性を向上させることができる。それは、バルブ91a,91bに大きな温度変化がなく、バルブ91a,91bが一定の性能を発揮できるからである。その他、バルブ91a,91bの外部に液体冷媒が漏れたとしても、その液体冷媒はリザーバタンク10に受けられ、冷却システムの外部に漏出しないため、微小な漏れを許容することができる。
【0053】
<第二実施形態>
第二実施形態では、第一実施形態で説明した構成に対し、リザーバタンク10の外周に着脱自在に取り付けられる第2カバー部材C2を設けた構成を
図3に基づいて説明する。
【0054】
リザーバタンク10の外周に取り付けられる第2カバー部材C2は、リザーバタンク10と同様に断熱構造を有する部材であって、本例では一面が開口した箱状となっている。また、この第2カバー部材C2は、導入管61と排出管62を備える。なお、管61,62に設けるバルブ等の機器は省略している。また、管61,62は図では簡略化してあるが断熱管であり、管を介した侵入熱の低減のためにある程度の長さを有している。
【0055】
上記第2カバー部材C2をリザーバタンク10の外周に取り付ければ、両者10,C2で囲まれる閉鎖空間10Sが形成される。第2カバー部材C2は断熱構造を有しているため、閉鎖空間10Sは外部環境から断熱される。この閉鎖空間10Sの内部には送液ポンプ41の本体部41p(即ち、液体冷媒を送り出す機構を備える部分であって、液体冷媒の経路20の一部を構成する部分)が配置されている。一方、送液ポンプ41の動力部41mは閉鎖空間10Sの外部に配置されている。
【0056】
上記構成で送液ポンプ41を運転する場合、例えば液体窒素などの液体状の冷媒(気体状の冷媒でも可)を導入管61から閉鎖空間10Sに導入しつつ、閉鎖空間10S内の常温の気体を排出管62から追い出し、送液ポンプ41の本体部41pを極低温に冷却する。ここで、閉鎖空間10S内を極低温に維持する冷媒は、常に流されている構成としても良いし、単に貯留されている構成としても良い。冷媒が流されている構成としては、導入管61から液体状の冷媒を導入し、排出管62から液体状の冷媒を排出する構成、あるいは導入管61から気体状の冷媒を導入し、排出管62から気体状の冷媒を排出する構成を挙げることができる。一方、液体状の冷媒が閉鎖空間10S内に貯留されている構成の場合、閉鎖空間10S内の液体状の冷媒が気化するので、その気化した冷媒を排出管62から排気すれば良い。気化によって減少した分は、導入管61から適宜追加すれば良い。
【0057】
次に、送液ポンプ41を休止させる場合、送液ポンプ41の運転時と同様、閉鎖空間10Sが極低温に冷却された状態を維持しておく。そうすることで、送液ポンプ41の休止中も送液ポンプ41の本体部41pが極低温に維持されるため、送液ポンプ41を完全に停止させても配管21Ga,21Gbの内部で液体冷媒が極めて気化し難い。また、送液ポンプ41を完全停止しても配管21Ga,21Gbの内部に気化した液体冷媒が殆ど生じないため、送液ポンプ41を再び稼働する際、その復帰時間が極めて短くて済む。なお、送液ポンプ41の休止にあたり、バルブ91a,91bは開放状態でも閉鎖状態でも構わない。
【0058】
最後に、送液ポンプ41をメンテナンスする場合、バルブ91a,91bを全て閉鎖し、閉鎖空間10S内に導入管61から気体(例えば、窒素ガスなど)を導入しつつ、排出管62から気体を放出する。そして、導入する気体の温度を徐々に上げていき、閉鎖空間10S内を徐々に常温に戻した後、第2カバー部材C2をリザーバタンク10の外部から取り外し、送液ポンプ41をメンテナンスする。一方、閉鎖空間10S内を極低温に維持する冷媒が気体状である場合、導入管61から導入する気体の温度を徐々に上げていき、排出管62から閉鎖空間10S内の気体を抜くことで、閉鎖空間10S内を徐々に常温に戻すことができる。なお、メンテナンスが終了した送液ポンプ41を再び冷却システム1に取り付けた後は、導入管61から気体状の冷媒を流し、閉鎖空間10S内を徐々に冷却する。閉鎖空間10S内が十分に冷却されれば、閉鎖空間10S内に液体状の冷媒を導入する、あるいは気体状の冷媒を流し続けるなどして、閉鎖空間10S内を極低温に維持する、即ち本体部41pを極低温に維持する。
【0059】
<第三実施形態>
第三実施形態では、
図4に基づいて、導入管61として連通管25を採用し、その連通管25に連通管バルブ95を設けた構成を説明する。
【0060】
連通管25は、リザーバタンク10の内部と閉鎖空間10Sとを連通させる部材である。また、連通管バルブ95は、連通管25の途中に設けられ、連通管25の連通・非連通を制御する部材である。この連通管バルブ95は、リザーバタンク10の内部に配置される被冷却バルブである。
【0061】
上記構成で送液ポンプ41の本体部41pを極低温に維持する場合、連通管バルブ95を開放してリザーバタンク10の内部に貯留される液体冷媒を閉鎖空間10Sに導入する。閉鎖空間10Sは外部環境から断熱されているため、閉鎖空間10Sに導入された液体冷媒によって本体部41pは極低温の状態で維持される。つまり、閉鎖空間10Sは、本体部41pを極低温に維持する役割を持つと共に、液体冷媒の貯留室としての役割も持つ。閉鎖空間10Sに導入され、閉鎖空間10S内で液体冷媒が気化することで生じたガスは、第2カバー部材C2の排出管62から排気される。なお、排出管62の代わり、あるいは排出管62に加えて、紙面上方側でリザーバタンク10内の気相と、閉鎖空間10S内の気相と、を連通させる連通管を設けても良い。
【0062】
次に、閉鎖空間10S内に液体冷媒が導入された状態から送液ポンプ41の本体部41をメンテナンスする場合、バルブ91a,91b,95を閉じた後、第2カバー部材C2の紙面下方側に設けた図示しない排液ポートから液体冷媒を抜き、閉鎖空間10S内に常温の気体を導入するなどして、閉鎖空間10Sの温度を徐々に常温に近づけていく。閉鎖空間10Sの温度がほぼ常温になったら第2カバー部材C2を外し、本体部41を外してメンテナンスする。なお、閉鎖空間10Sから抜いた液体冷媒は再利用しても構わない。
【0063】
<第四実施形態>
第四実施形態では、断熱構造を備える概略蓋状の第2カバー部材C2をリザーバタンク10の外部に取り付けた構成を
図5に基づいて説明する。
【0064】
本例では、リザーバタンク10の凹んだ部分を均すように第2カバー部材C2が取り付けられることで閉鎖空間10Sが形成されている。そして、その閉鎖空間10Sの内部に、第二実施形態と同様に送液ポンプ41の本体部41pが配置されている。閉鎖空間10Sを形作る第2カバー部材C2には、導入管61と排出管62とが設けられており、閉鎖空間10S内に気体状の冷媒を吹き流す、あるいは液体状の冷媒を循環させることができるようになっている。
【0065】
以上説明した構成において送液ポンプ41の運転時もしくは休止時に閉鎖空間10S内に窒素ガスなどの冷媒を吹き流すことで、第二実施形態と同様の効果を得ることができる。一方、送液ポンプ41のメンテナンス時は、常温のガスを閉鎖空間10Sに導入することで、閉鎖空間10Sを速やかに常温に戻すことができる。
【0066】
<第五実施形態>
第五実施形態では、リザーバタンク10の断熱構造を二つの断熱部に区画した構成を
図6に基づいて説明する。
【0067】
本例のリザーバタンク10の断熱構造、即ち冷媒槽と真空槽との間に形成される真空断熱層は、仕切り部10dによって第1断熱部11と第2断熱部12とに区切られている。第1断熱部11は、リザーバタンク10のうち、第2カバー部材C2に覆われる領域内に形成され、当該領域よりも小さい領域を有する。そのため、リザーバタンク10の外部に第2カバー部材C2を取り付けたときに、第2カバー部材C2によって完全に覆われる。一方、第2断熱部12は、第1断熱部11以外の部分である。
【0068】
リザーバタンク10には図示しない真空ポートが設けられており、その真空ポートは第1断熱部11に繋がっている。真空ポートに真空ポンプを接続するための配管は、リザーバタンク10における第2カバー部材C2が取り付けられる部分以外の部分に開口している。この真空ポートを利用することで第1断熱部11の断熱性能を変更することができるようになっている。具体的には、真空ポートを利用して第1断熱部11を真空引きすることで、第1断熱部11の真空度を上げる(断熱性能を上げる)ことができる。逆に、真空ポートから窒素ガスなどを導入することで第1断熱部11の真空度を下げる(断熱性能を下げる)ことができる。これに対して、第2断熱部12は高真空状態(高断熱状態)となっている。
【0069】
一方、第2カバー部材C2の断熱構造は、その全領域にわたって形成される第3断熱部13(真空断熱層)を備える。第2カバー部材C2には第3断熱部13の断熱性能を可変にする真空ポートが設けられていても良い。第3断熱部13の断熱性能を不変とする場合、第3断熱部13は高断熱性能としておく。
【0070】
上記構成で送液ポンプ41を運転する場合、第1断熱部11の断熱性能を低下させておく。第3断熱部13の断熱性能が可変の場合、その断熱性能を上昇させておく。そうすることで、リザーバタンク10の内部と閉鎖空間10Sとの間で熱交換がされ易い状態となり、リザーバタンク10の内部に貯留される液体冷媒の影響により閉鎖空間10Sが極低温に冷却される。その際、第3断熱部13の断熱性能は高いため、閉鎖空間10Sは外部環境から断熱され、閉鎖空間10Sに配置される本体部41pは極低温の状態で維持される。なお、本例の第2カバー部材C2に、第二実施形態(
図3)と同様の導入管と排出管を設けることで、閉鎖空間10Sをより効率的に冷却することができる。その他、第三実施形態に示す連通管と連通管バルブを採用し、閉鎖空間10Sを冷却できるようにしても構わない。
【0071】
一方、運転状態にある送液ポンプ41を休止させる場合、第1断熱部11の断熱性能は低下させたままとしておく。その際、第3断熱部13の断熱性能が可変の場合、その断熱性能は上昇させたままとしておく。そうすることで、送液ポンプ41の休止中も送液ポンプ41の本体部41pが極低温に維持されるため、送液ポンプ41を再び稼働する際、その復帰時間を極めて短くすることができる。
【0072】
最後に、送液ポンプ41をメンテナンスする場合、バルブ91a,91bを閉鎖すると共に、第1断熱部11の断熱性は上昇させ、リザーバタンク10の内部と閉鎖空間10Sとの間で熱交換がされ難い状態とする。その状態から、閉鎖空間10Sを常温に戻してから第2カバー部材C2を取り外し、送液ポンプ41をメンテナンスする。閉鎖空間10Sを常温に戻すには、例えば、リザーバタンク10に対する第2カバー部材C2の取り付け状態を弛め、両者10,C2の間に隙間を形成すれば良い。ここで、第3断熱部13の断熱性能が可変の場合、その断熱性能を低下させることで、外部環境から閉鎖空間10S内への熱侵入量を増加させ、閉鎖空間10Sを速やかに常温に戻しても良い。その他、第2カバー部材C2が導入管と排出管を有する構成の場合、導入管から常温のガスを導入し、排出管から閉鎖空間10S内のガスを排出させることで、閉鎖空間10Sを速やかに常温に戻すことができる。
【0073】
<第六実施形態>
第六実施形態では、リザーバタンク10に対し、第五実施形態に示す第2カバー部材C2を複数取り付けることによって複数の閉鎖空間10Sを形成し、各閉鎖空間10Sに送液ポンプ41,42を配置した構成を
図7に基づいて説明する。この
図7では、紙面の大きさの都合上、送液ポンプ41,42については本体部のみ図示し、動力部は図示を省略している。また、紙面上の各機器の配置は実際の配置とは異なる。なお、リザーバタンク10と第2カバー部材C2の構成として、第二実施形態〜第四実施形態の構成を採用することもできる。
【0074】
本例では、リザーバタンク10から超電導ケーブル50に液体冷媒を送り出す送液ポンプ41を三つとした。各送液ポンプ41はそれぞれ独立した閉鎖空間10S(紙面右側参照)に一つずつ配置されている。各送液ポンプ41から延びる三つの送出配管21Gbは一つに集合しており、その集合した部分にバルブ91cが設けられている。このバルブ91cも被冷却バルブとしてリザーバタンク10の液体冷媒中に配置されている。
【0075】
一方、冷凍機30に液体冷媒を送り出す送液ポンプ42は、上述した三つの送液ポンプ41とは別の閉鎖空間10S(紙面左上参照)の内部に配置されている。また、送液ポンプ42が設けられる第2循環路22(
図1参照)の一部は、リザーバタンク10の液体冷媒中に配置されている。具体的には、第2循環路22を構成する第2往路配管22Gの吸入配管22Gaと送出配管22Gbの一部と、それら吸入配管22Ga,22Gbに設けられるバルブ92a,92bとが液体冷媒中に配置されている。また、冷凍機30からリザーバタンク10に液体冷媒を戻す第2復路配管22Rの一部と、その第2復路配管22Rに設けられるバルブ92cも液体冷媒中に配置されている。
【0076】
以上説明した構成によれば、第1循環路21に送液ポンプ41が三つ設けられていることで、これら送液ポンプ41のいずれかが故障しても冷却システム1の運転に支障が生じないようにすることができる。さらに、三つの送液ポンプ41をそれぞれ独立した閉鎖空間10Sに配置することで、一部の送液ポンプ41をメンテナンスし、残りの送液ポンプ41で冷却システム1の運転を行なうといった対応をすることもできる。
【0077】
また、第2循環路22に設けられる送液ポンプ42を、上述した第1循環路21の三つの送液ポンプ41と異なる閉鎖空間10Sに配置することで、第1循環路21に液体冷媒を循環させながら、第2循環路22の送液ポンプ42や冷凍機30をメンテナンスすることができる。
【0078】
<第七実施形態>
第一実施形態〜第六実施形態では、冷却システムに備わる複数のバルブのうち、一部のバルブを被冷却バルブとしてリザーバタンクに収納した。つまり、第一実施形態〜第六実施形態では、リザーバタンクが被冷却バルブを収納する第1カバー部材を兼ねていた。これに対して、第七実施形態では、リザーバタンクとは別に用意した第1カバー部材に被冷却バルブが収納される構成を説明する。つまり、第七実施形態は、本発明における第1カバー部材がリザーバタンクに限定されないことを示す例である。
【0079】
第一実施形態〜第六実施形態では、冷却システムの設計上、たまたまリザーバタンクの近くに配置されるバルブを被冷却バルブとしてリザーバタンクに収納した構成である。しかし、設計上、リザーバタンクから遠くに配置されるバルブをリザーバタンクに収納することはできない。そこで、リザーバタンクから遠くに配置されるバルブについては、リザーバタンクとは別に用意した第1カバー部材に収納する。そうすることで、リザーバタンクから遠い位置にあるバルブも被冷却バルブとすることができ、当該被冷却バルブを介した熱侵入を効果的に抑制することができる。なお、ここでの第1カバー部材は、当該システムに必要な冷媒量を収納することができるものでも良く、そうすることで、リザーバタンクの機能を分散することができる。
【0080】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。例えば、冷却対象は、超電導モータや超電導コイルなどの超電導機器であっても良い。また、冷却システムの設置当初から第1カバー部材がある場合の他、既設の冷却システムに第1カバー部材を後付けし、本発明の冷却システムを構築しても構わない。