(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記目標エリアの半径、前記現在位置の移動時速及び前記目標エリア内での測位回数に基づいて、前記測位手段における測位間隔を動的に設定する測位間隔設定手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエリア通知装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、携帯電話機への適用を例にして、図面を参照しながら説明する。
まず、実施形態の構成を説明する。
図1は、実施形態に係る携帯電話機1の外観図である。この図において、携帯電話機1は、手持ちに適した形状、たとえば、薄型箱形状の筐体2の主面(表面であって主たる操作対象となる面のこと)に透明なタッチパネル3を設けるとともに、そのタッチパネル3の背面に液晶ディスプレイやEL(Electro-Luminescence)パネルなどの二次元表示デバイスからなる表示部4を設け、また、そのタッチパネル3の上端辺側の筐体2の表面にスピーカ5を設け、さらに、そのタッチパネル3の下端辺側の筐体2の表面に1または複数の物理ボタン(ここでは一例として3個の物理ボタン6〜8)とマイクロフォン(以下、マイクという)9とを設けている。なお、筐体2の任意部分に電源スイッチやバッテリ充電用端子などが設けられているが、図では省略している。
【0011】
図2は、携帯電話機1の概念的な内部ブロック図である。この図において、携帯電話機1は、電話用無線通信部10、WiFi用無線通信部11、GPS受信部12、音声入出力部13、操作部14、表示部4、タッチパネル3、記憶部15、電源部16及び中央制御部17を備える。
【0012】
電話用無線通信部10は、中央制御部17の制御の元、アンテナ10aを介し、最寄りの携帯電話基地局(以下、単に基地局という)17との間で無線通信によるデジタルデータの送受信を行うことを主たる役割とし、また、従たる役割として、通信中の基地局17の識別情報(基地局ID)に基づいて現在位置の測位(以下、「基地局測位」という)を行う。基地局測位の誤差は通信中の基地局17のサービスエリア(セルともいう)の広さに依存し、たとえば、半径数百mから場合によっては半径数kmである。
【0013】
WiFi用無線通信部11は、中央制御部17の制御の元、アンテナ11aを介し、最寄りのWiFiアクセスポイント(以下、単にアクセスポイントという)18との間で無線通信によるデジタルデータの送受信を行うことを主たる役割とし、また、従たる役割として、最寄りのアクセスポイント18のビーコンを捕捉し、そのビーコンに含まれる識別情報(MACアドレスやSSID等)に基づいて現在位置の測位(以下、「WiFi測位」という)を行う。WiFi測位の誤差は、最寄りのアクセスポイント18の数や、それらのアクセスポイント18からのビーコン強度及び各アクセスポイント18の密集度などによって異なり、一概にはいえないが、多くの場合、数十mから数百mである(つまり、基地局測位よりも高精度である)。
【0014】
GPS受信部12は、中央制御部17の制御の元、複数のGPS衛星19からの電波を受信し、それぞれのGPS衛星19との距離を割り出すことによって現在位置の測位(以下、「GPS測位」という)を行う。3つの衛星が見えるところでは緯度と経度を、4つまたはそれ以上の衛星が見えるところではこれに加えてさらに高度も割り出すことができる。GPS測位は本来、米国防総省が管理する軍用である。軍用の精度は極めて高い(数十cm)が、民用にも精度を数十mに落として提供されている。この民用の精度(数十cm)は、基地局測位やWiFi測位よりも高い。したがって、3つの測位方法(基地局測位/WiFi測位/GPS測位)のうち、このGPS測位の精度が最も高い。
【0015】
ここで、近年、衛星からの電波を受信できない屋内等(以下、屋内という)でもGPSを利用することができる技術が実用化されている。その代表は冒頭のIMESである。IMESはGPSと互換性のある信号を小型の専用装置(以下、IMES装置)から発信するというものであり、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と測位衛星技術株式会社が共同開発した技術である。説明の便宜上、衛星からの電波を受信してGPS測位することを「屋外GPS測位」といい、IMES装置からの電波を受信してGPS測位することを「屋内GPS測位」ということにする。なお、これらを総称する場合は、前記のとおり「GPS測位」ということにする。
【0016】
音声入出力部13は、中央制御部17の制御の元、マイク9で拾った音声信号をデジタルデータに変換して中央制御部17に出力したり、中央制御部17から出力されたデジタルの音声信号をアナログ信号に変換してスピーカ5から拡声したりする。
【0017】
操作部14は、図示の例では3個の物理ボタン6〜8や不図示の電源スイッチなどを備えており、それらの物理ボタン6〜8や電源スイッチなどの操作状態に応じた信号を中央制御部17に出力する。
【0018】
表示部4は、先にも説明したとおり、その前面に、タッチペンや人体の一部(一般的には指先)の接触を、抵抗膜方式や静電容量方式の原理で検知できるタッチパネル3を併設している。「併設」は、表示部4の前面にタッチパネル3を“接着固定”するという意味であってもよく、あるいは、“非接着”で単に動かない(面方向にずれない)という意味であってもよい。また、多くのタッチパネルは、それ自体が独立した1つの部品であるが、これに限らず、たとえば、表示部4に組み込まれた(一般的には保護ガラスと表示層との間にタッチパネル層が挟み込まれている)一体型のものであってもよい。
【0019】
記憶部15は、フラッシュメモリやシリコンディスクあるいはハードディスクなどの不揮発性の大容量記憶デバイスであり、この携帯電話機1に必要な様々なデータ(たとえば、地図情報など)を記憶保持する。
【0020】
電源部16は、一次電池または充電可能な二次電池からなるバッテリ16aを含み、このバッテリ16aの電力から携帯電話機1の動作に必要な各種電源電圧を発生して各部に供給する。
【0021】
中央制御部17は、コンピュータまたはマイクロコンピュータ(以下、CPU)17aや読み出し専用半導体メモリ(以下、ROM)17b及び高速半導体メモリ(以下、RAM)17cならびに不図示の周辺回路を含むプログラム制御方式の制御要素であり、あらかじめROM17bに格納されている制御プログラムなどの制御データをRAM17cにロードしてCPU17aで実行することにより、各種の処理を逐次に実行して、この携帯電話機1の全体動作を統括制御する。
【0022】
次に、実施形態の作用をいくつかの実施例ごとに説明する。
(第1実施例)
図3は、第1実施例の制御プログラムの概略フローを示す図である。この制御プログラムは、中央制御部17のCPU17aで実行される。このフローを開始すると、まず、CPU17aはユーザによって任意に指定された目標エリアの情報を取り込む(ステップS11)。目標エリアの指定は、たとえば、タッチパネル3にソフトウェアキーボードを表示し、そのキーボードを用いてユーザが緯度経度の数値情報を直接入力して指定するようにしてもよいし、あるいは、記憶部15に保存されている地図情報を読み出して表示部4にその地図情報を表示し、ユーザによるタッチパネル3へのタッチ座標から地図上の緯度経度の数値情報を割り出して指定するようにしてもよい。
【0023】
次いで、表示部4に複数の測位方法の選択肢を表示し、そのうちの一つの測位方法をユーザに選択させる(ステップS12)。ここで、選択肢となる測位方法は、「WiFi測位」、「GPS測位」及び「基地局測位」の3つである。ユーザはこれら3つの測位方法の一つを選択する。CPU17aは、その選択結果に従い、位置の測位間隔(以下、単に測位間隔という)を設定する。すなわち、「WiFi測位」が選択された場合は測位間隔をWiFi測位用に設定し(ステップS13)、「GPS測位」が選択された場合は測位間隔を屋外GPS測位用に設定し(ステップS14)、「基地局測位」が選択された場合は測位間隔を基地局測位用に設定する(ステップS15)。
【0024】
GPS測位とWiFi測位は、精度は高いが消費電力が大きいため、測位間隔を長くし、基地局測位は、精度は低いが消費電力が小さいため、測位間隔を短くする。このように、3つの測位方法(GPS測位、WiFi測位及び基地局測位)のそれぞれを携帯電話機1で使用した場合の消費電力を考慮し、測位間隔の長さを変えるようにする。つまり、消費電力が大きい程、測位間隔を長くする。
【0025】
そして、「WiFi測位」が選択された場合または「基地局測位」が選択された場合は、いずれも目標エリアに到達したか否かを判定し(ステップS16)、到達していなければステップS12以降を繰り返し、到達していれば、携帯電話機1のユーザまたは他のユーザに対する通知(ステップS17)を行った後、フローを終了する。携帯電話機1のユーザに対する通知は、たとえば、スピーカ5からの通知音で行ってもよく、あるいは、表示部4への任意の情報表示で行ってもよい。また、他のユーザに対する通知は、たとえば、あらかじめ登録されているメールアドレス宛てへの電子メールで行ってもよく、あるいは、あらかじめ登録されている携帯電話番号宛へのショートメッセージで行ってもよい。
【0026】
一方、「GPS測位」が選択された場合は、位置の測位結果が得られるまでの待ち時間(以下、測位待ち時間という)を測定し、その測位待ち時間が一定値より長いか否かを判定する(ステップS18)。
【0027】
そして、測位待ち時間が一定値より長ければ、衛星からの電波を捕捉できない場所(屋内等)にいるものと判断して、測位間隔を屋外GPS測位用から屋内GPS測位用に変更し(ステップS19)、一方、測位待ち時間が一定値より長くなければ、測位間隔を屋外GPS測位用のままとし(屋内GPS測位用に変更されていれば屋外GPS測位用に戻し)(ステップS20)、次いで、目標エリアに到達したか否かを判定し(ステップS16)、到達していなければステップS12以降を繰り返し、到達していれば、携帯電話機1のユーザまたは他のユーザに対する通知(ステップS17)を行った後、フローを終了する。
【0028】
この第1実施例では、ユーザに測位方法(WiFi測位、GPS測位、基地局測位)を選択させると共に、GPS測位が選択された場合には、測位待ち時間を測定して、その測位待ち時間が一定値より長い場合に測位間隔を屋内GPS測位用に設定する点に特徴がある。
【0029】
すなわち、屋内GPS測位と屋外GPS測位は、測位信号源(GPS衛星またはIMES装置)の違いしかなく、携帯電話機1の内部動作の点ではどちらも同じである。
【0030】
しかしながら、一般的にGPS衛星からの電波を捕捉するまでの待ち時間(測位待ち時間)は、IMES装置からの電波を捕捉するまでの待ち時間(測位待ち時間)よりも長いので、「GPS測位の測位待ち時間が一定値より長い場合は、衛星からの電波がなかなか捕捉されない状況にある」と判断することができる。
【0031】
そして、このような状況においては、屋内GPS測位、つまり、衛星の代わりにIMES装置からの電波を用いた測位を行うことが測位の応答性や電力消費の面で好ましいことから、第1実施例では、上記の状況の場合に、屋外GPS測位用の測位間隔から屋内GPS測位用の測位間隔に変更するようにしている。
【0032】
したがって、第1実施例によれば、冒頭の第3従来技術における専用のサーバ(ナビゲーションサーバ)が不要であるから、コストをかけずに済み、また、ユーザの所望により、精度の高いGPS測位を行うことができるから、正確なエリア通知を行うことができ、さらに、特に屋外GPS測位と屋内GPS測位双方の測位間隔を適正化できるから、常に一定の測位間隔にしている場合に比べて、バッテリの延命化を図ることができる。
【0033】
(第2実施例)
第2実施例は、ユーザの現在位置と当該ユーザが指定した目標エリアとが離れている間は省電力性に優れた基地局測位を利用する一方、ユーザが指定した目標エリアに近いまたは目標エリアに入ったときには測位精度に優れたGPS測位もしくはWiFi測位に切り替えるようにし、これにより、コストをかけずに正確なエリア通知とバッテリの延命化を図るようにしたものである。
【0034】
図4は、第2実施例の概念図である。この図において、星(☆)印はユーザの現在位置20を示し、ハッチング付きの円図形はユーザが指定した目標エリア21を示し、ハッチングなしの円図形は基地局測位の誤差範囲(基地局17を中心とした範囲)22を示す。
【0035】
第2実施例では、(a)に示すように、ユーザの現在位置20と当該ユーザが指定した目標エリア21とが遠く離れている間は、省電力性に優れた基地局測位を利用するが、(b)に示すように、現在位置20がユーザが指定した目標エリア21に近いまたは目標エリア21に入ったときには測位精度に優れたGPS測位もしくはWiFi測位に切り替える。あるいは、(c)に示すように、基地局測位の誤差範囲22と目標エリア21がオーバラップしたときにも測位精度に優れたGPS測位もしくはWiFi測位に切り替える。
【0036】
図5は、第2実施例の制御プログラムの概略フローを示す図である。この制御プログラムは、中央制御部17のCPU17aで実行される。このフローを開始すると、まず、CPU17aはユーザによって任意に指定された目標エリア21の情報を取り込む(ステップS21)。
【0037】
次いで、基地局測位を行い(ステップS22)、現在位置20が目標エリア21に近いか否かを判定する(ステップS23)。そして、現在位置20が目標エリア21に近くなければ、
図4(a)の状態(ユーザの現在位置20と当該ユーザが指定した目標エリア21とが遠く離れている状態)にあるものと判断し、精度は劣るものの省電力性に優れた基地局測位(ステップS22)をそのまま継続する。
【0038】
一方、ステップS23の判定結果がYESの場合、つまり、現在位置20が目標エリア21に近い場合には、
図4(b)の状態(現在位置20がユーザが指定した目標エリア21に近い状態または目標エリア21に入った状態)にある、もしくは、
図4(c)の状態(基地局測位の誤差範囲22と目標エリア21がオーバラップした状態)にあるものと判断し、省電力性は劣るものの精度に優れたGPS測位またはWiFi測位に変更し(ステップS24)、変更後の測位方法を用いて測位を行う(ステップS25)。
【0039】
次いで、測位結果(現在位置20)を取り込み、現在位置20が、目標エリア21から遠いか、目標エリア21に近いか、または、目標エリア21内(目標エリア21を示す円内)に入っているか、を判定する(ステップS26)。そして、目標エリア21から遠いと判定された場合には、精度は劣るものの省電力性に優れた基地局測位に変更して(ステップS27)ステップS22以降を繰り返し、目標エリア21に近いと判定された場合には、そのままの測位方法(省電力性は劣るものの精度に優れたGPS測位またはWiFi測位)で測位を行い(ステップS25)、目標エリア21内(目標エリア21を示す円内)に入っていると判定された場合は、携帯電話機1のユーザまたは他のユーザに対する通知(ステップS28)を行った後、フローを終了する。
【0040】
この第2実施例では、ユーザの現在位置20と当該ユーザが指定した目標エリア21とが遠く離れている間は、省電力性に優れた基地局測位を利用し、また、現在位置20がユーザが指定した目標エリア21に近いまたは目標エリア21に入ったとき、もしくは、基地局測位の誤差範囲22と目標エリア21がオーバラップしたときには、測位精度に優れたGPS測位またはWiFi測位を利用する。
【0041】
したがって、基地局測位を利用している間の省電力効果によってバッテリの延命化を図りつつ、GPS測位またはWiFi測位を利用している間の高い測位精度によって正確なエリア通知を行うことができる。加えて、冒頭の第3従来技術における専用のサーバ(ナビゲーションサーバ)が不要であり、システムのコストアップも招かない。
【0042】
(第3実施例)
第3実施例は、基地局測位の精度誤差が一定範囲を超えた場合に、基地局測位からGPS測位またはWiFi測位に切り替えるようにしたものである。携帯電話の基地局17は、携帯電話機1からの求めに応じて、その基地局17の位置情報と精度誤差とを含む情報を返す。精度誤差(携帯電話1がこの距離範囲内に存在することを示す値)は、数百m〜数kmのばらつきがある。
【0043】
この第3実施例では、基地局17から高い精度が返された場合は、省電力性に優れた基地局測位をそのまま利用する一方、基地局17から低い精度が返された場合は、精度に優れたGPS測位またはWiFi測位を利用するようにし、これにより、コストをかけずに正確なエリア通知とバッテリの延命化を図るようにしたものである。
【0044】
図6は、第3実施例の概念図である。この図において、星(☆)印はユーザの現在位置23を示し、ハッチング付きの円図形はユーザが指定した目標エリア24を示し、ハッチングなしの円図形は基地局測位の誤差範囲(基地局17を中心とした範囲)25を示す。
【0045】
第3実施例では、(a)に示すように、基地局17から高い精度(たとえば、700m未満の精度)が返された場合は、省電力性に優れた基地局測位をそのまま利用し、また、(b)に示すように、基地局17から低い精度(たとえば、700m以上の精度)が返された場合は、精度に優れたGPS測位またはWiFi測位を利用する。
【0046】
図7は、第3実施例の制御プログラムの概略フローを示す図である。この制御プログラムは、中央制御部17のCPU17aで実行される。このフローを開始すると、まず、CPU17aはユーザによって任意に指定された目標エリア24の情報を取り込む(ステップS31)。
【0047】
次いで、基地局測位を行い(ステップS32)、基地局測位の精度が一定値(たとえば、700m)を超えているか否かを判定する(ステップS33)。そして、基地局測位の精度が一定値を超えていなければ、目標エリア24内(目標エリア24を示す円内)に入っているかを判定し(ステップS34)、目標エリア24内に入っていなければ、省電力性に優れた基地局測位(ステップS32)をそのまま継続し、目標エリア24内に入っていれば、携帯電話機1のユーザまたは他のユーザに対する通知(ステップS39)を行った後、フローを終了する。
【0048】
一方、ステップS33の判定結果がYESの場合、つまり、基地局測位の精度が一定値を超えている場合には、
図6(b)の状態(基地局17から低い精度が返された状態)にあるものと判断し、精度に優れたGPS測位またはWiFi測位に変更し(ステップS35)、変更後の測位方法を用いて測位を行う(ステップS36)。
【0049】
次いで、測位結果(現在位置23)を取り込み、現在位置23が、目標エリア24から遠いか、目標エリア24に近いか、または、目標エリア24内(目標エリア24を示す円内)に入っているか、を判定する(ステップS37)。そして、目標エリア24から遠いと判定された場合には、精度は劣るものの省電力性に優れた基地局測位に変更して(ステップS38)ステップS32以降を繰り返し、目標エリア24に近いと判定された場合には、そのままの測位方法(省電力性は劣るものの精度に優れたGPS測位またはWiFi測位)で測位を行い(ステップS36)、目標エリア24内(目標エリア24を示す円内)に入っていると判定された場合は、携帯電話機1のユーザまたは他のユーザに対する通知(ステップS39)を行った後、フローを終了する。
【0050】
この第3実施例では、基地局17から高い精度(たとえば、700m未満の精度)が返された場合は、省電力性に優れた基地局測位をそのまま利用する一方、基地局17から低い精度(たとえば、700m以上の精度)が返された場合は、精度に優れたGPS測位またはWiFi測位を利用する。
【0051】
したがって、基地局測位を利用している間の省電力効果によってバッテリの延命化を図りつつ、GPS測位またはWiFi測位を利用している間の高い測位精度によって正確なエリア通知を行うことができる。加えて、冒頭の第3従来技術における専用のサーバ(ナビゲーションサーバ)が不要であり、システムのコストアップも招かない。
【0052】
このように、第1実施例〜第3実施例によれば、コストをかけずに正確なエリア通知とバッテリの延命化を図ることができるという効果を得ることができる。
【0053】
さらに、第1実施例〜第3実施例に、以下の実施例(確実な通知を行うことを意図したもの)を組み合わせてもよい。
(第4実施例)
図8は、第4実施例の概念図である。この図において、二つの星(☆)印はそれぞれユーザの移動前の位置26と時速Ymで移動した後の位置26′を示し、円図形はユーザが指定した半径Xmの目標エリア27を示す。
【0054】
今、X=1、Y=60とすると、目標エリア27の半径は1Km、ユーザの移動速度は毎時60Kmになる。ここで、ユーザが指定した目標エリア27で2回まで位置測位させることを考えると、2Km÷2回=1Kmなので、1Kmごとの計測が必要になる。よって、1Km÷1Km/分=1分ごとに計測を行うことになる。
【0055】
このことから、通知のタイミングを逃さないようにして確実な通知を行うための適正な測位間隔Zは、以下の計算式で与えられる。
測位間隔Z=(2X÷T)÷(Y÷60)
ただし、X:目標エリア27の半径(Km)
Y:ユーザの移動時速(Km/h)
T:目標エリア27内で測位回数(回)
(2X÷T[Km]ごとに計測が必要)
【0056】
図9は、第4実施例の制御プログラムの概略フローを示す図である。この制御プログラムは、中央制御部17のCPU17aで実行される。このフローを開始すると、まず、CPU17aはユーザによって任意に指定された目標エリア27の情報を取り込む(ステップS41)。
【0057】
次いで、3つの測位方法(基地局測位、GPS測位、WiFi測位)のいずれかを用いて位置測位を行い(ステップS42)、所定の測位間隔Zの経過を待ち(ステップS43)、同じく3つの測位方法(基地局測位、GPS測位、WiFi測位)のいずれかを用いて位置測位を行う(ステップS44)。
【0058】
そして、測位地点が目標エリア27内(目標エリア27の円内)にあるか否かを判定し(ステップS45)、目標エリア27内にあれば、携帯電話機1のユーザまたは他のユーザに対する通知(ステップS47)を行った後、フローを終了する。
【0059】
一方、目標エリア27内になければ、移動速度Yと目標エリア27の半径Xとを元に前記の計算式に従って測位間隔Zを求め(ステップS46)、再び、ステップS43以降を繰り返す。
【0060】
このように第4実施例では、目標エリア27の半径X、ユーザの移動時速Y及び目標エリア27内での測位回数Tに基づいて、通知のタイミングを逃さないようにするための適正な測位間隔Zを求めるようにしたから、前記の第1実施例〜第3実施例と組み合わせることにより、第1実施例〜第3実施例の効果(コストをかけずに正確なエリア通知とバッテリの延命化を図ることができる)に加えて、さらに、ユーザが指定した目標エリアに到達したときに確実な通知を行うことができるという効果も得ることができる。
【0061】
(第5実施例)
第5実施例は、GPS測位や基地局測位またはWiFi測位で取得した「過去(直前)の測位位置」と「現在の測位位置」の2点間を直線で補間し、その直線がユーザが指定した目標エリアを通過したかどうかを調べ、通過していた場合は通知漏れがあったと判断して通知(事後通知)を行うようにしたものである。
【0062】
図10は、第5実施例の概念図である。この図において、(a)は、現在の測位位置29だけの場合を示し、(b)と(c)は、過去(直前)の測位位置28と現在の測位位置29の2つが存在する場合を示している。この第5実施例では、(b)や(c)のように、過去(直前)の測位位置28と現在の測位位置29の2つが存在する場合において、それらの2点を結ぶ直線31を引き、その直線31がユーザが指定した目標エリア30を通過したか否かを判定し、通過していた場合(ここでは(b)の場合)に、通知漏れがあったと判断して事後通知を行うようにしたものである。
【0063】
図11は、第5実施例の制御プログラムの概略フローを示す図である。この制御プログラムは、中央制御部17のCPU17aで実行される。このフローを開始すると、まず、CPU17aはユーザによって任意に指定された目標エリア30の情報を取り込む(ステップS51)。
【0064】
次いで、3つの測位方法(基地局測位、GPS測位、WiFi測位)のいずれかを用いて位置測位を行い(ステップS52)、所定の測位間隔Zの経過を待ち(ステップS53)、同じく3つの測位方法(基地局測位、GPS測位、WiFi測位)のいずれかを用いて位置測位を行う(ステップS54)。
【0065】
そして、直前と今回の2地点間を直線補間し、その直線31が目標エリア30内(目標エリア30の円内)を通過したか否かを判定し(ステップS55)、通過していなければ、再びステップS53以降を実行する一方、通過していれば、携帯電話機1のユーザまたは他のユーザに対する通知(ステップS56)を行った後、フローを終了する。
【0066】
このように第5実施例では、「過去(直前)の測位位置」と「現在の測位位置」の2点間を直線31で補間し、その直線31がユーザが指定した目標エリア30を通過したかどうかを調べ、通過していた場合は通知漏れがあったと判断して事後通知を行うようにしたので、通知漏れを回避することができる。
【0067】
したがって、前記の第1実施例〜第3実施例と組み合わせることにより、第1実施例〜第3実施例の効果(コストをかけずに正確なエリア通知とバッテリの延命化を図ることができる)に加えて、さらに、事後的ではあるものの、確実な通知を行うことができるという効果も得ることができる。
【0068】
第5実施例における通知(ステップS56の通知)を行う際は、事後的な通知である旨をユーザに知らせるようにしてもよい。たとえば、「目標エリアを通り過ぎました」などの音声メッセージを用いてもよい。
【0069】
(第6実施例)
GPS測位やWiFi測位は高精度な測位であるため、若干の測位許容誤差を持たせることによって、通知漏れを回避することができる。
【0070】
図12は、第6実施例の概念図である。(a)において、星(☆)印はユーザの現在位置32、ハッチング付きの円図形はユーザによって指定された目標エリア33、ハッチングなしの大きな円図形は基地局測位の精度(基地局17を中心とした範囲)34を示している。
【0071】
GPS測位やWiFi測位は精度が高いのが利点であるが、その利点故に、一方で、ユーザの現在位置32が正確にユーザが指定した目標エリア33の円内に入らなければ通知を行うことができないという欠点がある。
【0072】
第6実施形態では、この欠点を補うために、(b)に示すように、GPS測位やWiFi測位の精度に一定量の測位誤差(たとえば、100m)を付与し、その測位誤差を含む測位範囲36とユーザが指定した目標エリア33とが交わるか、または接したときに通知を行うようにした。
【0073】
図13は、第6実施例の制御プログラムの概略フローを示す図である。この制御プログラムは、中央制御部17のCPU17aで実行される。このフローを開始すると、まず、CPU17aはユーザによって任意に指定された目標エリア33の情報を取り込む(ステップS61)。
【0074】
次いで、3つの測位方法(基地局測位、GPS測位、WiFi測位)のいずれかを用いて位置測位を行い(ステップS62)、現在の測位がGPS測位またはWiFi測位であるか否かを判定し(ステップS63)、GPS測位またはWiFi測位でない場合は、現在の測位が基地局測位であると判断して、測位許容誤差を付けずに(ステップS66)、目標エリア33内であるか否かを判定し(ステップS67)、目標エリア33内でなければ、ステップS62以降を繰り返し、目標エリア33内であれば、携帯電話機1のユーザまたは他のユーザに対する通知(ステップS68)を行った後、フローを終了する。
【0075】
一方、ステップS63の判定結果がYESの場合、つまり、現在の測位がGPS測位またはWiFi測位である場合には、所定の測位許容誤差(たとえば、100m)を付与し(ステップS64)、その測位誤差を含む測位範囲36とユーザが指定した目標エリア33の円とが交わっているか、または接しているか否かを判定し(ステップS65)、その判定結果がNOの場合は、ステップS62以降を繰り返し、その判定結果がYESの場合は、携帯電話機1のユーザまたは他のユーザに対する通知(ステップS68)を行った後、フローを終了する。
【0076】
このように第6実施例では、精度に優れたGPS測位やWiFi測位を利用している際に、一時的に精度を落として目標エリア33への到達判断を行うので、高精度故の通知漏れを防止することができる。
【0077】
したがって、前記の第1実施例〜第3実施例と組み合わせることにより、第1実施例〜第3実施例の効果(コストをかけずに正確なエリア通知とバッテリの延命化を図ることができる)に加えて、さらに、多少のずれ(誤差)を伴うものの、確実な通知を行うことができるという効果も得ることができる。
【0078】
この第6実施例における通知(ステップS68の通知)を行う際も、多少のずれ(誤差)を伴う通知である旨をユーザに知らせるようにしてもよい。たとえば、「概ね目標エリア付近に到達しました」などの音声メッセージを用いてもよい。
【0079】
なお、消費電力を抑えられるGPS機能とモーションセンサーによる自律測位とを組み合わせた「ハイブリッドGPS」もあるが、この「ハイブリッドGPS」と基地局測位との組み合わせも、以上の各実施例に適用することが可能である。これによれば、さらなる省電力化を図ることができる。
【0080】
また、第2実施例において、直前の位置と現在の位置を解析したユーザの進行方向を元に、ユーザが指定した目的の場所から遠ざかっている場合は消費電力の少ない基地局測位を行ってもよい。同様に、第4実施例においても、ユーザが指定した目的の場所から遠ざかっている場合は、測位間隔を次から長くしてもよい。
【0081】
以上の説明では、携帯電話機への適用を例にしたが、これに限定されない。位置測位の機能を有するとともに、冒頭で述べたエリア通知などのサービスを利用することができるパーソナルコンピュータをはじめとした電子機器一般に広く適用することができる。
【0082】
以下、本発明の特徴を付記する。
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
付記1は、屋外GPS測位または屋内GPS測位のいずれかを行って現在位置を取得する測位手段と、
前記測位手段によって前記屋外GPS測位が行われている際の測位待ち時間を計測する計測手段と、
前記計測手段によって計測された前記測位待ち時間が一定値よりも長いか否かを判定する判定手段と、
前記測位待ち時間が一定値よりも長い場合は前記測位手段の測位間隔を屋内GPS測位用に設定し、前記測位待ち時間が一定値よりも長くない場合は前記測位手段の測位間隔を屋外GPS測位用に設定する設定手段と
を備えたことを特徴とするエリア通知装置である。
付記1によれば、コストをかけずに正確なエリア通知とバッテリの延命化を図ることができる。
(付記2)
付記2は、基地局測位、GPS測位またはWiFi測位のいずれか行って現在位置を取得する測位手段と、
前記現在位置と任意の目標エリアとが遠く離れている間は前記基地局測位を利用するように前記測位手段を制御し、前記現在位置が前記目標エリアに近いまたは目標エリアに入ったとき、もしくは、前記基地局測位の誤差範囲と前記目標エリアがオーバラップしたときには前記基地局測位に代えて前記GPS測位またはWiFi測位を利用するように前記測位手段を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とするエリア通知装置である。
付記2によれば、コストをかけずに正確なエリア通知とバッテリの延命化を図ることができる。
(付記3)
付記3は、基地局測位、GPS測位またはWiFi測位のいずれか行って現在位置を取得する測位手段と、
前記基地局測位を行っている際の測位精度誤差が一定範囲を超えた場合に、前記基地局測位に代えて前記GPS測位またはWiFi測位を利用するように前記測位手段を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とするエリア通知装置である。
付記3によれば、コストをかけずに正確なエリア通知とバッテリの延命化を図ることができる。
(付記4)
付記4は、前記目標エリアの半径、前記現在位置の移動時速及び前記目標エリア内での測位回数に基づいて、前記測位手段における測位間隔を動的に設定する測位間隔設定手段をさらに備えたことを特徴とする付記1〜3のいずれかに記載のエリア通知装置である。
付記4によれば、付記1〜3の効果に加えて、さらに確実な通知を行うことができる。
(付記5)
付記5は、前記現在位置の移動前と移動後の2点間を直線で補間する補間手段と、
当該直線が前記目標エリアを通過したときに通知を行う通知手段と
をさらに備えたことを特徴とする付記1〜3のいずれかに記載のエリア通知装置である。
付記5によれば、付記1〜3の効果に加えて、さらに確実な通知を行うことができる。
(付記6)
付記6は、前記測位手段の測位精度を意図的に落とす精度低下手段をさらに備えたことを特徴とする付記1〜3のいずれかに記載のエリア通知装置である。
付記6によれば、付記1〜3の効果に加えて、さらに確実な通知を行うことができる。
(付記7)
付記7は、屋外GPS測位または屋内GPS測位のいずれかを行って現在位置を取得する測位工程と、
前記測位工程によって前記屋外GPS測位が行われている際の測位待ち時間を計測する計測工程と、
前記計測工程によって計測された前記測位待ち時間が一定値よりも長いか否かを判定する判定工程と、
前記測位待ち時間が一定値よりも長い場合は前記測位工程の測位間隔を屋内GPS測位用に設定し、前記測位待ち時間が一定値よりも長くない場合は前記測位手段の測位間隔を屋外GPS測位用に設定する設定工程と
を含むことを特徴とするエリア通知方法である。
付記7によれば、コストをかけずに正確なエリア通知とバッテリの延命化を図ることができる。
(付記8)
付記8は、コンピュータに、
屋外GPS測位または屋内GPS測位のいずれかを行って現在位置を取得する測位手段、
前記測位手段によって前記屋外GPS測位が行われている際の測位待ち時間を計測する計測手段、
前記計測手段によって計測された前記測位待ち時間が一定値よりも長いか否かを判定する判定手段、
前記測位待ち時間が一定値よりも長い場合は前記測位手段の測位間隔を屋内GPS測位用に設定し、前記測位待ち時間が一定値よりも長くない場合は前記測位手段の測位間隔を屋外GPS測位用に設定する設定手段
としての機能を与えることを特徴とするプログラムである。
付記8によれば、コストをかけずに正確なエリア通知とバッテリの延命化を図ることができる。